JP4523488B2 - 質量分析システムおよび質量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析装置を用いた質量分析システム及び方法に関する。
一般的な質量分析においては、測定対象の試料をイオン化した後、生成された様々なイオンを質量分析装置に送り込み、イオンの質量数m、価数zの比である質量対電荷比(m/z)毎に、イオン強度を測定する。この結果得られたマススペクトルは、各質量対電荷比に対して、測定されたイオン強度のピーク(イオンピーク)からなる。このように、試料をイオン化したものを質量分析することはMS1と呼ばれる。
多段解離が可能なタンデム型質量分析装置では、MS1で検出されたイオンピークのうち、ある特定の質量対電荷比m/zの値を有するイオンピークを選定する(選択したイオン種を親イオンと呼ぶ)。更に、そのイオンを、ガス分子との衝突等により解離分解し、生成した解離イオン種に対して、質量分析して、同様にマススペクトルが得られる。ここで、親イオンをn段解離して、その解離イオン種を質量分析することをMSn+1と呼ぶ。このように、タンデム型質量分析装置では、親イオンを多段(1段,2段,…,n段)に解離させ、各段階で生成したイオン種の質量数を分析する(MS,MS3,…,MSn+1)。
タンデム分析可能な質量分析装置は殆どの場合、MS2分析する際の親イオンはMS1におけるイオンピークから選択する。この際、強度の高いイオンピークの順に、例えば、強度が上位10位以内のイオンピークを親イオンとして選択して、解離、質量分析(MS2)する、データディペンデント(Data Dependent)機能を有する。
Finnigan社製のイオントラップ型質量分析装置では、MS2分析する際の親イオンをMS1におけるイオンピークから選択する。この際、ユーザが予め指定した質量対電荷比m/z値を持つイオン種を、親イオンとして選択回避する、ダイナミックイクスクルージョン(Dynamic Exclusion)機能を備えている。
測定されたイオン種と計測済みイオン種の一致度の判定に関する公知例としては、特許文献1、2が挙げられる。
特許文献1では、1段目のスペクトルデータ内の特徴的なピークとそれに対応するイオン種の2段目のスペクトルデータをデータベースに格納する。以後の測定において、前記データベース中の2段目のスペクトルデータに対して、測定対象試料の2段目の質量分析により得られたスペクトルデータと比較して、一致度を検証する。最も一致度の高いデータ成分を比較結果として出力する。
特許文献2では、多段解離測定において、測定中に試料注入処理を挟まず連続測定することで、MSnとMSn+1データ間の注入によるイオン強度変動を回避する。これにより、標準試料の添加が不要となり、効率的な定量分析を可能としている。MSnとMSn+1データ分析において、既に収集した指定イオンデータと一致するか否かにより、MSn+1を実施する、もしくはMS1測定に戻る。
特開2001−249114号公報 特開平10−142196号公報
上記従来技術のデータディペンデント機能では、多量に発現するタンパク質、或いは、タンパク質由来のペプチドを優先的にタンデム分析することになる為、既に同定されたタンパク質やペプチドに対して、重複して計測する可能性が高い。これは、計測時間と試料の無駄につながる。これまでは、多量に発現するタンパク質中心に分析されてきたが、今後は、病変タンパク質など微量なタンパク質の分析に移行してくると考えられる。しかし、データディペンデント機能によると、微量なタンパク質を詳細にタンデム分析することが困難である。
上記従来技術のダイナミックイクスクルージョン機能では、ユーザが予め指定した質量対電荷比m/z値を持つイオン種か否かを、質量対電荷比m/z値によって判定している。この為、質量対電荷比m/z値が同じでも、イオンの質量数mや価数zが異なるイオン種に対しても同様に、MS2分析のターゲットから排除されてしまう可能性がある。これを回避する為には、予め指定したイオン種か否かを判定する際に、各イオンピークの質量対電荷比m/z値から判定するのではなく、各イオンピークの価数z、質量数mから判定する必要がある。このとき、この各イオンピークの価数z、質量数mを、測定中の実時間で算出することが必要となる。さらに、強度が低いイオンでも強度が高いイオンでも、一定期間、測定し続けたイオンの測定を回避する。このため、強度が低い場合はデータ検索のための情報が欠如し、強度が高い場合は測定スループットが低減する。
特許文献1及び2においては、MSnデータ分析にはデータベース等との照合により、特定イオン種の同定を実施する。特許文献1及び2においても、データベース上の登録値は質量対電荷比m/z値であり、必ずしも質量数m自体が使用されていない。もしくは、1価イオン(z=1)を前提としていた。また、MS分析から質量対電荷比m/zの測定値以外の情報(例えば、価数z、質量数mの個別の特性データ)が使用されることはなく、必ずしも、効率的イオン選定のために適切な情報を使用していなかった。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決するために、MSnの各段階でMSnスペク
トルに含まれる情報を活用し、MSn+1分析を実施する際の測定積算回数の変更を、測定
の実時間内に高効率かつ高精度に実施する質量分析方法およびシステムを提供することにある。
本発明は、測定対象となる物質をイオン化し、生成した種々のイオン種を質量分析し、前記生成した種々のイオン種の中から特定の質量対電荷比(m/z)を持つイオン種を選択して解離させ、イオンの質量分析測定をn段階(n=1,2,…)繰り返す質量分析方法において、n段階目の質量分析であるMS n 結果で、イオンの質量対電荷比に対するピークで表されたイオン強度に基づき、前記MS n の次の分析の制御内容を所定時間内に分析対象イオン毎に判定し、各親イオンの強度あるいはMS n+1 計測を既に実施している場合に、既実施のMS n+1 計測にて検出されたピーク数K及び推測される親イオンの構造Dの積(K×D)に反比例するように前記MS n の次の分析の積算総数を分配することを特徴とする。
さらに本発明は、測定対象となる物質をイオン化し、生成した種々のイオン種を質量分析し、前記生成した種々のイオン種の中から特定の質量対電荷比(m/z)を持つイオン種を選択して解離させ、イオンの質量分析測定をn段階(n=1,2,…)繰り返すタンデム型質量分析装置を用いた質量分析システムにおいて、前段に液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーの前処理系と、n段階目の質量分析であるMS n 分析の結果に対し、イオン種の質量数、前記前処理系での保持時間τの特性データを格納するデータベースと、イオンの質量対電荷比に対するピークで表されたイオン強度に基づき、前記MS n の次の分析の制御内容を所定時間内に分析対象イオン毎に判定するデータ処理部を設け、前記データベースに格納された予め指定されたイオン種の特性データと、前記MS n 分析で検出されたイオン種が一致する場合、該一致するイオン種の内部データベースに格納された親イオンのカウント数と、MS n+1 の積算回数と、親イオン構造を構成する単位構造の読み取り数の積が、ユーザ指定により定められた数値以上の場合には、同じイオン種を選択・解離のターゲットイオン種から除外し、ユーザ指定により定められた数値未満の場合には、イオン種を選択・解離のターゲットイオン種の候補とすることを特徴とする。

好ましくは、前記マススペクトル(MSn)における各イオンピークに対して、高速に同位体ピークか否かを判定する。同位体ピークとして判定された場合は、同位体ピーク間の間隔(=1/z)から、当該イオンピークの価数z、イオンピークの質量数mを算出し、この質量数mに基づいて、予め指定されたイオン種と一致するか否かを判定する。
好ましくは、質量分析装置の前段に液体クロマトグラフィー(またはガスクロマトグラフィー)が設置されている場合は、質量数mが同じであるが、異なる構造を持つイオン種を区別する為、LCの保持時間(リテンションタイム)も、判定材料に用いる。
好ましくは、測定を重複させない為、測定イオンカウント数の積算値がユーザが指定する一定値以上となったペプチドや、既に同定されたタンパク質由来のペプチドの質量数、リテンションタイム、カウント数及びカウント数積算値のデータを、質量分析システム内臓の内部データベースに格納し、マススペクトル(MSn)における各イオンピークに対して、一致するか否かを高速判定する。
好ましくは、MS分析の親イオンのペプチドのMSイオンカウント数をIとするとき、ペプチドのMSの積算回数又は測定時間を1/Iに比例させる。但し、積算回数又は測定時間がある一定値Max以上の場合、Maxにし、別の一定値Min以下の場合、Minにする。次の分析のターゲットを選定する際、同位体ピークを避ける。
本発明によれば、多段階解離して質量分析(MSn)する際、MSnの各段階において、MSnスペクトルに含まれる情報を有効に活用し、次のMSn+1分析を実施する際の親イオンの選定などの分析フローの最適化を図る。これにより、測定実時間内に高効率かつ高精度の判定ができるため、計測の無駄がなく、ユーザの欲するターゲットのタンデム質量分析が可能となる。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。まず、第一の実施例について説明する。
図1は本発明の第一の実施例である質量分析システムの構成を示す機能ブロック図である。質量分析装置19は、分析対象の試料が液体クロマトグラフィーなどの前処理系11で前処理される。例えば、大もとの試料がタンパク質である場合、前処理系11にて、消化酵素によりポリペプチドの大きさに分解され、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(LC)により分離・分画される。以下では、前処理系11における分離・分画系としてLCを採用した場合の例を示す。
試料の分離・分画の後、イオン化部12でイオン化され、質量分析部13でイオンの質量対電荷比m/zに応じて分離される。ここで、mはイオン質量、zはイオンの帯電価数である。分離されたイオンは、イオン検出部14で検出され、本発明の特徴部分であるデータ処理部15でデータ整理・処理される。データ処理部15では、次の分析の積算回数または分析時間の決定手段を有し、その分析結果である質量分析データ1は表示部16にて表示される。
このとき、質量分析システム19が内部に保有するデータベースである内部データベース10に格納されたデータと、質量分析部13で検出されたイオンのデータとが一致するかを、次の分析の積算回数または分析時間の決定手段を有するデータ処理部15にて判定する。
決定した分析内容を制御部17に受け渡し、制御部17で次の分析が実施されるように運転条件などを制御する。この一連の質量分析過程(試料のイオン化、試料イオンビームの質量分析部13への輸送及び入射、質量分離過程、及び、イオン検出、データ処理、内部データベース内データとの照合、次の分析内容決定)の全体を制御部17で制御している。
ここで、内部データベース10は、過去に同じ試料を分析した際に得られた計測データ、特にMSn(n≧2)分析を実施した親イオンの計測データが格納される。計測データは、検出されたイオンのm/z,m,LC保持時間,推測される構造(アミノ酸配列),運転条件(積算回数など)などである。
質量分析方法には、試料をイオン化してそのまま分析する方法(MS分析法)と、特定の試料イオン(親イオン)を質量選択し、それを解離させて生成した解離イオンを質量分析するタンデム質量分析法がある。
タンデム質量分析法には、解離イオンの中から、特定の質量対電荷比を持つイオン(前駆イオン)を選択し、更に、その前駆イオンを解離し、その際生成した解離イオンの質量分析を行うと言うように、解離・質量分析を多段に行う(MS)機能もある。つまり、大もとである試料中の物質の質量分析分布をマススペクトルデータ(MS1)として計測後、あるm/z値を持つ親イオンを選択し、それを解離する。さらに、得られた解離イオンの質量分析データ(MS2)を計測後、MS2データにて検出されたイオンのうち、選択された前駆イオンを更に解離し、得られた解離イオンの質量分析データ(MS3)を計測する。
このように、解離・質量分析を多段に行い(MS(n≧3))、解離段階毎に、解離前の状態である前駆体イオンの分子構造情報が得られるので、前駆体イオンの構造推定に有効である。これら前駆体の構造情報が詳細になるほど、大もとの構造である親イオン構造を推定する際の推定精度が向上する。
本実施例では、前駆イオン(親イオン)の解離方法として、まず、ヘリウムなどのバッファーガスと衝突させて解離させる衝突解離(Collision Induced Dissociation)法を採用した場合について述べる。
衝突解離する為には、ヘリウムガスなどの中性ガスが必要となる。この為、図1に示すように、衝突解離するためのコリジョンセル(collision cell)13Aを、質量分析部13とは別に設けている。しかし、質量分析部13に中性ガスを充満させて、質量分析部13内で衝突解離させてもよく、その場合、コリジョンセル13Aは不要になる。また、解離手段として、低エネルギーの電子を照射し、親イオンに多量に低エネルギー電子を捕獲させることにより、ターゲットイオンを解離させる電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation)を採用しても良い。
上記のような方法で、前駆イオンを解離して、その解離イオンを分析したMSn+1(n≧1)の場合、得られるマススペクトル強度は前駆イオンの強度より小さくなる。そこで、MSn+1分析を決められた時間内に決められた回数(積算回数)だけ繰り返し、得られたデータを積算して処理する。特に、分析対象の試料が微量の場合には、このような処理が必要になる。
図3にMS2分析の積算処理によるマススペクトルの従来例を示す。MS2分析のターゲットイオン(親イオン)種が複数あり、それぞれに対しMSを実施する場合において、親イオンの強度には無関係に、それぞれ決められた時間内に決められた回数(積算回数)だけMSn+1分析が繰り返される。例えば、ピーク1の親イオン、ピーク2の親イオンのどちらに対しても、MSn+1分析の積算回数はユーザがあらかじめ設定した30回とし、積算回数の総数Nsumは60回(2×30回)となる。
一般に、親イオンの強度が低いと、MSn+1にて得られるスペクトル強度も低くなる。つまり、親イオンの強度に無関係に、どの親イオンに対しても同じ回数だけ積算すると、強度の大きい親イオンに積算回数を合わせた場合、強度の小さい親イオンのMSn+1分析結果は、MSn+1スペクトルの強度が不足する。その結果、強度の大きい親イオンの場合に比べ、得られる情報量が少なくなる。1回あたりの積算に必要な時間は固定(数〜数十ミリ秒)であり、積算回数に応じて分析時間T(=積算回数N×1回あたりの分析時間(数十ミリ秒、ユーザ指定))は変化する。このため、強度の小さい親イオンに積算回数を合わせた場合、強度の大きい親イオンに対しては、必要以上に積算を繰り返してしまうため、分析のスループットを低下させる結果となる。
本実施例では、親イオンの強度に反比例させて、リアルタイムにそれぞれの(MSn+1(n≧1))分析の積算回数を自動設定する。
図2は、本発明の第一の実施例である質量分析システムにおける分析の制御内容を自動判定処理するフロー図である。まず、質量分析システム19において計測された質量分析データであるMSn(n≧1)データを取り込み(ステップ1)、ピークを判定し(ステップ2)、ピーク判定されたピークのうち同位体ピークか否かの判定を行う(ステップ3)。
次に、図6に示すように、同位体ピークではないと判定されたピーク(ピーク数Npi)について内部データベースとの照合を行う(ステップ4)。内部データベースには、過去に同じ試料を分析した際に得られた計測データ、特に(MSn+1(n≧1))分析を実施した親イオンの計測データ(検出されたイオンのm/z,LC保持時間,推測される構造(アミノ酸配列),運転条件(積算回数)など)が格納されている。また、ここで、積算回数などの分析制御内容を判定する。
MSn(n≧2)の次の分析であるMSn+1(n≧2)としては、MSn(n≧2)データにて検出されたイオンから親イオンを選択し、それを解離し質量分析する。この他に、MSn-1(n≧2)データ上の、MSn(n≧2)の親イオンと同じ質量数で価数の異なるイオンがMSn-1(n≧2)データ上に検出されている場合は、それを親イオンとして再度MSn(n≧2)を実施してもよい。この場合も、MSn-1(n≧2)データにおける、MSn(n≧2)の親イオンと同じ質量数で価数の異なるイオンの強度に積算回数を反比例させる。
図4に内部データベースの格納内容の構成を示す。内部データベースには、一度MS(n≧2)計測終了したイオン(ペプチド)の特性データ(m/z値,質量数m,価数z,LCの保持時間:τ1(イオンの検出開始時間),τ2(イオンをMSn分析した時間),積算値Q,構成単位読取数D,ピーク本数K,分析条件)を格納している。
本実施例での積算値Qは、Q=(MSn+1分析の親イオンカウント数I)×(積算回数N)である。しかし、Q=(カウント数I)×(積算回数N)×(構成単位読取数D)でもよい。あるいは、Q=(カウント数I)×(積算回数N)×(ピーク本数K))でもよい。これらについては後述する。
内部データベースに格納するデータは、計測したイオンの特性データのほかに、一度同定したタンパク質、あるいはタンデム分析対象から除外したいタンパク質由来のペプチドの特性データがある。あるいは、一度(MSn+1(n≧1))計測終了した糖鎖の特性データ、あるいは、一度(MSn+1(n≧1))計測した化学物質の特性データ、あるいは、ノイズや不純物由来のイオン種の特性データを格納する。
これらの格納データと、計測したばかりのMS1データとがある裕度で一致しているかどうかを、次の測定までの準備時間(例えば、100msec,10msec,5msec,1msecのいずれかの時間)内に検索する(ステップ4−3)。内部データベース10のデータとある裕度で一致しない場合(No)は、強度の高い順に、MSn+1分析の親イオン候補に列挙される(ステップ4−5)。
格納データとある裕度で一致する場合(Yes)は、内部データベースに格納されているイオンについて、内部データベースに格納されている積算値Qがユーザが指定する値Q0より大きいか判定する(ステップ4−6)。Qより小さい場合(No)のみ、MSn+1分析の親イオン候補に列挙される。積算値QがQ0より大きい場合には、これ以上分析する必要がないと判断し、MSn+1分析の親イオン候補から除外する(ステップ4−4)。
このようにして、MSn+1分析の親イオン対象候補の有無を判定(ステップ5)し、親イオン対象候補がない場合(ステップ6)は、次の試料分析(MS1)に移るか、或いは計測終了する。親イオン対象候補がある場合は、MSn+1分析内容を決定(ステップ7)する。ステップ7では、親イオンの強度(イオンカウント数)に応じて積算回数を決定し、その結果に基づいて、MSn+1分析を実施する(ステップ8)。また、分析したイオンの情報は、測定中に内部データベースに順次格納される(ステップ9)。
このように、次の分析の制御内容の決定は、次の測定までの準備時間内(例えば、100msec,10msec,5msec,1msecのいずれかの時間内)に実施する。ここで、親イオンの強度に応じた、積算回数の決定の詳細について説明する。
図5はMS分析の積算処理により得られるマススペクトルの違いの例を示す。図5のMS1データから、ピーク1の親イオンとピーク2の親イオンは、イオンカウント数がそれぞれ50と400であるから、それぞれの逆数1/50,1/400に比例させて、(1)式により積算回数の総数Nsum(=60回)を分配する。ここで積算回数の総数Nsumはユーザにより設定される値である。
1/50:1/400=(Nsum−x):x …(1)
(1)式を解くとx=7.3333…となる。この場合、ピーク1、ピーク2の積算回数は整数化するため、それぞれ小数点第一位で四捨五入し、(Nsum−x)≒53回,x≒7回となる。
この結果を受けて、図5に示すように次に実施されるMS分析は、ピーク1に対してはMS分析積算回数53回、ピーク2に対してはMS分析積算回数7回となる。
上記では、MS2の積算回数を親イオンの強度に反比例させて決定するとした。しかし、積算回数ではなく、MS2の分析時間あるいはイオンの蓄積時間を、親イオンの強度に反比例させて決定してもよい。
また、MS2分析の積算回数あるいは分析時間を判定する際、親イオンの強度(カウント数)として、同位体を含まないイオンの強度に加え、同位体を含むイオンの強度を加算した値を考慮してもよい。たとえば、図6はイオン強度取り扱いの説明図である。次の分析ターゲットイオンとして同位体ピークを含んで選択する場合、ターゲットイオンの総カウント数は同位体無しピークと有りピークを足し込んで決定する。
また、ユーザがユーザ入力部18により、MS2分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)の最大値や最小値を入力することも可能である。上記の決定法により算出したMS2分析の積算回数あるいは分析時間が、その最大値あるいは最小値を超過してしまう場合は、MS2分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)をその最大値あるいは最小値に決定する。これにより、ユーザが指定した範囲内にする。
ユーザ入力部18により、ユーザは消化酵素の種類、同位体ピーク判定の必要性、内部データベースとの照合・検索の必要性、内部データベースとの照合・検索におけるデータ一致性を判定する為の裕度、親イオン選定時の分解能などを入力することも可能である。
従って、本実施例によれば、高強度のイオンに対して、余分なMS2積算回数を減らし、低強度のイオンに対して、MS2積算回数を増加させることにより、高スループットで高感度なタンデム質量分析が可能となる。
次に、本発明の第二の実施例について、図7、8、9を用いて説明する。ここでは、次のMSn+1(n≧1)分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を、親イオンの強度のみならず、親イオンの推定構造に応じて決定する。
MSnの次の分析の制御内容を判定する方法において、nが2段階目の質量分析、つまり、MS2の場合には、MS2上の解離データから、親イオンの構造(タンパク質の場合はアミノ酸配列、糖鎖の場合は糖鎖構造)を即座に類推する。その結果、読み取れた構造単位の数(例えば、読み取れたアミノ酸の数)と親イオンの強度の積に反比例するように、MSn+1(n≧1)分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を決定する。
また、1段階目の質量分析に際し、以前に同じ測定対象に対してタンデム分析を実施し、MS1上の同じ親イオンに対してMS2計測を実施し、その結果、親イオン構造(アミノ酸配列など)が推測されていれば、内部データベースに格納されている。その構造情報に基づいて、読み取れた構成単位の数D(例えば、読み取れたアミノ酸の数)と親イオンの強度Iの積に反比例するように、MSn+1(n≧1)分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を決定する。
図7に第二の実施例の処理フロー図を示す。第一の実施例と異なり、第二の実施例のMSn+1の分析内容決定では、MSn+1(n≧1)分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)が、イオン強度I×構成単位Dに反比例するように決定される(ステップ20)。そして、MSn+1分析(ステップ8)後に、n=n+1における構成単位数Dを導出して(ステップ21)、ステップ1に戻る。
図8に、構成単位数を用いた積算回数判定の一例を示す。MS分析を行うイオンの強度は図5のカウント数と等しいが、ここでは以前に分析した際に読み取れたアミノ酸の情報を利用する。前回MSのアミノ酸数がピーク1で4個、ピーク2で5個の場合、積算回数はイオン強度×アミノ酸読取数に反比例し、(2)式のよう決定される。
1/(50×4):1/(400×5)=(60−x):x …(2)
これによりピーク1に対して、より多くの積算回数を振り分けることが可能である。このようにイオン強度だけでなく、以前に分析した結果も判定に用いることにより、効率よく精度の高い分析が可能である。ここでは、積算回数の分配例を示したが、ターゲットイオンの強度と構成単位数Dの積から、分析時間を割り振ることも可能である。
本実施例によれば、親イオンの構造(例えば、解読されたアミノ酸の数)を考慮しているため、実際に、親イオンの構造がある程度読み取れている場合は、親イオンの強度が小さくても積算回数は少なく設定できるため、計測の無駄を省くことができる。
しかし、測定対象によって親イオン構造の単位構造(例、アミノ酸配列)の解読が困難な場合がある。この場合は、親イオン構造の単位構造(例、アミノ酸配列)の数Dの代わりに、以前に計測された際のMSn+1の解離ピーク数Kを用いてもよい。これは一般に、解離ピークが多いほど構造情報を多く含むため、親イオン構造推定精度が向上するためである。
図9に解離ピーク数を用いた変形例の処理フロー図を示す。図7におけるステップ20に対し、本変形例ではピーク本数Kを用いる(ステップ22)点が異なっている。
ところで、分析制御判定に用いるクライテリア(判定基準値)である親イオン構造の構成単位の読み取り数Dやピーク本数Kに関して、値が0となる場合やノイズの影響により値が極端に大きくなる場合が考えられる。これを考慮して、構成単位読取数Dの最大値Dmaxおよび最小値Dmin、あるいは、解離ピーク数Kの最大値Kmaxや最小値Kminをユーザ入力部18にて入力することが可能である。これらの範囲を超える値が求まった場合には、それぞれの最大値または最小値をD値やK値に設定する。
従って、本実施例によれば、既に得られている構造情報に応じてMSn+1の積算回数を決定できるため、より精度よく高スループットで高感度なタンデム質量分析が可能となる。
次に、本発明の第三の実施例について説明する。図10に本実施例の処理フロー図を示す。ここでは、MSnの次の分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を親イオンの強度に応じて決定する場合に、同じLC−MS分析を対象とする。
LC−MS分析で、以前に同じ測定対象に対してタンデム質量分析し、そのMSnデータから、同じ親イオン種の強度あるいはイオンカウント数より、今回計測された親イオンの強度あるいはイオンカウント数が上回っていることがある。この場合は、MSnの次の分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を前回より増加させる。同様にして、今回計測された親イオンの強度あるいはイオンカウント数が下回っている場合は、MSnの次の分析の積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を前回より減少させる。
図11に分析回数と分析強度を示す。LCにて分離されるイオンの検出には時間幅があるため、前回に計測された親イオン強度に基づき、今回期待できる、MSnの次の分析の強度から、積算回数あるいは分析時間(またはイオン蓄積時間)を設定する。したがって、本実施例によれば、計測の無駄を省くことができ、分析の高効率化が期待できる。
次に、本発明の第四の実施例について説明する。図12は本実施例の処理フロー図を示す。計測したばかりのMSnにて検出されたイオンのうち、ユーザがユーザ入力部18にて予め指定したイオンの情報(イオンの質量数m,価数z,LC保持時間τ,イオン強度I)の有無を調べる(ステップ28)。親イオン対象候補がユーザ指定のイオン種でなければ(No)、イオン強度I(又はI×D、又はI×K)より積算回数を決定する(ステップ29)。一方、一定の裕度以内でユーザ指定のイオン種と一致するイオンがある場合(Yes)、そのイオンをMSn+1分析のターゲットとして選定し、MSn+1分析の積算回数Nまたは分析時間Tをユーザが指定する一定の値に設定する(ステップ30)。
図13は第四の実施例の変形例である。ユーザ指定などにより決められたイオン種に対して、内部データベースに格納されたデータがある裕度で一致した場合の例である。ここでは、選択されたターゲットイオンに対してMSn+1分析し、その結果を、測定中、あるいは測定後に、同じイオン種を親イオンとしたMSn+1分析結果に積算処理する(ステップ31)。積算処理するイオンデータとしては、内部DB10に格納されている親イオンの強度IあるいはQ値がある。
図14に、単にMS1でのイオンの出現期間のみからMS2の実施を判定する例を示す。ここでは、ピーク1,2が出現し始めたt=t1+1から、決められた期間(例えば8秒間)のみMS2を実施するように処理している。この場合、ピーク1,2の強度に無関係にMS2の実施が決まっているのが分かる。
本実施例の場合は、図15に示すように、強度の大きいピーク2では、t=t1+9秒のとき、(MSn+1の親イオンの強度(カウント数In))×(MSn+1の積算回数N)×(親イオン構造の構成単位の読み取り数D)の値が予め決められた所定値に達する。その結果、それ以降のMS2は実施されない。強度の小さいピーク1では、(MSn+1の親イオンの強度(カウント数In))×(MSn+1の積算回数N)×(親イオン構造の構成単位の読み取り数D)の値が、所定値に満たないため、MS2分析が引き続き繰り返される。
本変形例によれば、ユーザ指定したイオン種は、MSn+1のデータが、親イオンの強度を考慮し、指定した回数しかMSn+1分析を繰り返さないため、MSn+1の結果は、ほぼ同じ、必要最低限の情報量を持ち、高精度に構造推定可能な分析が高効率に実施できる。
次に、本発明の第五の実施例について説明する。図16は第五の実施例によるMS分析の流れを示している。MSn上の親イオンに対してMSn+1分析を実施した際に、親イオンと同じ価数zを持ち、親イオンの質量数mからユーザ指定などにより決められた質量数差δ分だけ小さい質量数をもつイオン種が検出された場合、そのイオン種を親イオンとしたMSn+2を実施する。
図16では、ユーザがδ値を98に設定した例である。MSデータで検出されたイオン(価数z)を親イオンとして選択し、MS分析を行った場合、親イオンからの質量数差が98であり、価数が親イオンと等しいzであるイオンが検出される場合、このイオンに対してMS分析を自動で実施する。MSデータで、親イオン(MS分析の)からの質量数差が98であり、価数が親イオンと等しいzであるイオンが検出される場合、MS分析を自動で実施する。
例えば、分析対象がタンパク質試料である場合、δ=98〔Da〕とは、リン酸基がMS2においてニュートラルロス(中性状態で脱離)した場合に相当する。タンパク質分析において、タンパク質のリン酸基修飾が、生体内の情報伝達に密接に関係があると考えられており、その修飾部位は、現在、タンパク質研究において最も注目される研究の一つである。
したがって、本実施例によれば、ユーザが特に着目したいニュートラルロスを指定しておけば、それを検出した場合は、自動的にMSn+2まで実施し、より詳細な構造情報を得ることができる。
次に、本発明の第六の実施例について説明する。図17は第六の実施例によるLC保持時間補正の説明図である。
質量分析装置の前段に液体クロマトグラフィー或いはガスクロマトグラフィーが設置されている場合に、試料を液体クロマトグラフィー或いはガスクロマトグラフィーに通すことにより、通過時の保持時間の違いが生じる。
これにより、時間的分離された試料が後段で質量分析される分析の場合、試料が全て液体クロマトグラフィー(LC)/ガスクロマトグラフィー(GC)を通過し質量分析される計測を、一部ないし全てが同じ試料に対して少なくとも2回以上繰り返し計測する。この場合に、前回のLC(またはGC)による質量分析結果から、MSnの親イオンにおけるカウント数In-1と保持時間τとの関係を評価し、次回のLC(またはGC)質量分析の親イオンの選び方ならびにMSn分析の積算回数N、分析時間Tを決定する。
例えば、ある保持時間には、分析対象とする候補イオンが数個しか存在しない場合には、その時間帯の積算回数Nを多く設定する。一方、候補となるイオンが多数存在する場合には、積算回数を必要最小限の値に設定することにより、多くのイオンを効率良く分析できる。設定する積算回数は、事前にユーザが指定可能である。
LC(またはGC)保持時間の補正は、第1回目の分析で得られたクロマトグラムの時間領域を分割し、各領域で保持時間補正のためのマーカを設定する。マーカとして設定するイオンは、強度が高く、特定イオンのクロマトグラムのピーク幅がユーザ指定以内(例えば1分など)のものとする。
図17では、a〜eのイオンをマーカとして選択する。第2回目以降の分析では、1回目の結果から設定したマーカと、2回目以降実際に検出されるピークの保持時間のずれ(差)により、内部データベースに格納された保持時間値を補正する。
LCの保持時間τは、計測毎に多少変動する可能性があるため、既に内部データベースに格納されている、少なくとも1種類以上の基準物質を包含し、その基準物質の保持時間と、実測の基準物質の保持時間とを比較し、その差異Δτを導出する。その他のイオン種の保持時間に対しても、Δτを利用して、自動的に補正・校正させても良い。このとき、LCの保持時間τが、計測毎に変動する場合でも、内部データベースに格納した保持時間を利用して、次のタンデム分析MSn(n≧2)のターゲットイオン種を安定して選定可能となる。
本実施例によれば、前回のLC(またはGC)後の質量分析結果から、MSの親イオンにおけるカウント数In−1と保持時間の関係を評価し、次回のLC(またはGC)後の質量分析の親イオンの選定や、MS分析の積算回数Nまたは分析時間Tを決定できる。
また、前回のLC(またはGC)後の質量分析の後、複数個に分割した各保持時間領域で、それぞれマーカとするイオン種を設定する。次のLC(またはGC)後の質量分析で、マーカとしたイオン種の質量、電荷、保持時間τが測定されたイオンと一定の裕度で一致する場合(例えば、τ+Δ)、その後分析されるイオンの保持時間は、次の保持時間領域のマーカが検出されるまで、デルタを加えて補正する。
次に、本発明の第七の実施例について説明する。図18は第七の実施例の構成図を示す。ここでは、質量分析部として、イオントラップ型質量分析部32を設置している。その他の構成は図1と同じである。
図19はイオントラップ型質量分析部の構成を示す。イオントラップは、リング状電極とそれを向かい合わせで挟むように設置された2つのエンドキャップ電極から構成される。リング電極と2つのエンドキャップ電極間には、高周波(RF)電圧VRFcosΩtが印加される。従って、イオントラップ内には、高周波の四重極電界が主に生成され、イオンはそのm/z値に応じて、異なる振動周波数で振動してトラップ(蓄積)される。
ここで、タンデム質量分析する際の解離方法として、衝突誘起解離(CID)を採用する場合は、Heガスなどの中性ガスを充填させた、イオントラップ自身がコリジョンセルの役割を果たす為、コリジョンセルを別途設ける必要が無い。
タンデム質量分析MSn(n≧2)のターゲットが本発明により自動判定された後、そのm/z値を持つ、特定イオン種のみを残して、その他の全てのイオン種を共鳴出射させる。イオントラップ内に残された特定イオン種をイオントラップから出射しない程度に共鳴振動させ、中性ガスと強制衝突させて、タンデム質量分析MSn(n≧2)のターゲットイオン種を解離させる。
このとき、エンドキャップ電極間に共鳴電圧を印加する。この共鳴電圧とは、特定イオン種がイオントラップ内での振動周波数ω0とほぼ同じ周波数ω(≒ω0)で、位相を逆転させた電圧±Vrecosωtであり、+Vrecosωt、−Vrecosωtは、各々、各エンドキャップ電極に印加される。
本発明のシステムにより自動的に判定された、次のターゲットイオン種の質量対電荷費比m/z値に応じて、上記のタンデム質量分析の際に、高周波電圧の振幅値や、共鳴電圧の周波数、振幅などが自動的に調整・最適化制御される。
以上のように、イオントラップは、タンデム質量分析MSn(n≧2)が実施できる為、本発明のような、自動的に次のターゲットを判定するシステムは非常に有効である。
次に、本発明の第八の実施例について説明する。図20は、本実施例による質量分析システムの構成図である。ここでは、質量分析部として、イオントラップ−飛行時間型(TOF)質量分析部を設置している。
実施例七と同様に、イオントラップ33は、イオンの蓄積、親イオンの選択、及び、コリジョンセルとしての役割を示す。同様に、本システムにより自動的に判定された、次のターゲットイオン種の質量対電荷費比m/z値に応じて、上記のタンデム質量分析の際に、イオントラップの印加電圧である、高周波電圧の振幅値や、共鳴電圧の周波数、振幅などが自動的に調整・最適化制御される。
実際の質量分析は、TOF部34にて高分解能分析される。内部データベース10との照合により、タンデム分析が必要と判定された場合は、イオントラップ33にて親イオンを選択・解離、TOF33にて質量分析する。タンデム分析が必要と判定されない場合は、イオントラップ33を通過してTOF部34にて質量分析される。
本実施例によれば、タンデム分析の必要性を自動的に判定できる為、非常に高効率に分析が可能となる。
次に、本発明の第九の実施例について説明する。図21は本実施例による質量分析システムの構成図である。ここでは、質量分析部として、リニアトラップ−飛行時間型(TOF)質量分析部を設置する。
図22はイオントラップ型質量分析部の構成図を示す。リニアトラップ35は、ポール状の4本の電極(四重極電極)からなる。四重極電極間には中性ガスが充填され、イオンの蓄積、親イオンの選択、及び、コリジョンセルとしての役割を果たす。向かい合わせの電極を同電位の電極1組として、2組の電極間に、逆位相の高周波電圧±VRFcosΩtが各々印加される。
従って、リニアトラップ35内には、高周波の四重極電界が主に生成され、イオンはそのm/z値に応じて、異なる振動周波数で振動してトラップ(蓄積)される。タンデム質量分析MSn(n≧2)のターゲットが本発明により判定された後、そのm/z値を持つ、特定イオン種のみを残して、その他の全てのイオン種を共鳴出射させる。リニアトラップ35内に残された特定イオン種をリニアトラップ35から出射しない程度に共鳴振動させ、中性ガスと強制衝突させて、タンデム質量分析MSn(n≧2)のターゲットイオン種を解離させる。
このとき、向かい合う1組の電極間に共鳴電圧を印加する。共鳴電圧とは、特定イオン種がリニアトラップ35内での振動周波数ω0とほぼ同じ周波数ω(≒ω0)で、位相を逆転させた電圧±Vrecosωtであり、+Vrecosωt、−Vrecosωtは、各々、向かい合う1組の各電極に印加される。
本発明のシステムにより自動的に判定された、次のターゲットイオン種の質量対電荷費比m/z値に応じて、上記のタンデム質量分析の際に、高周波電圧の振幅値や、共鳴電圧の周波数、振幅などが自動的に調整・最適化制御される。
実施例九は、実施例八に比べて、イオンのトラップ率が大幅(約8倍)に向上する。従って、高感度データに基づいて、次の分析内容を決定する為、非常に高精度に、判定を実施することが可能となる。
本発明の第一実施例による質量分析システムの全体の構成図。 本発明の第一実施例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 MS2分析の積算処理の従来例の説明図。 内部データベース格納内容の構成図。 第一実施例によるMS2分析の積算処理の説明図。 イオン強度取り扱いの一例を示す説明図。 本発明の第二実施例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 第二実施例によるMS2分析の積算処理の説明図。 第二実施例の変形例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 本発明の第三実施例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 第三実施例による分析回数と分析強度を示す説明図。 本発明の第四実施例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 第四実施例の変形例による質量分析フローの自動判定処理の流れ図。 計測時間に対するMS2分析実行の従来例の説明図。 計測時間に対するMS2分析実行の第四実施例の説明図。 本発明の第五実施例によるMS2分析の流れを示す説明図。 本発明の第六実施例によるLC保持時間補正内容の説明図。 本発明の第七実施例による質量分析システムの全体の構成図。 第七実施例のイオントラップ型質量分析部の構成図。 本発明の第八実施例による質量分析システム全体の構成図。 本発明の第九実施例による質量分析システム全体の構成図。 第九実施例のイオントラップ型質量分析部の構成図。
符号の説明
10…内部データベース、11…前処理系、12…イオン化部、13…質量分析部、14…イオン検出部、15…データ処理部、16…表示部、17…制御部、18…ユーザ入力部、19…質量分析システム、32…イオントラップ型質量分析部、33…イオントラップ、34…飛行時間型質量分析部、35…リニアトラップ。

Claims (7)

  1. 測定対象となる物質をイオン化し、生成した種々のイオン種を質量分析し、前記生成した種々のイオン種の中から特定の質量対電荷比(m/z)を持つイオン種を選択して解離させ、イオンの質量分析測定をn段階(n=1,2,…)繰り返す質量分析方法において、
    n段階目の質量分析であるMSn結果で、イオンの質量対電荷比に対するピークで表されたイオン強度に基づき、前記MSnの次の分析の制御内容を所定時間内に分析対象イオン毎に判定し、各親イオンの強度あるいはMS n+1 計測を既に実施している場合に、既実施のMS n+1 計測にて検出されたピーク数K及び推測される親イオンの構造Dの積(K×D)に反比例するように前記MS n の次の分析の積算総数を分配することを特徴とする質量分析方法
  2. 請求項1において、前記MS n のマススペクトル測定結果のうち、MS n の次の分析で解離対象とする親イオンの質量ピークの強度に基づき、MS n の次の分析の制御内容を判定することを特徴とする質量分析方法
  3. 請求項2において、前記物質と同じ測定対象について、以前に同様に分析して得られたMS n データ中の今回と同じ親イオン種の強度と、今回の親イオン種の強度との大小関係から、前記MS n の次の分析の積算回数Nまたは分析時間Tを決定することを特徴とする質量分析方法
  4. 請求項1において、前記物質と同じ測定対象について、以前に分析を実施したMS n 上の今回と同じ親イオンに対してMS n+1 計測を実施している場合、実施済みのMS n+1 のピーク数あるいは解離対象の親イオンに対して推測される構造に基づき、前記MS n の次の分析の制御内容を判定することを特徴とする質量分析方法
  5. 測定対象となる物質をイオン化し、生成した種々のイオン種を質量分析し、前記生成した種々のイオン種の中から特定の質量対電荷比(m/z)を持つイオン種を選択して解離させ、イオンの質量分析測定をn段階(n=1,2,…)繰り返すタンデム型質量分析装置を用いた質量分析システムにおいて、
    前段に液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーの前処理系と、n段階目の質量分析であるMS n 分析の結果に対し、イオン種の質量数、前記前処理系での保持時間τの特性データを格納するデータベースと、イオンの質量対電荷比に対するピークで表されたイオン強度に基づき、前記MS n の次の分析の制御内容を所定時間内に分析対象イオン毎に判定するデータ処理部を設け、
    前記データベースに格納された予め指定されたイオン種の特性データと、前記MS n 分析で検出されたイオン種が一致する場合、該一致するイオン種の内
    部データベースに格納された親イオンのカウント数と、MS n+1 の積算回数と、親イオン構造を構成する単位構造の読み取り数の積が、ユーザ指定により定められた数値以上の場合には、同じイオン種を選択・解離のターゲットイオン種から除外し、ユーザ指定により定められた数値未満の場合には、イオン種を選択・解離のターゲットイオン種の候補とすることを特徴とする質量分析システム
  6. 請求項5において、前記データベースは、一度測定されたイオン種の特性データ、或いは一度同定されたタンパク質に対して、指定された酵素により分解・発生が予測される様々なペプチドに対する特性データを自動格納するように構成したことを特徴とする質量分析システム
  7. 請求項5において、前記データベースは、ユーザが予め入力・指定したタンパク質に対して、指定された酵素により分解・発生が予測される様々なペプチドに対する特性データ、及びユーザが予め入力・指定した化学物質、及びノイズや不純物由来の特定のイオン種等に対する特性データを格納することを特徴とする質量分析システム
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