JP4519816B2 - 防潮・防波堤 - Google Patents
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Description
そしてこの膜構造物1は、図22,図23に示すように、軸剛性抵抗を受けるケーブルワイヤ1bを上下方向(水深方向)で互いに所定間隔離して複数本配置し、各ケーブルワイヤ1bを支持すべく複数の梁部材1c(鉄鋼材、樹脂材等)をケーブルワイヤ1bの長手方向で所定間隔離した位置で水深方向に伸ばして各ケーブルワイヤ1bと直交させて設け、同ケーブルワイヤ1bと梁部材1cを係止させ、これにテフロン(登録商標)膜、アラミド繊維、FRP等の材質で形成した膜部材1aを海側より張り付く形に係止させ、テンション構造で構成している。
その断面内の水圧に対しては、前記膜部材1aで支持させ、その水圧により生ずる軸方向(水路幅方向)への引張力はケーブルワイヤ1bで受け、その引張カに対向させるべく反力(図中矢印)に対してはアンカレイジ2R、2Lにより支持する(例えば、特許文献1 参照。)。
本発明においては、膜構造物と水底との間に隙間があっても、水圧により膜構造物の下部が段構造物に対して押し付けられるから、膜構造物の下縁で水が漏れることが防止される。
なお、段構造物自体は、膜構造物を支持できるものであれば材質は限定されず、例えばブロック状のもの、網状などそれ自体は水を透過するものであっても良いし、水底と別体でなく水底自体の形状を改良することでも良い。
例えば、水底を平坦にすることの他、水圧が働く方向に水底が下がるように傾斜させる等が考えられる。
港外側の水位が港内側の水位より上昇した場合、浮体は港外の海水に浮いているから水位上昇に従って上昇し、それにつれ膜構造物も高さ方向に展張する。したがって港外側の水は港内側に流れ込まない。
一方、上記とは逆に、港内側の水位が港外側の水位より上昇した場合、港外の海水に浮いている浮体は港外側の水位より上昇することはできないから、港内側の水は浮体を乗り越えて港外側へ流れ出ることができる。
このように、本発明においては、必要な一方向(例えば港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができる。
そこで、本発明者らが比L/BとテンションTとのバランスを検証したところ、
1.05<L/B<1.25
である場合に、膜構造物の歪み発生が小さく、テンションTも小さく抑えられることがわかった。すなわち、本発明によれば、テンションが小さく、かつ高い遮水性能を得る。なお、実験条件は、1/30モデル、ケーブルワイヤ本数=15本、径φ=1.2mmの場合である。
港外が港内より高水位である場合、水圧によって膜体の縁部は開口部の縁部に押圧され、港外の水は港内に流れ込まない。
一方、逆に港内が港外より高水位となる場合、膜体は港内側の水に押され、港内の水は開口部および膜体と膜構造物との間の流路を通って港外に流れ出る。
このように、本発明においては、必要な一方向(例えば港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができる。
請求項1に記載の発明によれば、膜構造物の下部が段構造物に対して押し付けられるから、膜構造物の下方から水が漏れ出さず、高い遮水性能を得ることができる。
請求項2に記載の発明によれば、膜構造物下縁と水底との間に隙間が生じないので、高い遮水性能を得ることができる。また、水底形状に応じた形状に膜が展張し、水底との間で隙間ができず、高い遮水性能を得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、必要な一方向(例えば港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができ、高い遮水性能を得ることができる。
請求項4に記載の発明によれば、膜構造物の歪み発生が小さいため、テンションが小さく、かつ高い遮水性能を得ることができる。
請求項5に記載の発明によれば、必要な一方向(例えば港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができ、高い遮水性能を得ることができる。
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示したものは本発明の一実施形態として示した防潮堤である。この防潮堤においては、膜構造物1が、支持用のアンカレッジ(基礎)2と共に設けられている。
図2に示すように、膜構造物1は、上端部に設けられた浮体5によって浮力が与えられている。浮体5は、膜構造物1の長手方向に離散的に設けられている。
符号6はチューブケーブルであり、膜構造物1の高さ方向に並んで複数本設けられている。膜構造物1の最下端には、鋼線7が固定され、錘となっている。
図3にチューブケーブル6の構成について示した。チューブケーブル6は、鋼板8の幅方向両端部を互いに結合してチューブ形状としたものであり、石油プラントなどで内部に油等を流動させる際に用いられているものを転用可能である。本実施形態においては、内部を空洞状に保つことで浮力を与えるが、浮力を与え得る他の流体、固体等を充填しても良い。
このように構成されていることにより、膜構造物1は、長手方向の全域でチューブケーブル6によって浮力が与えられる。したがって、従来技術の場合(例えばチューブケーブル6の代わりに、吊り橋等に使われる鋼線を用いた場合)、自重によってケーブルおよび膜構造物1が垂れ下がってしまい、水の漏れを招いてしまうおそれがあるが、本実施形態においては、チューブケーブル6自体に浮力が生ずるため、膜構造物1が垂れ下がってしまうことが無く、水の漏れを防止することができる。特に膜構造物1の長手方向に連続してチューブケーブル6が設けられているから、連続的に浮力を与えることができ、より効果的に水漏れを防止することができる。
なお、本実施形態では膜構造物1の長手方向全域にチューブケーブル6が設けられていることとしたが、チューブケープル6ではなく他に適当な浮力発生手段が長手方向および/または鉛直方向に離散的に設けられていることとしても良い。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、従来技術と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
図1において、符号Lは膜構造物1の長さであり、符号Bは膜構造物1の両端部の直線距離(水路幅)である。また、fは膜構造物1の膨らみ距離である。
膜構造物1の長さLと流路幅BTの比L/Bが大きいと、膜構造物1が歪み易くなり、ねじれた部位から水が漏れやすくなる。一方、L/Bが小さいとアンカレッジ2に作用するテンションTが大きくなってしまう。
そこで、比L/BとテンションTとのバランスを検証したところ、
1.05<L/B<1.25
である場合に、膜構造物1の歪み発生が小さく、テンションTも小さく抑えられることがわかった。すなわち、本実施形態の防潮堤によれば、テンションが小さく、かつ高い遮水性能を得ることができる。
次に、本発明の第3実施形態について図4を用いて説明する。なお、従来技術と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
図4において、符号10は海底である。この海底10は、船舶11を航行させるために深く掘られており、両側部は、図5に示したA−A断面のように傾斜部10−1が存在している。幅方向中央部は平坦面10−2となっている。
図6は、図4のB−B断面図(膜構造物1に沿った線における断面図)である。膜構造物1が存在する部位は、海底10が平坦面10−2と同じ高さの平坦面に掘られた状態となっている。以下、この部位を除去部13と呼ぶ。
このように構成されていることで、膜構造物1は除去部13および平坦面10−2の範囲で海底10に接するので、海底10との間で隙間ができず、高い遮水性能を得ることができる。
なお、除去部13 を平坦に除去するのではなく、図7に示したように、平坦面10−2と連続する滑らかな凹曲面10−3に除去されていることとしてもよい。この場合膜構造物1の下縁が滑らかな曲線で以て海底10と接するので、海底10との間で隙間ができず、高い遮水性能を得ることができる。
このように構成することで、海底形状に応じた形状に膜が展張し、海底10との間で隙間ができず、高い遮水性能を得ることができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、従来技術と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態の防潮堤は、港外と港内との境界に設けられたものである。
図9のように、海底面10が一様でなく、膜構造物1と海底10との間に隙間16がある場合、膜構造物1の長手方向の部位によっては、図10のように膜構造物1の最下端に設けられた錨用の鋼線7(図2参照)と海底10との間隔があいてしまい、図11のように膜構造物1の下縁が水と共に漏れだしてしまう場合がある。
そこで、図12に示したように段構造物18を膜構造物1の港内側近傍の海底に設ける。
段構造物18自体は、膜構造物1を支持できるものであれば材質は限定されず、例えばブロック状のもの、網状などそれ自体は水を透過するものであっても良いし、海底と別体でなく海底自体の形状を改良することでも良い。
このように構成されている本実施形態においては、膜構造物1と海底10との間に隙間16があっても、図12、図13に示したように、港外側の水位が上昇した場合に水圧によって膜構造物1が段構造物18に対して押し付けられるから、膜構造物1の下縁が水と共に港内側に流れ込まない。したがって、従来よりも高い遮水性能を有する防潮堤を得ることができる。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、従来技術と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態の防潮堤は、港外と港内との境界に設けられたものである。
図14に示したように、膜構造物1の上縁には、長手方向に沿って浮体5が離散的に設けられている。
浮体5には、図15のように、膜構造物1の上端が、水面より上側でかつ港内側に固定されている。
このように構成された本実施形態においては、港外側の水位が港内側の水位より上昇した場合、図15のように、浮体5は水位上昇に従って上昇し、それにつれ膜構造物1も高さ方向に展張する。したがって港外側の水は港内側に流れ込まない。
一方、上記とは逆に、港内側の水位が港外側の水位より上昇した場合、図16に示したように浮体5は港外側の水位より上昇することはないから、港内側の水は浮体5を乗り越えて港外側へ流れ出ることができる。
このように、本実施形態においては、必要な一方向(港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができる。
したがって、従来よりも高性能の遮水性能を有する防潮堤を得ることができる。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、従来技術と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
図17において、符号25は本実施形態に係る防潮堤に設けられた膜構造物である。本実施形態の防潮堤は、港外と港内との境界に設けられたものである。
膜構造物25は、長手方向数カ所において、開口部26が設けられていると共に、膜構造物25の港外側において、開口部26を被うように膜体27が設けられている。膜体27と膜構造物25とは、開口部26の縁部28で重なり合っており、膜体27と膜構造物25とは、一部のみが固定されている。したがって、膜体27と膜構造物25との間に、膜構造物25を挟んで両側(港外と港内)を連通する流路29が形成されている
このように構成された本実施形態においては、港外が港内より高水位である場合、図18に示したように、膜体27は縁部28において膜構造物25に押圧され、港外の水は港内に流れ込まない。
一方、逆に港内が港外より高水位となる場合、図19に示したように、膜体27は港内側の水に押され、港内の水は開口部26を通って膜体27と膜構造物25との間の流路29を港外に流れ出る。
このように、本実施形態においては、必要な一方向(港外から港内)へ流れ込む水を抑えることができる一方、逆方向へは水を排出することができる。
したがって、従来よりも高性能の遮水性能を有する防潮・防波堤を得ることができる。
また、上記各実施形態の防潮堤を防波堤として適用することも可能である。さらにまた、上記各実施形態を適宜組み合わせて用いても良いのはもちろんである。
2 アンカレイジ
5 浮体
6 チューブケーブル
18 段構造物
26 開口部
27 膜体
Claims (5)
- 水路の両側にそれぞれ基礎を設け、同両側の基礎間には、各基礎に端部を係止され、深さ方向全水深に亘って伸びると共に幅方向で前記両側の基礎間に亘って延びる膜構造物を設け、
前記膜構造物の水路方向一側の水底には、前記膜構造物の下部を支持する段構造物が形成されていることを特徴とする防潮・防波堤。 - 水路の両側にそれぞれ基礎を設け、同両側の基礎間には、各基礎に端部を係止され、深さ方向全水深に亘って伸びると共に幅方向で前記両側の基礎間に亘って延びる膜構造物を設け、
前記水路の水底は、前記膜構造物が水路方向一側から他側に水圧を受け、該水圧によって前記水底に押し付けられる場合の前記膜構造物に前記水圧が働く方向に沿って、前記水底が下がるように傾斜した傾斜部が設けられていることを特徴とする防潮・防波堤。 - 請求項1または2に記載の防潮・防波堤において、
前記膜構造物の上端には浮体が固定され、
前記膜構造物は、水路方向一側の水位が上昇した場合において、前記浮体の前記水路方向一側の面に、前記浮体の喫水線より上方で固定されていることを特徴とする防潮・防波堤。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の防潮・防波堤において、
前記膜構造物の両端間の長さをL、前記水路幅をBとおくと、1.05<L/B<1.25であることを特徴とする防潮・防波堤。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の防潮・防波堤において、
前記膜構造物には開口部が設けられ、さらに、前記膜構造物の一側から前記開口部を被う膜体を備え、該膜体と前記膜構造物との間に、前記膜構造物の一側と前記膜構造物の他側である両側を連通する流路が形成されていることを特徴とする防潮・防波堤。
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