JP2005049497A - 音源回路の制御プログラムおよび音源回路の制御装置 - Google Patents

音源回路の制御プログラムおよび音源回路の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】音源装置にて生成可能な音色には、ホールドオン状態において外部からノートオフ信号が供給されると音源回路に対してノートオフの供給を保留すべき弦楽器等の第1種音色と、直ちにノートオフを指示すべきピアノ等の第2種音色とが併存する。両音色のアンサンブルを行う場合において、トランケート対象が一部の音色の発音チャンネルに偏ることを防止して自然なトランケート処理を行う。
【解決手段】ノートオン信号を受信した際に空き発音チャンネルが検出されず(SP120)、ホールドオン状態であれば(SP140)、ノートオフを保留している発音チャンネルを検出するとともに(SP150)、既に音源回路でノートオフ状態に設定されている発音チャンネルを検出し(SP160)、これら双方のステップで検出された発音チャンネルの中からトランケートの対象とすべき発音チャンネルを決定する(SP170)。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、楽音信号の生成に用いて好適な音源回路の制御プログラムおよび音源回路の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
(1)ホールド信号に対する音源装置の動作について
従来より、MIDI信号等の演奏情報が入力されると、楽音信号を生成する音源装置が知られている。音源装置は、所定のパラメータレジスタに書き込まれた各種パラメータに基づいて楽音信号を発生させる音源回路と、受信した演奏情報に基づいて上記レジスタに各種パラメータを書込むことにより音源回路を制御する制御回路とから構成される。ここで、音源装置に対してノートオン信号およびノートオフ信号を順次送信したときに発生される楽音信号のエンベロープ波形の一例を図2(a)に示す。なお、図2(a)に示すエンベロープ波形は、擦絃楽器、管楽器、その他各種の音色の再生のために多用されている。
【0003】
図2(a)に示すエンベロープ波形は、ノートオン信号の受信直後から開始されレベルが立ち上がる「アタック区間」と、アタック区間に引き続いてレベルが立ち下がる「ディケイ区間」と、ディケイ区間の後、ノートオフ信号が入力されるまでエンベロープレベルが平坦に保たれる「サスティン区間」と、ノートオフ信号の受信直後から開始されレベルが減衰する「リリース区間」とから構成されている。このエンベロープ波形を発生するために音源装置で実行される具体的な処理について説明しておく。
【0004】
まず、音源装置にノートオン信号が供給されると、音源回路における一の空きチャンネルが該ノートオン信号用の発音チャンネルとして割り当てられる。次に、このノートオン信号に含まれる「ベロシティ」に基づいて、パラメータすなわちアタック区間の傾き(アタックレート)と、アタック区間におけるエンベロープレベルの最大値(アウトプットレベル)と、ディケイ区間の傾き(ディケイレート)と、サスティン区間のレベルの初期値(サスティンレベル)と、サスティン区間の傾き(サスティンレート)とが計算される。なお、図2(a)に示す例においては、サスティン区間においてエンベロープレベルは減衰しないためサスティンレートは「0」である。
【0005】
次に、これら計算されたパラメータが該発音チャンネルに係るパラメータレジスタに書き込まれ、引き続いて当該発音チャンネルに対して発音開始を指示する「ノートオン情報」が音源回路のパラメータレジスタに書き込まれる。これにより、音源回路においては、該発音チャンネルにおけるエンベロープ波形の生成が開始される。一方、音源回路においては、音色に応じて原楽音信号(エンベロープ付与前の楽音信号)が生成される。この生成方法としては、例えばPCM方式、FM方式、物理モデル方式等、様々な方式が知られている。そして、原楽音信号に対して、その時点のエンベロープレベルが乗算されることにより、最終的な楽音信号が生成される。
【0006】
次に、音源装置にノートオフ信号が供給されると、音源回路内の対応する発音チャンネルのパラメータレジスタに消音開始を指示する「ノートオフ情報」と、リリース区間のエンベロープレベルの傾きである「リリースレート」とが書き込まれる。これにより、該発音チャンネルにおいては、リリースレートに基づいてエンベロープレベルが減衰され、やがて楽音信号が完全に消音される。楽音信号が完全に消音されると、当該発音チャンネルは解放され、新たなノートオン信号に対して割り当てることが可能になる。なお、ノートオフ情報が供給された後の音源回路の状態を「ノートオフ状態」と呼ぶ。
【0007】
ところで、アコースティックピアノでは、押鍵操作によって弦が打弦されると弦が自由振動することにより楽音が生成され、そのまま押鍵を続けていると空気抵抗等によって弦の振動振幅が緩やかに減衰してゆく。そして、離鍵操作が行われると、ダンパが弦に接触することにより弦の振動振幅が急速に減衰する。かかる挙動をシミュレートするために、ピアノ等の音色には、図2(c)に示すエンベロープ波形が用いられている。同図(a),(c)のエンベロープ波形を比較すると、同図(c)の波形においては、弦の自由振動時の減衰率に応じたサスティンレートが設定され、これによってサスティン区間においてもエンベロープレベルが徐々に低下している。
【0008】
次に、MIDI規格では、コントロールチェンジの一種としてホールド信号(ホールドオンおよびホールドオフ)が定義されている。ホールドオン/オフ信号は、各々「音を持続させること」および「音の持続の解消」を指示するものである。このホールドオン/オフ信号が音源装置に供給された場合の動作を音色の種類毎に説明する。まず、擦絃楽器、管楽器等の音色における制御方法を図2(b)を参照し説明する。図において、該音色のノートオン信号およびホールドオン信号に続いて、該音色のノートオフ信号が音源装置に供給されたとする。かかる場合には、このノートオフ信号に基づく音源回路へのノートオフ情報の書き込みが保留される。そして、その後に音源装置にホールドオフ信号が供給されると、その時点でノートオフ情報がパラメータレジスタに書き込まれ、これによって当該発音チャンネルの消音処理が開始されるのである。このように、ホールドオン状態において、音源回路に対してノートオフ情報の供給を保留する音色を本明細書では「第1種音色」と呼ぶ。
【0009】
次に、ピアノ等の音色に対するホールドオン時の動作を図2(d)を参照し説明する。図において、ピアノ等の音色のノートオン信号およびホールドオン信号に続いて、音源装置に該音色のノートオフ信号が供給されたとする。かかる場合には、このノートオフ信号に基づくノートオフ情報が直ちにパラメータレジスタに書き込まれる。但し、その場合におけるリリースレートは、サスティンレートに等しい値、すなわち弦の自由振動時の振幅減衰率に対応する値に設定される。そして、音源装置にホールドオフ信号が供給されると、リリースレートが通常の値、すなわちダンパーによる制動時の振幅減衰率に対応する値に設定される。このように、ピアノ等の音色にあっては、アコースティックピアノ等のダンパーペダルのオン/オフ操作がホールドオン/オフによってシミュレートされるのである。このように、音源回路に対するノートオフ情報の供給を保留せず、ホールドオン/オフ状態に応じてリリースレートを切り替える音色を本明細書では「第2種音色」と呼ぶ。
【0010】
次に、上述したように音色の種類に応じてホールドオン/オフ信号に対する動作が異なる理由について説明しておく。まず、アコースティックピアノにおいては、演奏者がダンパーペダルを踏み続けた状態で同一の鍵を連打することが可能である。かかる奏法は、MIDI信号上では、「ホールドオン状態でノートオン信号とノートオフ信号とが繰り返し交互に供給される」ことに他ならない。そして、MIDI信号では同一音高かつ同一音色の楽音信号を同時に複数の発音チャンネルで発音させることは想定されていないため、あるノートオン信号に基づいて一の発音チャンネルにおいて楽音信号の合成を開始するためには、同一音高かつ同一音色の他の発音チャンネルは事前にノートオフ状態にされていなければならない。従って、音源装置に対して第2種音色に対するノートオフ信号が供給されたのであれば、引き続いて生じる可能性のある同一音高かつ同一音色のノートオン信号に備えて、対応する発音チャンネルを速やかにノートオフ状態に遷移させなければならず、ホールドオン状態であってもノートオフタイミングを遅らせることはできないことが解る。
【0011】
一方、ノートオフ情報によって変化が生じるのはエンベロープレベルに限られるものではなく、音色の種類によっては、エンベロープ付与前の原楽音信号に変化が生じたり、場合によっては原楽音信号そのものが減衰される場合もある。このように、ノートオフ情報によって原楽音信号に変化が生じる音色においては、ホールドオン状態において音源回路にノートオフ情報を供給することはできない。なぜなら、仮にノートオフ情報を供給したならば、たとえエンベロープレベルを一定に保ったとしても最終的な楽音信号が変化するという問題が生じるからである。従って、かかる音色は必ず第1種音色に分類し、ホールドオン状態を解消すべきタイミングまで(音源装置にホールドオフ信号が供給されるまで)、音源回路に対するノートオフ情報の供給を保留する必要がある。このように、ピアノを含む様々な楽器の楽音信号を合成する音源装置においては、全ての音色を第1種または第2種音色の何れかに統一することは困難であり、必然的に第1種,第2種音色が併存することになる。
【0012】
(2)トランケート処理について
一般的に音源回路において同時に発音可能な発音チャンネル数は有限(例えば「32」チャンネル)であるから、これら発音チャンネルの全てが使用中である時に新たなノートオフ信号が音源装置に供給されると発音チャンネルが不足する。かかる場合には、使用中の発音チャンネルの何れかを強制的に消音および解放し、新たなノートオン信号に対して該発音チャンネルを割り当てる必要がある。このように使用中の発音チャンネルの何れかを強制的に解放する処理を「トランケート処理」と呼ぶ。トランケート処理の対象にするチャンネルを決定する方法については種々の技術が知られている。例えば、特許文献1においては、既にノートオフ状態である発音チャンネルをノートオフタイミング順に参照し、参照した発音チャンネルのレベルが所定値以下であれば当該発音チャンネルをトランケート対象にする技術が開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開平8−179767号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した技術によれば、ホールドオン状態で第1種,第2種音色のノートオフ信号が繰り返し供給されたとき、第1種音色の発音チャンネルはノートオフ状態にならず、第2種音色の発音チャンネルはノートオフ状態になる。これにより、第1種,第2種音色のアンサンブル時にトランケート処理の必要が生じると、第2種音色を発音中の発音チャンネルのみがトランケート対象にされる。換言すれば、第1種音色のみが長時間継続され、第2種音色のみが次々と消音され、全体の楽音がきわめて不自然になるという問題が生じた。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数音色のアンサンブル時においても自然なトランケート処理を行うことができる音源回路の制御プログラムおよび音源回路の制御装置を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明にあっては、下記構成を具備することを特徴とする。なお、括弧内は例示である。
請求項1記載の音源回路の制御プログラムにあっては、複数の発音チャンネルを有し、何れかの発音チャンネルに対してノートオン情報が供給されると該発音チャンネルにおいて楽音信号の生成を開始するとともに、該発音チャンネルに対してノートオフ情報が供給されると該発音チャンネルにおける楽音信号の消音処理を開始する音源回路(30)を制御する音源回路の制御プログラムであって、ホールドオン状態またはホールドオフ状態の何れかの状態をホールドレジスタに記憶させる過程(SP200,SP210)と、前記ホールドオン状態においてノートオフ信号を受信すると、該ノートオフ信号が第1種音色または第2種音色のうち何れに対するものであるかを判定する音色判定過程(SP40)と、前記音色判定過程(SP40)において前記ノートオフ信号が前記第1種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路(30)に対するノートオフ情報の供給を保留しつつ該ノートオフ信号に対応する発音チャンネルを特定する情報をノートオフ保留レジスタに記憶する過程(SP50)と、前記音色判定過程(SP40)において前記ノートオフ信号が前記第2種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路(30)に対して直ちにノートオフ情報を供給する過程(SP30)と、ノートオン信号を受信すると、空き発音チャンネルが存在するか否かを判定する空きチャンネル判定過程(SP110,SP120)と、前記空きチャンネル判定過程において前記空き発音チャンネルが存在しないと判定されたことを条件として、前記ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルおよび前記音源回路(30)に対して既にノートオフ情報が供給されている発音チャンネルの双方の発音チャンネルから、強制的に解放すべきトランケート対象チャンネルを決定するトランケート対象チャンネル決定過程(SP150,SP160,SP170)と、該決定されたトランケート対象チャンネルを前記ノートオン信号に対して割り当てる割当過程(SP130)とを処理装置に実行させることを特徴とする。
また、請求項2記載の音源回路の制御装置にあっては、複数の発音チャンネルを有し、何れかの発音チャンネルに対してノートオン情報が供給されると該発音チャンネルにおいて楽音信号の生成を開始するとともに、該発音チャンネルに対してノートオフ情報が供給されると該発音チャンネルにおける楽音信号の消音処理を開始する音源回路(30)を制御する音源回路の制御装置であって、ホールドオン状態またはホールドオフ状態の何れかの状態を記憶するホールドレジスタ(RAM52,SP200,SP210)と、前記ホールドオン状態においてノートオフ信号を受信すると、該ノートオフ信号が第1種音色または第2種音色のうち何れに対するものであるかを判定する音色判定手段(SP40)と、前記ノートオフ情報の供給を保留している発音チャンネルを特定する情報を記憶するノートオフ保留レジスタ(RAM52)と、前記音色判定手段(SP40)において前記ノートオフ信号が前記第1種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路(30)に対するノートオフ情報の供給を保留しつつ該ノートオフ信号に対応する発音チャンネルを特定する情報を前記ノートオフ保留レジスタに記憶するノートオフ保留手段(SP50)と、前記音色判定手段(SP40)において前記ノートオフ信号が前記第2種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路(30)に対して直ちにノートオフ情報を供給するノートオフ供給手段(SP30)と、ノートオン信号を受信すると、空き発音チャンネルが存在するか否かを判定する空きチャンネル判定手段(SP110,SP120)と、前記空きチャンネル判定手段において前記空き発音チャンネルが存在しないと判定されたことを条件として、前記ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルおよび前記音源回路(30)に対して既にノートオフ情報が供給されている発音チャンネルの双方の発音チャンネルから、強制的に解放すべきトランケート対象チャンネルを決定するトランケート対象チャンネル決定手段(SP150,SP160,SP170)と、該決定されたトランケート対象チャンネルを前記ノートオン信号に対して割り当てる割当手段(SP130)とを有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
1.実施形態の構成
1.1.全体構成
まず、本発明の一実施形態である音源装置100のハードウェア構成を図1を参照し説明する。
図において、10は操作子であり、スイッチ、キーボード、ボリューム等によって構成される。15は検出回路であり、スイッチの状態、ボリュ−ムの位置等を検出する。20は表示部であり、液晶パネル等によって構成される。25は表示回路であり、ビデオRAM、グラフィックコントローラ等から構成され、バスライン60を介して供給された情報に基づいて、表示部20に各種情報を表示する。
【0017】
30は音源回路であり、複数チャンネル(例えば最大「32」チャンネル)の楽音信号を生成する。音源回路30の内部にはこれら楽音信号を発生させるための各種パラメータを記憶するパラメータレジスタ30aが設けられている。パラメータレジスタ30aの内容はバスライン60を介して適宜更新することができる。35はサウンドシステムであり、アンプ、スピーカから構成され、音源回路30において生成された楽音信号を放音する。40は通信インターフェースであり、鍵盤、シーケンサ等のMIDI機器がここに接続され、これらMIDI機器との間でMIDI信号のやりとりを行う。50はROMであり、後述する制御プログラム等が格納される。54はCPUであり、ROM50に記憶された制御プログラムに基づいて、バスライン60を介して各部を制御する。52はRAMであり、CPU54のワークメモリとして使用される。
【0018】
2.実施形態の動作
2.1.ノートオン信号に対する処理(トランケートを伴わない場合)
次に、本実施形態の動作を説明する。まず、ノートオン信号が音源装置100に供給されると、図4に示すノートオン処理ルーチンが起動される。図において処理がステップSP110に進むと、音源回路30内の空き発音チャンネルが検索される。次に、処理がステップSP120に進むと、空き発音チャンネルが検出されたか否かが判定される。検出された場合には「YES」と判定され、処理はステップSP130に進む。ここでは、検出された空き発音チャンネルが、今回のノートオン信号に対応する発音チャンネルとして割り当てられる。
【0019】
ここで、ノートオン信号には、音高、ベロシティの情報が含まれている。また、ノートオン信号が供給される前に、「プログラムチェンジ」等のメッセージにより音色が予め指定される。従って、ノートオン信号が受信されると、音色、音高およびベロシティが特定される。そこで、これらの情報に基づいて、楽音信号を合成するための各種パラメータが決定され、音源回路30のパラメータレジスタ30a内の該発音チャンネルに対応する箇所にこれらパラメータが書き込まれる。さらに、発音開始を指示するノートオン情報がパラメータレジスタ30aに書き込まれると、当該発音チャンネルにおける楽音信号の生成が開始される。
【0020】
2.2.ノートオフ信号に対する処理
次に、ノートオフ信号が音源装置100に供給されると、図3に示すノートオフ処理ルーチンが起動される。図において処理がステップSP10に進むと、現在の音源装置100の状態がホールドオン状態であるか否かが判定される。詳細は後述するが、RAM52には「ホールドレジスタ」なる領域が設けられており、このホールドレジスタは、値が“1”であればホールドオン状態、“0”であればホールドオフ状態であることを示す。すなわち、ステップSP10においてはホールドレジスタが“1”であるか否かが判定される。ここで「NO」と判定されると、処理はステップSP20に進み、「通常のリリースレート」すなわちホールドオフ状態に対応するリリースレートが、パラメータレジスタ30aの当該発音チャンネルに対応する箇所に書き込まれる。次に、処理がステップSP30に進むと、ノートオフ情報が音源回路30に供給される。これにより、以後は当該発音チャンネルの楽音信号が、パラメータレジスタ30aに書き込まれたリリースレートで減衰され、楽音信号が充分に減衰されると、該発音チャンネルが解放される。
【0021】
一方、音源装置100がホールドオン状態であった場合には、ステップSP10において「YES」と判定され、処理はステップSP40に進む。ここでは、当該ノートオフ信号に対応する楽音信号の音色が第1種音色であるか否かが判定される。なお、先に図2(b),(d)において説明したように、「第1種音色」とは「ホールドオン状態において、音源回路に対してノートオフ情報の供給を保留する音色」であり、「第2種音色」とは「音源回路に対するノートオフ情報の供給を保留せず、ホールドオン/オフ状態に応じてリリースレートを切り替える音色」である。
【0022】
ステップSP40において「YES」と判定されると、処理はステップSP50に進み、RAM52内の所定領域に確保された「ノートオフ保留レジスタ」に、当該発音チャンネル番号が書き込まれ、本ルーチンの処理が終了する。ここで該「ノートオフ保留レジスタ」について説明しておく。上述したように、第1種音色については、ホールドオン状態の時に音源装置100にノートオフ信号が供給されたとしても、次にホールドオフ信号が供給されるまで、音源回路30に対するノートオフ情報の供給が保留される。ノートオフ保留レジスタは、このようにノートオフ情報の供給を保留している一または複数の発音チャンネルのチャンネル番号を記憶するレジスタである。音源回路30に対するノートオフ情報の供給が保留されると、図2(b)の区間200に示すように、当該発音チャンネルにおける楽音信号の生成は、ノートオフ信号が供給されなかった場合と同一の状態で継続される。
【0023】
また、音源装置100がホールドオン状態であった場合に、第2種音色に対するノートオフ信号が供給されると、ステップSP40において「NO」と判定され、処理はステップSP60に進む。ここでは、ホールド用のリリースレート、すなわちサスティンレートに等しい値がパラメータレジスタ30aの当該発音チャンネルに対応する箇所に書き込まれる。次に、処理がステップSP30に進むと、ノートオフ情報が音源回路30に供給される。これにより、以後は、例えば図2(d)の区間210に示すように、サスティン区間215と同様のレートで当該発音チャンネルの楽音信号が減衰されてゆくことになる。
【0024】
2.3.ホールドオン/オフ信号に対する処理
次に、通信インターフェース40を介してホールドオン/オフ信号が供給された場合の動作を説明する。まず、ホールドオン信号が供給されると、図5(a)に示すホールドオン処理ルーチンが起動される。ここで処理がステップSP200に進むと、ホールドレジスタが“1”にセットされる。また、通信インターフェース40を介してホールドオフ信号が供給されると、図5(b)に示すホールドオフ処理ルーチンが起動される。図において処理がステップSP210に進むと、ホールドレジスタが“0”にリセットされる。次に、処理がステップSP215に進むと、ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルすなわち音源回路30に対してノートオフ情報の供給が保留されていた全ての発音チャンネルについて、音源回路30に対してノートオフ情報が送信される。これにより、これら発音チャンネルの状態はノートオフ状態に遷移し、楽音信号の比較的急速な減衰が開始される。
【0025】
そして、これらの発音チャンネルの全てに対するノートオフ情報の供給が終了すると、処理はステップSP220に進み、該ノートオフ保留レジスタの内容がクリアされる。次に、処理がステップSP225に進むと、第2種音色の発音チャンネルのうちノートオフ状態である発音チャンネルに対して、「通常のリリースレート」がパラメータレジスタ30aに書き込まれる。これにより、当該発音チャンネルにおいては、楽音信号の比較的急速な減衰が開始される。
【0026】
2.4.ノートオン信号に対する処理(トランケートを伴う場合)
次に、ノートオン処理ルーチン(図4)のステップSP120において空き発音チャンネルが検出されなかった場合の処理を説明する。かかる場合はステップSP120において「NO」と判定され、処理はステップSP140に進む。ここでは、ホールドレジスタが参照され、現在の音源装置100の状態がホールドオン状態(ホールドレジスタ=“1”)であるか否かが判定される。ここで「NO」(ホールドオフ状態)と判定されると、処理はステップSP160に進み、音源回路30の発音チャンネルのうちノートオフ状態に設定されている発音チャンネル、すなわち既に音源回路30に対してノートオフ情報が送信されている発音チャンネルが抽出される。
【0027】
次に、処理がステップSP170に進むと、抽出された全発音チャンネルから「所定の条件」を満たす一の発音チャンネルが検出され、検出された発音チャンネルがトランケート対象チャンネルに決定され、当該一の発音チャンネル(トランケート対象チャンネル)の発音処理が強制的に終了される。ここで、「所定の条件」としては、例えば「音源装置100がノートオフ信号を受信したタイミングが最も古いもの」、あるいは「発音中の楽音信号のレベルが最も低いもの」等を適用するとよい。次に、処理がステップSP130に進むと、この強制的に終了された発音チャンネルが新たなノートオン信号に対して割り当てられ、該新たなノートオン信号に対応する発音処理が開始される。
【0028】
一方、現在の音源装置100の状態がホールドオン状態であればステップSP140において「YES」と判定され、処理はステップSP150に進む。ここでは、ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネル、すなわち音源回路30に対してノートオフ情報の供給が保留されている発音チャンネルが全て抽出される。そして、ステップSP160においては、上述したように、音源回路30においてノートオフ状態に設定されている発音チャンネルが抽出される。このようにステップSP150およびSP160の双方が実行された場合においては、次のステップSP170においては、両ステップSP150,SP160の双方において抽出された全ての発音チャンネルの中から上記「所定の条件」を満たす一の発音チャンネルが検出され、検出された発音チャンネルがトランケート対象チャンネルに決定され、決定されたトランケート対象チャンネルの発音処理が強制的に終了される。そして、上述したように、次に処理がステップSP130に進むと、この強制的に終了された発音チャンネルが新たなノートオン信号に対して割り当てられる。
【0029】
このように本実施形態によれば、ホールドオン状態においてトランケート処理の必要性が生じると、音源回路30においてノートオフ状態に設定されている発音チャンネルのみならず、ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルもトランケート処理の候補になる(ステップSP150,SP160,170)。このため、本実施形態によればこれら全ての発音チャンネルのうち最も影響の少ない発音チャンネルをトランケート対象として選択することができ、複数音色のアンサンブル時においても自然なトランケート処理を行うことができる。
【0030】
3.変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施形態のステップSP170においては、ステップSP150,SP160にて抽出された全ての発音チャンネルの中からトランケート処理の対象となる一の発音チャンネルが特定されたが、かかる処理は抽出された「全て」の発音チャンネルを対象としなくてもよい。例えば、ある特定のパートの発音チャンネルのみをトランケート処理の対象にする等、予め定められた条件によって発音チャンネルを絞り込み、絞り込まれた発音チャンネルの中からトランケート処理の対象とする発音チャンネルを特定するようにしてもよい。
例えば、一のノートオン信号に対応して複数の発音チャンネルを割り当て、所定の「組」をなす複数音色(例えばピアノとバイオリン)の楽音信号を同時に発音させる「レイヤ」と呼ばれる技術が知られている。かかる「レイヤ」が適用されている場合には、同一のノートオン信号に対して割り当てられた一方の発音チャンネルが解放されたときに、他方の発音チャンネルが優先的にトランケート対象として選択されるようにするとよい。
【0031】
(2)また、上記実施形態においては、ステップSP170における「所定の条件」の例として「音源装置100がノートオフ信号を受信したタイミングが最も古いもの」および「発音中の楽音信号のレベルが最も低いもの」を挙げたが、この「所定の条件」は上述したものに限定されるわけではない。すなわち、発音中の楽音信号の音量が充分に小さく強制的に消音しても発音中の音への影響が少ないと考えられる一の発音チャンネルを決定する方法としては種々のものが知られているから、これらの方法を本発明に適用してもよいことは言うまでも無い。
【0032】
(3)上記実施形態のステップSP140においては、ホールドオン状態であるか否かが判定され、ホールドオン状態でなければステップSP150の処理はスキップされた。しかし、ステップSP140の判定を省略し、ホールドオン状態であるか否かにかかわらずステップSP150,SP160の双方のステップを実行するようにしてもよい。これは、ホールドオフ状態になるとノートオフ保留レジスタがクリアされる(図5(b)のステップSP220参照)ため、ステップSP150を実行させたとしても、ノートオフ状態ではない発音チャンネルがトランケート対象として選択されるような不具合は生じないからである。
【0033】
(4)上記実施形態においては、ROM50に記憶されたプログラムによってトランケート処理等を実行したが、このプログラムをハードディスクやCD−ROM等に記憶させRAM52内に展開して実行させてもよい。さらに、このプログラムのみをCD−ROM、フレキシブルディスク等の記録媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布することもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ノートオン信号を受信した際に空き発音チャンネルが存在しないと判定されたことを条件として、ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルおよび音源回路に対して既にノートオフ情報が供給されている発音チャンネルの双方の発音チャンネルから、強制的に解放すべきトランケート対象チャンネルを決定するから、複数音色のアンサンブル時においても自然なトランケート処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の音源装置100の全体ブロック図である。
【図2】音源回路30におけるエンベロープ波形図である。
【図3】ノートオフ処理ルーチンのフローチャートである。
【図4】ノートオン処理ルーチンのフローチャートである。
【図5】ホールドオン処理ルーチンおよびホールドオフ処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10:操作子、15:検出回路、20:表示部、25:表示回路、30:音源回路、30a:パラメータレジスタ、35:サウンドシステム、40:通信インターフェース、50:ROM、52:RAM、54:CPU、60:バスライン、100:音源装置。

Claims (2)

  1. 複数の発音チャンネルを有し、何れかの発音チャンネルに対してノートオン情報が供給されると該発音チャンネルにおいて楽音信号の生成を開始するとともに、該発音チャンネルに対してノートオフ情報が供給されると該発音チャンネルにおける楽音信号の消音処理を開始する音源回路を制御する音源回路の制御プログラムであって、
    ホールドオン状態またはホールドオフ状態の何れかの状態をホールドレジスタに記憶させる過程と、
    前記ホールドオン状態においてノートオフ信号を受信すると、該ノートオフ信号が第1種音色または第2種音色のうち何れに対するものであるかを判定する音色判定過程と、
    前記音色判定過程において前記ノートオフ信号が前記第1種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路に対するノートオフ情報の供給を保留しつつ該ノートオフ信号に対応する発音チャンネルを特定する情報をノートオフ保留レジスタに記憶する過程と、
    前記音色判定過程において前記ノートオフ信号が前記第2種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路に対して直ちにノートオフ情報を供給する過程と、
    ノートオン信号を受信すると、空き発音チャンネルが存在するか否かを判定する空きチャンネル判定過程と、
    前記空きチャンネル判定過程において前記空き発音チャンネルが存在しないと判定されたことを条件として、前記ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルおよび前記音源回路に対して既にノートオフ情報が供給されている発音チャンネルの双方の発音チャンネルから、強制的に解放すべきトランケート対象チャンネルを決定するトランケート対象チャンネル決定過程と、
    該決定されたトランケート対象チャンネルを前記ノートオン信号に対して割り当てる割当過程と
    を処理装置に実行させることを特徴とする音源回路の制御プログラム。
  2. 複数の発音チャンネルを有し、何れかの発音チャンネルに対してノートオン情報が供給されると該発音チャンネルにおいて楽音信号の生成を開始するとともに、該発音チャンネルに対してノートオフ情報が供給されると該発音チャンネルにおける楽音信号の消音処理を開始する音源回路を制御する音源回路の制御装置であって、
    ホールドオン状態またはホールドオフ状態の何れかの状態を記憶するホールドレジスタと、
    前記ホールドオン状態においてノートオフ信号を受信すると、該ノートオフ信号が第1種音色または第2種音色のうち何れに対するものであるかを判定する音色判定手段と、
    前記ノートオフ情報の供給を保留している発音チャンネルを特定する情報を記憶するノートオフ保留レジスタと、
    前記音色判定手段において前記ノートオフ信号が前記第1種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路に対するノートオフ情報の供給を保留しつつ該ノートオフ信号に対応する発音チャンネルを特定する情報を前記ノートオフ保留レジスタに記憶するノートオフ保留手段と、
    前記音色判定手段において前記ノートオフ信号が前記第2種音色に対するものであると判定されたことを条件として、前記音源回路に対して直ちにノートオフ情報を供給するノートオフ供給手段と、
    ノートオン信号を受信すると、空き発音チャンネルが存在するか否かを判定する空きチャンネル判定手段と、
    前記空きチャンネル判定手段において前記空き発音チャンネルが存在しないと判定されたことを条件として、前記ノートオフ保留レジスタに記憶されている発音チャンネルおよび前記音源回路に対して既にノートオフ情報が供給されている発音チャンネルの双方の発音チャンネルから、強制的に解放すべきトランケート対象チャンネルを決定するトランケート対象チャンネル決定手段と、
    該決定されたトランケート対象チャンネルを前記ノートオン信号に対して割り当てる割当手段と
    を有することを特徴とする音源回路の制御装置。
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