JP4535266B2 - Dnaコンピュータ技術による核酸の定量検出方法 - Google Patents

Dnaコンピュータ技術による核酸の定量検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、DNAコンピュータ技術による核酸の定量検出方法に関する。
DNAコンピュータの研究は、Adlemanが1994年に発表した論文を契機に始まった。Adlemanは計算機科学において非常に難しいとされるNP完全問題の一つである有向ハミルトン経路問題(HPP:Hamiltonian Path Problem)に関して、DNA分子を使って解くことが可能であることを示した。NP完全とは問題のスケールに対して指数関数的に計算時間が増大するようなクラスに属する数学的問題のことである。Adlemanが発表した翌年にはLiptonがDNA分子を使ったより一般的なNP完全問題である充足可能性問題の解法を示した。その後もDNAハイブリダイゼーションの自律性、超並列性を利用した多くの計算アルゴリズムが開発されてきた。その他、DNA分子を使った分子メモリやDNAのアセンブル技術が開発され、DNAコンピュータの研究はDNA分子の持つ特異的分子認識・自律性・超並列性を利用したナノテクノロジーにも広がりつつある。
DNAコンピュータは、生体高分子からなるコンピュータなので生体由来のサンプルと親和性がある。陶山らは数学的問題だけでなく、遺伝子発現解析のようなゲノム情報解析を行う一般的な計算パラダイムを提案し、数学的問題とゲノム情報解析を同一のハードウェアで解くことができるDNAコンピュータの開発に成功した。またShapiroらは遺伝子発現解析と治療薬の放出を同時に行うことができる自律型DNAコンピュータを発表した。
また、DNAコンピューティング技術の遺伝子解析への応用をいち早く発想した日本の陶山らは特許文献1および2にあるように、それまでのDNAコンピューティング技術の検討の中から得られた人工配列の有用性に注目して、天然の遺伝子配列を特性の揃った人工配列に変換して検出するマルチプレックス法を提案した。さらに引き続き特開2002-181813にあるように遺伝子と対応づけられて抽出された人工配列の論理演算、すなわち遺伝子の論理演算による遺伝子解析や疾患関連SNPの組み合わせを電子計算機を使わずに見つける方法を提案した。同時期に特開2002-318992にあるようにDNAコンピュータのハイブリッドアーキテクチャと、遺伝子発現計測に応用した場合の形態、実験方法をも提案している。陶山らの提案したマルチプレックス検出用プローブは、アンカーDNA、アダプターDNAと呼ばれる2つのDNAからなり、発現計測ではアダプターDNA側に下流プローブ配列とDCN配列を増幅するためのDNA配列が集中して配置されているという特長をそなえている。
ゲノムの解明とともに網羅的な定量的遺伝子発現解析はますます重要なっている。その技術の一つであるマイクロアレイは進歩しつつあるが、プローブに用いる配列の設計上、性質の不明な配列を使わなければならないので、発現量の相対的な変化しか計測することができない。最終的に、特異的細胞系譜や、発生過程、疾患の状態のそれぞれの状況に特異的なトランスクリプトームの網羅的な解析のためには、マイクロアレイのような網羅的解析とRT-PCRのようなRNA絶対量定量を同時に高効率化するための方法の開発が必要である。
DNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法は、汎用性、並列性、定量性、および演算性を兼ね備えている。それは次のような理由のためである。DNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法では遺伝子の発現量情報を解析に適したDCN配列の量に置き換える(エンコーディングと呼ぶ)。DCN配列は、融解温度がそろえてあり、異なる配列間でのハイブリダイゼーションや自己安定二次構造を取り難い正規直交配列を使用している。これまでに、これらのDCN配列は一様に増幅することが実験的に確認されている。また、DCN配列は、正確に検出されることが確認されている。したがって、原理的にDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法は、従来のDNAチップやマイクロアレイと比べて汎用性、定量性、高感度性に関して優れている。また、DNAチップやマイクロアレイには不可能な演算も、DNAコンピュータなら可能である。
上記DNAコンピュータ技術においては、遺伝子の発現量は、その量比に応じてDCN配列に置き換えられると考えられていた。しかし、これまでのところ、DNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法では、遺伝子の発現量を十分な精度で定量することが困難であった。
特許第3103806号公報 国際公開第01/025481号パンフレット
本発明は、DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析を行うことを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明者らは、一連のプロトコルのうち、増幅やキャピラリアレイによる検出の工程の定量性は実験的に検証されていることから、残る工程であるエンコーディングに注目した。本研究では、遺伝子の発現量情報がDCN配列へ置き換えられる効率を測定することにした。さらに、その特性を解析し、プロトコルに反映させた上で、新たにDNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法を行うことに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、試料中の標的核酸を定量する方法であって、
1標的核酸および該標的核酸の一部と同じ配列を有し、かつ濃度が既知の対照核酸を、それぞれDCN配列を有する核酸にエンコードする工程と、
2)前記標的核酸および対照核酸からエンコードされたDCN配列を有する核酸を、それぞれ増幅する工程と、
3)前記増幅されたDCN配列を有する核酸を、それぞれ定量的に検出する工程と、
4)前記1)の工程の検出値を式(前記標的核酸の検出値)/(前記対照核酸の検出値)によって補正値を得る工程と;
5)前記補正値を使用して定量値を得る工程と、
を含む方法を提供する。
また、本発明は、試料中の標的核酸を定量する方法であって、
1)標的核酸および該標的核酸の一部と同じ配列を有し、かつ濃度が既知の対照核酸をDCN配列を有する核酸にエンコードする工程と、
2)前記標的核酸および対照核酸からエンコードされたDCN配列を有する核酸を、それぞれ増幅する工程と、
3)前記増幅されたDCN配列を有する核酸を混合し、該DCN配列を有する核酸に相補的な配列を有するプローブに対して競合的にハイブリダイゼーションさせて、それぞれのハイブリダイズした量を定量的に検出する工程と、
4)前記3)の工程の検出値を式(前記標的核酸の検出値)/(前記対照核酸の検出値)によって補正値を得る工程と;
5)前記補正値を使用して定量値を得る工程と、
を含む方法を提供する。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記工程2)の後に増幅されたDCN配列を有する核酸をデコードする工程をさらに含み、前記工程3)の検出は、デコードされた配列を検出することによって行われる方法を提供する。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記エンコードする工程は、以下の工程によって行われる方法を提供する:
1)前記標的核酸中の部分配列に相補的な上流プローブ配列を有する標識されたアンカー核酸分子と、前記標的核酸の部分配列に相補的な配列を有する下流プローブ配列およびDCN配列を有するアダプター核酸分子を前記試料と混合して、前記標的核酸または対照核酸に前記下流プローブ部分および前記上流プローブ部分をハイブリダイズさせる工程と、
2)前記標的核酸または対照核酸にハイブリダイズした下流プローブ部分および上流プローブ部分をそれぞれ連結させて、アダプター核酸分子およびアンカー核酸分子の連結分子を生成させる工程と、
3)前記連結分子を回収して、DCN配列を有する核酸を得る工程。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記標的核酸として複数の標的核酸群を使用することにより、複数の標的核酸を同時に定量することを特徴とする方法を提供する。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記対照核酸として複数の濃度の対照核酸を使用して、該複数の対照核酸について補正値を得ることを特徴とする方法を提供する。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記検出工程は、蛍光標識を検出することによって行われることを特徴とする方法を提供する。
さらに、本発明は、上記方法であって、前記増幅されたDCN配列の検出は、DNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションによって行われる方法を提供する。
本発明の方法は、従来のDNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法において、標的核酸で得られた定量結果を、予め濃度を測定した対照核酸を使用して得られた定量結果で補正することにより、より正確な定量結果を得ることができる方法である。ここで、上記対照核酸は、標的核酸の一部と同じ配列を有する核酸をいう。
以下、図面を参照して、本発明の方法を説明する。
DNAコンピュータ技術を利用した核酸定量法の原理
DNAコンピュータ技術による標的核酸の定量的な検出は、ステップ1からステップ4の4つのステップからなる(図1)。
ステップ1では、エンコーディングを行う。すなわち、試料中の標的核酸が、DCN配列を有する核酸(以下、DCN核酸ともいう)に変換される。具体的には、まず標的核酸中の部分配列に相補的な上流プローブ配列を有する標識されたアンカー核酸分子と、標的核酸の部分配列に相補的な配列を有する下流プローブおよびDCN配列を有するアダプター核酸分子を試料と混合して、標的核酸にアダプター核酸分子の下流プローブ部分およびアンカー核酸分子の上流プローブ部分のハイブリダイズさせる工程を行う。
ここで、本明細書において使用する「核酸」とは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNAおよび合成RNAを含む全てのDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸およびS-オリゴ核酸などの人工合成核酸を含む。また、本明細書において「核酸」、「核酸分子」および「分子」とは交換可能に使用され得る。定量すべき標的核酸は、任意の配列を有する任意の核酸であり得るが、遺伝病の原因遺伝子、癌関連遺伝子、又はウイルス由来の核酸など疾病のマーカーとなり得る核酸は、とりわけ好ましい標的核酸である。それ故、試料には、細胞、組織、血液、尿、唾液等が含まれるが、核酸を含む任意の試料を使用し得る。試料が固体であれば、酵素処理、界面活性剤又は有機溶媒の添加等の適切な方法で液体に溶解させればよい。また、試料は、適切に生成して核酸以外の不純物を取り除いておくことが好ましい。上記の他にも、本方法の実施に当たって標的核酸は、随意に変更することができる。例えば細胞を株化して大量培養したり、抹消血を多めに取得したりすることで本方法に必要なヒトゲノムDNAを大量に調製することにより、直接ゲノムDNAから検出反応を始めることができる。また、これに代わって、少量のゲノムDNAを取得し、アマーシャムバイオサイエンス社の試薬キットGenomiPhiのようなWGA法(Whole Genome Amplification )で、非特異的にゲノムDNAを増幅した試料から検出反応を始めてもよい。また、上記標的核酸の濃度は、任意の最終濃度で使用することができる。たとえば1aM〜1nM、0.1pM〜100pM、0.1pM〜10pM、0.1pM〜1pMの範囲の最終濃度が含まれる。本発明の方法に適した標的核酸濃度は、使用する試料に応じて当業者であれば容易に決定することができるであろう。
本発明の方法では、アンカー核酸分子の上流プローブおよびアダプター核酸分子の下流プローブの配列として標的核酸同定配列群を利用する。またアダプター核酸分子のDCN配列として、一様な増幅が可能なDCN配列群を利用する。ここで、標的核酸同定配列とは、標的核酸配列の一部に相補的であって、標的核酸に対して高い特異性でハイブリダイズすることができる配列をいい、たとえば連続一致長、Nearest-Neighbor法による融解温度予測、ハミング距離、二次構造予測の計算を行うことにより設計される。この標的核酸同定配列群の長さは特に限定されないが、たとえば30塩基長以上であることが好ましい。
また、一様な増幅が可能なDCN配列は、たとえば図2に示したように、SD、D1、D2、EDからなる4つの正規直交配列からなっていてもよいが、その目的に応じて3つの正規直交配列からなる配列(たとえば、SD、D1、ED)であってもよい。正規直交配列とは、たとえば乱数から得られた23塩基長のDNA配列に対して連続一致長、Nearest-Neighbor法による融解温度予測、ハミング距離、二次構造予測の計算を行うことにより設計される。正規直交化配列は、核酸分子の配列であって、その融解温度が均一であるもの、即ち融解温度が一定範囲内に揃うように設計された配列であって、核酸分子自身が分子内(intramolecular)で構造化して、相補的な配列とのハイブリッド形成を阻害することのない配列であり、尚且つこれに相補的な塩基配列以外とは安定したハイブリッドを形成しない塩基配列を意味する。1つの正規直交化配列群に含まれる配列は、所望の組み合わせ以外の配列間および自己配列内において反応が生じ難いか、または反応が生じない。また、正規直交化配列は、PCRにおいて増幅させると、たとえば上述のクロスハイブリダイゼーションのような問題に影響されずに、当該正規直交化配列を有する核酸分子の初期量に応じた量の核酸分子が定量的に増幅される性質を有している。上記のような正規直交化配列は、H. Yshida and A. Suyama, "Solution to 3-SAT by breadth first search", DIMACS Vol.54 9-20(2000)および特願2003-108126に詳細が記載されている。これらの文献に記載の方法を使用して正規直交化配列を設計することができる。
また、アンカー核酸分子には、その3’端にビオチンなどで標識をすることができるが、上記標識は、ビオチンだけでなく、ビオチンや抗体など、特定の物質と特異的に結合し得る任意の物質であってもよい(たとえば、ビオチンであれば、ストレプトアビジンと特異的に結合できる)。
本発明の標的核酸のエンコード工程は、種々の方法を使用して行うことができる。たとえば、以下の工程によってDCN配列を有する核酸にエンコードすることができるが、当業者であれば、当該技術分野において既知のいずれかの方法を使用してDCN配列を有する核酸を得ることができるであろう。
たとえば、まず標的核酸を含む試料溶液を調製しておく。次いで、上記アンカー核酸分子およびアダプター核酸分子を試料と混合する。このとき、アンカー核酸分子の上流プローブとアダプター核酸分子の下流プローブに相補的な配列を有する標的核酸が存在すると、標的核酸に上流プローブ部分および下流プローブ部分がハイブリダイズすることになる。また、上記試料の混合は、ハイブリダイズに適した条件下で行うことが好ましい。たとえば、以下の実施例に示した条件でハイブリダイズを行うことができるが、使用する緩衝液の種類、温度条件、時間等のハイブリダイゼーションの条件は、標的核酸の種類に応じて適宜選択し得ることが当業者には自明であろう。
次いで、標的核酸にハイブリダイズした下流プローブ部分および上流プローブ部分を、それぞれ連結させて、アダプター核酸分子およびアンカー核酸分子の連結分子を生成させる。たとえば、上記ハイブリダイゼーションを行うと、下流プローブ部分および上流プローブ部分が対応する標的核酸に結合するので、リガーゼ等を作用させてライゲーション反応をおこなうことにより、連結部を介してアダプター核酸分子およびアンカー核酸分子を連結させることが可能となる。
両分子群を連結するために使用し得る好適なリガーゼには、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)のTaqDNAリガーゼが含まれるが、これに限定されず、標的核酸の種類に応じて任意のDNAリガーゼ又はRNAリガーゼを使用し得る。また、酵素的な手法に変えて、化学的な手法で両分子群を連結してもよい。
次いで、連結されたアダプター核酸分子およびアンカー核酸分子を回収する。たとえば、アンカー核酸分子をビオチンで標識した場合、ストレプトアビジンを表面に結合した磁気ビーズを使用することにより、アンカー核酸分子のビオチン標識を介して連結オリゴヌクレオチドを抽出することができる。このとき、ライゲーション反応において未反応のアンカー核酸分子もビーズに捕獲されるが、以後の反応には関係しない。また、上記回収には、固相担体を用いる方法が極めて好ましいが、固相化すべき固相担体には、上記磁気ビーズの他、ストレプトアビジンを表面に固定したマルチタイタープレートにより溶液から分離してもよい。また、アンカー核酸分子の標識を変えることにより、その標識をとらえる固相表面に吸着し、回収してもよい。シリコンやガラス等の基板、その他の粒子が含まれるが、これらに限定されない。
次いで、上記エンコーディングステップにおいて回収された、アダプター核酸分子およびアンカー核酸分子の連結分子のDCN配列を増幅する(図1:増幅ステップ)。まず、対応する標的核酸から連結されたアダプター核酸分子およびアンカー核酸分子を解離させる。この操作によって、最初の溶液に標的核酸が存在していれば、それに対応するDCN配列を含んだオリゴヌクレオチドが抽出される。標的核酸と連結オリゴヌクレオチドの解離は、たとえば図3に示したように、ライゲーション反応の鋳型となったcDNAを30塩基長の標的核酸同定配列を持つ合成DNA(たとえば、以下に記載の対照核酸)を過剰に加え、鎖交換を行うことによって行うことができる。また、化学的変性及び熱的変性を含む変性処理によって達成することができる。たとえば、化学的変性によって連結されたオリゴヌクレオチドを解離させる場合には、アルカリ変性などの当業者に周知の処理を行えばよい。熱的変性により連結オリゴヌクレオチドを解離させる場合には、生理的条件下では、85℃以上、好ましくは90℃以上の温度にすればよいが、当業者であれば、適切な解離方法を選択し得るであろう。
続いて、解離した連結オリゴヌクレオチドのDCN配列を鋳型とした増幅反応を行う。たとえば、SD配列とEDに相補な配列(rED)をプライマーとして、得られた連結分子のDCN配列を鋳型としてPCR増幅する。このとき、プライマーの5'端には、適切な標識物質(たとえばビオチン)で標識しておくことが好ましい。ビオチン修飾しておくことにより、PCR産物にもビオチン修飾が取り込まれることを利用して、ストレプトアビジン被覆ビーズを使用してPCR産物を回収することができる。また、1本鎖の増幅産物が得られる増幅方法として、アシンメトリックPCRによる増幅を行ってもよい。たとえば、SD配列と相同なプライマーと、ED配列に相補的なプライマーを使用し、この連結オリゴヌクレオチドを鋳型としてPCR増幅反応を行う。このとき、過剰に加えたプライマーの5'端を適切な標識物質(たとえばFITCなどの蛍光標識)で標識しておくこともできる。
次いで、増幅されたDCN配列をデコーディングする(図1:ステップ3)。このデコーディングステップは、図2に示したようにDCN配列として4種の正規直交配列(たとえば、SD、D1、D2、ED)使用した場合に必要とされるが、DCN配列として3種の正規直交配列(たとえば、SD、D1、ED)を使用した場合には、省略することができる。
デコーディング工程では、まず、増幅されたDCN核酸を変性させて1本鎖にすることが必要であろう。これは、次の方法によって実現できる。例えば、SD配列を含むプライマーの5’端にビオチンを標識しておく。こうすれば上記増幅反応でのPCR増幅後、ビオチンで被覆した磁気ビーズや、多穴プレートのウェルにてビオチン化2重鎖のDCN核酸を溶液から分離することができる。分離した2重鎖は、低い塩濃度のバッファ中で95℃に加熱したり、NaOH水溶液などのアルカリ変性による洗浄したりすることにより、DCN核酸の相補鎖の一方の鎖が除去される。以上の操作により増幅された一本鎖DCN核酸のみを得ることができる。上記一本鎖DCN核酸のデコーディングは、当該技術分野において既知のいずれの方法を使用して行ってもよい。たとえば、図6に示したように、DCN核酸のD2に相補的な蛍光標識された配列(rD2)とDCN核酸のD1に相補的な配列を上記一本鎖DCN核酸と混合して、これらをハイブリダイズさせる。次いで、ライゲーション反応を行うと、DCN核酸の量に応じて蛍光標識されたrD1rD2配列が生じる。このライゲーション産物を95℃のインキュベーションで熱変性させてrD1rD2配列を回収する。
次いで、デコードされたDCN核酸を検出する(図1:ステップ4)。たとえば、上記rD1rD2配列をrD1に相補的な配列を有するプローブを固定化したDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションなどを使用することにより、rD1rD2配列の蛍光を検出することができる。このとき、検出されるシグナル(蛍光など)を定量的に測定することが必要である。たとえば、標的核酸の量が多ければ、最終的に検出されるrD1rD2配列の蛍光強度も増強されるため、その強度に基づいて標的核酸を定量することができるであろう。
また、デコーディングステップを省略した場合には、たとえば上記DCN配列の増幅操作において、一方のプライマーの5'端をFITCなどの適切な標識物質で標識したプライマーを使用することにより、増幅産物にも標識物質が連結されることとなり、標識物質に応じた適切な方法により増幅産物を直接定量できる。また、上記増幅工程において、プライマーのいずれか一方を蛍光により識別可能なビーズに固定したプライマーを使用することにより、該ビーズの蛍光を検出することによって、増幅産物を検出することもできる。その他、上記増幅反応でタグ核酸を合成した場合、反応が終わった時点で検出反応に入ってもよい。
また、特開平11-75812にあるキャピラリアレイなども溶液中にある多種のタグをプローブを用いて検出するのに好適な蛍光検出デバイスである。これら検出デバイス上に増幅反応もしくは増幅反応後の変性過程を経た産物をハイブリダイズさせ、洗浄によって非特異ハイブリッドをのぞいた後、タグに施した標識(蛍光)を検出する操作、例えば化学発光反応や、蛍光色素の標識ならばマイクロアレイスキャナや、CCDカメラによる画像検出、フローサイトメーターによる蛍光ビーズの検出などが考えられる。このような検出および定量は、当業者であれば任意の方法を使用して行うことができるであろう。
また、上記工程のいずれにおいても、適宜洗浄工程をさらに含んでいてもよい。
上記工程では、試料中の標的核酸を検出する操作を行ったが、本発明の方法は、試料中の標的核酸の代わりに、該標的核酸と同じ塩基配列を有する対照核酸を使用して、標的核酸の場合と同様の工程(検出操作)を行うことをさらに含む。ここで、同様の工程とは、対照核酸を使用して上記工程を行い、その結果対照核酸を定量的に検出することができれば、上記工程のうちの1つまたは複数を省略してもよいことを意味する。たとえば、上記標的核酸同定配列を有する核酸は、30塩基長という短い核酸であるため、立体障害が少ないと考えられる。従って、上記操作において、連結されたアダプター核酸分子およびアンカー核酸分子を解離させるために上記鎖交換などを行わなくてもよい。
上述の通り、対照核酸は、標的核酸と同じ塩基配列を有する核酸であるが、標的核酸と完全に同一の配列を有する必要はない。しかし、本発明の方法に使用するアンカー核酸分子および下流プローブに相補的な配列を含むことが必要である。従って、好ましくは、上記標的核酸同定配列群の配列を有する核酸である。また、このような短い核酸であれば合成も容易であろう。
また、本工程に使用する対照核酸の濃度は、予め測定しておく必要がある。対照核酸を合成によって作製した場合であれば、使用する対照核酸の量を容易に測定することができるであろう。また、対照核酸濃度は、任意の最終濃度を使用することができる。たとえば1aM〜1nM、0.1pM〜100pM、好ましくは0.1pM〜10pM、最も好ましくは0.1pM〜1pMの範囲の最終濃度である。好ましくは、0.2pMで使用することができる。
本発明の方法は、上記標的核酸で得られた結果を、上記対照核酸で得られた結果によって補正した値を得る工程をさらに含む。すなわち、(標的核酸で得られた値)/(対照核酸で得られた値)の値を得る。これにより、上記エンコーディングステップにおいて、使用する上流プローブの配列および下流プローブの配列(標的核酸同定配列)毎に生じるエンコーディング量のばらつきを補正することができる。
本発明のもう一つの態様において、上記検出工程は、標的核酸および対照核酸のそれぞれについての増幅されたDCN核酸を混合し、該DCN配列を有する核酸に相補的な配列を有するプローブに対して競合的にハイブリダイゼーションさせて、それぞれのハイブリダイズした量を定量的に検出する工程によって行い、次いで得られた検出値を式(前記標的核酸の検出値)/(前記対照核酸の検出値)によって補正値を得ることもできる。
上記競合的ハイブリダイゼーションによる検出工程は、たとえば、以下の実施例に示したように、標的核酸および対照核酸のそれぞれについて異なった標識を有する核酸にデコードし、デコードされた核酸を混合して、該核酸に相補的な配列を有するプローブに対して競合的にハイブリダイゼーションさせる。次いで、ハイブリダイズした量を蛍光を介して検出することができる。以下、検出された値を使用して、上記態様と同様に補正値を得て、該補正値に基づいて標的核酸の定量値を計算することができる。
上記方法において、複数の標的核酸を定量する際には、検出する標的核酸のそれぞれについて、対照核酸を作製して本発明の方法を実施することにより、標的遺伝子ごとに生じる毎に生じるエンコーディング量のばらつきを補正することができるため、異なる標的遺伝子の間でも定量性が高められる。
以下、発現遺伝子計測をおこなう場合の本発明のコントロールと補正の有効性について説明する。これは、遺伝子をDCN配列に変換する方法であればどんなものでもよく、SNP検出であってもよいし、他の核酸検出法でもよい。
試料溶液中の遺伝子iのcDNA濃度をCs(i)とする。エンコーディングステップでの遺伝子iの変換効率をγ(i)とすると、遺伝子iのcDNAがエンコードされて生成されるDCN核酸の量はγ(i)Cs(i)となる。ただし、基質の濃度がMichaelis-Menten係数よりも低いことが必要である。
エンコードでできたDCN核酸をnサイクルのPCR増幅で増幅すると、
Figure 0004535266
のPCR産物が得られる。ただし、α(i)は増幅率(DCN配列の選択によりi依存性は小さくなっている)、βpcrは適当な比例係数である。
その後のデコーディングステップの効率をβdcd(i)(このi依存性も小さい)とすると、チップへのハイブリダイゼーション溶液中のDCN核酸の量は
Figure 0004535266
となる。
同様に、対照核酸溶液については、たとえばすべての遺伝子iに対して同じ濃度Crの対照核酸を使用すると、チップへのハイブリダイゼーション溶液中のDCN核酸の量は
Figure 0004535266
となる。
試料溶液および対照核酸溶液のそれぞれの溶液からデコーディングされたDCN核酸を適当な量比で混合し、異なる蛍光で標識して同一のプローブに競合ハイブリさせるので、測定される蛍光強度比は、
Figure 0004535266
に比例することになる。したがって、エンコーディングステップの効率の非一様性などは相殺される。
比例係数の値は不確定なので、蛍光強度の比から直接にCs(i)の値を決定することは難しい。しかし、試料溶液中に既知濃度の標的核産(合成DNAあるいは可能ならcDNAでも良い)を入れておき、それらに対する蛍光強度比から作成した検量線を用いれば、Cs(i)の値を決定することができる。このようにして本発明は、測定された標的核酸の検出値を補正値によって補正することにより、より正確に相対的な定量値を得ることができるだけでなく、得られた定量値から絶対定量を行うことができる。
また、上記標的核酸を定量的に検出する工程と、対照核酸を定量的に検出する工程は、同時に行うことが好ましい。これらの工程を並行して行うことにより、使用する試薬による定量値のばらつきなども防止することができる。また、図11に示すように、標的核酸および対照核酸を定量的に検出する際に使用する蛍光標識を異なる蛍光標識にすることにより、上記工程のうち最終的な定量的な検出工程を同時に検出することができる。たとえば、標的核酸の定量にCy5標識を使用し、対照核酸の定量にCy3標識を使用して、同じアレイで同時にそれぞれを定量することができ、従って同時に(Cy5の蛍光値)/(Cy3の蛍光値)の値を得ることができる。
また、本発明の定量方法によれば、従来の定量的PCRよりも簡便かつ高い並列性で所望の標的核産を絶対定量することができる。
以下、DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析の有効性を示すために以下の実験を行った。
・遺伝子の発現量情報がDCN配列の量に置き換えられる特性を調べ、エンコーディング量の標的核酸同定配列依存性および標的遺伝子特異的配列を持つ合成DNAの濃度依存性を調べる。
・エンコーディング特性の結果に基づいて、より定量性の高い遺伝子発現解析を可能とするエンコーディング方法を実装する。
・本研究で実装した方法は定量測定を可能とすることを、標的遺伝子特異的配列を持つ濃度既知の合成DNAの混合物を使って示す。
・本研究で実装した方法は定量測定を可能とすることを、酵母のcDNAを使って示す。また、内部標準を利用し絶対定量が可能であることを示す。
試料および方法
使用した試薬などは各実験の方法で説明する。
DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法の原理
DNAコンピュータによる遺伝子発現解析はステップ1からステップ4の4つのステップからなる。各ステップについてその方法を説明する。使用した試薬などは各実験の方法で説明する。
標的核酸同定配列・アダプター核酸分子
本研究では、平成14年度に三島、早川らによって開発された標的核酸同定配列群ならびに一様な増幅が可能なDCN配列群を利用した。このDCN配列群の一部をDNAコンピュータDCN配列(SD、D1、D2、ED)とした。アダプター核酸分子は標的核酸同定配列(30塩基長)の下流15塩基長およびDNAコンピュータDCN配列を4個タンデムに組み合わせたものである(図2)。標的核酸同定配列(30塩基長)の上流15塩基長は標的核酸同定配列に対応したDCN配列を回収するためのアンカーとして使われる。
ステップ1:エンコーディング
検体用
標的遺伝子の量に依存したDCN配列を回収するために以下の操作を行った。アダプター核酸分子とビオチン修飾されたアンカー核酸分子は標的遺伝子特異的配列が鋳型となりライゲーション反応により結合する。次に、ライゲーション反応の鋳型となったcDNAを標的核酸同定配列から離すために、30塩基長の標的核酸同定配列を持つ合成DNAを過剰に加え、図3のように鎖交換を行う。ストレプトアビジンで被覆されたビーズを加え、アンカーとビーズを結合させ、磁石に吸着させる。洗浄を行うことで、DCN配列の内、ライゲーション反応でアンカーに結合したもののみを回収する。
対照用
対照用の操作は検体用の操作とほぼ同じだが、対照用で用いる標的遺伝子特異的配列をもつ濃度一定の合成DNAは30塩基長という短い配列なので、アンカーとビーズの結合に対する立体障害とはならない。したがって、対照用では検体用で行った鎖交換は行わない。
ステップ2:増幅
回収された一本鎖DCN配列をPCR増幅する。検体用、対照用両方とも同一操作を行う。エンコーディングにより得られたアダプター核酸分子をビオチン修飾したSD配列とEDに相補な配列(rED)をプライマーとしてPCR増幅する。PCR産物はSD配列にビオチンが修飾されていることを利用し、ストレプトアビジン被覆ビーズで回収することができる。アルカリ変性による洗浄によりDCN配列の相補鎖は除去される。以上の操作により増幅された一本鎖DCN配列のみを得ることができる。
ステップ3:デコーディング
PCR増幅されたDCN配列を蛍光標識された相補鎖に変換する。検体用では増幅された一本鎖DCN配列(D2=1)に相補な蛍光標識(Cy5)された配列(rD2=1)とDCN配列(D1=1〜100)に相補な配列(rD1=1〜100)を混ぜライゲーション反応を行う。それぞれのDCN配列の量に応じて蛍光標識されたrD1rD2配列が生じる。また、対照用ではCy3に蛍光標識された配列を使用する。ライゲーション産物を95℃のインキュベーションで熱変性させ、rD1rD2配列を回収する。
ステップ4:表示
変換された配列をDNAキャピラリアレイで検出する。DCN配列(D1=1〜100)がDNAキャピラリアレイの基盤上に固定されている。ステップ3で作成したDCN配列に相補な蛍光標識された配列rD1rD2の両方(検体用、対照用)を同一のチューブに混ぜハイブリダイゼーションをする。DNAキャピラリアレイの洗浄後、蛍光強度の検出を行う。
エンコーディング特性の測定方法
標的核酸同定配列・アダプター核酸分子
PCR増幅する場合に使用するプライマーが標的核酸同定配列と干渉しないことを確認した。GenBankから得られた酵母(S. cerevisiae)の全ORF配列に対して上記方法により設計した配列を使った。図8のプライマーサイト付アンカー用プライマー(r5)及びアダプター核酸分子用プライマー(rD1)は標的核酸同定配列とは別に設計されたものであるが、定量的PCRの測定に妨げとはならないことを標的核酸同定配列およびその相補鎖それぞれ100種類に対してSmith-Watermanアルゴリズム法で検定した(図20)。
ライゲーション反応
DNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法ステップ1におけるエンコーディング量の測定実験には図8のようにプライマーサイト付アンカー、アダプター核酸分子、標的遺伝子特異的配列を用いた。インキュベーションにはMJ ResearchのThermal Cyclerを用いた。InvitrogenあるいはQiagen社でDNAの化学合成時にアダプター核酸分子の標的核酸同定配列側5'末端にリン酸修飾を行った。プライマーサイト付アンカー100種類の濃度がそれぞれ200 pM、アダプター核酸分子100種類の濃度がそれぞれ200 pM、そして、標的遺伝子特異的配列の合成DNA(Target)100種類の濃度が4 pMの状態でライゲーション反応を行った。同様に、Target 100種類の濃度が80 pMの状態でライゲーションを行った。それぞれ60℃で3分間インキュベートし、一秒当たり0.1℃の速度で45℃に下げ、アニーリングを行った。その後、20 U/50μlの割合でTaq ligase(New England Biolab)を加え、1× ligation bufferで45℃10時間反応させ、4℃にて反応を停止させた。
エンコーディング量の測定
エンコーディング量の測定は図8のような方法で、ライゲーション反応によりDNAが連結されたときだけPCR増幅がなされるような仕組みを利用した。プライマーサイト付アンカー用プライマー(r5)及びアダプター核酸分子用プライマー(rD1)をそれぞれ0.2μMとした。KOD-plus(TOYOBO)に添付されている試薬を使用し、dNTPsを0.2 mM、MgSO4を1 mM、1× PCR buffer、1× SYBER GREEN Iとし、KOD polymerase 1 U、25μlの反応溶液で定量的PCRを行った。94℃2分インキュベート後、94℃15秒、68℃6秒の2工程法で40サイクルとした。標準曲線として、あらかじめPCR増幅したサンプルをAgilent Bio Analyzer 2100で濃度定量を行い、サンプルに対応した希釈系列(80 fM、8 fM、0.8 fM、0.08 fM)を用意した。また、全希釈系列に共通なプライマー(r5配列とSDに相補な配列)を用いてサンプルに対応した希釈系列の誤差の補正も行った。MJ Research社のDNA Engine Opticon2を使用しSYBER GREEN Iの蛍光強度を測定し、機器付属のソフトウエアからC(t)値(蛍光強度0.1を閾値としたPCRサイクル)を得た。クロスポイント法でエンコーディング量すなわちライゲーション反応で結合した量の測定をした。同一サンプルを2回測定し、その平均値をサンプルの測定値とした。独立サンプルを3回測定した。ネガティブコントロールには、Taq ligase無しでライゲーション反応をさせたサンプルを使用した。
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法
標的核酸同定配列・アダプター核酸分子
PCR増幅する場合に使用するプライマーが標的核酸同定配列と干渉しないことを確認した場合と同じアダプター核酸分子を使用した。ステップ2の増幅(図5)で使用するSD配列とEDに相補な配列(rED配列)は標的核酸同定配列とは別に設計されたものであるが、定量的PCRの測定に妨げとはならないことを標的核酸同定配列100種類に対してSmith-Watermanアルゴリズム法でしらべた。最大スコア値はSDとrEDとも11であった。
ステップ1:エンコーディング<検体用>
cDNAは、長い塩基配列でビーズの結合効率に影響が出るので鎖交換を行うが、標的遺伝子特異的配列を持つ合成DNAは30塩基長と短い配列であり、全て長さが揃っているので、鎖交換を行わない。
ライゲーション反応
Invitrogen、QiagenもしくはFASMAC社により合成されたビオチン修飾されたアンカー核酸分子100種類をそれぞれ6 fmol、アダプター核酸分子100種類をそれぞれ6 fmol、標的遺伝子特異配列を持つ合成DNA(target、30塩基)100種類をそれぞれ一定濃度の6 amolとして測定した。反応溶液は18μlで60℃3分のインキュベーション後、1秒あたり0.1℃の速さで45℃にした。Taq ligaseを12 U加え、30μlの1× Taq ligation bufffer中で45℃10時間反応させた。また、同様のプロトコルで、100種類の遺伝子の内、遺伝子の組み合わせで変化させたtarget DNAの濃度を測定した。6 amol (50種類)、60 amol (20種類)、600 amol (6種類)の昇順と降順で測定した。
ビーズ処理
100μgのビーズ(Dynabeads M-280)をライゲーション反応産物に加え、100μlの1× B&W buffer(1 M NaCl、 pH 8.0 TE buffer)溶液中で30分反応させた。途中、10分に1回混合操作を行った。その後、100μlの1× B&W bufferで3回洗浄を行い、40μlのSolutionA(0.1 M NaOH、 0.05 M NaCl)で2回洗浄を行い、100μlの1× B&W bufferで2回洗浄を行った。洗浄操作は全て室温で行った。
ステップ1:エンコーディング<対照用>
ライゲーション反応
ビオチン修飾されたアンカーとアダプター核酸分子をそれぞれ6 fmol、および標的遺伝子特異的配列をもつ合成DNA(Target(30塩基長))(それぞれ6 amol)を反応溶液18μl中で60℃3分のインキュベーション後、1秒あたり0.1℃の速さで45℃にした。Taq ligaseを12 U加え、30μlの1× Taq ligation bufffer中で45℃10時間反応させた。
ビーズ処理
検体用と同じプロトコルを実施した。
ステップ2:増幅
検体用、対照用両方とも同じ操作を行った。
PCR反応
PCR反応はビーズ処理されたサンプルの半量を用いた。プライマーとしてビオチン修飾したSD配列を100 pmol、EDの相補鎖配列を100 pmol用いた。さらに、dNTPsが0.2 mM、MgSO4が1 mM、KOD polymeraseが1 Uとなるように調整された100 μlの1× PCR buffer中でPCRを行った。反応は94℃2分のインキュベーション後、94℃15秒、64℃30秒、72℃30秒のサイクルを20回行い、72℃で30秒インキュベーション後、10℃にした。
ビーズ処理
PCR産物全量に500μgのストレプトアビジンで被覆されたビーズを加え、140μlの1× B&W buffer中で15分反応させ、5分に1回混ぜる操作をした。その後、140μlの1x B&W bufferで洗浄を行い、140μlのSolutionA(0.1 M NaOH、 0.05 M NaCl)でアルカリ変性による洗浄を行い、140μlのNAD+が含まれていない1× ligation buffer(NAD+(-)ligation buffer)で2回洗浄を行った。洗浄操作は全て室温で行った。
ステップ3:デコーディング
ライゲーション反応
検体用には、ビーズ処理したサンプル全量を、増幅されたDCN配列(D2=1)に相補な蛍光標識(Cy5)された配列(rD2=1)が10 pmol、DCN配列(D1=1〜100)に相補な配列(rD1=1〜100)がそれぞれ2 pmol、Taq ligase 40 Uが入った100μlの溶液中で50℃10分反応させた。途中、3分に一回混合操作を行った。対照用には、Cy3の蛍光標識されたrD2=1の配列を10 pmol使い、他は検体用と同一のプロトコルで反応させた。
ビーズ処理
ライゲーション反応したサンプル全量に対して、140μlの1× NAD+(-)ligation bufferで2回洗浄を行い、50μlの滅菌水に溶かした。95℃で1分インキュベーションの後、上清を回収した。
ステップ4:表示
ハイブリダイゼーション反応
ビーズ処理して回収した上清を検体用から24μl、対照用から12μlそれぞれ取り出して混合し、50μlの溶液(5× SSC、0.2% SDS)に調整した。これをDNAキャピラリアレイに対して50℃30分のハイブリダイゼーションをさせた。ハイブリダイゼーション後、50℃にした0.1% SDS、0.1× SSCを含んだ溶液で15分洗浄した後、室温の滅菌水で2分間の洗浄を2回行った。その後、GenePix 4000Aで検出した。蛍光強度は付属のソフトウエアを使って測定した。
cDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法
cDNAサンプル
東京理科大学村上研究室(ゲノム創薬研究センター・構造ゲノム科学)の郡司渉氏より提供していただいたガラクトース培地培養の酵母(Saccharomyces cerevisiae)mRNAからcDNAを作成した。SuperScript(商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitorgen)を使い製品添付プロとコールに従い、dTプライマー5μM、dNTPs混合液1 mMの反応溶液10μl中で65℃5分インキュベーションした後、氷上インキュベーションを行った。その後、全量を5 mMのMgCl2、10 mMのDTT、RNaseOUT 40 U、SuperScript III RT 200 Uの反応溶液(20μl)中で50℃50分インキュベーションした。85℃で5分インキュベーションすることにより反応停止操作を行った後、氷温とした。2 UのE.coli RNase Hで37℃20分間インキュベーションを行い、得られたcDNAを-20℃で使用するまで保存した。
内部標準
発現が認められなかった遺伝子の特異的配列を内部標準として用いた。標的遺伝子特異的配列の合成DNAはそれぞれの入力量(100 amol、10 amol、1 amol)で異なる3つの配列(合計9配列)を使った。
GeneChip
GeneChipによる酵母の発現量測定データは酵母mRNAのサンプルと同様、東京理科大学村上研究室(ゲノム創薬研究センター・構造ゲノム科学)郡司渉氏より提供していただいた。DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法で使用した酵母から得られたTotal RNAを使い、GeneChip標準のプロトコルに従って実験が行われた。
定量的PCR
DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法で使用したcDNAと同じサンプルを用いた。平成14年度に三島らによって開発されたプライマーを用いた。これはGenBankから得られた酵母(S。 cerevisiae)の全ORF配列に対して述べたのと同じ方法で設計されたものである。KOD-plus(TOYOBO)添付の標準プロトコルに従った。標準曲線には、あらかじめPCR増幅したサンプルをAgilent Bio Analyzer 2100で濃度定量を行い、サンプルに対応した希釈系列を用いた。MJ Research社のDNA Engine Opticon2を使用しSYBER GREEN Iの蛍光強度を測定し、機器付属のソフトウエアを使ってcDNAの量を測定した。
ステップ1:エンコーディング<検体用>
ライゲーション反応
Invitrogen、QiagenもしくはFASMAC社によりカスタムDNA合成されたアダプター核酸分子とビオチン修飾されたアンカーをそれぞれ6 fmol使用した。これらとTotal RNA 1μgから作成されたcDNAを、30μlの1× Taq ligation bufffer中で60℃3分間インキュベーションした。1秒あたり0.1℃の速さで45℃にし、Taq ligaseを12 U加え、45℃10時間反応させた。
鎖交換
標的核酸同定配列と同じ30塩基長の配列を100種類混合させた合成DNAをそれぞれ100 fmol加え、60℃で3分インキュベーションした後、1秒あたり0.1℃の速さで20℃にした。
ビーズ処理
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法で行ったのと同じプロトコルを実施した。
ステップ1:エンコーディング<対照用>
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法で行ったのと同じプロトコルを実施した。
ステップ2:増幅
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法で行ったのと同じプロトコルを実施した。
ステップ3:デコーディング
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析方法で行ったのと同じプロトコルを実施した。
ステップ4:表示
ハイブリダイゼーション反応
回収した上清を検体用、対照用、両方とも18μlずつ含んだ50μlの溶液(5× SSC、0.2% SDS)に調整した。これを用いてDNAキャピラリアレイに50℃30分のハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、50℃にした0.1% SDS、0.1× SSCを含んだ溶液で15分洗浄した後、室温の滅菌水で2分間の洗浄を2回行った。その後、GenePix 4000Aで検出した。蛍光強度は付属のソフトウエア(GenePix pro 5.0)を使って測定した。
エンコーディング特性の測定実験
結果
DNAコンピュータ技術に基づいた遺伝子発現解析では、標的核酸同定配列の融解温度が揃えてあるので、同じ濃度のTargetに対しエンコーディング量はその同定配列によらず一定であると考えられていた。しかし、図9のように、個々の標的核酸同定配列毎のエンコーディング量は異なる結果となった。一方、図10のようにエンコーディング量は、Target濃度に比例し、その係数はほぼ一定であった。つまり、標的核酸同定配列に依存せずにTargetの量に比例してエンコードはなされることが分かった。
考察
標的核酸同定配列毎にエンコーディング効率が異なる原因として、プライマーサイト付きアンカー核酸分子とアダプター核酸分子のライゲーション部位の塩基依存性やスタッキングの自由エネルギーとの関係に注目し、調べたが明確な相関は見られなかった。また、同様の目的で
プライマーサイト付きアンカーの二次構造の影響に注目し、二次構造予測を行ったが、エンコーディング効率との明確な相関を得ることが出来なかった。
しかし、エンコーディング量はTarget濃度に比例し、その係数は標的核酸同定配列に依存しなかった。この事実より図11のような新しいエンコード反応の方法が可能と考えられる。
従来のDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法では、DNAキャピラリアレイに2色法でハイブリダイゼーションさせていた。そのため、対照用としてCy3蛍光標識されたDCN配列(D1=1〜100)に相補な配列(rD1=1〜100)を競合ハイブリダイゼーションさせていた。本実験で見出したエンコーディング特性に基づいて考案した方法は、標的遺伝子特異的配列を持つ合成DNA(30塩基長)を用いてエンコードされたものを対照用として利用することである。このエンコードをされた対照用を用いることにより、ステップ1のエンコーディングに関わる標的核酸同定配列毎の反応効率の違いを補正でき、定量性の高い結果が得られると予想される。
合成オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析の実験
結果
前章のエンコーディング特性の実験よりステップ1のエンコーディングに関わる標的核酸同定配列毎の反応効率の違いを補正する方法が得られた。エンコードされた対照を用いることの有効性を確かめるために、標的遺伝子特異的配列を持つ濃度既知の合成DNAを用いた検証実験を行った。図12はステップ1(エンコーディング)を行っていない対照を使った従来法の結果である。図13はエンコーディングを考慮した対照を使った結果である。結果から明らかなように、エンコーディングを経た対照を使うことにより、標的核酸同定配列に依存しない結果が得られることが分かった。
次に実際の解析を想定し、標的遺伝子特異的配列を持つ合成DNAの入力量を個々の遺伝子毎に4段階(600 amol、 60 amol、 6 amol、 0 amol)のいずれかになるように分けて実験を行った。その結果を図14に示した。入力した合成DNAの量に応じて測定値(fluorescence ratio)が高くなっている結果が得られた。また、入力DNAの濃度の組み合わせ方をかえて同様の実験を行った。その結果を図15に示した。図14と同様、入力した合成DNAの量に応じて測定値が高くなっている結果が得られた。
考察
結果、標的核酸同定配列によらず、遺伝子特異的配列を持つ合成DNAの入力量に応じて測定値が高くなっている結果が得られた。本研究以前の定量を目指したDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法では、同一遺伝子での発現量の比較は可能であった。しかし、標的核酸同定配列毎のライゲーション反応の違いなどの要因で絶対定量のための遺伝子に共通した内部標準を設定することが困難であったため、遺伝子毎の絶対量の比較をすることができなかった。しかし、本研究により遺伝子の種類によらず合成DNAの入力量を反映する結果を得たことから、cDNAなどの実際の検体に対して全遺伝子に共通した内部標準を構築でき、この内部標準を基準として全ての遺伝子の発現量を絶対定量できると考えられる。
cDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析の実験
結果
合成DNAで可能であった定量が、実際の検体であるcDNAにも適用できるかを調べるため、同一の酵母から得られたcDNAを定量的PCR、GeneChip、DNAコンピュータ技術を利用した方法でそれぞれ定量した。定量的PCR、GeneChip、DNAコンピュータ技術を利用した方法で定量した。定量的PCRとGeneChipの定量の相関(図16)と比較して、定量的PCRとDNAコンピュータ技術を利用した方法での定量の相関(図17)やGeneChipとDNAコンピュータ技術を利用した方法での定量の相関(図18)はいずれも同等の相関を持っていた。以上の結果より、DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法は定量的PCRやGeneChipと同等の精度を持った定量方法であることが分かった。
また、発現しているcDNAとは相互作用のしない配列を内部標準として用いて検体の絶対定量を行った。図19中に黒四角で示されている内部標準を基にTotal RNA 1μg中に含まれる各遺伝子の発現量を計算した。図19に定量的PCRで測定されたTotal RNA 1μg中に含まれる各遺伝子の絶対発現量とDNAコンピュータ技術を利用した方法で測定された絶対発現量の相関図を示した。その結果、内部標準を用いた絶対定量がDNAマイクロアレイ規模のサンプル数について、これまでチップでは事実上不可能であった絶対定量が可能であることが確認された。
考察
cDNAの自己二次構造
遺伝子発現解析の検体となるcDNAは遺伝子特異的配列だけの合成DNAよりはるかに長い。したがって、標的核酸同定配列は安定な二次構造を形成し難いように設計されていても、長いcDNAが形成する構造がアダプター核酸分子とcDNAのハイブリダイゼーションを阻害し、エンコードのライゲーション反応およびビーズとの結合に影響を及ぼすことが危惧された。しかし、DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析結果は定量的PCRの結果と相関していたことから、実験を行ったステップ1のエンコーディングのプロトコルで、cDNAの二次構造の影響はほぼ無視できると考えられる。
定量的PCR法とDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法の比較
定量的PCR法では個々のサンプルに対応した希釈系列を作成し標準曲線を作らなければならない。そのため、マイクロアレイ規模の量の絶対定量を行うときには非常に労力の必要な作業となる。また、個々に希釈系列を作るため、それぞれの希釈誤差が定量性に影響する。このため大規模の定量的PCRを行いそれぞれの遺伝子を比較するためには、希釈系列の補正も行う必要があるといえる。一方、DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法ではどの遺伝子に対しても同じ内部標準を適用できるため、定量的PCRの様な補正が必要なくなり、より簡便になると同時に正確性も確保されると考えられる。
結論
標的核酸同定配列毎に生じるエンコーディング量のバラツキを補正することに成功し、マイクロアレイ規模の絶対定量がDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析法により可能となった。
DNAコンピュータ技術を利用した定量的遺伝子発現解析法の概要を示す図。 アダプター核酸分子およびアンカー核酸分子の模式図。 標的遺伝子のエンコーティングの概要を示す模式図。 対照核酸のエンコーティングの概要を示す模式図。 DCN配列のPCR増幅の概要を示す模式図。 DCN配列に相補な経口修飾された配列への変換(デコーディング)の概要を示す模式図。 エンコーディング量の測定方法の概要を示す模式図。 経口標識されたDCN配列に相補な配列のDNAキャピラリアレイにハイブリダイゼーション(表示)の概要を示す模式図。 エンコーディング量の標的核酸同定配列依存性の測定結果を示すグラフ。 エンコーディング量の標的核酸同定配列依存性の測定結果を示すグラフ。 エンコード反応の解析に基づいて発明した新しいエンコード方法の概要を示す模式図。 従来のDNAコンピュータ技術を利用した遺伝子発現解析方法による結果を示すグラフ。 エンコード反応の解析に基づいて発明した新しいエンコード方法による結果を示すグラフ。 オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析の結果を示すグラフ(降順)。 オリゴDNAを入力分子とした定量的遺伝子発現解析の結果を示すグラフ(昇順)。 酵母cDNAを定量的PCRで定量した結果とGeneChipで定量した結果の相関を示すグラフ。 酵母cDNAを定量的PCRで定量した結果とDNAコンピュータ技術を利用した方法で定量した結果の相関を示すグラフ。 酵母cDNAをGeneChipで定量した結果とDNAコンピュータ技術を利用した方法で定量した結果の相関を示すグラフ。 定量的PCRで定量した結果とDNAコンピュータ技術を利用した方法で定量した結果の相関を示すグラフ。 標的核酸同定配列およびその相補鎖に対するSmith-Watermanアルゴリズム法によるスコア。 酵母cDNAを定量的PCRで定量した結果とGeneChipで絶対定量した結果の相関を示すグラフ。

Claims (7)

  1. 試料中の複数種類の標的核酸を定量する方法であって、
    1)前記複数種類の標的核酸のそれぞれの配列の一部と同じ配列を有しかつ濃度が既知の対照核酸と、前記複数種類の標的核酸とを、それぞれDCN配列を有する核酸にエンコードする工程と、
    2)前記複数種類の標的核酸および対照核酸からエンコードされたDCN配列を有する核酸を、それぞれ増幅する工程と、
    3)前記増幅されたDCN配列を有する核酸を、それぞれ定量的に検出する工程と、
    4)前記3)の工程の検出値から式(前記標的核酸の検出値)/(前記対照核酸の検出値)によって補正値を得る工程と;
    5)前記補正値を使用して定量値を得る工程と、
    を含む方法。
  2. 試料中の複数種類の標的核酸を定量する方法であって、
    1)前記複数種類の標的核酸のそれぞれの配列の一部と同じ配列を有しかつ濃度が既知の対照核酸と、前記複数種類の標的核酸とを、DCN配列を有する核酸にエンコードする工程と、
    2)前記複数種類の標的核酸および対照核酸からエンコードされたDCN配列を有する核酸を、それぞれ増幅する工程と、
    3)前記増幅されたDCN配列を有する核酸を混合し、該DCN配列を有する核酸に相補的な配列を有するプローブに対して競合的にハイブリダイゼーションさせて、それぞれのハイブリダイズした量を定量的に検出する工程と、
    4)前記3)の工程の検出値から式(前記標的核酸の検出値)/(前記対照核酸の検出値)によって補正値を得る工程と;
    5)前記補正値を使用して定量値を得る工程と、
    を含む方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法であって、前記工程2)の後に増幅されたDCN配列を有する核酸をデコードする工程をさらに含み、前記工程3)の検出は、デコードされた配列を検出することによって行われる方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、
    前記エンコードする工程は、以下の工程によって行われる方法:
    1)前記標的核酸中の部分配列に相補的な上流プローブ配列を有する標識されたアンカー核酸分子と、前記標的核酸の部分配列に相補的な配列を有する下流プローブ配列およびDCN配列を有するアダプター核酸分子を前記試料と混合して、前記標的核酸または対照核酸に前記下流プローブ部分および前記上流プローブ部分をハイブリダイズさせる工程と、
    2)前記標的核酸または対照核酸にハイブリダイズした下流プローブ部分および上流プローブ部分をそれぞれ連結させて、アダプター核酸分子およびアンカー核酸分子の連結分子を生成させる工程と、
    3)前記連結分子を回収して、DCN配列を有する核酸を得る工程。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記対照核酸として複数の濃度の対照核酸を使用して、該複数の対照核酸について補正値を得ることを特徴とする方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記検出工程は、蛍光標識を検出することによって行われることを特徴とする方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記増幅されたDCN配列の検出は、DNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションによって行われる方法。
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