JP4536961B2 - 管渠の改修工法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は管渠の改修工法に関し、更に詳しくは、管渠内に背割壁を構築し、上下流の片側を交互に締め切ってドライエリアを形成する工程を含む管渠の改修工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
管渠内に背割壁を構築し、上下流の片側を交互に締め切ってドライエリアを形成して、このドライエリアで管渠内を改修する工法が知られている。
すなわち、従来工法では、図9に示したように、立壁61aと底版61bとが一体に形成されたプレキャストコンクリート部材61の複数を管渠60の内部に搬入し、これらを管渠軸方向に連設し、底版61bが埋設するようにコンクリート62を打設して根固めを行ない、これにより背割壁を構築するものであり、この根固め部分に排水のための管体63,64も埋設される。そして、背割壁の上下流を交互に片側ずつ締め切ってドライエリアを形成し、このドライエリアで管渠内の改修工事を行なうものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来工法におけるプレキャストコンクリート部材61は、作業員が人力で容易に動かすことができるほど軽量ではなく、しかも、外形が大きなものであるため、移動、設置作業が容易ではない。したがって、プレキャストコンクリート部材61を管渠内に運び込むためには大口径の搬入口を必要とするが、この搬入口は、既設の開口部を使用するか、あるいは、管渠のいずれかの箇所を壊して新たに構築されるものである。しかしながら、管渠を壊して開口部を形成することが実質的に不可能な場合もあり、たとえ実施可能であったとしても、そのために手間と施工コストが嵩む欠点がある。
【0004】
また既設の開口部を搬入口として利用する場合にも、プレキャストコンクリート部材61を搬入口から改修箇所まで搬送するために走行路が必要であり、さらに、プレキャストコンクリート部材61を改修箇所まで搬送した後は、これを定置するために昇降機などの設備を必要とするので、これらの点からも手間と施工コストは嵩む。
【0005】
本発明の課題は、改修用の部材を管渠内に運び込むために大口径の搬入口を必要とせず、例えば、マンホールなどの小口径の既設開口部を搬入口として利用可能と為し、管渠内における部材の定置作業や組立作業も簡略な設備のみで実施可能にする管渠の改修工法を提供することにある。
【0006】
本発明の別の課題は、管渠内における背割壁の構築を優れた作業性で実現可能にする管渠の改修工法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、地上からの通路としてマンホールを備えた管渠内に背割壁を構築し、上下流の片側を締め切ってドライエリアを形成し、このドライエリアで管渠内を改修する工法において、マンホールを通過可能な大きさに分割された軸部材を管渠内に搬入し、該軸部材を管渠内またはマンホール途中において連結して支柱ユニットを組み立て、該支柱ユニットの複数を所定間隔で前記管渠内に立設して固定し、隣り合う前記支柱ユニット間に板材を係止させて壁体を形成し、該壁体の上下流を片側ずつ交互に締め切って、前記支柱ユニット下端の管渠内面における固定部にコンクリートを打設して根固めする工程を含むことを特徴とする管渠の改修工法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
前記支柱部材は、管渠内に搬入されるまえに予めガイド部材が設けられた軸部材で形成することが好ましく、この場合、前記板材を該ガイド部材に沿って摺動させることにより前記支柱部材間に嵌め込むことが可能になる。
【0009】
前記支柱ユニットは、この支柱ユニット自体を立設させるために管渠内面に固定する部位と、板材の一端辺に係止して支持する部位とを備え、これらの部位の両方または片方の所定箇所でマンホールを通過可能な大きさに切断されて、この切断部で連結可能に形成されたものであれば良い。すなわち、支柱ユニットは、例えば、管渠内で材軸がほぼ垂直に配置される縦材と、この縦材の下端において管渠内面に定置されて固定され得る下端部と、縦材の軸方向両側において板材の端辺に係止するガイド部とを備えるよう構成することができて、さらに、縦材及び下端部の両方または片方の所定箇所でマンホールを通過可能な大きさに切断されて、この切断部で連結可能に形成されたものであれば良い。
【0010】
このような支柱ユニットは、マンホールなどの小口径の既設開口部を搬入口として利用可能にするので、管渠のいずれかの箇所を壊して新たに大口径の搬入口を構築する必要がなく、そのための手間と施工コストを削減できる。
また支柱ユニットは、このように小口径の既設開口部からも搬入可能な部材から構成されるので、図9に示した従来のプレキャストコンクリート部材61などに比較して軽量であり、管渠内における部材の定置作業や組立作業も簡略な施工設備のみで実施可能になる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0012】
本発明は、地上からの通路としてマンホール11を備えた管渠10内に背割壁を構築し、上下流の片側を締め切ってドライエリアを形成し、このドライエリアで管渠内を改修する工法であって、地上において支柱部21及び固定部23をマンホール11を通過可能な大きさに形成し、これら支柱部21及び固定部23をマンホール11を通して管渠10内に搬入し、管渠10内またはマンホール11途中で組み立てて支柱ユニット20を形成し、この支柱ユニット20の複数を所定間隔で管渠10内に立設して固定し、隣り合う支柱ユニット20間に板材27を嵌め込んで壁体を形成しこれを背割壁と為し、この背割壁の上下流を片側ずつ交互に締め切って、支柱ユニット20下端の管渠内面における固定部にコンクリートを打設して根固めする工程を含むことを特徴とする。
【0013】
さらに詳細に説明すれば、支柱ユニット20は、軸部材としてのH形鋼からなる固定部23と支柱部21とを継手板22及びボルトにより連結して形成するものであり、支柱部21は、図1及び図2に示したように、材軸が管渠10内でほぼ垂直に配置される縦材21aと、この縦材21aの下端に一体に設けられて管渠内面に当接されるブラケット21bと、縦材21aの軸方向両側に延設されて溝21dを形成するガイド部材、すなわち、縦リブ21cとを備える。したがって、管渠10の断面が円形の場合、ブラケット21b及び固定部23は円弧状に形成されたものを使用し、断面が矩形の場合、直線状に形成されたものを使用する。
またマンホール11から管渠10内に建設資材を吊り下ろすため、天井にレール13を固定し、ここに手動ホイストクレーン14を設置する。
【0014】
以上のようにマンホール11途中で支柱ユニット20を組み立てた場合、支柱ユニット20を手動ホイストクレーン14により管渠10内に吊り下ろし、この支柱ユニット20の複数を1000〜1500mm程度の間隔で管渠10内に立設し、アンカーなどの固定手段により管渠10内面に固定する。
【0015】
次に、隣り合う支柱ユニット20の縦材21aの上端間を連結部材24により接続し、このとき、連結部材24は、溝21dの上端を塞がないように配置する。そして、隣り合う支柱ユニット20の溝21dと溝21dに板材27を嵌めて、この板材27の複数を順次落とし込むことにより背割壁を形成する。
図3において、差し筋27aを設けた板材27は、鋼板から形成することが好ましく、これ以外の板材27は、プレキャストコンクリート板から形成することが好ましい。また板材27は、板材27どうしが当接する辺にゴムパッキングなどの防水材を設けたものを使用する。
なお、板材27は長さが1000〜1500mm程度、幅が300〜500mm程度のものを使用する。また厚さは、プレキャストコンクリート板の場合30〜50mm程度、鋼板の場合3〜6mm程度のものを等辺山形鋼等で補強して使用する。
【0016】
支柱ユニット20の溝21dのすべてに板材27を落とし込み背割壁を形成したら、この背割壁の左側31aの上下流を締め切って水の流れを止め、左側31aの管渠底面に水中コンクリートを打設し、図3に示したような根固め部33を形成する。また背割壁の右側31bの上下流も同様に締め切って水の流れを止め、管渠底面に水中コンクリートを打設し、図4に示したように、根固め部35を形成する。なお、水中コンクリートの打設時には水の流れを止めれば良く、特に、上下流を締め切った側から排水する必要はない。
【0017】
次に、背割壁の右側31bの上下流を締め切り、下水が背割壁の左側31aのみに流れるようにして、この右側31bから下水を排水してドライエリアを形成する。そして、このドライエリアにおける根固め部35に鉄筋を組み立てて、ここにコンクリートを打設すると、図5に示したようにインバート37が形成できる。このインバート37からは、管渠10の内面に沿って差し筋38を突出させる。
【0018】
図6に示したように、インバート37の施工後、ここに足場43を設置し、管渠10の内面に沿って鉄筋(図示せず)を組み立て、ホールインアンカー42またはケミカルアンカーなどにより型枠39を固定し、型枠39内にコンクリートを打設する。
コンクリートが硬化してライニング41が出来上がったら、型枠39を外して上下流の締め切りを撤去し、今度は、背割壁の左側31aの上下流を締め切り、下水が背割壁の右側31bのみで流れるようにして、図7に示したように左側31aから下水を排水してドライエリアを形成する。背割壁の左側31aでも、同様に、足場の設置工程、鉄筋の組み立て工程、型枠の固定工程、コンクリートの打設工程を行ってライニング41を形成する。
ライニング41が完成したら、最後に、上下流の締め切りを撤去し、インバート37から突出している背割壁の板材27と支柱部21を撤去すれば、管渠10内の改修工事は完了する。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の管渠の改修工法では、マンホールを通過可能な大きさに分割された軸部材を管渠内に搬入し、軸部材を管渠内またはマンホール途中において連結して支柱ユニットを組み立て、支柱ユニットの複数を所定間隔で管渠内に立設して固定し、隣り合う支柱ユニット間に板材を係止させて壁体を形成するので、従来のプレキャストコンクリート部材を用いる工法のように大口径の搬入口を必要とせず、管渠内における部材の定置作業や組立作業も簡略な設備で実施可能になる。
【0020】
また本発明では、分割された軸部材を連結した支柱ユニットと、隣り合う支柱ユニット間に係止する板材とを主要部材として背割壁を構築するので、管渠内における部材の定置作業や組立作業も簡略な設備のみで実施可能になり、背割壁の構築工程は、優れた作業性で実現可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管渠の改修工法における一工程を説明するため管渠をほぼ垂直方向に切断して示した概略断面図である。
【図2】図1の工程に続く工程を説明するため管渠をほぼ水平方向に切断して示した概略断面図である。
【図3】図2において一点鎖線に沿って切断し、矢印A−A方向から見た概略断面図である。
【図4】図3の工程に続く工程を示す概略断面図である。
【図5】図4の工程に続く工程を示す概略断面図である。
【図6】図5の工程に続く工程を示す概略断面図である。
【図7】図6の工程に続く工程を示す概略断面図である。
【図8】図7の工程に続く工程を示す概略断面図である。
【図9】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 管渠
11 マンホール
20 支柱ユニット
21c 縦リブ(ガイド部材)
27 板材
Claims (2)
- 地上からの通路としてマンホールを備えた管渠内に背割壁を構築し、上下流の片側を締め切ってドライエリアを形成し、このドライエリアで管渠内を改修する工法において、
マンホールを通過可能な大きさに分割された軸部材を管渠内に搬入し、該軸部材を管渠内またはマンホール途中において連結して支柱ユニットを組み立て、該支柱ユニットの複数を所定間隔で前記管渠内に立設して固定し、隣り合う前記支柱ユニット間に板材を係止させて壁体を形成し、該壁体の上下流を片側ずつ交互に締め切って、前記支柱部材下端の管渠内面における固定部にコンクリートを打設して根固めする工程を含むことを特徴とする管渠の改修工法。 - 前記支柱ユニットは、管渠内に搬入されるまえに予めガイド部材が設けられた軸部材で形成し、前記板材を該ガイド部材に沿って摺動させることにより前記支柱ユニット間に嵌め込むことを特徴とする請求項1記載の管渠の改修工法。
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