JP4521978B2 - インクタンク、インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持する吸収体を収容したインクタンクに関する。また、本発明は、往復移動するキャリッジ上にインクジェット記録ヘッド及びインクタンクを搭載し、キャリッジが所定の位置に移動した際にキャリッジ上のインクタンクとは異なる補給タンクよりキャリッジ上のインクタンクにインクを供給するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の液体吐出記録装置として、本出願により出願した特開平9−234881号公報及び特開平10−29318号公報に記載されたものがある。これらの公報に記載された液体吐出記録装置では、往復移動可能に支持されたキャリッジに、記録用液体であるインクを収納するタンク部と、そのタンク部から供給されたインクを記録用紙などの被記録媒体に向けて吐出する記録ヘッドとが搭載されている。記録用紙は搬送手段によって搬送され、その搬送方向に対して直角な、記録用紙の幅方向でキャリッジが一直線上を往復移動する。キャリッジが往復移動しつつ、キャリッジ上の記録ヘッドから記録用紙に向けてインクが吐出されることにより、記録用紙上に記録画像が形成され、記録用紙に対して記録が行われる。キャリッジ上のタンク部には、インクを吸収することでそのインクを保持するための吸収体が収容されている。そのような吸収体としては、スポンジなどの多孔性の部材や、繊維体が用いられる。
【0003】
また、上記のそれぞれの公報に記載された液体吐出記録装置には、キャリッジに搭載されたタンク部とは異なる補給タンクが備えられている。補給タンク内には、キャリッジ上のタンク部に補給するためのインクが保持されている。補給タンクは、キャリッジの移動領域の近傍で液体吐出記録装置のハウジングなどに固定されている。補給タンクには、そのタンク内に保持されたインクをキャリッジ上のタンク部へと供給するための管状の液体供給通路の一端部が接続されている。キャリッジ上のタンク部にインクを補給する際には、キャリッジが所定の位置、すなわちタンク部への補給位置に移動させられ、その補給位置に停止したキャリッジ上のタンク部へと、補給タンク内のインクが液体供給通路を通して補給される。このような液体吐出記録装置、いわゆるピットイン方式の記録装置では、記録動作に伴ってキャリッジ上のタンク部にあるインクが消費され、そのタンク部のインクが全て消費される前に補給タンクからタンク部にインクが補給される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上述のピットイン方式の記録装置では、スループットを向上させるために、補給タンクからインクタンクへのインク供給時間を短くすることや、補給のための所定位置から記録のための領域へキャリッジをすばやく移動することが求められる。
【0005】
しかしながら、上述したような従来の液体吐出記録装置では、インク供給時間を短くすると、吸収体が補給されたインクをすばやく吸収することができないために、印字不良を起こしたり、あるいはインクタンクからのインク漏れを生じたりする恐れがある。
【0006】
また、そのような液体吐出記録装置では、ハウジングなどに固定された補給タンクからキャリッジ上のタンク部にインクを供給する液体供給通路において、キャリッジの移動に伴って生じる振動などにより、液体供給通路の先端部分からインクが垂れ、インク漏れが生じる恐れがある。また、補給タンクから延びる供給管の先端部が重力方向と平行に下方に向かって延び、インク補給動作の休止時に供給管の先端部でメニスカスが形成されるようにインクの供給通路が設けられている場合、インクの補給動作が安定して確実に行われるためには、そのメニスカスが補給動作の休止時に安定して形成され続ける必要がある。このようなインク供給経路において、例えばメニスカスが不安定に形成されていると、振動などによってメニスカスが容易に破壊されることになり、インク漏れが発生しやすくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、吸収体を収容したインクタンク、及びインクジェット記録ヘッドをキャリッジに搭載し、キャリッジが所定の位置に移動した際に補給タンクからキャリッジ上のインクタンクへインクが補充されるインクジェット記録装置において、吸収体へのインクの吸収が素早く行われ、俊敏なインク補給が可能なインクジェット記録装置、及び、キャリッジ上に搭載されるインクタンクを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記のようなインクジェット記録装置において、補給タンクからキャリッジ上のインクタンクへの供給管でインク漏れがなく、信頼性の高いインク供給が確保されたインクジェット記録装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、インクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持するオレフィン系の樹脂を表面に有する繊維の集合体で構成された吸収体を収容したインクタンクにおいて、前記吸収体を構成する繊維の表面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、前記高分子の前記第1の基は前記繊維の表面側に向って配向し、前記第2の基は前記繊維の表面と反対側に配向しており、前記第2の基はインクが移動する場合にはインクの流れに対して前記繊維の表面にならい、インクの移動が停止した場合には前記繊維の表面に対して垂直な方向に向うことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持するオレフィン系の樹脂を表面に有する繊維の集合体で構成された吸収体を収容したインクタンクと、前記インクジェット記録ヘッドと前記インクタンクとを搭載して往復走査されるキャリッジと、前記キャリッジの走査範囲内のインク補給位置で前記インクタンクに対して接離して前記インクタンクにインクを補給する供給管を備えた補給タンクと、を有する記録装置本体と、を備えたインクジェット記録装置において、前記インクタンクは前記吸収体を構成する繊維の表面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、前記高分子の前記第1の基は前記繊維の表面側に向って配向し、前記第2の基は前記繊維の表面と反対側に配向しており、前記記録装置本体の前記補給タンクからインクが補給されてインクが前記繊維の集合体で構成された前記吸収体内を移動する場合には前記第2の基がインクの流れに対して前記繊維の表面にならった状態となり、インクの補給が終了してインクの移動が停止した場合には前記第2の基は前記繊維の表面に対して垂直な方向に向う状態となることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記インクジェット記録装置が、前記供給管はオレフィン系の樹脂で構成されており、その内面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、前記高分子の前記第1の基は前記供給管の内面側に向って配向し、前記第2の基は前記供給管の内面と反対側に配向していることが好ましい。
【0015】
さらに、前記補給タンクが、保持するインクの種類を違えて前記インクジェット記録装置に複数設置され、且つ、前記インクタンクが、前記各種の補給タンクに対応して複数設けられていてよい。
【0016】
上記のそれぞれの発明において、前記吸収体が、オレフィン系の樹脂を少なくとも表面に有する繊維体であり、前記高分子が、親液性基を備えたポリアルキルシロキサンであることが好ましい。
【0017】
さらに、前記供給管の、前記高分子が付与される内面が、オレフィン系の樹脂から構成され、前記高分子が、親液性基を備えたポリアルキルシロキサンであることが好ましい。
【0018】
上記の通りの発明では、キャリッジに搭載されるインクタンクに収容されている吸収体を構成する繊維の表面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、前記第1の基は前記繊維の表面側に向かって配向し、前記第2の基は前記繊維の表面と反対側に配向していることにより、吸収体の表面が親液化される。このような構成によれば、インクジェット記録ヘッドと共にインクタンクを搭載したキャリッジが所定の位置に移動した際に補給タンクからインクタンク内の吸収体にインクが補給されると、その吸収体の表面が親液化されているために、供給されたインクが吸収体に素早く吸収され、インクタンク内へのインクの補給動作が短時間で完了する。このようなインクタンクが、インクジェット記録ヘッドと共にキャリッジに搭載されているインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッドのインク吐出動作に伴ってキャリッジ上のインクタンクのインクが減った際にインクタンク内の吸収体にインクを補給すると、吸収体に浸透していくインクが吸収体内の気液界面に短時間で達することになる。すなわち、補給前に吸収体内にあったインクと、補給されたインクとが吸収体内で短時間で繋がることになる。この場合、吸収体の表面が親水化されていない場合と比較すると、インクが補充されたインクタンクが使用可能な状態になるまでに要する時間が大幅に短縮される。よって、インクタンクへのインク補充を短時間で行うことができ、インク補充動作を開始してから、使用可能なインクがインクタンク内に十分に充填されるまでの時間が短くなる。このようにインクタンク内の吸収体が親液化処理されていることにより、吸収体へのインク補充が俊敏且つ確実に行われる。したがって、キャリッジ上に搭載されたインクタンクへのインク補充を所定の位置で行うピットイン方式のインクジェット記録装置として、信頼性の高い記録装置が実現される。
【0019】
また、上記のようなインクタンクがキャリッジに搭載され、キャリッジが所定の位置に移動した際に補給タンク内のインクが供給管を通してインクタンクに補給されるインクジェット記録装置において、その供給管の内面が親液化されていることにより、インクの補給動作が休止している状態では供給管のその先端部でメニスカスが安定して形成される。例えば、キャリッジの移動による振動などがインクジェット記録装置で発生したり、衝撃がインクジェット記録装置に加えられても、供給管の先端部でメニスカスの形状が安定して保持され、メニスカスが破壊されにくくなる。よって、キャリッジ上のインクタンクへのインク補給動作が休止している状態では供給管の先端部からのインク漏れが抑制され、インクタンクへのインク補充において信頼性の高いインク供給が確保される。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明では、収容される液体に対する濡れ性に優れる性質を「親液性」と称しており、以下に示す実施形態ではインクとして水性のインクを例に挙げて説明し、親液性のなかでも特に親水性を付与する場合について説明している。ただし、本発明においてはインクの種類は水性に限定されるものではなく、油性のものであってもよい。その場合は、表面に付与する性質は親油性である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の液体吐出記録装置であるカラープリンタの概略斜視図である。
【0022】
図1に示すように本実施形態の液体吐出記録装置であるピットイン方式のカラープリンタ111では、そのハウジングの上面前部に操作パネル112が設けられている。カラープリンタ111の後部には、記録前の紙(被記録媒体)を保持する給紙トレー113が設けられ、給紙トレー113上の紙114がカラープリンタ111内に供給される。カラープリンタ113内の紙搬送経路を通って排出された紙114が、カラープリンタ113の前面下部に設けられた排紙トレー115上に保持される。カラープリンタ113の上記ハウジングの右前部には開口部117が成形され、開口部117が本体カバー116によって覆われている。本体カバー116は蝶番118によって開口部117内の内側端部に回転自在に取り付けられている。
【0023】
また、カラープリンタ111の上記ハウジングの内部にはガイド(不図示)などに支持されたキャリッジ119が配設されている。キャリッジ119は、上記紙搬送経路を通過する紙の幅の方向に沿って一直線上を往復移動可能に設けられている。このキャリッジ119上には、記録用液体であるインクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給するためのブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクを収納する液体保持容器としてのインクタンクとが一体化されたヘッドカートリッジ(1a,1b,1c,1d)が搭載されている。したがって、キャリッジ119上には、上記の各色に対応するタンク部が記録ヘッドと共に搭載されている。キャリッジ119上の各々のタンク部内には、記録ヘッドに供給するためのインクを毛管力で一時的に保持する吸収体が収容されている。
【0024】
カラープリンタ111内の開口部117近傍の空間には、補給タンクとしてのブラック用大型タンク6が取り付けられている。ブラック用大型タンク6内に収納されたインクが、後述する補給方法によりブラック用のヘッドカートリッジ1aに補給される。次に、本発明の液体吐出記録装置においてキャリッジ上のタンク部にインクを供給するインク供給システムについて説明する。
【0025】
図2は、図1に示した大型タンクとヘッドカートリッジのタンク部との接続供給を説明するための概略図である。また、図3は、大型タンクからタンク部へのインク供給システムを示す模式図である。
【0026】
図2に示すように、使用頻度の多い液体を収容するヘッドカートリッジのタンク部9内には、液体を吸収して保持する吸収体として負圧発生部材10が収納されている。負圧発生部材10としては、本実施形態ではPP繊維体(ポリプロピレン繊維の交絡体)が用いられている。この負圧発生部材10は、タンク部9内において上壁部近傍の部分を除いた領域にほぼくまなく配置されている。また、負圧発生部材10を構成しているPP繊維としては、その繊維表面が、後述するような方法により親水化処理されているものが用いられている。このように、負圧発生部材10を構成する繊維が親水化処理されていることにより、補給タンク6内のインク2をタンク部9内に補給する際にインクが負圧発生部材10に素早く吸収され、インク補給動作を短時間で完了させることができる。
【0027】
大型タンク6の底面部には、大型タンク6内に保持されたインク2をタンク部9へと供給するための管状の液体供給通路としての供給管7の一端部が接続されている。本実施形態では、供給管7が重力方向に延びており、供給管7の他端部は、キャリッジ119が所定の位置、すなわちタンク部9へのインク補給位置に移動した際にタンク部9の上方に位置する。
【0028】
タンク部9の上壁部には、液体を保持する大型タンク6の供給管7の先端部が差し込まれる差込口12が設けられ、タンク部9の上壁面には、差込口12を開閉するためのスライド板8が移動可能に取り付けられている。差込口12への供給管7の差し込みは、スライド板8の移動により差込口12が開放された状態で、ヘッドカートリッジの移動によりタンク部9が大型タンク6側に移動することで行なわれる。また、タンク部9の上壁部には、タンク部9内の空間を大気と連通させるための大気連通口24が形成され、タンク部9の下部には、ヘッドカートリッジの記録ヘッド部へとタンク部9内のインクを供給するためのインク供給口25が設けられている。
【0029】
本実施形態では、タンク部9へのインク補給動作が、図3に示される制御部21によって制御される。ヘッドカートリッジの記録ヘッド部の記録動作に伴ってタンク部9内のインクが消費され、タンク部9内のインク残量が少ないと制御部21によって判断された際に、制御部21の指令によりタンク部9の差込口12内に供給管7が差し込まれ、供給管7を通して大型タンク6よりインクがタンク部9内の負圧発生部材10に補充される。
【0030】
タンク部9内のインク残量が少ないとの判断時期は、負圧発生部材10に保持されたインクが無くなる前に行われる必要があり、さらには、タンク部9の下部にあるインク供給口25へのインクの流通が途切れる前、すなわち負圧発生部材10内の気液界面11が所定の高さよりも下がる前に行われることが望ましい。これは、負圧発生部材10におけるインク供給口25近傍の部分でインクが無くなると、インク供給口25でのインクの流通が途切れ、インク供給口25やヘッド部に空気が入り込んでしまう虞があるからである。
【0031】
インク補充動作に入るためのタイミングは、記録ヘッド部によるインクの消費量から負圧発生部材10中のインク残量を判断して行うことにより実現できる。例えば、記録ヘッド部から飛翔する液滴(ドット)の数が幾つの時にタンク部9内のインクが完全に無くなるかを予め確認し、このドットカウント値に、タンク部9内のインクが完全に空にならないように安全値を足した設定値を制御部21に保持させておき、ドット数がこの設定値になった時に補充動作に入るようにすれば良い。また、記録用紙上にベタで印刷してもインクがなくならない範囲で所定時間を設定し、この時間間隔を目安に補充動作に入る方式や、記録動作に関係ない時を利用して任意の時間に補充動作に入るようにしても良い。いずれの場合においても、記録後の記録用紙の排出時など、記録動作に関係のない時を利用して補充動作に入ることで、スループットに影響を与えず、インクの補給が実現できる。
【0032】
一方、図3に示されるように大型タンク6の上壁部には、そのタンク内を大気と連通させるための大気連通口6aが形成されている。大気連通口6aは通常は弁体23により塞がれている。このように大気連通口6aが塞がれることにより大型タンク6内が供給管7を除いて密閉されている。これにより、供給管7の先端部でメニスカス7aが形成された状態で、大型タンク6内にインク2が保持される。
【0033】
図4は、大型タンク6に接続された供給管7の先端部でメニスカスが形成されている状態を示す断面図である。
【0034】
本実施形態では、図4に示されるように供給管7の先端部でメニスカス7aが安定して形成されるように供給管7の内壁面7cが、後述する方法を適用して親水化処理されている。このように供給管7の内壁面7cが親水化されていることにより、キャリッジの移動による振動などが記録装置で発生したり、衝撃が記録装置に加えられても、メニスカス7aの形状が安定して保持され、メニスカス7aが破壊されにくくなる。よって、タンク部9へのインクの補給動作が休止している状態ではメニスカス7aが安定して形成され続け、供給管7の先端からインク7bが垂れるということが抑制される。その結果、供給管7内からのインク7bの漏れが防止されると共に、タンク部9へのインク補充において信頼性の高いインク供給が確保される。供給管7のインク供給方向下流側の先端部でメニスカス7aが安定して形成されるためには、少なくともその先端部の内壁面が親水化処理されていればよい。
【0035】
図5は、供給管7の内壁面7cが親水化処理されていない場合におけるメニスカスの状態の一例を示す断面図である。供給管7の内壁面7cが親水化処理されていない場合には、供給管7の内壁面7cの先端部分にインクが固化して付着したり、その部分でインクに対する性質が変わったりことなどにより、図5に示すようにメニスカス7dが斜めに形成されることがある。従って、この場合には供給管7の先端部でメニスカスの形状が不安定に形成され、振動や衝撃などにメニスカスが容易に破壊されてしまうことがある。これにより、供給管7からのインク漏れが発生してしまうことがある。よって、本実施形態のように供給管7の内壁面7cを親水化することにより、このようなインク漏れをなくすことができる。
【0036】
次に、タンク部9へのインクの補給動作について説明する。
【0037】
図3に示されるインク供給システムでは、上述したようにタンク部9内のインク残量を記録ヘッド部によるインク消費量から判断し、制御部21がインクの補給を許可した場合に、キャリッジの移動により大型タンク6の下方に位置したタンク部9が、その差込口12に供給管7が差し込まれるように大型タンク6側に移動させられる。その後、制御部21の指令により弁体駆動装置22が駆動され、大型タンク6の大気連通孔6aを塞いでいる弁体23が一定時間開く。これにより、供給管7の先端からタンク部9内へ一定量のインクが供給される。タンク部9内に供給されたインクは負圧発生部材10に吸収されて保持される。
【0038】
図6は、タンク部9内の負圧発生部材10にインクが吸収された状態を示す断面図である。この図6では、負圧発生部材10でインクが吸収されている領域が斜線で示されている。上述したように負圧発生部材10を構成するPP繊維の繊維表面が親水化処理されているため、負圧発生部材10はインクを高速で吸収できるようになっており、負圧発生部材10の上面に供給されたインクは、1秒以下の時間で負圧発生部材10内に吸収され始める。したがって、図2及び図3に示したように負圧発生部材10内の気液界面11が下がっている状態から供給管7を通してインクを負圧発生部材10の上面に供給した際には、供給されたインクが負圧発生部材10に素早く吸収され、負圧発生部材10に浸透していくインクが、図2に示した気液界面11に短時間で達する。すなわち、本実施形態では、図6に示すようにインク補充前に負圧発生部材10内にあったインクと、補給されたインク7bとが負圧発生部材10内で短時間で繋がることになり、負圧発生部材10を構成する繊維表面が親水化されていない場合と比較すると、タンク部9が使用可能になるまでに要する時間が大幅に短縮される。よって、タンク部9へのインク補充を短時間で行うことができ、インク補充動作を開始してから、使用可能なインクがタンク部9内に十分に充填されるまでの時間が短くなる。
【0039】
図7は、タンク部9内の負圧発生部材10が親水化処理されていない場合でのインク補給動作について説明するための断面図である。図7でも、負圧発生部材10でインクが吸収されている領域が斜線で示されている。負圧発生部材10を構成する繊維体の表面が親水化処理されていない場合には、図7に示すように、供給されたインク7bが負圧発生部材10内の気液界面11に達するまでに、本実施形態の場合よりも時間がかかることになる。また、種々の条件によっては、供給されたインク7aが気液界面11に到達することできず、負圧発生部材10内において、上側の部分と下側の部分との間に、インクが無い領域が残ったままになってしまうことがある。この場合、負圧発生部材10の上側部分と下側部分との間にインクパス(インク通路)が形成されず、記録ヘッド部へのインクの供給不良を起こしてしまう。ここで、補給するインクを負圧発生部材10に素早く吸収させるために補給インクを加圧した際には、加圧されたインクがタンク部9の内壁面と負圧発生部材10の外周面との間を通り、そのインクがインク供給口25を通して記録ヘッド部へと強制的に送り込まれてしまうことがある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、上述したように負圧発生部材10を構成する繊維が親水化処理されていることにより、負圧発生部材10へのインク補充が俊敏且つ確実に行われる。これにより、負圧発生部材10を収容してキャリッジ上に搭載されたタンク部9へのインク補充を行うピットイン方式の液体吐出記録装置として、信頼性の高い記録装置が実現される。
【0041】
本実施形態では、カラープリンタ111で用いられる前記各色のインクの内、1つの色の液体供給システムについて説明したが、それぞれの色のインクの液体供給システムにおいても上記の構成にしてもよい。すなわち、カラープリンタ111には、大型の補給タンクが、保持する液体の種類を違えて複数設置され、かつ、キャリッジ上のタンク部が各色の補給タンクに対応して複数設けられていてもよい。また、タンク部9内に収容される吸収体として、繊維からなる繊維体を用いたが、繊維体の代わりに、スポンジのような多孔質体などを吸収体として用いてもよく、その場合には、多孔質体がインクを高速で吸収できるように親水化処理されていればよい。
【0042】
(表面改質方法についての補足説明)
次に、本発明における親水化処理に適用される、物品表面の望ましい改質方法について説明する。
【0043】
まず、吸収体を構成する繊維を親水化させるのに適用可能である物品の表面改質原理について、より具体的に説明する。
【0044】
まず、吸収体を構成する繊維を親水化させるのに適用可能である物品の表面改質原理について、より具体的に説明する。
【0045】
以下に説明する表面改質方法は、物品が有する表面を構成する物質に含まれる分子が有する官能基などを利用して、高分子(あるいは高分子の細分化物)を特定の配向を採らせて表面上に付着させ、該高分子(あるいは高分子の細分化物)が有する基に付随する性質を表面に与えることで、目的とする表面改質を図ることを可能とする方法である。
【0046】
ここで、「物品」とは、種々の材料から形成され、一定の外形を保持するものを意味する。従って、この外形に付随して、外部に露出している外表面を有している。加えて、その内部に、外部と連通する部分を含む空隙部や空洞部、あるいは中空部が存在したものでもよく、これらの部分を区画する内表面(内壁面)も本発明における表面改質処理対象としての部分表面とすることができる。中空部には、これを画する内表面を有し、外部とは完全に隔絶された空間であるものも含まれるが、改質処理前においては中空部内への表面処理液の付与が可能であり、改質処理後に外部と隔離された中空部となるものであれば、本発明の処理対象となり得る。
【0047】
このように、本発明に適用される表面改質方法は、各種物品が有する全ての表面のうち、物品の形状を損なうことなく、外部から液状の表面処理用溶液を接触させることが可能な表面を対象とするものである。従って、物品の外表面と、それと連結される内部表面の夫々または両方を部分表面の対象とする。そして、その対象とする表面から選択される細分化された部分表面の性質を変更することも本発明に含まれる。選択によっては、物品の外表面とそれと連結される内部表面を選択する態様も、所望の部分表面領域の改質に含まれるものである。
【0048】
上記の表面改質においては、物品の有する表面の少なくとも一部を構成する改質すべき部分(部分表面)が処理される。すなわち、所望に応じて選択された物品の表面から一部あるいは物品の表面全体である。
【0049】
また、本明細書において「高分子の細分化」とは、高分子の一部が切れたものから、単量体までのいずれかでよく、実施例的には高分子が酸などの開裂触媒により開裂したものすべてを含むものとする。また、「高分子膜化」とは、実質的な膜が形成されるもの、あるいは2次元的な面に対して各部が異なる配向したものを含む。
【0050】
また、本明細書において「高分子」とは、機能性基を有する第1の部分と、この機能性基の界面エネルギーとは異なり、且つ、付着対象の物品の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する第2の部分とを備え、上記の物品表面の構成材料とは異なることが好ましい。よって、改質される物品の構成材料に応じて、適宜その物品表面の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する高分子の中から、所望の高分子を選択すればよい。「高分子」としてより好ましくは、該高分子が開裂できるものであること、さらには開裂後に縮合できるものであることが望ましい。また、上述の第1の部分及び第2の部分以外にも機能性基を備えていてもよいが、その場合には、親水化処理を一例にすると、機能性基としての親水性基は、第1、第2の部分以外の機能性基(上記親水性基に対して相対的に疎水性基となる)に対して、相対的に長鎖であることが望ましい。
【0051】
「表面改質がなされる原理」
本発明に適用可能である物品の表面改質は、表面改質剤に用いる高分子として、物品の表面(基材表面)の表面(界面)エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する主骨格(主鎖または側鎖基或いは基群を総称して呼ぶ)と、物品表面の表面(界面)エネルギーと異なる界面エネルギーを有する基が結合してなる高分子を利用し、この表面改質剤中の物品表面の界面エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する主骨格部を用いて物品表面上に高分子を付着させ、物品表面の界面エネルギーと異なる界面エネルギーを有する基が物品表面に対して外側に配向する高分子化膜(高分子被覆)を形成させることにより達成される。
【0052】
上述の表面改質剤に用いる高分子を異なる観点から換言すれば、表面改質前の物品の表面に露出している基と本質的に水との親和性が異なる第2の基と、この物品の表面に露出している基と実質的に類似する水との親和性を示し、その主骨格に含まれる繰り返し単位中に含まれる第1の基と、を備えたもの、と捉えることもできる。
【0053】
このような配向形態の代表例を模式的に示したのが図8である。図8(a)は主鎖41−3に対して第1の基41−1と第2の基41−2が側鎖として結合している高分子を用いた場合を示し、図8(b)は第2の基41−2が主鎖41−3自体を構成し、第1の基41−1が側鎖を構成している場合を示すものである。
【0054】
図8に示される配向をとると、物品の表面改質すべき表面を構成する基材56の最表面(外側)は基材56の表面(界面)エネルギーとは異なる界面エネルギーを有する基41−1が表面に配向した状態になるため、基材56の表面(界面)エネルギーと異なる界面エネルギーを有する基41−1に付随する性質が利用されて表面が改質される。ここで、基材56の表面(界面)エネルギーは、表面を構成している物質・分子が、表面上に露出している基55に由来して決定されている。すなわち、図8に示す例では、第1の基41−1が表面改質用の機能性基として作用し、基材56の表面が疎水性であって、第1の基41−1が親水性であれば、基材56の表面に親水性が付与される。なお、第1の基41−1が親水性であり、基材56側の基55が疎水性である場合には、例えば後述するポリシロキサンを利用した場合などには、図28に示すような状態が基材56の表面に存在していると考えられる。この状態において、改質後の基材56の表面における親水性基と疎水性基とのバランスを調整することで、改質処理後の基材表面に水や水を主体とする水性液体を通過させる場合の通過状態や通過時の流速を調整することも可能である。そして、このような表面状態を繊維外壁面に有する例えばポリオレフィン系樹脂からなる繊維体をインクジェット記録ヘッドに一体化された、あるいは別部品として設けられるインクタンク中に用いることで、インクタンク中へのインクの充填やインクタンクからのヘッドへのインクの供給を極めて効果的に行うと共に、インクタンク内での適度な負圧の確保によって、インク吐出直後の記録ヘッドの吐出口付近でのインク界面(メニスカス)位置の良好な確保が可能となる。これにより、動負圧より正負圧の方が大きいという、インクジェット記録ヘッドへのインク供給用インクを保持する負圧発生部材に最も適したものが提供可能となる。
【0055】
特に、図28の繊維表面構造の場合、親水性基41−1は、高分子基であるため、同じ側の側鎖のメチル基(疎水性基)よりも長い構造となっている。そのため、親水性基41−1は、インクが流れる際には、その流速に対して繊維表面にならうように傾斜する(同時に、上記メチル基を実質的に覆うようになる)。結果的に流抵抗は大幅に小さくなる。逆にインクが停止してメニスカスを繊維体間に形成する際には、親水基41−1は、インクに対して向かう方向、即ち、繊維表面から垂直方向になるため(上記メチル基が繊維表面に露出する)、分子内レベルでの親水(大)−疎水(小)のバランスを形成して充分な負圧を形成できる。この親水性基41−1を(-C-O-C-)結合の多数と端末基としてのOH基とで形成した前記実施形態のように、親水基を高分子に数多く(少なくとも複数)有していることで、上記親水性基41−1の作用を確実なものとできるので好ましいものとなる。また、上記メチル基の他の疎水性基を高分子内に有する場合は、疎水性基の存在範囲よりも親水性基の存在範囲が大きくなるように、親水性基の方がより高分子レベルであることが好ましく、上記の如く親水性>疎水性となるようにバランスしていれば良い。
【0056】
ところで、インク供給口部における静負圧は次式で表される。
【0057】
静負圧=(インク供給口部からのインク界面までの高さ)−(インク界面における繊維の毛管力)
この毛管力は、インクと繊維吸収体との濡れ接触角をθとしたときにCOSθに比例する。したがって本発明の親水化処理の有無によって、COSθの変化が大きいインクの場合にはその分静負圧を低めにし、絶対値で言えば高めに確保することが可能となる。
【0058】
具体的に言えば、接触角10°レベルであれば親水処理を施しても最大2%程度の毛管力アップであるが、インクと繊維が濡れにくい組み合わせ、例えば接触角50°の状態は親水処理によって10°以下となれば、50%の毛管力アップとなる。(COS0°/COS10°≒1.02 COS10°/COS50°≒1.5)
ここで、図8に示す改質表面を有する物品を製造するための具体的な方法として、表面改質に用いる高分子の良溶媒で且つ基材に対して処理剤の濡れ性を向上させる向上剤を用いる方法について以下に説明する。この方法は、表面改質剤の高分子が均一に溶解する処理液(表面改質溶液)を基材の表面上に塗布した後、処理液に含まれる溶媒を除去しつつ、この処理液中に含まれる表面改質剤の高分子を上述のように配向させるものである。
【0059】
より具体的には、高分子に対する良溶媒であり、且つ基材表面に対し十分に濡れる溶剤中に、所定量の高分子と開裂触媒とを混合した液体(表面処理液、好ましくは機能性基を親水性基とする場合は純水を含むことが望ましい。)を作製し、表面処理液を基材表面に塗布した後、表面処理液中の溶媒を除去するため、蒸発乾燥(例えば、60℃オーブン中)させる工程を持つことが挙げられる。
【0060】
ここで、基材の表面に対して十分に濡れ性を示し、また表面改質剤としての高分子を溶解する有機溶媒を溶媒に含むことは、表面改質に用いる高分子の均一な塗布を容易にするという観点から、より望ましいものである。さらに、表面改質剤としての高分子が溶媒の蒸発に伴い、濃度が高くなる際にも、塗布された液層中に均一に分散して、十分に溶解している状態を保持する作用を持つことも、その効果として挙げることができる。加えて、表面処理液が基材に対して、十分に濡れることにより表面改質剤の高分子を基材表面に対し均一に塗り広げることができる結果、複雑な形状を有する表面に対しても、高分子被覆を均一に行うことを可能とする。
【0061】
また、表面処理液には、基材表面に対して濡れ性があり、高分子に対して良溶媒である揮発性の第1の溶媒に加えて、高分子に対して良溶媒であるが、基材表面に対する濡れ性が第1の溶媒に比べて相対的に劣り、また、第1の溶媒に比べて相対的に揮発性の低い第2の溶媒を併用することもできる。このような例としては、例えば、基材表面がポリオレフィン系樹脂からなり、高分子としてポリオキシアルキレン・ポリジチルシロキサンを用いた場合における後述するイソプロピルアルコールと水の組み合わせを挙げることができる。
【0062】
ここで、表面処理液中に開裂触媒としての酸を加えることによる効果は、以下のようなものが考えられる。例えば、表面処理液の蒸発乾燥過程において用材の蒸発に伴う酸成分の濃度上昇がなされる際に、加熱を伴う高濃度の酸により、表面改質に用いる高分子の部分的な分解(開裂)、高分子の細分化物の生成により、基材表面の、より微細な部分への配向が可能となり、また、蒸発乾燥の終末過程において高分子の開裂部同士の再結合による表面改質剤高分子のポリマー化を介して、高分子化膜(高分子被覆、好ましくは単分子膜)の形成を促進する効果が期待できる。
【0063】
また、表面処理液の蒸発乾燥過程において溶剤の蒸発に伴う酸成分の濃度上昇がなされる際に、この高濃度の酸が基材表面及び表面近傍の不純物質を除去することにより、清浄な基材表面が形成される効果も期待される。こうした清浄な表面では、基材物質・分子と表面改質剤の高分子の物理的な付着力の向上なども期待される。
【0064】
この際一部では、加熱を伴う高濃度の酸により基材表面が分解され、基材表面に活性点が出現し、この活性点と、上述の高分子の開裂による細分化物とが結合する副次的な化学反応が起こる場合が想定される。場合によっては、このような副次的な表面改質剤と基材との化学吸着による、基材上での表面改質剤の付着安定化の向上も一部では存在すると考えられる。
【0065】
次に、表面改質剤(親水処理液含む)の基材の表面エネルギーと略同等の表面エネルギーを有する主骨格の開裂と基材表面上での開裂物としての細分化物の縮合による高分子膜化工程について、機能性基が親水性基であり、疎水性基材表面に親水性を付与する場合を例とし、図9〜図15参照して説明する。なお、親水性基とは、基全体として親水性を付与できる構造を有するもので、親水基そのものや、疎水性の鎖や疎水基を有するものでも親水基などを置換配置したことで親水性を付与できる基としての機能を有するものであれば親水性基として利用できる。
【0066】
図9に、親水処理液塗布後の拡大図を示す。この時点では、親水処理液58中の親水化剤である高分子51〜54と酸57とは、基材56表面上の親水処理液中で均一に溶解している。図10に、親水処理液塗布後乾燥工程の拡大図を示す。親水処理液塗布後乾燥工程における加熱を伴う乾燥において、溶剤の蒸発に伴う酸成分の濃度上昇により基材56の表面及び表面近傍の不純物質の除去が行われるといった基材56の表面の洗浄作用により純粋な基材56の表面が形成されることによる基材56と表面改質剤としての高分子51〜54の物理吸着力が向上する。また、親水処理液塗布後乾燥工程における加熱を伴う乾燥において、溶剤の蒸発に伴う酸成分の濃度上昇により親水化剤の高分子51〜54の一部が開裂される部分も存在する。
【0067】
濃酸による高分子51の分解の模式図を図11に示す。このようにして分解された親水化剤の基材に対する吸着の様子を図12に示す。さらに溶剤の蒸発が進むにつれて、溶解飽和に達した親水化剤を構成する高分子からの細分化物51a〜54bの基材の表面エネルギーと略同等の表面エネルギーを有する主骨格部が、洗浄により形成された純粋な基材56の表面に対し選択的に吸着する。その結果、表面改質剤中の基材56の表面エネルギーと異なる表面エネルギーを有する基41−2が基材56に対し外側に配向する。
【0068】
従って、基材56の表面には、この表面の表面(界面)エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する主骨格部分が配向し、基材56の表面エネルギーと異なる表面エネルギーを有する基41−2が基材56の表面とは反対側の外側に配向した状態になるために、基41−2が親水性基である場合には、基材56の表面に親水性が付与されて、表面が改質される。親水処理液塗布乾燥後の親水化剤と基材表面の吸着状態の模式図を図13に示す。
【0069】
なお、高分子として、例えばポリシロキサンのように開裂によって生成した細分化物が縮合などによって細分化物の少なくとも一部で結合可能なものを用いることで、基材56表面に吸着した細分化物間に結合を生じさせて高分子化し、親水性化剤の皮膜をより強固なものとすることもできる。図14に、このような縮合反応による再結合、すなわち縮合高分子71〜73の結合状態の模式図を示す。なお、ポリシロキサンを用いた場合の開裂による細分化物の形成とその縮合による高分子化のメカニズムは以下のとおりである。
【0070】
すなわち、被処理表面における表面処理液の制御された乾燥に伴い、この表面処理液中に含まれる希酸の濃度が上昇して濃酸化し、その濃酸(例えばH2SO4)がポリシロキサンのシロキサン結合を開裂させ、その結果、ポリシロキサンの細分化物及びシリル硫酸が生成する(スキーム1)。そして被処理表面に存在する処理液がさらに乾燥していくにつれて、表面処理液中に存在する細分化物の濃度も高まっていき、細分化物同士の接触確率が向上する。その結果、スキーム2に示すように、細分化物同士が縮合し、シロキサン結合が再生される。また、副生成物としてのシリル硫酸も、被処理表面が疎水性である場合には、シリル硫酸のメチル基が被処理表面に向かって配向し、スルホン基が被処理表面とは異なる方向に配向し、被処理表面の親水化に何らかの寄与を果たすものと考えられる。
【0071】
【化1】
なお、表面処理液として溶媒中に水が存在する組成を有するものを利用した場合についての表面処置液の状態の一例を図15に模式的に示す。処理液の溶媒中に水が存在する場合は、加熱を伴う親水化のための処理液からの溶媒の蒸発において、水及び揮発性有機溶剤が蒸発する(水の気体分子を61、有機性有機溶剤の気体分子を60で示す)。その際、揮発性有機溶剤の蒸発速度が水よりも速いため処理液中の水の濃度が高まっていき、処理液の表面張力が上昇していく。その結果、基材56の被処理面と処理液との界面に表面エネルギーの差が生じ、基材56の被処理面と、蒸発により水の濃度が高まった処理液(含水層62)との界面において、親水化剤としての高分子からの細分化物51a〜54bにおける基材56の被処理面と略同等の表面エネルギーを有する部分が基材56の被処理面側に配向する。その一方で、親水化剤としての高分子からの細分化物の親水性基を有する部分は、有機溶媒の蒸発により水の濃度が高まった含水層62側へ配向する。その結果、高分子細分化物の所定の配向性がより向上すると考えられる。
【0072】
本発明は、負圧によってインクを保持するインクジェット用繊維吸収体に関し、その繊維吸収体を構成する繊維の表面に親水化処理を施すものであるが、本発明に適用される、前述した物品に対する表面改質によれば、表面改質の対象は繊維に限らず、高分子の有する機能性基の特性や種類に応じて種々の物品や用途が挙げられる。以下にその幾つかの例について説明する。
【0073】
(1)機能性基が親水基である場合
物品としては、インクジェット系で用いられるインク吸収体などの吸収性を必要とするもの(オレフィン系繊維を含む場合は上記実施形態により対応できる)で、瞬間的に液体(上述の各実施形態などで説明される水性のインクなど)を吸収できる親水性を本発明の表面改質によって与えることができる。また、液体保持性を必要とする場合にも有効である。
【0074】
(2)機能性基が親油基である場合
本発明に適用される表面改質によれば、親油性を必要とするものに対しても有効に機能を与えることができる。
【0075】
(3)表面改質の他への応用は、上記原理のメカニズムを用いて達成できるものすべてが可能であり、本原理に含まれるものである。
【0076】
特に、処理剤として、物品表面への濡れ性と高分子の媒液を達成できる濡れ性を向上できる濡れ性向上剤(例えば、イソプロピルアルコール:IPA)と高分子開裂を生じせしめる媒体と、前述のいずれかの機能性基とこの基とは異なる界面エネルギーであって、物品表面の部分表面エネルギーと略同等の基(または基群)を有する高分子を有するものを用いた場合における、開裂後の縮合による表面改質は、特に優れた効果を発揮し、従来からは得られない均一性や特性を確実に与えることができる。
【0077】
なお、本明細書では、こうした収容される液体に対する濡れ性に優れる性質を「親液性」と称することにする。
【0078】
また、本発明の補足概念として、繊維を成型または形成する際に用いられる中和剤(ステアソン酸カルシウムやハイドロタルサイトなど)や他の添加物が繊維に含まれている場合があるが、上述した表面改質法の適用によって、これらのインクに対する溶出やインクにより析出されることのいずれも軽減でき、本発明の高分子膜が形成される場合は、これらの問題を解決できる。したがって、上述の表面改質法によれば、中和剤などの添加物の使用範囲を拡大できたり、またインク自在の特性変化も防止できる他、インクジェットヘッド自体の特性変化をも防止できる。
【0079】
これらの各種物品の製造における工程図の一例を図27に示す。製造開始時において物品と処理液が提供され、物品の改質すべき表面(被改質面)への処理液付与工程、被改質面からの余剰物除去工程、被改質面上での高分子の開裂及び細分化物の配向のための処理液濃縮蒸発工程、細分化物間の結合による高分子化のための高分子縮合工程などを経て、改質された表面を有する物品を得ることができる。
【0080】
処理液濃縮工程及び処理液蒸発工程は、好ましくは室温よりも高い温度で溶媒の沸点以下の温度(例えば60℃)での連続した加熱乾燥工程によって行うことができ、ポリオレフィン系樹脂からなる表面を改質するためにポリシロキサンを、水、酸及び有機溶媒(例えばイソプロピルアルコール)共に用いた場合で、例えば、45分〜2時間程度とすることができ、40重量%のイソプロピルアルコール水溶液の使用においては例えば2時間前後である。なお、水分の含有量を少なくすることでこの乾燥処理時間を短くすることができる。なお、水分の含有量を少なくすることでこの乾燥処理時間を短くすることができる。
【0081】
なお、図27の例では、高分子の開裂による細分化物の形成が物品の被改質面上で行なわれているが、細分化物を既に含む処理液を物品の被改質面上に供給して、配向させてもよい。
【0082】
処理液の組成としては、先に述べたように、例えば、被改質面に対する処理液のぬれ性を向上させるための被改質面に対するぬれ性を有し、表面改質剤の有効成分である高分子の良溶媒であるぬれ性向上剤、溶媒、高分子開裂触媒、被改質面への改質効果を付与するための機能性基と被改質面への付着機能を得るための基を有する高分子とを含んで構成されるものが利用できる。
【0083】
「原理適用例1」
次に、ポリプロピレン・ポリエチレン繊維体に対して上述の表面親水化の原理を適用した例を説明する。実際のポリプロピレン・ポリエチレン繊維体は、例えば、インクなどの液体を染み込ませ、インクを保持する目的で利用されるインク吸収体に利用できる形状を採る繊維を複合させて塊形状としたものである。例えば、図16(a)に示すように、大気に対して開放された開口85を有する適当な形状の容器81内にインクなどの各種液体の吸収保持体として機能する繊維体83を所定の配向で収納して、液体保持容器として使用することができる。更に、このようなインク吸収体は、インクジェット記録装置に用いるインクタンク中に好適に利用できるものである。特に、後に図18及び図19を用いて説明するように、親水処理液を含浸させた繊維吸収体を押しつぶして繊維の隙間から余分な処理溶液をしぼり出した後、加熱乾燥させるという処理を行った繊維吸収体をタンク内に収容させる場合は、処理溶液のしぼり出し方向と、タンクへ挿入するときの繊維吸収体の圧縮方向とを一致させると望ましい。つまり、上記のように処理溶液のしぼり作業時に圧縮させた繊維吸収体が復元したとき、例えば繊維の分岐又に親水化剤が確実に付いていなくても、その不具合を繊維吸収体のタンク挿入時に相殺させることができる。
【0084】
また、繊維は具体的にはポリプロピレンとポリエチレンの二軸繊維体から構成されており、個々の繊維は、長さが大凡60mmである。この二軸繊維体は、その断面形状を図17(a)に例示するように、軸に対して垂直方向における断面の外形(外周形状)は略円形状(閉環状)であり、相対的に融点の高いポリプロピレン繊維を芯材とし、その周囲に相対的に融点の低いポリエチレンで覆い鞘材としたものである。このような断面構造の短繊維からなる繊維塊を梳綿機により、その繊維並び方向を揃えた後、加熱して、繊維間に融着を生じさせる。具体的には、鞘材のポリエチレンの融点よりは高く、芯材のポリプロピレンの融点よりは低い温度に加熱して、繊維が互いに接する部位の鞘材のポリエチレン相互が融着した構造体とする。
【0085】
上記の繊維構造体においては、図16(c)に示すように、梳綿機により繊維並び方向を揃えたため、繊維は、主に長手方向(F1)に連続的に配列されており、部分的に繊維は、相互に接触している。加熱により、この接触点(交点)において、相互の融着が生じて、網目構造を形成し、直交する方向(F2)についての機械的な弾力性を有するものとなっている。それに伴い、図16(b)に示す長手方向(F1)への引っ張り強度を増しているが、それに対して、直交する方向(F2)は、引っ張り強度は劣るものの、押しつぶし変形に対しては、復元力を有する弾性構造となっている。
【0086】
より詳細にこの繊維構造体を見ると、図16(c)に示すように、個々の繊維は捲縮されており、この捲縮に伴い、隣接する繊維間で複雑な網目構造を形成し、融着が生じている。一部の捲縮した繊維は、直交する方向(F2)に向くことで、三次元的な融着をも完成している。本例で実際に用いた繊維構造体は、融点約180℃の芯材のポリプロピレン繊維に対して、融点約132℃のポリエチレンが、図17の(a)に示す略同心円状に被覆した二軸繊維のトウを用いて、スライバーに形成した。用いた繊維構造体では、主に繊維が配列する繊維方向(F1)が存在するので、仮に液体を浸漬すると、内部での流動性ならびに静止状態での保持の様子が、繊維方向(F1)とそれと直交する方向(F2)とでは、明確な差異を有する。
【0087】
この例では、対象とする物品形状が繊維構造体であり、平面な表面を有する物品より液体の保持性が一般に高いため、処理液溶液を以下の組成とした。
【0088】
【表1】
(1)PP・PE繊維吸収体の親水化処理方法
上記組成の親水処理液に、図18(a)に示す構造のポリプロピレン・ポリエチレン繊維吸収体を浸漬した(図18(b))。この時、繊維吸収体の間隙に処理液が保持される。その後、繊維吸収体を押しつぶして(図18の(c))、繊維の隙間に保持されている、余分な処理溶液を除去した。金網などの抑え治具から取り出すと、繊維吸収体は元の形状に復元して(図19の(a))、繊維表面に液層が塗布されたものとなる。この繊維表面が液で濡れたものを、60℃オーブンにて、1時間乾燥させた(図19(b))。
【0089】
(対比例1及び参照例1)
加えて、対比例1として、上記繊維体親水処理液において調製した硫酸とイソプロピルアルコールのみを含む液についても、図18及び図19で説明した方法と同じ操作を施した。すなわち、表1で示した処理液から、(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)を除いた液を用いた。また、参照例として、未処理のPP・PE繊維吸収体を用いた。
【0090】
なお、上記の原理適用例1において、使用したPP・PE繊維吸収体も重量0.5gに対し、前記の塗布法で繊維吸収体全体に塗布される親水処理液は0.3〜0.5gである。また、対比例1においても、塗布される液量は、原理適用例1と同じである。
【0091】
以上の操作で得られた各繊維吸収体における表面の処理状態についての評価及びその結果を以下に示す。
【0092】
(1)PP・PE繊維吸収体親水性評価方法
イ)スポイト純水滴下評価
原理適用例1の処理をしたPP・PE繊維吸収体、対比例1のPP・PE繊維吸収体及び参照例の未処理のPP・PE繊維吸収体について、それぞれ、上部からスポイトにて純水を滴下した際、純水のしみこみ具合を観察した。
【0093】
ロ)純水浸漬評価
PP・PE繊維吸収体が十分に入る大きさの容器に純水を満たし、この容器に中に、原理適用例1による処理のPP・PE繊維吸収体、対比例1のPP・PE繊維吸収体及び参照例の未処理のPP・PE繊維吸収体をゆっくり乗せ、その際、それぞれのPP・PE繊維吸収体への純水のしみこみ具合を観察した。
【0094】
(2)PP・PE繊維吸収体親水性評価結果
イ)スポイト純水滴下評価結果
原理適用例1の処理をしたPP・PE繊維吸収体では、上部からスポイトにて純水を滴下した際、純水は瞬時に繊維吸収体の内部へと浸透していった。
【0095】
一方、対比例1のPP・PE繊維吸収体ならびに参照例1の未処理PP・PE繊維吸収体では、上部からスポイトにて純水を滴下したが、純水はPP・PE繊維吸収体にまったく浸透せず、PP・PE繊維吸収体上をはじくような形で球状形の液滴を形成していた。
【0096】
ロ)純水浸漬評価結果
原理適用例1の処理をしたPP・PE繊維吸収体を純水を満たした容器に中にゆっくり乗せると、PP・PE繊維吸収体はゆっくりと水中に沈んでいった。少なくとも、これは、図18及び図19を用いて説明した例によって処理したPP・PE繊維吸収体の表面は、親水性を有することを表している。
【0097】
一方、対比例1のPP・PE繊維吸収体、ならびに参照例1の未処理PP・PE繊維吸収体を純水を満たした容器に中にゆっくり乗せた際には、対比例1のPP・PE繊維吸収体と未処理PP・PE繊維吸収体は、共に純水の上に完全に浮いた状態になった。その後も、まったく水を吸収する様子はみられず、明らかに撥水性を示していた。
【0098】
以上の結果から、PP・PE繊維吸収体に対しても、ポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリアルキルシロキサン、酸、アルコールからなる処理液を塗布し、乾燥することにより、図19(c)に示すようなポリアルキルシロキサンの被覆が形成され、有効に表面親水化処理が行われると判断される。その結果として、上記の処理を施したPP・PE繊維吸収体は、水性インクに対しても、十分にインク吸収体としての機能を持たせることが可能であることが判明した。
【0099】
上記の結果、すなわち、本発明に適用された表面改質において、PP・PE繊維の表面にポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリアルキルシロキサンが付着し、高分子被覆を形成することの査証を得る目的で、繊維表面のSEM写真による観察を行った。
【0100】
図20、図21、図22に、参照例1(未処理PP・PE繊維吸収体)の未処理PP・PE繊維表面の拡大SEM写真を示す。また、図23に、対比例4(酸とアルコールのみ処理PP・PE繊維吸収体)の酸処理PP・PE繊維表面の拡大SEM写真を示す。
【0101】
図24、図25、図26に、図18及び図19を用いて説明した例(親水化処理PP・PE繊維吸収体)の処理済PP・PE繊維表面の拡大SEM写真を示す。
【0102】
先ず、これら全てのPP・PE繊維表面拡大SEM写真において、繊維表面上に有機物の付着に起因すると判断される、明確な構造変化は確認できない。実際に、図22の未処理PP・PE繊維及び、図26の親水化処理PP・PE繊維の2000倍拡大写真を詳細に比較しても、未処理PP・PE繊維と親水化処理PP・PE繊維の表面のSEM観察において両者の違いは認められない。従って、親水化処理PP・PE繊維において、(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)は繊維表面に均一に薄い膜状(単分子膜と思われる)に付着しているため、形状的には、元の繊維表面と区別が付かないものとなっており、SEM観察上差異が認められないと判断される。
【0103】
一方、図23の酸とアルコールのみで処理したPP・PE繊維のSEM写真を見ると、繊維の交点(溶着部)の切断が多く生じ、また、繊維中に節のようなものが多く見られる。この変化は、加熱乾燥の過程で、溶剤の蒸発による高濃度の酸と、乾燥工程自体の熱により、繊維表面のPE・PP分子、特に表層PEの劣化が誘起・促進された結果を示している。
【0104】
一方、親水化処理溶液も、同じ濃度の酸を含み、同じく加熱乾燥を施すにもかかわらず、酸とアルコールのみで処理した酸処理PP・PE繊維にて観測されるような、繊維結合部の切断、及び、繊維中に節のようなものは認めれない。この事実は、原理適用例1の親水化処理では、繊維表面のPE分子の劣化が抑制されていることを示している。これは、酸が作用して、繊維表面のPE分子の切断が生じ、分子内にラジカルが生成した際にも、何らかの物質・構造がラジカルを捕捉し、ラジカルが連鎖的にPEを破壊することを抑制していると考えられる。そのラジカルの捕捉にも、表面に付着する(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)が関与し、生成したラジカルを捕捉する形でPE表面と化学的な結合をも形成することで、ラジカル連鎖によるPE/PPの破壊を抑制する副次的な現象・効果も否定はできない。
【0105】
これらを総合すると、原理適用例1においては、繊維表面の改質は、(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)が繊維表面に均一に薄い膜状に付着していることで達成されていると判断される。その過程において、親水化処理に用いる溶液中に含まれる酸と溶剤による繊維表面の洗浄効果も期待でき、ポリアルキレンオキサイド鎖の物理的な吸着を促進する作用も予測される。それ以外に、高濃度の酸と熱によるPE分子の切断に伴うPE分子の切断部とポリアルキレンオキサイド鎖の化学的結合の可能性も少なからず存在していることも考えられる。
【0106】
さらには、原理適用例1では、曲面から形成される繊維表面に対しても、例えば、図19(c)に模式的に示すように、高分子の被覆を容易に達成できることを示している。このように表面の周部(断面の外周形状が閉環状である部分)を、高分子の被覆が環状に覆うことで、この高分子の被覆により表面改質がなされた部分が物品から容易に剥離しないようにすることができる。
【0107】
なお、二軸繊維には、二軸繊維の中には図17(b)に示すように偏芯して、核部(芯材)91bが部分的に外壁面に露出して、表層(鞘材)からなる表面と核部からなる表面が混在している場合があるが、この様な場合においても、上記の本発明にかかる表面改質処理を行うことで、核部の露出部分及び表層の表面の両方に親水性を付与すれることが可能である。なお、親水性機能をもつ界面活性剤を塗布し、乾燥させただけの場合には、部分的ではあるが初期親水性は得られるものの、純水により軽く揉み洗いすると、すぐに界面活性剤が水に溶解して溶出してしまい、親水性が失われる。
【0108】
「原理適用例2、3」
次に、PP繊維体に対して上述の表面親水化の原理を適用した例を説明する。具体的には、PP繊維体として、2cm×2cm×3cmの直方体形状に成形した繊維径が2デニールの繊維塊を利用した。
【0109】
先ず、下記する二種の組成の親水処理溶液を調製した。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
第2の組成(原理適用例3)は、イソプロピルアルコールならびに純水をこの順に所定量加えて、上記の組成としたものである。ここでも、含まれる硫酸と(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)は、4倍に希釈されたものとなっている。
【0112】
図18及び図19を用いて説明したPP・PE繊維吸収体の親水化処理方法の手順に準じて、イソプロピルアルコールを主な溶媒とする第1組成(表2)の溶液で処理したPP繊維体(原理適用例2)と、水と、イソプロピルアルコールの混合溶媒とする第2組成の溶液で処理したPP繊維体(原理適用例3)を得た。
【0113】
(参照例2)
未処理のPP繊維体を参照例2とした。
【0114】
原理適用例1と同様に、参照例2の未処理のPP繊維体は、その表面は撥水性であるものが、原理適用例2のPP繊維体、原理適用例3のPP繊維体共に親水性を示す表面に改質されていた。その親水性の程度を評価する目的で、シャーレに水性インク(γ=46dyn/cm)7gを入れ、そのインク液表面に、原理適用例2のPP繊維体、原理適用例3のPP繊維体、ならびに参照例2の未処理のPP繊維体を静かに乗せた。
【0115】
参照例2の未処理のPP繊維体は、水性インク上に浮いた状態であったが、原理適用例2のPP繊維体、原理適用例3のPP繊維体では、繊維体の底面からインクを吸い上げていた。しかしながら、原理適用例2のPP繊維体と原理適用例3のPP繊維体とを比較すると、吸い上げられた水性インク量に明確な差異が見られ、原理適用例2のPP繊維体は、シャーレ内のインクを全て吸い上げ・吸収していたが、原理適用例3のPP繊維体では、シャーレ内にインクの凡そ半量が残っていた。
【0116】
原理適用例2のPP繊維体と原理適用例3のPP繊維体とにおいて、その表面上に被覆する高分子である(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)の総量は、実質的な顕著な差異はないが、その被覆における高分子自体の配向の程度に差異がある結果と考えられる。
【0117】
例えば、原理適用例2のPP繊維体においては、その表面上に被覆する高分子は、概ね配向するものの、部分的には、配向に乱れを含む状態で付着を完成している。一方、原理適用例3のPP繊維体においては、前記する配向の乱れは格段に少なくされている。
【0118】
この(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)による親水化処理は、イソプロピルアルコールに加えて、水を溶媒に加えることで、密で、より配向が揃った被覆が達成されていると判断される。処理液自体、表面を均一に濡らす必要があるので、少なくともイソプロピルアルコールを20%程度含むことが望ましいが、上記の原理適用例3のイソプロピルアルコールの含有率40%よりも少ないイソプロピルアルコールの含有率であっても、被覆が可能と考えられる。すなわち、溶媒を蒸散して、乾燥させる過程では、イソプロピルアルコールがより早く揮発して失われ、その間、イソプロピルアルコールの含有率は一層低下するので、それを考慮すると、イソプロピルアルコールの含有率40%よりも少ないイソプロピルアルコールの含有率であっても、被覆が可能と考えられる。また、工業的には安全性からみて、イソプロピルアルコールの量は40%以下が好ましい。
【0119】
また、本発明の上記改質方法及び改質された表面、物品における上記技術思想は負圧発生部材としての繊維以外の多孔質体にもすべて適用可能であることは言うまでもない。さらに、本発明の上記改質方法及び上記技術思想は、図4〜図7に示したように大型タンク6に接続された供給管7の内壁面にも適用可能である。
【0120】
なお、上記(表面改質方法についての補足説明)の欄に開示した方法で一様に親液化された負圧発生部材は、負圧発生部材内に含浸したインク(液体)が抜き取られた後の、インクの再度の吸い上げに関して、インクの抜き取り量やくり返しの回数によらず、再度の吸い上げ後の負圧発生部材で保持するインク量がほぼ同じ、言い換えれば初期負圧に復帰できる、という効果がある。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、キャリッジに搭載されるインクタンクに収容されている吸収体の表面に高分子が付与されてその表面が親液化されることにより、吸収体に補給されたインクがその吸収体に素早く吸収され、インクの補給動作が短時間で完了するようになるという効果がある。このようなインクタンクが、インクジェット記録ヘッドと共にキャリッジに搭載されているインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッドのインク吐出動作に伴ってキャリッジ上のインクタンクのインクが減った際にインクタンク内の吸収体にインクを補給すると、吸収体に浸透していくインクが吸収体内の気液界面に短時間で達することになる。すなわち、補給前に吸収体内にあったインクと、補給されたインクとが吸収体内で短時間で繋がることになる。この場合、吸収体の表面が親水化されていない場合と比較すると、インクタンクが使用可能になるまでに要する時間が大幅に短縮される。よって、インクタンクへのインク補充を俊敏且つ確実に行うことができ、インク補充動作を開始してから、使用可能なインクがインクタンク内に十分に充填されるまでの時間が短くなる。したがって、キャリッジ上に搭載されたインクタンクへのインク補充を所定の位置で行うピットイン方式のインクジェット記録装置として、信頼性の高い記録装置が実現される。
【0122】
また、上記のようなインクタンクがキャリッジに搭載され、キャリッジが所定の位置に移動した際に補給タンク内のインクが供給管を通してインクタンク内に補給される場合、供給管における少なくともインク供給方向下流側の先端部の内面が親液化されていることにより、インクの補給動作が休止している状態では供給管のその先端部でメニスカスが安定して形成され、その先端部からのインク漏れが抑制されるという効果がある。例えば、キャリッジの移動による振動などがインクジェット記録装置で発生したり、衝撃がインクジェット記録装置に加えられても、供給管の先端部でメニスカスの形状が安定して保持され、メニスカスが破壊されにくくなる。よって、キャリッジ上のインクタンクへのインク補給動作が休止している状態では供給管の先端部からのインク漏れが抑制され、インクタンクへのインク補充において信頼性の高いインク供給が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の液体吐出記録装置であるカラープリンタの概略斜視図である。
【図2】図1に示した大型タンクとヘッドカートリッジのタンク部との接続供給を説明するための概略図である。
【図3】大型タンクからタンク部へのインク供給システムを示す模式図である。
【図4】大型タンクに接続された供給管の先端部でメニスカスが形成されている状態を示す断面図である。
【図5】供給管の内壁面が親水化処理されていない場合におけるメニスカスの状態の一例を示す断面図である。
【図6】タンク部内の負圧発生部材にインクが吸収された状態を示す断面図である。
【図7】タンク部内の負圧発生部材が親水化処理されていない場合でのインク補給動作について説明するための断面図である。
【図8】本発明に適用可能な表面改質方法における、物品(基材)の被改質表面上に形成される表面改質剤の高分子と物品表面との付着形態を模式的に示す図であり、(a)は機能性基としての第2の基と物品表面への付着のための第1の基の両方が高分子の側鎖にある場合について説明する図であり、(b)は第1の基が主鎖中に含まれている場合を説明する図である。
【図9】本発明に適用可能な表面改質方法において、表面改質剤の高分子を含む処理溶液を塗布し、基材上に塗布層を形成した状態を模式的に示す図である。
【図10】本発明に適用可能な表面改質方法において、基材上に形成した表面改質剤の高分子を含む塗布層中の溶媒を一部除去する工程を示す概念図である。
【図11】表面改質剤の高分子を含む塗布層中の溶媒を一部除去する工程に付随し、処理溶液中に添加する酸により誘起される、表面改質剤の高分子の部分的な解離過程を示す概念図である。
【図12】表面改質剤の高分子を含む塗布層中の溶媒をさらに除去する工程に付随し、表面改質剤の高分子あるいはその解離細分化物が配向形成する過程を示す概念図である。
【図13】塗布層中の溶媒を乾燥除去して、表面改質剤の高分子あるいはその解離細分化物が配向して、表面上に付着固定される過程を示す概念図である。
【図14】表面上に付着固定される表面改質剤の高分子由来の解離細分化物相互が、縮合反応により再結合する過程を示す概念図である。
【図15】本発明に適用可能な表面改質方法を、撥水性表面の親水化処理に適用する事例を示し、処理溶液中に水を添加する効果を示す概念図である。
【図16】インクタンクにおけるインク吸収体に利用されうるPE・PP繊維体を示し、(a)は、インクタンクにおけるインク吸収体としての利用形態を、(b)は、PE・PP繊維体の全体形状と、繊維の配列方向F1とそれと直交する方向F2を、(c)は、前記PE・PP繊維体を加熱融着して形成する前の状態を、(d)は、前記PE・PP繊維体を加熱融着して形成した状態をそれぞれ模式的に示す図である。
【図17】図16に示すPE・PP繊維体の断面構造の一例であり、(a)はPP芯材上にPE鞘材がほぼ同心円状に被覆する例、(b)はPP芯材上にPE鞘材が偏心して被覆する例を模式的に示す図である。
【図18】図16に示すPE・PP繊維体の撥水性表面の親水化処理に本発明の表面改質方法を適用する事例を示し、(a)は未処理の繊維体を、(b)は繊維体を親水化処理液に浸漬する工程を、(c)は浸漬後、繊維体を圧縮し、余剰の処理液を除く工程を模式的に示す図である。
【図19】図18に示す工程に引き続く工程を示し、(a)は繊維体表面に形成された塗布層を、(b)は塗布層中に含まれる溶媒を乾燥除去する工程を、(c)は、繊維表面を覆う親水化剤の被覆を模式的に示す図である。
【図20】参照例1(未処理PP・PE繊維吸収体)の未処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす150倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図21】参照例1(未処理PP・PE繊維吸収体)の未処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす500倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図22】参照例1(未処理PP・PE繊維吸収体)の未処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす2000倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図23】対比例1(酸とアルコールのみ処理PP・PE繊維吸収体)の酸処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす150倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図24】原理適用例1(親水化処理PP・PE繊維吸収体)の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす150倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図25】原理適用例1(親水化処理PP・PE繊維吸収体)の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす500倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図26】原理適用例1(親水化処理PP・PE繊維吸収体)の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす2000倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図27】本発明に適用可能な改質表面処理の製造工程の一例を示す工程図である。
【図28】本発明に適用可能な表面改質処理による表面の親水性基と疎水性基の推定される分布の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d ヘッドカートリッジ
2,7b インク
6 大型タンク
6a,24 大気連通口
7 供給管
7a,7d メニスカス
7c 内壁面
8 スライド板
9 ヘッドカートリッジのタンク部
10 負圧発生部材
11 気液界面
12 差込口
21 制御部
22 弁体駆動装置
23 弁体
24 大気連通口
25 インク供給口
41−1 第1の基
41−2 第2の基
41−3 主鎖
51〜54 高分子
51a〜54b 細分化物
55 基材表面に露出している基
56 基材
57 酸
58 処理液
59 大気
60有機性有機溶剤の気体分子
61 水の気体分子
62 含水層
71〜73 縮合高分子
81 容器
83 繊維体
85 開口
91a 芯材
91b 鞘材
111 カラープリンタ
112 操作パネル
113 給紙トレー
114 紙
115 排紙トレー
116 本体カバー
117 開口部
118 蝶番
119 キャリッジ
Claims (3)
- インクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持するオレフィン系の樹脂を表面に有する繊維の集合体で構成された吸収体を収容したインクタンクにおいて、
前記吸収体を構成する繊維の表面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、
前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、
前記高分子の前記第1の基は前記繊維の表面側に向って配向し、前記第2の基は前記繊維の表面と反対側に配向しており、前記第2の基はインクが移動する場合にはインクの流れに対して前記繊維の表面にならい、インクの移動が停止した場合には前記繊維の表面に対して垂直な方向に向うことを特徴とするインクタンク。 - インクジェット記録ヘッドに供給されるインクを保持するオレフィン系の樹脂を表面に有する繊維の集合体で構成された吸収体を収容したインクタンクと、
前記インクジェット記録ヘッドと前記インクタンクとを搭載して往復走査されるキャリッジと、前記キャリッジの走査範囲内のインク補給位置で前記インクタンクに対して接離して前記インクタンクにインクを補給する供給管を備えた補給タンクと、を有する記録装置本体と、
を備えたインクジェット記録装置において、
前記インクタンクは前記吸収体を構成する繊維の表面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、前記高分子の前記第1の基は前記繊維の表面側に向って配向し、前記第2の基は前記繊維の表面と反対側に配向しており、
前記記録装置本体の前記補給タンクからインクが補給されてインクが前記繊維の集合体で構成された前記吸収体内を移動する場合には前記第2の基がインクの流れに対して前記繊維の表面にならった状態となり、インクの補給が終了してインクの移動が停止した場合には前記第2の基は前記繊維の表面に対して垂直な方向に向う状態となることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記供給管はオレフィン系の樹脂で構成されており、その内面に対して主鎖、該主鎖の繰り返し単位中に含まれ前記繊維の表面と類似した親和性を有する第1の基、前記繊維の表面と異なる親和性を有する第2の基を有する高分子が付与されており、
前記第2の基は前記第1の基より長い基であって、前記高分子は、前記主鎖がシロキサン結合からなり、前記第1の基がアルキル基で構成され、前記第2の基がポリオキシアルキレン基で構成され、
前記高分子の前記第1の基は前記供給管の内面側に向って配向し、前記第2の基は前記供給管の内面と反対側に配向していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
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