JP4525481B2 - 楽音波形合成装置 - Google Patents

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Description

この発明は、用意された波形データパーツを組み合わせて楽音波形を合成するようにした楽音波形合成装置に関する。
楽音波形は、波形の性質から少なくとも開始波形と持続波形と終了波形に分割することができる。また、レガート演奏等の2つの楽音がなめらかにつながる演奏を行うと、楽音波形には2つの楽音における音程が遷移していく接続波形が存在するようになる。
従来、楽音波形における開始波形部分(ヘッド)、持続波形部分(ボディ)、終了波形部分(テイル)と、2つの楽音における音程の遷移部分を表現する部分とされる接続波形部分(ジョイント)との波形データパーツの複数種類を記憶手段に記憶しておき、演奏イベント情報に基づいて波形データパーツを記憶手段から読み出してつなぎ合わせることにより楽音波形を合成するようにした楽音波形合成装置が提案されている。この楽音波形合成装置では、演奏イベント情報に基づいて奏法(アーティキュレーション)を識別し、識別された奏法の特徴を示す楽音波形を合成するために、奏法に対応する開始波形部分(ヘッド)、持続波形部分(ボディ)、終了波形部分(テイル)と、2つの楽音における音程の遷移部分を表現する部分とされる接続波形部分(ジョイント)とを組み合わせて時間軸上に配置することで、楽音波形を再生時間軸に沿って合成するようにしている。
特開2001−92463号公報 特開2003−271139号公報
従来の楽音波形合成装置における楽音波形合成の基本について図8ないし図10を参照して説明する。ただし、図8(a)ないし図10(a)はピアノロール譜で記譜された楽譜を示しており、図8(b)ないし図10(b)は記譜された楽譜を演奏した際に合成される楽音波形を示している。
図8(a)に示す楽譜を演奏すると、時刻t1に楽音200のノートオン(Note On)イベントが発生されて楽音波形合成装置で受信される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t1において図8(b)に示すように開始波形部分(ヘッド:Head)から楽音200の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)の合成が終了してもノートオフ(Note Off)イベントが受信されないことから図8(b)に示すようにヘッド(Head)から持続波形部分(ボディ:Body)に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。ここで、時刻t2においてノートオフイベントが楽音波形合成装置において受信されるとボディ(Body)から終了波形部分(テイル:Tail)に遷移されて楽音波形が合成されるようになる。そして、テイル(Tail)の合成が終了すると楽音200の楽音波形の合成が終了する。このように、楽音200の楽音波形はノートオンイベントの時刻t1からヘッド(Head)−ボディ(Body)−テイル(Tail)の順に図8(b)に示すように時間軸上に配置されて合成される。
図8(b)に示すように、ヘッド(Head)はアタックを表す1ショット波形100の終端にループ波形101が接続された部分波形とされており、立ち上がりの楽音波形部分に相当している。また、ボディ(Body)は音色の異なる複数のループ波形102,103,・・・,107が順次接続された部分波形とされており、楽音の持続(サスティン)部分の楽音波形部分に相当している。さらに、テイル(Tail)はリリースを表す1ショット波形109の始端にループ波形108が接続された部分波形とされ、立ち下がりの楽音波形部分に相当している。なお、隣り合うループ波形同士はクロスフェードで接続されることにより部分波形あるいはループ波形が遷移していきながら楽音が合成される。
例えば、ループ波形101とループ波形102とを位相を合わせてクロスフェードで接続されることにより、ヘッド(Head)とボディ(Body)との波形部分が滑らかにつなぎ合わされて遷移されるようになる。また、ループ波形102とループ波形103とが位相を合わせてクロスフェードで接続されることにより、ボディ(Body)においてループ波形102の音色からループ波形103の音色に移行していくようになる。このように、ボディ(Body)において複数のループ波形102〜107を用いてループ波形同士をクロスフェードで接続していくことにより、ビブラートやピッチの時間変化にあわせた音色変化を楽音に与えられるようになる。さらに、ループ波形107とループ波形108とを位相を合わせてクロスフェードで接続されることにより、ボディ(Body)とテイル(Tail)との波形部分が滑らかにつなぎ合わされて遷移されるようになる。なお、ボディ(Body)は複数のループ波形102〜107をクロスフェードで接続して合成していることから任意の位置でテイル(Tail)などに遷移できる。また、ヘッド(Head)とテイル(Tail)は1ショット波形がメインの波形とされているが、1ショット波形であることから特にリアルタイム合成中は次の波形部分に遷移することはできない。
次に、図9(a)(b)にはモノフォニック音の楽器(管楽器音など)でレガート演奏した場合の2音が接続される楽音波形合成が示されている。
図9(a)に示す楽譜を演奏すると、時刻t1に楽音210のノートオンイベントが発生されて楽音波形合成装置で受信される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t1において図9(b)に示すようにヘッド(Head)から楽音210の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)の合成が終了してもノートオフイベントが受信されないことから図9(b)に示すように1ショット波形110であるヘッド(Head)からボディ(Body)1に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t2になると楽音211のノートオンイベントが受信されるが、楽音210のノートオフイベントがまだ受信されていないことから楽音波形合成装置ではレガート奏法がされたと判断されて、ボディ(Body)1から楽音210から楽音211への遷移部分を表現する1ショット波形116である接続波形部分(ジョイント)に遷移されて楽音波形が合成されていく。時刻t3で楽音210のノートオフイベントが受信され、次いで、ジョイント(Joint)の合成が終了しても楽音211のノートオフイベントが受信されないことからジョイント(Joint)からボディ(Body)2に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。その後、時刻t4になると楽音波形211のノートオフイベントが受信されボディ(Body)2からテイル(Tail)に遷移されて楽音波形が合成されていき、1ショット波形122であるテイル(Tail)の合成が終了することにより楽音波形の合成は終了する。このように、ノートオンイベントの時刻t1からヘッド(Head)−ボディ(Body)1−ジョイント(Joint)−ボディ(Body)2−テイル(Tail)の順に図9(b)に示すように時間軸上に配置されて楽音210と楽音211の楽音波形が合成される。各波形の接続は図8の例と同様である。
次に、図10(a)(b)に短く演奏された際の楽音波形合成が示されている。
図10(a)に示す楽譜を演奏すると、時刻t1に楽音220のノートオンイベントが発生され楽音波形合成装置で受信される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t1において図10(b)に示すように楽音220の1ショット波形125であるヘッド(Head)の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)の合成が終了する前の時刻t2においてノートオフイベントが発生されて楽音波形合成装置で受信されることから、ヘッド(Head)の合成が終了すると、ヘッド(Head)から1ショット波形128であるテイル(Tail)に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。テイル(Tail)の合成が終了すると楽音220の楽音波形の合成は終了する。このように、短く演奏された場合はノートオンイベントの時刻t1からヘッド(Head)−テイル(Tail)の順に図10(b)に示すように時間軸上に配置される楽音波形が合成される。
ところでテイル(Tail)は、本来ならばノートオフイベントが受信された時点から合成が開始されるのであるが、図10(b)を参照すると、楽音220のノートオフイベントが受信された時刻t2より遅れて合成されていると共に、合成された楽音波形の長さは楽音220の長さよりかなり長くされている。これは、前述したようにヘッド(Head)は1ショット波形125の終端にループ波形126が接続された部分波形とされて、1ショット波形125を合成中はテイル(Tail)に遷移することができないと共に、テイル(Tail)の1ショット波形128の合成が終了するまで楽音波形が終了しないからである。このように、ヘッド(Head)とテイル(Tail)の長さの総和よりも短い音を合成しようとしても、ヘッド(Head)とテイル(Tail)の長さの総和よりも短い楽音波形を合成することはできない。しかし、実際の自然楽器の音の短さにもある程度の限界がある。例えば、管楽器において短く吹いても楽音は管の音響的反応の長さだけは鳴るようになり所定の長さより短くはならない。このように、ヘッド(Head)とテイル(Tail)の長さの総和よりも短い楽音波形を合成することができないことは自然楽器にも見られることなのである。図9のレガート奏法の場合も、ジョイント(Joint)が1ショット波形なので、これらの波形合成中は次の波形部分に遷移することができない。このためレガート奏法された場合には、ヘッド(Head)とジョイント(Joint)とテイル(Tail)の長さの総和よりも短い楽音波形を合成することはできない。
このように短い音が早弾きにより発生している場合は問題ないのであるが、短い音はミスタッチによっても発生する。従って、ミスタッチにより短い音の演奏イベントが発生した場合にも、短い音に対応する楽音波形の音長が長く合成されてしまうことからミスタッチ音が目立つようになるという問題点が生じるようになる。ここで、ミスタッチとは、演奏者の熟練度が低い場合などに、発音させたい音以外の音の演奏イベントを短時間ではあるが発生してしまうような行為である。例えば、鍵盤楽器では、押鍵したい鍵盤といっしょに隣の鍵盤を同時に押してしまったりする場合などに発生する。また、同様の短い音は、ウィンドコントローラ(管楽器を模倣したMIDIコントローラ)において、音程を決定するために複数同時に押す必要があるキーを押すタイミングがキーによりばらついていたり、キーの操作とブレスの動作がずれていた場合などに発生する。
早弾きにより短い音のレガート演奏を自然楽器で行った場合には、本来は2音目の楽音のノートオンの時刻から音程の遷移が開始されなければならず、自然楽器に比べ反応が遅れるようになる。前述したように、自然楽器には音響的な反応の長さがあり、この音響的な反応の長さによりレガート演奏の際には音程の遷移が急激な変化ではなく曖昧な遷移とはなるものの、音程の遷移の開始が遅れることはない。そして、イベントの発生に対する反応が遅れるために、短い音の楽音波形の音長が長く合成されてしまうようになる。ここで、前音に重なる短い音の演奏イベントがミスタッチにより発生した場合も、短い音に対応する楽音波形の音長が長く合成されてしまうことからミスタッチ音が目立つようになるという問題点が生じるようになる。
そこで、本発明はミスタッチにより短い音が演奏された際にミスタッチ音が目立たないようにした楽音波形合成装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の楽音波形合成装置は、前音と重なっていないノートオンを検出した際に、前音との間の休符長が所定の休符長を超えないと判定されると共に、前音の音長が所定の音長を超えないと判定された場合は、前音の楽音波形の合成をフェードアウトさせて終了させると共に、当該ノートオンに対応する楽音波形の合成を開始するようにしたことを最も主要な特徴としている。
本発明によれば、前音と重なっていないノートオンを検出した際に、前音との間の休符長が所定の休符長を超えないと判定されると共に、前音の音長が所定の音長を超えないと判定された場合は、前音の楽音波形の合成を終了させると共に、当該ノートオンに対応する楽音波形の合成を開始するようにしたことから、ミスタッチにより短い音が演奏された際に合成される楽音波形の音長が短くなることからミスタッチ音が目立たないようになる。
本発明は、ミスタッチにより短い音が演奏された際にミスタッチ音が目立たないようにした楽音波形合成装置を提供するという目的を、前音と重なっていないノートオンを検出した際に、前音との間の休符長が所定の休符長を超えないと判定されると共に、前音の音長が所定の音長を超えないと判定された場合は、前音の楽音波形の合成を終了させると共に、当該ノートオンに対応する楽音波形の合成を開始するようにしたことで実現した。
図1は、本発明の実施例の楽音波形合成装置におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1に示されたハードウエア構成はいわゆるパーソナルコンピュータとほぼ同様の構成とされており、楽音波形合成プログラムを実行することにより楽音波形合成装置が実現されている。
図1に示す楽音波形合成装置1において、CPU(Central Processing Unit)10は楽音波形合成装置1の全体の動作を制御すると共に、楽音波形合成プログラム等の動作ソフトウェアを実行している。ROM(Read Only Memory)11には、CPU10が実行する楽音波形合成プログラム等の動作ソフトウェアや楽音合成に使用する波形データパーツが格納されており、RAM(Random Access Memory)12には、CPU10のワークエリアや各種データの記憶エリアが設定されている。このROM11をフラッシュメモリ等の書き換え可能なROMとすることで、動作ソフトウェアを書き換え可能となり動作ソフトウェアのバージョンアップを容易に行うことができる。また、ROM11に格納されている波形データパーツの更新を行うことができる。
操作子13は、鍵盤やコントローラ等の演奏操作子およびパネルに設けられている種々の操作を行うためのパネル操作子から構成されている。検出回路14は、演奏操作子およびパネル操作子からなる操作子13を走査することによって操作子13のイベントを検出して、イベントのあった操作子13に対応するイベント出力を出力している。表示回路16は液晶等の表示部15を備え、この表示部15にパネル操作子により入力された各種設定の画面やサンプリングされた波形データ等が表示される。各種設定の画面では、GUI(Graphical User Interface)を利用してユーザが各種の指示を行える画面とされている。波形取込部17はA/D変換器を内蔵し、マイクロフォン等から入力された外部波形であるアナログ楽音信号をサンプリングしてディジタルデータに変換し、RAM12あるいはハードディスク(HDD)20に波形データパーツとして取り込むことができる。CPU10によって実行される楽音波形合成処理においては、RAM12あるいはHDD20に格納されている波形データパーツを使用して楽音波形データを合成している。合成された楽音波形データは通信バス23を介して波形出力部18に供給されて、そのバッファに記憶される。
波形出力部18ではバッファ記憶された楽音波形データを所定の出力サンプリング周波数にしたがって出力し、D/A変換してサウンドシステム19に送出する。これにより、波形出力部18から出力された楽音波形データに基づく楽音が、サウンドシステム19を介して放音される。サウンドシステム19では、音量制御や音質制御を行うことが可能とされている。ROM11あるいはハードディスク20には、奏法を確定するために用いる奏法判定用パラメータや奏法に応じた波形データパーツを特定するための奏法テーブルが格納されていると共に、奏法に対応する複数種類の波形データパーツが記憶されている。なお、波形データパーツの種類としては楽音波形における開始波形部分(ヘッド)、持続波形部分(ボディ)、終了波形部分(テイル)と、2つの楽音の音程の遷移部分を表現する部分とされる接続波形部分(ジョイント)がある。通信インタフェース(I/F)21は、楽音波形合成装置1をLAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット、電話回線等の通信ネットワークに接続するインタフェースであり、該通信ネットワークを介して、外部機器22と接続することができる。これらの各部は通信バス23に接続されている。これにより、外部機器22から各種プログラムや波形データパーツ等をダウンロードすることができるようになる。ダウンロードされたプログラムや波形データパーツ等は、RAM12やHDD20等に格納されるようになる。
このように構成された本発明にかかる楽音波形合成装置1における楽音波形合成の概要を説明する。
楽音波形は立ち上がりを表す開始波形と持続部分を表す持続波形と立ち下がりを表す終了波形に分割することができる。また、レガート演奏等の2つの楽音がなめらかにつながる演奏を行うと、楽音波形には2つの楽音における音程が遷移していく接続波形が存在するようになる。そこで、本発明の楽音波形合成装置1においては、開始波形部分(以下、「ヘッド(Head)」という)、持続波形部分(以下、「ボディ(Body)」という)、終了波形部分(以下、「テイル(Tail)」という)と、2つの楽音の音程の遷移部分を表現する部分とされる接続波形部分(以下、「ジョイント(Joint)」という)との波形データパーツの複数種類をROM11やHDD20に記憶しておき、これらの波形データパーツを順次つなげていくことで楽音波形を合成するようにしている。楽音波形を合成する際の波形データパーツの特定やその組み合わせは、指定された奏法あるいは確定された奏法に応じてリアルタイムで決定される。
ROM11やHDD20に記憶される波形データパーツの典型的な例を図2(a)〜(d)に示す。図2(a)に示す波形データパーツはヘッド(Head)の波形データであり楽音波形の立ち上がり(アタック)を表す1ショット波形SHと次の部分波形に接続するためのループ波形LPから構成されている。図2(b)に示す波形データパーツはボディ(Body)の波形データであり楽音波形の持続部分(サスティン)を表す複数のループ波形LP1〜LP6から構成されている。ループ波形LP1〜LP6同士はクロスフェードにより順次接続されて合成され、ループ波形の数はボディ(Body)の長さに応じた数が使われる。なお、LP1〜LP6の組み合わせは任意である。図2(c)に示す波形データパーツはテイル(Tail)の波形データであり楽音波形の立ち下がり(リリース)を表す1ショット波形SHと前の部分波形に接続するためのループ波形LPから構成されている。図2(d)に示す波形データパーツはジョイント(Joint)の波形データであり2つの楽音の音程の遷移部分を表す1ショット波形SHと前の部分波形に接続するためのループ波形LPaと次の部分波形に接続するためのループ波形LPbとから構成されている。これらの波形データパーツにおいては終端および/あるいは始端にループ波形を有していることから、波形データパーツを接続する際にその間は、ループ波形同士をクロスフェードすることにより波形データパーツ間を接続することができる。
ここで、楽音波形合成装置1において操作子13における演奏操作子(鍵盤/コントローラ等)が操作されて演奏されると、演奏の進行に伴って演奏イベントが順次に供給されるようになる。演奏された各音の奏法は、奏法指定スイッチで指示されている場合はその奏法に、指示されていない場合は供給された演奏イベント情報から奏法を確定する。奏法が確定されることにより、その際に合成される楽音波形を合成する波形データパーツが決定される。次いで、決定されたヘッド(Head)、ボディ(Body)、ジョイント(Joint)、テイル(Tail)のいずれかの波形データパーツが奏法テーブルを参照して特定され、その波形データパーツが配置される時間軸上の時刻が指示される。そして、ROM11あるいはHDD20から特定された波形データパーツが読み出され、指示された時刻で合成されていくことにより楽音波形が合成されるようになる。
図9(a)に示すピアノロール譜のようにレガート演奏で2音を接続するよう演奏された場合は、楽音210のノートオフイベントが受信される前に楽音211のノートオンイベントが受信されることから、レガート奏法とされて楽音210と楽音211とがジョイント(Joint)を用いて合成されるようになり、図9(b)に示すようにノートオンイベントの時刻t1からヘッド(Head)−ボディ(Body)1−ジョイント(Joint)−ボディ(Body)2−テイル(Tail)の順に時間軸上に配置されて楽音波形が合成されることになる。なお、ヘッド(Head)、ボディ(Body)1、ジョイント(Joint)、ボディ(Body)2、テイル(Tail)にそれぞれ使用する波形データパーツは奏法テーブルを参照して特定される。そして、ROM11あるいはHDD20から特定された波形データパーツが読み出され、指示された時刻で合成されていくことにより楽音波形が合成されるようになる。
次に、本発明にかかる楽音波形合成装置1において楽音波形合成処理を実行する機能を示すブロック図を図3に示す。
図3に示す機能ブロック図において、鍵盤/コントローラ30は操作子13における演奏操作子であり、鍵盤/コントローラ30を操作することにより検出された演奏イベントが楽音波形合成部に供給されている。楽音波形合成部は、CPU1が楽音波形合成プログラムを実行することにより実現されており、演奏(MIDI)受信処理部31、演奏解釈処理部(プレイヤー)32、演奏合成処理部(アーティキュレータ)33、波形合成処理部34を備えている。奏法判定用パラメータ35、奏法テーブル36および波形データパーツをベクタデータで記憶しているベクタデータ記憶手段37の記憶領域はROM11あるいはHDD20に設定されている。
図3において、鍵盤/コントローラ30が操作されることにより検出された演奏イベントは、リアルタイム入力されたノートデータ+奏法指定データのMIDI形式で構成されて楽音波形合成部に入力される。この場合、奏法指定データは無くてもよい。また、演奏イベントにはノートデータ以外に、ボリューム等の各種音源コントロールデータが付加されていてもよい。鍵盤/コントローラ30から入力された演奏イベントは、楽音波形合成部の演奏(MIDI)受信処理部31で受信され、演奏イベントが演奏解釈処理部(プレイヤー)32で解釈される。演奏解釈処理部(プレイヤー)32では、入力された演奏イベントに基づいて、奏法判定用パラメータ35を用いて奏法を判別する。奏法判定用パラメータ35は、ミスタッチで発生される短い音を判別するための奏法判定時間のパラメータとされる。そして、入力された演奏イベントから直前のノートイベントに重なっていないノートオンイベントが検出された際に、前音のノートオフイベントとの間の休符長と前音の音長が求められ、その休符長と音長が奏法判定時間と対比されることにより前音をフェードアウトさせると共にノートオンイベントに対応してヘッド(Head)から始まる楽音波形合成を開始するフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法か、前音の楽音波形の合成はそのまま継続させノートオンイベントに対応してヘッド(Head)から始まる楽音波形合成を開始するヘッド(Head)系奏法かが決定される。このように、奏法が確定されることにより、奏法に応じて用いられる波形データパーツが決定されるようになる。
演奏合成処理部(アーティキュレータ)33では、演奏解釈処理部(プレイヤー)32で解釈された奏法をもとに決定された波形データパーツが奏法テーブル36を参照して特定され、その波形データパーツが配置される時間軸上の時刻が指示される。そして、波形合成処理部34においてROM11あるいはHDD20とされるベクタデータ記憶手段37から特定された波形データパーツのベクタデータが読み出され、指示された時刻で合成されていくことにより楽音波形が合成されるようになる。
なお、演奏合成処理部(アーティキュレータ)33では、受信されたイベント情報により確定された奏法、あるいは、奏法指定スイッチで指定された奏法指定データの奏法により用いる波形データパーツを決定している。
次に、演奏解釈処理(プレイヤー)32において実行される本発明の楽音波形合成装置1において特徴的な奏法決定処理のフローチャートを図4に示す。
図4に示す奏法決定処理は、受信されたノートオンイベントが前音のノートオフイベントが受信された後であって前音の発音と重なっていないことが検出された(S1)場合に起動する。ノートオンが前音の発音と重なっていないことは、演奏(MIDI)受信処理部31が前音のノートオフイベントを受信した後にどの音程もノートオン状態ではない期間を経て当該ノートオンイベントを受信したことで検出することができる。そして、ノートオンが前音の発音と重なっていないと検出されると、ステップS2にて現在の時刻から前回記憶されたノートオフイベントが受信された時刻(前音のノートオフ時刻)を差し引くことにより、前音のノートオフイベントから受信されたノートオンイベントの間の休符長が求められる。次いで、求められた休符長が奏法判定時間のパラメータとして記憶されている「ミスタッチ音休符判定時間」よりも長いか否かがステップS3にて判定される。ここで、休符長がミスタッチ音休符判定時間よりも短いと判定された場合は、ステップS4に進み前回記憶されたノートオフイベントが受信された時刻(前音のノートオフ時刻)からさらに前回記憶されたノートオンイベントが受信された時刻(前音のノートオン時刻)を差し引くことにより、前音の音長が求められる。次いで、求められた音長が奏法判定時間のパラメータとして記憶されている「ミスタッチ音判定時間」よりも長いか否かがステップS5にて判定される。そして、休符長がミスタッチ音休符判定時間よりも短く、かつ、前音の音長がミスタッチ音判定時間よりも短いと判定された場合に、前音はミスタッチ音と判定されてステップS6に進み前音をフェードアウトさせると共にノートオンイベントに対応してヘッド(Head)から始まる楽音波形合成を開始するフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法に決定されて、その奏法処理が実行されるようになる。これにより、ミスタッチ音と判定された前音はフェードアウトされることからミスタッチ音が目立たないようになる。
そして、休符長がミスタッチ音休符判定時間よりも長いと判定された場合や、ミスタッチ音休符判定時間よりも短いが、前音音長がミスタッチ音判定時間よりも長いと判定された場合は、ステップS7に分岐し前音の楽音波形の合成はそのまま継続させノートオンイベントに対応してヘッド(Head)から始まる楽音波形合成を開始するヘッド(Head)系奏法に決定されて、その奏法処理が実行されるようになる。これにより、ミスタッチ音でないと判定された前音の楽音波形合成は継続されると共に、ノートオンイベントに対応する楽音波形合成が開始されるようになる。ステップS6あるいはステップS7において奏法が確定されると、入力されたノートオンイベントの時刻が記憶されて奏法決定処理は終了し、楽音波形合成処理にリターンされる。
次に、フェードアウト付きヘッド(Head)系奏法により楽音波形を合成すると確定された際に、演奏合成処理部(アーティキュレータ)33において実行されるフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理のフローチャートを図5に示す。
フェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理が起動されるとステップS10にて演奏イベント情報を元に奏法テーブル36を検索して使用すべき波形データパーツのベクタデータを選択し、選択されたベクタデータを構成している要素データを演奏イベント情報に基づいて補正する。要素データは、調和成分の波形(Timbre)要素とピッチ(Pitch)要素と振幅(Amplitude)要素、および、調和外成分の波形(Timbre)要素と振幅(Amplitude)要素とされ、これらの要素データで構成されるベクタデータから各波形データパーツが構成されている。なお、要素データは時間の進行に伴い変化することができるデータである。
次いで、ステップS11にてこれまで使用していた合成チャンネルで合成中の楽音波形である前音の楽音波形合成をフェードアウトさせて終了させるための指示を波形合成処理34に与える。これにより、指示された波形合成処理34で前音の楽音波形を波形データパーツの合成途中で終了させても自然に視聴されるようになる。なお、演奏合成処理33と波形合成処理34はCPU10においてマルチタスク的に動作しており、波形合成処理34が合成を終了している間に演奏合成処理33は次のステップS12に進む。そして、ステップS12にて受信されたノートオンイベントに対する楽音波形を合成するために新たに使用する合成チャンネルを新たに決定する。次いでステップS13にて、決定された合成チャンネルに対して、使用する波形データパーツのベクタデータ番号、要素データ値、時刻とを指定することにより楽音波形を合成する準備を整える。これにより、フェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理は終了し、楽音波形合成処理にリターンされこれまで使用していた合成チャンネルでの合成が終了されるとともに、決定された合成チャンネルにおいて受信されたノートオンイベント対する楽音波形が合成されるようになる。
次に、図4に示す奏法決定処理を含む奏法決定処理が演奏解釈処理部(プレイヤー)32において実行されて奏法が確定され、楽音波形合成に使用される波形データパーツが決定されると共に、演奏合成処理部(アーティキュレータ)33および波形合成処理部34において楽音波形が合成される例を以下に説明する。この例では、図4に示す奏法決定処理が実行されてフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法かヘッド(Head)系奏法かが決定される例が上げられている。
まず、ミスタッチによる短音を含む第1の例の演奏イベントが受信されて楽音波形を楽音波形合成装置1で合成する場合の楽音波形合成の例を図6に示している。
操作子13における鍵盤/コントローラ30が操作されて、図6(a)に示されるミスタッチによる短音を含むピアノロール譜の通りに演奏されると、時刻t1で前音40のノートオンイベントが発生されて楽音波形合成装置で受信される。この場合、前音40より前の演奏イベントはないため図4に示す奏法決定処理は起動されることなく、ヘッド(Head)系奏法と決定される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t1において図6(b)に示すようにヘッド(Head)1から前音40の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)1の合成が終了してもノートオフイベントが受信されないことから図6(b)に示すようにヘッド(Head)1からボディ(Body)1に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t2において前音40のノートオフイベントが受信されるとボディ(Body)1からテイル(Tail)1に遷移されて楽音波形が合成されるようになる。テイル(Tail)1の合成が終了すると前音40の楽音波形の合成は終了する。
次いで、時刻t3に短音41のノートオンイベントが受信されると、このノートオンイベントは前音40のノートオフイベントが受信された後に受信されたことから図4に示す奏法決定処理が起動される。奏法決定処理において時刻t3から時刻t2が差し引かれて前音40と短音41との休符長が求められ、求められた休符長が奏法判定用パラメータのミスタッチ音休符判定時間のパラメータと対比される。この場合は、求められた休符長がミスタッチ音休符判定時間より短いと判定されて、さらに、時刻t2(前音40のノートオフイベント受信時刻)から時刻t1(前音40のノートオンイベント受信時刻)が差し引かれることにより前音40の音長が求められ、求められた音長が奏法判定用パラメータのミスタッチ音判定時間のパラメータと対比される。この場合は、前音40の音長が長いことから前音40の音長はミスタッチ音判定時間より長いと判定されてヘッド(Head)系奏法と決定される。すなわち、前音40はミスタッチ音ではないと判定される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t3において図6(b)に示すようにヘッド(Head)2から短音41の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)2の合成が終了する前の時刻t4において短音41のノートオフイベントが発生されて楽音波形合成装置で受信されることから、ヘッド(Head)2の合成が終了すると、ヘッド(Head)2からテイル(Tail)2に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。
さらに、時刻t5に後音42のノートオンイベントが受信されると、このノートオンイベントは短音41のノートオフイベントが受信された後に受信されたことから図4に示す奏法決定処理が起動される。奏法決定処理において時刻t5から時刻t4が差し引かれて短音41と後音42との休符長taが求められ、求められた休符長taが奏法判定用パラメータのミスタッチ音休符判定時間のパラメータと対比される。この場合は、求められた休符長taがミスタッチ音休符判定時間より短いと判定されて、さらに、時刻t4(短音41のノートオフイベント受信時刻)から時刻t3(短音41のノートオンイベント受信時刻)が差し引かれることにより短音41の音長tbが求められ、求められた音長tbが奏法判定用パラメータのミスタッチ音判定時間のパラメータと対比される。この場合は、短音41の音長tbが短いことから短音41の音長tbはミスタッチ音判定時間より短いと判定されてフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法と決定される。すなわち、短音41はミスタッチ音と判定される。これにより、図5に示すフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理が実行され、合成された短音41の楽音波形の振幅が、後音42のノートオンイベントが受信された時刻t5からフェードアウト波形g1により制御されるようになる。また、楽音波形合成装置は時刻t5において図6(b)に示すようにヘッド(Head)3から後音42の楽音波形の合成を新たな合成チャンネルで開始する。そして、ヘッド(Head)3の合成が終了しても後音42のノートオフイベントが受信されないことから図6(b)に示すようにヘッド(Head)3からボディ(Body)3に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t6において後音42のノートオフイベントが受信されるとボディ(Body)3からテイル(Tail)3に遷移されて楽音波形が合成されるようになる。テイル(Tail)3の合成が終了すると後音42の楽音波形の合成は終了する。
このように、前音40および短音41のノートオンイベントが受信された際にはヘッド系奏法処理が実行され、後音42のノートオンイベントが受信された際には図5に示すフェードアウト付きヘッド系奏法処理が実行される。従って、前音40の楽音波形はヘッド1、ボディ1、テイル1により合成され、短音41の楽音波形はヘッド(Head)2、テイル(Tail)2により合成されるが、中途からフェードアウト波形g1によりフェードアウトされる。また、後音42の楽音波形は、ヘッド(Head)3、ボディ(Body)3、テイル(Tail)3により合成される。
これにより、図6(a)のように演奏された場合は、図6(b)に示すように楽音波形が合成されるようになる。具体的には、波形合成処理部34では、第1の合成チャンネルにおいて時刻t1において指定されたベクタデータ番号のヘッド(Head)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてヘッド(Head)1が合成されていくようになる。このヘッド(Head)用ベクタデータは、前音40のアタックを表しており1ショット波形a1の終端にループ波形a2が接続されて構成されている。このヘッド(Head)1の楽音波形合成が終了すると、指定されたベクタデータ番号のボディ(Body)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されて、ボディ(Body)1の楽音波形が合成されていくようになる。指定された前音40用のボディ(Body)用ベクタデータは音色の異なる複数のループ波形a3、a4、a5、a6からなり、ループ波形a2とループ波形a3とがクロスフェードされることによりヘッド(Head)1からボディ(Body)1に遷移される。ボディ(Body)1の合成においては、複数のループ波形a3、a4、a5、a6同士がクロスフェードで接続されて音色が変化しつつボディ(Body)1の楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t2になると指定されたベクタデータ番号のテイル(Tail)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてテイル(Tail)1が合成されていくようになる。指定されたテイル(Tail)用ベクタデータは前音40のリリースを表しており1ショット波形a8の始端にループ波形a7が接続されて構成されている。そして、ループ波形a6とループ波形a7とがクロスフェードされることにより、ボディ(Body)1からテイル(Tail)1に遷移される。テイル(Tail)1の楽音波形の合成が終了することにより、前音40にかかる楽音波形の合成は終了する。
次いで、時刻t3になると第2の合成チャンネルにおいて指定されたベクタデータ番号のヘッド(Head)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてヘッド(Head)2が合成されていくようになる。このヘッド(Head)用ベクタデータは、短音41のアタックを表しており1ショット波形b1の終端にループ波形b2が接続されて構成されている。このヘッド(Head)2の楽音波形合成が終了した時点は短音41のノートオフイベントを受信した時刻t4を過ぎた時点とされていることから、指定されたベクタデータ番号のテイル(Tail)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてテイル(Tail)2が合成されていくようになる。指定されたテイル(Tail)用ベクタデータは短音41のリリースを表しており1ショット波形b4の始端にループ波形b3が接続されて構成されている。そして、ループ波形b2とループ波形b3とがクロスフェードされることにより、ヘッド(Head)2からテイル(Tail)2に遷移される。ただし、前述したように時刻t5からフェードアウト波形g1の振幅値が合成された楽音波形に乗算されてフェードアウトされていくようになる。テイル(Tail)2の楽音波形の合成が終了することにより、第2の合成チャンネルにおける短音41にかかる楽音波形合成は終了する。この場合、フェードアウト波形g1によりフェードアウトされて楽音波形の振幅値がほぼゼロになった場合は、その時点において楽音波形合成を終了してもよい。
さらに、時刻t5になると第3の合成チャンネルにおいて時刻t5において指定されたベクタデータ番号のヘッド(Head)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてヘッド(Head)3が合成されていくようになる。このヘッド(Head)用ベクタデータは、後音42のアタックを表しており1ショット波形c1の終端にループ波形c2が接続されて構成されている。このヘッド(Head)3の楽音波形合成が終了すると、指定されたベクタデータ番号のボディ(Body)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されて、ボディ(Body)3の楽音波形が合成されていくようになる。指定された後音42用のボディ(Body)用ベクタデータは音色の異なる複数のループ波形c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10からなり、ループ波形c2とループ波形c3とがクロスフェードされることによりヘッド(Head)3からボディ(Body)3に遷移される。ボディ(Body)3の合成においては、複数のループ波形c3、c4、c5、c6、c7、c8、c9、c10同士がクロスフェードで接続されて音色が変化しつつボディ(Body)3の楽音波形が合成されていくようになる。
そして、時刻t6になると指定されたベクタデータ番号のテイル(Tail)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてテイル(Tail)3が合成されていくようになる。指定されたテイル(Tail)用ベクタデータは後音42のリリースを表しており1ショット波形c12の始端にループ波形c11が接続されて構成されている。そして、ループ波形c10とループ波形c11とがクロスフェードされることにより、ボディ(Body)3からテイル(Tail)3に遷移される。テイル(Tail)3の楽音波形の合成が終了することにより、前音40ないし後音42にかかる楽音波形の合成は終了する。
以上説明したように、後音42のノートオンイベントが受信された際に、図5に示すフェードアウト付きヘッド系奏法処理が実行されることから、図6(b)に示されているように、短音41の楽音波形は後音42のノートオンイベントが受信された時刻t5からフェードアウト波形g1によりフェードアウトされるようになるため、ミスタッチ音と判定された短音41が目立たないようになる。
次に、ミスタッチによる短音を含む第2の例の演奏イベントが受信されて楽音波形を楽音波形合成装置1で合成する場合の楽音波形合成の例を図7に示している。
操作子13における鍵盤/コントローラ30が操作されて、図7(a)に示されるミスタッチによる短音を含むピアノロール譜の通りに演奏されると、時刻t1で前音50のノートオンイベントが発生されて楽音波形合成装置で受信される。この場合、前音50より前の演奏イベントはないため図4に示す奏法決定処理は起動されることなく、ヘッド(Head)系奏法と決定される。これにより、楽音波形合成装置は時刻t1において図7(b)に示すようにヘッド(Head)1から前音50の楽音波形の合成を開始する。そして、ヘッド(Head)1の合成が終了してもノートオフイベントが受信されないことから図7(b)に示すようにヘッド(Head)1からボディ(Body)1に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t2になると短音51のノートオンイベントが受信されるが、前音50のノートオフイベントがまだ受信されていないことから楽音波形合成装置では短音51が前音50に重なっていると判断される。これにより、ジョイント(Joint)を用いるジョイント(Joint)系奏法処理が実行されて、ボディ(Body)1から前音50から短音51への音程の遷移部分を表現するジョイント(Joint)1に遷移されて楽音波形が合成されていく。次いで、ジョイント(Joint)1の合成が終了する前の時刻t3で前音50のノートオフイベントが受信され、続いて短音51のノートオフイベントが時刻t4で受信されることから、ジョイント(Joint)1の合成が終了するとジョイント(Joint)1からテイル(Tail)1に遷移されて楽音波形が合成されるようになる。
さらに、時刻t4の直後の時刻t5において後音52のノートオンイベントが受信されると、このノートオンイベントは短音51のノートオフイベントが受信された後に受信されたことから図4に示す奏法決定処理が起動される。奏法決定処理において時刻t5から時刻t4が差し引かれて短音51と後音52との休符長tcが求められ、求められた休符長tcが奏法判定用パラメータのミスタッチ音休符判定時間のパラメータと対比される。この場合は、求められた休符長tcがミスタッチ音休符判定時間より短いと判定されて、さらに、時刻t4(短音51のノートオフイベント受信時刻)から時刻t2(短音51のノートオンイベント受信時刻)が差し引かれることにより短音51の音長tdが求められ、求められた音長tdが奏法判定用パラメータのミスタッチ音判定時間のパラメータと対比される。この場合は、短音51の音長tdが短いことから短音51の音長tdはミスタッチ音判定時間より短いと判定されてフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法と決定される。すなわち、短音51はミスタッチ音と判定される。これにより、図5に示すフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理が実行され、短音51の楽音波形の振幅が、ジョイント(Joint)1の中途である時刻t5からフェードアウト波形g2により制御されるようになる。また、楽音波形合成装置は時刻t5において図7(b)に示すようにヘッド(Head)2から後音52の楽音波形の合成を新たな合成チャンネルで開始する。そして、ヘッド(Head)2の合成が終了しても後音52のノートオフイベントが受信されないことから図7(b)に示すようにヘッド(Head)2からボディ(Body)2に遷移されて楽音波形が合成されていくようになる。そして、時刻t6において後音52のノートオフイベントが受信されるとボディ(Body)2からテイル(Tail)2に遷移されて楽音波形が合成されるようになる。テイル(Tail)2の合成が終了すると後音52の楽音波形の合成は終了する。
このように、前音50のノートオンイベントが受信された際にはヘッド系奏法処理が実行され、短音51のノートオンイベントが受信された際にはジョイント(Joint)を用いるジョイント(Joint)系奏法処理が実行され、後音42のノートオンイベントが受信された際には図5に示すフェードアウト付きヘッド系奏法処理が実行される。従って、前音50および短音51の楽音波形はヘッド1、ボディ1、ジョイント(Joint)1、テイル(Tail)1により合成されるが、ジョイント(Joint)1およびテイル(Tail)1の楽音波形は中途からフェードアウト波形g2によりフェードアウトされるようになる。また、後音42の楽音波形は、ヘッド(Head)2、ボディ(Body)2、テイル(Tail)2により合成される。
これにより、図7(a)のように演奏された場合は、図7(b)に示すように楽音波形が合成されるようになる。具体的には、波形合成処理部34では、第1の合成チャンネルにおいて時刻t1において指定されたベクタデータ番号のヘッド(Head)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてヘッド(Head)1が合成されていくようになる。このヘッド(Head)用ベクタデータは、前音50のアタックを表しており1ショット波形d1の終端にループ波形d2が接続されて構成されている。このヘッド(Head)1の楽音波形合成が終了すると、指定されたベクタデータ番号のボディ(Body)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されて、ボディ(Body)1の楽音波形が合成されていくようになる。指定された前音50用のボディ(Body)用ベクタデータは音色の異なる複数のループ波形d3、d4、d5、d6、d7からなり、ループ波形d2とループ波形d3とがクロスフェードされることによりヘッド(Head)1からボディ(Body)1に遷移される。ボディ(Body)1の合成においては、複数のループ波形d3、d4、d5、d6、d7同士がクロスフェードで接続されて音色が変化しつつボディ(Body)1の楽音波形が合成されていくようになる。
そして、時刻t2になると指定されたベクタデータ番号のジョイント(Joint)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてジョイント(Joint)1が合成されていくようになる。指定されたジョイント(Joint)ベクタデータは前音50から短音51への音程の遷移部分を表現しており、1ショット波形d9の始端にループ波形d8が接続され終端にループ波形d10が接続されて構成されている。そして、ループ波形d7とループ波形d8とがクロスフェードされることによりボディ(Body)1からジョイント(Joint)1に遷移される。このジョイント(Joint)1が合成されていくことにより前音50から短音51の楽音波形に移行して行くようになり、このジョイント(Joint)1の楽音波形の合成が終了するとテイル(Tail)1に遷移される。テイル(Tail)1は短音51のリリースを表しており1ショット波形d12の始端にループ波形d11が接続されて構成されている。そして、ループ波形d10とループ波形d11とがクロスフェードされることにより、ジョイント(Joint)1からテイル(Tail)1に遷移される。ただし、前述したように時刻t5からフェードアウト波形g2の振幅値が合成されたジョイント(Joint)1とテイル(Tail)1の楽音波形に乗算されてフェードアウトされていくようになる。テイル(Tail)1の楽音波形の合成が終了することにより、前音50と短音51にかかる楽音波形の合成は終了する。この場合、フェードアウト波形g2によりフェードアウトされて楽音波形の振幅値がほぼゼロになった場合は、その時点において楽音波形合成を終了してもよい。
さらに、時刻t5になると第2の合成チャンネルにおいて時刻t5において指定されたベクタデータ番号のヘッド(Head)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてヘッド(Head)2が合成されていくようになる。このヘッド(Head)用ベクタデータは、後音52のアタックを表しており1ショット波形e1の終端にループ波形e2が接続されて構成されている。このヘッド(Head)2の楽音波形合成が終了すると、指定されたベクタデータ番号のボディ(Body)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されて、ボディ(Body)2の楽音波形が合成されていくようになる。指定された後音52用のボディ(Body)用ベクタデータは音色の異なる複数のループ波形e3、e4、e5、e6、e7、e8、e9、e10からなり、ループ波形e2とループ波形e3とがクロスフェードされることによりヘッド(Head)2からボディ(Body)2に遷移される。ボディ(Body)2の合成においては、複数のループ波形e3、e4、e5、e6、e7、e8、e9、e10同士がクロスフェードで接続されて音色が変化しつつボディ(Body)2の楽音波形が合成されていくようになる。
そして、時刻t6になると指定されたベクタデータ番号のテイル(Tail)用ベクタデータがベクタデータ記憶手段37から読み出されてテイル(Tail)2が合成されていくようになる。指定されたテイル(Tail)用ベクタデータは後音52のリリースを表しており1ショット波形e12の始端にループ波形e11が接続されて構成されている。そして、ループ波形e10とループ波形e11とがクロスフェードされることにより、ボディ(Body)2からテイル(Tail)2に遷移される。テイル(Tail)2の楽音波形の合成が終了することにより、前音50ないし後音52にかかる楽音波形の合成は終了する。
以上説明したように、後音52のノートオンイベントが受信された際に、図5に示すフェードアウト付きヘッド系奏法処理が実行されることから、図7(b)に示されているように、短音51の楽音波形は後音52のノートオンイベントが受信された時刻t5からフェードアウト波形g2によりフェードアウトされるようになるため、ミスタッチ音と判定された短音51が目立たないようになる。
以上説明した本発明にかかる楽音波形合成装置は電子楽器に適用することができ、この場合、電子楽器は鍵盤楽器に限らず、弦楽器や管楽器、あるいは打楽器等どのようなタイプの楽器にも適用することができる。また、本発明にかかる楽音波形合成装置においては、楽音波形合成プログラムをCPUが実行することにより楽音波形合成部としたが、楽音波形合成部をハードウェアで構成してもよい。さらに、本発明にかかる楽音波形合成装置を自動演奏ピアノのような自動演奏装置などにも適用してよい。
以上の説明では、本発明にかかる楽音波形合成装置における波形データパーツには他の波形データパーツに接続するためのループ波形が付属されていたが、波形データパーツにループ波形を付属しないようにしても良い。この場合には、波形データパーツ同士をクロスフェードで接続すればよい。
本発明の実施例の楽音波形合成装置におけるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。 本発明の楽音波形合成装置における波形データパーツの典型的な例を示す図である。 本発明の楽音波形合成装置において楽音波形合成処理を実行する機能を示すブロック図である。 本発明の楽音波形合成装置において実行される奏法決定処理のフローチャートである。 本発明の楽音波形合成装置における演奏合成処理部(アーティキュレータ)において実行されるフェードアウト付きヘッド(Head)系奏法処理のフローチャートである。 本発明の楽音波形合成装置において合成される楽音波形の一例を演奏される楽譜と対比して示す図である。 本発明の楽音波形合成装置において合成される楽音波形の他の例を演奏される楽譜と対比して示す図である。 楽音波形合成装置において合成される楽音波形の一例を演奏される楽譜と対比して示す図である。 楽音波形合成装置において合成される楽音波形の他の例を演奏される楽譜と対比して示す図である。 楽音波形合成装置において合成される楽音波形のさらに他の例を演奏される楽譜と対比して示す図である。
符号の説明
1 楽音波形合成装置、10 CPU、11 ROM、12 RAM、13 操作子、14 検出回路、15 表示部、16 表示回路、17 波形取込部、18 波形出力部、19 サウンドシステム、20 ハードディスク、21 通信インタフェース、22 外部機器、23 通信バス、30 鍵盤/コントローラ、31 受信処理部、32 演奏解釈処理部(プレイヤー)、33 演奏合成処理部(アーティキュレータ)、34 波形合成処理部、35 奏法判定用パラメータ、36 奏法テーブル、37 ベクタデータ記憶手段、40 前音、41 短音、42 後音、50 前音、51 短音、52 後音、g1 フェードアウト波形、g2 フェードアウト波形

Claims (1)

  1. 演奏進行に応じて演奏イベント情報を取得する取得手段と、
    楽音波形における開始波形部分、持続波形部分、終了波形部分と、2つの楽音における音程の遷移部分を表現する部分とされる接続波形部分との波形データパーツの複数種類を記憶手段に記憶しておき、該取得手段から取得された演奏イベントに基づいて前記波形データパーツを前記記憶手段から読み出してつなぎ合わせることにより楽音波形を合成する楽音合成手段と、
    前記取得手段から取得された演奏イベント情報に基づいて、前音と重なっていないノートオンを検出する検出手段と、
    該検出手段において前音と重なっていないノートオンを検出した際に、前音のノートオフと当該ノートオンとの間の休符長を求める休符長測定手段と、
    前記検出手段において前音と重なっていないノートオンを検出した際に、前音の音長をその演奏イベント情報に基づいて求める音長測定手段とを備え、
    前記休符長測定手段で求められた休符長が所定の休符長を超えないと判定されると共に、前記音長測定手段で求められた前音の音長が所定の音長を超えないと判定された場合は、前記楽音合成手段が前音の楽音波形の合成をフェードアウトさせて終了させると共に、当該ノートオンに対応する楽音波形の合成を開始するようにしたことを特徴とする楽音波形合成装置。
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