JP4519295B2 - ワークの位置ずれの測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの位置ずれの測定方法に関する技術分野に属し、詳細には、ロボットに教示再生動作を行なわせる際の再生時におけるワークの位置ずれの測定方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
溶接ロボットにおいては、ワークの位置ずれを計測し補正する方法として、溶接ワイヤによるタッチセンシングを利用した方式のものがよく採用されている。これは、図1に示すように、ワークの壁面を溶接ワイヤにてタッチセンシングを行い、ワークと溶接ワイヤとの電気的短絡信号を検出し、教示時(ティーチング時)のワーク位置と溶接作業時のワーク位置とのずれを計測し、補正するもの(以下、従来技術1ともいう)である。
【0003】
ワークの溶接等の加工の開始点(以下、加工開始点という)について補正する方式のものとして、特許第2753309号公報に記載されたものがある。これは、ロボットの手首部にスキャンセンサーを設け、このスキャンセンサーを用いてワークの端部であり且つ境界線の一端となる点(加工開始点)を検出し、ティーチングデータを前記加工開始点を始点とするティーチングデータに補正し、この補正したティーチングデータにより溶接等の加工を行うもの(以下、従来技術2ともいう)である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来技術1(溶接ワイヤによるタッチセンシング方式)の場合においては、次のような種々の問題点がある。高精度の計測を行うために低速な移動速度にてセンシング動作を行う必要があり、時間がかかる。ワーク表面に塗布されている防錆塗膜の厚さや表面の錆等の状態により、検出ミスが生じる場合がある。溶接ワイヤで接触することができない大きなずれに対しては適用できない。アーク溶接の場合、溶接終了後の溶接ワイヤ突き出し長さがばらつくため、その後の検出に際し安定した検出ができない可能性もある。また、図1に示すような検出し易いワーク平面が存在するワークは少なく、適用範囲に限界がある。
【0005】
従来技術2(スキャンセンサーによる加工開始点の検出方式)は、前述のように、スキャンセンサーを用いて加工開始点(ワークの端部であり且つ境界線の一端となる点)を検出し、ティーチングデータを前記加工開始点を始点とするティーチングデータに補正するものである。この場合、検出対象の点は、例えば加工開始点(ワークの端部であり且つ境界線の一端となる点)という特定の点であるため、スキャンセンサーで計測しながらセンサー自身を移動させる必要があり、特定の点の検出に時間がかかる。また、場合によっては、別途、特定点をワークに設ける必要がある。このように、従来技術2の場合は特定の点を設定しないと補正できないという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に着目してなされたものであって、その目的は、ロボットに教示再生動作を行なわせる際の再生時におけるワークの位置ずれの測定を行うに際し、前記従来技術1及び2の場合のような問題点がなく、特には、検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるワークの位置ずれの測定方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係るワークの位置ずれの測定方法は、請求項1〜3記載のワークの位置ずれの測定方法としており、それは次のような構成としたものである。
【0008】
即ち、請求項1記載のワークの位置ずれの測定方法は、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサを用い、前記センサをアーム部に取り付けたロボットに教示再生動作を行なわせるときに、前記センサを用いて再生時のワークの位置ずれを測定する方法であって、教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの全体の姿勢により定まる位置を測定点として設定すると共に、前記測定点における輪郭形状検出対象平面および前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶し、さらに前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義しておき、再生時に、ロボットの全体の姿勢により定まる位置が前記測定点に到達した時点で、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点の位置S' を測定し、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、この成分vあるいはΔS−vをワークの位置ずれ量とすることを特徴とするワークの位置ずれの測定方法である(第1発明)。
【0009】
請求項2記載のワークの位置ずれの測定方法は、前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを、前記測定点におけるロボットの全体の姿勢により定まる位置に到る直前のロボットの動作に基づいて設定する請求項1記載のワークの位置ずれの測定方法である(第2発明)。
【0010】
請求項3記載のワークの位置ずれの測定方法は、前記測定点を複数とし、ワークの位置ずれ量の方向が互いに異なる複数のワークの位置ずれ量を求め、この複数のワークの位置ずれ量を加え合わせ、二次元または三次元のワークの位置ずれ量を求める請求項1又は請求項2記載のワークの位置ずれの測定方法である(第3発明)。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば次のような形態で実施する。
ロボットのアーム部に、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサを取り付ける。
【0012】
上記ロボットへの教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの全体の姿勢により定まる位置(以下、ロボットの姿勢)を測定点として設定すると共に、前記測定点における輪郭形状検出対象平面を設定し、また、前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶し、さらに前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義しておく。
【0013】
上記ロボットの再生時に、ロボットの姿勢(ロボットの全体の姿勢により定まる位置)が前記測定点に到達した時点において、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点の位置S' を測定する。
【0014】
そして、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、この成分vあるいはΔS−v(ΔSとvからベクトル演算により求められる)をワークの位置ずれ量とする。
【0015】
このような形態で本発明が実施される。
【0016】
以下、本発明について主にその作用効果を説明する。
【0017】
本発明に係るワークの位置ずれの測定方法は、前述の如く、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサを用い、前記センサをアーム部に取り付けたロボットに教示再生動作を行なわせるときに、前記センサを用いて再生時のワークの位置ずれを測定する方法であって、教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの姿勢(ロボットの全体の姿勢により定まる位置)を測定点として設定すると共に、前記測定点における輪郭形状検出対象平面および前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶し、さらに前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義しておき、再生時に、ロボットの姿勢(ロボットの全体の姿勢により定まる位置)が前記測定点に到達した時点で、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点の位置S' を測定し、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、この成分vあるいはΔS−vをワークの位置ずれ量とすることとしている。
【0018】
このように、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサをロボットのアーム部に取り付け、このロボットに教示再生動作を行なわせるときに前記センサを用いて再生時のワークの位置ずれを測定するようにしているので、前記従来技術1(溶接ワイヤによるタッチセンシング方式)の場合のような問題点がなく、次のようになる。即ち、前記従来技術1の場合の如きタッチセンシング動作時間がなくなり、高速なセンシングを行うことができ、センシング時間を大幅に短縮できるようになる。また、ワーク表面の導通抵抗による状態に影響されず、このためワーク表面に塗布されている防錆塗膜の厚さや表面の錆等の状態による検出ミスの発生がなくなる。また、ワークの位置ずれ量はセンサ計測内の位置ずれ量であれば検出でき、このため前記従来技術1の場合に比較してワークの位置ずれ量の許容量が極めて大きく、大きな位置ずれ量の場合にも適用できるようになる。また、前記従来技術1の場合の如き溶接ワイヤ突き出し長さのばらつきによる検出の不安定化という現象がなく、安定した検出ができるようになる。更に、適用可能なワークについては、前記レーザセンサにて特徴点が検出できるものであれば特に制約はなく、前記従来技術1では検出不可能であった曲面を有するようなワークにも適用可能であり、前記従来技術1の場合に比較して適用範囲が著しく広くなる。
【0019】
また、前記レーザセンサを用いてワークの位置ずれを測定するに際しては、前記の如く、教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの姿勢を測定点として設定すると共に、前記測定点における輪郭形状検出対象平面および前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶し、さらに前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義しておき、再生時に、ロボットの姿勢が前記測定点に到達した時点で、前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点の位置S' を測定し、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、この成分vあるいはΔS−vをワークの位置ずれ量とするようにしており、このとき、前記ワークの輪郭線上の特徴点は特定の点ではなく、しかも予め定めたものではなく、また、予め定めておく必要もないので、検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるようになる。即ち、前記測定点および前記測定点における輪郭形状検出対象平面は限定されず、任意でよく、しかも予め定めておく必要もなく、教示時に設定すればよいため、前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点は特定の点ではなく、しかも予め定めたものではなく、また、予め定める必要もなく、それ故に、検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるようになる。
【0020】
従って、本発明に係るワークの位置ずれの測定方法によれば、ロボットに教示再生動作を行なわせる際の再生時におけるワークの位置ずれの測定を行うに際して、前記従来技術1(溶接ワイヤによるタッチセンシング方式)及び前記従来技術2(スキャンセンサーによる加工開始点の検出方式)の場合のような問題点がなく、特には、検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるようになる。
【0021】
ここで、ロボットに教示再生動作を行なわせるときとは、ロボットへの教示をするとき、及び、ロボットに再生動作を行なわせるときのことである。再生動作とは、ロボットへの教示事項(教示データ等)に基づいてロボットを動作させることである。
【0022】
輪郭形状検出対象平面とは、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出する際における平面のことである。測定点における輪郭形状検出対象平面とは、ロボットの姿勢が測定点にあるときの輪郭形状検出対象平面のことである。
【0023】
輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点は、その輪郭形状に応じて決まるものであり、例えば、輪郭形状がL字形の場合はそのコーナの点となる。
【0024】
位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義することとは、位置ずれ量検出方向に応じてベクトルVを設定することである。即ち、求めたい方向の位置ずれ量を検出するのに適合した方向のベクトルVを設定することである。このような求めたい方向の位置ずれ量を検出するのに適合した方向のベクトルVは、ワークの形状や溶接線の位置によって変化するため、適切な方向を選択して設定する。尚、求めたい方向の位置ずれ量を検出するのに不適合な方向のベクトルは数少なく、多くの場合、輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点が存在する線の方向と平行な方向のベクトルのみであり、これ以外の方向のベクトルは求めたい方向の位置ずれ量を検出するのに適合した方向のベクトルである。例えば、図2に示す如く、ワークの接合部(線)上に、輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点が存在する場合、接合部(線)の方向と平行な方向のベクトルは不適合な方向のベクトルであるが、それ以外の方向のベクトルは適合した方向のベクトルである。ここでは、ベクトルV方向の成分のみを補正する例を示しており、接合部等の線と垂直な方向にベクトルを設定している。
【0025】
本発明においては、教示時の特徴点の位置Sと再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを、位置ずれ量検出方向に関するベクトルVの方向のベクトルvとそれ以外のベクトル(ΔS−v)とに分解し、ワークに適合した方向の位置ずれ量を選択できるという特長がある。ワークの位置ずれ量はワークの形状や特徴及びワークの置き方に合わせて任意の方向に設定できることが望ましく、本発明はそのようにすることができる特長がある。
【0026】
本発明において、センサとしてはワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサが用いられ、このレーザセンサにより輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点はその輪郭形状に応じて決まり、これは例えばワークのエッジや接合部に存在する。かかるワークのエッジや接合部は連続した線であるので、その線上のどの位置をセンサで捕らえたかは分からず、センサで捕らえた位置はワークのずれ量によって変わり、例えば、図3や図4に示す如くワークの接合部(線)方向のずれ量によって変わる。しかし、ワークのエッジや接合部を形成する線方向以外の方向のワークの位置ずれは分かる。
【0027】
例えば、教示時にワークである板のエッジ(稜線)上の点を特徴点として検出し、再生時に板のエッジ上の点を特徴点として検出したとする。この板がエッジ方向(稜線の方向)にもずれていたとすると、教示時と再生時とで板のエッジ上の違う場所を検出していることになり、その違いによるエッジ方向のずれ量を知ることはできない。しかしながら、エッジ方向とは垂直な方向のずれ量は検出できる。エッジ方向のずれ量については、この方向のずれ量が検出できるような別の個所(例えば上記エッジと直角な方向の別のエッジ)について上記と同様の検出を行うことにより、知ることができる。
【0028】
前記の板のエッジの例の場合の如く測定不能である方向が分かっている場合、この測定不能の方向と平行な方向を位置ずれ量検出方向に関するベクトルVと定義し、教示時の特徴点の位置Sと再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSのV方向の成分vを求め、これよりベクトル演算によってΔS−v(=u)を求め、これを位置ずれ量とすればよい。この場合の例を図5に示す。一方、求めるべき位置ずれ量の方向を直接指定した方が分かりやすい場合がある。この場合は、求めるべき位置ずれ量の方向を位置ずれ量検出方向に関するベクトルVと定義し、教示時の特徴点の位置Sと再生時の特徴点の位置S' の差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSのV方向の成分vを求め、これを位置ずれ量とすればよい。この場合の例を図2〜4に示す。尚、図2〜4は、よく似ているが、図3や図4は、ワークの接合部(線)方向にも位置ずれがあり、接合部(線)上の教示時の特徴点の位置Sと再生時の特徴点の位置S' とは相違しており、また、図3と図4との間でも相違の仕方が異なっていることを示すものであり、図2は、ワークの接合部(線)方向の位置ずれがなく、接合部(線)上の教示時の特徴点の位置Sと再生時の特徴点の位置S' とは相違がないことを示すものである。
【0029】
前記の如く、1回の測定では位置ずれ量測定不能の方向が存在する場合、その測定不能の方向の位置ずれ量を測定するためには別の測定点(ロボットの姿勢)を用いた2回目の測定が必要となる。しかし、ワークの端面が別の板に押し当てられている場合の如くワークが拘束されており、1回目の測定での位置ずれ量測定不能の方向へは絶対に位置ずれが生じないことが確実である場合には、2回目の測定は不要となる。前記の如く1回目の測定に加えて2回目の測定を行う場合の例を図6に示す。
【0030】
前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを、前記測定点におけるロボットの姿勢に到る直前のロボットの動作に基づいて設定するようにした場合(第2発明)、次のような利点がある。即ち、上記ベクトルVをロボットの動作と関連づけて設定するようにすると、現場でワーク形状を見て簡単に上記ベクトルVを設定できるようになり、利便性が向上する。上記ベクトルVは必ずしもロボットの動作と関連づけて設定する必要はなく、例えば、測定点を設定する際に、この測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを数値的にインプットしてもよいが、ワークの置かれ方によっては、このような数値を求めることは必ずしも容易ではなく、ロボットへの教示をしながら、ロボットを動作させながら、その動きによって上記ベクトルVを設定した方が一目瞭然で分かりやすい。
【0031】
前記測定点を複数とし、ワークの位置ずれ量の方向が互いに異なる複数のワークの位置ずれ量を求め、この複数のワークの位置ずれ量を加え合わせると、二次元または三次元のワークの位置ずれ量を求めることができる(第3発明)。
【0032】
本発明において、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサとしては、その種類は特には限定されず、種々のものを用いることができ、例えば、ワークにレーザスポット光をスキャニングするか、レーザシート光を照射し、それによりあらわれた輝線を撮像し、画像処理するような機構を有するレーザセンサを用いることができる。
【0033】
ロボットとしては、その種類は特には限定されず、種々のものを用いることができ、本発明は溶接ロボットに適用可能である他、例えば、塗装ロボットやシーリングロボット、ハンドリングロボット等に適用可能である。
【0034】
尚、前記従来技術2(スキャンセンサーによる加工開始点の検出方式)の場合には、特定の点を予め定設し、その点に対してスキャンセンサーにて境界を計測しながらセンサー自身を移動(スキャン)させる必要があり、この動作はセンサーのサンプリング速度や計測精度の点から高速にできないので、計測に時間がかかる。これに対し、本発明の場合には、前述の如く検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるので、計測は一瞬で終わり、計測時間は極めて短いという利点がある。但し、本発明では三次元のワークの位置ずれ量を求める際には少なくとも2回計測する必要があるが、その場合でも計測時間(合計)は前記従来技術2の場合よりも短い。
【0035】
【実施例】
本発明の実施例に係るワークの位置ずれの測定に用いた装置の概要を図7に示す。この装置は、図7に示す如く、基本的には、溶接ロボットのアーム部(手首部)に、ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサが設けられたものであり、このレーザセンサはセンサ制御装置とつながり、これにより制御され、一方、溶接ロボットはロボット制御盤とつながり、これにより制御される。このレーザセンサは、ワークにレーザスポット光をスキャニングし、それによりあらわれた輝線を撮像する方式のものである。
【0036】
上記装置を用いて、図6に示すワークの位置ずれの測定を行ってワークの位置ずれ量を求めた。そして、このワークの位置ずれ量に基づいて溶接ロボットへの教示データを補正し、この補正後の教示データに基づいて溶接を行った。以下、この詳細を説明する。
【0037】
先ず、全体の流れのアウトラインを図8にて説明する。
【0038】
第1ステップにて、補正量ベクトルrの初期化を行う。
第2ステップにて、教示データが格納されているメモリから位置決め位置を順次読みだして位置決めを行い、ロボットをレーザセンサにてセンシングする位置P2へ移動する。
第3ステップにて、ロボット教示点P1からP2に向かう方向の垂直成分の補正量を導出し、補正用メモリに格納する。必要があれば、その補正量を用いて以降のロボット動作を補正する。
第4ステップにて、教示データが格納されているメモリから位置決め位置を順次読みだして位置決めを行い、ロボットをレーザセンサにてセンシングする位置P4まで移動する。
第5ステップにて、ロボット教示点P3からP4に向かう方向の成分の補正量vを導出する。
第6ステップにて、第3ステップ及び第5ステップでの補正量の合成量を補正量として以降のロボット動作に反映させる。
【0039】
ここで、上記図8における第3ステップでのu方向及び第5ステップでのv方向の補正方法について図9を用いて説明する。
【0040】
第7ステップにて、レーザセンサにワークの特徴点に応じた検出ロジックを使用した検出の指令を送る。レーザセンサによるワークの見え方及び特徴点の一例を図10に示す。本発明の実施例の場合、図8の第3ステップの時には、図10の(a) のタイプの特徴点となる。
第8ステップにて、検出位置S' をレーザセンサから読み込む。
第9ステップにて、メモリから教示時に計測した検出位置Sを読み込み、S' とSの差分ベクトルΔSを演算する。これを式で表現すると、次のようになる。ΔS=S' −S
第10ステップにて、ロボット教示位置Pnとその一個前の(直前の)ロボット教示位置P(n−1)をメモリから読み出し、第11ステップにて点P(n−1)からPnへ向かうベクトルを正規化した方向ベクトルVを作成する。これを式で表現すると、n=2のとき、次のようになる。
V=(P1からP2へ向かう方向ベクトル)/(P1からP2へ向かう方向ベクトルの大きさ)
第12ステップにて、差分ベクトルΔSを方向ベクトルVの方向とそれ以外の方向に分離する。これを式で表現すると、次のようになる。
α=V・ΔS
v=αV
u=ΔS−v
第13ステップにて、補正ベクトルrに第12ステップにて求められた位置ずれ補正ベクトルu、vのどちらかを足し込む。
【0041】
次に、上記差分ベクトルΔS、v、u等の測定方法、即ち、図6に示すワークの位置ずれの測定方法について説明する。
【0042】
先ず、ロボットへの教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの姿勢を測定点P2として設定すると共に、前記測定点P2における輪郭形状検出対象平面を設定する。そして、前記測定点P2においてレーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点として接合部上の点すなわち線分L1上の点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶させる。更に、前記測定点P2における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVとしてP1P2(P1からP2へ向かう方向ベクトル)を正規化したベクトルを設定しておく。
【0043】
ここで、P1は測定点P2の直前の教示点であり、教示点P1はP1P2が線分L1と平行になるように位置決めされている。即ち、接合部すなわち線分L1は連続した線であるので、この線分L1の線方向の位置ずれは測定の対象外であり、この線方向以外の方向の位置ずれが測定の対象となる。そこで、前記教示時に設定された特徴点の位置Sと後で再生時に測定される特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSから線分L1の線方向と垂直な方向の成分uを導出できるように、教示点P1はベクトルV(P1P2)が線分L1と平行になるように位置決めされている。
【0044】
更に、ロボットへの教示時に、測定点P4を設定すると共に、前記測定点P4における輪郭形状検出対象平面を設定する。そして、前記測定点P4においてレーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点として前記線分L1と垂直なエッジ上の点すなわち線分L2上の点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶させる。更に、前記測定点P4における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVとしてP3P4(P3からP4へ向かう方向ベクトル)を正規化したベクトルを設定しておく。
【0045】
ここで、P3は測定点P4の直前の教示点であり、差分ベクトルΔSから線分L2の線方向と垂直な方向の成分vを導出できるようにP3P4が線分L2と垂直(線分L1と平行)になるように位置決めされている。
【0046】
次に、ロボットの再生時に、ロボットの姿勢が前記測定点P2に到達した時点において、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点として接合部上すなわち線分L1上の点の位置S' を測定する。そして、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、さらに成分u(=ΔS−v)を求める。この成分uは、線分L1の線方向と垂直な方向のワークの位置ずれ量である。
【0047】
更に、ロボットの再生時に、ロボットの姿勢が前記測定点P4に到達した時点において、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点としてエッジ上すなわち線分L2上の点の位置S' を測定する。そして、前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求める。この成分vは、線分L2の線方向と垂直な方向のワークの位置ずれ量であって、線分L1の線方向と平行な方向のワークの位置ずれ量である。
【0048】
このようにしてワークの位置ずれ量を求めた。そして、これらのワークの位置ずれ量に基づいて溶接ロボットへの教示データを補正し、この補正後の教示データに基づいて溶接を行った。この結果、ワークの位置ずれによる影響を受けることなく溶接を行うことができた。
【0049】
【発明の効果】
本発明に係るワークの位置ずれの測定方法によれば、ロボットに教示再生動作を行なわせる際の再生時におけるワークの位置ずれの測定を行うに際して、前記従来技術1(溶接ワイヤによるタッチセンシング方式)及び前記従来技術2(スキャンセンサーによる加工開始点の検出方式)の場合のような問題点がなく、特には、検出対象の点として特定の点を予め定めることなく、ワークの位置ずれを測定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶接ワイヤによるタッチセンシング方式による従来のワークの位置ずれの測定方法の概要を示す模式図である。
【図2】 本発明に係るワークの位置ずれの測定方法の一例の概要を示す模式図である。
【図3】 本発明に係るワークの位置ずれの測定方法の一例の概要を示す模式図である。
【図4】 本発明に係るワークの位置ずれの測定方法の一例の概要を示す模式図である。
【図5】 本発明に係るワークの位置ずれの測定方法の一例の概要を示す模式図である。
【図6】 本発明の実施例に係るワークの位置ずれの測定方法の概要を示す模式図である。
【図7】 本発明の実施例に係るワークの位置ずれの測定に用いた装置の概要を示す模式図である。
【図8】 本発明の実施例に係るワークの位置ずれの測定及び補正についてのアウトラインを示す図である。
【図9】 本発明の実施例に係る補正方法の流れを示す図である。
【図10】 レーザセンサによるワークの見え方及び特徴点についての5例を示す図であって、図10の (a), (b), (c), (d), (e)はそれぞれ5例の中の一例を示すものである。

Claims (3)

  1. ワークを平面で切ったときの断面の輪郭形状を検出することができるレーザセンサを用い、前記センサをアーム部に取り付けたロボットに教示再生動作を行なわせるときに、前記センサを用いて再生時のワークの位置ずれを測定する方法であって、
    教示時に、ワークの位置ずれを測定するときのロボットの全体の姿勢により定まる位置を測定点として設定すると共に、前記測定点における輪郭形状検出対象平面および前記センサにより前記輪郭形状検出対象平面において検出されるワークの輪郭線上の特徴点を設定し、この特徴点の位置Sを記憶し、さらに前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを定義しておき、
    再生時に、ロボットの全体の姿勢により定まる位置が前記測定点に到達した時点で、前記レーザセンサにより前記輪郭形状検出対象平面におけるワークの輪郭線を検出し、この輪郭線上の特徴点の位置S' を測定し、
    前記教示時の特徴点の位置Sと前記再生時の特徴点の位置S' との差分ベクトルΔSを演算し、この差分ベクトルΔSの前記ベクトルV方向の成分vを求め、この成分vあるいはΔS−vをワークの位置ずれ量とすることを特徴とするワークの位置ずれの測定方法。
  2. 前記測定点における位置ずれ量検出方向に関するベクトルVを、前記測定点におけるロボットの全体の姿勢により定まる位置に到る直前のロボットの動作に基づいて設定する請求項1記載のワークの位置ずれの測定方法。
  3. 前記測定点を複数とし、ワークの位置ずれ量の方向が互いに異なる複数のワークの位置ずれ量を求め、この複数のワークの位置ずれ量を加え合わせ、二次元または三次元のワークの位置ずれ量を求める請求項1又は請求項2記載のワークの位置ずれの測定方法。
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