JP4533256B2 - 微細構造体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

微細構造体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、感光性樹脂を用いた微細構造体の製造方法,およびインクジェット記録方式に用いる記録液小滴を発生するための液体吐出ヘッド及び該ヘッドの製造方法に関する。特に本発明は、高画質を可能とする微小な液滴を安定して吐出し、更に高速記録を実現できるインク液流路形状を備えるヘッドを生産する製造方法に関する。更に本発明は、前記インクジェットヘッドの製造方法に基づき、インク吐出特性が改善されたインクジェットヘッドに関する。
インク等の記録液を吐出して記録を行うインクジェット記録方式(液体吐出記録方式)に適用される液体吐出ヘッドは、一般に液流路、該液流路の一部に設けられる液体吐出エネルギー発生部、及び前記液流路の液体を液体吐出エネルギー発生部の熱エネルギーによって吐出するための微細な記録液吐出口(以下、「オリフィス」と呼ぶ)とを備えている。
従来、このような液体吐出記録ヘッドを作製する方法としては、例えば、特許文献1(特公平6−45242号公報)では、液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上に感光性材料にてインク液流路の型をパターンニングし、次いで型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布形成し、該被覆樹脂層に前記インク液流路の型に連通するインク吐出孔を形成した後、型に使用した感光性材料を除去してなるインクジェットヘッドの製法(以下、「注型法」とも略して記する。)を開示している。該ヘッドの製造方法では感光性材料としては、除去の容易性の観点からポジ型レジストが用いられている。また、この製法によると、半導体のフォトリソグラフィーの手法を適用しているので、インク液流路、吐出孔等の形成に関して極めて高精度で微細な加工が可能である。しかし、該半導体の製造方法を適用した製法においては基本的には、インク液流路及び吐出口近傍の形状変更は素子基板と平行な2次元方向での変更に限定されてしまう。すなわち、インク液流路及び吐出口の型に感光性材料を用いていることにより、感光材層を部分的に多層化することができないので、インク液流路等の型において高さ方向に変化をつけた所望のパターンが得られない(素子基板からの高さ方向の形状が一様に限定されてしまう)。その結果、高速で安定した吐出を実現する為のインク液流路設計の足かせとなってしまう。
これらを解決する技術として、特許文献2(特開2003−25595号公報)では、溶解可能な樹脂を二層にし吐出口下部の断面積を大きくした中間室(基板側液流路よりも狭く、吐出口先端部よりも広い中間的な部分を基板側液流路と吐出口先端の間に設ける)を形成する工夫がなされている。また、この公報には、除去可能な二層樹脂の下層にPMMA(ポリメチルメタクリレート)を含む熱架橋型のポジ型レジストを用い、上層にPMIPK(ポリメチルイソプロピルケトン)を用いる具体例が記載されている。
一方、特許文献3(特開2004−042396号公報)には、液流路形成用の型を作成するための固体層に用いる樹脂として、メタクリル酸エステルと、熱架橋因子としてのメタクリル酸と、の共重合体を液流路形成用の型材に用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法が開示されている。更に、特許文献4(特開2004−42650号公報)にはメタクリル酸エステルを含み、感度領域を広げる因子として、無水メタクリル酸を共重合体した熱架橋型のポジ型レジストを液流路形成用の型材に用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法が開示されている。
液体吐出ヘッドの液流路形成用の型材を2種のポジ型レジストを用いて2層積層構造から形成することで、液体吐出ヘッドの微細液流路構造の設計の自由度を上げることが可能であるが、更なる液体吐出ヘッド構造の微細化においては、更に精度良く微細構造を形成できる技術が要求されている。さらに、液流路の設計に応じて液流路用型材の微細構造も種々のものが要求されており、例えば、2層構造からなる液流路用型材の下層をある程度厚くする必要が生じる場合もある。このような場合には、特開2003−25595号公報,特開2004−042396号公報,特開2004−42650号公報で開示している2層構造の液流路用型材の下層を形成するポジ型レジストが熱架橋型であると、
1.膜応力の制約から、厚膜化が難しい(最大:10μmが限界)
2.パターン形成時のクラック発生(現像時の応力緩和に起因した屈曲パターンにおけるひび割れクラック)が発生する
3.熱架橋膜上に、溶媒を含んだ塗工液を塗布すると、基板上の段差に起因して、塗布ショックによるひび割れクラック等が発生する
4.熱架橋膜は、形成する際の網目状の3次元構造を取る為に、露光による分解速度が減少し、パターニング時に必要な露光量が増大する
5.最終的に、型材を除去する際に、分解するために露光量が増大する
等の、設計上、及び、製法上の制約が多くなる。
特公平6−45242号公報 特開2003−25595号公報 特開2004−042396号公報 特開2004−42650号公報
本発明の目的は、上記のような2層構造の微細構造を2種のポジ型レジストで生成する場合に、少なくとも下層における熱架橋処理(高温処理)が不要であり、上記の問題を生じることのない微細構造の形成方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、この微細構造の形成方法を利用した液体吐出ヘッドとその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、先ず、高精度にて3次元形状の液流路を形成する製造方法を実現し、次いで該製法により実現できる良好な液流路形状を見出したことを特徴としている。更に、本発明は、前記3次元形状の液流路を高精度、且つ、安価に、且つ、歩留まり良く形成することを特徴とする。又、形成する3次元形状の流路構造の設計自由度を広くして、多種多様なインク種に対応したインクジェット記録ヘッドを提供する事にある。
本発明により、
微細構造体の製造方法において、
基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
次に、第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程とを、順次含み、
前記工程を実施することで基板に対して、凸形状のパターンを形成することを特徴とする微細構造体の製造方法
が提供される。
本発明により、
液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上の液流路形成部分に除去可能な樹脂にて型パターンを形成し、該型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布し硬化させた後、前記型パターンを溶解除去して液流路を形成する、液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記型パターンを形成する工程では、
基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
を順次含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法
が提供される。
本発明により、
液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上の液流路形成部分に除去可能な樹脂にて型パターンを形成し、該型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布し硬化させた後、前記型パターンを溶解除去して液流路を形成する、液体吐出ヘッドの製造方法において、
基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
前記所望のパターンを形成している第1および第2のポジ型感光性材料層上に感光性の被覆樹脂膜を塗布し、前記液流路に連通する吐出口を含むパターンを露光した後、現像して該吐出口を含むパターンを形成する工程と、
前記感光性の被覆樹脂膜を介して、前記第1および前記第2のポジ型感光性材料層の両方が分解反応する波長域の電離放射線を照射して、これらの第1および前記第2のポジ型感光性材料層からなるパターン中の樹脂成分を分解する工程と、
上記の工程を経た基板を所定の有機溶剤に浸漬し、該第1および前記第2のポジ型感光性材料層からなるパターンを溶解、除去する工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法
が提供される。
本発明により、前述のような2層構造の微細構造を2種のポジ型レジストで生成する場合に、少なくとも下層における熱架橋処理(高温処理)が不要であり、前述の問題を生じることのない微細構造の形成方法が提供される。更に、この微細構造の形成方法を利用した液体吐出ヘッドとその製造方法が提供される。
以下、本発明について液体吐出ヘッドを主にインクを用いて記録を行うインクジェットヘッド(IJヘッド)を例として説明するが、本発明の液体吐出ヘッドとしては、各種液体を各種の表面に適用するための記録用以外の用途に用いるタイプのものであってもよい。なお、本明細書中において、電離放射線とはDeep−UV光、電子線、X線など、物質に電離作用を及ぼす放射線を総称するものである。
まずはじめに、本発明を容易に理解するために、液体吐出ヘッドにおけるノズル形状の設計における最適化の概要について、図10〜図12を用いて説明する。
図10は、本発明による構成を施したインクジェットプリントヘッド200のノズル断面図を示している。尚、図10に記載されているインク流路(ノズル)内で、インク供給口側に近い位置に配されているノズルフィルターは、本発明の構成において、あった方が、ごみ不吐対策などには、効果があるが、本発明の効果としては、無くても良い。図10に記載の構造を有するインクジェットプリントヘッドは、複数のヒータ160および吐出口150を各吐出口毎に個別のインク流路140を形成するための隔離壁(不図示)がインク供給口(不図示)付近まで延在している構成をもつインクジェットプリントヘッドである。なお、ヒータ160は基板130上に形成されている。
これらのインクジェットプリントヘッドは、特開平4−10940号公報、特開平4−10941号公報に記載のインクジェット記録方法を特徴とするインク滴吐出手段、すなわち、吐出時の発泡を外気と連通させる特徴を持つ。
ここで、高密度配列を実現するインクジェットプリントヘッドの最適化について、概念を簡単に説明する。インクジェットプリントヘッドの吐出特性を左右する物理量としては、前記複数配置されたノズル内におけるイナータンス(慣性力)とレジスタンス(粘性抵抗)が大きく寄与している。ある任意の形状内を移動する非圧縮性流体の運動方程式は、以下の2式で表される。
Figure 0004533256
上記2式(1・2)を、対流項および粘性項が充分小さく、外力なしとして近似すると、
Figure 0004533256
となり、圧力は調和関数を用いて表される。
そして、インクジェットプリントヘッドの場合、図11に示すような3開口モデルで記述され、図12に示すような等価回路で表現できる。イナータンスは、静止流体が急に動き出す時の動きにくさとして定義する。電気的に言えば、電流の変化を阻害するインダクタンスLと似た働きをする。メカ的なバネマスモデルでは、mass(重さ)に相当する。
イナータンスを式で表すと、開口に圧力差を与えたときの、流体体積Vの2階時間微分、すなわち流量F(=ΔV/Δt)の時間微分との比で表される。
Figure 0004533256
ここで、A:イナータンスとする。
例えば、擬似的に、密度ρ、長さL、断面積Soであるようなパイプ型管流路を仮定すると、この擬1次元流管路のイナータンスAoは、
Figure 0004533256
で表され、流路の1乗に長さに比例し、断面積の1乗に反比例することが分かる。
図12に示したような等価回路をもとに、インクジェットプリントヘッドの吐出特性をモデル的に予測・解析することができる。
本発明のインクジェットプリントヘッドにおいて、吐出現象は、慣性流から粘性流へ移行してゆく現象であることが分かってきている。特に、ヒータ部分での発泡初期においては、慣性流が主であり、逆に、吐出後期(すなわち、メニスカス後退から毛細管現象により、吐出口面までインクが復帰してくるまでの時間)においては、粘性流が主となる。その際、上記関係式から、発泡初期には、イナータンス量の関係により、吐出特性、特に、吐出体積、及び、吐出速度への寄与が大きくなり、吐出後期(すなわち、メニスカス後退から毛細管現象により、吐出口面までインクが復帰してくるまでの時間)には、レジスタンス(粘性抵抗)量が、吐出特性、特に、インクのリフィール時間への寄与が大きくなる。
ここで、レジスタンス(粘性抵抗)は、式1、及び、
Figure 0004533256
となる定常ストークス流で記述され、粘性抵抗:Bを求めることができる。又、吐出後期では、図11で示したモデルにおいて、吐出口近傍にメニスカスが形成され、毛細管力を主とした力により、インクの流れが起きるため、2開口モデル(1次元流モデル)で近似することができる。
すなわち、粘性流体を記述したポアズイユの式6から求めることができる。
Figure 0004533256
ここで、G:形状因子である。又、粘性抵抗:Bは、任意の圧力差に従って流れる流体に起因するので、
Figure 0004533256
により、求めることができる。
上記7式より、レジスタンス(粘性抵抗)は、密度ρ、長さL、断面積Soであるようなパイプ型管流路を仮定すると、
Figure 0004533256
となり、近似的にノズル長さの1乗に比例し、且つ、ノズルの断面積の2乗に反比例することが分かる。
このように、インクジェットプリントヘッドの吐出特性、特に、吐出速度・吐出体積・リフィール時間のいずれをも向上させるためには、上記イナータンスの関係から、出来るだけ、ヒータから吐出口側へのイナータンス量を、ヒータから供給口側へのイナータンス量と比較して大きくし、且つ、ノズル内のレジスタンス(粘性抵抗)を小さくしてあげることが、必要充分条件である。
近年のIJプリンターの画質競争に伴い、フォト画質を追求するために、インク液滴の小液滴化が加速している。それに伴い、インク液滴を吐出するIJヘッドのオリフィス(吐出口径)も小さくなってきている。その為に、オリフィス部分でのインクの流抵抗が、オリフィス径の2乗に比例して大きくなり、オリフィス面からのインク液滴が飛翔にくくなってしまう(本文では、この現象を"発一現象"と呼ぶ)。そこで、本研究者達は、従来のIJノズル形状から、小液滴を安定的に飛翔させるために、図10に示しているような小液滴ノズルを形成する事を試みた。
当然、図10に示したIJノズルの断面図のように、小液滴を吐出口面から安定的に飛翔させるためには、吐出口径をより小さくすることが必要であり、特開2004−46217号に記載しているような方法において、吐出口の下部形状に段差を持たせることで、ヒータから吐出口側へのイナータンス量を、ヒータから供給口側へのイナータンス量と比較して大きくするという目的は達成できる事が分かっている。しかし、インクジェットプリントヘッドの吐出特性の内、リフィール時間を左右する因子として、ノズル全体のレジスタンス:Bが大きく寄与する事が分かってきた。
ここで、インクジェットプリントヘッドの吐出特性、特に、吐出速度・吐出体積・リフィール時間のいずれをも向上させるためには、吐出口の下部形状を図10に示したような2段形状にする事と、流路高さも厚くして、前記レジスタンスを小さくすることが必要になってきた。そこで、流路高さを厚くするためには、2層レジストを形成する際に、下層側のレジストの膜厚を厚く形成し、所望のパターンを歩留まり良く形成することが重要となる。
特開2004−46217号で開示している2層レジスト製法による図10のようなIJヘッドの製造においては、下層の型材料として、分子間架橋を行う熱架橋型のポジ型レジスト材料を採用している。この熱架橋型レジスト材料は、スピンコート法等による塗布膜を形成後に、高温処理をすることで、分子間架橋をさせて、強固な膜形成を行っている。その為に、膜厚が比較的薄い場合にはそれほど顕著ではないものの、膜厚を10μm以上に形成しようとすると、下記に上げたような問題が発生した。
(1)高温処理(180℃以上)を行って、塗布膜を分子間架橋させて、分子を網目状の構造にするために、電離線分解型レジストとしての特性が鈍感になり、パターンを形成する際の光照射量(露光量)が増大し、生産性が低下する。
(2)熱架橋膜は、分子同士を網目上に結合させているために、光照射による分解が起こりやすい箇所と、起こりにくい箇所が出来てきて、パターン形状によっては、クラックなどが多発してしまう事が判明した。
(3)前記型形成部材は、ノズル形成部材を塗布し、吐出口等を形成した後に、該ノズル形成部材を介して、該型形成部材を除去する工程を経て、インクジェットヘッド用のノズルが完成する。そのため、厚膜の型形成材料に熱架橋膜を採用すると、前記除去工程において、光照射量が増大したり、薬液による除去工程における残渣などの不具合が生じる事が判明した。
(4)前述のように,熱架橋膜では、分子間の網目状のネットワーク形成が部分的に起きているために、分子間の架橋が十分されていない箇所では、溶媒による溶解性が促進される傾向がある。その結果、流路形状が歪な形状になってしまう現象も起きてしまう。
そこで、型材形成部材を熱架橋させずに用いることが望まれるが、特開2004−46217号や、特開2003−25595号に記載の熱架橋膜を熱架橋させずに低温処理(180℃未満)のみで形成すると、分子間架橋による分子間での網目上のネットワークが形成されないために、現像液などの溶媒に対する耐溶解性が低下し、所為の膜厚を持ったパターンを残すことが出来なくなる。
そこで、本発明者達は、鋭意検討の結果、型材を熱架橋させることなく所望の膜厚にも対応し、図10に示すようなIJヘッド用のノズルを、精度良く、且つ、安価に(歩留まり良く)形成する構成を見出した。
すなわち、下層となる第1のポジ型感光性材料層を形成するためのポジ型の感光性樹脂組成物として、メチルイソプロペニルケトンを主成分とするポノポリマー(以下、単にPMIPKと称す)を用いるとともに、第2のポジ型感光性材料層を形成するためのポジ型の感光性樹脂組成物として、その樹脂成分が、メタクリル酸エステルとメタクリル酸の共重合体、あるいは、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸の共重合体からなるもの(以下、これらを総称してPMMA系共重合体と称す)を用いることにより、上記課題を解決するものである。ただし、本発明では上記樹脂成分として特にメタクリル酸エステルと無水メタクリル酸の共重合体からなるものを用いる。本明細書において、上記樹脂成分として、メタクリル酸エステルとメタクリル酸の共重合体にも言及するが、それは参考用である。
本発明で用いられるメタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体は、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとをラジカル重合させて得られる共重体であり、以下に示すメタクリル酸から得られる単位(B)とメタクリル酸エステルから得られる単位(A)とを含むものである。単位(B)の共重合体全体に対する重合割合は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは8〜12質量%から選択できる。
Figure 0004533256
メタクリル酸エステル成分におけるR2は、炭素数1〜3アルキル基を表し、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、メタクリル酸成分におけるR3は炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、R1〜R3は各単位ごとに独立して上記の意味を有する。すなわち、多数の単位(A)が同一のR1及び同一のR2を有してもよく、多数の単位(A)の中にR1及びR2の少なくとも一方が異なる組み合わせが含まれていても良い。単位(B)についても同様である。この共重合体は、上記の(A)及び(B)の単位からなり、重合形態は、ランダム重合、ブロック重合など、所望とするポジ型レジストの特性を得られるものであれば特に制限されない。更に、この共重合体は、分子量50000〜300000(重量平均)、分散度(Mw/Mn)は、1.2〜4.0の範囲のものが好ましい。
この感光性樹脂組成物の樹脂成分の分解のための吸収波長領域は、200〜250nmのみであることが好ましい。また、光照射後の現像には、ジエチレングリコールとモルホリンとモノエタノールアミンと純水の混合液などを用いることができる。
一方、本発明で用いられる無水メタクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体とは、下記に示す無水メタクリル酸とメタクリル酸エステルとを共重合させて得られる共重体である。
Figure 0004533256
この共重合体における無水メタクリル酸の重合割合は、無水メタクリル酸とメタクリル酸エステルとの合計量に対して、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは8〜12質量%から選択できる。
メタクリル酸エステル成分におけるR2は、炭素数1〜3アルキル基を表し、R1は炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、R1〜R2は各単位ごとに独立して上記の意味を有する。すなわち、上記式で表わされるメタクリル酸エステルの少なくとも1種以上を無水メタクリル酸に共重合させることができる。この共重合体は、上記のモノマー成分から得ることができ、重合形態は、ランダム重合、ブロック重合など、所望とするポジ型レジストの特性を得られるものであれば特に制限されない。従って、この共重合体は以下の一般式1および一般式2で示される構造単位を有する。
Figure 0004533256
(一般式1および一般式2中、R3〜R6は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、R3〜R6は、それぞれ独立して各ユニット毎に上記の意味を示す。)
更に、この共重合体としては、分子量10000〜100000(重量平均)、分散度(Mw/Mn)1.2〜5.0の範囲の分子量のものが好ましい。
この感光性樹脂組成物の樹脂成分の分解のための吸収波長領域は、200〜260nmのみであることが好ましい。また、光照射後の現像には、ジエチレングリコールとモルホリンとモノエタノールアミンと純水の混合液などを用いることができる。
これらの共重合体はメチルメタクリレート(MMA)とメタクリル酸(MAA)を、あるいは、メチルメタクリレート(MMA)と無水メタクリル酸(MAN)とを、所定の比で、AIBN等を重合開始剤と用いて、ラジカル重合を行い、分子量と分散度を最適値にするように制御させることで、光崩壊を生じるための感度を損なうことなく、優れた耐溶剤性を付与したポリマーを合成することができる。このため、後述する液流路形成材料の塗布時に、溶解、変形等の障害を生じることがなく、本発明において特に好適に用いられる。
又、PMMA系共重合体は、感光領域が200〜260nmと狭く、更に、図3に示している露光機の波長分布は、該領域の積算量が、270〜330nmでの積算露光量と比較して、約1/10程度なので、相対的にPMIPKの感度と比較して、1/3程度の感光性しか持っていない。それ故に、2層形成後に、2層同時に露光すると、上層(PMMA系共重合体)の感度が悪いために、頭でっかちの形状になり、且つ、制御したい下層のパターンを正確に形成するのが難しい。故に、本発明の構成としては、2層の材料構成(下層:PMIPK、上層:PMMA系共重合体)が重要であるのと同時に、夫々に波長選択した露光機を使って、上層から下層の順に、露光・現像工程を行うプロセスも、重要である。この順番を変えると、所望の液流路形状を形成することが出来なくなる。
更に、基板上に形成した最下層を先に、パターニングしてから、上層になる型材材料を塗布する工程を行うと、上層面が下層の形状をひろって、平坦化されずに、波打った形状になり、且つ、その形状は、ウェハ内において、不均一である。その為に、所望の型材高さを、均一に形成するのが難しい。
この結果からも、本発明の工程(プロセスフロー)が、所望するインクジェット記録ヘッドの流路形状を安定的に、精度良く形成するためには、最適である。
一方、ノズル形成材料としてのネガ型の感光性を有する硬化性組成物としては、液流路壁や吐出口を形成するための部材としての特性を有し、かつ液流路形成用の型材としてのポジ型レジストを溶解除去する工程などに対する耐性を有するものであればよいが、カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、カチオン重合抑制剤と、を含む光硬化性組成物が用いられる。この光硬化性組成物に含有させるカチオン重合性化合物は、カチオン付加重合反応を利用して化合物同士が結合できるものであり、例えば、特許第3143307号明細書に記載される常温にて固体状のエポキシ化合物を好適に利用できる。このエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロヒドリンとの反応物のうち分子量が少なくとも約900のもの、含ブロモスフェノールAとエピクロヒドリンとの反応物、フェノールノボラックあるいはo−クレゾールノボラックとエピクロヒドリンとの反応物、特開昭60−161973号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭64−9216号公報、特開平2−140219号公報に記載のオキシシクロヘキサン骨格を有する多感応エポキシ樹脂等があげられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらのエポキシ化合物においては、好ましくはエポキシ当量が2000以下、さらに好ましくはエポキシ当量が1000以下の化合物が好適に用いられる。これは、エポキシ当量が2000を越えると、硬化反応の際に架橋密度が低下し、硬化物のTgもしくは熱変形温度が低下したり、密着性、耐インク性に問題が生じる場合があるからである。
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩[J.POLYMER SCI:Symposium No.56 383−395(1976)参照]や旭電化工業株式会社より上市されているSP−150、SP−170等が挙げられる。また、光カチオン重合開始剤は、還元剤を併用し加熱することによって、カチオン付加重合反応を促進(単独の光カチオン重合に比較して架橋密度が向上する。)させることができる。ただし、光カチオン重合開始剤と還元剤を併用する場合、常温では反応せず一定温度以上(好ましくは60℃以上)で反応するいわゆるレドックス型の開始剤系になるように、還元剤を選択する必要がある。このような還元剤としては、銅化合物、特に反応性とエポキシ樹脂への溶解性を考慮して銅トリフラート(トリフルオロメタンスルフォン酸銅(II))が最適である。また、アスコルビン酸等の還元剤も有用である。また、ノズル数の増加(高速印刷性)、非中性インクの使用(着色剤の耐水性の改良)等、より高い架橋密度(高Tg)が必要な場合は、上述の還元剤を後述のように前記被覆樹脂層の現像工程後に溶液の形で用いて被覆樹脂層を浸漬および加熱する後工程によって、架橋密度をあげることができる。
この光硬化性組成物に対して必要に応じて添加剤など適宜添加することが可能である。例えば、エポキシ樹脂の弾性率を下げる目的で可撓性付与剤を添加したり、あるいは基板との更なる密着力を得るためにシランカップリング剤を添加することなどがあげられる。
ネガ型レジスト層に対して吐出口となる部分を遮光するマスクを介してパターン露光することにより、遮光された部分以外の部分を硬化させてから、現像液で処理して、遮光された部分を除去して吐出口を形成する。このパターン露光は汎用的な露光装置の何れの物を適用しても構わないが、ネガ型レジスト層の吸収波長領域と一致し、且つ、ポジ型レジスト層の吸収波長領域と重なり合わない波長領域を照射する露光装置であることが望ましい。また、ネガ型レジスト層へパターン露光後の現像は、キシレン等の芳香族溶剤にて行うことが好ましい。
本発明においては、第1のポジ型感光性材料層をソルベントコート法により形成した後に、加温により、層中の塗布用溶媒を揮発させた後に、第2のポジ型感光性材料層を形成するための材料を塗布し、形成された塗布層に熱を加えて塗布用溶媒を揮発させて第のポジ型感光性材料層を形成することが好ましい。また、第2のポジ型感光性材料層の現像液に含まれるグリコールエーテルは、エチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種であることが好ましい。一方、第2のポジ型感光性材料層の現像液に含まれる含窒素塩基性有機溶剤は、エタノールアミン及びモルフォリンの少なくとも1種であることが好ましい。更に、第1のポジ型感光性材料層が感光する第1の波長域が270nm〜350nmの領域であり、且つ、第2のポジ型感光性材料層が感光する第2の波長域が230nm〜260nmの領域であることが好ましい。
なお、本発明にかかる液体吐出ヘッドには、液流路の高さが、液体吐出エネルギー発生素子上の気泡発生室に隣接する箇所にて相対的に低くなっている構成のものや、液流路にごみ捕捉用の柱状部材が該液流路を構成する材料より形成されていて、基板に到達していない構成のものが好ましい。また、基板に液流路の各々に共通に繋がる液体供給孔が形成され、液体供給孔の開口縁部における液流路高さに対して、液体供給孔の中心部における液流路高さが低い、構成のものが好ましい。また、液体吐出エネルギー発生素子上の気泡発生室の断面形状が凸形状を有する構成のものも好ましい。
次に、本発明について詳しく説明する。本発明による液体吐出ヘッドの製造においては、液体吐出ヘッドの特性に影響を及ぼす最も重要な因子の一つである、吐出エネルギー発生素子(例えばヒータ)とオリフィス(吐出口)間の距離および該素子とオリフィス中心との位置精度の設定が極めて容易に実現できる等の利点を有する。即ち、本発明によれば2回にわたる感光性材料層の塗布膜厚を制御することにより吐出エネルギー発生素子とオリフィス間に距離を設定することが可能であり、該感光性材料層の塗布膜厚は従来使用される薄膜コーティング技術により再現性良く厳密に制御できる。また、吐出エネルギー発生素子とオリフィスの位置合せはフォトリソグラフィー技術による光学的な位置合せが可能であり、従来液体吐出録ヘッドの製造に使用されていた液流路構造体プレートを基板に接着する方法に比べて飛躍的に高い精度の位置合せができる。
また、溶解可能なレジスト層としてポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)が知られている。これらポジ型レジストは波長290nm附近に吸収のピークを有するレジストであり、該レジストとは異なる感光波長域のレジストと組合せることにより、2層構成のインク液流路型を形成できる。
一方、電離放射線分解型レジストの一つであるポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル酸エステルとメタクリル酸との共重合体から構成される高分子化合物は、感応波長域250nm以下に感度を有するポジ型レジストであり、前記レジスト(PMIPK)上に前記レジスト(PMMA系共重合体)を塗布し、230〜260nm帯の露光波長域で露光し、アルカリ現像液であるGG−Developer(ジエチレングリコールとモルホリンとモノエタノールアミンと純水の混合液)で現像することで、PMIPK膜上に、PMMA系共重合体のパターンを形成することが出来る。次いで、前記レジスト(PMIPK)を270〜330nm帯の露光波長域で露光し、有機溶剤であるMIBK等で現像することにより、2層のインク液流路型を形成できる。
以下、本発明の製造方法によるインク液流路形成のプロセスフローを図1および図2を用いて説明する。
図1は本発明における微細構造体としてのインク流路の型を形成するためのプロセスフローを示し、図2は本発明のインクジェットプリントヘッドのノズル形成工程を示している。
まず、図1について説明する。図1(a)に示すように、基板11上にPMIPKを含むポジ型レジスト層12を形成する。PMIPKを主成分とした塗布型レジストは、(株)東京応化工業から製品名:ODUR−1010として、市販されている。この被膜は汎用的なスピンコート法にて形成できる。次に図1(b)に示すように、ポジ型レジスト層12(ODUR)上にPMMA系共重合体を含むポジ型レジスト層13(PMMA)をスピンコート法にて形成する。
さらに図1(c)に示すように、PMMA系共重合体を含むポジ型レジスト層13(PMMA)を露光する。ポジ型レジスト層(PMMA)には、露光した箇所が除去されるフォトマスク16を適用する。この時、露光波長域として、230〜260nm帯を使用すれば、下層のポジ型レジストはほとんど感光しない。これはケトンの吸収がカルボニル基に起因し、230〜260nmの光を殆ど透過してしまう為、感光しないことに起因している。露光されたポジ型レジスト層(PMMA)をジエチレングリコールとモルホリンとモノエタノールアミンと純水の混合液で現像し、所定のパターンを得る。前記現像液はアルカリ性である。この現像液では未露光部のアクリル系レジストの溶解速度は極めて遅く、且つ、上層現像時の下層への影響は軽微にすることができる。
そして図1(d)に示すように、基板11を含めて、100〜130℃、3分間のポストベークを行う事で、上層のポジ型レジストの側壁に約10°の傾斜を付けることができる。次いで図1(e)に示すように、PMIPKを含むポジ型レジスト層12(ODUR)を露光する。ポジ型レジスト層(ODUR)には、露光した箇所が除去されるフォトマスク17を適用する。このとき、露光波長域として、270〜330nm帯を使用すれば、下層のポジ型レジストを感光させることができる。又、270〜330nm域の露光波長は、上層のポジ型レジスト層を透過するために、マスクからの回りこんだ光や基板からの反射光による影響を殆ど受けない。
そして図1(f)に示すように、露光された下層のポジ型レジスト層12(ODUR)を現像し、所定のパターンを得る。現像液は、有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを適用することが好ましい。未露光のPMMA系共重合体は該現像液では殆ど溶解しないため、下層レジスト現像に上層パターンの変化はない。
次に、図2を用いて、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。図2(a)において、基板11としてはシリコンが適用される。即ち、吐出エネルギー発生素子11aを制御するドライバーやロジック回路等は、汎用的な半導体製法にて生産される為、該基板にシリコンを適用することが好適である。また、該シリコン基板にインク供給の為の貫通孔を形成する方法としては、YAGレーザーやサンドブラスト等の技術を適用することも可能ではある。しかし、レジスト塗布時には基板に貫通孔が形成されていないことが好ましい。このような方法は、アルカリ溶液によるシリコンの異方性エッチ技術を適用できる。この場合、基板裏面に耐アルカリ性の窒化シリコン等にてマスクパターンを形成し、基板表面には同様の材質でエッチングストッパーとなるメンブレン膜を形成しておけば良い。
次に、図2(b)に示すように、基板上にPMIPKを含むポジ型レジスト層12(ODUR)を形成する。この被膜は汎用的なスピンコート法にて形成できる。次に、図2(c)に示すように、ポジ型レジスト層12(ODUR)上にPMMA系共重合体を含むポジ型レジスト層13(PMMA)をスピンコート法にて形成する。次に、図2(d)に示す構造を得るために、PMMA系共重合体を含むポジ型レジスト層13(PMMA)を露光する。ポジ型レジスト層(PMMA)には、露光した箇所が除去されるフォトマスク(不図示)を適用する。この時、露光波長域として、230〜260nm帯を使用すれば、下層のポジ型レジストはほとんど感光しない。これはケトンの吸収がカルボニル基に起因し、230〜260nmの光を殆ど透過してしまう為、感光しないことに起因している。露光されたポジ型レジスト層(PMMA)をジエチレングリコールとモルホリンとモノエタノールアミンと純水の混合液で現像し、所定のパターンを得る。前記現像液はアルカリ性である。この現像液では未露光部のアクリル系レジストの溶解速度は極めて遅く、且つ、上層現像時の下層への影響は軽微にすることができる。
次に、図2(e)に示す構造を得るために、PMIPKを含むポジ型レジスト層12(ODUR)を露光する。ポジ型レジスト層(PDUR)には、露光した箇所が除去されるフォトマスクを適用する。このとき、露光波長域として、270〜330nm帯を使用すれば、下層のポジ型レジストを感光させることができる。又、270〜330nm域の露光波長は、上層のポジ型レジスト層を透過するために、マスクからの回りこんだ光や基板からの反射光による影響を殆ど受けない。その後、露光された下層のポジ型レジスト層(ODUR)を現像し、所定のパターンを得る。現像液は、有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを適用することが好ましい。未露光のPMMA系共重合体は該現像液では殆ど溶解しないため、下層レジスト現像に上層パターンの変化はない。
次に、図2(f)に示すように、下層のポジ型レジスト層12及び上層のポジ型レジスト層13を覆うように液流路構造体材料14を塗布し、被覆樹脂層とする。塗布は汎用的なスピンコート等のソルベントコート法を適用できる。液流路構造体材料は、特許第3143307号に記載されるように、常温にて固体状のエポキシ樹脂と光照射によりカチオンを発生するオニウム塩を主成分とする材料であり、ネガ型の特性を有している。また、液流路構造体材料層上に撥水性被膜14aを形成したい場合は、特開2000−326515号公報に記載されるように、感光性撥水材層を形成し、一括にて露光、現像することにより実施することが可能である。この時、感光性撥水層の形成はラミネートにより実施することが可能である。その後、液流路構造体材料と感光性撥水層を同時に露光する。一般的には液流路構造体材料14はネガ型特性のものを使用するため、吐出孔となる部分に光を照射させないフォトマスク18を適用する。そして、液流路構造体材料の被覆樹脂層を現像し、吐出口15を形成する。現像はキシレン等の芳香族系溶剤を適用することが好ましい。
次に、液流路構造体材料層上に、該材料層をアルカリ溶液から保護する為に環化イソプレン19を塗布した。この材料は東京応化工業社よりOBCの名称で上市される材料を用いた。その後、シリコン基板をテトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)22wt%溶液,83℃に13時間浸漬し、インク供給の為の貫通孔20を形成した。また、インク供給孔形成のためにマスク及びメンブレンとして使用した窒化シリコンはシリコン基板に予めパターニングしてある。
次に、図2(h)に示すように、異方性エッチング後にシリコン基板を裏面が上になるようにドライエッチング装置に装着し、CF4に5%の酸素を混合したエッチャントにてメンブレン膜を除去した。次いで、前記シリコン基板をキシレンに浸漬してOBCを除去した。その後、全面露光により、液流路の型材であるポジ型レジスト層12,13を分解する。330nm以下の波長の光を照射すれば上層及び下層のレジスト材料は低分子化合物に分解され、溶剤により除去し易くなる。
最後に、溶剤により液流路の型材であるポジ型レジスト層を除去する。この工程により、図2(h)の断面図に示すとおり、吐出口15に連通する液流路21が形成される。本発明による液流路21は、液流路の一部を形成し且つヒータ(液体吐出エネルギー発生部)と接する気泡発生室である吐出チャンバの近傍にて液流路高さが低くなった形状である。溶剤による型材の除去工程において超音波やメガソニック等の振動を付与すれば溶解除去時間の短縮が可能となる。
ここで、図3に、汎用的露光装置として適用されるプロキシミテイー露光装置の光学系の概略図を示す。高圧水銀灯(2.0kW,Xe−Hgランプ)100から生じる紫外線あるいは遠紫外線を反射集光器103でスクリーン104に向けて反射させ、レジストの露光に必要な波長の光のみを反射するコールドミラー101にて所望の波長の光線を選択し、蝿の目レンズ102で拡大均一化された後、コンデンサーレンズ105や投影光学系およびマスク106を介してレジスト(不図示)に光照射する構成となっている。これは全ての光を反射した場合、レジストの感光に不要な波長の光は熱に変換され、パターニング精度を低下させることを防止する為である。なお、ウシオ電機(株)製のマスクアライナーUX−3000SCでは、前記蝿の目レンズ102とコールドミラーとの間に、所望の波長以外の光を遮蔽させるカットフィルタが自動で着脱可能になっている。このようにして、2種の異なる波長領域の露光波長を用いて、2種の異なるレジストを露光、パターニングすることにより、図1及び図2に示す工程フローにてインク液流路高さが部分的に異なるインクジェットヘッドを生産することが可能となる。
図4及び図5に、上層レジストとして、PMMA共重合体のポジ型レジストを適用した最も好適なプロセスフローを示す。図5は図4の工程の続きを示す。図4(a)にて基板31上にPMIPKを含むポジ型レジスト層32を塗布し、ベークする。塗布はスピンコートやバーコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。またベーク温度は、100〜150℃が好ましい。次いで、図4(b)に示すように、PMIPKを含むポジ型レジスト層32の上層にPMMA系共重合体#の光崩壊型ポジ型レジスト33を塗布し、ベークする。塗布はスピンコートやバーコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。またベーク温度は、100〜150℃が好ましい。次いで、図4(c)に示すようにPMMA共重合体の光崩壊型ポジ型レジスト層33を230〜260nm帯の露光波長を使ってマスク36を介して露光する。例えば、ウシオ電機(株)製のマスクアライナーUX−3000SCを使って、260nm以上の光を遮蔽することで、所望の230〜260nm帯の露光波長のみを選択的に照射することが可能である。
次いで、図4(d)に示すように上層レジスト層33の現像を行う。現像液としては少なくとも、露光部を溶解可能であり、かつ未露光部を溶解しずらい溶剤であれば使用可能であるが、本発明者等は、鋭意検討の結果、水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、含窒素塩基性有機溶剤、水を含有する現像液が特に好適に用いられることを見いだした。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノブチルエーテルおよび/またはジエチレングリコールモノブチルエーテル、含窒素塩基性有機溶剤としては、エタノールアミンおよび/またはモルフォリンが特に好適に用いられ、例えば、X線リソグラフィーにおいてレジストとして用いられるPMMA(ポリメチルメタクリレート)用の現像液として、特開平3−10089号公報に開示されている組成の現像液を、本発明においても好適に用いることができる。上述した成分のそれぞれの組成比としては、例えば、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:60vol%
エタノールアミン:5vol%
モルホリン:20vol%
イオン交換水:15vol%
から成る現像液を用いることが可能である。
さらに、図4(e)に示すように下層のポジ型レジスト層32を露光する。この露光は270〜330nm帯の露光波長を使ってマスク37を介して露光する。例えば、ウシオ電機(株)製のマスクアライナーUX−3000SCを使って、270nm以下の光を遮蔽することで、所望の270〜330nm帯の露光波長のみを選択的に照射することが可能である。
次いで、図4(f)で示すようにポジ型レジスト層32を現像する。現像はPMIPKの現像液であるメチルイソブチルケトンを用いることが好ましいが、PMIPKの露光部を溶解し、未露光部を溶解しない有機溶剤であれば何れも適用可能である。次いで、図4(g)に示すように、下層のポジ型レジスト層32及び上層のポジ型レジスト層33を覆うように液流路構造体材料34を塗布する。塗布は汎用的なスピンコート等のソルベントコート法を適用できる。液流路構造体材料は、特許第3143307号公報に記載されるように、常温にて固体状のエポキシ樹脂と光照射によりカチオンを発生するオニウム塩を主成分とする材料であり、ネガ型の特性を有している。図5(a)では液流路構造体材料に光照射を行う工程を示すが、インク吐出孔となる箇所に光を照射させないフォトマスク38を適用している。次に、図5(b)に示すように、感光性の液流路構造体材料34に対してインク吐出孔35のパターン現像を行う。
このパターン露光は汎用的な露光装置の何れの物を適用しても構わない。この感光性の液流路構造体材料の現像はPMIPKを溶解しない、キシレン等の芳香族溶剤にて行うことが好ましい。また、液流路構造体材料層上に撥水性被膜を形成したい場合は、特開2000−326515号公報に記載されるように、感光性撥水材層を形成し、一括にて露光、現像することにより実施することが可能である。この時、感光性撥水層の形成はラミネートにより実施することが可能である。次いで、図5(c)に示すように、液流路構造体材料層越しに300nm以下の電離放射線を一括で照射しする。これは、PMIPKやPMMA共重合体レジストを分解して低分子化し、除去を容易に行えることを目的としている。
最後に、型に用いたポジ型レジスト32,33を溶剤にて除去する。これにより、図5(d)に示すように吐出チャンバを含む液流路39が形成される。
以上記載した工程を適用することにより、インク供給孔からヒーターまでのインク液流路の高さを変化せしめることが可能である。
このような製法により、インク供給孔からヒーターまでのインク液流路の高さを変化させることが可能となる。インク供給孔から吐出チャンバーまでのインク液流路形状を最適化することは、吐出チャンバーにインクを再充填する速度と大きな関係を有するばかりでなく、吐出チャンバー間のクロストークを低減させることが可能である。Truebaらの米国特許4882595号明細書では、基板上に感光性レジストより形成されるインク液流路の2次元的、すなわち該基板と平行な方向の形状と上記特性との関係を開示している。一方、マーシーらの特開平10−291317号公報では樹脂性の液流路構造体プレートをエキシマレーザーにて基板に対する面内方向と高さ方向の3次元方向に加工し、インク液流路の高さを変化させることを開示している。
しかしながら、エキシマレーザーによる加工は、加工時の熱によるフィルムの膨張等により十分な精度を実現できない場合が多い。特に、エキシマレーザーによる樹脂フィルムの深さ方向の加工精度はレーザーの照度分布やレーザー光の安定性に影響を受け、インク液流路形状と吐出特性の相関を明確にできる精度を確保できない。従って、特開平10−291317号公報では、インク液流路の高さ形状と吐出特性との明確な相関は記載されていない。
本発明に関わる製法は、半導体製造技術で用いられるスピンコート等のソルベントコート法により実施される為、インク液流路はその高さが極めて高精度で安定的に形成できる。また、基板に対して平行な方向の2次元的な形状も半導体のフォトリソグラフィー技術を用いる為、サブミクロンの精度を実現することが可能である。
次に、本発明を適用可能なインクジェットヘッドの構造について図6を用いて説明する。図6(a)は本発明の製法による、吐出チャンバーを改善したインクジェットヘッドのノズル構造を示す縦断面図、(b)は(a)に示したヘッドと比較するノズル構造を示す縦断面図である。図6において、71は基板、72はインク供給口であり、76は各インク流路壁の端部を示す。本発明を適用するヘッドは、図6(a)に示すように、吐出チャンバー77の吐出孔形状が凸の断面形状であることを特徴としている。インクの吐出エネルギーはヒータ上部の吐出孔形状に規定されるインクの流抵抗により大きく変化するが、従来製法では、吐出孔形状は液流路構造体材料のパターニングにより形成する為、マスクに形成された吐出孔パターンが投影された形状となる。従って原理的には液流路構造体材料表面の吐出孔開口面積と同一の面積で吐出孔が液流路構造体材料の層を貫通して形成される。しかしながら、本発明の製法では、下層材料と上層材料のパターン形状を変えることにより、吐出チャンバー77の吐出孔形状を凸形状に形成することができる。このことは、インク吐出速度を速めたり、またインクの直進性を増す効果があり、より高画質の記録を行える記録ヘッドを提供できる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図7(a)〜(h)のそれぞれには、本発明に係る液体吐出ヘッドの製作手順の一例が示されている。なお、図7(i)は、(a)〜(h)に示す製法で完成した液体吐出ヘッドの模式的断面図である。
本例では、2つのオリフィス(吐出孔)を有する液体噴射記録ヘッドが示されるが、もちろんこれ以上のオリフィスを有する高密度マルチアレイ液体噴射記録ヘッドの場合でも同様であることは、言うまでもない。まず、本実施形態においては、例えば図7(a)に示されるような、ガラス、セラミックス、プラスチックあるいは金属等からなる基板201が用いられる。尚、図7(a)は感光性材料層形成前の基板の模式的斜視図である。このような基板201は、液流路の壁部材の一部として機能し、また後述の感光性材料層からなる液流路構造体の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等、特に限定されることなく使用できる。上記の基板201上には、電気熱変換素子あるいは圧電素子等の液体吐出エネルギー発生素子202が所望の個数配置される(図7(a)では2個にて例示)。このような、液体吐出エネルギー発生素子202によって記録液小滴を吐出させるための吐出エネルギーがインク液に与えられ、記録が行なわれる。因みに、例えば、液体吐出エネルギー発生素子202として電気熱変換素子が用いられるときには、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられるときは、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
尚、これらの素子202には、これら素子を動作させるための制御信号入力用電極(図示せず)が接続されている。また、一般にはこれら吐出エネルギー発生素子202の耐用性の向上を目的として、保護層等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこの様な機能層を設けることは一向に差しつかえない。最も汎用的には、基板201としてはシリコンが適用される。即ち、吐出エネルギー発生素子を制御するドライバーやロジック回路等は、汎用的な半導体製法にて生産される為、該基板にシリコンを適用することが好適である。また、該シリコン基板にインク供給の為の貫通孔を形成する方法としては、YAGレーザーやサンドブラスト等の技術を適用することも可能ではある。しかし、レジスト塗布時には基板に貫通孔が形成されていないことが好ましい。このような方法は、アルカリ溶液によるシリコンの異方性エッチ技術を適用できる。この場合、基板裏面に耐アルカリ性の窒化シリコン等にてマスクパターンを形成し、基板表面には同様の材質でエッチングストッパーとなるメンブレン膜を形成しておけば良い。
次いで図7(b)に示すように、液体吐出エネルギー発生素子202を含む基板201上に、PMIPKのポジ型レジスト層203を塗布した。PMIPKは、東京応化工業株式会社より上市されるODUR−1010を樹脂濃度が20WT%となるように調整して使用した。プリベークはホットプレートにて120℃、3分間行った。更に、窒素雰囲気中オーブンにて、150℃、60分間の熱処理を行った。該被膜の膜厚は15μmであった。
次いで図7(c)に示すように、前記ポジ型レジスト層203上にPMMA共重合体の光崩壊型のポジ型レジスト層204を塗布した。PMMA共重合体の光崩壊型のポジ型レジストとしては、以下のポジ型レジストを用いた。
・メチルメタクリレートとメタクリル酸のラジカル重合物(PMMA系共重合体)
重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=170000
分散度(Mw/Mn)=2.3
この樹脂粉末をジグライム溶媒に約25wt%の固形分濃度にて溶解し、レジスト液として使用した。その際のレジスト溶液の粘度は、約600cpsであった。該レジスト液を、スピンコート法にて塗布し、100℃で、3分でプリベークした後、窒素雰囲気中オーブンにて150℃で、30分間の熱処理を行った。なお、熱処理後のレジスト層の膜厚は5μmであった。次いで図7(d)に示すように、カルボン酸のPMMA共重合体の光崩壊型のポジ型レジスト層204の露光を行った。露光装置はウシオ電機(株)製マスクアライナーUX−3000SCにて行い、カットフィルタを用いて、露光波長230〜260nm帯を選択的に照射した。
次いで図7(e)に示すように、PMMA共重合体の光崩壊型のポジ型レジスト層204の現像を行った。現像は、以下の組成の現像液にて現像して、所望のパターンを形成した。
現像液
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:60vol%
エタノールアミン:5vol%
モルホリン:20vol%
イオン交換水:15vol%
次いで、図7(f)に示すように、下層のPMIPKのポジ型レジスト層203のパターニング(露光、現像)を行った。露光装置は同一の装置を用い、カットフィルタを用いて、露光波長270〜330nm帯を選択的に照射した。現像はメチルイソブチルケトンにて行った。
次いで、図7(g)に示すように、パターニングされた下層のポジ型レジスト層203と上層のポジ型レジスト層204を覆うように液流路構造体材料207の層を形成した。この層の材料は、ダイセル化学工業株式会社より上市されるEHPE−3150を50質量部、旭電化工業株式会社より上市される光カチオン重合開始材SP−172を1質量部、日本ユニカ社より上市されるシランカップリング材A−187を2.5質量部を塗布溶剤として用いたキシレン50質量部に溶解して作製した。塗布はスピンコートにて行い、プリベークはホットプレートにて90℃、3分間行った。露光はキヤノン製マスクアライナーMPA−600FAを使用し、露光は3J/cm2で行った。現像はキシレンに60秒間浸漬して行った。その後、100℃にて1時間のベークを行い、液流路構造体材料の密着性を高めた。
次いで、液流路構造体材料207に対してインク吐出孔209のパターン露光および現像を行う。このパターン露光は汎用的な露光装置の何れのものを適用しても構わない。図示しないが、露光時にはインク吐出孔となる箇所に光を照射させないマスクを使用した。その後、図示しないが、液流路構造体材料層上に、該材料層をアルカリ溶液から保護する為に環化イソプレンを塗布した。この材料は東京応化工業社よりOBCの名称で上市される材料を用いた。その後、シリコン基板をテトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)22wt%溶液,83℃に13時間浸漬し、インク供給の為の貫通孔(不図示)を形成した。また、インク供給孔形成のためにマスク及びメンブレンとして使用した窒化シリコンはシリコン基板に予めパターニングしてある。このような異方性エッチング後にシリコン基板を裏面が上になるようにドライエッチング装置に装着し、CF4に5%の酸素を混合したエッチャントにてメンブレン膜を除去した。次いで、前記シリコン基板をキシレンに浸漬してOBCを除去した。
次いで図7(h)に示すように、低圧水銀灯を用いて300nm以下の電離放射線208を液流路構造体材料207に向けて全面照射し、PMIPKの上層ポジ型レジストと、PMMA系共重合体の下層ポジ型レジストを分解した。照射量は50J/cm2である。
その後、基板201を乳酸メチルに浸漬して、型レジストを一括除去した。この時、200MHzのメガソニック槽に入れ溶出時間の短縮を図った。これにより、吐出チャンバを含むインク液流路211が形成され、インク供給孔210から各インク液流路211を介して各吐出チャンバにインクを導いて、ヒータによって吐出孔209より吐出させる構造のインク吐出エレメント(図7(i)参照)が作製される。
このように作製した吐出エレメントは図8に示す形態のインクジェットヘッドユニットに実装され、吐出、記録評価を行ったところ良好な画像記録が可能であった。前記インクジェットヘッドユニットの形態としては図8に示すように、例えばインクタンク213を着脱可能に保持した保持部材の外面に、記録装置本体と記録信号の授受を行うためのTABフィルム214が設けられ、TABフィルム214上にインク吐出エレメント212が電気接続用リード215により電気配線と接続されている。
(変形例)
第1の実施の形態により、図6(a)に示した構造のインクジェットヘッドを試作した。本実施形態では図9(a)に示すとおり、吐出チャンバー77は下層レジストより形成される矩形部が25μmの正方形にて高さ10μm、上層レジストより形成される矩形部が20μmの正方形にて高さ10μm、吐出孔は直径15μmの丸穴より構成される。ヒーター73から吐出孔74の開口面までの距離は26μmである。図9(b)は従来製法によるヘッドの吐出孔の断面形状を示し、吐出チャンバー77は一辺20μmの矩形であり、高さ20μmである。吐出孔74は直径15μmの丸穴で形成されている。図9の(a),(b)の夫々のヘッドの吐出特性を比較したところ、図9(a)に示すヘッドは吐出量3ngにて吐出速度15m/sec、吐出孔74から吐出方向に1mm離れた位置での着弾精度は3μmであった。また図9(b)に示すヘッドは吐出量3ngにて吐出速度9m/sec、着弾精度は5μmであった。なお、図9において、71は基板、72はインク供給口であり、76は各インク流路壁の端部を示す。
本発明の効果を検証するために、キヤノン製のIJプリンター(PIXUS 560i)に搭載しているカラーヘッドの形態で、表1に示す条件にて、以下の型材形成材料を用いる以外は第1の実施形態に記載のとおりにヘッドを作成し評価を行った。ただし、実施例1は参考例である。
実施例1、比較例1,2で使用した型材形成材料は、PMIPKとP(MMA−MAA)である。PMIPKは、東京応化工業株式会社より上市されるODUR−1010を樹脂濃度が20WT%となるように調整して使用した。P(MMA−MAA)は、メタクリル酸メチルとメタクリル酸のラジカル重合物(PMMA系共重合体)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=170000、分散度(Mw/Mn)=2.3になるように合成した樹脂粉末をジグライム溶媒に約25wt%の固形分濃度にて溶解し、レジスト液1と、メタクリル酸メチルとメタクリル酸のラジカル重合物(PMMA系共重合体)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=30000、分散度(Mw/Mn)=2.1になるように合成した樹脂粉末をジグライム溶媒に約25wt%の固形分濃度にて溶解し、レジスト液2とを使用した。
また、実施例2、比較例3で使用した型材形成材料は、PMIPKとP(MMA−MAN)である。PMIPKは、東京応化工業株式会社より上市されるODUR−1010を樹脂濃度が20WT%となるように調整して使用した。P(MMA−MAN)は、メタクリル酸メチルと無水メタクリル酸のラジカル重合物(PMMA系共重合体)、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)=30000、分散度(Mw/Mn)=3.4になるように合成した樹脂粉末をシクロヘキサノン溶媒に約30wt%の固形分濃度にて溶解し、レジスト液として使用した。
評価として、クラックは、使用したウェハサイズ内で、取り得るチップ個数(N個)に対して、発生したひび割れクラックによる不良チップ数(M個)として、その発生率で判定した。不良の判定は、個々のチップ内で、1箇所でも起きている場合は、不良品として判定している。
判定基準は、下記の通りである。
○: (M/N)*100>90%
△: (M/N)*100<70%
又、残渣についても、同様に、その発生率で判定した。
ノズル歩留まりに関しては、使用したウェハサイズで、全体の取り個数(N個)に対して、クラック無・残渣無で出来上がったチップ個数(M個)での(M/N)×100の値を示す。印字歩留まりに関しては、ヘッド組したヘッド数(n個)に対して、プリンターでの印字検査において、ヨレ値がσで5μm以内に入るヘッド個数(m個)での(m/n)×100の値を示す。
結果を示す表1から明らかなように、本発明の構成で作成したIJヘッドでは、上層、下層とも型材に膜べり、クラック、残渣は見受けられるものではなく、ノズル歩留まり、印字歩留まりとも良好なものであった。
これに対して、熱架橋を行って作成した比較例1,3においては、熱架橋を行った下層の型材に、感度の低下、クラックが見受けられており、更に残渣も見受けられるものであった。そしてノズル歩留まり、印字歩留まりとも本発明の構成で作成したものに比べ下回るものであった。比較例2においては、熱架橋を行わないためにクラック、残渣等は見受けられないものの、上層の型材に膜べりが見受けられ、ノズル歩留まり、印字歩留まりとも本発明の構成で作成したものに比べ格段に下回るものであった。
尚、本発明の構成で作成したIJヘッドで発生した印字不良は、主にヘッド組(実装時)の際に混入したゴミ等に起因する一部のノズルからインク滴が飛翔しない現象(不吐現象と呼ぶ)であった。この結果から、安価で、信頼性の高いインクジェット記録ヘッドを提供するためには、本発明による製造方法に基づいて形成する事が好ましいことがわかる。
Figure 0004533256
(a)〜(f)はそれぞれ、本発明の製造方法の基本的工程フローを説明する説明図である。 図1の工程を含むインクジェットヘッドを作成する工程を示す図である。 汎用的な露光装置の光学系の模式図である。 (a)〜(g)はそれぞれ、本発明の製法において、上層にメタクリレート系レジストを用いる場合の工程フローを示す図である。 (a)〜(d)はそれぞれ、図4の工程の続きを示す図である。 (a)は本発明の製法による、吐出チャンバーを改善したインクジェットヘッドのノズル構造を示す縦断面図、(b)は(a)に示したヘッドと比較するノズル構造を示す縦断面図である。 (a)〜(h)はそれぞれ、本発明の一実施形態による製法を説明するための模式的斜視図であり、(i)は(a)〜(h)に示す製法で完成した液体吐出ヘッドの模式的断面図である。 図7に示した製法で得たインク吐出エレメントが実装されたインクジェットヘッドユニットを示す模式的斜視図である。 (a)、(b)はそれぞれ本発明の製法と、従来製法との、吐出特性を比較する為に作製したヘッドのノズル構造を示す図である。 ノズル形状の設計における最適化の概要を説明するための図である。 ノズル形状の設計における最適化の概要を説明するための図である。 ノズル形状の設計における最適化の概要を説明するための図である。

Claims (6)

  1. 微細構造体の製造方法において、
    基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
    次に、第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程とを、順次含み、
    前記工程を実施することで基板に対して、凸形状のパターンを形成することを特徴とする微細構造体の製造方法。
  2. 第1のポジ型感光性材料層をソルベントコート法により形成した後に、加温により、層中の塗布用溶媒を揮発させた後に、第2のポジ型感光性材料層を形成するための材料を塗布し、形成された塗布層に熱を加えて塗布用溶媒を揮発させて第のポジ型感光性材料層を得る請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
  3. 液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上の液流路形成部分に除去可能な樹脂にて型パターンを形成し、該型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布し硬化させた後、前記型パターンを溶解除去して液流路を形成する、液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記型パターンを形成する工程では、
    基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
    第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
    を順次含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上の液流路形成部分に除去可能な樹脂にて型パターンを形成し、該型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布し硬化させた後、前記型パターンを溶解除去して液流路を形成する、液体吐出ヘッドの製造方法において、
    基板上に、第1の波長域の電離放射線に感光する第1のポジ型感光性材料層であるメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    該第1のポジ型感光性材料層の上に、第2の波長域の電離放射線に感光する第2のポジ型感光性材料層として、メタクリル酸エステルと無水メタクリル酸を共重合させて得られた共重合体であり、該共重合体の平均重量分子量が10000〜100000であり、該共重合体中に無水メタクリル酸が含まれる比率が、5〜30重量%である感光性材料を含む電離放射線分解型のポジ型レジスト層を形成する工程と、
    第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第2の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで前記第1のポジ型感光性材料層は分解反応させずに、前記第2のポジ型感光性材料層の、所望の領域のみを分解反応させた後、現像液を用いて現像し、上層の前記第2のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
    第1及び第2のポジ型感光性材料層が形成された基板面に前記第1の波長域の電離放射線を、マスクを介して照射することで、少なくとも前記第1のポジ型感光性材料層の、所定の領域を分解反応させた後、現像し、下層の前記第1のポジ型感光性材料層において所望のパターンを形成する工程と、
    前記所望のパターンを形成している第1および第2のポジ型感光性材料層上に感光性の被覆樹脂膜を塗布し、前記液流路に連通する吐出口を含むパターンを露光した後、現像して該吐出口を含むパターンを形成する工程と、
    前記感光性の被覆樹脂膜を介して、前記第1および前記第2のポジ型感光性材料層の両方が分解反応する波長域の電離放射線を照射して、これらの第1および前記第2のポジ型感光性材料層からなるパターン中の樹脂成分を分解する工程と、
    上記の工程を経た基板を所定の有機溶剤に浸漬し、該第1および前記第2のポジ型感光性材料層からなるパターンを溶解、除去する工程と、
    を少なくとも含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 第1のポジ型感光性材料層をソルベントコート法により形成した後に、加温により、層中の塗布用溶媒を揮発させた後に、第2のポジ型感光性材料層を形成するための材料を塗布し、形成された塗布層に熱を加えて塗布用溶媒を揮発させて第のポジ型感光性材料層を得る請求項3または4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 第1のポジ型感光性材料層が感光する第1の波長域が270nm〜350nmの領域であり、且つ、第2のポジ型感光性材料層が感光する第2の波長域が230nm〜260nmの領域である請求項3または4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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