JP4525233B2 - ボール循環部材およびボールねじ - Google Patents
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Description
すなわち、掬い上げ基端部240での分割線PL’を、単に、このような位置に設定した場合は、ボールねじ100の高速回転時等でボール掬い上げ部240に繰り返し荷重が負荷されると、その掬い上げ基端部240aでの切欠き部250が、応力集中により破損の基点となり、高速化を妨げる原因になるおそれがある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ボール循環部材において、強度が弱い掬い上げ基端部での強度を改善することにより、高速運転性能や耐久性能を向上させ得るボール循環部材およびボールねじを提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明によれば、ボール循環部材を二つのボール循環部材構成部材に分ける分割線は、掬い上げ部基端部で生じる切り欠き部を、切欠き部の最も深い部分で、それぞれ予め分断している。これにより、従来、応力集中が問題となっていた掬い上げ基端部には切欠き部が実質的に形成されないことになる。そのため、ボール循環部材内を循環するボールによる衝撃がボール掬い上げ部に作用した場合であっても、掬い上げ基端部での応力集中は緩和される。そのため、掬い上げ基端部が起点となる疲労破壊が生じるおそれが軽減する。したがって、このボール循環部材をボールねじに用いれば、ボールねじの高速運転性能や耐久性能を向上させることができる。
ここで、上記請求項1に記載のボール循環部材は、掬い上げ基端部での応力集中を好適に緩和可能であるが、上記位置での分割線は、ボール中心の軌跡位置を基準に見た場合、ボール掬い上げ部の反対の側を掬い上げ部の側に向けてずらした位置で形成されることになる。
すなわち、当該掬い上げ基端部での分割部分では、各ボール循環部材構成部材の周壁がボールを均等に包持しないことになる。そのため、副作用として、掬い上げ基端部近傍での周壁によるボール拘束性能が不安定になるおそれがある。そこで、本願発明者らは、当該掬い上げ基端部での応力集中を緩和するとともに、掬い上げ基端部の近傍でのボール拘束性能も安定させる形状を鋭意検討した結果、掬い上げ基端部の近傍での周壁形状をより効果的に設定することによって、ねらいとするボール拘束性能を得るに至った。
請求項2に記載の発明によれば、二つのボール循環部材構成部材が、ボールを取り囲む周壁の割合がそれぞれ異なる分割位置であっても、一方が他方を覆うようにして相互に組み合わされることになる。これにより、掬い上げ基端部の近傍での周壁によるボール拘束性能を安定させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、ボールの進行方向がリード角方向に掬い上げられて通路内に円滑に導入されるため、チューブ循環式ボールねじのように、ボール転動溝のリードが大きくなってもボールの進行方向がボールの循環部分で急激に変化するようなことがほとんどない。そのため、掬い上げる際にボールの損傷や騒音等の発生を抑制でき、しかも、例えばエンドキャップ式ボールねじのように、ボールの循環回路数がねじ溝の条数分に限定される制約がないので、1回路当りのボール数(巻き数)を多くすることなく負荷容量を高めることができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のボール循環部材であって、前記ボール循環部材は、樹脂成形により成形されるとともに、前記ボールの進行方向に沿って点対称に二つに分割された一対のボール循環部材構成部材を組み合わせて構成されていることを特徴としている。
このような構成であれば、ボール循環部材内にボール転動溝のリード角と一致する方向にボールを掬い上げて再び初期位置に戻す通路を樹脂成形等により容易に形成する上で好適である。
また、請求項5に記載の発明は、ボールねじにおいて、請求項1〜4のいずれか一項に記載のボール循環部材を備えていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載のボール循環部材による作用および効果を奏するボールねじを提供することができる。
まず、本発明の第一の実施形態について説明する。
図1は本発明に係るサイドキャップ式のボールねじを説明する説明図、図2は、その要部を説明するための図1での径方向断面図である。また、図3および図4は、それぞれ図2でのE方向矢視図であり、図3ではサイドキャップ装着前のナットを示しており、図4では本発明に係るサイドキャップを装着した状態で示している。
ねじ軸12は、外周面に螺旋状のボール転動溝11を有する。ナット14は、ねじ軸12のボール転動溝11に対応する螺旋状のボール転動溝13を内周面に有する。そして、ナット14は、ねじ軸12に嵌合されており、ナット14のボール転動溝13とねじ軸12のボール転動溝11とが互いに対向して両者の間でボール軌道路8が構成されている。そのボール軌道路8には、転動体としての複数のボール15が転動可能に装填されている。
そして、このサイドキャップ取付け面16には、図4に示すように、ボール循環部材としてのサイドキャップ17が取り付けられる。ここで、サイドキャップ17は、一対の脚部19を有しており、その一対の脚部19を、サイドキャップ取付け面16に形成された上記長孔20に、ねじ軸12に対して垂直方向から、ほとんど隙間なく嵌め込み可能になっている(図1参照)。そして、図4に示すように、サイドキャップ17全体を覆う蓋形状のサイドキャップカバー26によって、サイドキャップ17全体をサイドキャップ取付け面16に向けて押さえられて、止めネジ18によってナット14に取付けられる。
次に、上述のサイドキャップ17のもつ分割構造について詳しく説明する。なお、図5および図6は、本発明に係るサイドキャップを示す説明図であり、図5はサイドキャップの説明的斜視図、図6は、そのサイドキャップを分割した、一方のサイドキャップ構成部材を示す説明的斜視図である。
このサイドキャップ17は、図6に示すように、ボール掬い上げ(戻し)通路21およびボール送り通路22からなるボール循環通路27が、その内側に形成され、ボール15の進行方向に沿って点対称に二つに分割されたサイドキャップ構成部材23から構成される。そのため、同図に示すように、各サイドキャップ構成部材23が相互に分割線PLで分割される部分では、分割面23d(相互の合わせ面ともなる)が生じる。
上述したように、このサイドキャップ17は、二つのサイドキャップ構成部材23に分割線PLから分割されているため、一対のサイドキャップ構成部材23,23同士が、分割面(合わせ面)23dをそれぞれ有している(図6参照)。
上述のように、このボールねじ10は、ナット14のサイドキャップ取付け面16にサイドキャップ17を取付けると、ボール転動溝11,13間を転動したボール15は、サイドキャップ17のボール掬い上げ部24によってボール転動溝11,13のリード角方向に掬い上げられてボール送り通路22内に円滑に導入される。そのため、このボールねじ10では、チューブ循環式ボールねじのように、ボール転動溝のリードが大きくなってもボール15の進行方向がボール15の循環部分で急激に変化するようなことがほとんどないので、ボール15を掬い上げる際にボール15の損傷や騒音等の発生を抑制でき、しかも、例えばエンドキャップ式ボールねじのように、ボールの循環回路数がねじ溝の条数分に限定される制約がないので、1回路当りのボール数(巻き数)を多くすることなく負荷容量を高めることができる。
さらに、このボールねじ10は、サイドキャップ17を、外形形状が同一の、一対のサイドキャップ構成部材23,23を組み合わせる構成としたことにより、サイドキャップ構成部材23,23を1つの成形型で成形でき、これにより、サイドキャップ17をより容易に製造することができる。
なお、この第二の実施形態は、上記説明した第一の実施形態でのサイドキャップ17に対して、上記周壁延出部23fの形状のみが異なっており、それ以外は上記説明した第一の実施形態と同様の構成である。そのため、ここでは、周壁延出部23fの形状のみについて説明し、その他の説明については省略する。
このように、第二の実施形態のサイドキャップ17では、周壁延出部23fを、掬い上げ基端部24aの近傍で、相互に外側を覆うようにして組み合わせることができる。したがって、掬い上げ基端部24aの近傍での周壁によるボール拘束性能も安定させることができる。
例えば、上記各実施形態に、さらに、分割面(合わせ面)23dに対して、相互の位置合わせをするための位置決め部として、突起部と穴部とをそれぞれに設ける構成としてもよい。なおまた、サイドキャップ17には止めネジ18を直接通すためのサイドキャップ取付け孔を穿設した構成としてもよい。
また、例えば、上記各実施形態では、ボールねじ10は、サイドキャップ17(サイドキャップ構成部材23,23)を樹脂で形成した例で説明したが、例えばサイドキャップ17を金属成形、例えば焼結鋼等の焼結材で形成したり、金属射出成形(MIM)により成形してもよく、このような構成とすることにより、樹脂の使用に適さない高温条件下でも使用することができる。
10、100 ボールねじ
11 ボール転動溝
12 ねじ軸
13 ボール転動溝
14 ナット
15 ボール
16 サイドキャップ取付け面(ボール循環部材取付け面)
17、170 サイドキャップ(ボール循環部材)
18 止めネジ
19、190 脚部
20 長孔
21、210 ボール掬い上げ(戻し)通路
22 ボール送り通路
23、230 サイドキャップ構成部材(ボール循環部材構成部材)
23d 分割面
23f 周壁延出部
24、240 ボール掬い上げ部
24a、240a 掬い上げ基端部
25 切欠き部
26 サイドキャップカバー
27 ボール循環通路
PL、PL’ 分割線
Claims (5)
- 外周面にボール転動溝を有するねじ軸と、該ねじ軸の外周面と対向する内周面にボール転動溝を有するナットと、前記ナットおよびねじ軸の両ボール転動溝間で構成するボール軌道路に配設された複数のボールと、を備えるボールねじに用いられ、前記ボール軌道路内のボールを一方の側から掬い上げるボール掬い上げ部と、該ボール掬い上げ部で掬い上げたボールを他方の側から前記ボール軌道路内へ戻すボール循環通路と、を一体に有し、当該一体に有するボール掬い上げ部とボール循環通路とが繋がる部分である掬い上げ基端部に切欠き部をもつボール循環部材であって、
前記ボール循環部材は、その内部を通る前記ボールの進行方向に延びる分割線に沿って分割された二つのボール循環部材構成部材を備えて構成されてなり、
前記分割線は、前記一方の側での前記切欠き部の最も深い部分と前記他方の側での前記切欠き部の最も深い部分とを通るとともに、当該分割線が通る前記切欠き部の最も深い部分が、ボール中心の軌跡位置を基準に見たときに、掬い上げ部の側に向けてずらした位置に形成されていることを特徴とするボール循環部材。 - 前記二つのボール循環部材構成部材は、他方のボール循環部材構成部材の前記掬い上げ基端部の外側をその両側から覆うように周壁を延出させた周壁延出部を有することを特徴とする請求項1に記載のボール循環部材。
- 前記ボール循環部材は、前記掬い上げるボールを導くための通路が内部に形成された一対の脚部を有し、各脚部内に形成された通路での前記ボールの進行方向が、前記ねじ軸の接線方向且つ前記両ボール転動溝のリード角と一致する方向にボールを掬い上げ可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のボール循環部材。
- 前記ボール循環部材は、樹脂成形により成形されるとともに、前記ボールの進行方向に沿って点対称に二つに分割された一対のボール循環部材構成部材を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のボール循環部材。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のボール循環部材を備えていることを特徴とするボールねじ。
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