図9に、MOS型イメージセンサの一画素分の構成要素となる光センサ回路の一例を示す。この光センサ回路は、入射される光に感応して当該光の信号を電圧信号としてサンプルしかつホールドする機能を有している。光センサ回路におけるサンプル・ホールド機能は「シャッタ機能」と呼ばれる。
光センサ回路101は、入射光(光信号)L1を検出して電気信号に変換する光センサ素子としてのフォトダイオードPDを備える。フォトダイオードPDは、寄生容量(配線の浮遊容量を含む)であるコンデンサC1を並列に有している。光センサ回路101は、フォトダイオードPDのセンサ電流を弱反転状態で対数特性を有するセンサ電圧に変換する第1のMOS型トランジスタQ1を備える。MOS型トランジスタQ1ではゲートがドレインに電気配線で接続されている。
光センサ回路101は、さらに、センサ電圧を保持・蓄積するためのコンデンサC2と、コンデンサC1とコンデンサC2の間の電荷移動を行わせる第2のMOS型トランジスタQ2と、コンデンサC2の保持されるセンサ電圧を増幅するための第3のMOS型トランジスタQ3と、その増幅された端子電圧(Vout)を画素信号として選択的に出力させる第4のMOS型トランジスタQ4を備えている。MOS型トランジスタQ4のドレイン端子には抵抗Rが接続されている。
上記光センサ回路101では、MOS型トランジスタQ1のドレイン端子に電圧V1が印加され、MOS型トランジスタQ2のゲート端子には電圧V2が印加され、MOS型トランジスタQ3のゲート端子には電圧V3が印加され、抵抗Rの一端には電圧V4が印加されている。
光センサ回路101においては、従来、電圧V1〜V4に関して、図10に示すようなタイミングで各部を動作させている。
電圧V1は高電圧値に保持される。そのためMOS型トランジスタQ1はオンになり、コンデンサC1は充電された状態になる。この状態で、時間間隔t1〜t2では電圧V2を高電圧値にしてMOS型トランジスタQ2をオン状態にする。この状態で、フォトダイオードPDに光L1が入射すると、これによりMOS型トランジスタQ1には、フォトダイオードPDで発生する光電流に相当する電流が流れる。この電流は、対数特性を有する電圧に変換される。フォトダイオードPDで発生する光電流に基づく電圧は、上記のコンデンサC1とコンデンサC2に充電される。図10において、電圧VC1はコンデンサC1の端子電圧を意味し、電圧VC2はコンデンサC2の端子電圧を意味している。
次にt2〜t5では、電圧V2を低電圧値にしてMOS型トランジスタQ2をオフ状態にし、光L1に対応するセンサ電圧を蓄積するコンデンサC2の端子電圧VC2を保持する。さらにt3〜t4では、電圧V3を高電圧値にしてMOS型トランジスタQ4をオンにする。これにより、電源からの印加電圧V4に基づき電流が供給され、抵抗Rを介して、当該光センサ回路の画素信号がVoutとして出力される。この時、MOS型トランジスタQ2がオフ状態である期間、すなわちコンデンサC2の端子電圧保持期間では、仮にコンデンサC1の端子電圧VC1が変化したとしても、画素信号としての出力電圧Voutでは変化は生ぜず、同じ出力電圧を得ることが可能となる。図10では、タイミングチャートの下段にて3つの電圧VC1,VC2,Voutのそれぞれの変化状態が示されている。
図9に示した光センサ回路では、図10に示したタイミングチャートによって上記のごとく動作させるため、画素単位で、入射光L1にフォトダイオードPDが感応し、光電効果を生じ、光電流に基づいてコンデンサC2の端子電圧VC2を生じさせ、かつ保持することができる。光センサ回路(画素)単位でコンデンサC2により光電流に対応する端子電圧VC2を保持することを「シャッタ機能」という。光センサ回路では上記シャッタ機能を持たせることができる。従ってMOS型イメージセンサでは、光センサ回路ごとに、すなわち画素ごとに、シャッタ機能の動作制御を行うことができる。
上記の光センサ回路において、コンデンサC2の端子電圧VC2を保持する機能を実現するMOS型トランジスタQ2について、以下では「シャッタトランジスタQ2」と呼ぶことにする。
本願発明の先行公知技術として特許文献1に記載された光センサ回路が存在する。この光センサ回路は基本的な回路構成として、上記の図9に示された回路構成を有している。シャッタ機能を有する光センサ回路において、再現性のよい画素信号を得ることを可能にしている。特許文献1の図1に示された光センサ回路は、上記の図9に示された光センサ回路と実質的に同一のものである。
特開2001−145024号公報
図9に示した従来の光センサ回路に関して、各入射光強度に対するセンサ出力の関係を評価した例を図11に示す。この図において、各入射光強度におけるセンサ出力電圧を、暗状態の出力電圧との差をとって描画したものである。本図に示したセンサ出力電圧の特性101では、特性傾向を表す直線102に対比すると、高い入射光強度の領域103で出力低下が見られる。なおここで、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧(V1)とシャッタトランジスタQ2のゲート電圧(V2)の差を「ΔVsh」と記述している。図11で得たセンサ出力電圧の特性はΔVshが1.2Vであるときの評価結果である。
上記のごとく、高い入射光強度の領域103で出力低下が見られる原因について、以下に説明する。
上記の出力低下は、シャッタトランジスタQ2がオンからオフへ動作する際に、シャッタトランジスタQ2のゲートの寄生容量に蓄積された電子によって、光信号L1として電荷を蓄積するコンデンサC2の電位が変化してしまうという事象に起因している。
次に、フォトダイオードPDのコンデンサC1、および光信号として電荷を蓄積するコンデンサC2のそれぞれに蓄積される電荷の状態を示したモデルを、図12を参照して説明する。
図12では、先ず、左右で、入射光L1に関して低光強度の場合(A)と高光強度の場合(B)が示される。さらに(A)と(B)のそれぞれにおいて、露光時(状態a)、シャッタ・オフ過渡時(状態b)、シャッタ・オフ後(状態c)の各状態が示されている。各状態に関するモデル説明図111〜116に関し、横軸において、「G1」は第1MOS型トランジスタ(対数変換用トランジスタ)Q1のゲート、「G2」は第2MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2のゲート、「PD」は前述のフォトダイオード、「C2」は前述のコンデンサ、「D」は第1MOS型トランジスタ(対数変換用トランジスタ)Q1のドレインを意味している。さらにモデル説明図111〜116の縦軸は電位を意味しており、かつ矢印に示す方向(下側)が高い電位となることを意味している。モデル説明図111〜116において、灰色領域104は電子の存在状態を示し、矢印105は電子の移動状態を示している。当該矢印105に示されるように、電子の移動は低い電位から高い電位に向かって生じている。
シャッタトランジスタQ2をオンにして露光状態を作る時(状態a)、コンデンサC1の端子電位やコンデンサC2の端子電位は、フォトダイオードPDへ入射される光L1の強度に応じた電位となる。すなわち、タイミングt1〜t2で、電圧V1が一定の高電圧値であって電圧V2が高電圧値の状態を保たれる時、フォトダイオードPDに光L1が入射されると、光L1の光強度のレベルに応じてコンデンサC2の電位VC2が生じる。図12に示されるごとく、露光時(状態a)において低い光強度の場合(モデル説明図111)にはコンデンサC2の電位は高くなり、高い光強度の場合(モデル説明図114)にはコンデンサC2の電位は低くなる。
次いで、それぞれの光強度レベルの入射光L1においてシャッタトランジスタQ2をオフすると、シャッタ・オフ過渡時(状態b)になる。このシャッタ・オフ過渡時(状態b)には、モデル説明図112,115に示すように、ゲートG2の電位が低くなり、シャッタトランジスタQ2のゲート寄生容量に蓄積された電子が矢印105のごとく移動する。この電子の移動では、当該電子の一部がコンデンサC2の側へ移動し、さらに電子の残りはMOS型トランジスタQ1のドレイン(D)へ排出される。
コンデンサC2へ移動する電子とMOS型トランジスタQ1のドレイン(D)へ排出される電子との割合は、入射光L1の光強度レベルによって異なる。すなわち、高い光強度時のシャッタトランジスタQ2のゲートG2下の電位は低い光強度時の同部の電位に比べて低くなり、このためシャッタトランジスタQ2のゲートG2の電位とMOS型トランジスタQ1のドレイン電位との電位差が大きくなり、電位勾配が大きくなるので、電子の移動が速くなり、ゲート寄生容量に蓄積された電子は、速やかにドレインへ排出される。この結果、高い入射光強度時には、シャッタトランジスタQ2のゲートG2の寄生容量に蓄積された電子がコンデンサC2へ配分される割合は小さくなる。
以上の特性を式で表現すると、次のようになる。
シャッタトランジスタQ2のオン・オフ前後のコンデンサC2の電位VC2の変動量については、モデル説明図113,114のそれぞれに示されるごとく、
ΔVa:低光強度でのシャッタトランジスタQ2のオン・オフ前後の場合
ΔVb:高光強度でのシャッタトランジスタQ2のオン・オフ前後の場合
となる。そして、図12に示されるごとく、コンデンサC2の電位VC2の変動量は、入射光強度によって異なり、ΔVa>Δbとなる。
この場合に、シャッタトランジスタQ2のオフ時に得られる感度(高入射光強度時と低入射光強度時のコンデンサC2における電位差(ΔVclose))は、シャッタトランジスタQ2のオン時に得られていた感度(ΔVopen)よりも小さくなり、ΔVclose<ΔVopenとなる。従って、シャッタトランジスタQ2のオン時に得られていた感度は、シャッタトランジスタQ2のオフ時には得られないことになる。
以上に説明した従来の光センサ回路における回路構成上の問題が、高い入射光強度の領域103で生じる出力低下の原因である。
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、フォトダイオードに入射される光信号の光強度が高い領域でも出力低下を生ぜず、入射光の広い光強度レンジで光強度に比例した安定した線形的な出力特性を得ることができる光センサ回路およびイメージセンサを提供することにある。
本発明に係る光センサ回路およびイメージセンサは、上記目的を達成するために、次のように構成される。
第1の光センサ回路(請求項1に対応)は、蓄電を行う第1静電容量要素(コンデンサC1)を含みかつ光信号を電流信号に変換する光電変換素子(フォトダイオードPD)と、光電変換素子(PD)から出力される電流信号を弱反転状態で対数特性を有する電圧信号に変換するための変換用MOS型トランジスタ(Q1)と、電圧信号を保持する第2静電容量要素(コンデンサC2)と、第1静電容量要素(C1)と第2静電容量要素(C2)とを選択的に接続し電荷を移動させるための電荷移動用MOS型トランジスタ(Q2)と、第2静電容量要素(C2)が保持する電圧信号を駆動信号として電流信号を発生する増幅用MOS型トランジスタ(Q3)と、増幅用MOS型トランジスタ(Q3)から出力される電圧信号を選択的に出力させるための出力選択用MOS型トランジスタ(Q4)と、電荷移動用MOS型トランジスタ(Q2)のゲート駆動電圧を、変換用MOS型トランジスタ(Q1)のゲート電圧よりも電荷移動用MOS型トランジスタ(Q2)のゲートしきい値電圧だけ高くする電源部とを備えるように構成される。
上記光センサ回路では、次の手法により、電位変動量の差異が少なくなるように動作させる。電源部により、光電変換要素での受光時に変換用MOS型トランジスタQ2のゲート寄生容量に蓄積される電子(電荷)を抑制するために、電荷移動用MOS型トランジスタQ2のゲート電圧を、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧より、MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)程度だけ高い所定値電圧に設定する。MOS型トランジスタQ1,Q2のゲートにおける上記の電位設定により、MOS型トランジスタQ2の寄生容量に蓄積される電子数を抑制することが可能となる。これにより、MOS型トランジスタQ2がオフ動作するとき、ゲート下(ゲート寄生容量)に存在する電子は少ないため、MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2がオフした後の電子の配分による影響が小さくなり、入射光の光強度に依存する、上記ゲート寄生容量に蓄積された電子の影響が低減される。従って、MOS型トランジスタQ2のオフ時に得られる感度は、MOS型トランジスタQ2のオン時に得られていた感度と同程度でになり、その結果、MOS型トランジスタQ2のオン時に得られていた感度はオフ時にも得られることになる。
第2の光センサ回路(請求項2に対応)は、上記の第1の構成において、好ましくは、変換用MOS型トランジスタ(Q1)のドレインにドレイン電圧を供給し、変換用MOS型トランジスタ(Q1)のドレイン電圧を所定時間だけ低いドレイン電圧値に設定するという初期設定を行う初期設定手段を備えるように構成される。この構成では、初期設定手段による初期設定により静電容量要素C1とC2において入射光で生じた電荷の充電または放電を制御し、その後、変換用MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧を、そのゲート電圧と同じ電圧に切り換え、一定の露光時間の経過後に、電荷移動用MOS型トランジスタQ2をオフ状態にして第1静電容量要素C2をオープン状態にした上で、出力選択用MOS型トランジスタQ4をオンしてセンサ信号を取出す。
また本発明に係るイメージセンサは、前述の第1または第2の光センサ回路を1画素として1次元または2次元の撮像領域が形成されることを特徴づけられる。
本発明によれば、光センサ回路において、電荷移動用MOS型トランジスタQ2のゲート電圧を、対数変換用MOS型トランジスタのゲート電圧より、電荷移動用MOS型トランジスタのゲートしきい値電圧(Vth)程度だけ高い所定値電圧に設定したため、電荷移動用MOS型トランジスタのゲート下に蓄積される電荷を少なくすることができる。さらに、このため、電荷移動用MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)がオフした後の電子の配分による影響が小さくなり、入射光の光強度に依存する、上記ゲート寄生容量に蓄積された電子の影響を低減することができる。さらに本発明によれば、光電変換素子に入射される光信号の光強度が高い領域でも出力低下を生ぜず、入射光の広い光強度レンジで光強度に比例した安定した線形的な出力特性を得ることができ、ダイナミックレンジの広いシャッタ機能を有した光センサ回路およびイメージセンサを実現できる。さらに、初期設定手段により、残像の影響がなく、かつダイナミックレンジの広い対数出力を有するシャッタ機能を有した光センサ回路およびイメージセンサを実現できる。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図4を参照して本発明に係る光センサ回路の第1実施形態を説明する。図1は第1実施形態に係る光センサ回路の回路構成を示し、図2は、図1における光センサ回路の各部での電圧信号の状態を示し、図3は本実施形態の光センサ回路のセンサ出力特性のグラフを示し、図4は本実施形態の光センサ回路の動作説明図を示す。なお図1〜図4において、前述の「背景技術」の説明で用いた図に示した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
図1において、光センサ回路10は、入射される光信号L1を検出して電気信号に変換する光センサ素子であるフォトダイオードPDと、フォトダイオードPDの寄生容量(配線等の浮遊容量を含む)であるコンデンサC1を備えている。コンデンサC1はフォトダイオードPDのアノード・カソード間に並列に接続されている。なおフォトダイオードPDは光電変換素子の一例であり、光電変換素子はこれに限定されない。
フォトダイオードPDに対して、そのセンサ電流を弱反転状態で対数特性を有するセンサ電圧に変換する変換用の第1のMOS型トランジスタQ1が備えられる。このMOS型トランジスタQ1はドレイン11dとソース11sとゲート11gを有する。フォトダイオードPDのカソードはMOS型トランジスタQ1のソース11sに接続されている。他方、フォトダイオードPDのアノードはアース端子に接続されている。MOS型トランジスタQ1ではゲートがドレインに電気配線で接続されている。
光センサ回路10は、さらに、センサ電圧を保持・蓄積するためのコンデンサC2と、コンデンサC1とコンデンサC2の間の電荷移動を行わせる第2のMOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2と、コンデンサC2の保持されるセンサ電圧を増幅するための第3のMOS型トランジスタQ3と、その増幅された端子電圧(Vout)を画素信号として選択的に出力させる第4のMOS型トランジスタQ4を備えている。MOS型トランジスタQ4のドレイン端子には抵抗Rが接続されている。
上記光センサ回路10では、MOS型トランジスタQ1のドレイン端子に電圧V1が印加され、MOS型トランジスタQ2のゲート端子には電圧V2が印加され、MOS型トランジスタQ3のゲート端子には電圧V3が印加され、抵抗Rの一端には電圧V4が印加されている。MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧とゲート電圧は同じで、電圧V1となる。
上記の電圧V1〜V4について、電圧V1,V4は電圧源から一定電圧として供給され、電圧V2は電圧コントローラ11によって供給され、電圧V3は画素選択回路12から供給される。
MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧とゲート電圧は所定の一定電圧(V1)に設定される。そして、フォトダイオードPDが光信号L1を受光する時、MOS型トランジスタQ2のゲート電圧(V2)は、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧(V1)より、MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)程度だけ高い所定の電圧に設定される。上記の条件の下で、MOS型トランジスタQ2をオンすると共に、一定の露光時間の経過後に、MOS型トランジスタQ2をオフにしてコンデンサC2をフォトダイオードPDから非接続にしオープン状態とした上で、MOS型トランジスタQ4をオンにして光信号を検出するようにしている。
光センサ回路10において、上記電圧V1〜V4に関して、図2に示すようなタイミングで各部を動作させている。
タイミングt1〜t2では、MOS型トランジスタQ2の駆動電圧V2を高い電圧値(V1+Vth)にすることによってMOS型トランジスタQ2をオン状態にし、対数変換用のMOS型トランジスタトランジスタQ1にはフォトダイオードPDに光L1が入射することによって発生する光電流に相当する電流が流れ、それが対数特性を有する電圧に変換され、フォトダイオードPDのコンデンサC1とコンデンサC2とに電荷を充電または放電させる。
次にタイミングt2〜t5でMOS型トランジスタQ2をオフにして、コンデンサC2の電位VC2を保持する。そして、タイミングt3〜t4においてMOS型トランジスタQ4をオンにすると、電源からの電圧V4により電流が供給されてセンサ信号がVoutとして出力される。この時、MOS型トランジスタQ2がオフの期間、すなわちコンデンサC2の電位保持期間では、フォトダイオードPDのコンデンサC1の端子電圧VC1が変化しても、センサ信号としては同じ出力が得られることになる。
本実施形態に係る光センサ回路によって各入射光強度に対するセンサ出力の関係を評価した例を図3に示す。この図は、各入射光強度におけるセンサ出力電圧を暗状態の出力電圧との差をとって描画したものである。図3において、感度特性21についてはΔVshは0.5Vである。ここで「ΔVsh」は、第1MOS型トランジスタQ1のゲート電圧V1と第2MOS型トランジスタQ2のゲート電圧V2の差を意味する。ΔVsh=V2−V1>0である。ΔVshが0.5Vであるとき、この0.5Vは、第2MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)に実質的に一致している。
上記のごとく、受光時にMOS型トランジスタQ2のゲート電圧V2を、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧V1より、第2MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)の程度だけ高い電圧値に設定した場合の感度は、高い入射光強度の領域22でも出力低下はみられない。
ここで図4の動作説明図を参照して、上記の感度特性21が得られる理由を説明する。
図4において、先ず左右で、入射光L1に関して低光強度の場合(A)と高光強度の場合(B)が示される。さらに(A)と(B)のそれぞれにおいて、露光時(状態a)、シャッタ・オフ過渡時(状態b)、シャッタ・オフ後(状態c)の各状態が示されている。各状態に関するモデル説明図31〜36に関し、横軸において、「G1」は第1MOS型トランジスタ(対数変換トランジスタ)Q1のゲート、「G2」は第2MOS型トランジスタQ2のゲート、「PD」は前述のフォトダイオード、「C2」は前述のコンデンサ、「D」は第1MOS型トランジスタ(対数変換用トランジスタ)Q1のドレインを意味している。さらにモデル説明図31〜36の縦軸は電位を意味しており、かつ矢印に示す方向(下側)が高い電位となることを意味している。モデル説明図31〜36において、灰色領域37は電子の存在状態を示し、矢印38は電子(電荷)の移動状態を示している。当該矢印39に示されるように、電子の移動は低い電位から高い電位に向かって生じている。
本実施形態に係る光センサ回路によれば、低光強度と高光強度でのコンデンサC2の電位VC2での変動量の差異が少なくなるように動作させる。モデル説明図31,34に示されるごとく、前述した通り、受光時(露光時)にMOS型トランジスタQ2のゲート寄生容量に蓄積される電子を抑制するため、MOS型トランジスタQ2のゲート電圧 V2を、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧V1より、MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)程度だけ高い所定値電圧に設定する。
上記の電位設定により、MOS型トランジスタQ2のゲート寄生容量に蓄積される電子数を抑制することが可能となる。これにより、MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2がオフ動作するとき、ゲート下(ゲート寄生容量)に存在する電子は少ないため、シャッタトランジスタオフ後の電子の配分による影響が小さくなる(モデル説明図32,35)。
その結果、入射光強度に依存する上記ゲート寄生容量に蓄積された電子の影響が低減される。すなわち、MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2をオン・オフ駆動する前後のコンデンサC2の電位VC2の変動量を、それぞれ、モデル説明図33,34のそれぞれに示されるごとく、
ΔVa:低光強度での第2MOS型トランジスタQ2のオン・オフ前後の場合
ΔVb:高光強度での第2MOS型トランジスタQ2のオン・オフ前後の場合
とすると、これらの電位変動量は、入射光強度に依存せず、ΔVa≒ΔVbとなる。
従って、MOS型トランジスタQ2のオフ時に得られる感度(高入射光強度時と低入射光強度時のコンデンサC2の電位差=ΔVclose)は、MOS型トランジスタQ2のオン時に得られていた感度(ΔVopen)と同程度で、ΔVclose≒ΔVopenとなる。このため、MOS型トランジスタ(シャッタトランジスタ)Q2のオン時に得られていた感度は、オフ時にも得られることになる。
上記の感度特性21を実現する電圧Δshの範囲としては0.2V≦Δsh≦0.7Vが好ましい。
なお図3中には、参考として、Δshを大きくした場合の感度特性、すなわちΔsh=1.0Vの感度特性23とΔsh=1.2Vの感度特性24も描かれている。これらによれば、高い入射光強度で感度が低下しており、感度特性はΔVshに依存していることがわかる。
なお本発明の光センサ回路は、図1に示した電気回路構成に限定されるものではなく、光信号L1を検知して電気信号に変換する光電変換素子(PD)と、この光電変換素子のセンサ電流を弱反転状態で対数特性を有するセンサ電圧に変換する第1MOS型トランジスタ(Q1)が含まれる回路に適用される。
上記光センサ回路10を1画素分の構成要素として、それを1次元または2次元状に配設することによってイメージセンサを構成することができる。
図5に、第1実施形態に係る光センサ回路10を1画素(S)として用いて2次元のマトリクス状に配設したイメージセンサの構成例を示している。図5において、11は上記電圧コントローラであり、12は各画素Sに共通に設けられた上記の画素選択回路であり、13は各画素Sの画素信号を順次出力させるための信号選択回路である。
マトリクス状に配された各画素Sの読出し走査が行われ、各画素Sとしての光センサ回路におけるMOS型トランジスタQ4をオンにすると、電源電圧V4から電流が各画素Sに供給され、各画素Sの行に接続された抵抗Rを介して画素信号Voutとして出力されることになる。
次に、図6と図7を参照して本発明に係る光センサ回路の第2実施形態を説明する。図6は光センサ回路の回路構成を示し、図7は動作タイミングの電圧波形図を示している。
図6に示した光センサ回路50において、図1で示した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。光センサ回路50の回路構造は、第1実施形態に係る光センサ回路10と同じである。すなわち、光センサ回路50は、フォトダイオードPD、コンデンサC1、コンデンサC2、第1MOS型トランジスタQ1、第2MOS型トランジスタQ2、第3MOS型トランジスタQ3、第4MOS型トランジスタQ4、抵抗Rを備えている。
また光センサ回路50では、MOS型トランジスタQ1のゲート端子に電圧V1が印加され、MOS型トランジスタQ2のゲート端子には電圧V2が印加され、MOS型トランジスタQ3のゲート端子には電圧V3が印加され、抵抗Rの一端には電圧V4が印加されている。これらの電圧V1,V2,V3,V4は、第1実施形態に係る光センサ回路10で説明した電圧V1,V2,V3,V4とそれぞれ同じ特性を有するものである。これらの電圧V1〜V4について、電圧V1,V4は電圧源から一定電圧として供給され、電圧V2は電圧コントローラ11によって供給され、電圧V3は画素選択回路12から供給される。
光センサ回路50で特徴点は、MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧として、そのドレイン端子に、電圧V1’を供給する初期設定手段51を設けた点である。この初期設定手段51は、電圧コントローラとタイミング信号発生部に基づいて構成される。初期設定手段51によってMOS型トランジスタQ1のドレインに与えられる電圧V1’は、図7に示すごとく、タイミングt1〜t2で低い電圧値(ローレベル)となり、時点t2以降時点t6まで高い電圧値(ハイレベル)となる特性を有している。すなわち、初期設定手段51は、MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧V1’を所定時間(t2−t1)だけ低い電圧値に設定してコンデンサC1,C2の充電または放電を制御する。
光センサ回路50によれば、受光時に、MOS型トランジスタQ2のゲート電圧V2を、MOS型トランジスタQ1のゲート電圧V1より、MOS型トランジスタQ2のゲートしきい値電圧(Vth)の程度だけ高い所定値電圧に設定してMOS型トランジスタQ2をオンにする。また、初期設定手段51の出力電圧V1’を初期の所定時間低電圧値にしてコンデンサC1,C2の充電または放電を制御した後、MOS型トランジスタQ1のドレイン電圧をそのゲート電圧と同じ電圧に切り換えて、一定の露光時間の経過後に、MOS型トランジスタQ2をオフにしてコンデンサC2をオープン状態とした上で、MOS型トランジスタをオンにする。
図7を参照してさらに光センサ回路50の動作を詳述する。
MOS型トランジスタQ1のゲート電圧として設定される電圧V1は、MOS型トランジスタQ1に流れる電流が、電圧V1’を高電圧値状態としたときに弱反転状態で対数特性を有する検出電圧に変換される電圧値に設定されている。
上記の状態において、タイミングt1〜t2において電圧V1’を低電圧値にすると、MOS型トランジスタQ1のドレイン・ソース間の電圧が大きくなることからMOS型トランジスタQ1はオン状態となり、フォトダイオードPDのコンデンサC1とコンデンサC2に電荷を充電または放電させる。
次に、時点t2で電圧V1’が高電圧値に切り換わり、タイミングt2〜t3において、フォトダイオードPDに流れるセンサ電流とMOS型トランジスタQ1から供給される電流がつり合うような電圧で、フォトダイオードPDのコンデンサC1とコンデンサC2に電荷を充電または放電される。このとき、MOS型トランジスタQ1に流れる電流は弱反転状態で対数特性を有する検出電圧に変換されているため、コンデンサC2の端子電圧VC2はフォトダイオードPDに入射した光L1の量を対数変換出力したものとなる。その間のタイミングt1〜t3(シャッタ開放期間)ではMOS型トランジスタQ2はオン状態になっており、コンデンサC1の端子電圧VC1と、コンデンサC2の端子電圧VC2は同一になっている。
タイミングt3におけるMOS型トランジスタQ2のオフによってコンデンサC2の端子電圧VC2が保持状態になる。このとき、MOS型トランジスタQ2のゲート寄生容量の影響で、コンデンサC2の端子電圧VC2は端子電圧VC1より若干低くなる。次に、タイミングt4〜t5においてMOS型トランジスタQ4をオンにすると、電源電圧V4から電流が供給され、センサ信号がVoutとして出力される。
なお、光センサ回路50の構成では、時点t3以後にMOS型トランジスタQ2がオフ状態になると、コンデンサC2の電荷が保持され、次にMOS型トランジスタQ2をオンにするまではコンデンサC2の電荷は一定となる。この時、MOS型トランジスタQ2がオフの期間(コンデンサC2の電位保持期間)は、フォトダイオードPDのコンデンサC1の端子電圧VC1が変化しても、光センサ回路50のセンサ信号としては同じ出力が得られることになる。
従って、図6に示す光センサ回路を図7に示すように動作させることによって、残像の影響がなく、かつダイナミックレンジの広い対数出力を有するシャッタ機能を有したセンサを実現できるようになる。
上記光センサ回路50を1画素分の構成要素として、それを1次元または2次元状に配設することによってイメージセンサを構成することができる。図8は、光センサ回路50を1画素(S)として2次元のマトリクス状に配設したときのイメージセンサの構成例を示している。図8において、11は各画素S共通に設けられた上記電圧コントローラ、12は各画素Sに共通に設けられた画素選択回路、13は各画素Sの画素信号を順次出力させるための信号選択回路である。このイメージセンサでも、前述した通り、マトリクス状に配された各画素Sの読出し走査が行われる。
なお、上記の各実施形態の説明ではMOS型トランジスタをnチャネル型として説明したが、その代わりにpチャネル型のMOS型トランジスタを用いることができるのは勿論である。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。