(実施形態1)
図1には、本発明の実施形態1である2次元走査装置の垂直断面(XZ断面、以下の実施形態も同様)を示している。図1において、11は光源であり、レーザダイオード、LED、ランプ等により構成されている。光源11は、画像信号が入力された不図示の駆動回路により発光が制御される。
光源11から発せられた光束(平行光束)12は、2枚の集光レンズを貼り合わせて構成される集束レンズ13により収束光束に変換され、ハーフミラー14に入射する。ハーフミラー14での反射により、光束12は90度折り曲げられ、保護ガラス15を透過して偏向ユニット16に入射する。保護ガラス15は、偏向ユニット16を外乱から保護するために設けられている。
偏向ユニット16としては、例えば互いに直交する揺動軸(偏向軸)を中心に反射面を2次元的に揺動させ、この反射面に入射して反射した光束を2次元方向(X方向およびY方向)に偏向可能なMEMS(Micro−Electro−Mechanical Systems)デバイスが用いられている。
光束12は偏向ユニット16によって2次元方向に偏向走査され、保護ガラス15およびハーフミラー14を透過して走査光学系17に入射する。
走査光学系17は最も偏向ユニット16側に配置された第1のレンズ17aと、最も走査光学系17の像面18側に配置された第2のレンズ17cと、これら第1および第2のレンズ17a,17c間に配置された第3のレンズ17bとから構成されており、偏向ユニット16により偏向された光束12を像面18上に結像させる。
こうして偏向ユニット16によって2次元方向に偏向走査される光束12が走査光学系17によって像面18上に結像されることにより、像面18上には光の残像効果により2次元画像が形成される。
ここで、偏向ユニット16として用いられるMEMSデバイスの構成について、図2を用いて簡単に説明する。このMEMSデバイスは、微小な偏向ミラー21を有し、この偏向ミラー21はトーションバー(偏向軸)22を介して揺動枠23により支持されている。また、揺動枠23は、トーションバー22に対して直交するトーションバー(偏向軸)24を介して筐体25により支持されている。偏向ミラー21は、その裏面に備えられた磁石が図示しないコイルから発生する磁力に反応して、トーションバー22,24を中心にして2次元方向に振動(揺動)する。この2次元方向の振動のうち一方又は双方は共振によるものである。そして、この揺動する偏向ミラー21に入射し反射した光束は、偏向軸を中心(要)として2次元方向に偏向される。
本実施形態の偏向ユニット16では、偏向ミラー21は、図1の紙面内方向(X方向)において機械角で±5.5deg、紙面に垂直な方向(Y方向)において±4.13degの振幅を持ち、それぞれ振幅全体の8割を光束偏向に用い、振幅の両側に1割ずつのブランクが残るように設定される。
本実施形態に従う2次元走査装置の数値実施例として、各光学素子の曲率半径および面間隔を表1に示す。曲率半径および面間隔の単位はmmである。また、ndは屈折率、νdはアッベ数を示している。走査光学系17の3枚のレンズ17a,17b,17cはそれぞれ負,正,正の光学パワー(焦点距離の逆数)を持つ。第2のレンズ17cは正メニスカスレンズであり、その凸面は偏向ユニット側に向いている。
本実施形態では、走査光学系17のうち、最も偏向ユニット16側に負レンズである第1のレンズ17aを配置し、最も像面18側に正メニスカスレンズである第2のレンズ17cを配置することで、光学系の全長を短くしながら、走査光学系17にテレセントリック性を持たせている。
また、負レンズ(17a)と正メニスカスレンズ(17c)の組み合わせにより、走査光学系17に像面18上における像面湾曲を補正する効果を付与している。さらに、正メニスカスレンズ(17c)の凸面を偏向ユニット16側に向けることで、走査光学系17に、像面18上におけるディストーションを補正する効果を付与している。
図3には、本実施形態(数値実施例)の収差図を示す。図3(a)には主走査方向(図1の紙面内方向)と副走査方向(図1の紙面に垂直な方向)における非点隔差(単位mm)を、図3(b)には主走査方向の偏向角によるディストーション量(単位%)の変化を表している。図3(a)において、実線は主走査方向、点線は副走査方向を表す。なお、以後、収差図と述べた場合、図3と同様に、非点隔差、ディストーションの各量を表す図のことを示すものとする。図3から、本実施形態の走査光学系17により非点隔差およびディストーションが良好に補正されることがわかる。
また、図4には、本実施形態の走査光学系17による像面18への入射角と像面18上に形成される画像上での相対位置との関係を示す。横軸は像高(%)、縦軸は像面への入射角(deg)を示す。
この図4から、本実施形態の走査光学系17は、像面18への入射角が5deg以下の良好なテレセントリック性を有していることがわかる。テレセントリック性を有することで、像面18がデフォーカスしても、像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化の小さい走査光学系となる。
また、負レンズ(17a)の硝材のアッベ数ν1は31.1、正メニスカスレンズ(17c)の硝材のアッベ数ν2は55.4である。すなわち、
ν1<ν2
を満たす。
このアッベ数の関係により、走査光学系17は、光源11から互いに異なる複数の波長の光が出射する場合に、色収差を補正する効果を持つことができる。
本実施形態において、光源11からの光としてF’線(波長479.99nm)、e線(波長546.07nm)、C’線(643.85nm)を与えた場合の、横収差図を図5に示す。
図5において、(a)は像面18上における画像中心、(b)は像高50%、(c)は像高100%での横収差図である。また、図5において実線はe線、一点鎖線はC’線、破線はF’線を示している。図5より、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させた場合に、走査光学系17は良好な色収差補正を行うことが分かる。また、光源11からの光が単一の波長を有する場合においては、光源11の波長変化が生じたときでも、走査光学系17の性能変化がほとんど生じない効果を持つ。
また、本実施形態は、走査光学系17とは別に、偏向ユニット16への入射系として集束レンズ13を持つ。偏向ユニット16に対して収束光束を入射させることで、集束レンズ13と走査光学系17とでパワーを分担できる。これにより、走査光学系17はディストーションと非点隔差の補正に適した構成とすることができる。
また、本実施形態は、集束レンズ13と偏向ユニット16との間の光路上に、ハーフミラー14を持つ。ハーフミラー14を挿入することで、光源11からの光束12を偏向ユニット16に導く入射系をコンパクトにすることができる。さらに、偏向ユニット16に対して光束12を垂直(2方向の偏向軸に対して垂直)に入射させることができる。
また、本実施形態において、図1に示すように、偏向ユニット16から走査光学系17の像面18までの距離をD、偏向ユニット16から第1のレンズ(負レンズ)17aの第1面(入射面)までの距離をD1としたとき、
D1/D=0.645
である。
このD1/Dが0.4を下回ると、光源11からの光束12を導く入射系に自由度がなくなる。また、D1/Dが0.8を上回ると、走査光学系17を含む2次元走査装置全体の大型化につながる。このため、
0.4≦D1/D≦0.8…(A)
とするのが望ましい。
また、本実施形態において、第2のレンズ(正メニスカスレンズ)17cの第2面(出射面)から像面18までの距離をD2としたとき、
D2/D=0.123
となる。
このD2/Dが0.05を下回ると、像面18上に被走査物(例えば、スクリーン)を配置するのが困難になる。また、D2/Dが0.3を上回ると、走査光学系17を含む2次元走査装置全体の大型化につながる。このため、
0.05≦D2/D≦0.3 …(B)
とするのが望ましい。
(実施形態2)
図6には、本発明の実施形態2である2次元走査装置の垂直断面を示す。本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付して説明を省略する。なお、以下のすべての実施形態においても、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、実施形態1に対して、走査光学系61を構成するレンズ枚数を、負レンズである第1のレンズ61aと正メニスカスレンズである第2のレンズ61bの2枚に削減したものである。
このように走査光学系61を2枚のレンズで構成することにより、走査光学系61のコスト低減を図ることが可能になる。また、本実施形態では、偏向ユニット16の偏向ミラーは、図6の紙面内方向(X方向)において機械角で±5.5deg、紙面に垂直な方向(Y方向)において±4.13degの振幅を持ち、それぞれ振幅の8割を光束偏向に用い、振幅の両側に1割ずつのブランクが残るように設定されている。
本実施形態に従う2次元走査装置の数値実施例として、各光学素子の曲率半径および面間隔を表2に示す。曲率半径および面間隔の単位はmmである。また、ndは屈折率、νdはアッベ数を示している。
本実施形態でも、実施形態1と同様に、偏向ユニット16側に負レンズ(61a)が、像面18側に正メニスカスレンズ(61b)が配置されている。この配置により、走査光学系61にテレセントリック性を与え、像面湾曲を低減させることができる。さらに、正メニスカスレンズ(61b)の凸面を偏向ユニット16側に向けることで、像面18上におけるディストーションを補正することができる。
図7には、本実施形態(数値実施例)の収差図を示す。図7から、本実施形態においても、収差補正が良好に行われていることが分かる。
また、図8には、像高と像面18への入射角との関係を示す。本実施形態においても、走査光学系61による像面18への最大の入射角は5deg以下と小さく、走査光学系61は良好なテレセントリック性を有していることが分かる。そして、走査光学系61がテレセントリック性を有することで、デフォーカスによる像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化を小さくすることができる。
また、負レンズ(61a)の硝材のアッベ数ν1は31.1、正メニスカスレンズ(61b)の硝材のアッベ数ν2は37.2であり、
ν1<ν2
を満たす。
このアッベ数の関係により、走査光学系61は、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させる場合に、色収差を補正する効果を持つことができる。
本実施形態において、光源11からの光として、F’線(波長479.99nm)、e線(波長546.07nm)、C’線(643.85nm)を与えた場合の横収差図を図9に示す。図9において、(a)は像面18上における画像中心、(b)は像高50%、(c)は像高100%での横収差図である。また、図9において、実線はe線、一点鎖線はC’線、破線はF’線を示している。
この図9から、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させる場合に、走査光学系61は良好な色収差補正を行うことが分かる。なお、光源11からの光が単一の波長を有する光である場合においては、光源11の波長変化が生じたときでも、走査光学系61の性能の変化がほとんど生じない効果を持つ。
なお、本実施形態でも、
D1/D=0.601
D2/D=0.120
であり、上述した(A),(B)の条件式を満足する。
(実施形態3)
図10には、本発明の実施形態3である2次元走査装置の垂直断面を示している。本実施形態では、実施形態2と同様に、走査光学系101を、負レンズである第1のレンズ101aと正メニスカスレンズである第2のレンズ101bの2枚で構成し、正メニスカスレンズ(101b)の凸面形状の第1面(入射面:表3中の面番号17の面)に回転対称非球面を導入することで、非点隔差の補正を行っている。回転対称非球面は、以下の式1で表される。
また、本実施形態では、偏向ユニット16の偏向ミラーの振幅は、実施形態2と同じく、図10の紙面内方向(X方向)において機械角で±5.5deg、紙面に垂直な方向(Y方向)において±4.13degであり、それぞれ振幅の8割を光束偏向に用い、振幅の両側に1割ずつのブランクが残るように設定されている。
本実施形態に従う2次元走査装置の数値実施例として、各光学素子の曲率半径および面間隔等を表3に示す。表3中、面番号17の部分には、非球面係数も記入している。
また、本実施形態(数値実施例)の収差図を図11に示す。走査光学系101に回転対称非球面を導入したことで、走査光学系101は、全体としてテレセントリック性を有したまま、非点収差および像面湾曲の補正を有効に行うことができる。このため、本実施形態は、実施形態2に比べて、像面18への入射角が5.0deg以下というテレセントリック性を維持したまま(図12)、非点隔差の量が小さくなっている。テレセントリック性を有することで、デフォーカスによる像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化が小さい走査光学系となる。
また、負レンズ(101a)の硝材のアッベ数ν1は31.1、正メニスカスレンズ(101b)の硝材のアッベ数ν2は37.2であり、
ν1<ν2を満たす。
このアッベ数の関係により、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させる場合に、色収差を補正する効果を持つ。本実施形態において、光源11からの光としてF’線(波長479.99nm)、e線(波長546.07nm)、C’線(643.85nm)を与えた場合の横収差図を図13に示す。図13において、(a)は像面18上における画像中心、(b)は像高50%、(c)は像高100%での横収差図である。また、図13において実線はe線、一点鎖線はC’線、破線はF’線を示している。
図13から、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させる場合に、走査光学系101は良好な色収差補正を行えることが分かる。なお、光源11からの光が単一の波長を有する場合においては、光源11の波長変化が生じたときでも、走査光学系101の性能の変化がほとんど生じない効果を持つ。
このように、本実施形態では、走査光学系101のうち最も偏向ユニット16側に負の光学パワーを持つレンズ(第1のレンズ101a)を、最も像面18側に正の光学パワーを持つレンズ(第2のレンズ101b)を配置することで、像面湾曲が補正された、テレセントリック性を持つ走査光学系を構築できる。さらに、正レンズ(101b)を、偏向ユニット16側に凸面を向けた正メニスカスレンズとすることで、ディストーションが補正された走査光学系を構築できる。
なお、以上説明した実施形態1〜3では、偏向ユニット16側の負レンズと、像面18側の正メニスカスレンズとの間にレンズを配置しないか1枚のレンズを配置して走査光学系を構築したが、負レンズと正メニスカスレンズとの間に入るレンズの枚数はこれに限らず、2枚以上のレンズを挿入してもよい。
また、実施形態1〜3では、収束光束を偏向ユニット16に導く反射面としてハーフミラー14を用いているが、反射面としてはこれに限らない。例えば、反射面として、偏光分離作用を持つ偏向ビームスプリッタを配置し、波長板と併せて使用することも可能である。
なお、本実施形態でも、
D1/D=0.619
D2/D=0.116
であり、上述した(A),(B)の条件式を満足する。
(参考例1)
図14には、本発明の参考例1である2次元走査装置の垂直断面図を示している。本実施形態は、変更ユニット16に光源11からの光束が斜めに(変更ミラーの図14の紙面内方向に延びる変更軸に対して斜め方向から)入射することで発生する、画像の枠の歪み(TVディストーション)を補正できるものである。
光源11からの光束(平行光束)12は、集束レンズ13により収束光束に変換され、折り返しミラー141により光路を曲げられ、保護ガラス15を透過した後、偏向ユニット16に入射する。偏向ユニット16は、実施形態1と同様に、2次元方向に光束を偏向走査可能なMEMSデバイスを用いたものである。光束12は偏向ユニット16により2次元方向に偏向される。偏向された光束は、保護ガラス15を再び透過した後、走査光学系142に入射する。
走査光学系142は、最も偏向ユニット16側に配置された負レンズである第1のレンズ142aと、最も像面18側に配置された正メニスカスレンズである第2のレンズ142cと、これら第1および第2のレンズ142a,142c間に配置された正レンズである第3のレンズ142bとから構成されている。
走査光学系142を透過した光束12は、像面18上に結像する。このため、偏向ユニット16により2次元方向に偏向された光束の像面18上でのスポット像が2次元方向に走査され、像面18上に2次元画像が形成される。
ここで、本参考例(およびこれ以降の参考例)では、走査光学系142の負レンズ(第1のレンズ)142aの中心を通る軸、つまりは偏向ユニット16による光束の2次元方向での偏向範囲の中心軸Ldcを走査光学系142の光軸と定義する。本参考例では、この走査光学系142の光軸(2次元偏向範囲の中心軸)Ldcと偏向ユニット16に入射する光束12の光軸とを含む断面(図14におけるXZ断面であり、以下、偏向ユニット16への入射断面という)において、第2のレンズ142cおよび第3のレンズ142bが走査光学系142の光軸Ldcに対してチルトやシフトして配置されている。
本参考例に従う数値実施例の各光学素子の曲率半径、面間隔、チルト量およびシフト量を表4に示す。チルト量およびシフト量は、偏向ユニット16への入射断面での走査光学系142の光軸Ldcに対する傾き量および移動量を表している。また、本参考例において、偏向ユニット16の偏向ミラーの振幅は、図14の紙面に垂直な方向において機械角で±5.5deg、紙面内方向において±4.13degであり、振幅の8割を光束偏向に使用し、振幅の両側に1割ずつのブランクが残るように設定されている。
本参考例では、集束レンズ13によって収束光束に変換された光源11からの光束12は、偏向ユニット16への入射断面において、中立状態(非振動状態)にある偏向ユニット16の図14の紙面内方向に延びる偏向軸(光束が紙面に対して垂直な方向に偏向されるときの偏向軸)の法線に対して12.5deg傾いて偏向ユニット16に入射する。
このように、偏向ユニット16に、その偏向軸に対して斜め方向から光束12が入射する場合、これを原因として、像面18上に形成される画像には大きなTVディストーションと台形歪みが発生する。
ここで、本参考例の比較例として、図15に示すような光学系を考える。この比較例における走査光学系151は、偏向ユニット16側から順に、負、正、正の光学パワーを持った3枚のレンズ151a,151b,151cにより構成されている。3枚のレンズ151a〜151cは光軸Ldcに対して互いに偏心(シフト)しておらず、走査光学系151を透過して像面18の画像中心へ向かう光束は、各レンズ151a〜151cの中心を透過する。また、図15においても、偏向ユニット16に入射する光束12は、中立状態にある偏向ユニット16の図15の紙面内方向に延びる偏向軸の法線に対して12.5deg傾いている。このため、像面18上における画像には、大きなTVディストーションが発生する。
図16には、図15に示した2次元走査装置におけるTVディストーションの形状を示した表示画像(格子)を、また表5にはそのTVディストーションの大きさを示す。
図16に示すように、本来直線状であるはずの水平の線が大きく湾曲している。その大きさは、上辺にて0.43%、下辺にて1.79%である。また、本来長方形であるはずの画像が台形状に変形している。この台形歪みの大きさは、左右ともに1.32%である(表5)。ここで、TVディストーションおよび台形歪みの大きさは、図17のように示され、その数値は以下の式2で表される。
〈式2〉
TVディストーション
上辺; f/B×100(%)
下辺; e/B×100(%)
台形歪み
左辺; g/2/A×100(%)
右辺; h/2/A×100(%)
このように、図15のような偏心を用いない構成の走査光学系151では、偏向ユニット16に対して光束が斜め入射した場合に発生するTVディストーションを抑えることができず、高品位の2次元画像を得ることができない。
これに対し、本参考例では、走査光学系142の第3のレンズ(正レンズ)142bが、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系142の光軸Ldcに対し、図14における時計回り方向(マイナス側)に10.63degチルトしている。これは、光束12が偏向ユニット16に入射する側(図14の右側)へのチルトであり、偏向ユニット16に入射する光束とレンズの中心軸が平行に近づく向き(入射光束とレンズの中心軸のなす角が小さくなる向き)へのチルトである。
さらに、第3のレンズ142bは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系142の光軸Ldcに対し、図14中の右側(マイナス側)に0.25mmシフトしている。これは、走査光学系142の光軸Ldcに対して光束12が偏向ユニット16に入射する側へのシフトであり、偏向ユニット16への入射光束に近づく側へのシフトである。
そしてこれは、第3のレンズ142bが、走査光学系142の光軸Ldc上で、第1のレンズ(負レンズ)142aの第2面(出射面:表4の12面)から像面18側に0.22mm移動した点を回転中心として、回転半径1.32mmで時計回り方向に10.63deg回転したのと等価である。
また、第2のレンズ(正メニスカスレンズ)142cは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系142の光軸Ldcに対し、光束12が偏向ユニット16に入射する側とは反対側、すなわち図14における左側(プラス側)に0.99mmシフトしている。これは、偏向ユニット16に入射する光束12から離れる側へのシフトである。
本参考例の2次元走査装置により形成される画像(格子)を図18に、その画像のTVディストーションの量を表6に示す。図16と図18から、本参考例では像面18に形成される画像の上辺および下辺の湾曲が小さく、かつ台形の歪みも非常に少なくなっていることがわかる。
また、表6から、TVディストーションの量が上辺で0.41%、下辺で0.79%、台形歪みが左右で0.56%と、図15に示した光学系のTVディストーション(表5)より大きく減少していることがわかる。このように、走査光学系を構成する光学素子に適当なチルトやシフトを与えることで、TVディストーションと台形歪みを良好に補正することができる。
特に、本参考例では、第3のレンズ(正レンズ)142bをチルトさせることで、台形歪みを補正し、第2のレンズ(正メニスカスレンズ)142cをシフトさせることでTVディストーションを補正している。なお、両者は相互に影響を与えるものであり、両者のバランスを取りながら設計する必要がある。また、第2のレンズ(正メニスカスレンズ)142cの凸面を偏向ユニット16側に向けることで、第3のレンズ(正レンズ)142bのチルトにより発生する収差を小さくしている。さらに、第2のレンズ142cをメニスカスレンズとすることで、第3のレンズ142bのチルトによる、像面湾曲への影響を小さくしている。
図19には、走査光学系142から像面18への光束の入射角と像高との関係を示している。横軸は像高(%)、縦軸は入射角(deg)である。
図19から、全画角において、入射角が5deg以下と良好なテレセントリック性を有していることがわかる。このように走査光学系142がテレセントリック性を有することで、デフォーカスによる像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化を小さくすることができる。
本参考例では、走査光学系142とは別に、光源11から偏光ユニット16への入射系として、集束レンズ13を持つ。偏向ユニット16に入射する光束12を集束レンズ13によって収束させることで、集束レンズ13と走査光学系142とでパワーを分担できる。これにより、集束レンズ13が光束12を結像させる効果と、走査光学系142がディストーションと非点隔差を補正する効果とを、集束レンズ13と走査光学系142とがそれぞれ分担することができる。
本参考例では、集束レンズ13と偏向ユニット16との間の光路上に、折り返しミラー141を設けている。この折り返しミラー141を挿入することで、光源11からの光束12を偏向ユニット16に導く入射系をコンパクト化することができ、また光源11の配置に自由度が増す。
また、本参考例において、負レンズ(142a)の硝材のアッベ数ν1は35.3、正メニスカスレンズ(142c)の硝材のアッベ数ν2は52.6であり、
ν1<ν2
を満たす。
このアッベ数の関係により、走査光学系142は、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射する場合に、色収差を補正する効果を持つ。本参考例において、光源11からの光の波長が、F’線(波長479.99nm)、e線(波長546.07nm)、C’線(643.85nm)である場合の横収差図を図20に示す。
図20は、偏向ユニット16によるx方向(水平方向)、y方向(垂直方向)への光束偏向による画像の形成範囲をそれぞれ1としたとき、
(a)x:−0.5,y:−0.5
(b)x:−0.25,y:−0.25
(c)x:0,y:0
(d)x:0.25,y:0.25
(e)x:0.5,y:0.5
の各位置での横収差図を示している。また、図20において実線はe線、一点鎖線はC’線、破線はF’線を示している。図20から、光源11から互いに異なる複数の波長の光を出射させた場合に、走査光学系142は良好な色収差補正を行うことが分かる。なお、光源11からの光が単一の波長を有する場合においては、光源11の波長変化が生じたときでも、走査光学系142はその性能の変化がほとんど生じない効果を持つ。
(参考例2)
図21には、本発明の参考例2である2次元走査装置の垂直断面を示している。本参考例は、参考例1の像面のサイズを大きくしたものに相当する。この場合、偏向ユニット16の偏向ミラーの振幅は参考例1と同じとし、該振幅のうち光束偏向に使用する幅を8割から9割にして、両側のブランクを1割から0.5割に変更した。これにより、像面のサイズも参考例1に比べて1.11倍に大きくなる。なお、偏向ユニット16への光束12の斜め入射角は、12.5degであり、参考例1と同じである。また、集束レンズ13’を、平行光束を収束する無限共役のレンズから、点光源11’からの発散光束を、収束光束に変換する有限共役のレンズに変更している。
本参考例に従う数値実施例の各光学素子の曲率半径、面間隔、チルト量およびシフト量を表7に示す。チルト量およびシフト量は、偏向ユニット16への入射断面での走査光学系211の光軸Ldcに対する傾き量および移動量を表している。
本参考例においても、実施形態4と同様に、走査光学系211の光軸Ldcに対して、走査光学系211の第3のレンズ(正レンズ)211bをチルトさせるとともにシフトさせ、さらに第2のレンズ(正メニスカスレンズ)211cをシフトさせることで、像面18上に形成される画像のTVディストーションおよび台形歪みを補正している。
本参考例では、第3のレンズ211bは、偏向ユニット16への入射断面(XZ断面)において、走査光学系211の光軸Ldcに対して図21での時計回り方向(マイナス側)に15.41degチルトしている。これは、走査光学系211の光軸Ldcに対して光束12が偏向ユニット16へ入射する側へのチルトであり、偏向ユニット16に入射する光束とレンズの中心軸が平行に近づく向き(入射光束とレンズの中心軸のなす角が小さくなる向き)へのチルトである。
さらに、第3のレンズ211bは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系211の光軸Ldcに対し、図21での右側(マイナス側)に0.72mmシフトしている。これは、光束12が偏向ユニット16に入射する側へのシフトであり、偏向ユニット16への入射光束12に近づく側へのシフトである。
そしてこれは、第3のレンズ211bが、走査光学系211の光軸Ldc上で、第1のレンズ(負レンズ)211aの第1面(入射面:表7の11面)から0.50mm偏向ユニット16側に移動した点を回転中心として、回転半径2.60mmで時計回り方向に15.41deg回転したのと等価である。
また、第2のレンズ211cは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系211の光軸Ldcに対し、図21での左側(プラス側)に0.83mmシフトしている。これは、走査光学系211の光軸Ldcに対して偏向ユニット16に光束12が入射する側とは反対側、すなわち偏向ユニット16に入射する光束12から離れる側へのシフトである。
図22には本参考例の2次元走査装置による走査画像(格子)を、表8には該走査画像のTVディストーションと台形歪みの量を示す。
偏向ユニット16で光束偏向に使用する振幅が大きくなると、発生するTVディストーションや台形歪みの量も大きくなる。しかし、表8から、本参考例で発生するTVディストーションは、上辺で0.39%、下辺で0.70%、台形歪みは左右ともに0.57%といずれも小さく、TVディストーションと台形歪みが良好に補正されていることがわかる。
このように、偏向ユニット16による光束の偏向範囲(偏向角)が大きくなっても、第3のレンズ211bをチルトおよびシフトさせ、第2のレンズ211cをシフトさせることで、TVディストーションおよび台形歪みを良好に補正することができる。
また、図23には、走査光学系211から像面18への光束入射角と、像面18上の画像における位置との関係を示す。横軸は像高(%)、縦軸は像面18への入射角である。図23から、本参考例の走査光学系211についても、像面18への入射角が5deg以下と良好なテレセントリック性を有していることがわかる。走査光学系211がテレセントリック性を有することで、デフォーカスによる像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化が小さくなる。
(参考例3)
図24には、本発明の参考例3である2次元走査装置の垂直断面を示している。本参考例は、参考例2の走査光学系に回転対称非球面を導入したものに相当する。偏向ユニット16の振幅とその光束偏向への使用幅、さらに偏向ユニット16への光束12の斜め入射角などは、参考例2と同じである。
本参考例に従う数値実施例の各光学素子の曲率半径、面間隔、チルト量およびシフト量を表9に示す。チルト量およびシフト量は、偏向ユニット16への入射断面での走査光学系の光軸Ldcに対する傾き量および移動量を表している。また、回転対称非球面である第3のレンズ(正レンズ)241bの像面18側の面(出射面:表9中の面番号14面整理番号)および第2のレンズ(正メニスカスレンズ)241cの偏向ユニット16側の面(入射面:表9中の面番号15面)については、非球面係数も合わせて示している。なお、回転対称非球面は、実施形態3に説明した式1で表される。
本参考例(数値参考例)では、第3のレンズ241bは、偏向ユニット16への入射断面(XZ断面)において、走査光学系241の光軸Ldcに対し、図24中の時計回り方向(マイナス側)に13.09degチルトしている。これは、走査光学系241の光軸Ldcに対して光束12が偏向ユニット16に入射する側へのチルトであり、偏向ユニット16に入射する光束とレンズの中心軸が平行に近づく向き(入射光束とレンズの中心軸のなす角が小さくなる向き)へのチルトである。
さらに、第3のレンズ241bは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系241の光軸Ldcに対し、図24中の右側(マイナス側)に0.59mmシフトしている。これは、走査光学系241の光軸Ldcに対して光束12が偏向ユニット16に入射する側へのシフトであり、偏向ユニット16への入射光束12に近づく側へのシフトである。
そしてこれは、第3のレンズ241bが、走査光学系241の光軸Ldc上で、第1のレンズ(負レンズ)241aの第1面(入射面:表9中の面番号11面)から0.49mm、偏向ユニット16側に移動した点を回転中心として、回転半径2.54mmで時計回り方向に13.09deg回転したのと等価である。
また、第2のレンズ241cは、偏向ユニット16への入射断面において、走査光学系241の光軸Ldcに対して、図24の左側(プラス側)に0.72mmシフトしている。これは、走査光学系241の光軸Ldcに対して光束12が偏向ユニット16に入射する側とは反対側へのシフトであり、偏向ユニット16に入射する光束12から離れる側へのシフトである。
図25には本参考例の網膜走査型表示装置による走査画像(格子)を、表10には該走査画像のTVディストーションと台形歪みの量を示す。
表10から、本参考例で発生するTVディストーションは、上辺で0.45%、下辺で0.55%、台形歪みは左右ともに0.55%といずれも小さく、TVディストーションと台形歪みが良好に補正されていることがわかる。
本参考例では、走査光学系241に回転対称非球面を導入することで、正レンズである第3のレンズ241bをチルトおよびシフトさせた効果と、正メニスカスレンズである第2のレンズ241cをシフトさせたことによるTVディストーションおよび台形歪みを補正する効果とを保持したまま、収差に与える影響を軽減することができる。このため、TVディストーションと台形歪みへの補正効果を振り分けることができる。
また、図26には、走査光学系241から像面18への光束の入射角と像面18上の位置との関係を示す。横軸は画像対角方向の相対位置(%)、縦軸は像面への入射角である。
図26から、本参考例においても、走査光学系241は、像面18への光束入射角が5deg以下という良好なテレセントリック性を有していることがわかる。このテレセントリック性を有することで、走査光学系241は、デフォーカスによる像面18上での走査スポットの移動特性の変化および像面サイズの変化が小さいものとなる。
なお、参考例1〜3では、偏向ユニットへの入射方向をすべて主走査方向の偏向軸を含む断面から入射させているが、副走査方向の偏向軸を含む断面から入射させてもかまわない。
(参考例4)
図27には、本発明の参考例4である網膜走査型表示装置の垂直断面を示している。この網膜走査型表示装置は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラといった撮像装置や各種観察機器等の光学機器300に搭載され、電子ファィンダを構成するものである。
本参考例の網膜走査型表示装置は、参考例3に示した2次元走査装置271の像面18の後方に、接眼光学系272を配置したものであり、偏向ユニット16で光束を2次元方向に偏向走査することで、観察者の網膜上に直接画像を形成(描画)する。
2次元走査装置271は参考例3と同じものであるため、ここでは、2次元走査装置271による1次結像面273(参考例3の像面18に相当する)よりも後方の接眼光学系272とその光学作用についてのみ説明する。
一次結像面273において結像した光束12は、拡散光束となり、接眼光学系272に入射する。接眼光学系272を構成する各光学素子の曲率半径および面間隔等を表11に示す。接眼光学系272は、すべて光軸が一致する第1〜第6の球面レンズ(但し、第1および第2球面レンズと第5および第6球面レンズはそれぞれ貼り合わせレンズ)272a〜272dにより構成されている。
本参考例において、接眼光学系272により光束12は略平行光束に変換され、観察者の眼(瞳)274に入射する。観察者の瞳274に入射した光束12は、眼の水晶体の作用によって網膜275上に結像し、スポット像276を結ぶ。このため、偏向ユニット16によって光束12が2次元方向に偏向されることにより、スポット像276は観察者の網膜275上で2次元方向に走査される。これにより、観察者の網膜275で走査されるスポット像276の残像効果によって2次元画像が観察者に認識される。
本参考例において、網膜275上に形成される画像(格子)を図28に、そのTVディストーションおよび台形歪みの量を表12に示す。
表12から、本参考例で発生するTVディストーションは、上辺で0.33%、下辺で0.58%、台形歪みは左右ともに0.58%といずれも小さく、TVディストーションと台形歪みが良好に補正されていることがわかる。
本参考例では、2次元走査装置271により1次結像面273上に形成された空中像を接眼光学系272により拡大するのと等価となる。よって、1次結像面273上の空中像のTVディストーションおよび台形歪みが補正されているため、網膜275上に形成される画像のTVディストーションおよび台形歪みも小さくなる。
また、本参考例において、2次元走査装置271は略テレセントリック光学系となっている。このため、接眼光学系272を1次結像面273に対して垂直な方向(走査光学系241の光軸に平行な方向)に移動させることで、容易に視度調整を行うことが可能である。
また、本参考例では、光源からの光の波長を特に指定していないが、光源として赤、緑、青の波長を持つ複数の発光部を用いることで、フルカラーの網膜走査型表示装置を構成することも可能である。
なお、上記参考例1〜4では、すべて回転対称の球面および非球面のレンズを用いた場合について説明したが、回転非対称非球面のレンズを用いても同等の効果を得ることが可能である。
(実施形態4)
図29には、本発明の実施形態4である網膜走査型表示装置の垂直断面を示している。この網膜走査型表示光学系は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラといった撮像装置や各種観察機器等の光学機器400に搭載され、電子ファィンダを構成するものである。
本実施形態の網膜走査型表示装置は、実施形態1に示した2次元走査装置291の像面18の後方に、接眼光学系292を配置したものであり、偏向ユニット16で光束を2次元方向に偏向走査することで、観察者の網膜上に直接画像を形成(描画)する。
2次元走査装置291は実施形態1と同じものであるため、ここでは、2次元走査装置291による1次結像面293(実施形態1の像面18に相当する)よりも後方の接眼光学系292とその光学作用についてのみ説明する。
一次結像面293において結像した光束12は、拡散光束となり、接眼光学系292に入射する。接眼光学系292を構成する各光学素子の曲率半径および面間隔等を表13に示す。接眼光学系292は、すべて光軸が一致する第1〜第6の球面レンズ(但し、第1および第2球面レンズと第5および第6球面レンズはそれぞれ貼り合わせレンズ)292a〜292dにより構成されている。
本実施形態において、接眼光学系292により光束12は略平行光束に変換され、観察者の眼(瞳)294に入射する。観察者の瞳294に入射した光束12は、眼の水晶体の作用によって網膜295上に結像し、スポット像296を結ぶ。このため、偏向ユニット16によって光束12が2次元方向に偏向されることにより、スポット像296は観察者の網膜295上で2次元方向に走査される。これにより、観察者の網膜295で走査されるスポット像296の残像効果によって2次元画像が観察者に認識される。
本実施形態における網膜295上での光学系の収差図を図30に示す。図30において、収差図の導出の際には、観察者の瞳294の位置に焦点距離22mmの理想レンズを配置し、網膜295上に結像させた収差をプロットしている。また、図30の横軸は瞳径を表しており、本実施形態では瞳径De=1.5mm(−0.75mm<x<0.75mm)とする。
図30から、本実施形態の網膜走査型表示装置は、非点収差が小さく、かつディストーションの小さい高品位な画像を提供できることがわかる。
また、本実施形態の光学系に、光源11からの光としてF’線(波長479.99nm)、e線(波長546.07nm)、C’線(643.85nm)を与えた場合の横収差図を図31に示す。
図31において、収差図の導出の際には、観察者の瞳294の位置に焦点距離22mmの理想レンズを配置し、網膜上に結像させた収差をプロットしている。図31で、実線はe線、1点鎖線はC’線、破線はF’線を示している。また、図31において、(a)は網膜295上における画像中心での、(b)は像高50%での、(c)は像高100%での横収差図である。各像高において、色収差の補正が良好に行われていることがわかる。
また、本実施形態において、2次元走査装置291は略テレセントリック光学系となっている。このため、接眼光学系292を1次結像面293に対して垂直な方向(走査光学系17の光軸に平行な方向)に移動させることで、容易に視度調整を行うことが可能である。
また、本実施形態では、光源からの光の波長を特に指定していないが、光源として赤、緑、青の波長を持つ複数の発光部を用いることで、フルカラーの網膜走査型表示装置を構成することも可能である。複数の光源を用いる場合、赤、緑、青の光源からの光束を、ダイクロイックプリズムなどの色を合成する手段で合成し、赤・緑・青それぞれの光源ごとに変調を行うことで、カラー画像を表現する。その他、青、緑、赤の3色の光を順次(フィールドシーケンシャルに)、偏向ユニットに向けることによっても、カラー画像の表現は可能である。
これ以外にも、白色の光源と青、緑、赤の3色のフィルタを回転可能なターレット上に配置したものとを組み合わせて、青、緑、赤の3色の光を順次、偏向ユニットに向けることができる。
なお、このように光源から青、緑、赤の3色の光を偏向ユニットへ向けつつ偏向ユニットと走査光学系を使ってカラーの2次元画像を形成する際の、光源や偏向ユニットの制御方法についての説明は省略する。
なお、上記実施形態1〜4では、偏向ユニットとして1つの偏向ミラーで2次元方向へ光束の偏向が可能な、共振運動を利用したものを用いた場合について説明したが、1次元方向に光束を偏向可能な偏向器を2つ組み合わせる方法や、共振を用いたものではなく、等角速度運動するガルバノミラーのような偏向器を用いることも可能である。
さらに、上記実施形態1〜4では、走査光学系にガラスレンズを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、射出成型により成形されたプラスチックレンズを用いることにより、製造が容易になり、コストダウンが図れる。
また、前述した特開平8−146320号公報に提案されているように、電気的にTVディストーションを補正する技術もあるが、この種の電気的な補正と本発明における走査光学系による光学的な補正とを組み合わせて画像の歪みを補正する構成を採ることも可能である。
電気的に補正する場合、偏向ユニットを制御する駆動回路(不図示)により2次元走査の際の反射面の傾斜角度を、光学的補正後の残存ディストーションを補正するように制御する。