JP4539023B2 - ポルフィリン複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポルフィリン複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属ポルフィリンは、生体内でタンパク質の中に含有されたポルフィリン−タンパク質複合体として存在し、酸素輸送や光エネルギー変換等の重要な役割を演じている。このような金属ポルフィリンの特徴的な機能は、タンパク質と複合体を形成していることで発揮されるものであり、タンパク質から金属ポルフィリンを取り出してしまうと、その機能はほとんど失われてしまう。しかし、金属ポルフィリンを包むタンパク質は一般に不安定であり、ポルフィリン−タンパク質複合体を工業的にそのまま利用することは困難であった。
【0003】
上記ポルフィリン−タンパク質複合体として具体的には、例えば、ヘム又はヘミンとタンパク質とが複合体を形成したヘムタンパク質が知られており、動植物界に広く存在している。また、このヘムタンパク質の種類として、酸素と結合してこれを運搬するヘモグロビンやミオグロビン、生体中の酸化還元反応において触媒として機能するカタラーゼやペルオキシダーゼ等が広く知られている。これらのヘムタンパク質は、いずれも鉄原子がポルフィリンに配位した補欠分子族ヘム又はヘミンを有しているが、ヘム又はヘミン単独では上述したようなヘムタンパク質としての機能をほとんど発揮することができず、また、ヘムタンパク質の状態で工業的に利用することも困難であった。
【0004】
このような問題を改善するために、タンパク質に代わる安定な材料に金属ポルフィリンを吸着させ、生体内でのポルフィリン−タンパク質複合体と同様の機能を有する複合体を形成する試みが成されており、合成粘土鉱物であるスメクタイトにクロロフィルを結合させる方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
Itoh, T. et al. Bioconjugate Chem. 9, 409-412, 1998
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記非特許文献1に記載された複合体は、クロロフィルの吸着のほとんどが粘土鉱物の外表面で生じているために、クロロフィルの吸着量が不十分であるという欠点を有していた。
【0007】
また、クロロフィルはマグネシウムを有する金属ポルフィリンであるが、マグネシウム以外の金属を有する金属ポルフィリンを多孔体等の吸着対象物に吸着させることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、金属ポルフィリンを安定的に十分な吸着量で吸着させたポルフィリン複合体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の多孔体に特定の金属ポルフィリンを吸着させることにより、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のポルフィリン複合体は、メソ多孔体と、該メソ多孔体に吸着した金属ポルフィリンとを備えるポルフィリン複合体であって、前記金属ポルフィリンが、遷移金属、典型金属、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子と、ポルフィリン骨格に結合した少なくとも1つの炭化水素基とを有する有機化金属ポルフィリンであり、前記ポルフィリン骨格に結合している前記炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、前記炭化水素基の全てが末端にカルボキシル基を含まないものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のポルフィリン複合体において、前記金属原子がFe又はZnであることが好ましく、前記ポルフィリン骨格に結合している前記炭化水素基が炭素数8〜22の鎖状炭化水素基であることが好ましく、前記メソ多孔体がシリカ系メソ多孔体又は炭素系メソ多孔体であることが好ましい。
【0012】
本発明のポルフィリン複合体の製造方法は、遷移金属、典型金属、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子と、ポルフィリン骨格に結合した少なくとも1つの炭化水素基とを有しており、前記ポルフィリン骨格に結合している前記炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、前記炭化水素基の全てが末端にカルボキシル基を含まないものである有機化金属ポルフィリンを、溶媒に溶解及び/又は分散させた溶液を調製する溶液調製工程と、前記溶液にメソ多孔体を懸濁させ、前記溶液中の前記有機化金属ポルフィリンを前記メソ多孔体に吸着せしめる吸着工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
また、本発明のポルフィリン複合体の製造方法は、遷移金属、典型金属、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子を有する金属ポルフィリンに、少なくとも1つの炭化水素基を導入することによって、ポルフィリン骨格に結合した少なくとも1つの前記炭化水素基を有しており、前記ポルフィリン骨格に結合している前記炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、前記炭化水素基の全てが末端にカルボキシル基を含まないものである前記有機化金属ポルフィリンを得る導入工程を更に含んでいてもよい。
【0014】
本発明のポルフィリン複合体の製造方法において、前記溶媒の比誘電率が7以下であることが好ましい。また、前記金属原子がFe又はZnであることが好ましく、前記ポルフィリン骨格に結合している前記炭化水素基が鎖状炭化水素基であることが好ましく、前記メソ多孔体がシリカ系メソ多孔体又は炭素系メソ多孔体であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
(ポルフィリン複合体)
先ず、本発明のポルフィリン複合体にかかるメソ多孔体について説明する。
【0017】
本発明において、メソ多孔体とは細孔のサイズがメソ孔であるものをいう。ここで、メソ孔とは、中心細孔直径が2〜50nmであるものをいう。なお、中心細孔直径とは、メソ多孔体の細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径を意味する。そして、細孔分布曲線は、メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガス吸着量をプロットして吸着等温線を得た後に、Cranston−Inklay法を適用して求めることができる曲線である。
【0018】
このようなメソ孔を有するメソ多孔体として具体的には、シリカ系メソ多孔体又は炭素系メソ多孔体が好ましく用いられ、シリカ系メソ多孔体が特に好ましく用いられる。このようなメソ多孔体に金属ポルフィリンを吸着させることにより、金属ポルフィリンが安定的に十分な吸着量でメソ多孔体に吸着したポルフィリン複合体が得られ、酸素等の吸着剤として活用することが可能となる。
【0019】
本発明にかかるメソ多孔体として好適に用いられるシリカ系メソ多孔体は、ケイ素原子と酸素原子を必須成分として含む化合物の多孔体である。シリカ系メソ多孔体は、0.1〜1.5mL/gの細孔容積を有するものであることが好ましく、また、200〜1500m2/gのBET比表面積を有するものであることが好ましい。そして、シリカ系メソ多孔体は、全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上の多孔体であることが好ましい。
【0020】
ここで、「全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。この条件を満たす多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味し、このような細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に金属ポルフィリンを吸着させることにより、金属ポルフィリンの安定性及び吸着性が向上する傾向があり、酸素等の吸着剤としての機能がより向上する傾向がある。なお、細孔容積は、上述のようにシリカ系メソ多孔体を液体窒素温度に冷却して窒素ガスを導入する方法(窒素吸着法)により算出することができる。
【0021】
また、シリカ系メソ多孔体は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示す多孔体であることが好ましい。X線回折パターンでピークが現われる場合は、そのピーク角度に相当するd値の周期構造がシリカ系メソ多孔体中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。このように非常に規則的な細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に金属ポルフィリンを吸着させることにより、金属ポルフィリンの安定性及び吸着性をより向上させることができる傾向がある。
【0022】
上述のシリカ系メソ多孔体における、細孔の配列状態(細孔配列構造)は特に制限されず、例えば、2d−ヘキサゴナルや3d−ヘキサゴナル等のヘキサゴナルの細孔配列構造を有するものであっても、キュービックやディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。ここで、シリカ系メソ多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、シリカ系メソ多孔体の細孔の配置が六方構造であることを意味する(S. Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993; S. Inagaki, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1449; 1996、Q. Huo et al., Science, 268, 1324, 1995 参照)。
【0023】
また、シリカ系メソ多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、シリカ系メソ多孔体中の細孔の配置が立方構造であることを意味する(J. C. Vartuli et al., Chem. Mater., 6, 2317, 1994; Q. Huo et al., Nature, 368, 317, 1994 参照)。そして、シリカ系メソ多孔体がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P. T. Tanev et al., Science, 267, 865, 1995; S. A. Bagshaw et al., Science, 269, 1242, 1995; R. Ryoo et al., J. Phys. Chem., 100, 17718, 1996 参照)。
【0024】
なお、シリカ系メソ多孔体が、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、シリカ系メソ多孔体は、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造とディスオーダの不規則的細孔配列構造の両方を有していてもよい。しかしながら、全ての細孔のうち80%以上はヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0025】
また、シリカ系メソ多孔体は、有機基を有するシリカ系メソ多孔体(以下、「有機化シリカ系メソ多孔体」という)であっても、有機基を有しないシリカ系メソ多孔体(以下、「非有機化シリカ系メソ多孔体」という)であってもよいが、金属ポルフィリンをより安定的に十分な吸着量で吸着させる観点から、有機化シリカ系メソ多孔体であることが好ましい。なお、有機基の有無にかかわらず、いずれのシリカ系メソ多孔体の場合においても、ケイ素以外の金属元素(例えば、Al、Zr、Ti等)を更に含んでいてもよく、また、少なくともその表面にはシラノール基(−SiOH基)が存在している。
【0026】
ここで、有機化シリカ系メソ多孔体とは、シリカ系メソ多孔体を構成するケイ素原子の少なくとも一部に、有機基が、炭素−ケイ素結合を形成することによって結合しているものをいう。有機基としては、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から1以上の水素がとれて生じる炭化水素基や、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルホン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等が挙げられる。
【0027】
上記非有機化シリカ系メソ多孔体を得る方法としては、例えば、米国特許5057296号公報に記載されているように、沈降性シリカや水ガラス等のシリカ原料を、界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウム塩等)が溶解した水溶液に添加して過熱する方法や、特開平8−67578号公報及び特開平8−277105号公報に記載されているように、層間にイオンを有する層状ケイ酸塩をアルキルトリメチルアンモニウムハライドでイオン交換した後、層間を架橋する方法等が挙げられる。
【0028】
上記有機化シリカ系メソ多孔体を得る方法としては、例えば、有機基とケイ素原子を含有し、有機基の1箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているケイ素化合物を含むシリカ原料を、界面活性剤と溶媒とを含む溶液中で反応させ、その後界面活性剤を除去する方法等が挙げられる。
【0029】
また、本発明におけるシリカ系メソ多孔体は、pKa5〜14のシリカ系メソ多孔体であることが好ましく、pKa5〜8のシリカ系メソ多孔体であることがより好ましい。かかるシリカ系メソ多孔体を用いることにより、金属ポルフィリンの安定性が向上する傾向がある。なお、シリカ系メソ多孔体のpKaは、指示薬法により測定可能である。
【0030】
ここで、シリカ系メソ多孔体のpKaを5〜14にする方法としては、シリカ系メソ多孔体の表面付近に存在するシラノール基をアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物等の塩基と反応させることにより、塩を生じさせる方法が好適である。例えば、シリカ系メソ多孔体を水酸化ナトリウムの0.1%エタノール溶液に接触させることにより、シラノール基の少なくとも1部を−SiONa基に変換させ、上記pKaにすることができる。
【0031】
なお、本発明においては、上記方法を適用して、非有機化シリカ系メソ多孔体のpKaを5〜14にすることが好ましいが、有機化シリカ系メソ多孔体については、上記の塩基と反応させる等の方法の適用は必ずしも必要ではない。これは、有機化シリカ系メソ多孔体は、それ自体でpKaが上記範囲内にある場合が多いためである。
【0032】
本発明にかかるメソ多孔体として好適に用いられる炭素系メソ多孔体は、炭素原子を必須成分として含む化合物の多孔体であり、具体的には、粒状や繊維状の活性炭、カーボンナノチューブ、規則メソ細孔性炭素等が挙げられる。
【0033】
炭素系メソ多孔体は、0.05〜2.5mL/gの細孔容積を有するものであることが好ましく、また、100〜4000m2/gのBET比表面積を有するものであることが好ましい。
【0034】
次に、本発明のポルフィリン複合体にかかる金属ポルフィリンについて説明する。
【0035】
本発明において、金属ポルフィリンとは、ポルフィリンを配位子とする金属錯体をいい、その化学構造は下記一般式(I)で表すことができる。
【0036】
【化1】
【0037】
上記一般式(I)において、ポルフィリン骨格に結合したR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は1価有機基を示す。また、隣り合う1価有機基はそれぞれ連結して2価有機基を形成していてもよい。なお、本発明においてポルフィリン骨格とは、上記一般式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12を除いた部分をいう。
【0038】
そして、本発明にかかる金属ポルフィリンは、有機化金属ポルフィリンであることが必要である。上記有機化金属ポルフィリンは、上記一般式(I)における、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12のうちの少なくとも1つが置換基を有していてもよい炭化水素基であり、1又は複数の炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、全ての炭化水素基が末端にカルボキシル基を含まないものである。上記有機化金属ポルフィリンがこのような炭化水素基の構成を有していることによって、有機化金属ポルフィリンの安定性及び吸着性を飛躍的に向上させることが可能となり、ポルフィリン複合体は酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる。
【0039】
また、本発明にかかる有機化金属ポルフィリンにおいて、上記一般式(I)におけるMは、Fe、Mn、Ru、Co等の遷移金属、Zn、Cu等の典型金属、Ca、Sr、Ba又はRaであることが必要である。また、本発明においては、MがFe、Zn、Mn、Ruであることが好ましく、Fe又はZnであることがより好ましく、Feであることが特に好ましい。本発明における有機化金属ポルフィリンが、このような金属原子を有していることによって、本発明のポルフィリン複合体は酸素等の吸着剤や酸化・還元触媒として十分に活用することが可能となる。
【0040】
上述の置換基を有していてもよい炭化水素基は、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基のいずれであってもよいが、有機化金属ポルフィリンをより安定的に十分な吸着量でメソ多孔体に吸着させることができることから、鎖状炭化水素基であることが好ましい。ここで、鎖状炭化水素基は飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基のいずれであってもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、上記炭化水素基における上記置換基としては、例えば、ヒドロキシル基やスルホン基等が挙げられる。また、炭化水素基の鎖中にエーテル結合やエステル結合等を有していてもよい。
【0041】
このような置換基を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、及び、下記一般式:
−R21−X−R22
[式中、R21はアルキレン基又はアルケニレン基を示し、R22はアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、Xはカルボニル基(−CO−)、オキシ基(−O−)又はオキシカルボニル基(−O−CO−)を示す。]
で表される炭化水素基等が挙げられる。
【0042】
また、本発明にかかる有機化金属ポルフィリンにおいて、上記炭化水素基の炭素数の総和は、8以上であることが必要であるが、より確実に十分な吸着量が得られることから、8〜24であることがより好ましく、16〜22であることが特に好ましい。
【0043】
本発明にかかる有機化金属ポルフィリンとしては、本発明の効果がより高い水準で十分に得られることから、ヘム又はヘミンに置換基を有していてもよい炭化水素基を導入して、炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、全ての炭化水素基が末端にカルボキシル基を含まない構成としたものが好ましく、特に下記一般式(II)で表されるヘムに下記一般式(III)で表されるフィトール(C20H40O)を導入した下記一般式(IV)で表される金属ポルフィリンが好ましい。
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
【0047】
なお、上記一般式(II)及び(IV)中のFeは、2価でも3価でもよい。このような有機化金属ポルフィリンは、安定的に十分な吸着量でメソ多孔体に吸着され、ポルフィリン複合体は酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる傾向がある。特に、Feが2価である場合に優れた酸素や一酸化炭素等の吸着性能が得られる傾向がある。
【0048】
次に、本発明のポルフィリン複合体について説明する。
【0049】
本発明のポルフィリン複合体は、上記メソ多孔体と該メソ多孔体に吸着した上記有機化金属ポルフィリンとを備えるものである。このようなポルフィリン複合体において、有機化金属ポルフィリンはメソ多孔体表面、特に細孔内壁表面に吸着しており、この吸着は、有機化金属ポルフィリン中の金属原子と、メソ多孔体の細孔内壁表面に存在する表面官能基との相互作用によって生じている。特に、メソ多孔体がシリカ系メソ多孔体の場合には、有機化金属ポルフィリン中の金属原子と、細孔内壁表面に存在するシラノール基(−SiOH基)、又は、−SiONa基等のシラノール基を塩基と反応させて生じた基、に含まれる酸素原子との間の相互作用によって吸着が生じている。このような状態で吸着されていることによって、金属ポルフィリンは十分な安定性を得ることができる。
【0050】
(ポルフィリン複合体の製造方法)
本発明のポルフィリン複合体の製造方法は、遷移金属、典型金属、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子と、ポルフィリン骨格に結合した少なくとも1つの炭化水素基とを有する、前記炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、全ての前記炭化水素基が末端にカルボキシル基を含まない、有機化金属ポルフィリンを、溶媒に溶解及び/又は分散させた溶液を調製する溶液調製工程と、前記溶液にメソ多孔体を懸濁させ、前記溶液中の前記有機化金属ポルフィリンを前記メソ多孔体に吸着せしめる吸着工程と、を含む方法である。
【0051】
また、本発明のポルフィリン複合体の製造方法は、前記溶液調製工程の前に、遷移金属、典型金属、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子を有する金属ポルフィリンに、少なくとも1つの炭化水素基を導入することによって、ポルフィリン骨格に結合した少なくとも1つの前記炭化水素基を有する、前記炭化水素基の炭素数の総和が8以上であり、且つ、全ての前記炭化水素基が末端にカルボキシル基を含まない、前記有機化金属ポルフィリンを得る導入工程を更に含んでいてもよい。
【0052】
本発明の製造方法にかかる導入工程において、上記金属ポルフィリンは、本発明のポルフィリン複合体の説明において既に説明した有機化金属ポルフィリンと同様のものであってもよく、炭化水素基の炭素数の総和が8以上の範囲外であったり、末端にカルボキシル基を含む炭化水素基を有する金属ポルフィリンであってもよい。そして、このような金属ポルフィリンに、置換基を有していてもよい炭化水素基を導入して有機化金属ポルフィリンを得ることができる。
【0053】
ここで、置換基を有していてもよい炭化水素基を導入する方法としては特に制限されず、例えば、エステル化、アミド化等の方法により導入することができる。
【0054】
本発明の製造方法にかかる溶液調製工程において、有機化金属ポルフィリンは、本発明のポルフィリン複合体の説明において既に説明した有機化金属ポルフィリンと同様に、金属原子としてFe、Zn、Ru、Mn、Cu、Coからなる群から選択される少なくとも一種の金属原子を有するものであることが好ましく、Fe又はZnを有するものであることがより好ましく、Feであることが特に好ましい。このような金属原子を有することによって、有機化金属ポルフィリンが安定的に十分な吸着量でメソ多孔体に吸着される傾向があり、得られるポルフィリン複合体は、酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる傾向がある。
【0055】
また、上記置換基を有していてもよい炭化水素基としては、本発明のポルフィリン複合体の説明において既に説明した炭化水素基が挙げられ、好適な炭化水素基としても既に説明したものと同様のものが挙げられる。このような炭化水素基を有する有機化金属ポルフィリンを用いることによって、有機化金属ポルフィリンの溶媒への溶解性を飛躍的に向上させることができるとともに、この溶媒への溶解性に対して、有機化金属ポルフィリンとメソ多孔体表面との親和性を向上させることが可能となり、十分な吸着量で金属ポルフィリンをメソ多孔体表面に吸着させることができる。そして、それによって得られるポルフィリン複合体は、酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる。
【0056】
上記溶媒調製工程において用いられる上記溶媒は、有機化金属ポルフィリンを溶解及び/又は分散することが可能であれば特に制限されないが、シリカ系メソ多孔体に固定する場合は、7以下の比誘電率を有するものであることが好ましく、2〜5の比誘電率を有するものであることがより好ましい。このような比誘電率を有する溶媒を用いることによって、有機化金属ポルフィリンのメソ多孔体への吸着量をより向上させることができる傾向があり、得られるポルフィリン複合体は酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる傾向がある。また、有機化金属ポルフィリンをより短時間で効率的にメソ多孔体に吸着させる観点から、溶媒は有機化金属ポルフィリンの少なくとも一部を溶解することが可能であることが好ましい。
【0057】
比誘電率が7以下である溶媒として具体的には、例えば、酢酸エチル(比誘電率:6.02)、クロロホルム(比誘電率:4.72)、ベンゼン(比誘電率:2.28)、ヘキサン(比誘電率:1.89)、トルエン(2.38)、ヘプタン(1.92)及び2種以上の溶媒を混合して比誘電率が7以下となるように調製した混合溶媒等が挙げられる。
【0058】
ここで、上記混合溶媒は、7以下の比誘電率を有する溶媒同士を混合したものでも、7を超える比誘電率を有する溶媒と7以下の比誘電率を有する溶媒とを混合することによって比誘電率が7以下となるように調製したものでもよい。このような混合溶媒としては、例えば、酢酸エチルとヘキサン、ヘキサンとクロロホルム等を、それぞれ所望の比率で混合した混合溶媒が挙げられるが、中でも酢酸エチルとヘキサンとを所望の比率で混合した混合溶媒が好ましく、酢酸エチル:ヘキサンの比率が体積比で3:97〜10:90となるように混合した混合溶媒が特に好ましい。このような混合溶媒は、複数の溶媒の混合比率によって比誘電率が調整可能であり、メソ多孔体や有機化金属ポルフィリンの種類等に合わせて最適な比誘電率を調整できる点で好ましい。
【0059】
また、本発明のポルフィリン複合体やその製造方法を食品製造の工程等に適用する場合には、発ガン性等に対する配慮の点でベンゼン以外の溶媒を用いることが好ましい。そして、このような問題がなく、ベンゼンと同等若しくはそれ以上の水準の十分な吸着量が得られることから、溶媒として、酢酸エチルとヘキサンとの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0060】
なお、本発明における比誘電率は、空洞共振器摂動法、同軸共振器法、誘電体共振器法等によって実際に測定してもよいが、文献値を採用してもよく、また、混合溶媒の場合には各溶媒の文献値から混合比に基づいて概算した値を採用してもよい。
【0061】
上記溶液調製工程は、有機化金属ポルフィリンを溶媒に溶解及び/又は分散させることが可能であれば、その方法や条件等は特に制限はなく、例えば、溶媒中に有機化金属ポルフィリンを投入し、15〜40℃程度で0.5〜16時間程度撹拌することによって行うことができる。
【0062】
また、上記溶液における有機化金属ポルフィリンの濃度は特に制限されないが、1mM以上とすることが好ましく、5〜20mMとすることがより好ましい。上記溶液を上記範囲の濃度として調製することによって、短時間で効率的に多くの金属ポルフィリンをメソ多孔体に吸着させることができる傾向がある。
【0063】
本発明の製造方法にかかる吸着工程において、上記メソ多孔体は、本発明のポルフィリン複合体の説明において既に説明したメソ多孔体が挙げられ、好適なメソ多孔体としても既に説明したものと同様のものが挙げられる。このようなメソ多孔体に金属ポルフィリンを吸着させることにより、優れた安定性と十分な吸着量とが得られ、ポルフィリン複合体は酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる。
【0064】
また、上記吸着工程において、その吸着方法や条件等は特に制限はなく、例えば、溶液中にメソ多孔体を投入し、15〜40℃程度で所定時間撹拌することによってメソ多孔体を溶液中で懸濁させることにより、有機化金属ポルフィリンをメソ多孔体に吸着せしめることができる。
【0065】
ここで、上記吸着工程における撹拌時間は特に制限されず、使用する溶媒や必要とする吸着量によって適宜調整することができる。なお、通常は長時間撹拌するほど吸着量が増加し、特定の吸着量に達すると平衡状態となる傾向がある。平衡状態に達するまでの時間や、そのときの吸着量等は使用する溶媒によって異なるが、上述したような比誘電率が7以下の溶媒を用いることによって、短時間で効率良く吸着量を増加させることができる傾向がある。
【0066】
また、本発明のポルフィリン複合体の製造方法は、上記吸着工程の後に、更に、遠心分離等を行ってポルフィリン複合体を溶液と分離して取り出す工程を有していてもよく、また、乾燥等を行って液体成分を除去した状態のポルフィリン複合体を得る工程を有していてもよい。
【0067】
以上説明したような本発明のポルフィリン複合体の製造方法により、金属ポルフィリンを安定的に十分な吸着量でメソ多孔体に吸着させた本発明のポルフィリン複合体を得ることができ、酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能となる。
【0068】
また、本発明のポルフィリン複合体は、酸素や一酸化炭素等の吸着剤として活用することが可能であり、この性質を利用して、例えば、人工血液、脱酸素剤、一酸化炭素除去による電極劣化防止剤等の用途への活用が期待される。
【0069】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(シリカ系メソ多孔体の合成)
乾燥水ガラス(SiO2/Na2O=2.00)を700℃で6時間、空気中で焼成し、ジケイ酸ソーダ(δ−Na2Si2O5)に結晶化させた。この結晶50gを500mLの水に分散させ、3時間攪拌した。その後、濾過して固形分を回収してカネマイトを得た。こうして得られたカネマイト50gを0.1Mのドコシルトリメチルアンモニウムクロライド1000mLに分散させ、70℃で3時間攪拌しながら加熱した。加熱初期の分散液のpHは12.3であった。その後70℃で加熱、攪拌しながら2Nの塩酸を添加して、分散液のpHを8.5に下げた。そして更に70℃で3時間加熱した後、室温まで放冷した。固形生成物を一旦濾過し、再び1000mLのイオン交換水に分散させ攪拌した。この濾過・分散攪拌を5回繰り返してから風乾した。風乾して得られた試料を、窒素中450℃で3時間加熱した後、空気中550℃で6時間焼成することにより、中心細孔直径約4nmのシリカ系メソ多孔体を得た。得られたシリカ系メソ多孔体を以下「FSM−22」とする。
【0071】
FSM−22について、粉末X線回折及び窒素吸着等温線の測定を行った。粉末X線回折は理学RAD−B装置を用い、窒素吸着等温線は液体窒素温度において定容積法により求めた。X線回折パターンにより、FSM−22は2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有していることがわかった。また、窒素吸着等温線からCranston−Inklay法で計算した細孔分布曲線によると、全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合は60%以上であることがわかった。
【0072】
[実施例1−1〜1−6]
(有機化金属ポルフィリンの作製)
ピリジン50mlに、ヘミン(和光純薬工業社製)0.46mmol及びフィトール(和光純薬工業社製)0.46mmolを入れた溶液を調製し、系内から水を抜くためにモレキュラーシーブ4A(商品名、和光純薬工業社製)2.5gを更に加えて、25℃で1時間撹拌した。この溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(東京化成工業社製)0.5gを加え、25℃で24時間撹拌することによってヘミンのカルボキシル基とフィトールの水酸基とのエステル化を行い、ヘミンの2つのカルボキシル基の両方にフィトールを導入した有機化金属ポルフィリン(以下、「ヘミン−フィトール」という)を生成せしめた。次いで、この溶液を減圧乾燥した後、ベンゼンを加えヘミン−フィトールを溶解してこれを濾過し、濾液を再び減圧乾燥してヘミン−フィトールを得た。得られたヘミン−フィトールの分子吸光係数を反応前と反応後のスペクトルから求めたところ、ピリジン中413nmにおいて11.3×104M-1cm-1であった。
【0073】
(ポルフィリン複合体の作製)
ヘミン−フィトールを、表1に示した各投入濃度となるようにベンゼンに投入して溶解させた溶液をそれぞれ調製した。この溶液2mlに100mgのFSM−22を懸濁させ、25℃で30分間撹拌することでヘミン−フィトールをFSM−22に吸着せしめた後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、413nmにおける吸光度をMPS−2000(島津製作所社製)を用いて測定し、上清中のヘミン−フィトールの濃度[mM](以下、「平衡濃度」という)及びFSM−22へのヘミン−フィトールの吸着量(FSM−22:100mg当りのヘミン−フィトールの吸着量[mg/100mg])を求めた。なお、このときのヘミン−フィトールの分子吸光係数は、先に求めたピリジン中413nmにおける分子吸光係数(11.3×104M-1cm-1)を用いた。その結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
[比較例1−1〜1−2]
(ポルフィリン複合体の作製)
ヘミンを、表2に示した各投入濃度となるようにピリジンに投入した溶液をそれぞれ調製した。この溶液2mlに100mgのFSM−22を懸濁させ、25℃で30分間撹拌することでヘミンをFSM−22に吸着せしめた後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、398nmにおける吸光度を測定し、上清中のヘミンの平衡濃度[mM]及びFSM−22へのヘミンの吸着量[mg/100mg]を求めた。なお、このときのヘミンの分子吸光係数は、反応後の分子吸光係数(εmM=113mM-1cm-1)を用いた(なお、反応前の分子吸光係数(εmM)は130mM-1cm-1である)。その結果を表2に示した。
【0076】
【表2】
【0077】
ここで、図1は、実施例1−1〜1−6及び比較例1−1、1−2における平衡濃度とFSM−22への金属ポルフィリンの吸着量との関係を示したグラフである。表1、2及び図1から明らかなように、ヘミンにフィトールを導入した金属ポルフィリンを用いることによって、通常のヘミンを用いた場合と比較して、安定的に十分な吸着量が得られることが確認された。
【0078】
[実施例2−1〜2−3]
(ポルフィリン複合体の作製)
有機化金属ポルフィリンとして亜鉛テトラフェニルポルフィリン(アルドリッチ社製、以下、「Zn−TPP」という)を、表3に示した各投入濃度となるようにクロロホルムに投入して溶解させた溶液をそれぞれ調製した。この溶液0.5mlに25mgのFSM−22を懸濁させ、室温で1時間撹拌することでZn−TPPをFSM−22に吸着せしめた後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、420nmにおける吸光度を測定し、上清中のZn−TPPの平衡濃度[mM]及びFSM−22へのZn−TPPの吸着量[mg/100mg]を求めた。なお、このときのZn−TPPの分子吸光係数は、10mMの濃度でクロロホルムに溶解した時の吸光度から求めた分子吸光係数(4.63×105M-1cm-1)を用いた。その結果を表3に示した。
【0079】
【表3】
【0080】
[比較例2−1〜2−2]
(ポルフィリン複合体の作製)
ヘミンを、表4に示した各投入濃度となるようにクロロホルムに投入した溶液をそれぞれ調製した。なお、このときの溶液は、いずれもヘミンの一部が溶解し、残部が分散した状態であった。この溶液0.5mlに25mgのFSM−22を懸濁させ、室温で1時間撹拌することでヘミンをFSM−22に吸着せしめた後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、398nmにおける吸光度を測定し、上清中のヘミンの平衡濃度[mM]及びFSM−22へのヘミンの吸着量[mg/100mg]を求めた。なお、このときのヘミンの分子吸光係数は、1.30×105M-1cm-1を用いた。その結果を表4に示した。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−2の吸着量の結果から明らかなように、金属ポルフィリンとしてヘミンを用いた場合と比較して、Zn−TPPを用いた場合の方が安定的に十分な吸着量が得られることが確認された。
【0083】
[実施例3]
(ポルフィリン複合体の作製)
ヘミン−フィトールを、投入濃度8.2mMでベンゼン10mlに投入して溶解させた溶液を調製した。この溶液にヒドラジン0.1mlを加えることでヘミンの有する3価のFe(Fe3+)を2価のFe(Fe2+)に還元し、次いで500mgのFSM−22を懸濁させ、25℃で30分間撹拌することでヘミン−フィトールをFSM−22に吸着せしめた。その後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、398nmにおける吸光度を測定し、FSM−22へのヘミンの吸着量[mg/100mg]を求めたところ、7mg/100mgであった。なお、このときのヘミンの分子吸光係数は、εmM=130mM-1cm-1(文献値)を用いた。
【0084】
(酸素吸着量評価試験)
実施例3で得られたポルフィリン複合体について、減圧乾燥によって液体成分を除去した後、酸素100torrを加え、圧力変化からポルフィリン複合体の酸素吸着量を求めた。また、FSM−22単独の場合の酸素吸着量についても上記と同様の方法によって求めた。その結果として、時間と酸素吸着量との関係を図2に示した。図2から明らかなように、FSM−22単独の場合には、酸素の吸着が見られず、20分後の酸素吸着量が0molであったのに対して、実施例3のポルフィリン複合体は酸素の吸着が見られ、20分後の酸素吸着量が17×10-6molであった。以上の結果から、本発明のポルフィリン複合体が酸素吸着剤として十分に活用することが可能であることが確認された。
【0085】
[実施例4]
(ポルフィリン複合体の作製)
実施例3と同様にして作製したヘミン−フィトールを、投入濃度8mMでベンゼンに投入して溶解させた溶液を調製した。この溶液10mlに100mgのFSM−22を懸濁させ、25℃で30分間撹拌することでヘミン−フィトールをFSM−22に吸着せしめた。その後、7000rpmで20分間遠心分離を行ってポルフィリン複合体と上清とを得た。得られた上清について、398nmにおける吸光度を測定し、FSM−22へのヘミンの吸着量[mg/100mg]を求めたところ、12mg/100mgであった。
【0086】
(一酸化炭素吸着量評価試験)
実施例4で得られたポルフィリン複合体について、減圧乾燥によって液体成分を除去した後、該ポルフィリン複合体45mgを水10mlに分散させた分散液を調製した。この分散液にヒドラジン0.5mlを加えることで、ポルフィリン複合体中のヘミンの有する3価のFe(Fe3+)を2価のFe(Fe2+)に還元し、ヘム−複合体を得た。このヘム複合体に、一酸化炭素を5分間バブリングした。実施例4で得られたポルフィリン複合体中のヘミンの還元前及び還元後、並びに、一酸化炭素をバブリングした後の、それぞれのポルフィリン複合体についてスペクトルを測定した。その結果として、波長と吸光度との関係を図3に示した。なお、上記各段階におけるポルフィリン複合体のスペクトルは、図3中でそれぞれヘミン(Fe3+)、ヘム(Fe2+)及びCO−ヘム(Fe2+)として表した。図3によれば、ヘミン(Fe3+)を還元して得られたヘム(Fe2+)は、ヘモグロビンに似た吸収極大を示している。また、このヘム(Fe2+)に一酸化炭素をバブリングすることでスペクトルが変化しており、一酸化炭素がヘムに吸着されていることが確認された。以上の結果から、本発明のポルフィリン複合体が一酸化炭素吸着剤として十分に活用することが可能であることが確認された。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属ポルフィリンを安定的に十分な吸着量で吸着させた、酸素等の吸着剤として十分に活用することが可能なポルフィリン複合体を提供することが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、金属ポルフィリンを安定的に十分な吸着量で吸着させた本発明のポルフィリン複合体を効率的且つ確実に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1(1−1〜1−6)及び比較例1(1−1、1−2)における金属ポルフィリンの平衡濃度と吸着量との関係を示したグラフである。
【図2】実施例3で得られたポルフィリン複合体及びFSM−22における酸素吸着量と時間との関係を示したグラフである。
【図3】実施例4で得られたポルフィリン複合体における波長と吸光度との関係を示したグラフである。
Claims (7)
- 前記一般式(IV’)におけるMが、Fe又はZnであることを特徴とする請求項1記載のポルフィリン複合体。
- 前記一般式(IV’)におけるMが、Fe又はZnであることを特徴とする請求項3記載のポルフィリン複合体の製造方法。
- 前記一般式(IV’)及び(II’)におけるMが、Fe又はZnであることを特徴とする請求項5記載のポルフィリン複合体の製造方法。
- 前記溶媒が、7以下の比誘電率を有するものであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のポルフィリン複合体の製造方法。
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