JP4523450B2 - 船舶の放出水雑音を遮蔽する方法 - Google Patents

船舶の放出水雑音を遮蔽する方法 Download PDF

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Description

本発明は、海洋観測船等の音響センサを使用する船舶において、機器冷却海水等の船外への放出水が水中に入る時に発生する水中雑音を、音響センサに対して吸音及び遮音する船舶の放出水雑音を遮蔽する方法に関する。
船舶においては、機器冷却海水や消火ライン等の船外への放出水が、水面上に放出される場合には、水中(以下又海中、湖中等も含む)に入る時に水面(以下海面、湖面等も含む)近傍で水中雑音が発生し、また、水中に放出される場合は、放出用の配管及び管内流体に乗っている管系のキャビテーション音やモータ音などの音が直接水中に放出されて水中雑音が発生する。 通常の船舶では、この水中雑音が発生しても、特に問題は生じないが、漁船や海洋観測船等の魚群探知機や音響測深機等の音響センサを使用する船舶では、この水中雑音により音響観測がその影響を受けて、正確な観測データを得ることができないという問題がある。特に船が停止している時には、推進器によって発生する水中雑音が無いので、この放出水による水中雑音が目立つことになる。そのため、この船外への放出水から発生する水中雑音を遮蔽できれば、観測をより正確に又より効率良くできるようになる。
一方、気泡を含んだ気泡性流体は、水中において吸音及び遮音効果があることが知られている。つまり、吸収効率のよい周波数は気泡の固有振動数と密接な関係を持っており、また、水や海水は気泡を含むと比重や弾性率が変化し、音の伝播速度が低下し、吸収損失が増加する。また、この気泡は、水中に混合した場合、浮力により上昇し水面で消滅するが、マイクロバブルと呼ばれる10μmφ〜100μmφ程度の微細な気泡になって、気泡径が小さくなると、浮上速度が遅くなり水中に吸収だれる形で消滅するようになる。このマイクロバブルの寿命は、例えば、10μmφ〜40μmφ程度の海水マイクロバブルで10秒〜数十秒とも言われている。
そして、マイクロバブルではないが、この気泡の性質を利用して、砂杭を取り囲むように配設された気泡発生装置から気泡群を発生させて、砂杭鋼管の振動による放射雑音を低減する水中騒音防止装置付き砂杭打船が提案されたり、トンネルタイプのサイドスラスターの前後に開口部を持つ気泡噴出装置から気泡を噴射してサイドスラスタからの放射雑音を低減する船舶におけるサイドスラスタ装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
実開平01−119431号公報 実開平03−40198号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、船外への放出水から発生する水中雑音を遮蔽できる船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法は、船舶から外部に排出され、水中雑音を発生する放出水に対して、該放出水が水中に放出された時に発生する水中雑音を遮音する船舶の放出水雑音を遮蔽する方法であって、前記放出水にマイクロバブルを混入させて前記放出水と共にマイクロバブルを放出することにより、前記放出水が水中に放出された時に発生する水中雑音を、前記放出水に混入されて水中に供給されたマイクロバブルにより遮音することを特徴とする。
また、上記の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法において、マイクロバブル混入装置を前記放出水の放出管の外側に設けてマイクロバブル混入水を作ってから、混入管により前記放出管の前記放出水に前記マイクロバブル混入水を混入する。
なお、この「水」は海水や川水や湖水等の多種多様な水も含むものとする。つまり、「水中」は海中や川中、湖水中等を含む。また、「水中に放出」は水面上に放出した放出水が水面経由で水中に入る場合も、直接水中に放出する場合も含む。
上記の構成によれば、放出水中に含まれたマイクロバブルは暫く消えずに水中に滞留するので、マイクロバブルは放出水の拡がりにつれて拡がり、放出水が水中に入る部分を囲むことができるので、放出水が水中に入る時に生じる水中雑音を吸音及び遮音できる。
また、本発明の参考となる船舶の放出水雑音を遮蔽する方法は、船舶から外部に排出された放出水の周囲の少なくとも一部に、マイクロバブルの混入水を供給することにより、前記放出水が水中に放出された時に発生する水中雑音を、前記混入水と共に水中に供給されたマイクロバブルにより遮音することを特徴とする。
この構成によれば、既存の放出管を加工することなく、新たなマイクロバブル混入水を供給する配管を設け、放出水の周囲にマイクロバブル混入水を供給することにより、放出水にマイクロバブルを混入したり、放出水と音響センサの間にマイクロバブル混入水の壁を設けて、放出水が水中に入る時に生じる水中雑音を吸音及び遮音できる。
また、本発明の参考となる船舶の放出水雑音の遮蔽装置は、船舶から外部に排出する放出水に、マイクロバブルを混入するマイクロバブル混入装置を備えて構成される。あるいは、船舶から外部に排出された放出水の周囲の少なくとも一部に、マイクロバブルの混入水を供給するマイクロバブル混入水供給装置を備えて構成される。
これらの構成の船舶の放出水雑音の遮蔽装置により、上記の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法を実施できる。
本発明の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び本発明の参考となる船舶の放出水雑音の遮蔽装置によれば、船体からの放出水にマイクロバブルを含ませたり、マイクロバブル混入水の周囲に放出することにより、マイクロバブルにより、放出水から発生する水中雑音を遮蔽でき、音響センサ等に対する悪影響を低減できる。
以下図面を参照して本発明の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び本発明の参考となる船舶の放出水雑音の遮蔽装置の実施の形態について説明する。
図1〜図4に示すように、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音の遮蔽装置10Aを備えた船舶1は、エンジン冷却海水等の放出水Wを放出するための舷側2に開口部3aを持つ放水管3を備えている。図1と図2では、この開口部3aは水面上に配置され、図3と図4では、この開口部3aは水面下、即ち、水中に配置されている。
この放出管3の途中に、バッファタンク11を設け、このバッファタンク11内に設けたマイクロバブル発生装置12によりマイクロバブル混合水(黒い線や部分でマイクロバブルが含まれていることを模式的に示す)Wbを発生させて、このマイクロバブル混合水Wbを放出水Wに混入させて、舷側2の開口部3aから共に放出する。
なお、図1と図3ではバッファタンク11とマイクロバブル発生装置12を設けてマイクロバブルを発生させているが、図2と図4のように、バッファタンク11とマイクロバブル発生装置12を設けずに、マイクロバブル混入装置13を放出管3の外側に設けてマイクロバブル混入水Wbを作ってから、混入管14により放出管3の放出水Wにマイクロバブル混入水Wbを混入してもよい。
これらの構成によれば、マイクロバブルが放出水Wと共に水中に放出される。このマイクロバブルはすぐに消えずに、放出水Wが排出された水面又は水中の近傍に滞留する。この滞留したマイクロバブルの吸音効果と遮音効果により、次々と放出されてくる放出水Wが水面と衝突することや渦流ができること等によって発生する水中雑音や、放出管3に乗ってしまっている音が直接水中に放出されること等によって発生する水中雑音を吸音及び遮音する。これにより、この船舶1に搭載した音響センサ4への水中雑音の影響を低減することができる。
次に、本発明の参考となる実施の形態について説明する。図5〜図8に示すように、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音の遮蔽装置10Bを備えた船舶1は、エンジン冷却海水等の放出水Wを放出するための舷側2に開口部3aを持つ放出管3を備えている。この放出管3の開口部3aの近傍又は、放出管3から放出された放出水Wが水面に衝突する部分の近傍に、マイクロバブル混入装置13で作ったマイクロバブル混入水Wbを放出するマイクロバブル放出管15を設ける。図5と図7はマイクロバブル放出管15の開口部15aを水面上に設けた場合を示し、図6と図8はマイクロバブル放出管15の開口部15aを水面下即ち水中に設けた場合を示す。
なお、このマイクロバブル放出管15は船体側に必ずしも固定配管する必要はなく、必要に応じて、甲板上から延びるフレキシブルホース等を用いてもよい。このように構成すると、既存の船体に新たな開口部15aを設けるような工作が不要となるので、既存の船にも容易に船舶の放出水雑音の遮蔽装置10Bを設けることができる。
更に、図9に示すように、放出管3の周りに、マイクロバブル放出管15を設けた二重管構造とし、放出水Wをマイクロバブル混入水Wbで包み込みながら放出するように構成してもよい。
このマイクロバブル放出管15から放出されるマイクロバブルは、すぐに消えずに、一部が水中で段々小さくなり消失するが、しばらくの間、放出部分の近傍の水面の近傍や水中に滞留する。そのため、このマイクロバブルが放出水Wと混合し、あるいは、放出水Wの周囲を囲み、マイクロバブルの吸音効果と遮音効果により、次々と放出されてくる放出水Wが水面と衝突すること等によって発生する水中雑音や、放出管3に乗ってしまっている音が直接水中に放出されること等によって発生する水中雑音を吸音及び遮音する。これにより、この船舶1に搭載した音響センサ4への水中雑音の影響を低減する。
このマイクロバブル発生装置12としては、加圧溶解水槽を用いて、ポンプで送られてきた液体にコンプレッサで気体を吹き込んで溶かし、加圧水を作り、これを減圧することにより、過剰となった溶解気体を気泡として析出させる装置を用いることができる。この装置は、浮上分離法で汎用されている装置であり、装置のスペースは大きくなるが、流量・圧力の調整ができ、気泡径を小さく、均一化でき、気泡数が多くなる。その一方、長時間の運転の場合に初期状態を維持できないという問題や操作が複雑であるという問題がある。
その他にも、マイクロバブル発生装置12としては、装置の中心部に液体と気体の2層旋回流を発生させ、回転軸部分に空洞を形成し、この空洞を竜巻状に細くして強力な回転剪断力を発生させ、装置の上部から気体を空洞部に吸引し、この気体空洞部を回転制御作用で剪断・破砕することによってマイクロバブルを大量に発生するマイクロバブルエアレータ装置や、多数の微細孔に通気して気泡を作る散気板を用いた装置や、気体を含んだ液体を攪拌することにより気体を剪断し気泡化する攪拌混合装置や、加圧下で気体を液体に溶解させ、それを減圧することにより過剰となった溶解気体を気泡として析出させるポンプサクション装置等がある。
また、マイクロバブル混入装置13としては、上記の装置を用いることもできるが、エジェクタを用いることにより、激しい気液混合により気体を液体に溶解させ剪断により気泡化する装置を使用することができる。この装置は、気液接触のための装置として用いられている装置であり、構造が簡単で、気泡径は比較的大きく、気泡数は比較的少ないが、液流量が大きく噴流が得られるという効果がある。
そして、マイクロバブル発生装置12やマイクロバブル混入装置13の種類やその制御によって、マイクロバブルの気泡径の分布が異なり、また、気泡径や気泡径の分布等により、吸音や遮音できる音の周波数成分が異なるため、言い換えれば、周波数毎の減衰係数が異なるため、より効率よく吸音及び遮音しようとすると、これらの装置12,13の制御が必要となる。なお、この減衰係数は一例ではあるが、40kHz〜100kHzで20dB/cm程度〜40dB/cm程度にもなる。
そのため、これらの本発明に係る実施の形態や本発明の参考となる実施の形態において、自船所有の音響センサ4又は専用に装備したハイドロホン(図示しない)で放出音を受信して、周波数分析器16により水中雑音の周波数解析を行い、この結果を基に出力コントローラ17により、対象の周波数の水中雑音を低減するマイクロバブルの径や量になるように、マイクロバブル発生装置及び混入装置12,13を制御するように構成する。
あるいは、この対象周波数とマイクロバブルの径と量の関係と、放出水Wから発生する水中雑音の低減対象の周波数を予め実測や実験等により求めておいて、この対象周波数を吸音及び遮音するマイクロバブルの径と量を発生するように出力コントローラ17によりマイクロバブル発生装置及び混入装置12,13の制御を行うように構成する。
上記の構成の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置によれば、マイクロバブル混入水Wbを放出水Wに混合したり、放出水W放出の周囲、あるいは、放出水Wと音響センサ4の間等に供給できるので、放出水Wから発生する水中雑音を遮蔽でき、音響センサ4等に対する悪影響を低減できる。
また、本発明に係る実施の形態では、バッファタンク11とマイクロバブル生装置12により、直接放出水Wに混入したり、マイクロバブル混入装置13によりマイクロバブルを混入したマイクロバブル混入水Wbを作ってから放出水Wに混入するので、より均一にマイクロバブルを放出水Wに混入できる。また、放出管3だけで、新らたにマイクロバブル放出管15を設ける必要がなくなる。
また、本発明の参考となる実施の形態では、放出水Wを囲うように、あるいは、音響センサ4への音響伝播路を塞ぐように、マイクロバブル混入水Wbを供給するので、放出水Wの量の変化に依らず、略所定の濃度のマイクロバブル混入水Wbを所定の部分に供給でき、安定して、放出水Wから発生する水中雑音を遮蔽できる。また、放出水Wと音響センサ4の間のみにマイクロバブル混入水Wbを供給する場合は、マイクロバブル発生量が少なくて済む。
バッファタンクを用いた、水面上へ放出される放出水に対する、本発明に係る実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法を示す図である。 バッファタンクを用いない、水面上へ放出される放出水に対する、本発明に係る実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法を示す図である。 バッファタンクを用いた、水面下へ放出される放出水に対する、本発明に係る実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法を示す図である。 バッファタンクを用いない、水面下へ放出される放出水に対する、本発明に係る実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法を示す図である。 マイクロバブル放出管の出口を水面上に設け、水面上へ放出される放出水に対する、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置を示す図である。 マイクロバブル放出管の出口を水面下に設け、水面上へ放出される放出水に対する、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置を示す図である。 マイクロバブル放出管の出口を水面上に設け、水面下へ放出される放出水に対する、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置を示す図である。 マイクロバブル放出管の出口を水面下に設け、水面下へ放出される放出水に対する、本発明の参考となる実施の形態の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法及び船舶の放出水雑音の遮蔽装置を示す図である。 放出管の周りに、マイクロバブル放出管を設けた二重管構造を示す図である。
符号の説明
1 船舶
2 舷側
3 放出管
3a 開口部
4 音響センサ
10A,10B 船舶の放出水雑音の遮蔽装置
11 バッファタンク
12 マイクロバブル発生装置
13 マイクロバブル混入装置
14 混入管
15 マイクロバブル放出管
15a 開口部
W 放出水
Wb マイクロバブル混合水

Claims (2)

  1. 船舶から外部に排出され、水中雑音を発生する放出水に対して、該放出水が水中に放出された時に発生する水中雑音を遮音する船舶の放出水雑音を遮蔽する方法であって、前記放出水にマイクロバブルを混入させて前記放出水と共にマイクロバブルを放出することにより、前記放出水が水中に放出された時に発生する水中雑音を、前記放出水に混入されて水中に供給されたマイクロバブルにより遮音することを特徴とする船舶の放出水雑音を遮蔽する方法。
  2. マイクロバブル混入装置を前記放出水の放出管の外側に設けてマイクロバブル混入水を作ってから、混入管により前記放出管の前記放出水に前記マイクロバブル混入水を混入することを特徴とする請求項1記載の船舶の放出水雑音を遮蔽する方法。
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