JP4524445B2 - タンパク質のスクリーニング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、タンパク質及びポリペプチドのスクリーニングのための方法及び組成物に関する。詳しくは、本発明は、遺伝子ライブラリーの形成及び様々な方法でスクリーニング可能な個々のタンパク質又はポリペプチドの合成を含む方法に関する。特別の態様では、いわゆる「リボソーム提示」タンパク質又はポリペプチドアレイの使用を含む。したがって、本発明は、生物学的活性ポリペプチド、受容体に結合するタンパク質、及びタンパク質と他の分子との相互作用、のスクリーニングにおける提示されたタンパク質又はポリペプチドアレイの新規な実用的な適用を提供する。
【0002】
配列決定を先導して進めていることから、ヒトゲノムは、ヒト疾患との因果関係を有するかも知れないヒトゲノムにおける多型性又は突然変異、さらに疾患に関連するかも知れない遺伝子の発現変化を発見するための主な主導的役割を果たしてきた。これは、そのような多型性、突然変異又は遺伝子発現における変化を見出すために、多くの高処理量スクリーニング技術を生じさせた。さらに、そのような分析は、ある種の治療に対するヒトの応答を分析し、それによりこれらの治療に対する応答性を予想するためにも現在着手されつつある。一般に、多型性、突然変異及び遺伝子発現変化は、これらの遺伝子により産生されるタンパク質に反映され、疾患の発生又は治療に対する応答等の生物学的な結果を直接決定することができるのはこれらのタンパク質の作用である。さらに、ほとんどの真核生物のタンパク質は翻訳後修飾される。そして、そのような修飾は遺伝子レベルでは分析することができない。したがって、タンパク質及びタンパク質修飾のスクリーニングの分析は、DNA又はRNAの分析に比べて変化と疾患との正確な相関関係を示す可能性がより高いということになる。
【0003】
今日までタンパク質と疾患との関連性の分析は、ヒト組織又は細胞からの2D(二次元)タンパク質ゲル分析が優勢であった。この技術では、通常、細胞タンパク質を一次元で電荷に基づいてそして他の次元でサイズに基づいて分離する。タンパク質は、既知のタンパク質の電気泳動上の移動パターンを参照するか、又は電気泳動により分離したスポットからタンパク質を溶出して質量分析及び核磁気共鳴等の方法で分析することにより同定することができる。しかしながら、2Dタンパク質ゲル法には、細胞由来のタンパク質の分解能及び検出の限界(通常5000細胞タンパク質のみしか明確に検出されない)、分離したタンパク質の同定に対する限界(例えば、質量分析は通常、同定のために100フェムトモル以上のタンパク質を要する)及び技術の専門家的性質などの限界がある。さらに、2Dゲル分析によるタンパク質の翻訳後修飾の分析には限界があり、タンパク質−タンパク質結合相互作用はこの方法では検出することができない。
【0004】
細胞の多数のプロセスは、修飾酵素とそのタンパク質基質との間の一過性の相互作用により制御される。そのような相互作用は慣用の方法により検出することが困難である。キナーゼ、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ、プロテアーゼ等のタンパク質修飾酵素は、根本的な細胞プロセスのすべての様式を制御し(ポーソン(Pawson) ,Nature, 373 (1995), 573 頁) 、そして疾患経路にも関与することが示された。これらの一過性タンパク質/タンパク質相互作用は幾つかの異なる効果を生じることができ、その一部は測定可能である。タンパク質の動力学的性質は変化させることができ、これは基質の結合の変化(プレリッヒ(Prelich)ら,Nature, 326, (1989), 517頁) 又は変化した触媒(ポルパシー(Porpaczy)ら,Biochim. Biophys. Acta, 749 (1983), 172 頁) を結果として生じさせる。タンパク質/タンパク質相互作用は新しい結合部位の形成の原因となることができ、例えば、ATP結合部位は、大腸菌ATPアーゼのa及びbサブユニット間の相互作用により形成される(ウェーバー(Weber)ら,J. Biol. Chem., 268, (1993), 6241 頁) 。タンパク質の基質特異性は、特異的プロモーターにポリメラーゼを配向させる種々の転写因子とRNAポリメラーゼとの相互作用により例示されるように、タンパク質/タンパク質相互作用により変化しうる(ホワイト(White)とジャクソン(Jackson) 、Trends Genet., 8, (1988), 284 頁) 。また、タンパク質/タンパク質相互作用は、例えば、タンパク質が阻害剤と相互作用する場合に不活性化を生じさせうる(ビンセント(Vincent) とラズンスキー(Lazdunski) ,Biochemistry, 11, (1972), 2967頁) 。
【0005】
遺伝子ライブラリー由来のタンパク質又はポリペプチドの産生に依存する諸方法が、当該技術分野で開示されている。しかしながら、そのような方法に伴う一つの主要な不都合は、タンパク質又はポリペプチドが「プール」として産生され、次いでスクリーニングされるということである。個々のタンパク質又はポリペプチドの迅速な同定を可能にし、次にはそのようなタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の同定をも可能にするスクリーニング方法が必要である。
【0006】
したがって、第1の側面において、本発明は遺伝子ライブラリーを作製する工程、及び次いでスクリーニングされうる個々のタンパク質又はポリペプチドを合成する工程を含むタンパク質又はポリペプチドのスクリーニング方法を提供する。本発明においては、「個々のタンパク質又はポリペプチド」という用語は、遺伝子ライブラリーから発現されたタンパク質又はポリペプチドがプールの一部を形成するというよりはむしろ別々に同定可能であることを意味する。したがって、例えば、タンパク質又はポリペプチドは、アレイとして発現可能である。ここで、各タンパク質又はポリペプチドは、アレイ内の別個の点又は領域を占有する。例えば、遺伝子ライブラリーは、コロニー又はプラークの形で作製し、次にそれらを別個に拾い上げてアレイに配列することができる。次に、遺伝子を発現させると、アレイフォーマット中でタンパク質又はポリペプチドのアレイが生じる。そしてアレイ中のタンパク質又はポリペプチドのそれぞれは別個の点又は領域を占有する。
【0007】
遺伝子ライブラリーから形成させたタンパク質又はポリペプチドは、イン・ビトロ転写及び翻訳、リボソーム提示並びにファージ提示等のイン・ビトロでの方法により製造された「合成タンパク質又はポリペプチド」と称してもよい。したがって、それらは、その基準に基づいて、組織又は細胞抽出物から直接に由来する「天然のタンパク質」とは区別することができる。
【0008】
こうして、本明細書に記載された方法は、「合成」タンパク質又はポリペプチドの合成に関する出発点として遺伝子ライブラリーを用いて、タンパク質及びポリペプチド並びに翻訳後修飾のスクリーニングを可能にする。一般的に、これは、それらをスクリーニングするための手段としてのタンパク質又はポリペプチドのアレイの作製により達成される。特に、アレイは、イン・ビトロの転写及び翻訳方法により作製される。
【0009】
本発明の共通のテーマは、提供される方法それぞれがその対応するmRNA又は遺伝子配列の助けにより「合成」タンパク質又はポリペプチドの迅速な同定を可能にすることである。
【0010】
本発明の他の態様は、リボソーム上にタンパク質を提示する新規な技術、タンパク質又はポリペプチド及び翻訳後修飾のスクリーニングのためのそのような方法の使用、並びに受容体等の他の分子に結合する特異的タンパク質又はポリペプチドのスクリーニングのための新規な方法を提供する。
【0011】
リボソームは、その協調された活性が翻訳の行為を完成させるタンパク質の集合を表す。原核生物及び真核生物のリボソーム並びにオルガネラにおいてRNAとタンパク質のサイズと割合にははっきりと感知できる相違があるけれども、リボソームの基本的な型は保存されている。すべてのリボソームは、二つの主要なサブユニット、細菌では50S及び30Sサブユニット、そして真核生物では60S及び40Sサブユニットから構成される。タンパク質合成は、真核生物では5’キャップで又は原核生物では翻訳開始コドン(通常AUG)に隣接してリボソームがmRNAに付着したときに開始し、mRNA配列に指示されながら、発生期のポリペプチド鎖を保持するペプチジル−tRNA分子上にアミノ酸を連続的に結合させることにより続いていく。翻訳は、通常、リボソームがmRNAから解離する所である停止コドンで終結する。停止コドンの非存在下では、リボソームは、解離が放出因子の助けにより起こる前にmRNA分子の末端まで進行すると考えられる。したがって、翻訳終結は、タンパク質をコードするmRNA分子からそのタンパク質を切り離す。リボソームがタンパク質合成中に阻止されたときは、タンパク質とmRNAはリボソームと複合体を形成している間は結合した状態に留まるであろう。
【0012】
リボソーム上で合成タンパク質を生成する生化学的過程は、生きた生物を用いる合成タンパク質の生成のための現存する方法を越えるいくつかの利点を有する。特定の表現型の保持体としてのタンパク質を選択し、その後に対応する遺伝型を決定する方法は、所望のタンパク質を提示するバクテリオファージ、ウイルス及び細菌細胞を通常用いて、遺伝子とタンパク質との間の連結を提供するために生きた細胞に主として依存してきた。DNAライブラリーによりコードされるタンパク質の多様な収集のための生きた細胞の使用は、いくつかの不都合を有する。例えば、タンパク質の多様性は、DNAまたは感染性粒子の取り込みの低効率により制限される細菌細胞又は真核細胞の形質転換又は感染を必要とすることにより低下しうる。さらに、多様なタンパク質の生物学的生産は、所定のタンパク質に対して選択可能な生きた細胞の特定の環境、及び所定のタンパク質に対しても選択可能なタンパク質の折り畳みにおける変化を生じ得る環境に曝される。最後に、連続的な選択ラウンドの間に個々のタンパク質の多様性が要求される場合、遺伝子突然変異技術は、多様化及びスクリーニングのためにDNAと生きた細胞との間の切替えが必要であることにより、イン・ビボの系に適用することが困難である。
【0013】
ポリペプチド選択のためのイン・ビトロの方法は、遺伝子の細胞内への取り込みの必要性を除くことにより、そしてmRNA及びタンパク質の製造のための環境を制御することにより、イン・ビボの方法に優る長所を潜在的に提供する。イン・ビトロの転写及び翻訳反応は、何年もの間DNAから直接ポリペプチドを生産させる手段として用いられており、特異的なポリペプチドを選択するための抗体を用いてポリソームの免疫沈降(例えば、ペイバー(Payvar, F.)とシムケ(Schimke, R. T.)、Eur. J. Biochem., 第101 巻 (1979) 1844-1848 頁)により特異的なmRNAを濃縮できることがわかった。このいわゆる「リボソーム提示」技術は、ごく最近、ペプチドの選択(マッテアキス(Mattheakis, L.)ら,PNAS 91: 9022, 1994 及びPCT95/11922)及びタンパク質の選択(カワサキ(Kawasaki, G.)、PCT91/05058 及びハーネス(Hanes) とプラックタン(Pluckthun) ,PNAS, 第94巻[10]: 4937, 1997) に適応されている。
【0014】
マッテアキス(Mattheakis, L.)ら(PNAS 91: 9022, 1994) により記載された方法は、ペプチドライブラリーからリガンドを同定するためのリボソーム提示系を用いる。前記方法は、原核細胞のリボソーム複合体の50Sサブユニットに結合することによりリボソーム翻訳での失速を誘導するリボソーム翻訳停止用のクロラムフェニコールを用いる。この方法の不利な点は、発生期のペプチドの長さに関わらず翻訳停止を生じさせ、こうして、ほとんどのポリペプチド分子が不完全となるという点である。転写/翻訳後のDNAライブラリーからのポリペプチドの効率的なスクリーニングのためには、mRNAに関連する全長ポリペプチドの収率を最大にすることが明らかに望まれる。
【0015】
マッテアキス(Mattheakis)とドーワー(Dower) がPCT95/11922 に記載した方法は、融合ポリペプチド分子のペプチド部であり、スクリーニングのためのポリペプチド部に隣接し、mRNAに関連する全長のポリペプチドの収率を最大にするためにコードするポリヌクレオチドと相互作用するか結合する「つながれた発生期のペプチド」の使用を通じて原理的にリボソームを失速させるさらなる手段を含む。マッテアキス(Mattheakis, L.)ら(PNAS,同書) と同様に、この方法は、未成熟な翻訳停止を生じさせると予想され、スクリーニングのためのいくつかのタンパク質の適切な折り畳みをも歪めると予想されるであろう。従って、ポリペプチド分子のサイズ範囲はマッテアキスとドーワーにより記載された方法により予想され、DNAライブラリーによりコードされる特異的なポリペプチドを単離する蓋然性を低減するであろう。ヘインズ(Hanes) とプラックタン(Pluckthun) (同書)の方法において、正しく折り畳まれたタンパク質とそれをコードするmRNAの収量をその両者がリボソームにまだ付着している間に最適化する方法が提供される。前記方法は、酢酸マグネシウムの濃度を増加させることにより翻訳過程を失速させる工程及び物理的反応条件の操作によるタンパク質の正しい折り畳み工程を含む。しかしながら、全長タンパク質の収量を増加させる唯一の手段は、リボソーム上の折り畳まれたタンパク質をつなぐために、対応する遺伝子を操作し、3’スペーサー領域を付加することによりmRNAから停止コドンを除くことである。この方法は、初期の方法に比べた場合全長ポリペプチドの割合を増加させるであろうが、一方、この方法は、mRNAの末端からのラン−オフ翻訳を予防する何の手段も提供せず、提供された失速ストラテジーは、マッテアキスとドーワー(同書)と同様の制限を欠点にもち、それによって未成熟な翻訳上の停止が予想されるであろう。前記方法のそれぞれに関して記載した制限に加え、翻訳されたポリペプチドの試験に先立って翻訳反応の後期の新しい翻訳開始を阻止する手段を提供する方法は存在しない。したがって、ポリペプチド分子のサイズ範囲はこれらの方法により予想され、DNAライブラリーによりコードされる特異的なポリペプチドを単離する蓋然性を低下させるであろう。したがって、特異的ポリペプチドに関してDNAライブラリーを効率的にスクリーニングするために、発生期の不完全ポリペプチド鎖の存在を最小限にしながら、全長ポリペプチドの収量を最大にするリボソーム提示に関する新規な方法が必要である。
【0016】
したがって、本発明の別の態様(「リボソーム提示」)は、対応するmRNAに連結したリボソーム上のタンパク質を提示するための新規なイン・ビトロの方法を提供する。本発明のさらなる態様は、生物学的に活性な又は阻害的なポリペプチドをこれらのポリペプチドに対する分子標的のいかなる知識もなく特異的に発見するため、細胞又は組織に結合するポリペプチドの分子結合部位を特異的に発見するために、及び新規なタンパク質−タンパク質結合相互作用を特異的に発見するために、ポリペプチド提示法、特にリボソーム提示を用いる。
【0017】
生物学的に活性なポリペプチドの発見(「生物学的スクリーニング」)のための本発明の特別の態様においては、DNAライブラリーによりコードされ、ポリペプチド提示を介して発現される生物学的な表現型を直接選択する新規な方法が提供される。微生物上でのポリペプチドの提示法及び転写/翻訳法が、有用な結合表現型と遺伝子型との間の連結を提供する一方、これらの方法は、抗原又は化学品等の既知であって、通常適度に純粋な標品で利用可能なリガンドへの結合によるポリペプチドの検出に大部分限定されている。生きた細胞全体への直接的な結合により提示されたポリペプチドの同定は困難であることが証明された。多くの場合、結合する表現型のスクリーニングは、標的の生きた細胞との相互作用の際に有用な生物学的な表現型を提示する生物学的活性ポリペプチドの単離の代用である。そのような場合、結合する表現型を単離し、対応する遺伝型を決定し、次いで、生物学的活性に関して結合する表現型を試験することが必要である。特異的な結合表現型を有するポリペプチドの割合のみが要求される生物学的活性を提供するので、この表現型選択過程は効率的でなく、生物学的活性ポリペプチドを選択しない代理結合スクリーンに依存する。表現型スクリーニング用のリガンドが利用できないか又は知られていない場合には、新規な生物学的活性ポリペプチドのスクリーニングは可能でないことがある。したがって、本発明は、DNAライブラリーによってコードされポリペプチド提示を介して発現される生物学的な表現型を直接選択する新規な方法も提供する。
【0018】
細胞又は組織に結合するポリペプチドの分子結合部位を発見するための本発明の特別の態様(「リガンド配向性スクリーニング」)においては、目的のタンパク質分子をコードするDNA分子、特に本発明の方法で標識されるものの複製を可能にするような様式でスクリーニング可能な、タンパク質分子をコードする大きなDNAライブラリーに適用する方法が提供される。特定のリガンド分子に対する標的受容体タンパク質を決定するために、標的のその後の分析及びその分子の同定に先立ち、標的受容体の選択的単離のためにそのリガンドを用いることが可能である。しかしながら、その受容体へのリガンドの結合親和性が低いか、リガンド及び/又は受容体が豊富に存在しない場合、そのリガンドを用いて受容体を単離することは非常に困難であり、受容体の同一性を決定するためには通常、競合検定法等により普通の候補受容体を試験しなければならない。さらに、リガンド結合を阻害する分子(受容体アンタゴニスト等)又はリガンドの結合を代替する分子(アゴニスト等)のその後の解明のためには、精製又は濃縮受容体標品を、リガンド結合部位で結合する分子の単離のために、結合分子候補(抗体等)の範囲を試験しなければならない。受容体が精製又は濃縮型で利用できない場合か、受容体の同一性が知られていない場合は、受容体結合分子の単離が非常に困難であることは明らかである。したがって、標的受容体の効率的な単離のため、そして、例えば、アゴニスト、アンタゴニスト又は単純な標的化分子等として作用するかも知れない受容体上のリガンド結合部位に特異的に結合する分子の単離のために新規な道具が要求される。細胞又は組織に結合するポリペプチドの分子結合部位を発見しうることが、本発明の特別な側面である。この方法は、リガンドに直近の受容体に結合する他のタンパク質複合体を標識するため、タンパク質性受容体に結合するリガンドを用いるという原理に基づいている。次いで、これに基づいて、これらの隣接して結合するタンパク質は、受容体を単離するために、そして、場合によっては、受容体に隣接したタンパク質分子を単離するためにも、結合剤として使用することができる。さらに、これらの隣接して結合したタンパク質は、リガンド結合部位で結合するタンパク質を含む他のタンパク質に沿って受容体にその後に再結合することができる。そのときは隣接して結合したタンパク質は、リガンド結合部位で結合するタンパク質を含む自身に直近して結合する他のタンパク質複合体を標識することができる。このようにして、リガンド結合部位で結合する一以上のタンパク質複合体を標識し、その後、単離し、そして受容体阻害、受容体のアゴニズム又はアンタゴニズム等の有用な性質について試験することができる。本発明は、細胞表面上、特に組織全体の分子の標識化及び単離に特に有用である。したがって、本発明は、目的のタンパク質分子をコードするDNA分子の複製を可能にするように、タンパク質分子をコードするDNAライブラリーのスクリーニング方法を提供する。
【0019】
細胞内ポリペプチド間で起こるものを含め、新規なタンパク質−タンパク質結合相互作用(「タンパク質−タンパク質相互作用」)に特異的に関連する本発明のさらなる態様においては、次には結合するポリペプチドをコードする遺伝子の単離を可能にする検出可能又は選択可能な特性を創出するように、ポリペプチドとリガンド又はポリペプチドと他のポリペプチドとの結合方法が提供される。
【0020】
以下、本発明の様々な態様をさらに詳細に記載する。
【0021】
タンパク質「アレイ」−本発明のこの態様では、合成タンパク質の合成の開始点として遺伝子ライブラリーを用いるタンパク質及びポリペプチド及び翻訳後修飾の新規なスクリーニング方法が提供される。この態様において、これらの遺伝子ライブラリーは、ポリペプチドの検出及びポリペプチド修飾の検出のために、個々のタンパク質又はタンパク質群を分離する基礎を提供する。その方法は、タンパク質ゲル電気泳動の使用を回避する。本発明は、原理的には正常タンパク質と疾患タンパク質との間の相違を検出するため、また薬物と他の疾患治療との関係におけるタンパク質の変化を分析するためにも、正常及び疾患の組織又は細胞におけるタンパク質の高処理量分析方法を提供する。また、この方法は、生きた細胞又は組織に曝した場合にタンパク質又はポリペプチドのライブラリーの結合又は生物学的活性の高処理量分析をも提供する。さらに、この方法は、個体及び異なる組織又は細胞を同定するために、遺伝子のフィンガープリント法の代替物として、個体のタンパク質「フィンガープリント法」をも提供する。タンパク質がプールの状態で又は個々のタンパク質のアレイ中で分析され、それにより、一旦修飾、結合又は生物学的活性が種々の方法で検出されたならば、タンパク質の同一性は、特定のプール中でのその局在によるか又はアレイ中での特定の位置でのその局在のいずれかにより直接又は間接に決定されうることが、本発明の重要な性質である。同様に、この方法が異なる組織又は細胞間でのタンパク質又はタンパク質修飾の相違の比較検出を可能にし、したがって、この方法がこれらの相違のスクリーンを構成するということが、本発明の重要な側面である。
【0022】
この方法は、第一に、組換えDNA法により形成された合成タンパク質、特にイン・ビトロの転写及び翻訳(IVTT)により1以上の遺伝子から形成されたタンパク質、の使用に基づいている。本発明の一つの好ましい側面は、タンパク質修飾又はタンパク質−タンパク質結合相互作用のスクリーニングに先立ち、固相上へのその後の固定を伴う、IVTTによる合成タンパク質の形成である。合成タンパク質がタンパク質の修飾、結合活性又は生物学的活性について試験された場合、これらの合成タンパク質をコードする元の遺伝子を参照することにより容易に同定されうるように、遺伝子(IVTTを容易にするように設計されたベクターにクローニングされたcDNA等)のアレイからの合成タンパク質の形成が行なわれること、そしてそれによりこの遺伝子配列がタンパク質の同一性を明らかにすること、が本発明のこの態様の重要な側面である。そのような遺伝子アレイは、例えば、個々のcDNAクローン又はクローン混合物を一つのアレイの特定の位置(ミクロタイタープレートのウェル中等)に拾い上げることにより作成される。IVTTの後(通常、PCR等の方法によるcDNAの増幅の後)、前記アレイ中の各位置からタンパク質試料を取り出し、別のアレイの特定の位置、例えば、代わりのミクロタイタープレート内又は個々の位置に試料を分配できる固相上に固定又は分配することができる。特異的なタンパク質の修飾又はタンパク質の結合事象が前記アレイにおけるタンパク質試料から検出されるときは、目的のタンパク質を同定するために、これらのタンパク質をコードする特異的遺伝子の位置を決めてその配列決定をすることができる。
【0023】
cDNAライブラリーが免疫グロブリン可変領域(通常、一本鎖Fv領域として、SCAs(単鎖抗体)と称する)等の1組の可変分子をコードしてもよいことも、本発明の好ましい態様の範疇である。そのような可変分子は、アレイ中の特定の位置に分配されたときは細胞又は組織の試料由来の他の特異的分子(通常はタンパク質)に結合する能力を有する。次いで、これらの細胞又は組織の分子は、アレイ中の可変分子への結合により、細胞又は組織の分子の整列したアレイを本質的に生ずる。次いで、そのようなアレイ中の細胞又は組織の分子の存在、又はリン酸化又は他の分子との相互作用等によるのこれらの分子の修飾に対し、アレイ中で番地を付与することができる。そのような細胞又は組織の分子の同一性は、特に元の可変分子を単離状態で回収し、単離状態の細胞又は組織の分子(単数又は複数)を回収するために用いる場合、その後にいくつかの方法により決定することができる。次いで、そのような細胞又は組織の分子の同一性は、古典的な生化学手段により、あるいはこれらがタンパク質の場合タンパク質の配列決定又は2Dゲル移動特性等の方法により決定することができる。あるいは、そのようなタンパク質性の細胞又は組織の分子の同一性は、本願特許に含まれるリボソーム系等のタンパク質提示系を用いて決定することができ、それによりcDNAライブラリーを用いて、特定の可変分子に結合する際にその結合タンパク質の同一性を関連する遺伝子のヌクレオチド配列を決定することにより決定することが可能であるように、それらの遺伝子(又は遺伝子のRNA表示)に連結したタンパク質のライブラリーを作製する。
【0024】
タンパク質アレイの作製における合成タンパク質の生産のためのIVTTの使用の代替として、本発明のミクロアレイ態様の別の側面は、ポリペプチドの大規模な混合物をコードする遺伝子ライブラリーから有用な表現型を有する合成ポリペプチドを生成させ、それにより対応する遺伝子が迅速かつ容易に回収可能な「ポリペプチド提示」法の使用である。細胞に基づく提示系そして特に対応するmRNA(次いでタンパク質の同一性を解明するために配列決定されうる)へのリボソーム複合体を介して連結したタンパク質を提供可能なリボソームに関連するタンパク質の特定の提示(「リボソーム提示」)よりもタンパク質の種類に関してより大きな範囲を提示させるイン・ビトロのポリペプチド提示法が、開発された。また、本発明の方法は、ファージ提示等の他のタンパク質提示法をも取り込むことができる。
【0025】
本発明の方法の一つの態様において、タンパク質の修飾は、遺伝子ライブラリーの形成によってスクリーニングされ、次いで、前記ライブラリーを用いて、好ましくはmRNAから解離した全長の合成タンパク質の収量を最大にするような条件下で、そのようなベクターから連続的にmRNAとタンパク質を製造するIVTT等により合成タンパク質を作成する。豊富なmRNA種からのタンパク質又はポリペプチドの過剰提示を回避するために、遺伝子ライブラリーを規格化する。ビオチン化リジン等の修飾アミノ酸の取り込み又はプラスミドベクターによりコードされるかPCRにより導入されるアミノ酸配列タグの取り込みを通じて、あるいはタンパク質の化学修飾を通じて、次に合成タンパク質を、ビオチン結合性タンパク質(ストレプトアビジン等)を介し又は抗タグ抗体等のタグ結合性タンパク質配列を介し磁気ビーズ等の固相上に固定化することができる。タンパク質の修飾のスクリーニングにおいて、出発遺伝子の適当な分布を通じて、タンパク質の小さなプール又は個々のタンパク質を、ミクロタイターウェル内等のアレイに形成させ、これらのアレイに固定する。
【0026】
あるいは、合成タンパク質は、タンパク質の個々の小さなプール又は個々のタンパク質としてアレイ中に製造され、次いで、個々にガラス「チップ」上等の平坦な固相上の異なる位置に(手動によるか又は自動分配機の使用によるかして)移されるかも知れず、それにより、タンパク質は固相上の官能部と相互作用し、固定化を生ずる。次に、これらの合成タンパク質を組織又は細胞の抽出物で処理し、それにより、これらの組織又は細胞中に存在する酵素が合成タンパク質を修飾することができる。次いで最後に、そのような修飾を、蛍光標識抗ホスホチロシン抗体等の特異的検出系を用いて検出する。前記検出系から得られるシグナルを組織又は細胞の異なる抽出物により修飾した合成タンパク質の複製アレイと比較すると、複製合成タンパク質間のこれらのシグナルの相違から、これらの異なる組織又は細胞由来のタンパク質修飾活性における相違が示される。
【0027】
本発明の方法の別の態様において、タンパク質−タンパク質結合相互作用を遺伝子ライブラリーの創出によりスクリーニングし、次いで、前記ライブラリーを用いて、好ましくはmRNAから解離した全長の一次合成タンパク質の収量を最大にするようなベクター及び条件下で、IVTT等により合成タンパク質を生成させる。修飾アミノ酸又はアミノ酸配列タグの取り込みを通じて、あるいはタンパク質の化学修飾を通じて、あるいは化学反応性固相の使用により、合成した一次タンパク質を合成直後に又はタンパク質−タンパク質相互作用を形成させる二次タンパク質との相互作用後に固相に固定化することができる。出発遺伝子の適当な分布を通じて、タンパク質の修飾に関するスクリーニングの場合と同様に、一次タンパク質の小さなプール又は個々のタンパク質を、ミクロタイターウェル中又はガラスチップ上等のアレイ中で形成させ、これらのアレイに固定化する。次に、これらの合成した一次タンパク質を任意選択的に組織又は細胞の抽出物で処理してもよく、それによりこれらの組織又は細胞中に存在する酵素が合成タンパク質に対して修飾をもたらしうる。次に、前記一次タンパク質と適当な二次タンパク質との適当な結合相互作用を形成させるために、一以上の二次タンパク質(二次タンパク質のライブラリーを含む)を添加する。任意選択的に、これらの二次タンパク質を合成し、二次タンパク質の同一性がその後決定できるようにリボソーム又はファージ上に提示してもよい。
【0028】
また、二次タンパク質は、組織又は細胞由来の天然のタンパク質であってもよいであろう。次いで、一次タンパク質と二次タンパク質の間のタンパク質−タンパク質結合相互作用を種々の方法により検出することができる。例えば、一次タンパク質を固相上に固定化し、合成した二次タンパク質の存在を、蛍光標識抗タグ抗体等の特異的検出系を用いる検出で、二次タンパク質内に取り込まれたアミノ酸配列タグを介して決定することができる。あるいは、二次タンパク質がリボソーム又はファージ提示等に関してそれをコードする核酸と会合するときは、二次タンパク質を会合した核酸についてのPCR法により検出することができる。あるいは、二次タンパク質の結合は、前記アッセイ系で検出されて二次タンパク質が結合するとブロックされるようになる、合成した一次タンパク質上の部位のブロッキングにおける二次タンパク質の作用を通じて検出してもよい。あるいは、二次タンパク質が天然のタンパク質の場合、UV活性化が可能なビオチン分子の付加等により、結合後に直接標識化して直接検出してもよく、又は二次タンパク質をレーザー気化してMALDI(マトリックス補助レーザー脱着イオン化)及び質量分析法により検出してもよい。合成した一次タンパク質の複製アレイへの二次タンパク質の結合を組織又は細胞の異なる抽出物間で比較すると、複製した合成タンパク質間のこれらのシグナルにおける相違から、これらの異なる組織又は細胞由来のタンパク質−タンパク質結合活性における相違が示される。
【0029】
タンパク質の修飾の範囲を検出することにより、そしてタンパク質タグ又はエピトープに対する蛍光標識抗体の使用による等の慣用の検出フォーマットでタンパク質−タンパク質結合を検出することにより、多数の異なるタンパク質の修飾についての同時スクリーニングが、異なる組織及び細胞間の相違をスクリーニングするために行ないうるであろうことは明らかである。
【0030】
本発明の別の態様においては、タンパク質−タンパク質相互作用は、二次タンパク質、特に標準的な技術を用いて包括的に整列化させることが通常非常に困難であると思われる天然の組織又は細胞由来のタンパク質のアレイを形成させるための基礎として用いられる。一次タンパク質には、組織若しくは細胞抽出物由来の天然のタンパク質又はリボソーム若しくはファージに提示されたタンパク質ライブラリー由来の合成タンパク質等の二次タンパク質のセットに対する様々なセットの結合特異性を提供する免疫グロブリン等の高度に多様なセットのタンパク質が含まれる。一例として、一次タンパク質は、哺乳動物Bリンパ球由来の免疫グロブリン可変領域の直接PCR増幅により形成され、イン・ビトロ転写用の適当なベクターにクローニングされたリボソームに提示された単鎖抗体(SCA)可変領域ライブラリーから誘導されるであろう。SCAライブラリーの構成物は、ミクロタイターウェル中に別々に又は群として、又はガラスチップ等の固相上に直接のいずれかで整列させ、SCAタンパク質をIVTTにより形成させ、タンパク質タグを介し又は直接化学カップリングにより固相に固定化する。次いで、組織若しくは細胞抽出物由来の天然のタンパク質の混合物又は遺伝子ライブラリーに起源を有する合成タンパク質の混合物(例えば、リボソーム又はファージに提示されたタンパク質)を、SCAs等の一次タンパク質のアレイにまとめて添加し、それにより、一次タンパク質により二次タンパク質に伝えられる結合特異性が、個々のSCAsに結合する単一の二次タンパク質又は二次タンパク質群のいずれかを有する二次タンパク質の整列化に導く。達成された二次タンパク質のアレイを組織又は細胞の異なる抽出物の間で比較し、次いで、複製した合成タンパク質間のこれらのシグナルにおける相違がこれらの異なる組織又は細胞由来のタンパク質の存在における相違を示すことになる。あるいは、これらのタンパク質を、リン酸化等の種々の修飾を例えば、これらの修飾を検出する蛍光標識化抗体を用いることにより試験することもできる。
【0031】
アレイの個々の単一又は複数のタンパク質の構成物の存在又は修飾を異なる組織又は細胞抽出物間で比較するために、あるいは、生きた細胞又は組織上のこれらのタンパク質構成物の結合又は生物学的活性を分析するために、合成か又は天然のタンパク質を単一又は複数のタンパク質のアレイ中に分配することは、本発明の具体的な側面である。ミクロタイタープレートの個々のウェル中のcDNAライブラリー由来のクローン群の個々の構成物を分配することにより、アレイをそのプレート中で容易に行なうことができるが、この手動の(又はロボット管理の)整列化技術は、異なる試料間でウェルの壁という物理的バリアーを生じさせ、これは、洗浄溶液や二次タンパク質ライブラリー等のその後の溶液を迅速かつ正確に添加することを困難にする。さらに、ミクロタイタープレートの使用は、整列化したタンパク質の密度に対して一つの制限を与え、そのような制限は、利用可能なミクロタイタープレート内のウェルの密度により規定される。したがって、タンパク質間に物理的なバリアーなしにタンパク質の整列化を要しない方法が望まれる。
【0032】
タンパク質のアレイが物理的なバリアーなしに形成される本発明の別の態様においては、アレイ内のタンパク質の空間的な分布は、リボソーム提示等の遺伝子ライブラリーに由来する個々の合成タンパク質を直接空間的に固定化させることによるか、あるいは、タンパク質ライブラリーの構成物を間接的に空間的に固定化させるために合成タンパク質ライブラリーと会合した核酸がアニーリングする核酸、特に合成DNAを空間的に固定化することのいずれかにより達成される。直接の空間的固定化のためには、組織又は細胞遺伝子ライブラリー由来の合成タンパク質を固定化するか又は、二次タンパク質の混合物を次に添加でき、それにより、これらは個々のタンパク質プローブに対する結合特異性に従って空間的に分配されるであろうように、SCAs等の合成タンパク質プローブを固定化する。したがって、本発明は、新規な型のタンパク質チップを提供する(ハッチェンス(Hutchens)とイップ(Yip) 、Rapid Comms. Mass Spec. 7, (1993), 576頁を参照のこと) 。チップ上の合成タンパク質の固定化は、共有結合又は非共有結合のいずれかにより達成される。翻訳反応中にビオチン化リジンtRNAの添加によりタンパク質に取り込まれたビオチン部分を用いる固定化が、特に便利である。ビオチンを取り込むと、合成タンパク質分子は、次に、固相ストレプトアビジン又は固相抗ビオチン抗体上に容易に固定化することができる。典型的には、これは、イン・ビトロ転写及び翻訳により製造されたタンパク質試料を、マルチウェルプレートの特定の位置又はガラスチップ等の固相上に等分に分けることができるロボット分配機の使用により簡便化される。そのようなロボット分配機は、複製固相内の同一の位置で同一のタンパク質を固定化して作成する合成タンパク質の複製アレイを作製するのに特に重要である。ビオチン化リジンを用いる直接固定化に関連して、合成タンパク質中に取り込まれなかった遊離のビオチン化リジンtRNAは、いくつかの試料で、遊離のビオチン基が、固定化されたストレプトアビジン分子へのアクセスをブロックするという困難な問題を生じうる。都合のよいことに、これは、翻訳反応混合物中のビオチン化リジンtRNAの枯渇を確保することにより克服することができる(次いで、発生期のタンパク質は、非修飾リジンtRNAの添加により完成されうる);これに代わるストラテジーは、固相のビオチン結合部位数に比べて過剰のリジン結合ビオチン分子数を使用するか又はビオチン化リジンtRNA等の小分子を除去するための分子ふるい濾過工程の使用である。別のストラテジーは、翻訳期間の終わりにリジンの豊富な(ポリ)ペプチドをコードする合成mRNA鋳型を翻訳反応混合物中に添加することである。この鋳型は過剰の遊離ビオチン化tRNAを取り込むことが可能である。そのような鋳型は、反応混合物からリジンの豊富な合成タンパク質を除去するために後で使用できる(例えば、ポリヒスチジンテールに対する抗体を有するビーズを用いて)ペプチド配列(例えば、ポリヒスチジンテール)もコードするであろう。そのような様式で、合成タンパク質の固定化に先立ち、遊離のビオチン化リジン基は翻訳混合物から除去されるであろう。
【0033】
また、タンパク質の非共有結合による付着は、次にはアビジンと反応するSulfo−SBED(Pierce & Wariner, Chester, UK) 等の市販の試薬を用い、ビオチン等でタンパク質を標識することによっても容易にできる。タンパク質の共有結合による付着は、オーサリバン(OSullivan) ら(Anal. Biochem. 100 (1979), 108)に記載されたもの等のいかなる慣用の方法でも架橋を容易にする反応種で、タンパク質を活性化させることによっても達成されうる。タンパク質の付着は、固定化の達成手段として次に固相のニッケルキレートか又は抗ポリヒスチジン抗体に結合可能な末端のポリヒスチジン配列等の合成タンパク質内の特異的アミノ酸配列を包含させることによっても容易になりうる。合成タンパク質の直接結合の代替法には、例えば、RNA結合タンパク質(HIVtatタンパク質等)を用いて会合したRNAを固定化することによるか又は固相上の合成DNA分子にRNAをアニーリングさせることによるリボソーム提示タンパク質の結合が含まれよう。
【0034】
核酸を介するタンパク質の間接的な固定化に関しては、タンパク質−リボソーム−mRNA複合体中の会合したmRNAを、そのmRNAをコードするプラスミドベクターにより元々コードされるヌクレオチド配列タグとともに調製してもよい。ヌクレオチド配列タグは可変性であってもよく、例えば、(ベクターにアニーリングする適当な末端を有する)ランダムオリゴヌクレオチド混合物によりコードされる合成領域を用いてプラスミドベクターを作成して、例えば、mRNAの5’末端に配列標識をランダムに置くことにより、プラスミドベクター標品中でランダム化されてもよい。遺伝子ライブラリーからタンパク質−リボソーム−mRNA複合体を調製した後、mRNA配列タグを、スライドグラス(「DNAバイオチップ」)等の固相表面に個々に位置する合成オリゴヌクレオチドのアレイにアニーリングさせてもよい。このようにして、個々のタンパク質を、バイオチップ上の特定の位置に最後に配置してもよい。次いで、空間的に整列化されたタンパク質を、これらの修飾のスクリーニングのために蛍光抗体等を用いて組織又は細胞抽出物による修飾について分析してもよい。さらに、アレイは、バイオチップ上の個々のタンパク質に結合するかそのタンパク質を修飾するタンパク質の同定に使用してもよい。修飾されたタンパク質、又はタンパク質−タンパク質相互作用に関わるタンパク質の同一性については、前記チップ上に固定化されたオリゴヌクレオチドの知られた配列からその後に決定してもよく、それにより、この配列は、プラスミドライブラリー中の相補的配列タグと会合する特定の遺伝子を同定するために、(例えば、PCRにより)プラスミドライブラリーを探索するために用いられる。あるいは、タンパク質の同一性は、個々のタンパク質に会合するmRNA配列のPCR増幅により達成されてもよい。したがって、この態様は、原理的にはチップ上の個々の位置に配置された個々のタンパク質を有するタンパク質アレイバイオチップに関連する。あるいは、タンパク質の同一性は、一次又は二次合成タンパク質が生産されているかどうかをタンパク質配列タグに対する抗体の混合物等を用いて探索可能なタンパク質配列タグのランダムセットを用いて、決定してもよい。例えば、合成タンパク質は、一方の末端がアミノ酸のランダム又はセミランダムストレッチのいずれかを含み、その各々が適当な標識を有する抗体のライブラリー由来の抗体により検出可能なときは、一以上の特異的抗体の結合が合成タンパク質の同一性を決定することができる。例えば、タンパク質の一方の末端がランダムな8アミノ酸配列タグを含み、そしてSCAsのライブラリーが構築され合成ペプチドの等価な混合物に対するSCAsの結合が濃縮されているときは、個々の又は小さい群のSCAsは特異的ペプチドに結合し、そのペプチド(したがって合成タンパク質)は、個々のSCAsの特異性という知見により同定することができる。
【0035】
また、異なる組織又は細胞間の相違の分析に先立って、修飾されたタンパク質又は相互作用するタンパク質の混合物が予め選択されるという方法も、本発明に包含される。例えば、タンパク質をコードする個々のmRNA分子がタンパク質に付着したままであるリボソーム提示等の提示法により作製される一次合成タンパク質 を、組織又は細胞の抽出物による処理に付し、次いで、固相に固定化されたこれらの修飾に対する抗体を用いる選択に付す。こうして、会合した核酸を有する修飾されたタンパク質を単離し、例えば、アガロースゲル電気泳動等のPCR産物の単純分析及び異なる細胞又は組織での処理から得られる結果の比較を含むいくつかの手段により、単離されたタンパク質のプロフィールを決定することができる。同様に、タンパク質−タンパク質結合による二次合成タンパク質を「捕捉」するために次に使用される一次天然タンパク質に関しては、相互作用するタンパク質を、例えば、二次合成タンパク質上のタグに対する抗体及び前記合成タンパク質と会合する核酸由来のPCR産物の分析により再び決定される相互作用するタンパク質のプロフィールを用いて単離することができる。
【0036】
また、遺伝子ライブラリーから作製された合成タンパク質を、タンパク質の修飾又はタンパク質−タンパク質結合の分析用のタンパク質ゲル電気泳動に付す方法も本発明に包含される。タンパク質の加水分解又はリン酸化等の翻訳後修飾がタンパク質の電気泳動上の移動度を変化させることは、よく証明されている(フィジッキー(Phizicky)とフィールド(Fields) Microbiol. Rev., 59, (1995), 94頁) 。したがって、本発明の1つの態様は、疾患に関連するタンパク質の修飾が2Dゲル電気泳動を用いて検出される方法を提供する。例えば、その後のIVTT又はリボソーム提示用のcDNAライブラリーを構築することになろう。タンパク質のその後の精製を容易にするために、His又はFlag等の3タグを、用いる転写ベクター中に取り込んでもよい。これは、当業者によく知られた標準的な分子生物学的技術により達成される。タンパク質のその後の検出を容易にするために、それらを35S又はビオチン等の標識で翻訳過程中に標識してもよい。翻訳後、必要ならばタンパク質を精製して、例えば、タンパク質が3flag又はポリヒスチジンタグを有する場合抗Flag抗体又はニッケル等のリガンドを含むアフィニティー媒体に翻訳混合物を通過させることにより、抗リボソーム抗体を用いてリボソーム成分を固相上に除去することにより、あるいはリボソームの単純な限外濾過によりリボソーム及び他の因子を除去することができよう。次いで、臨床試料由来のタンパク質(未標識又は蛍光部との反応等を通じて標識された)を、精製したイン・ビトロ翻訳ライブラリーと共にインキュベートし、修飾したり又は合成タンパク質とのタンパク質相互作用を生じたりするであろう。次いで、全反応物を2Dゲル電気泳動により分離し(キャッシュ(Cash)、J. Chromatography 698 (1995), 203 頁) 、Phoretix−2D(Phoretix International, Newcastle upon Tyne, UK) 等の適当なコンピュータソフトウエアを用いて得られたゲルを分析することになろう。対照反応は、合成タンパク質ライブラリーが臨床試料代替物、例えば、最初の試料が疾患試料の場合は正常試料、由来の全タンパク質と反応するように行なうことになろう。疾患関連修飾又はタンパク質/タンパク質相互作用は、疾患試料で見られ、対照タンパク質では見られないユニークバンドとして同定されるであろう。2Dゲル分析により同定されたタンパク質に関連する遺伝子の迅速な同定を容易にするために、合成タンパク質ライブラリーを最初に、各プールがライブラリーの一部を含むようないくつかのプールに再分割することができる。これは、遺伝子の最初の混合物を分割することにより達成される。次いで、各プールを前記したようにスクリーニングして、目的のタンパク質を含むプールを同定することになろう。次いで、そのプールに対する転写混合物を再び細分割して、スクリーニング過程を繰り返す。この手法は、目的のタンパク質をコードする単一のクローンが同定されるまで、リボソームに提示されたタンパク質を段々小さくしたプールを用いて繰り返されるであろう。あるいは、2Dゲル分析による潜在的な疾患関連タンパク質の同定の後、そのタンパク質を標準的なプロトコールによりゲルから精製し(ハガー(Hager) とバーゲス(Burgess) 、Anal. Biochem., 109, (1980), 76 頁)、精製したタンパク質をscFvライブラリーで探索し、そのタンパク質を認識する抗体(1又は複数)を同定する。次いで、その抗体(単数又は複数)を用いて、疾患試料のcDNAから構築された合成タンパク質ライブラリーをスクリーニングし、会合した遺伝子タグを有するタンパク質を同定することになろう。タンパク質の同定のための代替となる高度に革新的な方法として、例えば、ベクター由来の若しくはベクターへのその後のクローニングのためのcDNAをコピーするために使用される合成オリゴヌクレオチドの混合物由来のクローニングされたcDNA中にリーダー配列を取り込むことにより、元々プラスミドベクターにコードされ、その後にタンパク質中に取り込まれるアミノ酸配列タグを持つ各組換えタンパク質を作成してもよい。ヌクレオチド配列タグは可変性であってもよく、例えば、(ベクターにアニーリングする適当な末端を有する)ランダムオリゴヌクレオチド混合物によりコードされる合成領域を用いてプラスミドベクターを作成し、mRNAの5’末端等に配列タグをランダムに置くことにより、プラスミドベクター標品中でランダム化されてもよい。IVTT又はリボソーム提示等によるタンパク質混合物の製造及び2Dゲル電気泳動によるこれらのタンパク質の分離後、個々のタンパク質を、配列の様々な並べ替えに特異的な抗体を用いる探索により分析することができよう。
【0037】
主な適用がヒト疾患又はヒトの健康管理、個体若しくは薬物治療状態に関連するタンパク質、タンパク質の修飾及びタンパク質−タンパク質相互作用の分析にあるであろうことは、本発明にとって自明である。本発明は、「臨床試料」の使用を取り込み、そのような用語は、組織、血液又は特定の疾患により影響されると予想されうるその他のものであってもよい試料をいう。疾患試料とは疾患、健康管理又は薬物治療状態により影響されると示唆されうる試料をいう。正常試料とは、疾患により影響されない試料をいい、正常な健康管理状態を表すが、個体間で変化してもよく、その後の薬物治療の結果に関連性があってもよい。疾患に関連するタンパク質又はタンパク質修飾/相互作用の探究における比較目的のために、正常及び疾患試料は、集団に誘導された不均一性を低減するように理想的に適合されるであろう。これは、ひとりの患者から正常及び疾患試料を得ること(例えば癌の胸部組織と癌に冒されていない胸部組織)により、あるいは、多数の異なる患者から疾患及び正常試料をプールすることにより達成してもよい。
【0038】
正常及び臨床試料の両方からのcDNAライブラリーの作製は、mRNAの単離後に逆転写によるcDNAを生成させることを含む標準的な技術により行なう(サムブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning: A Laboratory Mannual, 第2 版,Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))か、あるいは、PolyATract System(Promega, Southampton, UK)等の市販のキットを用いて達成してもよい。リボソーム提示によるイン・ビトロ提示及びタンパク質のイン・ビトロ提示に関する条件等の合成タンパク質の生成に適するベクターへのcDNAのクローニングは、以前に記載された通りである(例えば、ハーネス(Hanes) とプラックタン(Pluckthun) 、Proc. Natl. Acad. Sci. 94 (1997) 4937 頁に記載) 。試料からの全タンパク質の単離は、ボラーグ(Bollag)とエーデルスタイン(Edelstein)(Protein Methods, Wiley-Leiss, 1991) に詳細に記載されている標準的な方法で達成される。リボソーム提示−本発明の第2の態様において、リボソーム複合体が全長ポリペプチドに連結したままであるように、mRNAの3’末端でmRNAの翻訳を選択的に停止することによりリボソームからの全長ポリペプチドの発現を最大にする新規なイン・ビトロリボソーム提示法が提供される。本発明は、mRNA分子の特異的部位に結合したタンパク質がポリペプチドに会合したmRNA−リボソーム複合体の失速を可能にするmRNAのさらなる翻訳をブロックするであろうという発見に基づいている。また、本発明は、ポリペプチドのスクリーニングの直前に新規な翻訳開始を防止する任意の手段をも含む。
【0039】
まず、本発明の方法は、通常プラスミドベクター中にDNA分子のライブラリーの創出を含む、そのようなDNA分子は様々なポリペプチドをコードし、それにより、これらのポリペプチドをコードするDNAがmRNA分子に転写される。通常、DNA分子のクローニングベクターは、T7RNAポリメラーゼのプロモーター等の上流のプロモーターを含む。したがって、DNA分子のプールされたライブラリーを、例えば、T7RNAポリメラーゼ及びリボヌクレオチドの添加により転写し、mRNA分子のライブラリーを作製する。その後、RNA分子のライブラリーを大腸菌S−30画分等のリボソーム標品を用いて翻訳する(チェン(Chen H Z)とツバイ(Zubay G), Methods in Enzymology, 第101 巻 (1983) 674-690 頁) 。その後、連結したポリペプチド、リボソーム及びmRNAを含有するリボソーム複合体を、典型的には固相に固定化したリガンドへの結合に関してスクリーニングし、標的リガンドに結合するポリペプチドをコードするDNA分子を濃縮するための逆転写及びPCRによる増幅のため、生じた固定化複合体からmRNAを放出する。これらのDNA分子は、直接転写に使用可能であり、あるいは標的分子に結合するポリペプチドをコードするDNAの配列を決定するためにクローニングすることができる。本発明のこの態様に目的のため、DNA分子によりコードされるmRNAは、5’から3’にむかって、任意に可変セグメントの5’側に抗開始セグメントを有する可変セグメント、スペーサーセグメント及び終結セグメントを含有する3つのセグメントを含むと考えられる。ポリペプチドは、リボソーム複合体を介してmRNAの可変セグメントからタンパク質に翻訳されたタンパク質又はペプチド配列を意味する。可変セグメントは、全長のポリペプチドをコードするmRNA配列を意味する。スペーサーセグメントは、完成したタンパク質がリボソームから完全に現われ、かつ、リボソーム複合体を通じてコードするmRNAにまだ付着している間最適の三次元構造を採用することを可能にする可変セグメントにつながったタンパク質セグメントをコードするmRNA配列を意味する。終結セグメントは、直接若しくは間接に結合部が付着するmRNA配列、あるいは、翻訳をブロックするために特異的タンパク質が付着するスペーサーセグメントにつながって若しくは上流にポリペプチド結合部をコードするmRNAを意味する。結合部は、リボソーム複合体上のmRNAに結合可能ないかなる分子又は翻訳の停止を生じさせるリボソーム複合体上の翻訳されたポリペプチドに結合可能ないかなる分子のいずれかを意味する。通常、結合部は、配列特異的様式でmRNAに直接結合するか又は、合成DNA若しくはRNA分子をmRNAにアニーリング後にこれらの分子上のリガンドを介する結合部の付加等、mRNAに間接的に結合してもよい。任意の抗開始セグメントは、翻訳開始コドンに隣接し、異なる結合部の付着のための配列を通常提供する。抗開始セグメントは、翻訳されたポリペプチドのスクリーニングの直前の新規な翻訳開始を防止するであろう。標的リガンドは、特異的タンパク質の結合及び会合したmRNAのその後の回収に関してライブラリーをスクリーニングする対象である。
【0040】
mRNA分子の可変セグメントは、単鎖抗体(SCAs、重鎖及び軽鎖に由来し、共に連結して一官能性結合ドメインを生じる免疫グロブリン可変領域を含有する)等の全長の公知のポリペプチド型又はランダム又はセミランダム配列のいずれかを含有する。公知のポリペプチド型又は領域のランダム/セミランダム会合により創出されたキメラ配列も使用してもよい。SCAs等の公知のポリペプチド型に関しては、遺伝子の特異的セグメントを、SCAsにおけるCDRsのようにランダム化してもよい。公知、ランダム又はセミランダム配列をコードするDNA分子の大収集物を最初に製造し、次いで、転写ベクターにクローニングする。この転写ベクターは、以下に詳細に記載するその後のmRNA分子における封入に関して他のセグメントを提供する。通常、前記ベクターは、翻訳開始コドン及びmRNAに対するリボソーム結合部位をも提供するであろう。DNAによりコードされるさらに長いポリペプチド分子に関しては、翻訳を終結させるmRNAの停止コドンの存在を減らすか除去する必要があるであろう。特定のタンパク質にとっては天然である停止コドンを含むそのような停止コドンを、全長のポリペプチドを得るために除去することは、本発明の必要条件である。単鎖抗体等の公知のタンパク質をコードするDNAに関しては、これは、通常の停止コドンの除去かあるいは、停止コドンの位置で特異的アミノ酸を挿入するために翻訳反応でナンセンスサプレッサーtRNAの使用を単に要求するだけである。化学合成により製造されたランダム又はセミランダムDNAの混合物に関しては、いかなる特定の配列に存在する停止コドンの頻度は、合成反応中のDNA塩基組成の操作により低下させることができ、ナンセンスサプレッサーtRNAも、翻訳反応に使用することができるであろう。mRNA分子のスペーサーセグメントは、全長ポリペプチドをリボソームから十分に出現することを可能にして適切なタンパク質の折り畳み及び標的リガンドへの妨害されない接近を可能にするために、リボソームの溝にまたがる可変セグメントの下流のポリペプチド領域を提供する。通常、このセグメントは、50アミノ酸を越える領域をコードし、別のタンパク質由来の完全なドメイン等の全長ポリペプチド又は(Gly4Ser)10等のグリシン/アラニンの豊富なリンカーの折り畳みを妨害しそうにない領域をコードするであろう。いくつかの翻訳されたタンパク質に関しては、スペーサーセグメントは、タンパク質自体から連続する部分を含み、この部分は、可変セグメントの正しい折り畳み又は標的リガンドへの結合には要求されない。
【0041】
終結セグメントは、完全な可変セグメントの翻訳後の翻訳終結を防止するよう設計された結合部の直接又は間接付着のための下流のmRNA配列を提供する。結合部の特に好ましい結合方法は、終結セグメントに最初に付着する中間の合成オリゴヌクレオチド分子を間接的に用いることである。そのような合成ヌクレオチドを結合部の特異的結合部位に装着した場合、そのときは、結合部が今度はアニーリングされた合成オリゴヌクレオチドに結合し、それによりmRNAの下流端に付着して翻訳をブロックすることができる。この好ましい方法の一例は、その後にストレプトアビジンが結合し、よって翻訳をブロックする分子を提供する1以上のビオチン化ヌクレオチドを取り込んだオリゴヌクレオチドを使用することである。また、ストレプトアビジン等の分子の使用は、発生中のタンパク質がイン・ビトロ翻訳反応混合物中で取り込まれたビオチン化リジン(又は別のビオチン化アミノ酸)によりそれ自体ビオチン化されうる、発生中のタンパク質のmRNA分子への架橋の単なる可能性をも提供する。この好ましい方法の別の例は、次にはモノクローナル抗体若しくはその断片に結合しうる蛍光又はジニトロフェノール等のリガンドを有する1以上のヌクレオチド誘導体を取り込んだオリゴヌクレオチドを使用することである。また、これは、一方で合成オリゴヌクレオチドを介してmRNAに結合し、他方が翻訳されたタンパク質又はポリペプチド上のアミノ酸配列により翻訳されたタンパク質又はポリペプチドにも結合する二重特異性抗体等の二重特異性分子の使用も可能にする。その他の方法は、いかなる中間のアニーリング工程もなく直接特異的タンパク質が結合する配列を有する終結セグメントを提供することを含む。そのような結合部の一例は、鉄制御タンパク質(IRP)である。終結セグメントは、低濃度の鉄の条件下でのIRPの添加により安定化され、よってリボソーム翻訳に対して立体障害を生じさせるステム−ループ構造を提供するであろう。この後、発生中のペプチドの選択が起こりうる。リボソームを停止させるためのIRPの使用は、鉄の添加が翻訳を再開させそして終結させるように可逆的なブロックを導入する。これは、その後の転写、配列決定又はcDNAクローニングに関するポリペプチドの選択後にmRNAの放出を容易にするであろう。終結セグメント中の配列に結合するmRNA結合部のさらなる例は、TARと称するRNAステム−ループに結合するHIVタンパク質tat(ディングウォール(Dingwall)ら,PNAS, 第86巻 (1989) 6925-6929 頁)、RNPモチーフに結合するLa抗原(チャン(Chan E K L)とタン(Tan E M), Mol. Cell. Biol. 第7 巻 (1987) 2588-2591 頁)及び一本鎖若しくは二本鎖RNAのいずれかで、後者はヘアピンループを介してmRNAに創出可能な特異的RNA配列に結合するその他のRNAウイルス由来のタンパク質を含む。あるいは、終結セグメントは、翻訳終結の防止に関して結合部をさらに安定化させるために合成されたポリペプチド自体又はリボソームタンパク質複合体に付加的に結合する結合部の付着部位をコード可能である。任意に、終結セグメントは、lpp(大腸菌リポタンパク質)及びファージT3ターミネーター等のエキソヌクレアーゼに対するmRNAの安定性を高める1以上のさらなるmRNAの領域を含むであろう。本発明のこの他の主要な側面に関して、mRNAは、様々な結合部が合成オリゴヌクレオチド若しくは他の分子の最初のアニーリングを通じて間接的に、又はmRNA分子に対する直接的な認識及び直接的な結合部の結合を介してのいずれかで結合可能な様々な終結セグメントとともに製造することができる。
【0042】
隣接する任意の抗開始セグメントは、全長のポリペプチドを生ぜずそれ故に標的リガンドへの非特異的結合を提供する恐れのある不完全な折り畳みを有するポリペプチドを提供するかもしれない翻訳反応の後期で翻訳開始を防止するように設計される。抗開始セグメントは、例えば、シグナル認識タンパク質(SRP)が結合可能な翻訳されたポリペプチド中の分泌性リーダー配列をコードしてもよい。一旦、SRPがポリペプチドに結合したならば、ポリペプチドとmRNAとの架橋によりさらなる翻訳の停止を生じさせる。また、翻訳停止は、発生中のペプチド及びmRNAにそれぞれ結合するSRPのSRP54とSRP9/14サブユニットとの組合せを用いることによっても達成されるかもしれない(シーゲル(Siegel)とウォルター(Walter),Cell Biol., 第100 巻 (1985) 1913-1921)。抗開始配列の別の例は、下流のシストロンの翻訳を抑制する上流の22コドンを含むヒトサイトメガロウイルスgp48遺伝子のもの等の一定の真核細胞転写リーダーにより提供される(ガオ(Gao J) とゲバーレ(Geballe A P), Mol. Cell. Biol. 第16巻 (1996) 7109-7114 頁) 。そのようなリーダーは、下流のシストロンに対するリボソームの進行をブロックするペプチドをコードすると考えられる。抗開始配列のさらなる例は、前記した終結セグメント等の結合部により認識される配列であり、これらは、IRP、tat、La抗原及びその他のウイルスタンパク質により結合される配列を含む。
【0043】
したがって、本発明は、任意に抗開始セグメントを有する可変、スペーサー及び終結セグメントを有するmRNA分子をコードするcDNAライブラリーの組成物を提供する。好ましくは、本発明は、スペーサー及び終結セグメントをコードし、抗開始セグメントは任意であるDNAベクターを提供する。通常、DNAベクターは、翻訳開始コドンも提供し、原核細胞のリボソームを用いる翻訳に対しては、リボソーム結合部位はシャイン−ダルガーノ配列を含む。真核細胞の翻訳系に対しては、共通のGCCGCCACCATGGを有するコザックの翻訳開始配列を含んでもよく、翻訳開始部位から上流に、タバコモザイクウイルス等のある種のウイルス由来の非翻訳リーダー配列を含むエンハンサー又はアクティベーター配列等の翻訳を促進する他の公知の配列を含むことが望ましい。通常、DNAベクターは、RNAポリメラーゼとともに用いてDNAライブラリーに対応するmRNA分子のライブラリーを作製する強力な転写プロモーターも提供する。そのようなプロモーターには、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ及びSP6RNAポリメラーゼのものが含まれ、さらに、RNA依存性ポリメラーゼ、QbレプリカーゼのプロモーターもDNAによりコードされてもよい。DNAベクターは、例えば、大腸菌リポタンパク質のターミネーター又はファージT3の初期ターミネーター等の強力な転写ターミネーターも提供する。本発明の方法において、可変セグメントを含むDNA断片をDNAベクターにクローニングし、それによりDNA断片は最小の停止コドンを持つか全く持たない。SCAs等の公知のポリペプチド型をコードするライブラリーに関しては、DNA断片を適当な制限部位を用いて単一の方向にクローニングする。プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド及びウイルスベクターを含む様々な複製可能なDNAベクターを本発明の方法に用いることができることは当業者にとって明らかであろう。PCR等の方法によるDNA増幅を生きた細胞中のDNAの複製のための代替として使用できることも、明らかであろう。DNAライブラリーを創出するための可変セグメントが、DNA断片、合成DNA又は増幅したDNAのベクターライブラリーを含む多数の供給源から提供されうることも、明確であろう。また、可変セグメントは、エラーしやすいPCR等を用いて、固定された鋳型を用いる突然変異導入反応の結果として提供されうる。可変セグメントIRPは、生きた生物のゲノムから直接に又はその生物のmRNAのcDNAコピーからDNAを構成させうることも、明確である。例えば、DNAライブラリーが単鎖抗体断片を含有する場合、これらの断片は、免疫グロブリン可変領域をコードするmRNAに由来し、生物内でB細胞により発現されうる。あるいは、前記断片は、ゲノムの可変領域に由来することができる。そのような様式で、本発明は、ヒト等の特定の生物由来の単鎖抗体ライブラリーの創出を提供する。
【0044】
また、本発明は、任意に抗開始セグメントを有する可変、スペーサー及び終結セグメントを有するmRNA分子のライブラリーの組成物をも提供する。好ましくは、本発明は、スペーサー及び終結セグメントをコードし、任意に抗開始発現を有するmRNA分子のライブラリーを提供する。mRNA分子は、それぞれ、翻訳開始コドンを含み、原核細胞のリボソームを用いる翻訳に対しては、リボソーム結合部位はシャイン−ダルガーノ配列を含む。真核細胞のリボソームを用いる翻訳に対しては、mRNAは、5’キャッピングヌクレオチドとともに合成されてもよく、あるいは、これは、前もって合成されたmRNAに酵素により導入されてもよい。翻訳開始部位から上流に、共通のコザックの翻訳開始配列及びある種のウイルス由来の非翻訳リーダー配列を含むエンハンサー又はアクティベーター配列等の翻訳を促進する他の公知の配列をも含まれてもよい。翻訳過程の前に又は最中に、1以上の結合部をmRNA分子の終結セグメントと会合するようにし、よって、翻訳を失速させるであろう。また、翻訳過程の最中に、1以上の結合部をmRNA分子内又はmRNA分子にコードされる任意の抗開始セグメントに会合するようにし、よって、新規な翻訳の開始を防止してもよい。
【0045】
また、本発明は、任意に抗開始リーダー配列を有する可変及びスペーサーセグメントを有する翻訳されたポリペプチド分子のライブラリーの組成物をも提供する。これらのタンパク質分子は、結合部とmRNAとの相互作用を介してリボソーム内に引き止められたさらに長いポリペプチドの一部として全長の可変セグメントを提供する。ポリペプチドの5’末端
本発明は、リボソームとの作用に関し、よって、mRNA分子上のさらなる翻訳を防止する。あるいは、5’末端は、5’末端の相補的配列への合成オリゴヌクレオチドのアニーリングし、合成オリゴヌクレオチド中に取り込まれたビオチン分子を介する等のその後の結合部のこのオリゴヌクレオチドへの結合等を介して、間接的に結合部と会合するようになってもよい。
【0046】
本発明の方法の範疇において、様々な手段を用いて、特にRNAseによる分解からmRNA分子の安定性を最適化することは、当業者にとって明らかであろう。例えば、Rnasin及びバナジルリボヌクレオシド複合体等のRNAseの様々な阻害剤を転写反応に使用することができる。
【0047】
代替として又は追加として、様々な構造が、通常、転写のターミネーターにより提供されるもののような3’ステム−ループを含むmRNA分子に含まれうる。また、転写及び翻訳反応は別々に行なわれるか又は特に原核細胞系を用いて、共役したイン・ビトロ転写/翻訳反応に結合されるかのいずれかであることは、当業者にとって明らかである。好ましくは、転写及び翻訳反応は、異なる最適試薬を要求するであろうmRNA及びポリペプチドの産生を最適化するために別々に行なう。
【0048】
本発明の方法の範疇で、様々な手段を用いてタンパク質分子の折り畳み及び特にプロテアーゼによる分解からタンパク質分子の安定性を最適化することは、当業者にとって明らかである。正しいタンパク質の折り畳みに関しては、例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ等の分子シャペロンの使用を通じて、ジスルフィド結合の形成を最適化するための特別の手段で、最適の酸化的タンパク質折り畳み条件を翻訳反応に使用する。安定性に関しては、大腸菌のペプチドタグ付加システムは、ハーネス(Hanes) とプラックタン(Pluckthun) (同書)の方法等の方法を用いて、ssrA RNAの阻害により機能停止されうる。一旦最終のポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体が形成されたなら、クロラムフェニコール等の標準的な翻訳阻害剤を用いてこれらの複合体を安定化させることが有益であるかもしれない。ポリペプチド鎖及び/又はmRNAとリボソームとの追加の化学的、光化学的又は酵素的架橋も有益であるかもしれない。例えば、酵素トランスグルタミナーゼは、発生中のポリペプチド鎖上に位置するC末端グルタミンを使用して用い、遊離のアミノ基に架橋するための基質を提供してもよく、好ましくは相補的合成オリゴヌクレオチドを使用してRNA分子の3末端に提供する。代替例として、化学的に修飾したアミノ酸(セレニウムアミノ酸等)を、チオール化ヌクレオチド等の化学的に修飾したRNAヌクレオチドとのその後の反応にために、タンパク質鎖中に取り込む。
【0049】
一旦ポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体が形成されたなら、次いで、うまく結合した複合体を連続的に回収できるような様式で、標的リガンドへの結合に関して、混合物をスクリーニングすることができる。これは、プラスチック若しくはガラス表面又はラテックス若しくは磁気ビーズの表面等の固相上に固定した標的リガンドへの結合により達成されうる。本発明の他の態様は、細胞及び組織への結合並びにポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体を形成するために使用したのと同じmRNAによりコードされるタンパク質分子を含有する溶液中の他の分子への結合を含む。また、これは、その後に複合体の分離の基礎を提供する別の反応又は一連の反応に影響を及ぼす標的リガンドの結合によっても達成することができ、例えば、ここで、細胞の表面での標的リガンドへの結合は、表面抗原の出現等のその細胞における変化を生じさせ、それにより、その細胞は、結合したポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体とともに集団内の他の細胞から分離することができる。
【0050】
別法として、ポリペプチドを特定の酵素活性に関してスクリーニングすることができ、それにより、標的リガンドは、例えば、酵素に不可逆的に結合する酵素基質であり、又は、ここで、基質は酵素により、ポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体に結合できるか又は酵素活性を含むポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体の全混合物から分離できるようにある種の他の変化を及ぼすことができる産物に変換される。
【0051】
標的リガンドへの非特異的結合を回避するために、様々なブロッキング剤を、特にmRNAと標的との非特異的会合を回避するために、標的リガンドとのインキュベーションの際にポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体に添加する。血清アルブミン又はカゼイン等の様々な標準ブロッキング剤が有益であるが、非特異的mRNA結合を特異的にブロックする好ましい方法は、合成オリゴヌクレオチド及び逆転写酵素を用いてポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体の結合の前にcDNAを生成させることである。標的リガンドへの結合後に、mRNA:cDNAハイブリッド中のmRNAを分解するRNアーゼHを用いるmRNAのその後の酵素による破壊を可能にするが、この工程の使用は、酵素による分解からのmRNAの保護をも提供する。
【0052】
一旦、ポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体が標的リガンドへの結合により分離されたなら、その複合体を標準法により調製的に精製するか又はEDTA等を用いて単にRNAを放出させるか又はcDNAへの逆転写の前に単に加熱するかのいずれかが可能である。あるいは、mRNAを、ポリペプチド/リボソーム/mRNA複合体の結合の前にcDNAにコピーし、次いで、前記したようにRNアーゼHで破壊することができる。次いで、PCR等の方法によるcDNAの増幅が行なわれる。次いで、増幅したDNAを、ライブラリーをさらに分割するために再び転写及び翻訳するか又はサブライブラリーを作製するためのクローニングすることのいずれかができる。標的リガンドに結合するポリペプチドが突然変異により進化する分子進化ストラテジーに関しては、突然変異導入は、エラーしやすいPCR等を用いるcDNAの増幅の段階で影響されうるか又はポリペプチドをコードするDNAセグメントの特異的領域に突然変異を導入する混合オリゴヌクレオチド等を用いて、クローニングされたサブライブラリーを突然変異導入に付すことにより影響されうるのいずれかである。必要ならば、転写/翻訳用の最初のDNAライブラリー又はスクリーニング後のサブライブラリーを、スクリーニングに付されたポリペプチドの混合物の複雑さを低下させるために、スクリーニング用のプール又は個々のクローンに再分割することができる。DNAライブラリー由来の1以上のポリペプチドを最終的に同定した後、次いで、必要ならばスペーサーセグメント又はいかなるその他のフランキングセグメントなしに高レベルの所望タンパク質を製造するために、目的の特定のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターにサブクローニングすることができる。
【0053】
本発明は、SCAs等の公知のポリペプチド型の改変体又は現存するタンパク質よりも優れた生化学的若しくは生物学的活性を有する全体的に新規なタンパク質の単離を含む様々な適用を有することは、当業者にとって明らかであろう。公知のポリペプチド由来の領域と新規なポリペプチド配列の領域とのハイブリッドとして創出されたキメラタンパク質も、製造されるかもしれない。抗体等の複数鎖ポリペプチド型に関しては、重鎖及び軽鎖可変領域の機能的又は新規な組合わせも製造されるかもしれない。
【0054】
生物学的スクリーニング−本発明の第3の態様において、DNAライブラリーによりコードされポリペプチド提示を介して発現される生物学的表現型を直接選択する新規な方法が提供される。前記方法は、提示されたポリペプチドの結合表現型の前知識を要することなく、生物学的表現型と遺伝子型との直接な連結を提供する。本発明のこの態様の1つの側面において、提示された生物学的に活性なポリペプチドの結合による生物学的応答の刺激(又は阻害)は、標的の生きた細胞での変化を生じさせ、このことは変化した細胞の分離の基礎を提供する。次には、生物学的に活性なポリペプチドをコードする1又は複数の遺伝子が、変化した細胞の回収を介して次いで回収されうる。この態様の別の好ましい側面において、提示された生物学的に活性なポリペプチドの結合による生物学的応答の刺激(又は阻害)は、標的の生きた細胞からの分子(本明細書において「モジュレーター」と称する)の製造(又は製造の休止)を生じさせ、このことは、次には生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子の回収に導く。本発明は、以下のように、生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子の2つの広範な回収方法を提供する。
【0055】
(1)「タグ付加」−この方法において、標的の生きた細胞により製造されたモジュレーターは、提示されたタンパク質/ポリペプチドを含む複合体に結合し、よって、その後の単離のためにこの複合体にタグを付加する。例えば、標的の生きた細胞は、生物学的に活性なポリペプチドの結果として、そのポリペプチドをコードするmRNAを含む生物学的に活性なポリペプチドを提示するリボソーム複合体に結合するタンパク質又はタンパク質性複合体を生成するかもしれない。モジュレーターと生物学的に活性なポリペプチドを提示する複合体との好ましい結合は、例えば、標的細胞の表面で又は標的細胞内で、この複合体の標的の生きた細胞への非常な接近の結果としてであろう。標的細胞によるモジュレーターの製造後、次いで、提示されたポリペプチドを含むタグ付加複合体を、例えば、モジュレーターに結合して生物学的に活性なポリペプチドを提示する複合体を生物学的に活性なポリペプチドを欠く他の複合体から分離する抗体を用いることにより、単離することができる。これらの複合体を分離した後、生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子型を決定することができる。リボソーム提示におけるその適用に加えて、タグ付加法は、生きた微生物を用いるポリペプチド提示法とともに用いることもできる。例えば、モジュレーターを用いて、その後のタグ付加ファージの単離及び生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子の回収のためにバクテリオファージにタグを付加する。
【0056】
(2)「相補性」−この方法において、標的の生きた細胞により製造されたモジュレーターは、生きた微生物のその後の生存力に必要である。例えば、標的の生きた細胞は、生物学的に活性なポリペプチドの結果として、生物学的に活性なポリペプチドを提示する欠陥バクテリオファージの感染能を回復させるのに必要なモジュレーターを製造し、それによりそれをコードする遺伝子を含む。次いで、感染能の回復の際に、バクテリオファージを、生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子を増幅するために、感染した宿主を通じて増殖することができる。モジュレーターと生物学的に活性なポリペプチドを提示するバクテリオファージとの好ましい結合は、例えば、標的細胞の表面で又は標的細胞内で、この複合体が標的の生きた細胞に非常に接近したことの結果としてであろう。バクテリオファージの増幅後、生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子型を決定することができる。バクテリオファージ提示におけるその適用に加え、相補性方法も、生きた細菌を用いるポリペプチド提示法とともに使用できるであろう。例えば、モジュレーターは、適当な選択条件下で、標的の生きた細胞に非常に接近した細菌の選択的生育を可能にし、よって、生物学的に活性なポリペプチドをコードする遺伝子型の増幅を可能にする抗生物質、薬剤耐性酵素/因子又は必須栄養素でありうる。
【0057】
タグ付加又は相補性方法のための標的の生きた細胞から放出されたモジュレーターが、例えば、誘導されたリポソームの溶解を介するリポソーム又は他の分子区画からのこれらの放出により、間接的にタグ付加又は相補性部をも提供でき、ここでモジュレーターはホスホリパーゼ又はある種のリポポリサッカリドに基づくリポソーム、ガラクトシダーゼ等であることは、当業者にとって明らかであろう。リポソーム又は他の分子区画から放出された可能なタグ付加部又は相補的部の中では、核酸又は感染性微生物でありうる。放出された核酸は、アニーリングにより提示された生物学的に活性なポリペプチドを含むリボソーム複合体のmRNA又はrRNA成分にタグを付加することができる合成オリゴヌクレオチドを含有することができる。放出された感染性微生物は、生物学的に活性なポリペプチドを提示する細菌細胞に感染し、その細胞のその後の生存力、よって遺伝子型の増幅につながる1以上の遺伝子を提供することができることができるバクテリオファージを含みうる。放出されたモジュレーターは、基質をタグ付加部又は相補性部として作用する産物に変換する効果を有する酵素でもありうる。モジュレーターが、そのような放出が生物学的に活性なポリペプチドによりブロックされうる標的細胞から構成的に放出されうることも当業者にとって明らかであろう。また、生物学的に活性なポリペプチドによる結合の結果として、標的の生きた細胞中の他の変化が、タグ付加又は相補性のいずれかに生じるということも自明である。例えば、標的の生きた細胞中の生物学的な変化は、生物学的に活性なポリペプチドを含む複合体又は微生物との相互作用のために放出されるモジュレーターを含むリポソームを有するその細胞の融合に導くかもしれない。
【0058】
本発明のこの態様を実施するための最初の方法において、異なる遺伝子を含むプラスミドのライブラリーを、転写及び次いで、哺乳動物細胞で生物学的効果を試験するポリペプチド分子に翻訳する。具体的には、プラスミドライブラリーは、RNAポリメラーゼのプロモーターの下流にクローニングされ、mRNA転写物を生成し、次いでイン・ビトロで翻訳される遺伝子のライブラリーを含む。次いで、そのRNAがまだ会合したままの翻訳されたポリペプチド混合物を、細胞に投与して細胞の表現型の変化が測定される。次いで、所望の変化した表現型を有する細胞を単離し、リボソーム/ポリペプチド複合体にまだ会合したままのmRNA分子に特異的なプライマーを用いるPCRに付す。この様式において、所望の細胞表現型効果を誘導するポリペプチドをコードする遺伝子を増幅し、配列を決定し、遺伝子によりコードされるタンパク質のその後の再試験のために発現ベクターに再クローニングするか転写ベクターに再クローニングすることができる。したがって、エラーしやすいPCRの使用等による突然変異導入ストラテジーの使用を通じて、タンパク質は、最大の生物学的活性を有するポリペプチドを生成させるために、必要な表現型の誘導のための連続回の試験を通じて進化されうる。
【0059】
転写され、mRNAが翻訳されるプラスミドベクターの代替として、他の方法を本発明の範囲内で使用し、決定可能な遺伝子型に連結したポリペプチドを製造してもよく、そのような方法は、バクテリオファージ粒子の表面上でのタンパク質の提示用のバクテリオファージベクター及びこのポリペプチドをコードするDNAに結合することを試験されるポリペプチドを生じさせるDNA結合ポリペプチドに融合するポリペプチドをコードするプラスミドベクターを含む。
【0060】
決定可能な遺伝子型に連結したポリペプチドを製造し、本発明は、標的の生きた細胞で生物学的な活性を誘導するための方法の範囲を提供し、それにより生物学的な活性の遺伝子型を決定することができる。1つの単純な方法は、細胞表面マーカーの出現又は消滅により生物学的な活性を検出することであり、そのマーカーは、次いで、生物学的に活性な細胞を不活性な細胞から分離するための基礎として使用することができる。通常、これは、細胞表面マーカーに結合する抗体を用いて、次いで抗体結合細胞を未結合細胞から分離するための方法を用いて達成されるであろう。そのような方法は、抗体への磁気ビーズの結合を介する(例えば、ビーズ会合抗免疫グロブリンを用いて)か又は蛍光標示式細胞分取法(FACS)を介するものであり、それにより、抗体(又は二次抗体)を蛍光標識する。要求される生物学的な活性を有する細胞を単離し、次いで、対応する遺伝子型を、試験ポリペプチドと会合した核酸のPCRによる増幅か又は分離した細胞に結合したバクテリオファージの増殖により決定することができる。
【0061】
遺伝子型に対して生物学的な活性を連結する別の方法は、試験ポリペプチドをその遺伝子型に連結する複合体に直接結合する1以上のタグ付加部を製造(又は製造を中断する)ために、標的細胞を操作することである。例えば、細胞を操作して、mRNA/リボソーム/ポリペプチド複合体と会合するmRNAに結合するRNA結合ポリペプチド(HIV tatタンパク質等)を製造する。そのようなプロモーターの一例は、T細胞受容体の刺激等の結果として活性化されたIL−2プロモーターである。このRNA結合ポリペプチドは、生物学的効果の一部として活性化されたプロモーターに連結してもよく、生物学的効果の一部として活性化された別のポリペプチドに関連した融合タンパク質として製造してもよい。細胞溶解又は試験ポリペプチドの生物学的に活性な細胞への結合の他の放出後、次いで、mRNAを、タグ付加部に結合する抗体等を用いて単離することができる。また、細胞を操作して、損傷したファージにおける他のポリペプチドを相補可能なバクテリオファージポリペプチドを製造し、よって、そのファージを感染性にしてもよい。
【0062】
生物学的な活性が細胞表面マーカーの出現又は消滅により伴う場合において、本発明の別の適用は、この表面マーカーをタグ付加部又は相補性部の放出又は創出に関連付けることである。これは、例えば、様々なタグ付加部又は相補性部を放出するためにホスホリパーゼC(又はある種のリポポリサッカリドを含むリポソームに対してはβ−ガラクトシダーゼ)によるリポソームの酵素による溶解により、あるいは例えば、反応性ビオチン部を創出させるためにビオチニル−チラミドの西洋ワサビペルオキシダーゼによる酵素による変換により、細胞表面マーカーに結合しその後タグ付加部又は相補性部の放出を触媒する抗体−酵素コンジュゲート等の使用により達成することができる。
【0063】
表面抗原に対する代替として、細胞内で製造された部分を選択の基礎として使用することができることは、当業者により理解されるであろう、それにより、生物学的応答の刺激(又は阻害)の後に細胞を浸透性にし、この部分を抗体等の結合タンパク質により接近させるか、又はタグ付加部若しくは相補性部が最終的に創出され次いでポリペプチド提示複合体に結合できるような方法で、酵素による変換のために使用する。
【0064】
リガンド指向スクリーニング−本発明のこの態様は、表面受容体の付近で分子を標識するために、細胞又は組織の表面に受容体を結合するリガンドを用いる方法を提供する。特に、本発明は、細胞表面上のリガンドに付着した別の分子を案内するためのリガンドを使用し、ここで、この他の分子は、次いで、標識反応を行なうことができる。特に、この態様は、提示されたタンパク質をコードする対応する遺伝子を単離することができるように、リガンドの付近で細胞/組織に前もって結合した提示されたタンパク質の標識を提供する。以下の本明細書において、受容体という用語は、リガンドが結合できるタンパク質性部分をいう。リガンドという用語は、受容体に結合する通常はタンパク質の分子をいう。結合タンパク質という用語は、DNAライブラリーによりコードされるタンパク質をいう。タンパク質−複合体とは、結合タンパク質と核酸との複合体をいい、それにより、標的分子に結合する際に、結合タンパク質をコードする個々の遺伝子は結合タンパク質が再生できるように回収することができる。標識とは、標識部により放出され、かつ、標識−受容体を介してタンパク質−複合体と結合又は反応可能な分子をいう。標識部とは、一般に、その後に標識の放出を触媒することが可能な酵素をいう。標識−受容体とは、標識な結合するタンパク質−複合体上の部位をいう。
【0065】
本発明のこの態様の好ましい特徴は、リガンドに隣接して直結したタンパク質−複合体を標識する標識を提供するための標識部としてのリポソームの使用であり、それにより、リガンドは、リガンドの付近で包まれた内容物を放出させるリポソームと会合するか又は会合するようになりうる。これは、本発明の方法における異なる標識の使用での多用途性を提供する。US5196306に記載の酵素活性化系等の他の標識系も、本発明の方法の範疇で使用することができる。
【0066】
この態様の好ましい特徴は、それぞれがmRNA分子、1以上のリボソーム及び1以上の翻訳されたタンパク質を含有するタンパク質−複合体の使用である。そのような複合体において、1又は複数のタンパク質は、1又は複数の結合タンパク質として作用し、それにより、うまく結合した際に、タンパク質−複合体を回収することができ、mRNAは、cDNAへの変換、一般にはPCRを用いて、及びその後の転写(合成DNAにより導入された転写プロモーターにより)又は複製可能なベクターへのクローニングにより、通常複製される。この態様の別の好ましい特徴は、タンパク質−複合体が派生されうる複製可能な核酸遺伝子ライブラリーである。他のタンパク質のライブラリーは、外部アミノ酸及びタンパク質構造/形の変化を有する保存された内部タンパク質枠組みをコードするライブラリーをも特に使用することができるけれども、一般に、このライブラリー由来の遺伝子は、抗体可変領域(一般に、単鎖Fv’s又はscFvsの型で)をコードする。タンパク質−複合体を、標識されたタンパク質−複合体が未標識タンパク質−複合体から優先的に単離できるような方法で、標識により標識できることは、本発明の態様の必要条件である。
【0067】
好ましくは、本発明のこの態様において、細胞又は組織切片の表面で前もってキャラクタライズされていない受容体に結合するタンパク質性リガンドが提供される。前記リガンドは、化学結合による細菌性ホスホリパーゼC(PLC)との結合前に直接結合されるか又は通常PLCにコンジュゲート化した抗リガンド抗体自体等との結合後に間接的に結合される。リガンドの細胞への結合後に、DNAライブラリーに由来するタンパク質−複合体を細胞/組織に添加してタンパク質成分を細胞/組織に結合させ、過剰の非結合剤を洗浄により除去する。これは、そのリガンドのキャラクタライズされていない受容体に実際に結合したものを含む結合したリガンドに非常に近接したいくつかの複合体を含む表面に結合したタンパク質−複合体の多重度のままに細胞又は組織を有効にしておく。次の工程で、標識を包むリポソームの標品を添加する。リポソームと表面に結合したタンパク質−複合体を有する細胞又は組織との接触の際に、脂質の頭部を分解してPLCの接触点でリポソームを脱安定化させるPLCとの接触を通じてリポソームの溶解のみが起こるであろう。これは、リポソームからの標識の漏れとなる。
【0068】
標識がPLCの接触部位から拡散されうる間、適当な標識がPLCの付近のみの適当な標識受容体と効率的に反応することができることは、本発明の原理である。そのような標識は、通常、アニーリングした合成オリゴヌクレオチドによりmRNA成分上で、タンパク質−複合体と会合したビオチン分子と強固に結合可能なストレプトアビジンである。代替標識は、適当なmRNA分子上のヘアピン−ループ(TAR)に結合可能なHIV tatタンパク質又はそのペプチド断片である。隣接するタンパク質−複合体と反応させ、過剰のリポソーム及び標識を細胞/組織から洗浄除去し、標識されたタンパク質−複合体を回収する。回収は、通常、固定化された標識又は標識誘導体(ビオチン等)又は標識に特異的に結合する抗体(抗ビオチン、抗tat等)を用いて行なうことができる。タンパク質−複合体の遺伝子成分は、EDTA等の添加によい優先的に除去さてmRNA/リボソーム/タンパク質複合体を解離することもできるけれども、様々な手段を用いて、タンパク質−複合体を解離させることなく、細胞/組織表面から標識したタンパク質−複合体を除去することができる。次いで、回収された標識されたタンパク質−複合体又はタンパク質−複合体の遺伝子成分は、核酸分子の数を拡大させて適当な複製可能なベクターへのDNAのその後の再クローニングを容易にするために、転写/翻訳を用いる場合は、遺伝子増幅に使用した合成DNAを介して導入したプロモーターによるその後の転写を可能にするために、核酸増幅に付すことができる。したがって、リガンドに近接した細胞/組織に結合する1以上の結合タンパク質をコードする遺伝子は、それ故に、受容体の分子単離及び恐らく細胞内部へのシグナル伝達において受容体により活性化される分子を含むかもしれない受容体付近の分子の分子単離をもを容易にする豊富な結合タンパク質源を提供するために単離することができる。
【0069】
受容体の分子単離を容易にすることに加えて、本発明のこの態様の方法により単離された結合タンパク質は、それ自体、細胞/組織結合のその後のラウンドのリガンドとして有効に使用することができ、それにより、最初の結合タンパク質は、それ自体、1以上のPLC分子にコンジュゲート化又は付着化される。細胞/組織への受容体部位でのこれらの結合タンパク質−PLCコンジュゲートの結合後、次いで、遺伝子−由来タンパク質−複合体のライブラリーを細胞/組織への結合のために添加する。適当なライブラリーから、これは、受容体自体の天然のリガンド結合部位に及び受容体の付近の他のタンパク質にも両方に結合する結合タンパク質を提供するだろう。PLC分子との接触の際のリポソームの添加と溶解の際に、新規なタンパク質−複合体をその後の単離又は濃縮を可能にするストレプトアビジン又はtat等の標識で標識する。これらの標識された結合タンパク質−複合体における結合タンパク質をコードする遺伝子の回復により、受容体及び隣接する分子の単離のための多数の追加の道具が提供されるかもしれない。しかしながら、より望ましいいくつかの場合において、1以上の新らしく標識されたタンパク質−複合体が天然のリガンド結合部位に結合し、よって、天然のリガンドの結合をブロックするか又は受容体の活性化において天然のリガンドと置換するか又は天然のリガンドにより正常にアップ−レギュレーションされた活性の受容体により誘導されたダウンレギュレーションを通じて受容体でアンタゴニスト様の応答を誘導する新規の結合タンパク質を提供するだろう。いくつかの場合において、個々の結合タンパク質は、医薬候補分子を提供するであろう。
【0070】
本発明のこの態様の方法は、その内のいくつかは標的受容体に結合するかもしれない異なるタンパク質型をコードする遺伝子のコレクションを含有するDNAライブラリーを用いて通常行なわれるであろうことは、当業者により認識されるであろう。
【0071】
リガンド分子は、直接若しくは間接のいずれかで付着可能であり、標識部が標識を放出してタンパク質−複合体に付着可能な天然のタンパク質性又は非タンパク質性のいかなる分子でもありうるということは、当業者により認識されるであろう。
【0072】
結合タンパク質は、いくつかの分子型に基づきうることは、当業者により認識されるであろう。タンパク質型が通常抗体可変領域によりコードされる抗体であろうが(通常、単鎖Fv’s又はscFvsの型で)、他のタンパク質は、特に保存された内部タンパク質の枠組みを有するものも使用可能であり、それにより、外部アミノ酸における変化及びタンパク質の構造/形は、異なるタンパク質分子のライブラリーを創出するであろう。そのような非抗体タンパク質分子に採用される形のいくつかは、比較的平らな結合面を有する他のタンパク質分子への結合に適するが大きなタンパク質性リガンドを適応させるための凹状等の複雑な形を有するタンパク質分子への結合にはあまり適さない抗体自体よりも、標的受容体への結合により適合するかもしれない。
【0073】
タンパク質−複合体は複数の型の内の1つでありうるし、それにより、結合タンパク質が直接又は間接のいずれかでそれをコードする核酸配列に連結するということは、当業者により認識されるであろう。好ましい態様において、タンパク質−複合体は、すでに終結してリボソームよってmRNAとの会合から遊離するようになる翻訳されたタンパク質にとって好ましいように複合体の収量を最適化するように設計された条件下で、mRNAの翻訳により形成されたmRNA/リボソーム/タンパク質の複合体である。他の態様において、タンパク質−複合体は、ファージ表面に結合タンパク質を提示する遺伝子ライブラリー由来のバクテリオファージ粒子を含有するであろう。
【0074】
あるいは、タンパク質−複合体は、細菌表面に結合タンパク質を提示する遺伝子ライブラリー由来の細菌粒子を含有するであろう。他の態様は、lacIと結合タンパク質との融合物を含有するlacI融合タンパク質を含むであろう、それにより、lacは、結合タンパク質をコードするプラスミド並びにバキュロウイルス及びレトロウイルスを含む他のウイルスタンパク質提示系上のlacオペレーターに結合する。
【0075】
標識は、標識を放出する標識部の付近でタンパク質−複合体中の他のタンパク質性分子又は核酸分子に結合可能な多くの分子の内の1つでありうることは、当業者により認識されるであろう。また、対応する標識受容体は、標識に適合するいくつかの分子の内の1つでありうることも、当業者により認識されるであろう。適する標識(及び標識受容体)は、ストレプトアビジン(ビオチン)、tat(mRNA上のTARヘアピンループ)、シグナル認識粒子(SRP)(タンパク質の真核細胞リーダー配列)、抗体(抗原)、RNA結合分子(mRNA)、特異的タンパク質結合分子(タンパク質の結合配列)、F線毛(バクテリオファージF受容体)及びニッケル(タンパク質上のヒスチジン「タグ」)を含むであろう。
【0076】
標識部は、通常、標識の放出を生じさせる酵素であろうことは、当業者により認識されるだろう。そのような標識部は、PLC(リポソーム、赤血球又は他の細胞の溶解用)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(ビオチン化チラミド用)及び細菌酵素β−ガラクトシダーゼ(グリコリポソームの溶解用)を含むであろう。
【0077】
他のリポソームの溶解機構は、酵素溶解に対する代替として本発明の範囲内で用いられうることは、当業者により認識されるであろう。例えば、受容体へのリガンド結合をまだ可能にするような様式で、脂質尾部でリガンドをリポソーム膜にカプセル化することによる等の直接的に、又は表面抗体で飽和させたリポソーム若しくはリポソームをリガンドに標的化させる他の結合タンパク質を用いることによる等の間接的にのいずれかでリポソーム全体をリガンドに付着することは、可能であるかもしれない。そのような環境下では、リポソーム溶解は、界面活性剤による溶解又は加熱又はリポソーム溶解を達成させる他のいかなる方法により単純に達成されうるであろう。
【0078】
本発明の方法を用いて、タンパク質−複合体を標識することよりもむしろ受容体の付近で受容体及び他の分子を直接標識することができることは、当業者により認識されるであろう。例えば、ストレプトアビジンを含むPLCをコンジュゲートしたリガンド及びリポソームを用いて、ビオチン−NHSエステル等を用いて細胞/組織全体を化学的にビオチン化することができ、次いで、PLC−リガンド及びその後のリポソーム溶解を、受容体を含むリガンドの付近で特異的にストレプトアビジン分子を置くであろう、よって、それはストレプトアビジンで標識されるようになり、固定化されたビオチン等を用いる分子分離の基礎を提供するであろう。
【0079】
タンパク質−タンパク質相互作用 −本発明のこの態様は、遺伝子の単離の基礎としてタンパク質/ポリペプチドとリガンドの両方に分子タグを提供することにより、リガンドに結合する提示されたタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の単離方法を提供する。前記方法は、特に、リガンド自体が提示されたタンパク質/ポリペプチドである遺伝子の単離を含む。本発明のこの態様は、ポリペプチドのリガンド(又は他のポリペプチド)への結合に基づいており、それにより、ポリペプチド及びリガンド上の分子タグを未結合のポリペプチド及びリガンドから結合したポリペプチド−リガンドの分子分離の基礎として使用することができ、それにより、ポリペプチドはその遺伝子(又は遺伝子転写物)と会合したままである。リガンドに結合するポリペプチドの選択に関して、特に好ましい方法は、ポリペプチドとそのリガンドの両方に分子タグを提供することであり、それにより、方法は、次いで、両方の分子タグを含む複合体の単離に適用される。例えば、リポソーム提示の技術を用いて、mRNAをRNA結合タンパク質(HIV tatタンパク質等)でタグ付加してもよいが、リガンド(ポリペプチドの場合)は、抗タグ抗体及びニッケルを含有するアフィニティーマトリックスでのmRNA−リポソーム−ポリペプチド複合体のライブラリーの連続的な継代がポリペプチドの会合したmRNAへの結合を選択するように、ポリヒスチジンテールでタグ付加されてもよく、次いで、これは、結合したポリペプチドをコードする遺伝子配列を提供することができる。あるいは、リポソーム提示を用いて、例えば、ポリヒスチジンテールでポリペプチドのみをタグ付加し、ニッケルキレート等のアフィニティーマトリックスを通過させてもよく、会合したいかなるRNAも、PCRによるcDNAコピーへの変換により単純に入手してもよい。2以上の結合ポリペプチドの選択に関して、特に好ましい方法は、1以上のDNAライブラリー由来の結合ポリペプチド候補の生成のためにジ(又はポリ)シストロニックmRNAを使用するリポソーム提示の技術を用いることである。ポリペプチドの内の一方に対するシストロンが、翻訳されたポリペプチドを翻訳後にmRNAから解離するように構築され、他方のポリペプチドに対するシストロンが、翻訳されたポリペプチドが翻訳後もmRNAと会合したままであるように構築される場合、そのときは、2つのポリペプチドの翻訳の並置は、適用可能ならばこの並置により会合が容易になるようなものであり、よって、結合ポリペプチド(単数又は複数)及びmRNAを含む複合体の分離のための分子的基礎を提供し、後者は、次いで、結合ポリペプチド(単数又は複数)をコードする遺伝子の同一性のために使用されうる。
【0080】
本発明のこの態様の別の側面は、2つのポリペプチドの結合に基づいており、その内の1つ又は両方は、対応する遺伝子と会合し、他のポリペプチド鎖と融合(又は会合)し、並置された場合に選択可能な特性を生じ、次いで、結合ポリペプチド(1又は複数)に対する遺伝子(1又は複数)をコードする生きた微生物の単離を可能にする。この態様の範囲内では、2つのポリペプチドの会合による酵素活性の生成が特に興味深い。そのように生成された酵素活性は、様々な選択方法に使用することができる。これらは、うまく対合したポリペプチドと、会合した遺伝子(又はmRNA)との複合体に付着する分子タグを生成する酵素活性を含む。微生物でのポリペプチド提示に関して、これらは、リガンドに結合するDNAライブラリーに由来するポリペプチドを提示する微生物の選択に導く微生物の付近で分子を生成(又は放出)する酵素活性をも含む。この態様の範囲内では、2つのポリペプチドの会合による結合タンパク質活性の生成が特に興味深く、それにより、結合タンパク質は、結合タンパク質(1又は複数)をコードする遺伝子の同定の基礎として使用することができる選択可能な特性を間接的に生じさせる。例えば、結合タンパク質は、抗生物質耐性タンパク質又は栄養素生成タンパク質等の微生物に対して有利な選択を提供する遺伝子を活性化する転写活性因子等のDNA結合タンパク質でありうる。
【0081】
微生物に提示された結合ポリペプチドに対する本発明の適用に関して、ポリペプチドとリガンドとの会合が、結合ポリペプチドを提示する微生物の選択又は分離の基礎を提供する新しい分子(1又は複数)を生成させうる両方の場合において、本発明は、リガンド(又は第2のポリペプチド)を外部から微生物に添加する方法又はリガンドが微生物中で内部から合成される方法を提供する。本発明は、ともに会合した場合に酵素活性を再構成する酵素の2つ(以上)のサブユニットの組合せを通じた酵素活性の相補性に基づくことができる。次いで、酵素活性の再構成は、酵素活性を提供する微生物の正又は負の選択のいずれかを提供するであろう。本発明のこの態様の1例において、微生物又は細胞で発現可能な改変体ポリペプチドをコードするDNAライブラリーが提供され、それにより、結合ポリペプチドをコードする遺伝子が酵素の酵素的に不活性な断片をコードする遺伝子の一部に融合し、それにより、酵素のこの部分は、酵素活性を再構成するために酵素の別の部分を相補することができる。適する酵素は、大腸菌β−ガラクトシダーゼ及びシー.ペルフリンゲンス(C. perfringens) ホスホリパーゼCを含む。酵素の他の部分は、イン・ビトロ選択用の微生物培養培地中に提供されるか又はイン・ビボ選択用の同一の微生物内でこの部分をコードする遺伝子の発現により提供されるかのいずれかである。大腸菌β−ガラクトシダーゼ及びシー.ペルフリンゲンス(C. perfringens) ホスホリパーゼC等の酵素は、酵素の不活性サブユニットが溶液中で自己会合して酵素活性を再構成することができるという特性を有し、よって、本発明は、不活性な酵素断片をコードする遺伝子に融合された結合ポリペプチドがそのリガンドに結合して、結合を促進(リガンドが他の不活性サブユニットに融合する場合)又は抑制(立体障害を通じてポリペプチド−リガンド結合が不活性な酵素サブユニットにより酵素活性の再構成を抑制する場合)のいずれかをすることができる。酵素活性の回復又は廃止は、ポリペプチド/酵素サブユニット遺伝子融合物を発現する微生物に有益な又は有害な効果を有するかもしれない。これは、非毒性基質の毒性基質への変換を生じさせる等、再構成された酵素の直接的な酵素作用によるものか又は、毒物若しくは微生物の成長/増殖用の必須の栄養素/因子を含む外部からのリポソームの溶解を生じさせる等、再構成された酵素の間接的な酵素作用によるものかのいずれかであろう。
【0082】
本発明のこの態様の別の側面は、非タンパク質又は一定のタンパク質部分を有するポリペプチドの結合に基づいており、それにより、ポリペプチド又は非タンパク質又は一定のタンパク質部分上の分子タグは、未結合のポリペプチド及び非タンパク質又は一定のタンパク質部分から非タンパク質又は一定のタンパク質部分と相互作用するポリペプチドの単離の基礎として使用することができ、それによりポリペプチドは、その遺伝子(又は遺伝子転写物)といまだ会合したままである。非タンパク質部分は、核酸(DNA若しくはRNA)又は化学品(合成若しくは天然)等の主として非アミノ酸成分からなる分子として定義してもよい。一定のタンパク質部分は、例えば、全血清免疫グロブリン標品等のその同一性が公知であるタンパク質であろう。それにより、血清免疫グロブリンは、一定のポリペプチドの相互作用するであろう。ポリペプチドとその遺伝子転写物との会合は、ポリペプチドがリポソーム/mRNA複合体に付着したままである発生中のタンパク質の一部であり、mRNA自体が非タンパク質又は一定のタンパク質部分をコンジュゲートした(又は連結した)RNA結合タンパク質(HIV tatタンパク質等)オリゴヌクレオチドでタグ付加されてもよく、あるいはmRNAが非タンパク質又は一定のタンパク質部分をコンジュゲートした(又は連結した)ハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドでタグ付加されてもよいリポソーム提示の技術を用いて達成されるであろう。タンパク質と非タンパク質又は一定のタンパク質との並置は、非タンパク質部分をmRNA分子にハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドに付着させることにより達成することができる。あるいは、非タンパク質又は一定のタンパク質部分は、ポリヒスチジン等でタグ付加されてもよいが、ポリペプチド部分は、mRNA−リボソーム−ポリペプチド及び非タンパク質又は一定のタンパク質部分の複合体のライブラリーを抗タグ抗体及びニッケルを含有するアフィニティーマトリックスを通した連続的な継代が会合したmRNAを有する結合ポリペプチドを選択するように、前記したようにmRNAに連結される。例えば、非タンパク質部分はDNA及び結合したポリペプチドDNA結合タンパク質でありうるし、別の例において、一定のタンパク質部分は、リンホカイン及び結合したポリペプチドリンホカイン受容体又はその領域であってもよい。
【0083】
非タンパク質又は一定のタンパク質部分のハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はmRNA結合タンパク質への付着は、一般にオーサリバン(Osullivan) ら(Anal. Biochem. 100 (1979), 108)に記載されたもの等の架橋ポリペプチドのいかなる慣用の方法でも達成されうる。そのような架橋は、一定のタンパク質又はmRNA結合タンパク質に、特異的アミノ酸、特に遊離のシステイン残基又は遊離のリジン残基を導入することにより容易になるであろう。あるいは、一定のタンパク質部分の付着は、ビオチンをハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はmRNA結合タンパク質と非タンパク質又は一定のタンパク質部分との両方に取り込んだ後(ランガー(Langer)ら, PNAS 78, (1981), 6633 により記載されたように)、アビジンを添加してオリゴヌクレオチド又はmRNA結合タンパク質を非タンパク質又は一定のタンパク質部分に架橋することにより達成されてもよい。
【0084】
本発明のこの態様の別の側面は、一定の生化学的経路のアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニングを提供し、それにより、前記経路の成分を含有する個々のタンパク質を、失速されたリボソームを介してポリシストロニックmRNAに付着したままである全長のポリペプチドとして連続的に発現するであろう。例えば、リボソーム提示の技術を用いて、生物学的経路を含有するタンパク質を適当なベクターに連続的にクローニングして提示させることができるであろう。密接な物理的近接により促進されたポリペプチド間の相互作用は、その経路での最終のポリペプチドでの検出可能な変化を生じるであろう。例えば、ポリペプチドの連続的な会合は、末端のリン酸化又は構造変化等の他の事象を生じさせるリン酸化カスケードを生じるであろう。活性化及び非活性化の両状態での最終ポリペプチドのリン酸化又は構造の検出のための特に好ましい方法は、抗体を用いることであろう。前記経路のアンタゴニストの選択に関して、特に好ましい方法は、生化学的経路におけるタンパク質の提示に対する連続的に並置されたポリシストロニックmRNAを用いるリボソーム提示の技術を使用することである。次いで、提示されたタンパク質を候補分子でスクリーニングし、それにより、候補分子は、例えば、1以上のDNAライブラリーに由来するリボソーム提示されたポリペプチドであってもよく、経路タンパク質の活性の阻害を測定する。
【0085】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、本発明の範疇を限定するものと見なすべきではない。
【0086】
実施例1
合成タンパク質ライブラリーの新たな作成と組織による修飾
出発点は、クローンテック・ユーケー社(Clontech UK Ltd) (バサインストーク(Basingstoke) 、英国)から購入した「マラソン−レディー」ヒトクローンcDNAから、cDNAライブラリーを調製することであった。アドバンテージcDNAキットを用いて、供給者(クローンテック社)の推奨条件にて、プライマーAP1[5'ccatcctaatacgactcactatagggc] とプライマーAP2[5'-ttctagaattcagcggccgc(t)30nn]を用いてのPCRによってこのライブラリーを増幅した。得られたPCR産物を、マーチュック(Marchuck)ら(マーチュック ディー(Marchuck D.) ら、1991, Nucl. Acids Res. 19:1154)の方法で調製した、SmaIで直線化したpUC19中に、T/Aクローニング手法を用いてクローニングした。一方、モレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル、サンブロック ジェー、フリッツ イーエフ、マニアティス ティー編、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Molecular Cloning, A Laboratory Manual eds. Sambrook J, Fritsch EF, Maniatis T. Cold Spring Harbor Laboratory Press) 、1989、ニューヨーク、アメリカ合衆国に記載の標準的な方法を用いて組織から直接的にヒトクローンmRNAを単離し、このものからヒトクローンcDNAライブラリーを構築した。(前掲のモレキュラークローニング)RNアーゼH法を用いてこのmRNAをcDNAに変換し、T7RNAポリメラーゼのプロモーターを具備するpGEMT7GEMT7/SP6プラスミド(プロメガ社、サザンプトン(Promega, Southampton)、英国)のSmaIサイトに再びクローニングした。ハーネスとプルクサン(Hanes and Pluckthun) 、Proc. Natl. Acad. Sci. 94(1997),p4937 に記載のように、長鎖の合成オリゴヌクレオチドとPCRを適用して、上流側に細菌のリボソーム結合部位、下流側にM13ファージ遺伝子III 由来のスペーサー及び大腸菌lppターミネーター由来の3’転写ターミネーターを提供した。
【0087】
RiboMAXTMキット(プロメガ社、サザンプトン、英国)を用いて、メーカーの説明書に従って、pT7プラスミドのインビトロ転写を実施した。得られたmRNAを、メーカーの手順に従って精製した。35Sメチオニン含有物が備わった大腸菌S30エキストラクトシステム(Extract System)(プロメガ社、サザンプトン、英国)を用いて、メーカーの説明書に従って、pT7プラスミドのインビトロ翻訳を実施した。(前掲の)ハーネスとプルクサンによって記載されたように、EDTA処理を行ってタンパク質からリボソームを解離させ、(100,000gで30分間の)遠心分離によってリボソームを除去した。
【0088】
冷RIPA緩衝液(RIPA緩衝液=50mMのトリス−塩酸、pH7.4、1%(v/v) のNP−40、0.25%のデオキシコール酸ナトリウム、150mMのNaCl、1mMのEGTA、1mMのPMSF、1mMのNa3 VO4 、1mMのNaF及びそれぞれ1μg/mlのアプロチニン、ロイペプチン及びペプスタチン)中で組織を破壊することによって、正常の結腸サンプルと結腸ガンのサンプルから粗タンパク質抽出物を調製した。いくつかの実験では、ホスファターゼ活性を示した抽出成分もあり、本ケースでは、1mMのNa3 VO4 を含まないRIPA緩衝液を用いて溶解物を得た。組織サンプルを氷上で溶かし、滅菌処理済みの使い捨て組織用粉砕機(「ペレットペストル(pellet pestle) 」アナケム社(Anachem Ltd) 、ルートン、英国)を用いて破壊した。ホモゲナイズは、1容量の組織に対して2容量の氷冷RIPA緩衝液を用いて実施した。この溶解物を氷上で15分間ゆっくりとかきまぜながらインキュベートし、次いで、4℃、13,000×gで10分間の遠心分離によって不溶性の成分の清澄化を行った。上清を取り除き、供給者(ピアース社、チェスター、英国、カタログ番号23225)が提供した手順に従って、ビシンコニン酸法(bicinhoninic acid method)を用いてタンパク質濃度を測定した。この溶解物を等量ずつ複数に分割し、ドライアイス上で瞬間的に凍結させ、液体チッ素中で保存した。
【0089】
1mg/mlのバナジル(vanadyl) リボヌクレオシド複合体と10単位のRNアシンとの存在下で、溶かした溶解物を37℃で30分間インキュベートすることによって、正常の結腸溶解物と結腸ガン溶解物をインビトロ翻訳化タンパク質と反応させた。次いで、このタンパク質混合物をカッシュ(Cash)ら(Electrophoresis 18 (1997)、p2580)のプロトコールに従って可溶化した。溶解性タンパク質を次いで二次元PAGE(カッシュら、前掲)で分析し、オートラジオグラフィーでタンパク質を検出した(パットン(Patton)ら、BioTechniques 8 (1990)、p518)。画像解析システムに結合したビデオカメラを用いてゲルの画像を取り込み、次いで、さらなる分析のためにフォレティックス−2D(Phoretix-2D) に転送した。メーカーの説明書に従って、フォレティックス−2Dを用いて分析を行った。
【0090】
正常のものと結腸ガンの抽出物とを比較した場合、インビトロ翻訳化タンパク質混合物から検出された全2262のタンパク質スポットのうちの12スポットが異なる移動度を示していた。
【0091】
実施例2
合成タンパク質のリン酸化
ポリヒスチジンタグを含みそのタンパク質のアミノ末端が融合されている精製組み換えラットERK−2を、ストラタジーン社(Stratagene)、ラジョラ(La Jolla)、アメリカ合衆国(カタログ番号20612)から購入した。この産物は、タンパク質の非活性体であり、リン酸化部位を含まない。0.5μgの非活性化ERK−2を、(2mg/mlの全タンパク質を含む)5μlのA431細胞溶解物と(アップステートバイオテクノロジーズ社(Upstate Biotechnologies) 、レークプラシッド、ニューヨーク州、アメリカ合衆国、カタログ番号12−110)又は組織培養中に生育した細胞からここで代替的に生産したものと反応させた。細胞溶解物又は組織用怪物と標的タンパク質とを反応させる手法は、コンディショニングリアクション(Conditioning Reaction) として言及している。
【0092】
500μlの氷冷RIPA緩衝液中に、約5×106 個のサブコンフルエントな(sub-confluent) 細胞を懸濁することによって細胞溶解物を得た。氷冷PBSを用いて、培地の洗浄を前もって行っておいた細胞を、氷上のRIPA緩衝液中で15分間緩やかに振とうしてインキュベートした。4℃、13,000×gで10分間遠心分離することにより、この溶解物の不溶物の清澄化を行った。上清を除去し、供給者(ピアース社、チェスター、英国、カタログ番号23225)が提供した手順に従って、ビシンコニン酸法を用いてタンパク質濃度を測定した。この溶解物を等量ずつ複数に分割し、ドライアイス上で瞬間的に凍結させ、コンディションリアクションで用いる前に液体チッ素中で保存した。組織サンプル及び他の細胞型由来の溶解物を同様に処理した。
【0093】
37℃で15分間にてコンディションリアクションを実施し、次いで氷上に置いた。磁力による分類(試験管1)又はマイクロタイタープレートウェルへの結合(試験管2)のいずれかを用い、両者の場合のいずれも捕捉試薬として抗ヒスチジン抗体を用いて、リン酸化ERK−2を検出するために反応物を2本の試験管に(容量で)等量に分割した。
【0094】
試験管1では、供給者が推奨する被覆条件を用いて抗ヒスチジン抗体(シグマ社、プール、英国、カタログ番号1029)で前もって被覆したマグネチックビーズ(ダイナル社(Dynal) 、ウィラール(Wirral)、英国、カタログ番号110.11)を用いてERK−2を捕らえた。4℃で1時間の間を通してビーズが懸濁し続けるようなゆるやかな混合を一定的に行って捕捉反応を実施した。捕捉した後、磁性粒子濃縮器を用いてこのビーズを集め、PBSで十分に洗浄した。ビーズを最終的に40μlの容量で再懸濁し、10μlずつの等量をマイクロタイタープレートウェルに入れ、そして、個々のものを、抗リン酸化ERK抗体(アップステートバイオテクノロジーズ社、カタログ番号05−481)、抗ホスホチロシン−HRP複合モノクローナルカクテル(ザイメド社(Zymed) 、ケンブリッジ、英国、番号136620)、抗ホスホセリン/ホスホトレオニン/ホスホチロシンポリクローナル調製物(ザイメド社、カタログ番号90−0200)又はネガティブコントールとしての、ヒト免疫グロブリン軽鎖特異的抗HRP複合物(バインディングサイト社(The Binding Site)、バーミンガム、英国、カタログ番号APO015)のいずれかの希釈物と反応させた。それぞれの二次試薬/発色基質で検出する前に、抗体を4℃で1時間インキュベートした。プレートを450nmで読んだ。
【0095】
前もって抗ヒスチジン抗体(シグマ社、プール、英国、カタログ番号H1029)で一番被覆し、室温下PBS/5%(w/v) BSA溶液で40分間インキュベートして予備ブロックしておいたマイクロタイタープレートウェルを用いて、試験管2のERK−2を捕捉した。PBSを用いてコンディションリアクションを希釈して総容量100μlとし、マイクロタイタープレートに添加した。捕捉反応は室温下、1時間で行った。上記のネガティブコントロール試薬を含む抗体のパネルを用いて、直接ELISA形式でリン酸化ERK−2を検出した。
【0096】
上記の両検出法を利用して、次の、A431細胞由来の溶解物とのインキュベーションによってリン酸化ERK−2の存在を明確に示した。
【0097】
実施例3
ストレプトアビジン被覆化プレート上でのアレイング(arraying)のための、インビトロ翻訳化cDNAクローンの調製方法。
ヒト胎児全脳cDNAライブラリーをストラタジーンクローニングシステム社(Stratagene Cloning System) 、(ラジョラ、アメリカ合衆国)から得た。
供給されたそのライブラリーを、ラムダベクターUni−ZAP XRに、平均挿入サイズが1.3kbpで一方向クローニングした。このライブラリーは2×106 pfuを含んでいると算出され、約2.4×1010pfu/mlの力価を与えた。原版のラムダUni−ZAP XRライブラリーを、次の単一ラウンドの複製に付した。この1×の増幅物についての(以下の)マスエクシジョン反応を実行することにより、生育できる大腸菌の個々のクローンであって、次に続くラムダファージの感染の細胞溶解性プラークとしてではないクローンの濃度にまで実施されるプレーティング、産物の複製及び原版のストックの貯蔵等の操作を可能とする(ジェルセス、ビー(Jerseth, B.) ら(1992)、Strategies 5:81-83)。標準的な手法(モレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル、サンブロック ジェー、フリッツ イーエフ、マニアティス ティー編、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、1989、ニューヨーク、アメリカ合衆国)にて、残りのライブラリーをさらにもう一回増幅し、原版のストックと同じように、複数のグリセリンストックを−80℃で保存した。
【0098】
マスエクシジョン反応のためと、供給者(ストラタジーン社、ラジョラ、アメリカ合衆国)によるプロトコールに従った、細菌コロニーとしてプレーティングを行うために、このライブラリーを調製した。概略を言えば、ライブラリーから供給された細菌株(XL−1 Blue及びSOLR’)を選択培地(それぞれLBテトラサイクリン及びLBカナマイシン)上に広げ、そして0.2%(w/v) のマルトースと10mMのMgSO4 を追加した50mlのLBブロス(10g/リットルのNaCl、10g/リットルのトリプトン、5g/リットルのイーストエキストラクト、pH7.0)中に30℃で一晩培養するために、単一のコロニーを選び出した。遠心分離により細胞を集め、10mMのMgSO4 中に、8×108 細胞/mlの濃度(OD600 =1.0)で再懸濁した。XL−1 Blue細胞には、ラムダファージ:細胞が1:10の感染多重度にて、ラムダUni−ZAP XRライブラリーの一部が結合されていた。ヘルパーファージ株ExAssistを基礎としたM13(ストラタジーン社、ラジョラ、アメリカ合衆国)を、ヘルパーファージ:細胞が10:1の割合で添加し、この混合物を37℃で15分間インキュベートした。20mlのLBブロスを添加し、この混合物を37℃でさらに3時間、振とうしながらインキュベートした。この混合物を70℃で20分間加熱し、遠心分離により細胞部分を集めた。削り取られたファージミドを含有する上清を集め、200μlのSOLR’細胞に対して1μl添加した。この混合物をLBアンピシリンプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。典型的な例として、各プレートには多くの1000のコロニーが生じ、削り取られたファージミドのさらなる希釈物には、コロニーを選び出すための好ましいプレーティング密度を得ることを必要とした。
【0099】
格子形成の実行を可能とするためには、ライブラリーの発現が維持できる程度にまで個々のcDNAクローンの総数を減らすことである。この標準化は、次のソアレス(Soares)ら(ソアレス,エム.ビー.ら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci USA vol 91:922-923)の手法により達成される。この手法には、ファージミドライブラリーのヘルパーファージ感染による単鎖分子の生産が必要であった。この単鎖環は、制御されたプライマー伸張処理に付され、次いで、極めて多様な分子が再会合する(低C0 t)という条件下で変性と再アニーリングが行われ、そしてヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによって混合物から除去できた。再会合しない環は流出液から回収し、コンピテント細菌に直接形質転換した。
【0100】
ヘルパーファージVCM13と、供給者(ストラタジーン社)によるプロトコールを用いて、ファージミドライブラリー上で単鎖の回収を行った。回収された単鎖DNAをソアレスら(前掲のソアレス)の方法にしたがって精製し、特定の工程に組み込むことにより混入した二本鎖DNAを減らした。制御されたプライマー伸張は、ソアレスらの条件を用いて、5'ggaaacagctatgaccatg のプライマーを用いて単鎖環状DNAの精製を行っている。DNAポリメラーゼはベーリンガー社から得、ヌクレオチドトリホスファターゼはライフテクノロジーズ社(Life Technologies) (ペーズリー、英国)から得た。トレーサとしての32PdCTPは、アマシャムインターナショナル社(Amersham International)(アマシャム(Amersham)、英国)から得た。ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーは、ソアレスらに記載の60℃にて実施した。標準化された単鎖環の回収の後、精製DNAをコンピテントXL1−blue大腸菌細胞に直接的に形質転換し、既に述べたようにして、LB−アンピシリンプレート上に広げた。
【0101】
標準化されたライブラリーからのXL1−blue細胞の個々のクローンを、さらなる分析と複製の生産のために選び出した。概略は、100μlLBアンピシリン培地を含む96穴プレートへ、コロニーを手動で選び出し、37℃で3時間培養した。各プレートの一つの複製を実施するために、BioRobot9600 (キアゲンユーケーリミテッド(Qiagen UL Ltd) 、クローレイ(Crawley) 、英国)ラボラトリーワークステーションを使用した。10%(v/v) グリセリンを含む培地に培養物の50μlをピペットで入れるようにこのロボットをプログラムし、このプレートを密封して原版と同じく−80℃で貯蔵した。残りの50μlの培養物を、1.8mlのLB−アンピシリン培地を含む、2ml容の正方形ウェルを具備する96穴平底ブロックに植菌した。各ブロックの頂部に微孔のあるシート上テープを貼り、37℃にて一晩、そのブロックを軌道を描くように振とうしてインキュベートした。インキュベートの後、BioRobot9600 (キアゲンユーケーリミテッド、クローレイ、英国)上で標準プログラムと、供給者 (キアゲンユーケーリミテッド、クローレイ、英国)が提供したキューアイエーウルトラリージェントシステム(QIAwell Ultra reagent system)とを用いて、96ウェルのそれぞれからファージミドDNAを調製した。
【0102】
T3RNAポリメラーゼ及びプロメガユーケーリミテッド(サザンプトン、英国)が提供するウサギ網状赤血球溶解物システムを用いて、リンクしたインビトロ転写翻訳(IVTT)のための精製DNAの一部を鋳型として直接使用した。残りのDNAは密封して−20℃で保存した。IVTT反応混合物には、ストレプトアビジンで被覆された固相上でインビトロ翻訳化タンパク質を捕捉できるように、2%(v/v) のtRNA−ビオチニル−リジン(プロメガユーケーリミテッド、サザンプトン、英国)を追加した。IVTT反応を、総容量25μlの96ウェルアレイにて、30℃で60分間実施した。インキュベートの後、予めReacti-Bind TMストレプトアビジンで被覆した予備ブロック済のプレート(ピアース社、チェスター、英国)に添加していたpH8.0、100μlのTSB(50mMのトリス、138mMのNaCl、2.7mlのKCl)に、それぞれ5μlの反応物を加えた。残りのIVTT反応プレートを密閉し、−20℃で保存した。、スミゾノ及びタザキ(Nishiguchi, M., Yoshida, K., Sumizono, T. and Tazaki, T.)(1997)。ロビニア シュードアカシア由来樹皮レクチンの糖結合特性についての、部位特異的突然変異誘発法による研究。FEBS Letters, 403, 294-298。Reacti-Bind TMストレプトアビジンプレートを室温で60分間、緩やかに振とうさせながらインキュベートし、ビオチン化IVTT産物のプレート表面への結合を促進した。組織タンパク質結合アッセイに使用する前に、このプレートを3×200μlの洗浄緩衝液(TBS、0.1%(w/v) のBSA、0.05%(v/v) のツィーン20)で洗浄した。
【0103】
実施例4
インビトロ翻訳タンパク質アレイの組織抽出物の修飾の実現方法と、アレイ化タンパク質のリン酸化の検出
ニューロリソース社(NeuroResouce)(ロンドン、英国)からヒト脳組織サンプルを得た。正常の脳とアルツハイマー病の脳の適合したサンプルが提供された。一般的に、各サンプルの1〜10gが提供され、全ての症例のサンプルについて、解剖学的に準じた位置が知られており、全ての臨床的な詳細事項について相互に参照付けられていた。全てのサンプルはサンプリングの時点で瞬間的に凍結され、ドライアイスの上で輸送され、処理前まで液体チッ素中で保存されていた。カテゴリー2の封じ込めレベル下で処理を実施した。
【0104】
組織を氷冷RIPA緩衝液中で破壊することにより、脳組織リン酸化成分抽出物を得た。いくつかの実験では、ホスファターゼ活性のための抽出成分は次のようにしても得た:この場合、1mMのNa3 VO4 を抜いたRIPA緩衝液を用いて溶解物を得た。組織サンプルは氷上で溶解させ、滅菌処理済みの使い捨て組織用粉砕機(「ペレットペストル」アナケム社、ルートン、英国)を用いて破壊した。ホモゲナイズは、1容量の組織に対して2容量の氷冷RIPA緩衝液を用いて実施した。この溶解物を氷上で15分間ゆっくりと振とうしながらインキュベートし、次いで、4℃、13,000×gで10分間の遠心分離によって不溶性の成分の清澄化を行った。供給者(ピアース社、チェスター、英国、カタログ番号23225)が提供した手順に従って、ビシンコニン酸法を用いてタンパク質濃度を測定した。この溶解物を等量ずつ複数に分割し、ドライアイス上で瞬間的に凍結させ、液体チッ素中で保存した。
【0105】
溶かした溶解物と、37℃で30分間洗浄したアレイとのインキュベートにより、96穴に区切った中で、脳組織溶解物をIVTTタンパク質アレイと反応させた。一般的に、10μlの溶解物をタンパク質アレイの各ウェルに添加した。インキュベートの後、1ウェル当たり200μlの洗浄緩衝液を用いてそのプレートを3回洗浄し、いくつかの、希釈された抗リン酸化タンパク質抗体調製物のすべてとインキュベートした。抗ホスホチロシン−HRP複合モノクローナルカクテル(ザイメド社、ケンブリッジ、英国、番号136620)を用いてリン酸化タンパク質を検出した。抗ホスホセリン/抗ホスホトレオニン/ホスホチロシンのポリクローナル調製物(ザイメド社、ケンブリッジ、英国、番号90−02000)を用いてホスホセリン/ホスホトレオニン修飾を検出した。全てのケースにおいて、5%BSAを含むTBSで希釈した抗体を用いて、少なくとも37℃で1時間、あるケースでは4℃で一晩の間抗体のインキュベートを実施した。次の標準プロトコール(アンティボディーズ アラボラトリー マニュアル、ハーロウ,イー.及びレイン,ディー編(Antibodies A Laboratory Manual eds. Harlow, E. and Lane, D.) 、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、1988、ニューヨーク、アメリカ合衆国)に従って、それぞれの二次試薬/発色基質で検出する前に、前もってプレートを洗っておいた。492nmでプレートを読んだ。
【0106】
実施例5
インビトロ翻訳化タンパク質アレイ上での、ラベルされた組織を用いてのタンパク質−タンパク質結合の検出方法
シグマ社(プール、英国)から供給されるFluroTagTMFITCコンジュゲーションシステムを用いて、脳組織溶解物のタンパク質をフルオレセインで標識化した。典型的な例として、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)の0.1Mの炭酸−重炭酸緩衝液の溶液の1mg/ml希釈液の250μlと、5mgの脳タンパク質を反応させた。G−25セファデックスカラムクロマトグラフィーを用いて組み込まれていないFITCを精製する前に、標識化反応を室温で2時間的続けた。カラムや操作はFluroTagTMキット(シグマ社、プール、英国)中にあった通りとした。標識化された脳タンパク質を含むカラム溶出物を、遮光下4℃で保存した。
【0107】
標識化組織溶解物を、既述のように、IVTTタンパク質アレイと反応させた。IVTTタンパク質アレイの一部に捕捉された標識化脳タンパク質を検出するために、プレートを前もって洗っておき、そして抗フルオレセイン抗体(シグマ社番号F−5636、シグマ社、プール、英国)と共にインキュベートした。5%のBSAを含むTBSにて1/2500に抗体を希釈し、室温で30〜60分間インキュベートした。抗マウスHRP複合体を用いて抗体を検出し、次いで、標準的な手法(前掲のアンティボディーズ アラボラトリー マニュアル)に従って発色基質のo−フェニレンジアミン(シグマ社、プール、英国)と反応させた。492nmでプレートを読んだ。
【0108】
実施例6
リボソーム提示ライブラリーによって同定されるタンパク質−タンパク質結合パートナー
この実施例では、インビトロタンパク質アレイは結合パートナーのためのリボソーム提示ライブラリーを検索するために用いられ、ライブラリーに存在する結合パートナーのための遺伝子は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって同定される。本実施例でのこの目的のために、リボソーム提示ライブラリーは実施例1に記載されているように必須であり、実際のところ、スクリーニングのためにIVTTタンパク質アレイを使用する時点では、リボソーム提示ライブラリーは、起源が同じmRNA分子への連鎖によって、それぞれが個々に発生期のタンパク質につながるリボソームの大集団(109 〜1012)からなっている。
【0109】
氷冷希釈緩衝液(50mMのトリス酢酸、pH7.5、150mMの塩化ナトリウム、50mMの酢酸マグネシウム、0.1%のツィーン20、200単位/mlのRNアシン(プロメガユーケーリミテッド、サザンプトン、英国))5中にライブラリーを1で希釈した。希釈ライブラリーの50μlを、IVTTタンパク質アレイの各ウェルに添加し、4℃でゆるやかに振とうさせながら1時間インキュベートした。インキュベートの後、アレイのウェルを100μlの氷冷希釈緩衝液で5回洗浄した。mRNA/リボソーム/タンパク質複合体に結合するあらゆるものからのmRNAを、50mMのトリス酢酸、pH7.5、150mMの塩化ナトリウム、20mMのEDTAの20μlを加えて溶出し、氷上で10分間緩やかに振とうさせながらインキュベートした。溶出されたmRNAを第二の96穴プレートに集め、グリコーゲン担体(ベーリンガー社、ルイス、英国)の20gの存在下でエタノールを用いて−20℃で一晩かけて沈殿させることによって濃縮した(前掲のモレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル)。得られたmRNAをM−MLV逆転写酵素(RT)による逆転写の鋳型として使用し、プライマーRD3[5'(T)18nn] の1nMの存在下でmRNAを70℃、10分間で熱変性させた。200単位のM−MLV−RTと反応緩衝液(ライフテクノロジーズ社、ペーズリー、英国)の添加の前に、氷上でこの混合物を冷却した。この混合物を37℃で60分間インキュベートし、次いで、70℃で15分間に移してRTを不活性化した。これに続くDNA:RNAハイブリッドを、プライマーT75L[5'cggtttccctctagaaata] とRD3を用いて、PCRの鋳型として用い、95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で30秒間のサイクルを40回行った。耐熱性DNAポリメラーゼ(ExpandTM、ハイフィデリティ(High Fidelity) )、反応緩衝液及びヌクレオチド三リン酸は、ベーリンガー社(べーリンガー社、ルイス、英国)から得た。PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって解析した(前掲のモレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル)。PCR産物の存在により、IVTTタンパク質アレイにおける推定される正の結合パートナーが同定された。タンパク質アレイが翻訳され、ファージミドDNAが配列解析のために同定された。ポリソーム提示ライブラリーからのPCR産物の配列解析は、プライマーT75Lを用いて直接なされた。供給者(アマシャムインターナショナル社、アマシャム、英国)からのプロトコールに従ったダイターミネーター現象を用いて配列解析を行った。自動化された配列解析システム(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)、ウォリントン、英国)を用いて反応物の分析を行った。
【0110】
実施例7
表面をストレプトアビジンで被覆したガラス上でのインビトロ翻訳化タンパク質ライブラリーのマイクロアレイ
表面をストレプトアビジンで被覆したガラス上に、ロボットに個々のIVTTタンパク質で格子を作らせることによって、IVTTタンパク質アレイの縮小型を作成した。一方の表面にストレプトアビジンが共有結合的に付着したガラス「チップ」は、ラディアス社(Radius Inc)(メドフィールド(Medfield)、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)から購入した。ガラスチップは55mm×25mmであった。グリッディングロボット(gridding robot)(ラディアス社、メドフィールド、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)を使って、96IVTT反応のそれぞれの0.5μlを、8×12の低密度アレイにてチップの乾燥面に添加した。さらなる実験では、グラスチップ1枚あたり192の個々のタンパク質である倍密度アレイが作られた。以下に続く実験では、多量のスクリーニング処理量に適した超高密度のアレイを組み立てた。格子を作らせた後、チップの表面をリン酸緩衝化塩水溶液(PBS)で洗浄し、3%(w/v) のBSAと0.02%のアジ化ナトリウムを含むPBS中で4℃にてスライドガラスを保存した。
【0111】
IVTTタンパク質チップアレイを組織溶解物で処理し、脳組織溶解物のインキュベートの前に、実施例2で得られた抗リン酸化タンパク質抗体で広範囲に綿密に調べた。タンパク質チップアレイをトリス緩衝化塩水溶液(TBS)で浸漬法にて広範囲に洗浄した。15μlの脳組織溶解物を直接タンパク質アレイを包む領域上の表面に添加する前に、残りの洗浄溶液をスライドガラスから振り落とした。アレイの領域全体に溶解物を広げるのを助けたり、次に続くインキュベートの間に毛細管効果の停止による明らかな溶液の不足を抑制するために組織溶解物溶液上にカバーガラスを置いた。加湿容器中にガラスチップを置き、37℃で30分間のインキュベートを行った。インキュベートの後、カバーガラスを取り除き、スライドガラスを洗浄緩衝液を用いて浸漬法にて洗浄した。実施例2のように希釈した抗リン酸化タンパク質抗体の一つかそれを組み合わせたもので、ガラスチップをインキュベートした。タンパク質アレイに抗体溶液を少量(10〜20μl)添加し、既述のようにカバーガラスの下の同じ場所で保持した。スライドガラス上で得られた不溶性の沈殿の発色基質を使用して、結合した抗体の検出を行った。典型的な例としては、基質DAB(ジアミノベンジジン テトラヒロクロライド)(シグマ社、プール、英国)を用いた。低拡大率下での目視試験により低密度アレイでの陽性シグナルを同定した。いくつかの実験のために、強化化学ルミネセンス基質(ピアースアンドワリナー社(Pierce and Warriner Ltd) 、チェスター、英国)を、一次又は二次抗体を結合させたペルオキシダーゼと組み合わせて用いた。モレキュラーイメージャー(Molecular Imager)FX(バイオラッドラボラトリーズ社(BioRad Laboratories Ltd) 、ハートフォードシア(Herts) 、英国)ホスホルイメージャーシステム(phosphor imager system)を用いて陽性シグナルを検出した。
【0112】
FITC標識化脳タンパク質を使用し、実施例5であまねく記載したように、IVTTタンパク質ガラスチップアレイ上でタンパク質−タンパク質結合アッセイを行った。10〜20μlのFITC標識化脳タンパク質調製物を、洗浄済みのIVTTタンパク質アレイの表面に直接添加した。標識化組織溶解物溶液の上にカバーガラスを置き、そして、37℃で30分間、加湿容器中で、この完成したスライドガラスをインキュベートした。
【0113】
いくつかの実験においては、FITC標識化タンパク質の結合したものを、蛍光顕微鏡で直接検出した。顕微鏡観察のために、一滴の抗消失マウンタント(antifade mountant) (ベクターラボズ(Vector Labs) 、ピーターバラ、英国)と油浸蛍光顕微鏡観察のための常用のカバーガラスとでタンパク質アレイを覆った。顕微鏡は、蛍光顕微鏡観察のためのFITC互換性フィルターセットを備えたニコン105型であった。蛍光照明下での顕微鏡のステージからのX−Y軸の3桁の示数を参照して、陽性シグナルを与えるタンパク質スポットの位置を解読した。ロボットによる格子形成の前に各ガラス表面に描いたインデックススポットの試験の後で、これらの示数はタンパク質アレイの座標と関連性を示す。タンパク質アレイに対応するその位置についてのX−Y示数を与える通常の照明下で、このインデックススポットを同定した。
【0114】
結合した標識化タンパク質の間接検出を用いていくつかの実験を行った。このために、抗FITCモノクローナル抗体を用い、次いで抗マウスペルオキシダーゼ複合体とレポーター基質としてのDABを使用しての比色分析検出を行った。この例においては、試薬はシグマ社(プール、英国)から得、希釈抗体を少量(10〜20μl)用いて、直接ガラス表面に添加し、既述のようにカバーグラス下で保持してインキュベートした。通常の照明下、低拡大率にてアレイの目視による試験により、陽性シグナルを同定した。また、さらなる実験でも、強化化学ルミネセンス基質(ピアースアンドワリナー社、チェスター、英国)と既述のホスホルイメージャーシステムを使用しての画像化を用いた。
【0115】
実施例8
組織抽出物との反応のための、固相アレイ上に固定化された単鎖抗体ライブラリーの生産方法。
実施例4で調製された正常ヒト脳抽出物を用いて、2匹のBalbC マウスを免疫した。投与の間としては4週間の間隔を空けて、腹膜内への2回の投与を行った。2回目の接種後から3〜4日目にマウスを殺し、切開して脾臓を取り出した。25cm2 の組織培養フラスコを、炭酸/重炭酸緩衝液、pH9.0の1mlあたり25μgの脳抽出物タンパク質で覆った。1時間で37℃のインキュベートの後、抗原調製物を取り除き、滅菌済みブロッキング緩衝液(2%脱脂粉乳を含むPBS)を加えて1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、組織培養培地中の脾臓細胞懸濁液の25mlをそのフラスコに添加し、5%CO2 雰囲気中で37℃で一晩インキュベートした。非付着性脾臓細胞を含む培地を除去した。次いで、QuickPrep TMmRNA精製キット(ファルマシア社、セントオールバンズ、英国)の抽出緩衝液の1.5mlをフラスコに添加して表面を攪拌することによって、付着した選択細胞からのRNAの調製を開始した。次いで、3mlの溶出緩衝液を添加して混合した。次いで、このフラスコの内容物を15mlの遠心分離に移して、メーカーの説明書に従ってQuickPrep TMmRNA精製を続けた。
【0116】
ファルマシアリコンビナントファージアンチボディーシステム(ファルマシア社、ミルトンキーンズ、英国)を用いて、抗ヒト脳マウス単鎖Fvs(ScFv)のライブラリーを作成した。M−MuLV逆転写酵素とランダムの6塩基プライマーを用いて、mRNAから単鎖cDNAを新たに作成した。次いで、抗体の可変ドメインに隣接する保存配列に相補的な特定の重鎖と軽鎖プライマーを用いて、抗体の重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を増幅した。重鎖DNAと軽鎖DNAのそれぞれに対応して新たに作成された340塩基対生産物及び325塩基対生産物を、次のアガロースゲル電気泳動で別々に精製した。次いで、DNAリンカー−プライマー混合物を用いて、これらを一つのScFv構築物となるように組み立てて、(Gly4Ser)3 ペプチドがVL領域に結合したVH領域を得た。それぞれ5’末端と3’末端の位置にSfiIサイトとNotIサイトが挿入されるように設計されたプライマーを用いて、組み立てられたScFvを増幅し、800塩基対の生成物を得た。この断片を精製し、SfiIとNotIとで連続的に消化して再精製した。
【0117】
インビトロ転写され翻訳されたScFvライブラリーの生産のために、ベクターpBluescript SK+ の多重クローニングサイト領域中のHindIII サイトとEcoRIサイトの間に、リンカーを挿入するという修飾を施した。
リンカー配列:
【0118】
【外1】
Figure 0004524445
【0119】
T7プロモーターからの転写が正しい方向となるように挿入されるように、このベクターのSfiIサイトとNotIサイトの間に増幅されたScFvをクローニングした。一方、ヒトネイティブファージ抗体ライブラリー(ニッシン(Nissin)、MRC)を使用した。ファージミドDNAを調製し、SfiIとNotIとで連続的に切断した。ScFv断片を精製し、上記の修飾されたpBluescript SK+ ベクター中にクローニングした。
【0120】
固相アレイとして使用するために、個々のpBluescript クローンを取り出し、実施例3のマルチウェルディッシュ中で培養した。DNAの調製、IVTT及びビオチン化タンパク質のアレイは実施例3に記載の通りとした。
【0121】
ファージ抗体ライブラリーとして使用するために、ファルマシア社のプロトコールに従った。それぞれ5’末端と3’末端の位置にSfiIサイトとNotIサイトが挿入されるように設計されたプライマーで、組み立てられたScFvを増幅し、800塩基対の産物を得た。この断片を精製し、SfiIとNotIとで連続的に消化し、再精製して、SfiIとNotIとで切断したpCANTAB 5 ファージミドベクター中に結合した。pCANTAB 5 はファージ遺伝子3タンパク質(g3p)をコードする遺伝子を含み、そしてg3p融合タンパク質として発現されるように、g3シグナル配列に隣接したところにScFvを挿入する。pCantab 5/ScFvファージミドを用いて、大腸菌TG1の内容物の形質転換を行い、次に、M13KO7ヘルパーファージを用いて連続的に感染させた。得られた組み換えファージはScFv遺伝子をコードする遺伝子を含んでおり、末端の位置の融合タンパク質としての組み換え抗体の一以上のコピーを提示した。
【0122】
次いで、ヒト脳抗原に結合するファージに提示されるScFvをパニング(panning) により選択又は濃くした。概略は、96穴マイクロタイタープレートのウェル上で脳抗原調製物が被覆された。2%の脱脂粉乳を含むPBSでブロッキングをした後、ファージ調製物を添加して1時間インキュベートした。PBSで十分に洗浄した後、組み換えファージに反応性を示す脳抗原を含むウェルを、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗M13抗体を用いて検出し、o−フェニレンジアミン発色性基質で示された。
【0123】
実施例9
標識化組織タンパク質により格子を形成され、処理されたIVTT提示ライブラリー
単鎖抗体IVTT提示ライブラリーをインビトロにて翻訳し、実施例3に記載のように、ストレプトアビジン表面に整列させた。単鎖抗体アレイは、実施例5に調製されたFITC標識化タンパク質と反応した。反応の手順とタンパク質の検出:タンパク質の結合は実施例5の通りとした。異なる組織タンパク質を用いて処理した複製IVTTアレイからの陽性シグナルのパターンを比較した。アレイの特定の位置における個々のタンパク質を同定するために、cDNAライブラリーの原版のプレートから対応する単鎖抗体遺伝子を回収した。次いで、対象の単鎖抗体遺伝子を、より規模の大きいIVTTに再び付し、そして、実施例6に記載のIVTTタンパク質ライブラリーからの結合パターンの検索と同定のためか、又は実施例1に記載の天然組織タンパク質の(二次元ゲルによる)検索と同定のために使用した。
【0124】
実施例10
リボソーム提示を形成するためのDNAチップの使用
cDNAをIVTTベクターにクローニングするために使用するプライマーの一つが、チップ上のDNA分子にアニーリングされるように設計され転写された配列の中に種々の配列の広がりを伴った混合プライマーであること以外は、実施例1の記載に本質的に従って、DNAチップ上で連続的な固定化を行うためのポリソーム提示ライブラリーを形成するためにライブラリーを形成した。一方、転写された配列及びクローニングされた合成オリゴヌクレオチドの混合物の中で、提示ライブラリーからのプラスミドプールがただ一つの制限酵素によって消化された。よって、生産されたmRNA分子のそれぞれがただ一つの配列タグ、これは少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは約20ヌクレオチドである、を含むように、このライブラリーは構築された。
【0125】
単鎖抗体(scAbs)遺伝子の修飾されたものの一対を用いて、DNAチップタンパク質アレイ法を試験するための実験を行った。二つの修飾されたscAbsは、N末端エピトープタグ、重鎖可変領域(VH)、14アミノ酸リンカー(EGKSSGSGSESKVD)、軽鎖可変領域(VL)を含んで調製され、ヒトκ定常領域のcDNAに融合したものであった。ヒトκ定常領域配列、これはポリヒスチジンタグを3’末端に含む、は修飾を受けて停止コドンが削除されていた。ヒトκ定常領域はスペーサーとして機能するものが含まれ、インビトロ翻訳システムにおいてリボソーム複合体になお付着している場合であっても、生成期の単鎖Fvを正しくフォールディングさせる。
【0126】
これらの構築物はベクターpET 5c(ローゼンベルグ(Rosenberg AH)ら、Gene, 56:125-135. 1987)にクローニングされ、これはT7プロモーターと、それに次くT7の遺伝子10からリボソーム結合サイトを提供した。エピトープタグと、次のT7の遺伝子10最初のAtgとをコードする配列となるように、scAb構築物はベクターのNdeIの位置に挿入された。シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)に対するscAbからなる構築物(モリー(Molloy P.) ら、Journal of applied Bacteriology, 78:359-365, 1995 )であって、FLAGエピトープ(MDYKDDDK)(ナピックとプルックサム(Knappik A and Pluckthum A) 、Bio Techiques, 17:754-761, 1994 )を持つ最初のものをN末端に加えた。第二のものは、抗体340(デュラント(Durrant LG)ら、Prenatal Diagnosis, 14:131-140, 1994)のN末端にポリヒスチジンタグが付いたものから構築されたscAbからなっていた。
【0127】
これらのプラスミドは次の誘導タンパク質の親の役割をした。抗シュードモナス・アエルギノーサ(α−Ps)とその340scAbは次のようにして構築した。それぞれ5’FLAGエピトープ配列を導入し、3’停止コドンを除去するプライマーRD5’FLAG:5'gcggatcccatatggactacaaagacgatgacgacaaacaggtgcagctgcag3' (ゲノシスバイオテクノロジーズユーラポ社(Genosys Biotechnologies Europe Ltd)、ケンブリッジ、英国)及びRD3’:5'gcgaattcgtggtggtggtggtggtgtgactctcc3' (ゲノシス社)を用いて、ベクターpPM1His(前掲のモリーら)中のα−PsscAbDNAを増幅した。反応混合物は、0.1μgの鋳型DNA、2.6単位のExpandTMハイフィデリティPCR酵素混合物(ベーリンガーマンハイム社、ルイス、英国)、エキスパンドHF緩衝液(ベーリンガーマンハイム社)、1.5mMのMgCl2 、200μMのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)(ライフテクノロジーズ社、ペーズリー、英国)及び25ピコモルの各プライマーを含んでいた。サイクルは、96℃で5分間、次いで〔95℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間〕を5回、〔95℃で45秒間、50℃で1分間、72℃で1分30秒間〕を8回、〔95℃で45秒間、50℃で1分間、72℃で2分間〕を5回、最後に72℃で5分間というものであった。得られた1123塩基対生成物をBamHIII とEcoRIとで切断し、ベクターpUC19(ベーリンガーマンハイム社)中にクローニングした。[33P] ジデオキシヌクレオチドを用いたサーモシーケナーゼラジオラベルドターミネーターサイクルシーケンシングキット(Thermo Sequenase radiolabeled terminator cycle sequencing kit) (アマシャムライフサイエンス社(Amersham Life Science) 、アマシャム、英国)を使用してこのDNA配列を確認した。この構築物を、NdeIからEcoRIへの断片(モレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル、サンブロック ジェー、フリッツ イーエフ、マニアティス ティー編、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、1989、ニューヨーク、アメリカ合衆国を参照すること)としてpET5cベクター(プロメガユーケー社、サザンプトン、英国)中にクローニングした。Wizard(登録商標)プラスエスブイミニプレップスディーエヌエーピューリフィケーションシステム(Plus SV Minipreps DNA purifications System)(プロメガユーケー社)を使用して、又はより大規模のキアゲンプラスミドミディキット(Qiagen Plasmid Midi Kit) (キアゲン社、クローレイ、英国)を使用してプラスミドDNAを調製した。新しく作成されたこの新規プラスミドを、pET5c FLAG−αPs scAbと名付けた。
【0128】
ppM1HisのαPsVHとVKの代わりに抗体340のVHとVKを置換することによって、340scAbを生産した。プライマー5'cagctgcaggagtctgggggaggcttag3'(ゲノシス社)や5'tcagtagacggtgaccgaggttccttgaccccagta3'(ゲノシス社)を用いて340VHを増幅した。反応混合物は、0.1μgの鋳型DNA、2.6単位のExpandTMハイフィデリティPCR酵素混合物、エキスパンドHF緩衝液、1.5mMのMgCl2 、200μMのdNTPs及び25ピコモルの各プライマーを含んでいた。サイクルは、96℃で5分間、次いで〔95℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間〕を5回、〔95℃で45秒間、50℃で1分間、72℃で1分30秒間〕を8回、〔95℃で45秒間、50℃で1分間、72℃で2分間〕を5回、最後に72℃で5分間というものであった。得られた357塩基対生成物をPstIとBstEIIとで切断し、PstIとBstEIIとで切断したpPM1His(前掲のモレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアル)中にクローニングした。同様に、プライマー5'gtgacattgagctcacacagtctcct3'や5'cagcccgttttatctcgagcttggtccg3'(ゲノシス社)を用いて340VKを増幅した。339塩基対生成物をSstIとXhoIとで切断し、SstIとXhoIとで切断した、修飾されたpPM1His(上記で生産されたもの)中にクローニングした。[33P] ジデオキシヌクレオチド(アマシャム)を用いたサーモシーケナーゼラジオラベルドターミネーターサイクルシーケンシングキットを使用してこのDNA配列を確認した。それぞれ5’末端にヒスチジン6残基を導入し、3’停止コドンを除去するプライマーRD5’HIS:5'gcggatcccatatgcaccatcatcaccatcaccaggtgcagctgcag3' (ゲノシス社)及び(上記の)RD3’を用いてベクターpPM1His中の340scAbのDNAを増幅した。試薬と増幅条件は、α−Ps構築物のそれと全く同じであった。得られた1114塩基対の産物を、BamHIとEcoRIとで切断し、ベクターpUC19にクローニングした(前掲のモレキュラークローニング、アラボラトリーマニュアルを参照すること)。このDNA配列を前記のようにして確認し、この構築物をNdeIからEcoRIへの断片としてベクターpET5cにクローニングして、プラスミドpEt5c HIS 340 scAbを新たに作成した。
【0129】
核酸「捕捉ドメイン」配列を含有させるためにモデル遺伝子を修飾した。使用した合成オリゴヌクレオチドは次の通りであった。
【0130】
【外2】
Figure 0004524445
【0131】
捕捉ドメイン配列は、SFFVフレンド赤白血病ウイルス由来であり、哺乳動物cDNAデータベースには相補的配列がないことが以前より知られている(タビチアン(Tavitian)ら(1998)、Nature Medicine 4:467-471 )。捕捉ドメインは上記のモデル遺伝子の5’UTR配列中に挿入されているか、又は該遺伝子の3’領域に融合されている。構築物はそれぞれCAP5変異体又はCAP3変異体と名付けられた。CAP5ドメイン及びCAP3ドメインの挿入は、利用可能なモデル遺伝子のそれぞれに万能となるように設定されたプライマーを用いてのPCRにより実施された。CAP5の挿入のために、プライマーCAP5インナーとRD3とを用い、次いで、プライマーCAP5アウターとRD3を用いる第二のPCRという二連続のPCRを実施した。得られた産物を精製し、インビトロ転写反応に直接使用した。同じ計画にてCAP3ドメインの挿入を続けたものの、プライマーCAP3インナーはプライマーT7ループと共に最初のPCRにて使用し、次いで、第二のPCRにてプライマーCAP3アウターとT7ループを使用した。精製産物はインビトロ転写反応に直接使用した。T7ポリメラーゼとRiboMAX システム(プロメガ社、サザンプトン、英国)を使用し、供給者の推奨する条件にて転写反応を実施した。
【0132】
マイクロタイタープレートの表面に共有結合させた合成オリゴヌクレオチドにRNAをハイブリダイズさせた。捕捉オリゴヌクレオチドはRNA内の捕捉ドメインと相補的な配列であった。いくつかの実験において、捕捉オリゴヌクレオチドは5’アミノ−リンカー部位を介して付着しており、他の実験においては、付着はその分子の3’末端を介したものであった。オリゴヌクレオチドが付着したマイクロタイタープレートは、ゲノシスバイオテクノロジーズユーラポ社(ケンブリッジ、英国)と契約して提供を受けた。ハイブリダイズ反応は、マスコスとサザン(Maskos and Southern)(Maskos U and Southern E.M. (1992) Nucleic Acids Res. 20:1675-1678)の記載に従って、テトラメチルアンモニウムクロライドを含有する反応緩衝液中で55℃、60分間で実施した。ハイブリダイズ後の洗浄を、0.1%(v/v) SDSを含むSSPE緩衝液(1×SSPE緩衝液=180mMのNaCl、10mMのリン酸ナトリウム、pH7.7、1mMのエチレンジアミン四酢酸)の希釈液を用いて高いストリンジェンシーで行った。
【0133】
最後の洗浄に続けて、完全アミノ酸混合物を追加したウサギ網状赤血球溶解物(プロメガ社)の25μlを添加することによりインビトロ翻訳反応を開始した。いくつかの実験においては、アミノ酸混合物からメチオニンを引いたものを使用し、この場合、35S−メチオニン(アマシャム)を加えた。30℃で60分間の翻訳反応を行い、次いで氷上に置いた。1%(w/v) のBSAを含む氷冷PBSを用いてウェルを洗浄した。モデル遺伝子構築物のそれぞれについて計画されたFlagか又はhis6エピトープのいずれかに対する抗体を用いて翻訳産物を検出した。希釈したPBSで洗浄したウェルに抗体を添加した。ゆるやかに混合しながら、4℃で60分間インキュベートした。推奨された希釈の程度となるように二次試薬(抗マウス−HRP複合体)をPBS中に加え、4℃で30分間インキュベートした。発色基質で発色させる前に、200μlのPBSを用いてウェルを3回洗浄した。492nmでプレートを読んだ。反応混合物に35S−メチオニンを含めたものについては、シンチレーションの測定により翻訳産物を検出した。この結果から、会合したmRNAへの付着によって正しいタンパク質の固定化が成功したことが、次には相補領域の配列によって対応する固定化DNAにアニーリングすることが示された。
【0134】
実施例11
tat及びSRPによるリボソーム提示
抗体340由来の上皮増殖因子レセプター(EGFR)に特異的な、そして抗体J591由来の前立腺表皮膜抗原(PSMA)に特異的な二つの単鎖抗体遺伝子(scFv)、それぞれ大腸菌発現ベクターpPMhisにクローニングされている、が出発点であった。長鎖合成オリゴヌクレオチドとPCRとを使用するT7RNAポリメラーゼのためのプロモーターを上流に備えたpGEM T7/SP6プラスミド(プロメガ社、サザンプトン、英国)にscFv断片が再クローニングされ、そして上流の細菌リボソーム結合部位、下流のM13ファージ遺伝子III 由来のスペーサーセグメント、及び大腸菌lppターミネーター由来の3’転写末端領域が提供された。scFvの両者について、翻訳停止コドンをPCR反応により除去した。結果として得られたプラスミドを、pT7340A(EGFRのためのもの)及びpT7591A(PSMAのためのもの)と名付けた。
【0135】
上記の基本的なプラスミドの変異体として、ストランドオーバーラップエクステンションPCRによって抗開始セグメントと下流側の末端セグメントとが提供され、ATG開始コドンとscFv遺伝子間の分泌性リーダー配列と、スペーサーセグメントと転写末端配列間の末端配列TAR配列のそれぞれを挿入した。結果として得られたプラスミドを、pT7340B(EGFRのためのもの)及びpT7591B(PSMAのためのもの)と名付けた。
【0136】
RiboMAXTMキット(プロメガ社、サザンプトン、英国)を用いて、メーカーの説明書に従ってpT7プラスミドのインビトロ転写を行った。得られたmRNAをメーカーのプロトコールに従って精製した。
【0137】
(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように変更し、そしてHIVのTat37〜72ペプチドを追加した(前掲の)チェンとズバイ(Chen and Zubay)に記載されたように、大腸菌S−30システム中でインビトロ翻訳を行った。翻訳から10分後、(ロミシュ、ウェブ、ヘルツ、プレーン、フランク、ブレナー及びワルター(Romisch K, Webb J, Herz J, Prehn S, Frank R, Brenner S and Walter P) 、Nature vol 340 (1989) p478-482の方法で生産された)SRPの調製物を添加し、翻訳をさらに10分間続けた。翻訳を停止し、混合物を(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように遠心分離した。次いで、プレート内をEGFR又はPSMAのいずれかで被覆したマイクロタイタープレート上で、翻訳反応物を室温で1時間インキュベートした。残ったリボソーム複合体を洗浄して解離させ、mRNAの単離、逆転写PCR及び転写−翻訳の繰り返しを、(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように行った。配列決定と、選択された遺伝子集団における原版のscFvの発現の測定のために、リボソーム提示の5ラウンド後のPCR産物をpUC18中にクローニングした。この測定のために、少なくとも50のpUC18クローン中の挿入物の配列を決定した。
【0138】
EGFR抗原調製物のスクリーニングのために、1:1のモル比のpT7340A:pT7591Aを含む原版のプラスミド混合物を、最終的なpUC18ライブラリーが84%のpT7340A配列と16%のpT7591Aからなるように上昇させた。1:1のモル比のpT7340A:pT7340B、又は1:1のモル比のpT7340B:pT7591Bによって、最終的なpUC18ライブラリーは、両方のケースともにpT7340Bが100%となった。
【0139】
実施例12
出発点は、二つの単鎖抗体(scFv)、一方がジゴキシンに特異的なもの(タン(Tang)ら、Journal of Biological Chemistry 270 (1995) p7829-7835 )で、もう一方がフルオレセインに特異的なもの(デンジンとボス(Denzin and Voss) 、Journal of Biological Chemistry 267 (1992) p8925-8931 )であった。フォワードプライマー、fdig1:CCG TAT AGA TCT CAG GTC AAA CTG CAG GAG TCT 及びリバースプライマー、rdig1:CCG TAT GGA TCC CCG TTT TAT TTC CAA CTT TGT を用いて、pCANTABベクター(タンら)から抗ジゴキシンscFvをPCR増幅した。ベーリンガーエキスパンドハイフィデリティPCRシステムを用いてPCR増幅反応を行った。DNA断片の増幅のための反応条件は、1×エキスパンドHF緩衝液、2.5mMのMgCl2 、4mMの各種dNTP、2.5単位のポリメラーゼ、10ngの鋳型DNA及び30ピコモルのプライマーDNAであった。反応物をサーマルサイクラー中で、次のプログラム:92℃で5分間、(プライマー配列によって)53〜67℃で5分間、72℃で1分間、次いで、92℃で1分間、53〜67℃で1分間、72℃で1分間の30サイクルにてインキュベートした。得られた720塩基対断片を、次に、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ社)を用いて精製し、メーカーの説明書に従ってPCR産物とベクターとをBglIIとBamHIとで消化することにより、大腸菌発現ベクターpET−9(プロメガ社)のBamHIサイトにクローニングした。このプラスミドは、バクテリオファージT7遺伝子10由来のプロモーター、翻訳開始サイト、及びターミネーターを含むものである。得られたプラスミドをpDIG1と名付けた。マレンダー、カレロ及びボス(Mallender, Carrero and Voss) 、(Journal of Biological Chemistry 271 (1996), p5338-5346)に記載のようにして、フォワードプライマー、fox1:CCG TAT AGA GAT GTC GTG ATG ACC CAA ACT 及びリバースプライマー、rox1:CCG TAT GGA TCC TGA GGA GAC GGT GAC TGA GGT を用いて、発現ベクターpGX8773から抗フルオレセインscFvDNA配列を新たに作成した。この断片はPCRによって新たに作成されたものであり、次いで、上記のようにしてpET−9ベクター中へクローニングされてpOX1と名付けた。
【0140】
次の2セットのプライマーを用いての、二本鎖M13DNAの調製物についてのPCRの実施によって、繊維状ファージM13の遺伝子III のグリシンリッチリンカーに基いたスペーサー配列を新たに作成した。
【0141】
【外3】
Figure 0004524445
【0142】
m13f1とm13r1とのプライマーの組み合わせ、又はm13f2とm13r2とのプライマーの組み合わせを用いて、2セットのPCR反応を行った。これら2セットの反応によって、二つの産物の集団、一つは5’BglIIと3’XhoIに制限サイトを持つものであり、もう一つは5’SalIと3’BclIに制限サイトを持つものが新たに作成された。制限サイトには、30アミノ酸のリンカーの多量体の構築を促進するものが含まれていた。BglII/XhoIPCR産物を2回消化し、リン酸化して、次に、SalI/BclIで消化したもののPCR産物と結合した。このようにして、5’から3’のみに結合された多量体(これは消化によって確認できた。)を形成させた。900塩基対の断片を、アガロースゲル電気泳動によって単離し、そして、メーカーの説明書に従って、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ社)を用いて精製した。次いで、この断片をBglIIとBclIで消化し、そしてscFv断片の下流にある、pDIG1とpOX1のBamHIサイトにクローニングして、それぞれpDIG2とpOX2とを新たに作成した。
【0143】
上記の基本的なプラスミドの変異体として、AUG開始コドンとscFv遺伝子間に上流の抗開始セグメントを挿入したものがあった。これは、ネズミVhシグナル配列をこのscFvプライマーfdig1とfox1とに組み込むことによって実施した。
【0144】
【外4】
Figure 0004524445
【0145】
rdig1とrox1を組み合わせてPCRを行った後、得られたそれぞれのPCR産物をBglIIとBamHIとで消化して、既に記載したようにしてpETベクター中にクローニングし、pDIG3とpOX3を新たに作成した。
【0146】
さらに、(上記のようにして新たに作成された)BclIで消化した900塩基対を次のとおりのHIVのTARをコードする自己アニーリングしたオリゴヌクレオチドへ結合することにより、HIVのトランスアクチベーション応答因子(TAR)配列をM13スペーサーセグメントから下流側に挿入した。
【0147】
【外5】
Figure 0004524445
【0148】
この断片を精製し、pDIG3とpOX3のBamHIサイトにクローニングしてpDIG4とpOX4を新たに作成した。
【0149】
クローニングの後に、PCRで新たに作成した挿入物の配列解析を、二本鎖プラスミドDNA鋳型(クラフト(Kraft) ら、Bio Techniques 6 (1988), p544 )とT7シークエンシングプライマーを用いるシークエナーゼ(アマシャム社)を用いてのチェインターミネーター法にて行った。
【0150】
メーカーの説明書に従って、RiboMAX ラージスケールRNA生成システム(プロメガ社)を用いて、構築物pDIG3、pOX3及びpDIG4、pOX4のインビトロ転写を行った。得られたmRNAを、ポリAトラクトシステム(プロメガ社)を用いて精製した。
【0151】
(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように変更し、そして10μg/mlのHIVのTat37〜72ペプチド(ナリシュキン(Naryshkin) ら、Biochemistry 36 (1997), p3496-3505)の存在下又は非存在下で、(前掲の)チェンとズバイに記載されたように、大腸菌S−30システム中で抗ジゴキシンscFvのmRNAと抗フルオレセインscFvのmRNAの混合物のインビトロ翻訳を行った。いくつかのサンプルでは、翻訳から10分後、(ロミシュら、Nature vol 340 (1989) p478-482の方法で生産された)SRPの調製物を添加し、翻訳をさらに10分間続けた。翻訳を停止し、混合物を(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように遠心分離した。次いで、プレート内をジゴキシン又はフルオレセインのいずれかで被覆したマイクロタイタープレート上で、翻訳反応物を室温で1時間インキュベートした。残ったリボソーム複合体を洗浄して解離させ、mRNAの単離、逆転写PCR及び転写−翻訳の繰り返しを、(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように行った。配列決定と、選択された遺伝子集団における原版のscFvの発現の測定のために、リボソーム提示の5ラウンド後のPCR産物をpUC18中にクローニングした。この測定のために、少なくとも50のpUC18クローン中の挿入物の配列決定を行った。
【0152】
表1には、SRPの添加による選択の増加を示唆するいくつかのものと共に、tatを添加したことによる翻訳反応が標的リガンドに対するscFvをコードするmRNAの選択を増加させたことを示す分析結果が示されている。
【0153】
実施例13
ジシストロニック(dicistronic) mRNA由来のタンパク質−タンパク質結合
ジシストロニック構築物の使用によって、リボソーム提示がタンパク質の相互作用を同定するのに使用できることを示すために、ヒトIL−5タンパク質が用いられた。三つの基本的な発現プラスミドが、下記のようにして構築された。
【0154】
構築物1:
ヒトIL−5遺伝子を、下記のプライマーを用いてpUC18(アールアンドディーシステムズ社(R and D Systems) 、アビンドン(Abingdon)、英国)から増幅した。
【0155】
【外6】
Figure 0004524445
【0156】
ベーリンガーエキスパンドハイフィデリティPCRシステム(ベーリンガー社、ルイス、英国)を用いてPCR増幅反応を行った。DNA断片の増幅のための反応条件は、1×エキスパンドHF緩衝液、2.5mMのMgCl2 、4mMの各種dNTP、2.5単位のポリメラーゼ、10ngの鋳型DNA及び30ピコモルのプライマーDNAであった。反応物をサーマルサイクラー中で、次のプログラム:92℃で5分間、(プライマー配列によって)53〜67℃で5分間、72℃で1分間、次いで、92℃で1分間、53〜67℃で1分間、72℃で1分間の30サイクルにてインキュベートした。得られた448塩基対断片を、次に、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ社)を用いて精製し、メーカーの説明書に従ってPCR産物とベクターとをBglIIとBamHIとで消化することにより、大腸菌発現ベクターpET−9(プロメガ社)のBamHIサイトにクローニングした。このプラスミドは、バクテリオファージT7遺伝子10由来のプロモーター、翻訳開始サイト、及びターミネーターを含むものである。得られたプラスミドをpIL5aと名付けた。
【0157】
構築物2:
下記のプライマーを用いてpUC18からヒトIL−5遺伝子を増幅した。
【0158】
【外7】
Figure 0004524445
【0159】
PCR増幅と精製は上記のようにして行った。PCR産物を次にBglIIとBamHIとで消化し、pET9ベクター(プロメガ社)のBamHIサイトにクローニングして、pIL5bと名付けた。
配列が上記にある、次のプライマーm13f1、m13r1、m13f2、m13r2を用いての、二本鎖M13DNAの調製物についてのPCRの実施によって、繊維状ファージM13の遺伝子III のグリシンリッチリンカーに基いたスペーサー配列を新たに作成した。
【0160】
m13f1とm13r1とのプライマーの組み合わせ、又はm13f2とm13r2とのプライマーの組み合わせを用いて、2セットのPCR反応を行った。これら2セットの反応によって、二つの産物の集団、一つは5’BglIIと3’XhoIに制限サイトを持つものであり、もう一つは5’SalIと3’BclIに制限サイトを持つものが新たに作成された。制限サイトには、30アミノ酸のリンカーの多量体の構築を促進するものが含まれていた。BglII/XhoIPCR産物を2回消化し、リン酸化して、次に、SalI/BclIで消化したもののPCR産物と結合した。このようにして、5’から3’のみに結合された多量体(これは消化によって確認できた。)を形成させた。900塩基対の断片を、アガロースゲル電気泳動によって単離し、そして、メーカーの説明書に従って、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ社)を用いて精製した。
【0161】
(上記のようにして新たに作成された)BclIで消化した900塩基対のスペーサーセグメントを、HIVのTARをコードする自己アニーリングしたオリゴヌクレオチドTAR1、TAR2へ結合することにより、HIVのトランスアクチベーション応答因子(TAR)配列をM13スペーサーセグメントから下流側に挿入した。
【0162】
この断片を再精製し、BglIIで消化してpIL5bのBamHIサイトにクローニングしてpIL5cを新たに作成した。
【0163】
構築物3:
pIL5cをHindIII とBamHIとで消化して、構築物2において記載の挿入物を放出させ、次いで、これを、同じくHindIII とBamHIとで消化しておいたpIL5aの中にクローニングした。得られた構築物をpIL5dと名付けた。
【0164】
クローニングの後に、PCRによって新たに作成された挿入物の配列解析を、二本鎖プラスミドDNA鋳型(クラフトら、Bio Techniques 6 (1988), p544 )とT7シークエンシングプライマーを用いるシークエナーゼ(アマシャム社、リトルカルフォント(Little Chalfont) 、英国)を用いてのチェインターミネーター法にて行った。
【0165】
メーカーの説明書に従って、RiboMAX ラージスケールRNA生成システム(プロメガ社)を用いて、構築物pIL5a、pIL5c及びpIL5dのインビトロ転写を行った。得られたmRNAを、ポリAトラクトシステム(プロメガ社)を用いて精製した。
【0166】
(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように変更し、そしてHIVのtat37〜72ペプチド(ナリシュキンら、Biochemistry 36 (1997), p3496-3505)を追加して、(前掲の)チェンとズバイに記載されたようにして大腸菌S−30システム中でインビトロ翻訳を行った。翻訳を停止し、混合物を(前掲の)ハーネスとプルクサンに記載されたように遠心分離した。ノバジェン(Novagen) (ケンブリッジバイオサイエンス社(Cambridge Biosciences) 、ケンブリッジ、英国)に記載されたようにpET−His−Tagシステムを用いての迅速アフィニティーカラムクロマトグラフィーを使用して、変性条件下で翻訳混合物の精製を行った。結合したタンパク質をメーカーの説明書に記載の方法によって溶出した。
【0167】
前掲のアンティボディーズ、アラボラトリー マニュアルに記載のMBSを使用し、N末端システイン残基を介してKLHに複合化したtatペプチド37〜72を用いて抗tat抗体を作成した。上記のようにして、10μgの複合体を用いてBalb/cマウスを免疫し、血清を集めて1:100に希釈してさらなる実験に使用した。上記からのpET−His−TagA−溶出物を希釈したものを、メーカーの説明書に従って、イムロン2 96穴マイクロタイタープレート(ダイナテック社(Dynatech)、シャンティー(Chantilly) 、バージニア州、アメリカ合衆国)に添加し、次いで、抗tat抗体を添加して室温下2時間インキュベートした。次に、プレートをPBSで3回洗浄し、HRP標識化ヤギ抗マウス抗体複合体(番号A4416、シグマ社、プール、英国)の1:1000希釈液を添加し、さらに室温で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、前掲のアンティボディーズ、アラボラトリー マニュアルに従ってTMB基質を添加した。
【0168】
この結果から、ジシストロニックプラスミドpIL5d由来のELISAアッセイにおいて、溶出されたHisタグが付着したタンパク質はtatタンパク質と関係があることが示され、しかしながら、tatの結合が検出されなかったモノシストロニックプラスミドpIL5aとpIL5cとの1:1混合物に由来しないことが示された。このことは、翻訳されたIL−5はジシストロニックプラスミドからホモダイマー化されたものであり、モノシストロニックプラスミドからではないことを示した。
【0169】
実施例14
ビオチン化オリゴヌクレオチド及びストレプトアビジンを用いるリボソーム提示
ヒトκ定常領域のcDNAに融合させたN−末端エピトープ・タグ、重鎖可変領域(VH )、14アミノ酸リンカー(EGKSSGSGSESKVD)、軽鎖可変領域(VL )からなる二個の修飾単鎖抗体(scAb’s)を調製した。このヒトκ定常領域配列は、3’末端にポリ−ヒスチジンタグを含んでおり、停止コドンを欠失するように修飾したものであった。
【0170】
修飾された抗−シュードモナスscAb及び修飾された340scAbは、実施例10に記述したように構築した。上記プラスミドのイン・ビトロの共役した転写及び翻訳は、環状DNAに対する大腸菌T7S30エキストラクト・システム(プロメガ社)を用い、すべての反応にRNasin(登録商標)(プロメガ社)を80ユニット/反応加えて、プロメガ・テクニカル・ブレタンNo.219に記述されたように行った。ビオチン化オリゴヌクレオチドCκ3’ブロック(5’TTGAAGCTCTTTGTGACGGGCGAACTC3’)及びストレプトアビジンを添加しそして添加せずに、2μgの鋳型DNA,pET5cFLAG−αPs・scAb又はpET5cHIS−340scAbを反応混合物中で転写及び翻訳した。さらに、反応混合物には、総量50μlに1μlのUTPα33P(0.37MBq)(ICNリミティッド、テーム、オックスフォードシャー、英国)を含ませた。これらの反応液は、5μMの3’ビオチン化Cκ3’ブロックオリゴヌクレオチド及び1ngのストレプトアビジン(ベーリンガー・マンハイム)を含んでいた。反応液を30℃で30分間インキュベートし、50mMまで酢酸マグネシウムを添加し氷上で冷却して反応を停止させた(ヘインズ及びプルックサン,Proc. Natl. Acad. Sci. 94: 4937-4942, 1997)。200μlの氷冷洗浄緩衝液(50mMのトリス−塩酸,pH7.5、150mMの塩化ナトリウム、50mMの酢酸マグネシウム、0.1%のトゥイーン20(ヘインズ及びプルックサン,上記)並びに1μl(40ユニット)のRNasin(登録商標)(プロメガユーケイリミティッド))を添加して、反応混合物を五倍に希釈した。
【0171】
生産されたタンパク質は、標準的プロトコル(アンティボディーズ アラボラトリー マニュアル、ハーロウ,イー.及びレイン,ディー編、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、1988、ニューヨーク、アメリカ合衆国、並びにキアゲンウエスタンアンドドットブロッティングプロトコールズ 1997年9月)を用い、翻訳されたタンパク質をPenta His(登録商標)抗体(0.1μg/ml)(キアゲンリミティッド)又は抗−FLAGM2抗体(1.4μg/ml)(コダック・サイエンティフィック・イメージング・システムズ・リミティッド、ニューヨーク、アメリカ合衆国)を用いて検出するウエスタン・ドットブロットにより、そしてその後抗−マウスIgGHRP複合体(0.5μg/ml)(シグマ、プール、英国)で処理することにより、特性決定を行った。抗−ヒトCκ特異的HRP複合体(0.5μg/ml)(ザ・バインディング・サイト、バッキンガム、英国)は直接使用した。タンパク質は化学発光検出法(ECL、アマシャム・インターナショナル・リミティッド)によりそしてオートラジオグラフィーにより可視化した。既知の濃度の抗−シュードモナス・アエルギノーザscAb(モロイら,上記)及びT7S30エキストラクト(プロメガユーケイリミティッド)と共に供給されたPinpoint(登録商標)対照プラスミドから転写翻訳されたタンパク質をそれぞれ正及び負の対照として使用するウエスタン・ドット・プロットによる分析に付した。
【0172】
イミュロン4HBX96ウェルプレート(ダイナテック)のウェルを、50mMの炭酸−重炭酸緩衝液pH9.5(シグマ)中の2μg/ウェルでの抗−FLAGM2抗体、50mMの炭酸−重炭酸緩衝液pH9.5中の2μg/ウェルでのPenta−His(登録商標)抗体、50mMの炭酸−重炭酸緩衝液pH9.5中の5μg/mlBSA(シグマ)又は50μl/ウェルの加熱殺菌したシュードモナス・アエルギノーザ調製物(マックグレゴル,ディーら、上記)で被覆した。ウェルを1% ベーリンガーブロック剤(ベーリンガー・マンハイム)で室温で60分間ブロックした。氷冷洗浄緩衝液でウェルを3回洗浄した後、転写/翻訳反応物の試料50μlを種々の捕獲ウェル中に注入して0度で60分間ゆすりながらインキュベートした。未結合の物質を新たなチューブに除去した。このウェルを氷冷洗浄緩衝液で5回洗浄した。50mMのトリス−塩酸pH7.5、150mM塩化ナトリウム、20mMのEDTAの20μlを添加し、氷上で10分間インキュベートすることによりmRNAを溶出した。収穫したRNAの量を定性的に評価するため、未結合物質の2μl及び溶出された物質の20μlニトロセルロース膜上にスポットし、風乾してオートラジオグラフにかけた。より定量的測定のために、未結合物質及び溶出物質の二連各5μlをマークされたGF/Cガラスファイバーフィルター(ワットマン・インターナショナル・リミティッド、メイドストーン、ケント、英国)上にスポットし、室温で乾燥させた。フィルターの各対の一方を氷冷した5%トリクロロ酢酸(TCA)及び20mMのピロリン酸ナトリウムを含むビーカーに移し、2分間かき混ぜた。フィルターを次いで、TCA/ピロリン酸塩を含む新たなビーカーに移し、そしてこの洗浄操作をさらに2回繰り返した。洗浄したフィルターを70%エタノールに短時間移し、ついで室温で乾燥した。洗浄したフィルター及び洗浄しないフィルターをシンチレーションバイアルに移し、シンチレーション液を添加した。液体シンチレーションカウンター中でフィルターのカウントを行った。洗浄しないフィルターは試料中の放射活性の総量を示し、洗浄したフィルターは核酸に取り込まれた放射活性の量を示す。
【0173】
この分析の結果を表1に示す。表1は、ビオチン化ブロッキングオリゴヌクレオチド及びストレプトアビジンを添加した翻訳反応液が標的リガンドに対するscFvをコードするmRNAの選択を増加させる結果となることを示す。
【0174】
これらの実験は環状DNAに対する大腸菌T7S30エキストラクト・システムの代わりにTNT(登録商標)カプルッド・レティキュロサイト・ライゼート・システム(プロメガユーケイリミティッド)を用いて繰り返された。転写翻訳反応液は、プロメガ・テクニカル・ブレタンNo.126の指示のように構成し、TNT(登録商標)ラビット・レティキュロサイト・ライゼート、TNT(登録商標)緩衝液、完全アミノ酸混合物、RNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤、TNT(登録商標)T7RNAポリメラーゼ、1μgの鋳型DNA,pET5cFLAG−αPsscAb又はpET5cHIS−340scAbを含んでいた。この反応は30℃で行われた。
【0175】
この実験の結果は、表2に要約されている。表2は、ビオチン化ブロッキングオリゴヌクレオチド及びストレプトアビジンを添加した翻訳反応は標的リガンドに対するscFvをコードするmRNAの選択を増加させる結果となることを示す。
【0176】
実施例15
実施例14に詳述した実験を大腸菌T7S30エキストラクト・システムを用いて繰り返した。転写/翻訳反応は、1ngのストレプトアビジンに対しブロッキングオリゴヌクレオチドの濃度をそれぞれ10nM及び20nMに増加させたこと及び反応を二時間行わせたことを除き、上に述べたと全く同様に行った。
【0177】
翻訳されたタンパク質の部分標本を上述のようにウエスタン・ドット・ブロットにより特性決定した。反応混合物の残りの45μlを氷上で急速に冷却し、酢酸マグネシウムを最終濃度が50mMになるまで添加した。ついで、この反応混合物を氷冷洗浄緩衝液で200μlに希釈した。この反応混合物の50μlを4本の被覆したELISAプレートウェル(50μlの加熱殺菌したシュードモナス・アエルギノーザ細胞又は100μlの抗−FLAGM2モノクローナル抗体(2.8μg/ml)、又は100μlのPenta−His(登録商標)抗体(0.2μg/ml)又は100μlの2%BSA)のそれぞれに添加し、次いで洗浄し、そしてブロック(上述のように)し、そして氷上で1.5時間インキュベートした。ウェルを氷冷洗浄緩衝液で5回洗浄した。溶出緩衝液(上述のような)と共に氷上でさらに10分間振盪しながらインキュベートすることにより洗浄したプレートからmRNAを溶出した。
【0178】
このmRNAを20μgのグリコーゲンキャリア(ベーリンガー・マンハイム)の存在下に−20℃に一晩おいてエタノールで沈殿させた(モレキュラー・クローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル,上記)。その結果得られたmRNAをM−MLV逆転写酵素(RT)と共に逆転写反応の鋳型として使用した。簡単に述べれば、mRNAを70℃、10分間で加熱変性させ、そして氷上で冷却して1nMのプライマーHuCK・FOR:5’AGGCAGTTCCAGATTTC3’、配列2scAb:5’GTGAGCTCGATGTCATCC3’及びRD3’とアニーリングさせた。M−MLV・RT(ライフテクノロジーズ)の200ユニットを添加しそして37℃で60分間インキュベートし、その後70℃で15分間加熱してこのRTを失活させた。次に、その後得られるDNA:RNAハイブリッドを、上記の正向きプライマー(10nM)と共にRD5’Flag逆向きプライマーを用いるPCRの鋳型として使用した。サーマルサイクラー中で、反応液を96℃で5分間、それに続く40サイクルの95℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で30秒間、次いで72℃で6分間、インキュベートした。PCR産物はアガロースゲル電気泳動により分析した。
【0179】
この実験から得られた結果から、ブロッキングオリゴヌクレオチドの濃度を増加するとscFv遺伝子の選択を増加させる結果となることが証明された。
【0180】
実施例16
実施例14に記述した実験を繰り返した。転写/翻訳反応は、鋳型がpET5cFLAGαPsscAb及びpET5cHIS340scAbの等量混合物であったことを除き、上に述べた方法と全く同様に行った。ELISAプレートのウェルを、前と同様に、100μlの2.8μg/mlαFLAGM2抗体及び50μlの加熱殺菌ピー.アエルギノーザ調製物で被覆した。タンパク質−リボソーム−mRNA複合体を捕獲し、溶出し、そして核酸を沈殿させた後、DNアーゼ処理を実施例4で述べたように行った。この生産物を低溶融点アガロースゲル(ライフ・テクノロジーズ)を通す電気泳動により分離し、そして全長PCR生産物(約1100bp)を単離した。これは、それぞれ原核的及び真核的翻訳に対するT7プロモーター、リボソーム結合部位及びKozak配列(Kozak,M.Nucl. Acids Res. 18: 2828, 1990)を含む上流の非翻訳DNA配列、及び翻訳開始コドンを導入するためのプライマーを用いるさらなるラウンドのPCRのための鋳型として使用した。その結果得られるPCR産物を、次に、直鎖状DNA(プロメガユーケイリミティッド)用に調製されたS30抽出物を用いて転写し翻訳した。前と同様に、タンパク質−リボソーム−mRNA複合体を捕獲し、mRNAを溶出し、核酸を回収し、そしてDNアーゼで処理した後、RT・PCR及び次のラウンド用の鋳型DNAを作成するためPCRによるプロモーター及びリボソームの結合部位の導入を行った。リボソーム提示の4から5ラウンドの後に、回収したDNAを元のベクター中に挿入しそし20クローンのDNA配列を決定した。20クローンすべてが抗−シュードモナスscFv配列を含むことが見出された。
【0181】
実施例17
生物学的スクリーニング
生物学的応答の刺激の結果としてモジュレーターを生産する細胞系のモデルとして、細胞系A431(ECACC No.85090402, ECACC、ポートンダウン、英国から)及びヒーラのEGFR変異体(ECACC No.85060701)(ホスフォリパーゼCに結合した抗−EGFR抗体を用いて選択される)がこの実験に使用された。両ケース共、モジュレータータンパク質であるHIVtatを分泌する変異体を使用した。細胞を10%FBSを補足したDMEM中で生育させた。両方の系から下記のように、tatタンパク質を分泌する組み換え体細胞系が誘導された。すなわち、合成HIVtat遺伝子をアールアンドディー・システムズ(エイビングドン、英国)から購入し、そして下記のプライマーを用いてPCR増幅した。
【0182】
【外8】
Figure 0004524445
【0183】
その結果得られるPCR産物をXhoI及びEcoRIで消化しそしてXhoI及びEcoRIで消化したpCI−neoベクター(プロメガ、サウサンプトン、英国)中にサブクローニングした。このtat発現プラスミドをA431及びEGFRヒーラ中にバイオラド・ジーンパルサーII(バイオラド、ヘメル・ヘンプステッド、英国)を用いる電気穿孔法によりトランスフェクトさせ、そしてG418で選択した。tatの選択は次のようにしてELISAにより確認した。すなわち、tatペプチド37−72を用いて抗−tat抗体を作成した。これを Antibodies, A Laboratory Manual上記に従ってMBSを用いてそのN−末端システイン残基を介してKLHに結合させた。この複合体の10μgを用いて、上記のように、Balb/cマウスを免疫化し、そして血清を集め、1:100の希釈でELISA実験に用いた。抗体の10μg部分を、製造業者の指示に従ってイミュロン2・96ウェルミクロタイタープレート(ダイナテック、チャンティリー、VA、米国)中に注入し、次いで細胞上清の試料を添加して室温で二時間インキュベートし、プレートを次にPBSで3回洗浄し、そして1:1000希釈のHRP−標識化ヤギ抗−マウス抗体複合体(#A4416、シグマ、プール、英国)を添加し、室温でさらに 1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、 Antibodies, A Laboratory Manual(上記)に従ってTMB基質を添加した。これにより、トランスフェクトされたA431及びEGFRヒーラ細胞の培養上清中にHIVtatタンパク質が存在することそしトランスフェクトされていないA431及びEGFRヒーラ細胞の培養上清中には存在しないことが確認された。
【0184】
モデルのタンパク質リガンドとしては、抗−EGFR(表皮成長因子受容体)(PCT 00443) 及び抗−フルオレッセイン(デニジン及びボス,Journal of Biological Chemistry, vol267 (1992) p8925-8931)をコードする二個の単鎖抗体(scFv)遺伝子を使用した。この抗−EGFRscFvは下記のプライマーを用いてクローニングされたVh及びVk鎖からPCR修飾されたものであった。
【0185】
【外9】
Figure 0004524445
【0186】
PCR増幅反応は拡大高忠実度PCRシステム(ベーリンガー、リューズ、英国)を用いて行った。DNA断片の増幅のための反応条件は、1×拡大HF緩衝液、2.5mMのMgCl2 、4mMの各dNTP、2.5ユニットのポリメラーゼ、10ngの鋳型DNA及び30pモルのプライマーDNAであった。反応液は、サーマルサイクラー中、次のプログラムを用いてインキュベートした。すなわち、92℃で5分間、53−67℃(プライマー配列に依存する)で5分間、72℃で1分間、その後92℃で1分間、53−67℃で1分間、そして72℃で1分間の30サイクル。その結果得られた断片を、次に、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ)を用いて精製した。Vh及びVkのこのPCR断片をPstI/BstEII及びSacI/XhoIでそれぞれ消化した。このscFvベクターはpPM1His(モロイら、上記)であった。これをPstI及びBstEIIで消化し、その3.5kbベクター断片を精製し、そしてPstI/BstEIIVhPCR断片をライゲートして大腸菌TG1中に形質転換して340Vh組み換え体を作成した。この340Vhプラスミドを次にSacIとXhoIで消化し、そしてSacI/XhoIVkPCR断片をそのベクター断片中にクローニングして340scFv−生産性TG1細胞を作成した。
【0187】
T7ポリメラーゼ転写ベクター中にクローニングするため、前向きプライマー5’−CCGTATAGATCTATGGAAGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGG−3’及び逆向きプライマー5’−CCGTATGGATCCTGCAGCCACAGTCCGTTTGAT−3’を用いて前記340scFvを増幅した。このPCR断片をBglII及びBamHIで消化し、そして大腸菌発現ベクターpET−9(プロメガ)のBamHI部位にクローニングした。このプラスミドはバクテリオファージT7遺伝子10由来のプロモーター、翻訳開始部位及び翻訳停止部位を含んでいる。その結果得られるプラスミドはpEGFR1と名づけた。抗−フルオレセインscFvDNA配列は、前向きプライマー、fox1 5’−CCGTATAGATCTGATGTCGTGATGACCCAAACT−3’及び逆向きプライマー、rox1 5’−CCGTATGGATCCTGAGGAGACGGTGACTGAGGT−3’を用い、発現ベクターpGX8733から、マレンダー、カレロ及びボス(Journal Biological Chemistry, vol 271 (1996), p5338-5346) により記述されたように形成した。この断片をPCRにより形成させ、ついで上述のようにpET−9ベクター中にクローニングし、そしてpOX1と名づけた。
【0188】
繊維状ファージM13の遺伝子III のグリシンの多いリンカーに基づくスペーサー配列は、二本鎖M13DNAの調製に関するPCRをプライマーm13f1、m13r1、m13f2及びm13r2を用いて従来のように行うことにより形成させた。
【0189】
二セットのPCR反応は、m13f1とm13r1又はm13f2とm13r2のプライマー組合せを用いて行った。これらの二セットの反応により、2集団の生産物、すなわち、5’BglII及び3’XhoI制限部位及び5’SalI及び3’BclI制限部位を持つ集団を形成した。これらの制限部位は、30アミノ酸リンカーのマルチマーの構築を容易にするために含められた。BglII/XhoIPCR産物は二重消化しそしてリン酸化し、次いで消化したSalI/BclI産物と連結した。このようにして、5’から3’に連結したマルチマー(これは消化により確認できるであろう)のみが形成されるであろう。900bpの断片をアガロースゲル電気泳動により単離し、そして製造者の指示に従いウィザードPCR精製カラム(プロメガ)を用いて精製した。次いで、この断片をBglII及びBclIで消化し、pEGFR1のBamHI部位及びscFv断片の下流のpOX1中にクローニングしてそれぞれpEGFR2及びpOX2を形成させた。
【0190】
このHIVトランス活性化応答因子(TAR)配列を、BclIで消化した900bpのスペーサー断片(上記のようにして形成したもの)を従来のようにHIV・TARをコードする自己アニールしたオリゴヌクレオチドTAR1及びTAR2に連結することにより、M13スペーサー断片の下流に挿入した。
【0191】
この断片を精製し、pEGFR2及びpOX2のBamHI部位にクローニングしてpEGFR3及びpOX3を形成させた。クローニングの後、二本鎖プラスミドDNA鋳型(クラフトら,Bio Techniques 6 (1988), p544)及びT7配列決定用プライマーを用いるシーケナーゼ(アマシャム)を用いるジデオキシ・チェイン・ターミネーション法によりPCRで形成させた挿入物の配列決定を行った。
【0192】
構築物pEGFR3及びpOX3のイン・ビトロ転写は、製造者の指示に従い、リボマックス・ラージスケールRNA生産システム(プロメガ)を用いて行った。その結果得られたmRNAをポリATトラクト・システム(プロメガ)を用いて精製し、そして1:1の比(w/w)で混合した。
【0193】
イン・ビトロ翻訳は、チェン及びズベイ(上記)により記述され、ヘインズ及びプルックサン(上記)により修正された大腸菌S−30システムで行った。翻訳の10分後に、SRP(ロミッシュら,Nature 340, (1989), p478-482) の調製物を添加し、そしてその翻訳をさらに10分間継続した。翻訳を停止し、混合物をヘインズ及びプルックサン(上記)により記述されたように遠心分離した。この翻訳反応物を次いでPBS中に希釈した。細胞を成長させ、トリプシン/EDTA中に収穫し、PBS中で2回洗浄した後、106 A431と106 /mlEGFR−ヒーラ細胞の混合物としてか又は個々の細胞型のそれぞれの2×106 /mlかの2×106 細胞/mlでDMEM/10%FBS中に再懸濁した。それぞれの場合に、tat+ 形質転換細胞又はtat- 形質転換細胞のいずれかを用いた。次いで、100μlの細胞懸濁液を、100μlBBS+0.1%ソジウムカルボキシメチルセルロース(ICI、ティーサイド、英国)中のライブラリーDNAの最初の1μg由来の翻訳反応物と37℃で1時間混合した。次いで、細胞を遠心分離し、0.1%(v/w)BSAを含むPBS中で2回洗浄し、この緩衝液の100μl中に再懸濁した。
【0194】
ヘインズ及びプルックサン(上記)により記述されたようにEDTA緩衝液中でmRNAを解離させた後、Antibodies, A Laboratory Manual (上記)に従って調製されたタンパク質Aビーズ上のポリクローナル抗−tat抗体を含むカラムを通すことにより、tatに結合したmRNAを回収した。保持されたリボソーム複合体の洗浄及び解離、mRNAの単離、逆転写PCR及び転写−翻訳の繰り返しは、ヘインズ及びプルックサン(上記)により記述された通りに行った。リボソーム提示の2ラウンドの後、選択された遺伝子集団における最初のscFvの決定及び配列決定のために、そのPCR産物をpUC18中にクローニングした。この決定のため、少なくとも50pUC18クローン中の挿入物について、クローンの同一性を決定するため、部分的に配列決定した。その結果、表3に示すように、A431細胞から分泌されるtatは、A431に結合しない抗−フルオレセインscFvよりも翻訳された抗−EGFRmRNAに対し優先的な選択性を示すことが明らかになる。tatもEGFRヒーラ細胞もそのような優先的選択性を与えないことから、標的細胞への結合とtat分泌の両者が選択のために要求されることが示される。
【0195】
実施例18
リガンド配向性リボソームの提示
モノクローナル抗体340(PCT00443 )を表皮成長因子受容体(EGFR)リガンドとして用いた。1mgの抗体340を、架橋剤としてスルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド・エステル)(ピアス、チェスター、英国、#22312 )を用いて10mgのPLC(シグマ、プール、英国、#P4039)に結合させた。結合は、製造者の推奨するプロトコルを用いて行った。試薬類は結合の後G25セフェデックスカラム(ファルマシア、ミルトンケインズ、英国、#17-0851-01)及び透析を用いて脱塩し精製した。結合は、標準的プロトコル( Antibodies, A Laboratory Manual、上記)に従って、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びクーマシーブルー染色により確認した。
【0196】
モノクローナル及びポリクローナル抗−EGFR抗体を生産する方法は、実質的には Antibodies, A Laboratory Manual、上記に記述された通りの標準的方法であった。EGFRに反応性のマウスモノクローナル抗体は、ヒト乳癌MDA−MB468をBALB/cマウスに対する免疫原として用いて得た。一次及び二次注射は両方とも5×105 細胞を用いて腹腔内に行い、3週間後に尾部静脈に2日にわたって4回の注射を行った。さらに5日後に、脾臓を取り出し、ケネット,R.H.Methods Enzymol. vol 58 (1978) p345-359 の手順に従って、SP2/0マウス骨髄腫細胞に融合させた。プールしたハイブリドーマを、モジタヘディ,エイチら、Br. J. Cancer, vol 67 (1993) p247-253 により記述されたように、EGFR結合活性についてテストし、そして5×107 細胞まで増殖させ、ファスト・トラックmRNA単離キット(インビトロゲン、NVリーク、オランダ国)を用いてmRNAを単離した。次いで、ファルマシア・リコンビナント・ファージ・抗体・システム・キット(ファルマシア、ミルトンケインズ、英国)を用い、製造者の指示に従ってmRNAを処理し、pCANTAB5ベクターから107 cfuのライブラリーを作成した。
【0197】
転写のために、バクテリオファージT7遺伝子10由来のプロモーター、翻訳開始部位及び停止部位を具備するベクターpET−5(プロメガ、サウサンプトン、英国)を使用した。まず、3’スペーサー配列を繊維状ファージM13の遺伝子III のグリシンの多いリンカーに基づき、従来のように、下記のプライマーm13f1、m13r1、m13f2及びm13r2を用いてPCRにより作成されたこのベクターの中にクローニングした。
【0198】
2セットのPCR反応をm13f1とm13r1又はm13f2とm13r2のプライマー組合せを用いて行った。これらの2セットの反応は2集団の生産物を形成した。すなわち、5’BglIIと3’XhoIの制限部位を持つもの及び5’SalIと3’BclIの制限部位を持つものである。この制限部位は30アミノ酸リンカーのマルチマーの構築を容易にするために含められた。BglII/XhoIPCR産物を二重に消化しそしてリン酸化し、ついで消化したSalI/BclIPCR産物と連結した。このようにして、5’から3’に連結したマルチマーはだけが形成された。900bpのマルチマーを選択し、BclIで消化し、従来同様に、HIV・TAR応答因子をコードする自己アニールした合成オリゴヌクレオチドTAR1及びTAR2に連結した。
【0199】
この断片を精製し、BglIIで消化し、pET−5のBamHI部位にクローニングして、遺伝子III /TAR挿入物、下流のBamHI部位を含むが下流には部位を持たないプラスミドpET−5III を作成する。
【0200】
pCANTAB5中の挿入物は下記のプライマーを用いて増幅した。すなわち前向き:5’CCGTATGGATCCGCGGCCCAGCCGGCCATGGC3’、
逆向き:5’CCGTATGGATCCCCCGTGATGGTGATGATGATG3’。
PCR増幅反応はベーリンガー拡大高忠実度PCRシステムを用いて行った。DNA断片の増幅のための反応条件は、1×拡大HF緩衝液、2.5mMのMgCl2 、4mMの各dNTP、2.5ユニットのポリメラーゼ、10ngの鋳型DNA及び30pモルのプライマーDNAであった。反応物はパーキンエルマー・サーマル・サイクラー480中、次のプログラムを用いてインキュベートした。すなわち、92℃で5分間、67℃で5分間、72℃で1分間、その後92℃で1分間、67℃で1分間及び72℃で1分間の30サイクルであった。その結果得られた795bpの断片を、次に、ウィザードPCR精製カラム(プロメガ)を用いて精製し、そしてそのPCR産物をBamHIでそしてベクターをMboIで消化することにより修飾されたベクターpET−5III 中にクローニングした。
【0201】
混合したDNAライブラリー10μgのイン・ビトロ転写を、製造者の指示に従って、リボマックス・ラージスケールRNA生産システム(プロメガ)を用いて行った。その結果得られたmRNAをポリATトラクトシステム(プロメガ)を用いて精製した。
【0202】
イン・ビトロ翻訳はチェン及びズベイ(上記)により記述され、ヘインズ及びプルクサン(PNAS,vol 94 [10]:4937, 1997) により修正された大腸菌S−30システムに、HIVtat37−72ぺプチド(ナリシュキンら,Biochemistry vol 36 (1997) p3496-3505)を補足して行った。翻訳は10分後に停止させ、混合物をヘインズ及びプルクサン(上記)が記述したように遠心分離した。
【0203】
リポソーム−tat調製のために、脂質L−ホスファチジルコリン及びオレオイル−パルミトイルコレステロールを混合することによりリポソーム小胞を作成した。10mMのトリスpH8.0中100mM濃度のtat37−72ぺプチドを、1.5:1のL−アルファ−ホスファチジルコリンとコレステロール(シグマ、プール、英国、# 13906 )の混合物10mgに添加した。激しい攪拌と室温での放置のサイクルの繰り返しの後、小胞が形成された。このリポソーム溶液の容積は10mMトリスpH8.0の添加により増加し、そしてホウ酸緩衝化食塩水(BBS:0.2Mメタホウ酸ナトリウム、7.5g/lのNaCl、1.8g/lのCaCl2 2H2 O、pHはホウ酸で7.0に調整)を用いてG25セファデックスカラムを通すゲル濾過により未取り込み成分からリポソームを精製した。溶出されたリポソームの完全性は顕微鏡により評価した。顕微鏡下で、1%(v/v)NP−40の溶液(ピアス、チェスター、英国、# 28324) で処理することにより溶解した対照調製品と完全なリポソームを比較した。リポソームは、最終濃度が10mMtat37−72ぺプチドになるようにBBSで希釈した。
【0204】
抗−tat抗体はtatぺプチド37−72を用いて調製した。tatぺプチド37−72を、Antibodies, A Laboratory Manual 上記に従いMBSを用いてそのN−末端システイン残基を介してKLHに結合させた。その複合体10μgを用いて上記のようにBalb/cマウスを免疫化し、血清を集め、さらなる実験では1:100希釈で使用した。791T/36細胞(ドーラン,エムら,Br J Cancer, vol 62 (1990) p500)に対するウサギのポリクローナル抗体をAntibodies, A Laboratory Manual 上記に従って調製した。
【0205】
791T/36細胞は、生育させ、トリプシン/EDTA中で回収し、RPMI1640培地で2回洗浄した後、5×105 細胞/mlでPBS/0.1%BSA中に再懸濁した。100μlの細胞懸濁液を、次に、0.1%(w/v)牛血清アルブミン(BSA)(シグマ、#A7906、プール、英国)を補充したPBS中、100μg/mlの340−PLC複合体の100μlと混合し、37℃で1時間インキュベートした。次に、細胞を遠心分離し、氷冷PBS/0.1%BSAで2回洗浄し、100μlのPBS中に再懸濁した。ついで、ライブラリーDNAの元の1μgから誘導された翻訳反応液に100μlのPBSを添加してさらに1時間37℃でインキュベートした。細胞を再び遠心分離し、PBS/0.1%BSAで2回洗浄し、そしてこの緩衝液の100μlに再懸濁した。100μlの調製したリポソーム懸濁液を添加し、37℃で1時間インキュベートした。続いて細胞をPBS/0.1%BSA中で5分間×3回洗浄した。
【0206】
tat−結合mRNAは、ヘインズ及びプルクサン(上記)により記述されたようにEDTA緩衝液中でのmRNAの解離により、そしてその後のAntibodies, A Laboratory Manual 上記に従って調製されたタンパク質Aビーズ上のポリクローナル抗−tat抗体を含むカラムを通過させることにより回収された。保持されたリボソーム複合体の洗浄及び解離、mRNAの単離、逆転写PCR、及び50μCi/mlの35Sメチオニン標識(アマシャム・インターナショナル、アマシャム、英国)を用いる最終ラウンドでの標識化を伴う転写−翻訳の繰り返しは、ヘインズ及びプルクサン(上記)により記述されたとおりに行った。791T細胞上でのリボソーム提示の3ラウンドの後、そのPCR産物は35Sメチオニンで転写されそして翻訳され、そしてこの混合物は次に抗体340免疫アフィニティカラム(PCT0043) を用いて調製されたヒト胎盤由来のEGFR抗原調製物で被覆されそして製造者のプロトコルに従って被覆緩衝液中でプレート上に被覆されたイミュロン2・96−ウェルミクロタイタープレート(ダイナテック、チャンティリ、VA、米国)に注入した。約1μgの翻訳されたタンパク質複合体を0.1μgのBSA単独か又は1μgの340抗体又は5μgのポリクローナル抗−EGFR(上記のようなもの)と共に各ウェルに添加した。プレートを1時間インキュベートし、0.1%トゥイーン20(シグマ)を含むPBSで5回洗浄し、そして結合しているタンパク質を0.1Mトリエチルアミンで溶出し、シンチレーションカウンターで計測した。3回の測定の平均として(SD<10%)表4に示すように、その結果は、抗−tatカラムを用いて791T細胞から溶出されたmRNA/リボソーム/タンパク質の三重複合体から誘導された翻訳されたタンパク質が特異的に結合すること、しかし抗−tat富化なしに溶出され処理された三重複合体又はDNAライブラリーから直接の三重複合体由来のものは結合しないことが示された。さらに、340抗体による結合の阻害の欠如、これは本実験におけるPLC−標識化リガンドを含むが、そしてポリクローナル抗−791T血清による陽性の阻害は、結合が340のそれ以外のEGFR上のエピトープに特異的であることを示すものである。
【0207】
実施例19
リポソーム選択によるタンパク質−タンパク質結合
自己ダイマー化ヒトIL−5タンパク質を用いてその二つの不活性サブユニット、PLC1−246(PL1)及びPLC247−370(PL2)由来のホスフォリパーゼC(PLC)の相補性及びその後のリポソームの溶解を明らかにした。ヒトIL−5遺伝子(アールアンドディー・システムズ、エイビングドン、英国)を、下記のプライマーを用いてpUC18からPCR増幅した。
【0208】
【外10】
Figure 0004524445
【0209】
IL−5の対照として、ジゴキシンに特異的な単鎖抗体遺伝子(scFv)(タングら,Journal of Biological Chemistry 270 (1995) p7829-7835)をも、前向きプライマー、fdig1:CCGTATAGATCTCAGGTCAAACTGCAGGAGTCT及び逆向きプライマー、rdig1:CCGTATGGATCCCCGTTTTATTTCCAACTTTGTを用い、pCANTABベクター(タングら)から出発してクローニングした。
【0210】
PCR増幅反応は、ベーリンガー拡大高忠実度PCRシステム(ベーリンガー、リューズ、英国)を用いて行った。DNA断片の増幅のための反応条件は、1×拡大HF緩衝液、2.5mMののMgCl2 、4mMの各dNTP、2.5ユニットのポリメラーゼ、10ngの鋳型DNA及び30pモルのプライマーDNAであった。反応物はサーマル・サイクラー中、次のプログラムを用いてインキュベートした。すなわち、92℃で5分間、53−67℃(プライマー配列に依存する)で5分間、72℃で1分間、その後92℃で1分間、53−67℃で1分間及び72℃で1分間の30サイクルであった。その結果得られた断片を、次にウィザードPCR精製カラム(プロメガ)を用いて精製し、製造者の指示に従いそのPCR産物とベクターをBglII及びBamHIで消化することにより大腸菌発現ベクターpET−9(プロメガ、サウサンプトン、英国)のBamHI部位にクローニングした。このプラスミドはバクテリオファージT7遺伝子10由来のプロモーター、翻訳開始部位及びターミネーターを含む。結果として得られるプラスミドをpIL5a(SmaI部位)及びpIL5b(SmaI及びNcoI部位)又はpDIG(抗−ジゴキシンscFv)と名づけた。
【0211】
pIL5bとpDIGはさらに下記のように修飾した。すなわち、繊維状ファージM13の遺伝子III のグリシンの多いリンカーに基づくスペーサー配列を、実施例17に記述したように、プライマーm13f1、m13r1、m13r2及びm13f2を用い、二本鎖M13DNAの調製品についてのPCRを行うことにより作成した。
【0212】
2セットのPCR反応をm13f1とm13r1又はm13f2とm13r2のプライマー組合せを用いて行った。これらの2セットの反応は二つの集団の生産物を形成した。すなわち、5’BglIIと3’XhoIの制限部位を持つもの及び5’SalIと3’BclIの制限部位を持つものである。これらの制限部位は30アミノ酸リンカーのマルチマーの構築を容易にするために含められた。BglII/XhoIPCR産物を二重に消化しそしてリン酸化し、ついで消化したSalI/BclIPCR産物と連結した。このようにして、5’から3’に連結したマルチマーはだけが形成されるであろう(これは消化により確認されるであろう)。900bpの断片をアガロースゲル電気泳動により単離し、製造者の指示に従ってウィザードPCR精製カラム(プロメガ)を用いて精製した。HIVトランス活性化応答因子(TAR)配列は、実施例17に記述したように、BclIで消化した900bpスペーサー断片(上記のようにして形成したもの)をHIV・TARをコードする自己アニールしたオリゴヌクレオチドTAR1及びTAR2に連結することによりM13スペーサー断片から下流に挿入した。
【0213】
この断片を再精製し、BglIIで消化し、pIL5b又はpDIGのBamHI部位にクローニングして、それぞれpIL5b/M13/TAR及びpDIG/M13/TARを得た。
【0214】
このPLCをコードするプラスミドpT2.2(ティトボール,アールら,Infection and Immunity, 57 (1989) p367-376) を下記のプライマー対を用いてPCR(条件は上記の通り)に付した。
【0215】
【外11】
Figure 0004524445
【0216】
PL1プライマー対でPCRにより得られたPL1断片を、NcoI及びSmaIで消化し、NcoI/SmaI消化pIL5b(又はpDIG)/M13/TAR中にクローニングしてpIL5b(pDIG)/PL1/M13/TARを得た。PL2for1及びPL2bck1のプライマーを用いてPCRから得られたPL2断片は、SmaI及びHindIII で消化し、SmaI/HindIII 消化pIL5a中にクローニングしてpIL5a/PL2を生じた。PL2for2及びPL2bck2のプライマーを用いてPCRから得られたPL2断片をBglII及びBamHIで消化し、BamHI消化pET−9中にクローニングするとPL2を生じた。
【0217】
これらのプラスミド構築物のイン・ビトロ転写は、製造者の指示に従い、リボマックス・ラージスケールRNA生産システム(プロメガ)を用いて行った。その結果得られたmRNAはポリATトラクトシステム(プロメガ)を用いて精製した。
【0218】
リポソーム−tat調製物のためには、脂質L−ホスファチジルコリンとオレオイル−パルミトイルコレステロールを混合することによりリポソーム小胞を調製した。10mMトリスpH8.0中100mMの濃度でtat−37−72ぺプチドを、1.5:1のL−アルファ−ホスファチジルコリンとコレステロール(シグマ、プール、英国、# 13906) の混合物の10mgに添加した。小胞は激しい攪拌と室温でのその溶液の放置のサイクルを繰り返した後に形成された。リポソーム溶液の容積は10mMのトリスpH8.0の添加により増加し、そしてホウ酸緩衝化食塩水(BBS:0.2Mメタホウ酸ナトリウム、7.5g/lのNaCl、1.8g/lのCaCl2 2H2 O、pHはホウ酸で7.0に調整)を用いてG25セファデックスカラムを通すゲル濾過により未取り込み成分からリポソームを精製した。溶出されたリポソームの完全性は顕微鏡により評価した。顕微鏡下で、1%(v/v)NP−40の溶液(ピアス、チェスター、英国、# 28324) で処理することにより溶解した対照調製品と完全なリポソームを比較した。リポソームは、最終濃度が10mMtat37−72ぺプチドになるようにBBSで希釈した。
【0219】
抗−tat抗体はtatぺプチド37−72を用いて調製した。tatぺプチド37−72を、Antibodies, A Laboratory Manual (上記)に従いMBSを用いてそのN−末端システイン残基を介してKLHに結合させた。その複合体10μgを用いて上記のようにBalb/cマウスを免疫化し、血清を集め、さらなる実験では1:100希釈で使用した。
【0220】
イン・ビトロ翻訳は、チェン及びズベイ(上記)により記述され、ヘインズ及びプルックサン(上記)により修正された大腸菌S−30システムで行った。翻訳を停止し、混合物をヘインズ及びプルックサン(上記)により記述されたように遠心分離した。調製されたリポソーム−tat懸濁液の100μlを100μlの翻訳混合物に添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、翻訳反応物を Antibodies, A Laboratory Manual (上記) に従って調製されたタンパク質Aビーズ上にポリクローナル抗−tat抗体を含むカラムを通過させた。保持されたリポソーム複合体の洗浄及び解離、mRNAの単離、逆転写PCR及び転写−翻訳の繰り返しはヘインズ及びプルックサン(上記)により記述された通りであった。
【0221】
tatぺプチド−標識mRNAのその後の翻訳と分離のために、プラスミドpIL5a、pIL5a/PL2又はpPL2(「モデルリガンド」IL5、IL5/PL2融合タンパク質又はPL2単独をコードする)のいずれかから誘導されるmRNAの部分標品とウサギベータグロブリンmRNA(「グロブリン」)を、プラスミドpIL5b/PL1/M13/TARとpDIG/PL1/M13/TAR(「モデル受容体」IL−5/PL1融合タンパク質又は抗−ジゴキシンscFv/PL1融合体をコードする)の1:9w/w混合物と1:1w/w比で混合した。すべての反応は三連で行った。mRNA(IL−5又はDIG)の同一性は、pUC18中の50のクローンの最少からその後に決定された。この分析の結果は表5に示す(3回の決定の平均、SD<10%)。表5から、IL−5/PLCリガンドを使用すると、抗−ジゴキシンscFvに優る、IL−5をコードするmRNAの強い選択が得られることが示される。このことは、IL−5のホモダイマー化がPLCのPL1サブユニットとPL2サブユニットを結合させリポソームの効率的に溶解させ、そしてIL−5ダイマーと会合した翻訳複合体において抗−IL−5mRNAに結合するtatの放出を有利にすることを示す。
【0222】
【表1】
Figure 0004524445
【0223】
【表2】
Figure 0004524445
【0224】
【表3】
Figure 0004524445
【0225】
【表4】
Figure 0004524445
【0226】
【表5】
Figure 0004524445

Claims (9)

  1. タンパク質またはポリペプチドをスクリーニングして生物学的に活性な目的のタンパク質またはポリプチドを同定する方法であって、
    (i)遺伝子ライブラリーを形成させる工程であって、前記遺伝子ライブラリーのポリヌクレオチドがアレイ上に分配される前記工程
    (ii)前記ポリヌクレオチドライブラリーからタンパク質またはポリペプチドをin vitro転写および翻訳(IVTT)によって発現させ、個々に同定し得るタンパク質又はポリペプチドのアレイを生成する工程、
    (iii)前記タンパク質またはポリペプチドを工程(ii)で得られたアレイ上に固定化する工程、
    (iv)工程(iii)のアレイ上に固定化されたタンパク質またはポリペプチドをサンプルと接触させる工程、
    (v)工程(iv)のアレイから、前記サンプルとの相互作用が検出された個々のタンパク質またはポリペプチドを選択する工程
    (vi)工程(v)で選択した目的のタンパク質またはポリペプチドを、前記元の遺伝子ライブラリーから工程(v)で選択したタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列決定を行うことにより同定する工程、
    を含む、前記方法。
  2. 遺伝子ライブラリーがDNAライブラリーまたはRNAライブラリーである、請求項1記載の方法。
  3. 固定化が固相に対して行われる、請求項1または2記載の方法。
  4. 固相がマイクロタイタープレートであり、タンパク質またはポリペプチドがプレート表面の特定の位置に固定化されている、請求項3記載の方法。
  5. サンプルとの相互作用がタンパク質-タンパク質結合相互作用である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. タンパク質-タンパク質相互作用がアレイ中の合成タンパク質またはポリペプチドの酵素的修飾を生じさせる、請求項5記載の方法。
  7. サンプルが組織由来特異的分子、細胞由来特異的分子、細胞抽出物または組織抽出物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. サンプルが特定の疾患、健康管理状態または薬剤治療状態に影響されない対照を含む、請求項7記載の方法。
  9. 遺伝子ライブラリーが単鎖抗体(SCA)をコードするポリヌクレオチドを含むcDNAライブラリーである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
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