JP2002144596A - インク保持部材へのインク充填方法、該インク充填方法によりインクが充填されるインクタンク - Google Patents

インク保持部材へのインク充填方法、該インク充填方法によりインクが充填されるインクタンク

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JP2002144596A
JP2002144596A JP2000342131A JP2000342131A JP2002144596A JP 2002144596 A JP2002144596 A JP 2002144596A JP 2000342131 A JP2000342131 A JP 2000342131A JP 2000342131 A JP2000342131 A JP 2000342131A JP 2002144596 A JP2002144596 A JP 2002144596A
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ink
holding member
tank
ink holding
fiber
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Yasuo Kotaki
小瀧  靖夫
Mikio Sanada
幹雄 真田
Koki Hayashi
弘毅 林
Sadayuki Sugama
定之 須釜
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より確実、簡単、かつ速やかに、インクをイ
ンク保持部材内に充填する。 【解決手段】 タンク保持ステージ101上にインクタ
ンク200を保持し、親水化処理が施されインクタンク
200内に収容されたインク保持部材201を大気に対
して解放した状態で、インク供給機構104からインク
タンク200内に所定量のインクを注入すると共に、ス
テージ移動機構102を駆動してタンク保持ステージ1
01を往復移動させ、ストッパ部材103,121に衝
突させて、インクタンク200内に注入したインクに所
定の慣性力を与える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリンタ装置に装
着されるインクタンクにインクを注入するインク充填方
法および該インク充填方法により好適にインク充填され
るインクタンクに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、各種方式のプリンタ装置が実施さ
れており、その例として、レーザプリンタやインクジェ
ットプリンタが知られている。インクジェットプリンタ
は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を形成するもの
で、現在ではインク液を保持するインクタンクが着脱自
在な構造が一般的である。
【0003】このようなインクタンクには、除膜処理し
たウレタンフォームやフェルトなどを用いた、インク液
体を保持可能なインク保持部材が筐体の内部に収納され
ている。
【0004】インクタンクのインク保持部材へのインク
の充填方法の中で最も単純な方法としては、インクタン
ク内部を大気開放状態として、インクタンクの筐体に設
けられたインク充填用開口から、シリンジなどの加圧手
段で加圧によってインクを充填するいわゆる加圧充填法
が知られている。
【0005】特開平8−112905号公報には、この
加圧充填法においてインク保持部材内部に残留する気泡
に着目し、これを除去する目的で、超音波などの振動を
インクタンクに加えるインク充填方法が開示されてい
る。
【0006】一方、近年では、いわゆる環境問題に対す
る観点から、このようなインク保持部材を、例えばPP
(ポリウレタン)やPE(ポリエチレン)といった、熱
可塑性樹脂材料からなる繊維で構成する場合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな熱可塑性樹脂繊維からなるインク保持部材では、使
用するインクによっては繊維がインクに対して疎水性を
示すため、インク保持部材に対してインクを加圧充填し
た場合、短時間でインク保持部材中にインクを均一に充
填することは難しい。
【0008】また、本発明者らが、特開平8−1129
05号公報に開示された方法で、インクタンクに振動を
加えてインク保持部材にインクを充填する実験を行った
が、インクを均一に保持させることはできなかった。
【0009】そのため、本発明者らの一部により、繊維
吸収体からなるインク保持部材に確実かつ簡単にインク
を充填できるインク充填方法について鋭意検討がなさ
れ、インクタンクの内部に注入されたインクに大きな慣
性力を急激に付与し、この慣性力によりインクをインク
保持部材の内部で移動させるインク充填方法が提案され
るに至っている(特願平2000−254084号)。
【0010】また、本発明者らの一部により、繊維吸収
体の表面改質について研究された結果、繊維吸収体等の
表面を親水化すること等に関する画期的な表面改質方法
について提案されるに至っている(特願平11−342
618号)。
【0011】本発明は、上述の新たな知見に基づいて想
起されたものであり、その主たる目的は、より確実、簡
単、かつ速やかにインクをインク保持部材内に充填する
ことができるインク充填方法を提供することである。
【0012】また本発明は、上記本発明のインク充填方
法の適用に好適に用いられるインクタンクを提供するこ
とを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明のインク充填方法は、インクを保持するため
のインク保持部材と、該インク保持部材を収納するとと
もに前記インク保持部材のインクを外部に供給するため
のインク供給口および前記インク保持部材を大気に対し
て連通させる大気連通口を備える筐体と、を有するイン
クタンクのインク保持部材にインクを充填するインク充
填方法において、親水化された部分を有するインク保持
部材を用意する工程と、前記インク保持部材を大気に対
して開放した状態でインクを前記筐体の内部に所定量注
入するとともに、前記インク保持部材の静的なインク保
持力とインク移動に対する動的な抵抗力との和より大き
な慣性力を、注入されたインクに付与することで前記イ
ンク保持部材内にインクを充填する充填工程とを有し、
前記インク保持部材の親水化された部分に、親水性基を
有する第2の部分と、前記親水性基の界面エネルギーと
は異なり、且つ前記インク保持部材の親水化される部分
の表面の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーの基
を有する第1の部分とを備え、前記部分の表面の構成材
料と異なる高分子が、前記第1の部分が前記部分の表面
に向かって配向し、前記第2の部分は前記部分表面とは
異なる方向に配向している状態で付与されていることを
特徴とする。
【0014】また、本発明の他のインク充填方法は、イ
ンクを保持するためのインク保持部材と、該インク保持
部材を収納するとともに前記インク保持部材のインクを
外部に供給するためのインク供給口および前記インク保
持部材を大気に対して連通させる大気連通口を備える筐
体と、を有するインクタンクのインク保持部材にインク
を充填するインク充填方法において、親水性基を有する
第2の部分と、前記親水性基の界面エネルギーとは異な
り、且つ前記インク保持部材の親水化すべき部分の表面
の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーの基を有す
る第1の部分とを備え、前記部分の表面の構成材料と異
なる高分子を含む液体を前記部分の表面に付与する第1
工程と、前記部分の表面に向かって前記高分子の第1の
部分を配向させ、前記第2の部分を前記部分の表面とは
異なる側に配向させる第2工程と、によって前記インク
保持部材を親水化処理する親水化処理工程と、前記イン
ク保持部材を大気に対して開放した状態でインクを前記
筐体の内部に所定量注入するとともに、前記インク保持
部材の静的なインク保持力とインク移動に対する動的な
抵抗力との和より大きな慣性力を、注入されたインクに
付与することで前記インク保持部材内にインクを充填す
る充填工程とを有することを特徴とする。
【0015】また、本発明のさらに他のインク充填方法
は、インクを保持するためのインク保持部材と、該イン
ク保持部材を収納するとともに前記インク保持部材のイ
ンクを外部に供給するためのインク供給口および前記イ
ンク保持部材を大気に対して連通させる大気連通口を備
える筐体と、を有するインクタンクのインク保持部材に
インクを充填するインク充填方法において、親水性基を
有する第2の部分と前記親水性基の界面エネルギーとは
異なり且つ前記インク保持部材の親水化すべき部分の表
面の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーの基を有
する第1の部分とを備えた親水性基付与用高分子を開裂
させて得られた、前記第1の部分および前記第2の部分
を有する細分化物を含む液体を前記部分の表面に付与す
る第1工程と、前記部分の表面に前記細分化物の第1の
部分を前記部分の表面側に配向させ、前記第2の部分を
前記部分の表面とは異なる側に配向させる第2工程と、
前記部分の表面上に配向した細分化物同士を少なくとも
一部で縮合させて高分子化する第3工程とによって前記
インク保持部材を親水化処理する親水化処理工程と、前
記インク保持部材を大気に対して開放した状態でインク
を前記筐体の内部に所定量注入するとともに、前記イン
ク保持部材の静的なインク保持力とインク移動に対する
動的な抵抗力との和より大きな慣性力を、注入されたイ
ンクに付与することで前記インク保持部材内にインクを
充填する充填工程とを有することを特徴とする。
【0016】上記本発明のインク充填方法によれば、イ
ンクタンクの内部に注入されたインクに大きな慣性力が
急激に付与され、この慣性力によりインクがインク保持
部材の内部を移動することにより、インクを迅速にイン
クタンクに注入してインク保持部材に含浸させることが
可能となる。さらに、インク保持部材を上記本発明のよ
うに親水性化することにより、インク保持部材のインク
保持力が向上するので、インク保持部材内へのインクの
含浸速度が増し、インクタンクへの注入を早く完了させ
ることができる。また、上述のようにインク保持部材の
インク保持力が向上することにより、インク注入中にイ
ンクに慣性力が加えられたときに、インクがインクタン
クの外部に飛び出すことが抑えられる。
【0017】さらに、前記第3工程は、前記縮合を生じ
せしめるために加熱工程を有する構成としてもよい。
【0018】さらには、前記第2工程の後に、未反応物
を除去する工程をさらに有する構成としてもよい。
【0019】また、前記部分の表面がオレフィン系の樹
脂から構成され、前記親水性基付与用高分子が機能性基
を有するポリアルキルシロキサンである構成としてもよ
い。
【0020】さらに、前記ポリアルキルシロキサンの機
能性基がポリアルキレンオキサイド鎖を有する構成とし
てもよい。
【0021】さらには、前記ポリアルキルシロキサンが
(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサ
ン)である構成としてもよい。
【0022】また、前記インク保持部材は多数の繊維か
ら構成され、該繊維は前記慣性力の付与方向と交差した
略同方向に集束されている構成としてもよい。
【0023】また、インクを保持するためのインク保持
部材の、大気連通口側の面を除いた部分を親水化処理す
る構成としてもよい。
【0024】また、前記インクへの慣性力の付与は、移
動するインクタンクを瞬時に停止させることにより行う
構成としてもよい。
【0025】さらに、前記インクへの慣性力の付与を繰
り返し行う構成としてもよい。
【0026】加えて、前記充填工程後、前記インク保持
部材の静的なインク保持力とインク移動に対する動的な
抵抗力との和より大きな慣性力を、注入されたインクに
付与することで前記インク保持部材内にインクを充填す
る第2の慣性力付与工程を更に有する構成としてもよ
い。
【0027】本発明のインクタンクは、インクを保持す
るためのインク保持部材と、該インク保持部材を収納す
るとともに前記インク保持部材のインクを外部に供給す
るためのインク供給口及び前記インク保持部材を大気に
対して連通させる大気連通口を備える筐体と、を有する
インクタンクにおいて、前記インク保持部材は、多数の
繊維から構成されるとともに、該繊維表面の一部に親水
性基を有する第2の部分と、前記親水性基の界面エネル
ギーとは異なり前記繊維表面の表面エネルギーと略同等
の界面エネルギーを有する第1の部分とを有する前記部
分の表面の構成材料と異なる高分子が、前記第1の部分
が前記部分表面に向かって配向し、前記第2の部分は前
記部分表面とは異なる方向に配向している状態で付与さ
れており、前記インク保持部材を大気に対して開放した
状態で前記インク供給口から前記筐体の内部に所定量の
インクが注入されるとともに、前記インク保持部材の静
的なインク保持力とインク移動に対する動的な抵抗力と
の和より大きな慣性力を、前記注入されたインクに付与
することで前記インク保持部材内にインクが充填され、
前記繊維が、前記慣性力の付与方向と交差した略同方向
に集束されていることを特徴とする。
【0028】さらに、前記繊維の集束方向は、前記イン
ク供給口からのインクの注入方向と交差した方向である
構成としてもよい。
【0029】また、本発明の他のインクタンクは、イン
クを保持するためのインク保持部材と、該インク保持部
材を収納するとともに前記インク保持部材のインクを外
部に供給するためのインク供給口及び前記インク保持部
材を大気に対して連通させる大気連通口を備える筐体
と、を有するインクタンクにおいて、前記インク保持部
材は、多数の繊維から構成されるとともに、該繊維表面
の一部に親水性基を有する第2の部分と、前記親水性基
の界面エネルギーとは異なり前記繊維表面の表面エネル
ギーと略同等の界面エネルギーを有する第1の部分とを
有する前記部分の表面の構成材料と異なる高分子が、前
記第1の部分が前記部分表面に向かって配向し、前記第
2の部分は前記部分表面とは異なる方向に配向している
状態で付与されており、前記インク保持部材を大気に対
して開放した状態で前記インク供給口から前記筐体の内
部に所定量のインクが注入されるとともに、前記インク
保持部材の静的なインク保持力とインク移動に対する動
的な抵抗力との和より大きな慣性力を、前記注入された
インクに付与することで前記インク保持部材内にインク
が充填され、前記繊維が、前記慣性力の付与方向と略同
方向に集束されており、前記繊維の両側の端面の少なく
とも一方が前記インクタンクの内面に当接していること
を特徴とする。
【0030】なお、本発明で云う各種手段は、その機能
を実現するように形成されていれば良く、例えば、専用
のハードウェア、適正な機能がプログラムにより付与さ
れたコンピュータ、適正なプログラムによりコンピュー
タの内部に実現された機能、これらの組み合わせ、等を
許容する。
【0031】また、本発明では、インクタンクに外部か
らインクを供給する場合を"注入"、インク保持部材にイ
ンクを含浸させて保持させる場合を"充填"と呼称してい
る。さらに、本発明で云うインクとは、常温で液体であ
り、インクジェットヘッドから吐出可能なものであれば
良く、例えば、他のインクの画質を向上させる処理液な
ども許容する。
【0032】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について図
面を参照して説明する。
【0033】まずはじめに、本願発明の前提となるイン
ク充填方法について、第1、及び第2の参考形態で説明
する。
【0034】(第1の参考形態)本発明の第1の参考形
態を、図1〜図12を参照して以下に説明する。なお、
以下では図1の左右方向を装置の前後方向として説明す
るが、これは説明を簡単とするために便宜的に定義する
ものであり、実際の装置の製造時や使用時の方向を限定
するものではない。
【0035】まず、本参考形態のインク充填装置100
によりインクIを注入するインクタンク200の構造
を、図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の第1
の参考形態によるインク充填装置の側面図、図2は同平
面図である。また、図3はインクタンクの構造を示し、
(a)は一部を断面化した平面図、(b)は正面図、(c)は
縦断側面図、(d)は裏面図、(e)は横断底面図である。
【0036】このインクタンク200は、インクジェッ
トプリンタ(図示せず)に着脱自在に装着されるもので、
図3に示すように、インクを保持するためのインク保持
部材201と、このインク保持部材201を収容するた
めのタンク容器202とからなる。インク保持部材20
1は、さらに主としてインクを保持するための吸収部材
211と、後述するインク供給口221の近傍に設けら
れ、吸収部材221内のインクを、インク供給口221
を介して外部に導出するためのインク導出部材212と
からなる。このインク導出部材212は、吸収部材21
1に対して圧接されて設けられることでインクタンクの
インクの使用効率を向上させるものである。そして、吸
収部材211及びインク導出部材212からなるインク
保持部材201は、繊維間の隙間で発生する毛管力によ
り含浸されるインクIを保持している。
【0037】吸収部材211は、ポリプロピレン、ポリ
エステル、ポリエチレンテレフタレ−ト、等の樹脂繊維
からなり、図3および図4に示すように、その長手方向
が左右方向となるように集束された多数の樹脂繊維によ
り扁平な直方体状に形成されている。インク導出部材2
12も、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン
テレフタレ−ト、等の樹脂繊維からなり、図3および図
5に示すように、その長手方向が前後方向となるように
集束された多数の樹脂繊維により短小な円柱状に形成さ
れている。ここで、図4はインク保持部材の主要部分で
ある吸収部材の外観を示す斜視図であり、図5はインク
導出部材の外観を示す斜視図である。
【0038】本参考形態の吸収部材211とインク導出
部材212とは、糸状のオレフィン系樹脂繊維の表層
に、該樹脂の融点より相対的に融点の低い他のオレフィ
ン系の樹脂をコーティングしたものを、繊維束として所
定の繊維密度で集束した繊維吸収体からなる。この繊維
吸収体は、例えば、繊維束を表層のオレフィン系樹脂が
溶融する温度で加熱してから、所定形状のダイスを通過
させることで径方向に圧縮し、繊維同士の接する割合を
増大させて、溶融した表層を融着させることで容易に形
成される。
【0039】このため、繊維吸収体を製造する際の圧縮
により、図4に示すように、吸収部材211の表層部2
11bは、その中央部211cに比べ、繊維密度が高く
なっている。また、本参考形態の吸収部材211とイン
ク導出部材212とは、いずれも上述の繊維吸収体を繊
維方向に対して略直交方向で切断することで形成されて
おり、インク保持部材201の側面には吸収部材211
の切断面211aが位置している。
【0040】なお、上述のような吸収部材211やイン
ク導出部材212は、例えば、ポリエチレン等の樹脂を
バインダとして集束させた樹脂繊維を加熱することなど
により形成することも可能である。
【0041】タンク容器202は、図3に示すように、
樹脂製の扁平なボックス状に形成されており、その内部
にインク保持部材201が配置されている。このタンク
容器202には外部にインクIを供給するためのインク
供給口221が形成されており、このインク供給口22
1に隣接してインク導出部材212がタンク容器202
の内部に配置されている。さらに、タンク容器202の
内部には、インク導出部材212に吸収部材211が隣
接して配置されており、インク導出部材212が吸収部
材211に圧接されている。
【0042】上述のようにタンク容器202の内部に配
置された吸収部材211の繊維方向は、図3(a)、(e)
では図面の上下方向と平行であり、同図(b)、(d)では
図面の左右方向と平行である。一方、インク導出部材2
12の繊維方向は、同図(a)、(c)、(e)で図面の左右
方向と平行であり、これは吸収部材211の繊維方向と
直交している。
【0043】また、吸収部材211とタンク容器202
とは相似形状に形成されているが、吸収部材211の左
右上下の外面とタンク容器202の左右上下の内面と
は、所定の間隙222を介して対向している。
【0044】タンク容器202の上部後方にはバッファ
部223が一体に突設されており、このバッファ部22
3の後面には大気連通口224が形成されている。この
大気連通口224は、タンク容器202の内部と外部と
を連通する貫通孔からなるが、延長パイプ225により
バッファ部223の内部中央に開口している。
【0045】また、タンク容器202の右側の外面前方
には係合凸部226と支点凸部227とが一体に突設さ
れており、左側の外面前方には係合レバー228が一体
に突設されている。この係合レバー228には、係合爪
部と操作部とが形成されており、弾性により左右方向に
湾曲自在に形成されている。
【0046】上述の係合凸部226や係合レバー228
等により、インクタンク200のタンク容器202に
は、インクジェットプリンタのヘッドカートリッジのタ
ンク保持部(図示せず)に着脱自在に保持される装着部が
形成されている。なお、このヘッドカートリッジでは、
タンク保持部にインク給送機構(図示せず)が配管されて
おり、タンク保持部にインクタンク200が保持される
とインク供給口221にインク給送機構が連結されるこ
とで、ヘッドカートリッジの記録ヘッドにインクタンク
200からインクIが供給される。
【0047】上述のような構造のインクタンク200に
インクIを注入する本参考形態のインク充填装置100
は、図1および図2に示すように、タンク保持ステージ
101、ステージ移動機構102、ステージ停止部材で
あるストッパ部材103、インク供給機構104、動作
制御手段であるコントロールユニット106、等を主要
部分として具備している。
【0048】タンク保持ステージ101は、インクタン
ク200のタンク容器202を着脱自在に保持し、ステ
ージ移動機構102は、タンク保持ステージ101を所
定速度で前後方向に往復移動させ、一対のストッパ部材
103は、タンク保持ステージ101の往復移動を両側
で停止させる。
【0049】インク供給機構104は、インクタンク2
00にインクIを供給し、コントロールユニット106
は、ステージ移動機構102とインク供給機構104と
の動作を制御する。
【0050】より詳細には、タンク保持ステージ101
は、エンジニアリングプラスチックなどの高剛性な構造
材で水平な平板状に形成されており、その上面前方には
タンク保持部111が一体に固定されている。このタン
ク保持部111は、例えば、図6に示すように、前述し
たインクジェットプリンタのヘッドカートリッジのタン
ク保持部と同一構造に形成することで、インクタンク2
00のタンク容器202を係合凹部112と係合爪部1
13とで着脱自在に保持する構造でも良い。
【0051】このようにタンク保持ステージ101のタ
ンク保持部111でインクタンク200のタンク容器2
02が保持されるとき、その大気連通口224はインク
保持部材201より上方に位置するようになり、インク
保持部材201の樹脂繊維の長手方向は左右方向と平行
になってステージ移動機構102の移動方向とは直交す
るようになる。
【0052】タンク保持ステージ101のタンク保持部
111にはインク供給機構104の供給管114が配管
されており、タンク保持部111にインクタンク200
を装着すると供給管114がインク供給口221に連結
される。
【0053】また、タンク保持部111の後方には、ク
ランプ部材115がガイドレール(図示せず)により前後
方向に移動自在に配置されており、このクランプ部材1
15は、タンク保持部111によるインクタンク200
の保持を後方から補助する。
【0054】なお、図1および図2において、クランプ
部材115を模式的に描いているが、本参考形態のクラ
ンプ部材115は、インクタンクの大気連通口224を
塞ぐものではない。
【0055】タンク保持ステージ101は、前述のよう
に高剛性な構造材で水平な平板状に形成されているが、
その前後端面には衝突部材116が装着されている。こ
の衝突部材116は、SUS材、ジュラルミン、チタ
ン、セラミック、等の高剛性で弾性のない材料からな
り、一対のストッパ部材103に個々に対向している。
【0056】ステージ移動機構102は、リニアモータ
やエアシリンダやガイドレールなどからなり(図示せ
ず)、タンク保持ステージ101を所定速度で前後方向
に往復移動させる。このステージ移動機構102は平板
状の本体ベース120の上面中央に固定されており、こ
の本体ベース120の上面前後に一対のストッパ部材1
03が一個ずつ立設されている。
【0057】これら一対のストッパ部材103も、高剛
性で弾性の無い構造材からなり、本体ベース120に強
固に固定されている。一対のストッパ部材103は、タ
ンク保持ステージ101の前後両側に一個ずつ位置して
おり、タンク保持ステージ101の衝突部材116が衝
突する位置には、同一の材料からなる衝突部材121が
装着されている。
【0058】上述のようにステージ移動機構102によ
り往復移動されるタンク保持ステージ101をストッパ
部材103が衝突により両側で交互に停止させること
で、インクタンク200の内部のインクIには前後方向
に交互に慣性力が付与される。
【0059】ここでインクIに付与される慣性力は、所
定の速度で移動するタンク保持ステージ101をストッ
パ部材103に衝突させて急停止させることにより極め
て短時間に生じるものであり、停止状態のタンク保持ス
テージ101が所定の速度になるまでにインクIに対し
て付与される慣性力と比較して、はるかに大きなものと
なっている。
【0060】その大きさは、メニスカスなどのインク保
持部材201がインクIを保持する静的な保持力と、イ
ンクIが移動する際に発生する摺動抵抗などの動的な抵
抗力の和より十分に大きい。
【0061】インク供給機構104は、大容量タンクや
圧送ポンプや電磁弁等を具備しており(図示せず)、イン
クIを所定の圧力に加圧してタンク保持部111に配管
されている供給管114によりインクタンク200のタ
ンク容器202のインク供給口221に供給する。
【0062】コントロールユニット106は、いわゆる
コンピュータシステムからなり、事前に実装されている
制御プログラムに対応してステージ移動機構102とイ
ンク供給機構104とを動作制御する。本参考形態で
は、インク供給機構104からインクタンク200にイ
ンクIを供給させるとき、これと同時にインクタンク2
00を保持したタンク保持ステージ101をステージ移
動機構102により往復移動させ、注入されるインクI
に慣性力を付与する。
【0063】その後、インク供給機構104によるイン
クIの供給を所定容量で停止させ、この停止と同時にイ
ンク供給機構104にインクタンク200のインク供給
口221を密閉させる。このようにインク供給機構10
4によるインクIの供給を停止させてもステージ移動機
構102の往復移動は継続させ、この往復移動は所定時
間の実行後に停止させる。
【0064】上述のような構成において、本参考形態の
インク充填装置100によりインクタンク200にイン
クIを注入する動作を、図7ないし図10を参照して以
下に説明する。図7はインクタンクの吸収部材に慣性力
によりインクが含浸される工程の前半部を示し、(a)〜
(c)が横断平面図、(a’)〜(c’)が縦断側面図であ
る。図8は同中半部を示し、(a)〜(c)が横断平面図、
(a’)〜(c’)が縦断側面図である。図9は同後半部を
示し、(a)〜(c)が横断平面図、(a’)〜(c’)が縦断
側面図である。また、図10はインク充填装置によるイ
ンク充填方法を示すフローチャートである。ここで、図
7ないし図9では、滞留しているインクIを右下がりの
ハッチングで表現しており、インク保持部材201に含
浸されたインクIを右上がりのハッチングで表現してい
る。
【0065】まず、大気連通口224がインク保持部材
201より上方に位置し、インク保持部材201の樹脂
繊維の長手方向が左右方向と平行になるように、タンク
保持ステージ101にインクタンク200が装着され
る。
【0066】このとき、インク供給口221にインク供
給機構104の供給管114が連結されるが、インク供
給機構104の電磁弁は閉止されている。一方、インク
タンク200の後面はクランプ部材115で保持される
が、インクタンク200の大気連通口224は開放され
ている。
【0067】このようにインクタンク200の装着が完
了すると、例えば、これが着脱センサ(図示せず)により
コントロールユニット106に通知されるので、図7
(a)、(a’)および図10に示すように、インク充填装
置100はインクIの注入作業を実行できる状態となる
(ステップS1)。
【0068】そこで、コントロールユニット106の動
作制御によりインク供給機構104の電磁弁を開放し
(ステップS2)、ステージ移動機構102によるタンク
保持ステージ101の往復移動が開始される(ステップ
S3)。この往復移動するタンク保持ステージ101は
両側のストッパ部材103に交互に衝突するので、これ
でインクタンク200には方向が交互に反転する急激な
慣性力が繰り返し付与されることになる。
【0069】このような状態でインク供給機構104に
よるインクIの供給が開始されるので(ステップS4)、
上述のように方向が交互に反転する急激な慣性力が繰り
返し付与されているインクタンク200にインクIが供
給されることになる。
【0070】このとき、インクIをインクタンク200
のインク供給口221からインク保持部材201へ単に
加圧のみで注入しようとすると、インク保持部材201
はインクIに対して接触角が大きく、疎水性を示すた
め、インクIはインク保持部材201の流抵抗が小さい
個所へ優先して流れようとする。
【0071】そのため、インクIがインク保持部材20
1の全域に行き渡る前に、インク保持部材201の外周
面より流れ出てしまうと、インクIはその後、インク保
持部材201内の流抵抗の大きな部分を通過することな
くタンク内壁とインク保持部材201の外周面との間に
流出し続けてしまう。
【0072】本参考形態では、図7(b)、(b’)および
図8(a)、(a’)に示すように、タンク保持ステージ1
01がストッパ部材103と衝突していないときに注入
されるインクIは、上述の理由によりインク保持部材2
01に含浸されることなくタンク容器202との間の間
隙222に滞留する場合がある。
【0073】しかしながら、本参考形態のインク充填装
置100の場合には、インクタンク200内のインクI
に、方向が交互に反転する急激な慣性力を繰り返し付与
させる。ここで、インク保持部材201の静的なインク
保持力とインクIの動的な抵抗力の和より大きな慣性力
を付与されたインクIは、インク保持部材201の流抵
抗に依存することなくインク保持部材201内をインク
充填装置100の往復方向に移動することができる。特
に、図7(c)、(c’)では、インクIの注入方向と慣性
力の方向とが一致するため、注入されるインクIはイン
ク保持部材201の内部を慣性力の方向に移動すること
ができる。
【0074】また、本参考形態では、間隙222にイン
クIが滞留していたとしても、滞留したインクIに対し
ても同様の慣性力が付与されるため、図7(c)、(c’)
および図8(b)、(b’)に示すように、間隙222に滞
留しているインクIも、付与された慣性力により、慣性
力の方向に移動する。その結果、インクIは、インク保
持部材201の外面の各部から順次含浸されることにな
る。
【0075】なお、本参考形態では、図4で説明したよ
うに、吸収部材211の外面を構成する各面は、切断面
211aと表層部211bとを有する面となっている。
表層部211bは中央部211cに比べて繊維密度が高
く、静的なインク保持力が大きい。そのため、このよう
な吸収部材211を有するインクタンク200にインク
Iを注入する場合には、表層部211bにおける静的な
インク保持力と、インクIの動的な抵抗力との和より大
きな慣性力をインクIに対して付与させればよい。
【0076】上述のようにインクタンク200にインク
Iが供給されるとき、大気連通口224は開放されてい
るのでインクIの圧入が円滑に実行されるが、大気連通
口224はインク保持部材201より上方で延長パイプ
225の先端に開口しているので、タンク容器202の
内部で撹拌されるインクIが大気連通口224から外部
に漏出しない。
【0077】図8(c)、(c’) に示すように、上述の
ようにインクタンク200に供給されるインクIが所定
時間で所定容量に到達すると(ステップS5)、このイン
ク供給機構104によるインクIの供給は停止され(ス
テップS6)、インクタンク200のインク供給口22
1が密閉される(ステップS7)。
【0078】本実施の形態の場合、上述のようにインク
供給機構104によるインクIの供給を停止させても、
ステージ移動機構102の往復移動は所定時間まで継続
されるので(ステップS8、S9)、慣性力の付与による
インク保持部材201へのインクIの含浸も継続され、
図9(a)、(a’)、(b)、(b’)に示すように、タンク
容器202の内部の間隙222に滞留していたインクI
の略全部がインク保持部材201の略全体に含浸され
る。
【0079】本実施の形態のインク充填装置100で
は、上述のようにインク保持部材201に含浸されたイ
ンクIに対し、静的なインク保持力と動的な抵抗力より
大きな慣性力を、方向が交互に反転するように繰り返し
付与するので、疎水性や親水性に関係なくインクIを迅
速にインク保持部材201に含浸させることができる。
【0080】特に、本実施の形態のインク充填装置10
0では、ステージ移動機構102により繰り返し往復移
動されるタンク保持ステージ101を一対のストッパ部
材103が衝突により両側で停止させるので、簡単な構
造で良好にインクIに大きな慣性力を微少な時間に付与
することができ、インク保持部材201の略全体にイン
クIを迅速に含浸させることができる。
【0081】さらに、インク保持部材201として集束
されている樹脂繊維の長手方向と、インク充填装置10
0が発生する慣性力の方向とが交差しているので、イン
クIが慣性力の付与によりインク保持部材201の多数
の樹脂繊維の隙間に分散されやすく、インクIをインク
保持部材201の全体に良好に含浸させることができ
る。
【0082】また、コントロールユニット106がイン
ク供給機構104によるインクIの供給とステージ移動
機構102による往復移動とを同時に実行させるので、
インクタンク200に順次供給されるインクIをインク
保持部材201に順次含浸させることができる。
【0083】このとき、インクタンク200に注入され
たインクIがタンク容器202の内面とインク保持部材
201の外面との間隙222にも滞留しても、インクI
の供給が完了してからもインクタンク200に慣性力を
継続して付与させるので、間隙222に滞留したインク
Iをインク保持部材201の全体に良好に含浸させるこ
とができる。
【0084】さらに、インクIがインクタンク200供
給されるときに大気連通口224が開放されているの
で、インクIの供給を円滑に実行することができる。こ
のとき、タンク保持ステージ101によりインクタンク
200のタンク容器202が保持されると、タンク容器
202の大気連通口224がインク保持部材201より
上方に位置するので、インクタンク200に供給される
インクIが大気連通口224から外部に漏出することが
防止できる。
【0085】また、インクIの供給が完了すると、イン
ク供給口221がインク供給機構104により密閉され
るので、インクタンク200に注入されたインクIがイ
ンク供給口221から外部に逆流することも防止でき
る。
【0086】さらに、インクタンク200のインク注入
用開口として、インク供給口211を利用することで、
インクタンク200を使用する際にインクジェット記録
ヘッドへのインク供給経路の結合部となるインク供給口
211の近傍のインク保持部材201に対してインクI
を確実に充填することができるので、注入されたインク
Iを有効に利用することができる。
【0087】また、図6に示したように、インクタンク
200が装着されるインクジェットプリンタのヘッドカ
ートリッジのタンク保持部を、タンク保持ステージ10
1に流用することも可能であり、この場合は、簡単な装
着機構でインク充填装置100において確実にインクタ
ンク200を保持することができる。
【0088】なお、図6に示す本参考形態の変形例にお
いて、通気操作機構としてクランプ部材115に排気弁
(図示せず)を設け、前述のコントロールユニット106
により制御してインクタンク200の大気連通口224
を開閉することも可能である。このように排気弁105
を有する場合、前述のようにインクタンク200のイン
ク供給口221をインク供給機構104の電磁弁で開閉
するとき(ステップS2、S7)、図11に示す一変形例
のインク充填方法のフローチャートのように、これと同
時にインクタンク200の大気連通口224を排気弁で
開閉する(ステップS2’、S7’)ことが好適であ
る。
【0089】この場合には、インクの所定量注入を終え
てからタンク保持ステージ101の往復移動を継続して
いる間では、大気連通口224は閉鎖されているため、
大気連通口224を介して隙間222に滞留するインク
がインク保持部材201に保持される以前に外部に流出
することをより効果的に防止できる。この方法は、イン
クタンクの形状のために大気連通口を図3に示すように
インク供給口に対して上方にしてタンク保持ステージに
配置できない場合には特に有効である。
【0090】また、上記形態ではインクタンク200に
付与する慣性力をコントロールユニット106がステー
ジ移動機構102の動作時間で管理することを例示した
が、これをステージ移動機構102の往復回数で管理す
るようなことも可能である。
【0091】なお、本発明者らが実際に上述のようなイ
ンク充填装置100とインクタンク200とを試作し、
インクタンク200にインクIを注入したところ、イン
ク充填装置100はインクタンク200にインクIを迅
速に注入できることが確認された。そのインク充填装置
100のストッパ部材103にレーザ変位計(図示せず)
を装着してタンク保持ステージ101との距離を測定し
た結果を図12に示す。図12はタンク保持ステージの
移動動作を示すタイムチャートである。
【0092】なお、同図では上下方向が距離を示してお
り、左右方向が時間を示している。同図(a)のはイン
ク充填装置100がインク供給と慣性力付与とを同時に
実行している状態を示しており、はインク供給を停止
して慣性力付与のみ継続している状態を示している。
【0093】このインク注入中のインクIに対する慣性
力の付与時間、及びインク注入後のインクIに対する
慣性力の付与時間は、インクIが注入されているイン
ク保持部材201の大きさ及び繊維密度、注入されるイ
ンクIの種類等に応じて最適になるように時間を設定す
ることが望ましい。
【0094】本参考形態では、代表寸法L1(図1
(a))が25.5mm、体積が約20cm3、インク
保持部材201の繊維径が6デニールであるインクタン
クに対して16gのインクを注入する際には、を40
秒、を20秒とし、代表寸法L1(図1(a))が2
6.3mm、体積が約6.2cm3、インク保持部材の
繊維径が6デニールであるインクタンクに対して16g
のインクを注入する際には、を20秒、を10秒と
したところ、それぞれインク保持部材内に確実にインク
を注入することができた。
【0095】また、同図(b)に示すように、グラフの波
高はストッパ部材103とタンク保持ステージ101
との最大の距離で10(mm)、はタンク保持ステー
ジ101がストッパ部材103に衝突するまで移動する
時間で10(μs)、はストッパ部材103に衝突し
たタンク保持ステージ101の停止時間で40(μs)
である。
【0096】この場合、衝突直前のタンク保持ステージ
101の移動速度は0.4(m/sec)であり、これ
が瞬間的に“0”となることでインクに必要な慣性力が
付与される。
【0097】上述のように試作したインク充填装置10
0では、インクタンク200の疎水性を有するインク保
持部材201の全体にインクIを迅速に含浸させること
ができ、インクタンク200に注入したインクIが大気
連通口224から漏出しないことも確認できた。
【0098】なお、上述のインク充填装置100では、
タンク保持ステージ101とストッパ部材103との衝
突部材116,121を同一金属で形成したが、これを
異種金属としたところ、図13に示すように、グラフに
スパイク状の波形が確認された。
【0099】これは剛性の低い一方が衝突により変形し
ていることを意味しており、衝撃が吸収されるためにイ
ンクタンク200に付与される慣性力が低下することに
なる。つまり、簡単な構造で省電力に充分な慣性力を発
生させるためには、タンク保持ステージ101とストッ
パ部材103との衝突部材116,121を同一金属と
することが好適であるが、充分な慣性力が発生するなら
ば異種金属でも可能である。
【0100】(第2の参考形態)つぎに、本発明の第2
の参考形態を、図14および図15を参照して以下に説
明する。本参考形態では、インクタンク300が、それ
ぞれ異なるインク(例えば、Y(イエロー)、M(マゼ
ンタ)、C(シアン)等)を収容可能な3つのインク収
納室を備えている。
【0101】それぞれのインク収納室には、それぞれイ
ンク供給口321a,321b,321c及び大気連通
口324a,324b,324cが設けられており、そ
れぞれのインク収納室に収納されているインク保持部材
301a,301b,301cは、第1の参考形態と同
様、繊維方向が図14(c)に示す方向となるように集
束された多数の樹脂繊維により偏平な直方体形状に形成
されている。
【0102】本参考形態では、タンク保持ステージ10
1にインクタンク300を保持させる際に、インク供給
口321a,321b,321cにそれぞれインク供給
管114a,114b,114cを接続させることで、
3つのインク収納室に収納されているそれぞれのインク
保持部材301a,301b,301cに対して同時に
インクを注入するものである。
【0103】それぞれのインク保持部材301a,30
1b,301cは、代表寸法L1(図1(a))が2
6.3mm、体積が約4.7cm3、繊維径が約6デニ
ールである。そして、注入するインクの量は3.5gで
あり、図10に示すを9秒、を10秒としている。
【0104】また、図14(a)、(c)に示すよう
に、インクタンク300は側方に突出した凸部300a
を有し、この凸部300aの内部は、インク保持部材3
01a,301b,301cが存在しない空間となって
いる。大気連通口324a,324b,324cは、イ
ンクタンク300の天面の、この凸部300aに対応す
る位置に設けられている。また、インクタンク300の
側壁のうち、凸部300aが設けられた側壁と対向する
側壁300bは平坦面となっており、インクタンク30
0をタンク保持ステージ101に保持させる際には、こ
の側壁300bを下面として保持させる。
【0105】従って、本参考形態におけるインク保持部
材の繊維方向は図14(d)において図面にほぼ直交す
る方向であり、第1の参考形態(同様に図2に示す断面
で繊維方向が図面と平行な方向となっている)とは異な
るが、本参考形態においてもインク注入方向に対して繊
維方向が交差するようになっている。その結果、本参考
形態においても、前述の第1の参考形態と同様、慣性力
を付与されたインクがインク保持部材301a,301
b,301c内を移動する際に、繊維の隙間に分散され
易くなっている。
【0106】(その他の参考形態)なお、本発明は上記
形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない
範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態ではイ
ンク保持部材201が一定方向に集束された樹脂繊維か
らなることを例示したが、インク保持部材として従来の
発泡ポリウレタンなどを利用することも可能である。
【0107】また、樹脂繊維を一定方向に集束させてイ
ンク保持部材201を形成することを例示したが、例え
ば、樹脂繊維を編み込んだシートを積層させて打ち抜く
ことで、方向性が無いインク保持部材を形成することも
可能である。また、インク保持部材201が吸収部材2
11とインク導出部材212からなることを例示した
が、例えば、インク導出部材212を省略することも可
能である。
【0108】また、本発明のインク充填方法によりイン
クが充填されるインク保持部材に対し、インク充填を行
う前にインク保持部材自体に対して親水化処理を行って
もよい。この場合、長期の持続性において十分ではなく
とも、少なくともインク充填工程において親水性の機能
を発揮可能であればよく、より好ましくは充填されたイ
ンクを使用する際に、その印字特性に対して悪影響を与
えないことが望ましい。図18は、上述した本発明の参
考形態である、インク保持部材を親水化処理する場合の
インクタンクの製造方法の一例を説明するためのフロー
チャートである。本変形例の場合、インク保持部材の製
造(ステップS11)のあと、このインク保持部材を筐
体内に収納してインクタンクを組み立てる(ステップS
13)前に、インク保持部材を上述の溶液中に含浸させ
てインク保持部材を親水化させている(ステップS1
2)。そして、親水化処理が行われたインク保持部材を
タンク筐体内に収納してインクタンクを組み立てた後
(ステップS13)、本発明を適用してインクタンクに
インクを充填する(ステップS14)。なお、親水化の
方法によっては,インク保持部材を製造する前、例えば
樹脂繊維などのインク保持部材の材料を製造する工程に
おいて親水化処理を行ってもよく,インクタンクを組み
立てたあと、インクを充填する前(より具体的には図1
0に示すフローチャートのS4より前)に親水化処理を
行ってもよい。
【0109】(本発明の実施形態)本願発明の実施形態
は、上述の各参考形態を前提に、以下詳細に説明する本願
発明のインク保持部材の親水化処理を行ったインク保持
部材に対してインクの充填を行うものである。
【0110】この効果について、図7〜図9を用いなが
ら説明する。
【0111】上述のインク充填方法において、インク保
持部材201の静的なインク保持力とインクIの動的な
抵抗力との和より大きな慣性力を付与するために、イン
ク充填装置の充填条件すなわち装置稼動条件によって
は、一度、図7〜図9に示すようにインク保持部材20
1に充填されたインクIが衝突により排出されてしまう
ことも有りうる。しかし、本発明の如く親水化処理され
たインク保持部材は速やかにインク吸収する性質を得て
いるため、この排出されたインクは速やかに再充填され
る。よって、自由インクが滞留したままの状態になるこ
とはない。
【0112】また、従来技術でも説明したように、親水
処理を行わないインク保持部材201を用いる場合、一
般的に行われる加圧注入方式では、保持部材の密度や繊
維方向により生じる流抵抗の差異により注入領域が選択
されてしまう。そして、この時注入されない状態となっ
た部位は吸収体がPP等の撥水性材料で構成される場
合、自由インクが発生する。これに対し、親水化処理を
行ったインク保持部材201を用いた場合、上記注入領
域の選択性をなくすことが可能となるため加圧注入方式
であってもインク充填性が良くなり、自由インクの発生
も低減可能である。そして、微量に発生した自由インク
は保持部材に行われた親水化処理により速やかに再充填
される。
【0113】以上述べたように本発明は、インク保持部
材の親水性を向上させる処理を行いかつ保持部材の吸収
領域選択性に依らない振動付与による慣性力を用いたイ
ンク充填方式のため、インクおよびインク保持部材の材
質に依らず効果的に簡易にインク充填可能な方式であ
る。
【0114】ここで、図18に示した、インク保持部材
を親水化させる工程(ステップS12)において用いら
れる、本願発明のインク保持部材の親水化処理方法につ
いて詳しく説明する。本発明では、このようなインク保
持部材親水化処理工程を上述したインク充填工程より前
に行うことで、インク保持部材中により速やかかつ確実
に所望の量のインクを充填することが可能となる。
【0115】上記の親水化工程(ステップS12)にお
いて用いられるインク保持部材の親水化処理方法(以
下、「表面改質方法」ともいう。)は、インク保持部材
のインクが接触する面の表面を構成する物質に含まれる
分子が有する官能基などを利用して、高分子(あるいは
高分子の細分化物)を特定の配向を採らせて表面上に付
着させ、該高分子(あるいは高分子の細分化物)が有す
る基に付随する性質を表面に与えることで、目的とする
表面改質(すなわち親水化)を図ることを可能とする方
法である。
【0116】本発明の方法においては、インク保持部材
のインク接触面表面の少なくとも一部を構成する改質す
べき部分(部分表面)に、表面改質処理が施される。す
なわち、表面改質処理が施される部分は、インク保持部
材のインク接触面表面のうちの所望に応じて選択された
一部、あるいはその表面全体である。
【0117】また、本発明において「インク保持部材の
インク接触面表面」は、インク保持部材のインク接触面
表面そのもの、またはその表面に何らかの加工がされた
表面のいずれも含む。
【0118】また、本発明において「高分子の細分化」
とは、高分子の一部が切れたものから、単量体までのい
ずれかでよく、実施例的には高分子が酸により開裂した
ものすべてを含むものとする。また、「高分子膜化」と
は、実質的な膜が形成されるもの、あるいは2次元的な
面に対して各部が異なる配向したものを含む。
【0119】以下、その原理の説明を容易とするため、
単一の物質から構成される表面を改質する事例を用い
て、表面改質がなされる原理について、より具体的に説
明する。
【0120】(表面改質がなされる原理)本発明による
表面改質は、表面改質剤に用いる高分子として、インク
保持部材の表面(基材表面)の表面(界面)エネルギー
と略同等の界面エネルギーを有する主骨格と、インク保
持部材の表面の表面(界面)エネルギーと異なる界面エ
ネルギーを有する基が結合してなる高分子を利用し、こ
の表面改質剤中のインク保持部材の表面の界面エネルギ
ーと略同等の界面エネルギーを有する主骨格部を用いて
インク保持部材の表面上に高分子を付着させ、インク保
持部材の表面の界面エネルギーと異なる界面エネルギー
を有する基がインク保持部材の表面に対して外側に配向
する高分子化膜(高分子被覆)を形成させることにより
達成される。
【0121】表面改質剤として用いる上述の高分子を異
なる観点から換言すれば、表面改質前のインク保持部材
の表面に露出している基と本質的に水との親和性が異な
る第一の基と、このインク保持部材の表面に露出してい
る基と実質的に類似する水との親和性を示し、その主骨
格に含まれる繰り返し単位中に含まれる第二の基と、を
備えたもの、と捉えることもできる。
【0122】このような配向形態の代表例を模式的に示
したのが図19である。図19(a)は主鎖1−3に対
して第1の基1−1と第2の基1−2が側鎖として結合
している高分子を用いた場合を示し、図19(b)は第
2の基1−2が主鎖1−3自体を構成し、第1の基1−
1が側鎖を構成している場合を示すものである。
【0123】図19に示される配向をとると、インク保
持部材の表面改質すべき表面を構成する基材6の最表面
(外側)は基材6の表面(界面)エネルギーとは異なる
界面エネルギーを有する基1−1が表面に配向した状態
になるため、基材6の表面(界面)エネルギーと異なる
界面エネルギーを有する基1−1に付随する性質が利用
されて表面が改質される。ここで、基材6の表面(界
面)エネルギーは、表面を構成している物質・分子が、
表面上に露出している基5に由来して決定されている。
すなわち、図19に示す例では、第1の基1−1が表面
改質用の機能性基として作用し、基材6の表面が疎水性
であって、第1の基1−1が親水性であれば、基材6の
表面に親水性が付与される。なお、第1の基1−1が親
水性であり、基材6側の基5が疎水性である場合には、
例えば後述するポリシロキサンを利用した場合などに
は、図39に示すような状態が基材6の表面に存在して
いると考えられる。この状態において、改質後の基材6
の表面における親水性基と疎水性基とのバランスを調整
することで、改質処理後の基材表面に水や水を主体とす
る水性液体を通過させる場合の通過状態や通過時の流速
を調整することも可能である。そして、このような表面
状態を繊維外壁面に有する、例えばポリオレフィン系樹
脂からなる繊維体がインクジェット記録ヘッドに一体化
された、あるいは別部品として設けられるインクタンク
中に用いることで、インクタンク中へのインクの充填や
インクタンクからのヘッドへのインクの供給を極めて効
果的に行うとともに、インクタンク内での適度な負圧の
確保によって、インク吐出直後の記録ヘッドの吐出口付
近でのインク界面(メニスカス)位置の良好な確保が可
能となると考えられる。
【0124】ここで、図19に示す改質表面を有するイ
ンク保持部材を製造するための具体的な方法として、表
面改質に用いる高分子の良溶媒でかつ基材に対して処理
剤の濡れ性を向上させる向上剤を用いる方法について以
下に説明する。この方法は、表面改質剤の高分子均一等
に溶解する処理液(表面改質溶液)を基材の表面上に塗
布した後、処理液に含まれる溶媒を除去しつつ、この処
理液中に含まれる表面改質剤の高分子を上述のように配
向させるものである。
【0125】より具体的には、表面改質剤に対する良溶
媒であり、かつ基材表面に対し十分に濡れる溶剤中に、
所定量の表面改質剤と酸とを混合した液体(表面処理
液)を作製し、表面処理液を基材表面に塗布した後、表
面処理液中の溶媒を除去するため、例えば、60℃オー
ブン中で蒸発乾燥させた。
【0126】ここで、本発明において、基材の表面に対
して十分に濡れ性を示し、また表面改質剤としての高分
子をも溶解する有機溶媒を溶媒に含むことは、表面改質
に用いる高分子の均一な塗布を容易にするという観点か
ら、本発明にとってより望ましいものである。さらに、
表面改質剤の高分子が溶媒の蒸発に伴い、濃度が高くな
る際にも、塗布された液層中に均一に分散して、十分に
溶解している状態を保持する作用を持つことも、その効
果として挙げることができる。加えて、表面処理液が基
材に対して、十分に濡れることにより表面改質剤の高分
子を基材表面に対し均一に塗り広げることができる結
果、複雑な形状を有する表面に対しても、高分子被覆を
均一に行うことを可能とする。
【0127】また、表面処理液には、基材表面に対する
濡れ性がなく、かつ、表面改質剤の高分子の良溶媒であ
る揮発性溶媒を更に含有させることもできる。
【0128】このような溶媒の組合せとしては、改質す
べき表面がポリオレフィン系樹脂からなる場合に、後述
する水とイソプロピルアルコールとの組み合わせを挙げ
ることができる。
【0129】ここで、表面処理液中に酸を加えることに
よる効果は、以下のようなものが考えられる。例えば、
表面処理液の蒸発乾燥過程において用材の蒸発に伴う酸
成分の濃度上昇がなされる際に、高濃度の酸加熱を伴う
高濃度の酸により、表面改質に用いる高分子の部分的な
分解(開裂)及び再結合による表面改質剤高分子のポリ
マー化を介して、高分子化膜(高分子被覆)の形成を促
進する効果が期待できる。
【0130】また、表面処理液の蒸発乾燥過程において
溶剤の蒸発に伴う酸成分の濃度上昇がなされる際に、こ
の高濃度の酸が基材表面及び表面近傍の不純物質を除去
することにより、清浄な基材表面が形成される効果も期
待される。こうした清浄な表面では、基材物質・分子と
表面改質剤の高分子の物理的な付着力の向上なども期待
される。
【0131】さらに、加熱を伴う高濃度の酸により基材
表面が分解され、基材表面に活性点が出現し、この活性
点と、上述の高分子の開裂による細分化物とが結合する
副次的な化学反応が起こる場合が想定される。場合によ
っては、このような副次的な表面改質剤と基材との化学
吸着による、基材上での表面改質剤の付着安定化の向上
も一部では存在すると考えられる。
【0132】次に、表面改質剤(親水処理液を含む)の
基材の表面エネルギーと略同等の表面エネルギーを有す
る主骨格の解離と基材表面上での解離物の縮合による高
分子膜化工程について、機能性基が親水性基であり、疎
水性基材表面に親水性を付与する場合を例とし、図20
〜図26を参照して説明する。なお、親水性基とは、基
全体として親水性を付与できる構造を有するもので、親
水基そのものや、疎水性の鎖や疎水基を有するものでも
親水基などを置換配置したことで親水性を付与できる基
としての機能を有するものであれば親水性基として利用
できる。
【0133】図20に、親水処理液塗布後の拡大図を示
す。この時点では、親水処理液8中の親水化剤である高
分子1〜4と酸7とは、基材6表面上の親水処理液中で
均一に溶解している。図21に、親水処理液塗布後乾燥
工程の拡大図を示す。親水処理液塗布後乾燥工程におけ
る加熱を伴う乾燥において、溶剤の蒸発に伴う酸成分の
濃度上昇により基材6の表面及び表面近傍の不純物質の
除去が行われるといった基材6の表面の洗浄作用により
純粋な基材6の表面が形成されることによる基材6と表
面改質剤としての高分子1〜4の物理吸着力の向上が考
えられる。また、親水処理液塗布後乾燥工程における加
熱を伴う乾燥において、溶剤の蒸発に伴う酸成分の濃度
上昇により親水化剤の高分子1〜4の一部が開離分解さ
れる部分も存在すると考えられる。
【0134】濃酸による高分子1の分解の模式図を図2
2に示す。このようにして分解された親水化剤の基材に
対する吸着の様子を図23に示す。さらに溶剤の蒸発が
進むにつれて、溶解飽和に達した親水化剤を構成する高
分子からの細分化物1a〜4bの基材の表面エネルギー
と略同等の表面エネルギーを有する主骨格部が、洗浄に
より形成された純粋な基材6の表面に対し選択的に吸着
する。その結果、表面改質剤中の基材6の表面エネルギ
ーと異なる表面エネルギーを有する基1−2が基材6に
対し外側に配向するものと考えられる。
【0135】従って、基材6の表面には、この表面の表
面(界面)エネルギーと略同等の界面エネルギーを有す
る主骨格部分が配向し、基材6の表面エネルギーと異な
る表面エネルギーを有する基1−1が基材6の表面とは
反対側の外側に配向した状態になるために、基1−1が
親水性基である場合には、基材6の表面に親水性が付与
されて、表面が改質される。親水処理液塗布乾燥後の親
水化剤と基材表面の吸着状態の模式図を図24に示す。
【0136】なお、高分子として、例えばポリシロキサ
ンのように開裂によって生成した細分化物が縮合などに
よって細分化物の少なくとも一部で結合可能なものを用
いることで、基材6表面に吸着した細分化物間に結合を
生じさせて高分子化し、親水性化剤の皮膜をより強固な
ものとすることもできる。ポリシロキサンの場合には、
基材表面への吸着後に、高濃度の酸により解離したシロ
キサン部が空気中の水分と縮合により再結合することで
親水化剤がより安定に吸着するといった現象もあり得
る。図25に、このような空気中の水との縮合反応によ
る再結合の模式図を示す。なお、ポリシロキサンを用い
た場合の開裂による細分化物の形成とその縮合による高
分子化のメカニズムは以下のとおりと考えられる。
【0137】すなわち、被処理表面における表面処理液
の制御された乾燥に伴い、この表面処理液中に含まれる
希酸の濃度が上昇して濃酸化し、その濃酸(例えばH2
SO4)がポリシロキサンのシロキサン結合を開裂さ
せ、その結果、ポリシロキサンの細分化物およびシリル
硫酸が生成する(スキーム1)。そして被処理表面に存
在する処理液がさらに乾燥していくにつれて、表面処理
液中に存在する細分化物の濃度も高まっていき、細分化
物同士の接触確率が向上する。その結果、スキーム2に
示すように、細分化物同士が縮合し、シロキサン結合が
再生される。また、副生成物としてのシリル硫酸も、被
処理表面が疎水性である場合には、シリル硫酸のメチル
基が被処理表面に向かって配向し、スルホン基が被処理
表面とは異なる方向に配向し、被処理表面の親水化に何
らかの寄与を果たすものと考えられる。
【0138】
【化1】 なお、表面処理液として溶媒中に水が存在する組成を有
するものを利用した場合についての表面処置液の状態の
一例を図26に模式的に示す。処理液の溶媒中に水が存
在する場合は、加熱を伴う親水化のための処理液からの
溶媒の蒸発において、水及び揮発性有機溶剤が蒸発する
(水の気体分子を10、有機性有機溶剤の気体分子を1
0で示す)。その際、揮発性有機溶剤の蒸発速度が水よ
りも速いため処理液中の水の濃度が高まっていき、処理
液の表面張力が上昇していく。その結果、基材6の被処
理面と処理液との界面に表面エネルギーの差が生じ、基
材6の被処理面と、蒸発により水の濃度が高まった処理
液(含水層12)との界面において、親水化剤としての
高分子からの細分化物1a〜4bにおける基材6の被処
理面と略同等の表面エネルギーを有する部分が基材6の
被処理面側に配向する。その一方で、親水化剤としての
高分子からの細分化物の親水性基を有する部分は、有機
溶媒の蒸発により水の濃度が高まった含水層12側へ配
向する。その結果、高分子細分化物の所定の配向性がよ
り向上すると考えられる。
【0139】特に、処理剤として、物品表面への濡れ性
と高分子の媒液を達成できる濡れ性を向上できる濡れ性
向上剤(例えば、イソプロピルアルコール:IPA)と
高分子開裂を生じせしめる媒体と、前述のいずれかの機
能性基とこの基とは異なる界面エネルギーであって、物
品表面の部分表面エネルギーと略同等の基(または基
群)を有する高分子を有するものを用いた場合におけ
る、開裂後の縮合による表面改質は、特に優れた効果を
発揮し、従来からは得られない均一性や特性を確実に与
えることができる。
【0140】インク保持部材の製造における工程図の一
例を図38に示す。製造開始時において物品と処理液が
提供され、インク保持部材の改質すべき表面(被改質
面)への処理液付与工程、被改質面からの余剰物除去工
程、被改質面上での高分子の開裂及び細分化物の配向の
ための処理液濃縮工程、細分化物間の結合による高分子
化のための処理液蒸発工程などを経て、改質された表面
を有する物品を得ることができる。
【0141】処理液濃縮工程及び処理液蒸発工程は、好
ましくは室温よりも高い温度(例えば60℃)での連続
した加熱乾燥工程によって行うことができ、ポリオレフ
ィン系樹脂からなる表面を改質するためにポリシロキサ
ンを、水、酸及び有機溶媒(例えばイソプロピルアルコ
ール)ともに用いた場合で、例えば、45分〜2時間程
度とすることができ、40重量%のイソプロピルアルコ
ールの使用においては例えば1時間前後である。
【0142】なお、図38の例では、高分子の開裂によ
る細分化物の形成がインク保持部材の被改質面上で行な
われているが、細分化物を既に含む処理液をインク保持
部材の被改質面上に供給して、配向させてもよい。
【0143】処理液の組成としては、先に述べたよう
に、例えば、被改質面に対する処理液の濡れ性を向上さ
せるための被改質面に対する濡れ性を有し、表面改質剤
の有効成分である高分子の良溶媒である濡れ性向上剤、
溶媒、高分子開裂触媒、被改質面への改質効果を付与す
るための機能性基と被改質面への付着機能を得るための
基を有する高分子とを含んで構成されるものが利用でき
る。
【0144】次に、インク保持部材が繊維体からなる場
合において上記の親水化処理方法(表面改質方法)を適
用した例を示す。具体的には、上記の親水化処理方法
を、ポリプロピレン・ポリエチレン繊維体の表面親水化
処理に適用した例である。実際のポリプロピレン・ポリ
エチレン繊維体は、例えば、インクなどの液体を染み込
ませ、インクを保持する目的で利用されるインク吸収体
(インク保持部材)に利用できる形状を採る繊維を複合
させて塊形状としたものである。例えば、図27(a)
に示すように、大気に対して開放された開口85を有す
る適当な形状の容器81内にインクなどの各種液体の吸
収保持体として機能する繊維体83を所定の配向で収納
して、液体保持容器として使用することができる。更
に、このうなインク吸収体は、インクジェット記録装置
に用いるインクタンク中に好適に利用できるものであ
る。
【0145】具体的には、ポリプロピレンとポリエチレ
ンの二軸繊維体から構成されており、個々の繊維は、長
さが約60mmである。この二軸繊維体は、その断面形
状を図28(a)に例示するように、軸に対して垂直方
向における断面の外形(外周形状)は略円形状(閉環
状)であり、相対的に融点の高いポリプロピレン繊維を
芯材とし、その周囲に相対的に融点の低いポリエチレン
で覆い鞘材としたものである。このような断面構造の短
繊維からなる繊維塊を梳綿機により、その繊維並び方向
を揃えた後、加熱して、繊維間に融着を生じさせる。具
体的には、鞘材のポリエチレンの融点よりは高く、芯材
のポリプロピレンの融点よりは低い温度に加熱して、繊
維が互いに接する部位の鞘材のポリエチレン相互が融着
した構造体とする。
【0146】上記の繊維構造体においては、図27
(c)に示すように、梳綿機により繊維並び方向を揃え
たため、繊維は、主に長手方向(F1)に連続的に配列
されており、部分的に繊維は、相互に接触している。加
熱により、この接触点(交点)において、相互の融着が
生じて、網目構造を形成し、直交する方向(F2)につ
いての機械的な弾力性を有するものとなっている。それ
に伴い、図27(b)に示す長手方向(F1)への引っ
張り強度を増しているが、それに対して、直交する方向
(F2)は、引っ張り強度は劣るものの、押しつぶし変
形に対しては、復元力を有する弾性構造となっている。
【0147】より詳細にこの繊維構造体を見ると、図2
7(c)に示すように、個々の繊維は捲縮されており、
この捲縮に伴い、隣接する繊維間で複雑な網目構造を形
成し、融着が生じている。一部の捲縮した繊維は、直交
する方向(F2)に向くことで、三次元的な融着をも完
成している。本例で実際に用いた繊維構造体は、融点約
180℃の芯材のポリプロピレン繊維に対して、融点約
132℃のポリエチレンが、図28(a)に示す略同心
円状に被覆した二軸繊維のトウを用いて、スライバーに
形成した。用いた繊維構造体では、主に繊維が配列する
繊維方向(F1)が存在するので、仮に液体を浸漬する
と、内部での流動性ならびに静止状態での保持の様子
が、繊維方向(F1)とそれと直交する方向(F2)と
では、明確な差異を有する。
【0148】この例では、処理対象の形状が繊維構造体
であり、一般に液体の保持性が高いため、処理液溶液を
以下の組成とした。
【0149】
【表1】 (1)PP・PE繊維吸収体の親水化処理方法 上記組成の親水処理液に、図29(a)に示す構造のポ
リプロピレン・ポリエチレン繊維吸収体を浸漬した(図
29(b))。この時、繊維吸収体の間隙に処理液が保
持される。その後、繊維吸収体を押しつぶして(図29
(c))、繊維の隙間に保持されている、余分な処理溶
液を除去した。金網等の抑え治具から取り出すと、繊維
吸収体は元の形状に復元して(図30(a))、繊維表
面に液層が塗布されたものとなる。この繊維表面が液で
濡れたものを、60℃オーブンにて、1時間乾燥させた
(図30(b))。 (対比例1及び参照例1)加えて、対比例1として、上
記繊維体親水処理液において調製した硫酸とイソプロピ
ルアルコールのみを含む液についても、上記の本例と同
じ操作を施した。すなわち、上記本例において用いた処
理液から、(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチル
シロキサン)を除いた液である。また、参照例1とし
て、未処理のPP・PE繊維吸収体を用いた。
【0150】なお、上記本例において使用したPP・P
E繊維吸収体も重量0.5gに対し、前記の塗布法で繊
維吸収体全体に塗布される親水処理液は0.3〜0.5
gである。また、対比例1においても、塗布される液量
は、上記本例と同じである。
【0151】以上の操作で得られた各繊維吸収体におけ
る表面の処理状態についての評価及びその結果を以下に
示す。 (1)PP・PE繊維吸収体親水性評価方法 イ)スポイト純水滴下評価 上記本例の処理をしたPP・PE繊維吸収体、対比例1
のPP・PE繊維吸収体および参照例1の未処理のPP
・PE繊維吸収体について、それぞれ、上部からスポイ
トにて純水を滴下した際、純水のしみこみ具合を観察し
た。 ロ)純水浸漬評価 PP・PE繊維吸収体が十分に入る大きさの容器に純水
を満たし、この容器に中に上記本例のPP・PE繊維吸
収体、対比例1のPP・PE繊維吸収体および参照例1
の未処理のPP・PE繊維吸収体をゆっくり乗せ、その
際、それぞれのPP・PE繊維吸収体への純水のしみこ
み具合を観察した。 (2)PP・PE繊維吸収体親水性評価結果 イ)スポイト純水滴下評価結果 上記本例において処理したPP・PE繊維吸収体では、
上部からスポイトにて純水を滴下した際、純水は瞬時に
繊維吸収体の内部へと浸透していった。
【0152】一方、対比例1のPP・PE繊維吸収体な
らびに参照例1の未処理PP・PE繊維吸収体では、上
部からスポイトにて純水を滴下したが、純水はPP・P
E繊維吸収体にまったく浸透せず、PP・PE繊維吸収
体上をはじくような形で球状形の液滴を形成していた。 ロ)純水浸漬評価結果 上記本例において処理したPP・PE繊維吸収体を純水
を満たした容器に中にゆっくり乗せると、PP・PE繊
維吸収体はゆっくりと水中に沈んでいった。少なくと
も、これは、上記本例において処理したPP・PE繊維
吸収体の表面は、親水性を有することを表している。
【0153】一方、対比例1のPP・PE繊維吸収体、
ならびに参照例1の未処理PP・PE繊維吸収体を純水
を満たした容器に中にゆっくり乗せた際には、対比例1
のPP・PE繊維吸収体と未処理PP・PE繊維吸収体
は、共に純水の上に完全に浮いた状態になった。その後
も、まったく水を吸収する様子はみられず、明らかに撥
水性を示していた。
【0154】以上の結果から、PP・PE繊維吸収体に
対しても、ポリアルキレンオキサイド鎖を有するポリア
ルキルシロキサン、酸、アルコールからなる処理液を塗
布し、乾燥することにより、図30(c)に示すような
ポリアルキルシロキサンの被覆が形成され、有効に表面
親水化処理が行われると判断される。その結果として、
上記の処理を施したPP・PE繊維吸収体は、水性イン
クに対しても、十分にインク吸収体としての機能を持た
せることが可能であることが判明した。
【0155】上記の結果、すなわち、本発明による表面
改質において、PP・PE繊維の表面にポリアルキレン
オキサイド鎖を有するポリアルキルシロキサンが密に付
着し、高分子被覆を形成することの査証を得る目的で、
繊維表面のSEM写真による観察を行った。
【0156】図31、図32、図33に、参照例1(未
処理PP・PE繊維吸収体)の未処理PP・PE繊維表
面の拡大SEM写真を示す。また。図34に、対比例1
(酸とアルコールのみ処理PP・PE繊維吸収体)の酸
処理PP・PE繊維表面の拡大SEM写真を示す。
【0157】図35、図36、図37に、上記本例(親
水化処理PP・PE繊維吸収体)の処理済PP・PE繊
維表面の拡大SEM写真を示す。
【0158】先ず、これら全てのPP/PE繊維表面拡
大SEM写真において、繊維表面上に有機物の付着に起
因すると判断される、明確な構造変化は確認できない。
実際に、図33の未処理PP・PE繊維及び、図37の
親水化処理PP・PE繊維の2000倍拡大写真を詳細
に比較しても、未処理PP・PE繊維と親水化処理PP
・PE繊維の表面のSEM観察において両者の違いは認
められない。従って、親水化処理PP・PE繊維におい
て、(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキ
サン)は繊維表面に均一に薄い膜状に付着しているた
め、形状的には、元の繊維表面と区別が付かないものと
なっており、SEM観察上差異が認められないと判断さ
れる。
【0159】一方、図34の酸とアルコールのみで処理
したPP・PE繊維のSEM写真を見ると、繊維の交点
(溶着部)の切断が多く生じ、また、繊維中に節のよう
なものが多く見られる。この変化は、加熱乾燥の過程
で、溶剤の蒸発による高濃度の酸と、乾燥工程自体の熱
により、繊維表面のPE・PP分子、特に表層PEの劣化
が誘起・促進された結果を示している。さらに詳しく述
べると、繊維表面のPE分子の一部が、溶剤の蒸発による
高濃度の酸と、その乾燥工程での加熱により、切断され
る。その際、切断部分に生成したラジカルがプラスチッ
ク材料の製造工程において安定化剤として一般的に含ま
れるラジカル補足剤等の添加剤と遭遇するまで分子内部
において連鎖的に破壊が進行する。結果として、繊維表
面のPEが破壊され、繊維の交点(溶着部)の切断や繊
維中に節(表面で破壊されたPEが一個所に固まる結果
と推測される)が多く観察されていると推断される。
【0160】一方、親水化処理溶液も、同じ濃度の酸を
含み、同じく加熱乾燥を施すにもかかわらず、酸とアル
コールのみで処理した酸処理PP・PE繊維にて観測さ
れるような、繊維結合部の切断、および、繊維中に節の
ようなものは認めれない。この事実は、上記本例の親水
化処理では、繊維表面のPE分子の劣化が抑制されてい
ることを示している。これは、酸が作用して、繊維表面
のPE分子の切断が生じ、分子内にラジカルが生成した
際にも、何らかの物質・構造がラジカルを捕捉し、ラジ
カルが連鎖的にPEを破壊することを抑制していると考
えられる。そのラジカルの捕捉にも、表面に付着する
(ポリオキシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサ
ン)が関与し、生成したラジカルを捕捉する形でPE表
面と化学的な結合をも形成することで、ラジカル連鎖に
よるPE/PPの破壊を抑制する副次的な現象・効果も
否定はできない。
【0161】これらを総合すると、上記本例において
は、繊維表面の改質は、(ポリオキシアルキレン)・ポ
リ(ジメチルシロキサン)が繊維表面に均一に薄い膜状
に付着していることで達成されていると判断される。そ
の過程において、親水化処理に用いる溶液中に含まれる
酸と溶剤による繊維表面の洗浄効果も期待でき、ポリア
ルキレンオキサイド鎖の物理的な吸着を促進する作用も
予測される。それ以外に、高濃度の酸と熱によるPE分
子の切断に伴うPE分子の切断部とポリアルキレンオキ
サイド鎖の化学的結合の可能性も少なからず存在してい
ることも考えられる。
【0162】なお、二軸繊維には、二軸繊維の中には図
28(b)に示すように偏芯して、核部(芯材)1bが
部分的に外壁面に露出して、表層(鞘材)からなる表面
と核部からなる表面が混在している場合があるが、この
様な場合においても、上記の本発明による表面改質処理
を行うことで、核部の露出部分および表層の表面の両方
に親水性を付与すれることが可能である。
【0163】ここで、インク保持部材に充填されたイン
クに関する新たな課題を開示しながら、本発明の更なる
変形例を説明する。
【0164】通常、インク保持部材は、インクタンクへ
のインク注入量をインク保持部材の内部空隙率に対して
100%以下とすることで、毛管力による負圧の発生が
可能となり、インクジェットヘッドに対して好適な背圧
を発生することができる。この負圧はまた、インクタン
クに対して減圧や温度上昇、下降といった環境変化や衝
撃が付与された場合にインクが移動しにくい状態も作り
出している。すなわち、適正な負圧が大気連通口からの
インク漏れの発生しないインクタンクの提供を可能とし
ている。
【0165】これに対し、インクタンクのインク保持部
材にインクをほぼ100%充填した場合の、インクタン
クの環境変化における状態を、図40を参照して説明す
る。図40(a)は、インクタンク200のインク保持
部材201にインクをほぼ100%充填した状態を示し
ている。このようなインクタンク200を減圧環境下あ
るいは高温環境下に放置した場合のインクタンク200
の状態を図40(b)に示す。このとき、インク保持部
材201内に残留していた気泡231は、減圧あるいは
温度上昇により体積が膨張し、インクをインク保持部材
201から押し出すことになり、この押し出されたイン
クが自由インク235となる。
【0166】また、図40(a)に示すインクタンク2
00を、インクの凝固点よりも低い低温環境下に放置し
た場合のインクタンク200の状態を図40(c)に示
す。このとき、インク保持部材201に充填されたイン
クは低温凍結し、体積が膨張する。場合によっては、凍
結したインクはタンク容器202の内壁面と接触し、イ
ンクが解凍した際に、タンク容器202の内壁面に付着
したままとなり、これが自由インク235となる。
【0167】また、図40(a)に示すインクタンク2
00に、落下などにより衝撃を与えた場合のインクタン
ク200の状態を図40(d)に示す。このとき、イン
ク保持部材201に充填されたインクは、インク保持部
材201により発生する負圧よりも大きな衝撃を受ける
と、インク保持部材201より押し出され、タンク容器
202の内壁面に自由インク235として付着する。
【0168】そして、これらインク保持部材201に保
持されていない自由インク235が大気連通口224よ
り排出された場合、ユーザに対してインク汚れを生じさ
せる場合もある。これを効果的に防ぐためには、大気連
通口224の近傍にインクの非含浸部分を形成すること
が望ましい。しかしながら、従来の加圧や減圧によるイ
ンク充填方法では選択的にインクの非含浸領域を設ける
ことは難しい。
【0169】これに対し、本発明の更なる変形例とし
て、前述の保持部材とインクタンクとの位置関係を規定
した上で、本発明のインク充填方法を採用することで、
図40に示すように、大気連通口224の近傍にバッフ
ァ効果を発揮できるインク非含浸部分を容易に形成する
ことができる。
【0170】図41は、本発明のインク充填方法を適用
したインクタンクのインク充填状態を説明する図であ
る。本変形例におけるインク保持部材201は、タンク
容器202の内壁に対して、そのA部で密着している。
ここで、図41に示すように、大気連通口224を重力
方向上向きとした状態で本発明のインク充填方法を行う
ことにより、インク保持部材201の大気連通口224
の近傍の領域Bへのインク移動を抑制することができる
ので、上述のインク非含浸部分を容易に形成することが
できる。
【0171】また、前述したようにインク保持部材20
1に対して親水化処理を行う場合、大気連通口224側
には親水化処理を行わないことで、樹脂繊維本来の疎水
性を利用し、大気連通口224側へのインク移動を抑制
させ、大気連通口224からのインクの漏出を防止する
ことができる。この方法によると、インク充填部分の選
択性があるため、インク充填率を大幅に下げることな
く、かつ大気連通口224の近傍にバッファ効果を発揮
できるインク非含浸部分を容易に形成することができ
る。特に図41に示すようにインク保持部材201をタ
ンク容器202内で保持し、大気連通口224を重力方
向上方に位置する状態で本発明のインク充填方法を行う
ことで、より効果的に大気連通口224の近傍領域にイ
ンク非含浸部分を容易に形成することができる。
【0172】この親水化処理の部分選択に関し、図18
に示したインク保持部材親水化の工程(ステップS1
2)において、インク保持部材をマスキング処理するこ
とで、未処理部分を選択的に形成することは容易に可能
である。図42は、この、インクタンクのインク保持部
材の部分的な親水化処理の一例を説明する図である。例
えば、図42(a)におけるインク保持部材201の領
域Bをインク非含浸部分としたい場合に、領域Bとする
部分の表面を、図42(b)に示すように、金属板50
1などでマスキングし、前述の親水化処理を行うことが
できる。なお、図中の符号502はメッシュ材を示し、
金属板501とメッシュ材502とでインク保持部材2
01を挟むことで、前述の親水化処理工程におけるハン
ドリング性を向上させている。また、図43は、図42
に示す親水化処理の変形例を説明する図である。図43
(a)〜(c)のそれぞれは、マスキング部分の変更例
である。図43(b)は、図43(a)よりも大きな領
域Bをインク非含浸部分とする場合であり、また、図4
3(c)は、インク保持部材201の角部の領域Bをイ
ンク非含浸部分とする場合である。そして、インク非含
浸部分とする領域Bの大きさや形状等に応じて、金属板
501の大きさや形状が決定される。
【0173】なお、部分的な親水化処理の方法として
は、このようなマスキング処理による方法の他に、図1
8に示した親水化処理の工程(ステップS12)におい
て、含浸時間をコントロールすることで未処理部分の厚
みを制御することによる方法も可能である。本発明者ら
の実験結果によれば、前述した環境変化等によるインク
移動に対して樹脂繊維の疎水性を発揮させ大気連通口か
らのインク漏出を防止するために好適な未処理部分の厚
みは、5mm以上であった。
【0174】次に、本発明のインク充填装置の更なる変
形例について説明する。前述の説明では、インクタンク
200に急激な慣性力を付与するためにタンク保持ステ
ージ101を移動させて静止しているストッパ部材10
3に衝突させることを例示したが、タンク保持ステージ
101を変位自在な状態で静止させておき、これに移動
するストッパ部材103を衝突させることも可能であ
る。
【0175】また、インクIを最良の効率でインク保持
部材201に含浸させるため、インクタンク200にイ
ンクIを注入する方向と慣性力を付与する方向とが同一
で、この方向とインク保持部材201の繊維方向とが直
交し、インク注入の方向と重力方向とが直交しているこ
とを例示した。
【0176】しかし、これらの方向の組み合わせは各種
に変形することが可能であり、例えば、インク保持部材
201の繊維方向と慣性力を付与する方向とを同一とす
ることも可能である。さらに、インクタンク200を同
一速度で前後移動させて方向が交互に反転する慣性力を
同一の強度で発生させることを例示したが、前述のよう
にインクIをインクタンク200に前方から注入する場
合、インクIがインク保持部材201の後部まで良好に
移動するように、インクタンク200の移動速度を前進
と後退とで相違させるようなことも可能である。
【0177】すなわち、タンク保持ステージのストッパ
部材との衝突によりインクに付与される慣性力の方向が
インク注入方向に対して反対の方向となる場合には、衝
突時のタンク保持ステージの速度を、反対方向にステー
ジが移動する際のステージの速度に対して遅く設定する
ことで、インク注入方向に対して反対の方向となる慣性
力によりインクを移動させることのないようにし、イン
ク注入方向にのみ慣性力が付与されるようにしてもよ
い。
【0178】このように、インク注入方向と同じ方向に
のみ慣性力を付与するためには、図16に示すようなイ
ンク充填装置400を用いてもよい。図16において、
インク充填装置400は、前述の第1の実施形態に対し
て、本体ベース420が後方に延長されており、その延
長方向に等間隔で複数のストッパ部材403a,403
b,…、及びストッパ部材403a,403b,…に対
応して設けられる衝突部材421a,421b,…が配
置されている点が異なっている。
【0179】このインク充填装置400では、t=0か
らタンク保持ステージ101が移動機構402によって
移動し、図17に示すように、速度V1となった後、t
=t1で、最初のストッパ部材403aに衝突する。そ
の衝突後、Δt秒後にストッパ部材403aは本体ベー
ス420内に格納され、再びタンク保持ステージ101
は速度V1で移動を開始する。その後、2t1+Δtで、
次のストッパ部材403bと衝突する。図16はt=
0、t1≦t≦t1+Δt、t1+Δt<t<2t1+Δt
のときのタンク保持ステージ101の状態を示す模式的
説明図である。
【0180】なお、図16に示すインク充填装置400
の場合にも、前述の第1の実施形態と同様、前方方向
(図示右方向)のみの移動及び停止を繰り返してインク
に前方方向に対する慣性力を付与させるだけでなく、複
数回前方方向への移動による慣性力の付与を行った後、
方向を反転させた慣性力をインクに対して1回あるいは
複数回与えるようにしてもよい。
【0181】また、往復移動されているインクタンク2
00にインクIを専用のインク供給機構104で加圧し
て供給することを例示したが、例えば、注入弁と排出弁
とを具備して振動により液体を圧送するポンプ装置(図
示せず)をタンク保持部111の外側に装着し、その移
動によりインクIをインクタンク200に供給するよう
なことも可能である。
【0182】さらに、前述の第1の実施形態では一色の
インクIをインクタンク200の一個のインク保持部材
201に注入することを例示したが、本発明のインク充
填装置は、例えば、黒色と赤色とのインクを二つの液室
のインク保持部材で個々に保持する一個のインクタン
ク、三原色のインクを三つの液室のインク保持部材で個
々に保持する一個のインクタンク、三原色と黒色とのイ
ンクを四つの液室のインク保持部材で個々に保持する一
個のインクタンクなど(図示せず)、各種のインクタンク
に適用可能である。
【0183】さらに、上記形態ではインクタンク200
に急激な慣性力を簡単に付与する慣性力付与機構とし
て、タンク保持ステージ101をステージ停止部材であ
るストッパ部材103に衝突させる構造を例示したが、
これは必要な慣性力を発生できれば良い。例えば、タン
ク保持ステージ101と本体ベース120とに所定長さ
の高強度のワイヤを連結し、このワイヤの張力で所定の
慣性力を発生させることも可能であり、ステージ移動機
構102の急激な反転動作でも必要な慣性力を発生させ
ることも不可能ではない。
【0184】また、前述の各実施形態ではインクを筐体
内部に注入するとともにインクに対して慣性力を付与さ
せる工程と、インク注入後に筐体内部のインクに対して
慣性力を付与させる工程とを有していたが、インク注入
量によっては、インクを筐体内部に注入するとともにイ
ンクに対して慣性力を付与させる工程のみでもよく、ま
た、最初に所定量のインクすべてを注入せずに、上述の
2つの工程を一組として、所定量のインクが注入される
まで一連の動作を繰り返してもよい。
【0185】
【発明の効果】このように、本発明のインク充填方法に
よれば、インクタンクの内部に注入されたインクに大き
な慣性力が急激に付与され、この慣性力によりインクが
インク保持部材の内部を移動することにより、インクを
迅速にインクタンクに注入してインク保持部材に含浸さ
せることができる。さらに、インク保持部材を親水性化
することにより、インク保持部材のインク保持力が向上
するので、インク保持部材内へのインクの含浸速度が増
し、インクタンクへの注入を一層早く完了させることが
できる。また、上述のようにインク保持部材のインク保
持力が向上することにより、インク注入中にインクに慣
性力が加えられたときに、インクがインクタンクの外部
に飛び出すことを抑えることができる。
【0186】また、移動するインクタンクを瞬時に停止
させて上記慣性力をインクに付与することにより、例え
ば、インクタンクを保持して移動するステージをストッ
パに衝突させるなどの簡単な操作で充分な慣性力をイン
クに付与することができ、インクをインク保持部材に迅
速に含浸させることができる。
【0187】また、慣性力をインクに繰り返し付与する
ことにより、インクタンクの内部でインクが繰り返し移
動されるので、インクをインク保持部材の全体に良好に
含浸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態であるインク充填装置
の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるインク充填装置
の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるインクタンクの
構造を示す説明図であり、(a)は一部を断面化した平面
図、(b)は正面図、(c)は縦断側面図、(d)は裏面図、
(e)は横断底面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のインクタンクに用い
られる吸収部材の外観を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のインクタンクに用い
られるインク導出部材の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のインク充填装置のタ
ンク保持ステージにインクタンクを装着する工程を示す
一部を断面化した平面図である。
【図7】インクタンクの吸収部材に慣性力によりインク
が含浸される工程の前半部を示し、(a)〜(c)が横断平
面図、(a’)〜(c’)が縦断側面図である。
【図8】インクタンクの吸収部材に慣性力によりインク
が含浸される工程の中半部を示し、(a)〜(c)が横断平
面図、(a’)〜(c’)が縦断側面図である。
【図9】インクタンクの吸収部材に慣性力によりインク
が含浸される工程の後半部を示し、(a)〜(c)が横断平
面図、(a’)〜(c’)が縦断側面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態のインク充填装置に
よるインク充填方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1の実施形態の変形例のインク充
填方法を示すフローチャートである。
【図12】タンク保持ステージの移動動作を示すタイム
チャートである。
【図13】本発明の第1の実施形態の更なる変形例の移
動動作を示すタイムチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態のインクタンクを示
す外観図である。
【図15】本発明の第2の実施形態のインク充填装置を
示す側面図である。
【図16】本発明の変形例のインク充填装置を示す側面
図である。
【図17】本発明の変形例の移動動作を示すタイムチャ
ートである。
【図18】本発明の変形例のインク充填方法を示すフロ
ーチャートである。
【図19】インク保持部材の被改質表面上に形成される
表面改質剤の高分子とその表面との付着形態を模式的に
示す図であり、(a)は機能性基としての第1の基とイ
ンク保持部材の表面への付着のための第2の基の両方が
高分子の側鎖にある場合について説明する図であり、
(b)は第2の基が主鎖中に含まれている場合を説明す
る図である。
【図20】表面改質剤の高分子を含む処理溶液を塗布
し、基材上に塗布層を形成した状態を模式的に示す図で
ある。
【図21】基材上に形成した表面改質剤の高分子を含む
塗布層中の溶媒を一部除去する工程を示す概念図であ
る。
【図22】表面改質剤の高分子を含む塗布層中の溶媒を
一部除去する工程に付随し、処理溶液中に添加する酸に
より誘起される、表面改質剤の高分子の部分的な解離過
程を示す概念図である。
【図23】表面改質剤の高分子を含む塗布層中の溶媒を
さらに除去する工程に付随し、表面改質剤の高分子ある
いはその解離細分化物が配向形成する過程を示す概念図
である。
【図24】塗布層中の溶媒を乾燥除去して、表面改質剤
の高分子あるいはその解離細分化物が配向して、表面上
に付着固定される過程を示す概念図である。
【図25】表面上に付着固定される表面改質剤の高分子
由来の解離細分化物相互が、縮合反応により再結合する
過程を示す概念図である。
【図26】表面改質方法を撥水性表面の親水化処理に適
用する事例を示し、処理溶液中に水を添加する効果を示
す概念図である。
【図27】インクタンクにおけるインク吸収体に利用さ
れうるPE/PP繊維体を示し、(a)は、インクタン
クにおけるインク吸収体としての利用形態を、(b)
は、PE/PP繊維体の全体形状と、繊維の配列方向F
1とそれと直交する方向F2を、(c)は、前記PE/
PP繊維体を加熱融着して形成する前の状態を、(d)
は、前記PE/PP繊維体を加熱融着して形成した状態
をそれぞれ模式的に示す図である。
【図28】図10に示すPE/PP繊維体の断面構造の
一例であり、(a)はPP芯材上にPE鞘材がほぼ同心
円状に被覆する例、(b)はPP芯材上にPE鞘材が偏
心して被覆する例を模式的に示す図である。
【図29】図27に示すPE/PP繊維体の撥水性表面
の親水化処理に表面改質方法を適用する事例を示し、
(a)は未処理の繊維体を、(b)は繊維体を親水化処
理液に浸漬する工程を、(c)は浸漬後、繊維体を圧縮
し、余剰の処理液を除く工程を模式的に示す図である。
【図30】図29に示す工程に引き続く工程を示し、
(a)は繊維体表面に形成された塗布層を、(b)は塗
布層中に含まれる溶媒を乾燥除去する工程を、(c)
は、繊維表面を覆う親水化剤の被覆を模式的に示す図で
ある。
【図31】参照例(未処理PP・PE繊維吸収体)の未
処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす150
倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図32】参照例(未処理PP・PE繊維吸収体)の未
処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす500
倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図33】参照例(未処理PP・PE繊維吸収体)の未
処理PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす200
0倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図34】対比例1(酸とアルコールのみ処理PP・P
E繊維吸収体)の酸処理PP・PE繊維形状とその表面
状態を表わす150倍拡大の図面代用のSEM写真を示
す。
【図35】実施例(親水化処理PP・PE繊維吸収体)
の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす1
50倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図36】実施例(親水化処理PP・PE繊維吸収体)
の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす5
00倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図37】実施例(親水化処理PP・PE繊維吸収体)
の処理済PP・PE繊維形状とその表面状態を表わす2
000倍拡大の図面代用のSEM写真を示す。
【図38】改質表面を有する物品の製造工程の一例を示
す工程図である。
【図39】表面改質処理された表面における親水性基と
疎水性基の推定される分布の一例を模式的に示す図であ
る。
【図40】インクタンクのインク保持部材にインクをほ
ぼ100%充填した場合のインクタンクの環境変化にお
ける状態を説明する図である。
【図41】本発明のインク充填方法を適用したインクタ
ンクのインク充填状態を説明する図である。
【図42】インクタンクのインク保持部材の部分的な親
水化処理の一例を説明する図である。
【図43】図42に示す親水化処理の一例の変形例を説
明する図である。
【符号の説明】
1〜4 高分子 1a〜1d 細分化物 1−1 第1の基 1−2 第2の基 1−3 主鎖 5 基材表面に露出している基 6 基材 7 酸 8 処理液 9 大気 100,400 インク充填装置 101 タンク保持ステージ 102 ステージ保持機構 103 ストッパ部材 104 インク供給機構 106 コントロールユニット 111 タンク保持部 114 供給管 115 クランプ部材 116,121 衝突部材 200 インクタンク 201 インク保持部材 202 タンク容器 211 吸収部材 212 インク導出部材 221 インク供給口 222 間隙 223 バッファ部 224 大気連通口 I インク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 弘毅 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 須釜 定之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA26 KC01 KC12 KC13 KC16 KD08

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを保持するためのインク保持部材
    と、該インク保持部材を収納するとともに前記インク保
    持部材のインクを外部に供給するためのインク供給口お
    よび前記インク保持部材を大気に対して連通させる大気
    連通口を備える筐体と、を有するインクタンクのインク
    保持部材にインクを充填するインク充填方法において、 親水化された部分を有するインク保持部材を用意する工
    程と、 前記インク保持部材を大気に対して開放した状態でイン
    クを前記筐体の内部に所定量注入するとともに、前記イ
    ンク保持部材の静的なインク保持力とインク移動に対す
    る動的な抵抗力との和より大きな慣性力を、注入された
    インクに付与することで前記インク保持部材内にインク
    を充填する充填工程とを有し、 前記インク保持部材の親水化された部分に、親水性基を
    有する第2の部分と、前記親水性基の界面エネルギーと
    は異なり、且つ前記インク保持部材の親水化される部分
    の表面の表面エネルギーと略同等の界面エネルギーの基
    を有する第1の部分とを備え、前記部分の表面の構成材
    料と異なる高分子が、前記第1の部分が前記部分の表面
    に向かって配向し、前記第2の部分は前記部分表面とは
    異なる方向に配向している状態で付与されていることを
    特徴とするインク充填方法。
  2. 【請求項2】 インクを保持するためのインク保持部材
    と、該インク保持部材を収納するとともに前記インク保
    持部材のインクを外部に供給するためのインク供給口お
    よび前記インク保持部材を大気に対して連通させる大気
    連通口を備える筐体と、を有するインクタンクのインク
    保持部材にインクを充填するインク充填方法において、 親水性基を有する第2の部分と、前記親水性基の界面エ
    ネルギーとは異なり、且つ前記インク保持部材の親水化
    すべき部分の表面の表面エネルギーと略同等の界面エネ
    ルギーの基を有する第1の部分とを備え、前記部分の表
    面の構成材料と異なる高分子を含む液体を前記部分の表
    面に付与する第1工程と、前記部分の表面に向かって前
    記高分子の第1の部分を配向させ、前記第2の部分を前
    記部分の表面とは異なる側に配向させる第2工程と、に
    よって前記インク保持部材を親水化処理する親水化処理
    工程と、 前記インク保持部材を大気に対して開放した状態でイン
    クを前記筐体の内部に所定量注入するとともに、前記イ
    ンク保持部材の静的なインク保持力とインク移動に対す
    る動的な抵抗力との和より大きな慣性力を、注入された
    インクに付与することで前記インク保持部材内にインク
    を充填する充填工程とを有することを特徴とするインク
    充填方法。
  3. 【請求項3】 インクを保持するためのインク保持部材
    と、該インク保持部材を収納するとともに前記インク保
    持部材のインクを外部に供給するためのインク供給口お
    よび前記インク保持部材を大気に対して連通させる大気
    連通口を備える筐体と、を有するインクタンクのインク
    保持部材にインクを充填するインク充填方法において、 親水性基を有する第2の部分と前記親水性基の界面エネ
    ルギーとは異なり且つ前記インク保持部材の親水化すべ
    き部分の表面の表面エネルギーと略同等の界面エネルギ
    ーの基を有する第1の部分とを備えた親水性基付与用高
    分子を開裂させて得られた、前記第1の部分および前記
    第2の部分を有する細分化物を含む液体を前記部分の表
    面に付与する第1工程と、前記部分の表面に前記細分化
    物の第1の部分を前記部分の表面側に配向させ、前記第
    2の部分を前記部分の表面とは異なる側に配向させる第
    2工程と、前記部分の表面上に配向した細分化物同士を
    少なくとも一部で縮合させて高分子化する第3工程とに
    よって前記インク保持部材 を親水化処理する親水化処理工程と、前記インク保持部
    材を大気に対して開放した状態でインクを前記筐体の内
    部に所定量注入するとともに、前記インク保持部材の静
    的なインク保持力とインク移動に対する動的な抵抗力と
    の和より大きな慣性力を、注入されたインクに付与する
    ことで前記インク保持部材内にインクを充填する充填工
    程とを有することを特徴とするインク充填方法。
  4. 【請求項4】 前記第3工程は、前記縮合を生じせしめ
    るために加熱工程を有する、請求項3に記載のインク充
    填方法。
  5. 【請求項5】 前記第2工程の後に、未反応物を除去す
    る工程をさらに有する、請求項3または4に記載のイン
    ク充填方法。
  6. 【請求項6】 前記部分の表面がオレフィン系の樹脂か
    ら構成され、前記親水性基付与用高分子が機能性基を有
    するポリアルキルシロキサンである、請求項3から5の
    いずれか1項に記載のインク充填方法。
  7. 【請求項7】 前記ポリアルキルシロキサンの機能性基
    がポリアルキレンオキサイド鎖を有する、請求項6に記
    載のインク充填方法。
  8. 【請求項8】 前記ポリアルキルシロキサンが(ポリオ
    キシアルキレン)・ポリ(ジメチルシロキサン)であ
    る、請求項7に記載のインク充填方法。
  9. 【請求項9】 前記インク保持部材は多数の繊維から構
    成され、該繊維は前記慣性力の付与方向と交差した略同
    方向に集束されている、請求項1から3のいずれか1項
    に記載のインク充填方法。
  10. 【請求項10】 インクを保持するためのインク保持部
    材の、大気連通口側の面を除いた部分を親水化処理す
    る、請求項1から9のいずれか1項に記載のインク充填
    方法。
  11. 【請求項11】 前記インクへの慣性力の付与は、移動
    するインクタンクを瞬時に停止させることにより行う、
    請求項1から10のいずれか1項に記載のインク充填方
    法。
  12. 【請求項12】 前記インクへの慣性力の付与を繰り返
    し行う、請求項1から11のいずれか1項に記載のイン
    ク充填方法。
  13. 【請求項13】 前記充填工程後、前記インク保持部材
    の静的なインク保持力とインク移動に対する動的な抵抗
    力との和より大きな慣性力を、注入されたインクに付与
    することで前記インク保持部材内にインクを充填する第
    2の慣性力付与工程を更に有する、請求項1から12の
    いずれか1項に記載のインク充填方法。
  14. 【請求項14】 インクを保持するためのインク保持部
    材と、該インク保持部材を収納するとともに前記インク
    保持部材のインクを外部に供給するためのインク供給口
    及び前記インク保持部材を大気に対して連通させる大気
    連通口を備える筐体と、を有するインクタンクにおい
    て、 前記インク保持部材は、多数の繊維から構成されるとと
    もに、 該繊維表面の一部に親水性基を有する第2の部分と、前
    記親水性基の界面エネルギーとは異なり前記繊維表面の
    表面エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する第1
    の部分とを有する前記部分の表面の構成材料と異なる高
    分子が、前記第1の部分が前記部分表面に向かって配向
    し、前記第2の部分は前記部分表面とは異なる方向に配
    向している状態で付与されており、 前記インク保持部材を大気に対して開放した状態で前記
    インク供給口から前記筐体の内部に所定量のインクが注
    入されるとともに、前記インク保持部材の静的なインク
    保持力とインク移動に対する動的な抵抗力との和より大
    きな慣性力を、前記注入されたインクに付与することで
    前記インク保持部材内にインクが充填され、 前記繊維が、前記慣性力の付与方向と交差した略同方向
    に集束されていることを特徴とするインクタンク。
  15. 【請求項15】 前記繊維の集束方向は、前記インク供
    給口からのインクの注入方向と交差した方向である、請
    求項14に記載のインクタンク。
  16. 【請求項16】 インクを保持するためのインク保持部
    材と、該インク保持部材を収納するとともに前記インク
    保持部材のインクを外部に供給するためのインク供給口
    及び前記インク保持部材を大気に対して連通させる大気
    連通口を備える筐体と、を有するインクタンクにおい
    て、 前記インク保持部材は、多数の繊維から構成されるとと
    もに、 該繊維表面の一部に親水性基を有する第2の部分と、前
    記親水性基の界面エネルギーとは異なり前記繊維表面の
    表面エネルギーと略同等の界面エネルギーを有する第1
    の部分とを有する前記部分の表面の構成材料と異なる高
    分子が、前記第1の部分が前記部分表面に向かって配向
    し、前記第2の部分は前記部分表面とは異なる方向に配
    向している状態で付与されており、 前記インク保持部材を大気に対して開放した状態で前記
    インク供給口から前記筐体の内部に所定量のインクが注
    入されるとともに、前記インク保持部材の静的なインク
    保持力とインク移動に対する動的な抵抗力との和より大
    きな慣性力を、前記注入されたインクに付与することで
    前記インク保持部材内にインクが充填され、 前記繊維が、前記慣性力の付与方向と略同方向に集束さ
    れており、 前記繊維の両側の端面の少なくとも一方が前記インクタ
    ンクの内面に当接していることを特徴とするインクタン
    ク。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013154647A (ja) * 2013-05-02 2013-08-15 Seiko Epson Corp 液体容器及び液体供給装置
WO2017099809A1 (en) * 2015-12-11 2017-06-15 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Printhead assembly

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