JP4174287B2 - 2次元走査装置及び画像表示装置 - Google Patents

2次元走査装置及び画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光を2次元的に走査することによって2次元画像を投影表示する2次元走査装置ならびにこれを用いた走査型画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
被走査面上を光スポットで2次元的に走査してい2次元画像を形成する2次元走査装置はこれまで種々提案されている。
【0003】
例えば、特開平08−146320号公報では、光源手段から出射した光束を2次元的に偏向可能な偏向手段により偏向し、歪曲特性がf・sinθ特性を成している走査レンズにより被走査面上を2次元的に走査する2次元走査装置が開示されている。これは、走査レンズのf・sinθ特性と電気的な補正とにより画像の歪みを補正したものである。
【0004】
また、特開2000−281583号公報では、光源から発せられた光を偏向手段により偏向し、光学パワーを有し偏心した非回転対称面を含む2面以上の反射面を有する光学部材を含んだ走査光学系により被走査面上を2次元走査する例が開示されている。これは、光学パワーを有する反射面のレンズ作用と偏向作用とにより、走査光学系を小型化したものである。更に、軸上光線でも偏心によってコマ収差、非点収差等の偏心収差が発生するが、反射面を回転非対称面とすることでこの偏心収差を補正したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、2次元走査装置は光源手段から発せられた光束を2次元的に偏向可能な偏向手段により偏向し、走査光学系を介して被走査面上に2次元画像を形成している。このとき、光束が偏向手段により2次元的に偏向されることにより、被走査面上の2次元画像が歪むことが一般に知られている。所謂ディストーションである。ディストーションには、台形歪み、等速走査性のディストーションと直進走査性のディストーション、及び被走査面上に描かれた画像の枠が湾曲することを称したTVディストーションとがある。
【0006】
特開平08−146320号公報では、走査光学系のf・sinθ特性と電気的な補正とによりTVディストーションを補正したものであるが、電気的に補正することは困難であった。
【0007】
特開2000−281583号公報では、TVディストーションについて考慮したものではなかった。
【0008】
また、走査光学系を構成する光学部材に光学的パワーを有する被回転対称反射面を有しており、面精度が非常に厳しいという難点があった。また、光学素子の内部に折り返しの光路を確保する必要がある為、光学素子の厚みが増大するという問題があった。更に光学素子をプラスチックで構成した場合には、内部屈折率分布や複屈折の影響を大きく受けることとなり問題であった。
【0009】
そこで、本発明では光学パワーを有した反射面を含まない走査光学系を用いてTVディストーションや台形歪みを補正することができる2次元走査装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
その目的を達成するために、本発明の2次元走査装置は、光源から発せられた光束を2次元方向に偏向する偏向手段と、前記偏向手段の反射面により偏向された光束を被走査面上に結像させる走査光学系と、を有する2次元走査装置であって、前記2次元方向のうち一方の1次元方向を含む面内において、前記光源から発せられた光束が、前記光源から発せられた光束が前記偏向手段の反射面によって偏向された2次元偏向範囲の中心の軸に対して斜め方向から前記偏向手段の反射面に入射しており、前記走査光学系は、光学的パワーを有する反射面を持たず、前記走査光学系は、負の光学的パワーを有し前記偏向手段側に凹面を向けた第1メニスカスレンズと、前記第1メニスカスレンズよりも前記被走査面側に配置されており、正の光学的パワーを有し前記偏向手段側に凹面を向けた第2メニスカスレンズと、を含んでおり、前記第2メニスカスレンズが、前記第1メニスカスレンズに対して、前記1次元方向を含む面に垂直な軸を回転軸として前記光源から発せられた光束が前記反射面に入射する側へチルトしており、且つ前記光源から発せられ前記反射面に入射する光束に近づく方向にシフトしている
【0014】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1における2次元走査装置の斜視図であり、本実施例1は同装置をプロジェクター等の画像表示装置に使用した例である。
【0015】
図1中、1は光源である。光源1は、レーザダイオード、LED、ランプ等より成り、不図示の駆動回路により例えば画像信号に応じて発光を制御される。光源1から発せられた発散光束は2枚の集光レンズ2a,2bを貼り合わせた集光レンズ系2により収束光束に変換され、開口絞り3によって光束幅を制限されている。4は偏向器であり、例えば、互いに直交する方向に延びる2つの回転軸回りに回動可能な1面の反射面を有し2次元方向に共振可能な偏向器(偏向手段)であり、偏向器4は、光源1から発し、集光レンズ系2、開口絞り3を経て、折り返しミラー7で折り返された光束を、反射して偏向し、水平及び垂直の2次元方向(X,Y方向)に偏向している。偏向器4は不図示の駆動回路により例えば画像信号に応じてその傾斜方向と傾斜角度が制御される。
【0016】
5はfθ特性を有する走査光学系である。走査光学系5は3枚の球面レンズ5a,5b,5cを有しており偏向手段4によって偏向された偏向光束を被走査面6上にスポットとして結像させている。このとき、偏向光束は走査光学系5を介して被走査面6上に導光され、偏向器が水平・垂直方向に共振運動することによって被走査面6上を光走査している。これにより、被走査面6上に2次元画像を表示している。
【0017】
本実施例1の2次元偏向器4は、例えば半導体製造技術などを用いた公知のMEMS(Micro Electro−Mechanical Scanner)であり、非常に小型・軽量である。
【0018】
図2に偏向器4の要部概要図を示すが、同時に示されるものは一例であり、本発明においては偏向器の構成に制限は無い。
【0019】
図2において、4aは反射面であり、ここに光源1からの光束が入射し、反射及び偏向される。反射面4aはY軸方向に延びる第1のトーションバー4bによって第1の筐体4cへ支持されており、第1のトーションバー4bを回転中心軸として反射面4aを水平方向(X軸方向)に振動させることができる。また、第1の筐体4cはX軸方向に延びる第2のトーションバー4dによって第2の筐体4eへ支持されており、第2のトーションバーを回転中心軸として第1の筐体4cならびにそれに支持された反射面4aを垂直方向(Y方向)に振動させることができる。これにより、偏向器4は、2次元光偏向デバイスとして、水平及び垂直の2次元方向に振動可能となる。
【0020】
また、2次元偏向デバイスは、例えば半導体製造技術などを用いたMEMS技術で作製されており、非常に小型・軽量である利点がある。
【0021】
図3は本実施例1における2次元走査装置の垂直断面(YZ断面)図である。ここでは、この垂直断面は偏向器4の反射面4aに光束が斜入射する時の入射平面に対応している。
【0022】
本実施例では、光源1からの光束を偏向器4へ入射させる際、入射光束を垂直方向の下側(図3中偏向器4の右側)から角度15(deg)で偏向器4の反射面4aへ入射させている。偏向器4は2次元光偏向デバイスであり、図2に示した反射面4aを水平方向へ振動させる際の回転中心軸となる第1のトーションバー4bは垂直方向と平行に、反射面4aを垂直方向へ振動させる際の中心軸となる第2のトーションバーは水平方向と平行に配置してある。よって、光源手段1からの光束は第1のトーションバー4bに対して斜入射させていることとなる。このように、偏向手段4の中心軸に対して斜入射させた場合、通常は、被走査面(例えばスクリーン)上に表示された画像はTVディストーションが大きく発生して問題となる。
【0023】
しかしながら、本実施例1においては、球面レンズ5bを反射面4aに入射する光束の入射平面に垂直な軸であるX軸に平行な軸の回りで、偏向器4へ光束が斜入射する側(マイナス側)へ、偏向器4の光束偏向範囲の中心の軸(光線)Aに対してチルト及びシフトさせるとともに、球面レンズ5cを偏向器4へ光束が斜入射する側とは反対側(プラス側)へ、光束偏向範囲の中心の軸(光線)Aに対してシフトさせることにより、このディストーションを良好に補正している。これに関しては、数値例を挙げて後で詳しく述べる。
【0024】
図4は、本実施例1に対する比較例である2次元走査装置の垂直断面図を示す。
【0025】
図4に示す比較例おいては、本実施例と同様に、光源1から発せられた発散光束が集光レンズ系2により収束光束に変換され、開口絞り3によって光束幅を制限され、偏向器4により水平及び垂直の2次元方向に反射・偏向されている。5はfθ特性を有する走査光学系である。走査光学系5は、互いに共軸の3枚の球面レンズ5a,5b,5cを有しており、偏向手段4によって偏向された偏向光束を被走査面6上に光スポットとして結像させている。このとき、偏向器4が水平及び垂直方向に共振運動することにより走査光学系5を介して被走査面6上を光走査している。
【0026】
表1に比較例の走査光学系の構成を表すレンズデータを示す。
【0027】
比較例では、走査光学系5を構成する3枚の球面レンズ5a,5b,5cはシフトやチルトを与えておらず、被走査面6上に表示される画像の中心へ向かう光束は夫々の球面レンズ5a,5b,5cの光軸を通過する。
【0028】
また、光源1からの光束を垂直断面内の下方から角度15(deg)で偏向器4の反射面へ入射させており、垂直断面において斜入射の方式で光束を偏向器4へ入射させており、被走査面6上では偏向手段5で2次元方向に光走査することによるTVディストーションと偏向器4へ斜入射させたことによる台形歪みとが発生し問題となる。
【0029】
図5に比較例における表示画像(格子)を示した。また、表2に比較例におけるTVディストーションならびに台形歪みの量を示した。
【0030】
図5に示す通り、画像の枠を構成する4本の線のうち、枠の上辺L1及び下辺L2は水平に延びる直線のはずであるが、各辺の中央部が下側に湾曲したTVディストーションが発生している。このとき、TVディストーションは上辺が1.59%、下辺が1.93%であった(表2参照)。また、枠の左辺L3及び右辺L4は垂直に延びる直線のはずであるが、画像の上側から下側にかけて間隔が広がるように傾斜しており、台形歪みが発生している。このとき、台形歪みは左辺・右辺ともに2.11%であった(表2参照)。
【0031】
このように、比較例の構成ではTVディストーションや台形歪みが大きく発生して良好な2次元画像を得ることができない。
【0032】
そこで、本実施例1では前述したとおり、走査光学系を構成する球面レンズ5a,5b,5cのうち、少なくとも1つのレンズをチルトさせ、少なくとも1つのレンズをシフトさせてことにより、TVディストーションならびに台形歪みを良好に補正若しくは問題ない程度に小さくしている。
【0033】
表3に本実施例1の走査光学系5の構成を示すレンズデータを示す。
【0034】
走査光学系5は3枚の球面レンズ5a,5b,5cから成り、偏向器4側から順に第1走査レンズ、第2走査レンズ、第3走査レンズとする。第1走査レンズ5aは負の光学的パワー(屈折力、1/焦点距離)を有し、偏向器4側に凹面を向けたメニスカスレンズである。第2走査レンズ5bは正のパワーを有し偏向器4側に凹面を向けたメニスカスレンズ、第3走査レンズ5cは正のパワーを有し偏向器4側に凹面を向けたメニスカスレンズである。
【0035】
このとき、垂直断面内において第2走査レンズ5bを時計周り(マイナス側)に36.1(deg)チルトさせている。これは、第2走査レンズ5bの光軸が偏向器4へ斜入射する光束L側に傾けており、斜入射する光束Lと平行に近づく方向である。また、第2走査レンズ5bは下側(マイナス側)に4.64(mm)シフトしている。これは、斜入射する光束Lに近づく方向へ移動させている。よって、第2走査レンズ5bは回転中心が偏向器4側にあり、入射光束に近づくようにチルトさせている。このとき、回転中心は第2走査レンズ5bの光入射面から6.36(mm)偏向器4側へ移動した位置(z,x,y)=(11.14,0,0)にある。
【0036】
更に、第3走査レンズ5cを上側(プラス側)に2.76(mm)シフトさせている。これは、入射光束から離れる方向である。
【0037】
図6に本実施例1における表示画像(格子)を示す。また、表4に本実施例におけるTVディストーションならびに台形歪みの量を示す。
【0038】
図6に示した画像のTVディストーションは、枠の上辺L1が0.12%、下辺L2が0.21%であり、比較例では湾曲していた上辺L1ならびに下辺L2をほぼ直線に補正している。また、台形歪みは、左辺・右辺ともに0.10%であり、比較例では傾斜していた線を垂直な線に補正している。このように、走査光学系5を構成する走査レンズに適切なチルトやシフトを与えることにより、TVディストーションと台形歪みを、問題ない程度に小さくし、良好に補正することができる。
【0039】
本実施例1の走査光学系は、特に、第2走査レンズ5bをチルトさせることでTVディストーションを補正し、第2走査レンズ5bならびに第3走査レンズ5cをシフトさせることで台形歪みを補正している。しかし、これらチルトによる補正とシフトによる補正は互いにも影響を与えるので、バランスをとることが重要となる。
【0040】
よって、偏向器4に光源からの光束を斜入射させ、斜入射させた断面内、即ち入射平面内において、走査光学系5を構成する透過型光学素子のうち、少なくとも1つの透過型光学素子をチルトさせ、少なくとも1つの透過型光学素子をシフトさせることにより、被走査面6上に表示された画像のTVディストーションならびに台形歪みを良好に補正し、高品位な画像を表示できる2次元走査装置を提供することができる。
【0041】
また、本実施例1では、チルトさせる走査レンズ(光学的パワーを有する反射面を持たない光学素子)5bを偏向器4側に凹面を向けたメニスカス形状としている。これにより、走査レンズ5bがチルトした際に、TVディストーション及び台形歪みに与える影響力を保ったまま、像面湾曲に与える影響を軽減することができる。よって、TVディストーションや台形歪みの補正を像面湾曲とは切り分けて補正することが可能となり、TVディストーションならびに台形歪みの補正が容易となる効果がある。
【0042】
本実施例1では偏向手段に2次元方向に共振可能な1つの偏向器4を使う例を挙げたが、これに限ったものではなく、1次元方向に共振する偏向器を2つ組合せて2次元方向に偏向可能な偏向手段としても本実施例1と同等の効果を有することができる。また、偏向器は共振運動するものに限ったものではなく、回転運動する例えばガルバノミラーやポリゴンミラーとしてもよい。
【0043】
本実施例1の走査光学系を構成する3つの光学素子(走査レンズ)の光学面(被走査面へ向けるために光に作用する面)は全て光を透過させつつその波面を制御する屈折面にて構成している。屈折面は反射面に対して1/4の精度で良いことから、製造が容易となるメリットがある。また、反射面はチルトさせた後の光路に取り回しの制約を受けるが、透過型の屈折面はその影響を受けないので、配置の自由度が大きいメリットもある。更に、通常、反射面での反射率と比べて屈折面での透過率が高く、屈折面は光量損失が非常に少ないメリットもあり、特に面数が多い場合に効果的である。また、反射防止膜を付けることにより透過率は非常に高くなる。
【0044】
また、屈折面と反射面とが混在する光学素子では光学素子内部で光路を確保する必要があり、光学素子自体が大型化する問題がある。更に、この大型化の問題は、光学素子をプラスチック成形で作ると生じる屈折率分布や複屈折の影響が大きくでるという問題も生じさせてしまう。
【0045】
しかしながら、本実施例1のように光学面を屈折面にて構成した走査レンズでは光路を確保する必要のないことから薄肉化が可能であり、小型化に有利である。
【0046】
従って、走査光学系に被走査面に光を向ける反射面を持たない光学素子を用いると、前述の特開2001−281583号公報の同反射面を持つ光学部材に比べて、様様な効果を享受できる。また、本発明においては、屈折面の代わりに、或いは屈折面と組み合わせて光を透過回折する回折面を用いる光学素子も、被走査面における画像の歪みを補正するに使用できる。
【0047】
また、本実施例1では、光源手段からの光束をZY平面内において斜入射させたがこれに限ったものでなく、ZX平面内において斜入射させた場合は透過型光学素子をZX平面内においてチルト及び/又はシフトさせることにより、本実施例1と同様にTVディストーションや台形歪みを補正することができ、ZX平面とZY平面の両方において斜入射させた場合は透過型光学素子をZX平面とZY平面の少なくともどちらか一方の1次元方向において透過型光学素子をチルト及び/又はシフトさせることにより、本実施例1と同様にTVディストーションや台形歪みを補正することができる。
【0048】
(実施例2)
図7は本発明の実施例2における2次元走査装置の垂直断面図である。
【0049】
本実施例2と実施例1との相違点は、被走査面6上に表示する画面サイズを大きくした点であり、そのため走査光学系の構成が異なっているが、図7に示す装置は走査光学系を除いて図3の装置と同じ構成を有している。
【0050】
本実施例2は、実施例1と比較して画面サイズを1.4倍大きくできる走査光学系でありながら、全長(偏向器4と被走査面6の間隔)は1.1倍となるだけといった、小型化を図った例である。
【0051】
表5に本実施例2における走査光学系5の構成を表すレンズデータを示す。
【0052】
本実施例2においても、実施例1と同様に、走査光学系5を構成する3枚の走査レンズ5a,5b,5cのうち、第2走査レンズ5bをチルト及びシフトさせ、第3走査レンズ5cをシフトさせることにより、被走査面6上に表示される画像のTVディストーションならびに台形歪みを補正している。このとき、ZY平面である垂直断面内において、第2走査レンズ5bは、偏向器4へ光源手段1からの光束が斜入射する側(マイナス側)に44.38(deg)チルトさせ、且つ偏向器4へ光源手段1からの光束が斜入射する側(マイナス側)へ5.05mmシフトさせている。また、第3走査レンズ5cは偏向手段4へ光源手段1からの光束が斜入射する側とは反対の側(プラス側)へ24.57mmシフトさせている。
【0053】
図8に本実施例2の表示画像(格子)を示し、表6に本実施例2のTVディストーションと台形歪みの量を示す。
【0054】
本実施例2においては、TVディストーションは、画像の枠の上辺で0.12%、下辺で0.24%、左辺で0.11%、右辺で0.11%であり、問題ない程度に小さく、良好に補正されている。また、台形歪みは、画像の枠の左辺及び右辺で0.06%であり、問題ない程度に小さく、良好に補正されている。
【0055】
また、画面サイズを大きくしつつ全長をコンパクト化したい場合、TVディストーションもしくは台形歪みを補正するには走査レンズ5bのチルト量が大きくなり、走査レンズ5bのチルトに起因する被走査面6上で発生するアスの量も増大する。そこで、本実施例2では、アナモフィックなパワーを有する光学素子を走査光学系の中に含めている。具体的には、第2走査レンズ5bと第3走査レンズ5cの双方の両面共にアナモフィック面に構成したアナモフィックレンズとしている。
【0056】
特に、第2走査レンズ5bにおいては、垂直断面(ZY断面)の光学的パワーを水平断面(ZX断面)の光学的パワーよりも小さくしてノンパワーに近づけて、第2走査レンズ5bがチルトしたことによる垂直断面内の像面湾曲の傾きを低減させている。これにより、第2走査レンズ5bを大きく傾けてTVディストーションならびに台形歪みを良好に補正することができる。また、第3走査レンズ5cもアナモフィックレンズとすることで、アスを補正することができる。
【0057】
チルトさせる走査レンズは偏向手器4に凹を向けたメニスカスレンズとすることが好ましので、第2走査レンズ5bは水平断面および垂直断面共に偏向器4側に凹面を向けたメニスカスな形状をしたアナモフィックレンズである。
【0058】
また、第2走査レンズ5bは、水平断面の曲率半径に対して垂直断面の曲率半径を緩くする(絶対値の大きな曲率半径にする)ことにより、TVディストーションならびに台形歪みを補正する効果を大きくすることができる。
【0059】
このように、アナモフィックな光学的パワーを有する光学素子をチルト及び/又はシフトさせることによりTVディストーションや台形歪みを補正する効果とアスを補正する効果を得ることができ、高品位な大画面が得られる2次元走査装置を提供することができる。
【0060】
特に、チルトさせる光学素子をアナモフィックなパワーとし、チルトさせる断面を第1の断面とし、第1の断面と光軸とに直交する断面を第2の断面としたときに、第1の断面における光学的パワーを第2の断面における光学的パワーよりも小さくしてノンパワーに近づけることにより、チルトさせることの像面湾曲への影響を小さくしてTVディストーションや台形歪みの補正に集中させることができ、TVディストーションや台形歪みを独立して補正することができるメリットがある。
【0061】
本実施例2のように、チルト及び/又はシフトさせた、使用しない部分が多い走査レンズ5b,5cは、使用する部分のみを残してカットすることで、光学箱にコンパクトに収めることができる。
【0062】
(実施例3)
図8は本発明の本実施例3における2次元走査装置の垂直断面図である。
【0063】
本実施例3と実施例2との相違点は、被走査面6上に表示する画面サイズを更に大きくした点であり、本実施例3は、基本的な構成が実施例2と同じであるので、相違点のみ詳しく述べる。
【0064】
本実施例3は、被走査面6上に表示する画面サイズを4.1(inch)としており、実施例2に対して画面サイズを2.86倍大きくした走査光学系を有している。
【0065】
表7に本実施例3の走査光学系の構成を表すレンズデータを示す。
【0066】
本実施例3では、第2走査レンズ5bを偏向手段4側へ凹を向けたメニスカス形状を有したアナモフィックレンズとし、且つ両面が水平断面(ZX断面)と垂直断面(ZY断面)とで互いに異なる非球面量を有する回転非対称非球面に構成している。
【0067】
また、本実施例における非球面は、光軸方向(Z方向)における変位量Zが、水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)の各位置において、次式で表現される形状としている。
【0068】
【外1】
Figure 0004174287
【0069】
ここで
z −−−−− z軸に対して平行な面のサグ
CUX,CUY −−−−− それぞれxとyの曲率
KX,KY−−−−− それぞれxとyの円錐係数で、ASP面タイプのKと同様の方法で離心率を求めます。
AR,BR,CR,DR −−−−− 円錐から4次,6次,8次,10次の変形した回転対称部を表します。
AP,BP,CP,DP −−−−− 円錐から4次,6次,8次,10次の変形した非回転対称部を表します。
【0070】
本実施例3は、全長は実施例2に対して2.77倍と画面サイズを大きくした倍率にほぼ等しく、更に偏向器4から第3走査レンズ5cまでの距離を42.00(mm)として実施例2とほぼ等距離に配置している。これは、全長に対する偏向器4から第3走査レンズ5cまでの距離を縮小しており、走査光学系の小型化を図っている。本実施例3において、全長L=175.88(mm)、偏向器4から最も被走査面6の近くに配置された走査レンズ5cまでの距離d=42.00(mm)であり、
d/L=0.24
となって、画面サイズが大きいにも係わらず、非常にコンパクトな2次元走査光学系を構成できている。
【0071】
本実施例3では、第2走査レンズ5bを偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側へ53.74(deg)チルトさせると共に、斜入射する側へ6.42(mm)シフトさせている。更に、第3走査レンズ5cを偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側へ2.76(deg)チルトさせると共に、斜入射する側とは反対側へへ22.49(mm)シフトさせている。
【0072】
図10に本実施例3の表示画像(格子)を示し、表8に本実施例3のTVディストーションと台形歪みの量を示す。
【0073】
本実施例3は、TVディストーションは、画像の上辺で0.23%、下辺で0.36%、左辺で0.12%、右辺で0.12%であり、問題ない程度に小さく、良好に補正されている。また、台形歪みは、左辺、右辺共に0.38%であり、問題ない程度に小さく、良好に補正されている。
【0074】
本実施例3のようにチルトされる光学素子に回転非対称非球面(屈折面また透過回折面)を用いることで、より効果的にTVディストーションならびに台形歪みを補正することができる。また、本実施例3ではチルト及びシフトさせた透過型光学素子は2つとしたがこれに限ったものではなく、例えば3つ以上の透過型光学素子をチルト及び/又はシフトさせても本発明の効果を十分に得ることができる。
【0075】
(実施例4)
図11は、本発明の実施例4における2次元走査装置の垂直断面図である。
【0076】
本実施例4の実施例1との相違点は、1次元方向に偏向可能な1次元偏向器を2つ用いて2次元偏向手段を構成している点である。
【0077】
本実施例4の2つの偏向器は双方とも、反射面が1つのトーションバーによって筐体に支持されたものであり、図2中の反射面4aと第1のトーションバー4b及び第1の筐体4cから構成される。
【0078】
光源1から発せられた発散光束は、集光レンズ2によって収束光束に変換され、開口絞り3にて光束幅を制限される。偏向器4は垂直方向へ偏向可能な第1の1次元偏向器41と水平方向に偏向可能な第2の1次元偏向器42とで構成されており、光源1からの光束は第1の偏向器41により垂直方向に偏向され、第2の偏向器42により水平方向に偏向され、これにより2次元方向に偏向される。偏向器4により偏向された光束は3枚の走査レンズから成る走査光学系5により被走査面6上に光スポットとして結像される。
【0079】
表9に本実施例4における走査光学系の構成を表すレンズデータを示す。
【0080】
本実施例4の走査光学系5も3枚の走査レンズから構成され、偏向器4側から順に第1走査レンズ5a、第2走査レンズ5b、第3走査レンズ5cとしたとき、第1走査レンズ5aは偏向器4側に凹面を向けた負の光学液パワーを有するメニスカスレンズであり、第2走査レンズ5bは偏向器4側に凹面を向けた正の光学的パワーを有するメニスカスレンズであり且つ両面をアナモフィック面で構成しており、第3走査レンズ5cは正の光学的パワーを有する両凸レンズである。
【0081】
本実施例4では、光源1からの光束を、まずは垂直方向に偏向可能な第1の偏向器41に入射させ、次に水平方向に偏向可能な第2の偏向器42へ入射させている。このとき、光源1からの光束は垂直断面内において第1の偏向器41に入射させている。第1の偏向器41の回転中心軸は水平断面内にあり、入射光束と偏向器の反射面の回転中心軸とが別の断面に存在する。しかし、第2の偏向器42の回転中心軸は入射光束同様垂直断面内に存在するので、第1の偏向器41で偏向された光束は第2の偏向器42に斜入射することとなる。これによって、TVディストーションと台形歪みが発生し問題となる。
【0082】
そこで、本実施例4では、垂直断面内において第2走査レンズ5bを、第2の偏向器42へ光源1からの光束が斜入射する側(図11中の時計周り)に42.27(deg)チルトさせ、かつ第2の偏向器42へ光源1からの光束が斜入射する側に(図11中右側)4.02(mm)シフトさせている。また、第3走査レンズ5cを第2走査レンズ5bとは逆側に5.84(mm)シフトさせている。
【0083】
図12に本実施例4の表示画像(格子)を示し、表10に本実施例のTVディストーションと台形歪みの量を示す。
【0084】
本実施例4では、TVディストーションは、上辺で0.29%、下辺で0.17%、左辺で0.11%、右辺で0.11%であり、問題ない程度に小さくし、十分に補正されている。また、台形歪みは、左辺、右辺共に0.18%であり、問題ない程度に小さくし、良好に補正されている。
【0085】
このように、1次元偏向器を2つ用いた2次元偏向手段を用いた場合、後方に配置された1次元偏向器の中心軸(回転軸)に対して光源手段から発せられた光束が斜入射し、TVディストーションならびに台形歪みを発生させて問題となるが、走査光学系を構成する透過型光学素子のうち、光学的パワーを有する反射面を持たない素子を1つチルトさせ、光学的パワーを有する反射面を持たない素子を1つをシフトさせることでTVディストーションならびに台形歪みを補正することができる。
【0086】
(実施例5)
図13は本発明の実施例5における2次元走査装置の垂直断面図である。
【0087】
本実施例5と実施例1との相違点は、走査光学系5を2枚の走査レンズ5a,5bにて構成した点である。
【0088】
表11に本実施例5の走査光学系の構成を表すレンズデータを示す。
【0089】
本実施例5では、第1走査レンズ5aと第2走査レンズ5bの双方の両面を回転非対称非球面にて構成している。本実施例5における非球面は、光軸方向(Z方向)における変位量Zが、水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)の各位置において、次式で表現される形状としている。
【0090】
【外2】
Figure 0004174287
【0091】
ここで
z −−−− z軸に平行な面のサグ
c −−−−− 頂点の曲率(CUY)
k −−−− コーニック定数
−−−−−−の係数
【0092】
本実施例5おいては、第2走査レンズ5bを、偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側(図14中の時計回り)に21.53(deg)チルトさせ且つ偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側とは反対側へ6.06(mm)シフトさせている。更に、第2走査レンズ5bの光出射面はその光入射面に対して、偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側とは反対側(図23中の反時計回り)に1.60(deg)チルトさせ且つ偏向器4へ光源1からの光束が斜入射する側とは反対側へ0.20(mm)シフトさせている。これにより、被走査面6上に表示される画像のTVディストーションならびに台形歪みを補正している。
【0093】
本実施例5では、特に第2走査レンズ5bを回転非対称非球面レンズで構成し且つ上述のとおりチルト及びシフトさせることにより、1枚のレンズのチルト・シフトのみでTVディストーションならびに台形歪みを良好に補正している。
【0094】
図14に本実施例5の表示画像(格子)を示し、表12に本実施例5のTVディストーションならびに台形歪みの量を示す。TVディストーションは、上辺で0.07%、下辺で0.01%、左辺で0.01%、右辺で0.01%であり、問題ない程度に小さく、極めて良好に補正されている。また、台形歪みは、左辺,右辺共に0.02%であり、問題ない程度に小さく、極めて良好に補正されている。
【0095】
本実施例5のように走査光学系5を構成する透過型光学素子のうち、チルトもしくは、シフトさせる光学的パワーを有する反射面を持たない光学素子を回転非対称非球面レンズとすることでTVディストーションならびに台形歪みの補正効果を大きくすることができる。また、走査レンズを1枚だけチルト及びシフトさせるだけで、TVディストーションと台形歪みの補正が可能となり、走査光学系5を構成する光学素子の数を削減することができる。
【0096】
本実施例5では、チルト及びシフトさせた走査レンズの回転非対称非球面に(m+n)≦4までの非球面係数を使用したが、これに限ったものではなく、より高次(m+n)≧6の非球面係数を用いることにより、TVディストーション及び台形歪みの補正をより効果的に行うことが可能となる。
【0097】
以上説明した各実施例(レンズデータ)では、各光学素子にガラスレンズを使ったものを例に取ったがこれに限ったものではなく、例えば、射出成型により成形されたプラスチックレンズを少なくとも一枚の光学素子に用いることにより、製造が容易になり、コストダウンが図れる。
【0098】
また、光源手段に青、緑、赤の3色の発光部を備えることにより、2次元カラー画像を表示させることも可能である。これによって、走査型カラー画像表示装置を提供することができる。この場合、青、緑、赤の3色の光を順次/又は同時に偏向器に向けることになる。これ以外にも、白色の光源と青、緑、赤の3色のフィルタを回転可能なターレット上に配置したものとを組み合わせて、青、緑、赤の3色の光を順次/又は同時に偏向器に向けることができる。
【0099】
このように光源手段から青、緑、赤の3色の光を順次/又は同時に偏向手段へ向けつつ偏向器と走査光学系を使ってカラーの2次元画像を形成する際の光源手段や偏向手段の制御方法は公知なので、ここでは詳細な説明はしない。
【0100】
また、偏向手段には2次元方向に共振可能なMEMS偏向デバイスや、1次元方向に共振可能なMEMS偏向デバイスを例に挙げたが、これに限ったものではなく、ガルバノミラーやポリゴンミラーを用いても本発明の効果を十分に得ることができる。
【0101】
また、前述の特開平8−146320号公報に記載があるように電気的にTVディストーションを補正する技術もあるので、この種の電気的な補正と本発明における走査光学系による光学的な補正とを組み合わせて画像の歪みを補正する構成を採ることも可能である。
【0102】
電気的に補正する場合、偏向器を制御する駆動回路(不図示)により2次元走査の際の反射面の傾斜角度を、光学的補正後の残存ディストーションを補正するように、制御する。
【0103】
また、以上説明した各実施例は、被走査面にスクリーン等がありその画像を直接観察する形態の画像表示装置(例えばプロジェクター)を例にとり説明したが、例えば被走査面に形成した画像をリレー光学系等を介して観察形態の画像表示装置(例えばファインダー)にも、本発明は適用できる。
【0104】
【表1】
Figure 0004174287
【0105】
【表2】
Figure 0004174287
【0106】
【表3】
Figure 0004174287
【0107】
【表4】
Figure 0004174287
【0108】
【表5】
Figure 0004174287
【0109】
【表6】
Figure 0004174287
【0110】
【表7】
Figure 0004174287
【0111】
【表8】
Figure 0004174287
【0112】
【表9】
Figure 0004174287
【0113】
【表10】
Figure 0004174287
【0114】
【表11】
Figure 0004174287
【0115】
【表12】
Figure 0004174287
【0116】
【発明の効果】
以上、本発明は、走査光学系における光学的パワーを有する反射面を持たない光学素子(例えば球面レンズ)をチルト及び/又はシフトさせることにより、TVディストーションや台形歪みを良好に補正することができる。これによって、TVディストーションや台形歪みが良好に補正できた2次元走査装置と、この2次元走査装を用いて高品位な画像を表示することが可能な画像表示装置とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における斜視図
【図2】2次元偏向器(2次元偏向デバイス)の要部概要図
【図3】本発明の実施例1における垂直断面図
【図4】本発明の比較例における垂直断面図
【図5】本発明の比較例における表示画像(格子)
【図6】本発明の実施例1における表示画像(格子)
【図7】本発明の実施例2における垂直断面図
【図8】本発明の実施例2における表示画像(格子)
【図9】本発明の実施例3における垂直断面図
【図10】本発明の実施例3における表示画像(格子)
【図11】本発明の実施例4における垂直断面図
【図12】本発明の実施例4における表示画像(格子)
【図13】本発明の実施例5における垂直断面図
【図14】本発明の実施例5における表示画像(格子)
【符号の説明】
1 光
2 集光レンズ系
3 開口絞り
4 偏向器
5 走査光学系
6 被走査面(スクリーン)

Claims (5)

  1. 光源から発せられた光束を2次元方向に偏向する偏向手段と、
    前記偏向手段の反射面により偏向された光束を被走査面上に結像させる走査光学系と、
    を有する2次元走査装置であって、
    前記2次元方向のうち一方の1次元方向を含む面内において、前記光源から発せられた光束が、前記光源から発せられた光束が前記偏向手段の反射面によって偏向された2次元偏向範囲の中心の軸に対して斜め方向から前記偏向手段の反射面に入射しており、
    前記走査光学系は、光学的パワーを有する反射面を持たず、
    前記走査光学系は、
    負の光学的パワーを有し前記偏向手段側に凹面を向けた第1メニスカスレンズと、
    前記第1メニスカスレンズよりも前記被走査面側に配置されており、正の光学的パワーを有し前記偏向手段側に凹面を向けた第2メニスカスレンズと、
    を含んでおり、
    前記第2メニスカスレンズが、前記第1メニスカスレンズに対して、前記1次元方向を含む面に垂直な軸を回転軸として前記光源から発せられた光束が前記反射面に入射する側へチルトしており、且つ前記1次元方向を含む面内において、前記光源から発せられた光束の前記反射面に対する入射側にシフトしていることを特徴とする2次元走査装置。
  2. 前記第2メニスカスレンズよりも前記被走査面側に配置され、前記偏向手段側に凹面を向けた、正の光学的パワーを有する第3メニスカスレンズを含むことを特徴とする請求項1記載の2次元走査装置。
  3. 前記第3メニスカスレンズが、前記1次元方向を含む面内において、前記光源から発せられた光束の前記反射面に対する入射側からから遠ざかる方向にシフトしていることを特徴とする請求項2記載の2次元走査装置。
  4. 前記第2メニスカスレンズがアナモルフィックレンズであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の2次元走査装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項に記載の2次元走査装置と、前記被走査面に画像を形成する手段と、を有する画像表示装置。
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