JP4518575B2 - タイヤ用水性艶出剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用水性艶出剤組成物に関し、より詳細には、自動車タイヤ表面に艶を得ることを目的として、タイヤに塗布する水性液体ワックス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車タイヤ用の艶出剤として、分子量約200〜1000程度の低分子量の界面活性剤により乳化されたシリコーンオイルエマルションが知られている。例えば、特開昭63−248897号公報、特開昭63−286482号公報、特開平1−117978号公報 、特開平1−207369号公報、特開平6−72239号公報及び特開平6−72240号公報等に記載のタイヤ用艶出剤ないし艶出方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のタイヤ用艶出剤は、水への溶解性が高くタイヤに塗布されても水に簡単に流されてしまうため、雨等により効果がなくなるという問題点があった。本発明は、前記問題点を解決し、タイヤに塗布した後も雨等により簡単に流されずに耐久性を有する水性タイヤワックスを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高分子系乳化剤を使用して得られた水系エマルションをタイヤワックスとして使用することにより耐水性等の耐久性のある水性タイヤワックスが得られることを見い出し本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明によれば、分子量が10000以上の高分子乳化剤でシリコーンオイルを乳化して成り、前記高分子乳化剤は、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインのうちの1種以上である水性タイヤワックス(請求項1及び2)により上記目的を達成することができる。また、この高分子乳化剤においては浸透性が低くタイヤゴムや自動車ボデイ塗装面に対する影響も低く押さえられる。以下、本発明の水性タイヤワックスにおける高分子乳化剤は、分子量が10000以上である。
【0006】
前記高分子乳化剤は、分子量が10000以上であり(請求項1)、かつアクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインのうちの1種以上である(請求項1及び2)。前記アクリル酸系高分子は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸・メタクリル酸共重合体のうちの1種以上である(請求項3)。
【0007】
前記水性タイヤワックスは、好ましくは、水性相にシリコーンオイル相が分散したO/W型エマルションである(請求項4)。なお、本発明において数値範囲の記載は、両端値のみならず、その中に含まれる全ての任意の中間値を含むものとする。
【0008】
【発明の実施の形態】
(水性タイヤワックス)
本発明の水性タイヤワックスは、高分子乳化剤でシリコーンオイルを乳化して成るもの、即ち、高分子乳化剤により水性相にシリコーンオイル相が分散したO/W型エマルションである。
【0009】
高分子乳化剤の分子量は、1万以上にし、通常は2万〜500万、好ましくは2万〜400万程度、より好ましくは5万〜300万、さらに好ましくは7万〜200万、特に10万〜100万が好適である。高分子乳化剤は、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインのうちの1種又は2種以上にする。
【0010】
好ましいアクリル酸系高分子には、アクリル酸の重合体であるポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム等)、アクリル酸及びこれと共重合する単量体の共重合体(アクリル酸・メタクリル酸共重合体等)があり、これらのうちの1種以上を用いることができる。
【0011】
シリコーンオイルは、本発明の水性タイヤワックスとしてタイヤに塗布した場合に艶出し性能を発揮するシリコーンであれば良く、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等の各種のシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルにすることができる。
【0012】
シリコーンオイルの粘度(動粘度)は、好ましくは10cst〜100,000cstであり、より好ましくは50cst〜50,000cstであり、さらに好ましくは100cst〜20,000cstである。なお、1cst(センチストークス)=1mm2/sである。
【0013】
水性相は、好ましくは、親水性を有する溶媒にし、通常は水で良いが、イソプロピルアルコール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の親水性溶媒の1種以上で水の一部を置き換えて用いることができる。
【0014】
本発明の水性タイヤワックスにおける高分子乳化剤の含有率は、シリコーンオイルを乳化させることができる最小限の含有率ないしそれ以上にすることができる。また、本発明の水性タイヤワックスにおけるシリコーンオイルの含有率が高くなるにつれて、水性タイヤワックスの粘度が高くなり、使用時の作業性(塗布性等)が低下する傾向がある。
【0015】
本発明の水性タイヤワックスにおけるシリコーンオイルの重量Aと高分子乳化剤の重量Bの重量比A:Bの範囲は、好ましくは5〜60:0.01〜5にし、より好ましくは10〜50:0.05〜2にし、さらに好ましくは15〜40:0.1〜1.0にする。
【0016】
本発明の水性タイヤワックスにおけるシリコーンオイルの含有率は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。シリコーンオイルが5重量%より少ない場合には撥水性及び艶が悪くなる傾向がある。また、60重量%よりも多い場合には乳化の状態が不均一になったり、シリコーンオイル相中に水性相が分散したW/O型エマルションとなり安定したエマルションを得ることができない傾向がある。
【0017】
本発明の水性タイヤワックスにおける高分子乳化剤の含有率は、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.05〜2.0重量%、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0018】
本発明の水性タイヤワックスには、より一層レベリング性を向上させるため、一般的な界面活性剤を含有させることができる。なお、「レベリング性を向上させる」とは、水性タイヤワックスをタイヤに塗布した際のはじきや塗りむらを少なくしてワックス塗膜層の厚さの均一性を高めることである。即ち、本発明の水性タイヤワックスは、前記一般的な界面活性剤を含有しない場合でも、ある程度のレベリング性を有するので水性タイヤワックスをタイヤに塗布した際のはじきや塗りむらが少ないが、レベリング性を向上させる添加物(レベリング性向上剤)を含有させることによって、より一層レベリング性を向上させることができる。
【0019】
前記一般的な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、石鹸、フッソ系活性剤、シリコーン系活性剤等がある。
本発明の水性タイヤワックスには、このような界面活性剤の1種以上を好ましくは、0.001〜5.0重量%、より好ましくは0.01〜1.0重量%含有させることができる。
【0020】
また、より一層レベリング性を向上させると共に、塗布前及び塗布後の凍結を防止するために、本発明の水性タイヤワックスには、親水性溶媒を含有させることができる。
本発明の水性タイヤワックスには、このような親水性溶媒の1種以上を好ましくは、50重量%以下、より好ましくは1.0〜20重量%含有させることができる。
【0021】
さらに、本発明の水性タイヤワックスには、前記界面活性剤及び親水性溶媒以外のpH調製剤、防腐剤、着色剤、香料等の各種添加剤を必要に応じて適宜含有させることができる。
【0022】
本発明の水性タイヤワックスは、スプレー等の霧化手段により霧化してタイヤに噴霧して塗布したり、スポンジ等にいったん付着させてからタイヤに塗布することができる。そして本発明の水性タイヤワックスは次の様にタイヤに艶を与える。
例えば、自動車のタイヤ等の艶を出す場合には、タイヤに本発明の水性タイヤワックスをハンドスプレーで噴き付ける、又はスポンジに本発明の水性タイヤワックスを少量取りタイヤに塗布する。これにより、タイヤに艶が出てさらにこの艶は耐水性を持つ。
【0023】
(水性タイヤワックスの製造方法)
本発明の水性タイヤワックスは、プレゲルを形成する従来の水性タイヤワックスの製造方法と同様の製造方法で製造することができる。
即ち、シリコーンオイルに高分子乳化剤を加え高速攪拌して均一にした後、少量の水を加えプレゲルを形成し、このプレゲルに残りの水を加えて乳化する製造方法で製造することができる。
また、シリコーンオイルに高分子乳化剤を加え、攪拌した後、少量の水に溶かした高分子乳化剤を徐々に加えてプレゲルを形成し、このプレゲルに水を徐々に加えて乳化する製造方法により製造することができる。
【0024】
本発明の水性タイヤワックスは、高分子乳化剤を用いて乳化するので、前記従来の水性タイヤワックスのようにプレゲルを形成することなしに、シリコーンオイルに高分子乳化剤を加え、攪拌した後、水を全量加え乳化機で乳化するという単純な工程で容易に製造することができる。かかる点からしても、本発明における高分子乳化剤は、シリコーンオイルに対して極めて良好な乳化性を有することがわかる。
【0025】
本発明の水性タイヤワックスは、例えば、上記シリコーンオイルの1種以上に、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインの1種以上である高分子乳化剤の1種以上を加え、必要であれば前記高分子乳化剤の1種以上とレベリング性向上のための一般的な界面活性剤の1種以上を加え、攪拌した後、水を全量加え乳化機で乳化してシリコーンオイル相が水相に分散したO/W型エマルションとして得ることかできる。
【0026】
シリコーンオイルの1種以上の添加量、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインの1種以上である高分子乳化剤の1種以上の添加量、及び水の添加量は、製造後に得られる水性タイヤワックスにおける重量比又は含有率が上述の範囲になるように適宜設定することができる。
レベリング性向上のための一般的な界面活性剤の1種以上の添加量は、製造後に得られる水性タイヤワックスにおける含有率が上述の範囲になるように適宜設定することができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳説する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、とくに断らない限り、%は重量%を表すこととする。
【0028】
先ず、本発明の水性タイヤワックス及び比較のための水性タイヤワックスを作成した。
即ち、シリコーンオイルと高分子乳化剤を加え攪拌し、水を加え乳化機で乳化し、さらに添加物を含有させる場合には添加物を添加することにより、本発明の実施例1〜4の水性タイヤワックスを得た。そして比較のため比較例1〜5の水性タイヤワックスを従来の製造方法にしたがって別に作成した。
【0029】
(実施例1)
ジメチルシリコーンオイル(粘度1000cst) 20.0%
高分子乳化剤(ポリアクリル酸) 0.1%
水 79.9%
合 計 100.0%
【0030】
(実施例2)
ジメチルシリコーンオイル(粘度1000cst) 20.0%
高分子乳化剤(アクリル酸・メタクリル酸共重合体) 0.1%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%
水 79.4%
合 計 100.0%
【0031】
(実施例3)
ジメチルシリコーンオイル(粘度100000cst) 5.0%
ジメチルシリコーンオイル(粘度150cst) 15.0%
高分子乳化剤(アラビアゴム) 0.1%
オレイン酸アミン石鹸 1.0%
水 78.9%
合 計 100.0%
【0032】
(実施例4)
ジメチルシリコーンオイル(粘度1000cst) 15.0%
アミノ変性シリコーンオイル 5.0%
高分子乳化剤(カゼイン) 0.1%
水 79.9%
合 計 100.0%
【0033】
(比較例1)
ジメチルシリコーンオイル(粘度1000cst) 20.0%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 3.0%
水 77.0%
合 計 100.0%
【0034】
(比較例2)
ジメチルシリコーンオイル(粘度1000cst) 30.0%
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル 4.0%
水 66.0%
合 計 100.0%
【0035】
(比較例3)
ジメチルシリコーンオイル(粘度20000cst) l0.0%
ジメチルシリコーンオイル(粘度350cst) 40.0%
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 3.0%
ソルビタン脂肪酸エステル 1.0%
水 46.0%
合 計 100.0%
【0036】
(比較例4)
ジメチルシリコーンオイル(粘度10OOcst) 20.0%
オレイン酸モルホリン石鹸 2.5%
水 77.5%
合 計 100.0%
【0037】
(比較例5)
ジメチルシリコーンオイル(200Ocst) 20.0%
アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩 2.0%
水 78.0%
合 計 100.0%
【0038】
次に、製造した実施例1〜4及び比較例1〜5の各水性タイヤワックスについて下記の項目について評価した。
【0039】
[評価方法]
(1)塗布性
タイヤに評価対象の水性タイヤワックスを噴霧し、ウエス又はスポンジで塗り延ばした後、タイヤ表面の塗りむらの状態を肉眼で観察し評価する。
○…タイヤの表面に塗りむらがない
△…タイヤの表面に少し塗りむらがある
×…タイヤの表面に塗りむらがある
【0040】
(2)艶
タイヤに評価対象の水性タイヤワックスを噴霧し、ウエス又はスポンジで塗り延ばした後、タイヤ表面の艶の状態を肉眼で観察し評価する。
○…タイヤの表面にタイヤワックス塗布前より艶がとてもある
△…タイヤの表面にタイヤワックス塗布前より艶がある
×…タイヤの表面にタイヤワックス塗布前と同等の艶がある
【0041】
(3)撥水性
タイヤに評価対象の水性タイヤワックスを噴霧し、ウエス又はスポンジで塗り延ばした後、タイヤに水をシャワー状にかけ、撥水の状態を肉眼で観察し評価する。
○…タイヤの表面に撥水が見られる
△…タイヤの表面に少し撥水が見られる
×…タイヤの表面に撥水は見られない
【0042】
(4)耐久性
タイヤを装着した自動車のタイヤに評価対象の水性タイヤワックスを噴霧し、ウエス又はスポンジで塗り延ばした後、洗車機で自動車を1度洗浄し艶及び撥水の状態を肉眼で観察し評価する。
○…洗車前と同じ位の艶、撥水がある
△…洗車前よりやや艶、撥水が劣る
×…ほとんど艶、撥水が残っていない
【0043】
[評価結果]
実施例1〜4及び比較例1〜5の各水性タイヤワックスの評価結果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
請求項1〜4の水性タイヤワックスは、分子量が10000以上の高分子乳化剤でシリコーンオイルを乳化して成り、前記高分子乳化剤は、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインのうちの1種以上であるので次の基本的な効果を奏することができ、請求項3〜4の水性タイヤワックスは次の基本的な効果がより一層顕著である。
【0046】
▲1▼タイヤワックスとして要求される諸特性(タイヤに対する塗布性、塗布後の艶、塗布後の撥水性等)を維持すると共に、タイヤに塗布した後も雨等により簡単に流されずに耐久性(特に耐水性)を有する。
即ち、本発明の水性タイヤワックスは、安定性が高く、耐久性(特に耐水性)を保ち、雨や洗車等でタイヤが水に濡れることがあっても艶を持続することができるという特性を有しつつ、自動車のタイヤに容易に塗布することができ、厚さの均一性が高いシリコーンオイルの被膜をタイヤの表面に形成して艶を与えることができる。
【0047】
▲2▼タイヤ及び塗装面等に対する悪影響がなく、溶剤タイプのものの様に危険物等の法規制を受けない。
▲3▼高分子乳化剤はシリコーンオイルに対して極めて良好な乳化性を有するので、単純な製造方法で簡単に製造することができる。
Claims (4)
- 分子量が10000以上の高分子乳化剤でシリコーンオイルを乳化して成り、前記高分子乳化剤は、アクリル酸系高分子、アラビアゴム及びカゼインのうちの1種以上であることを特徴とする水性タイヤワックス。
- 分子量が10000以上の高分子乳化剤でシリコーンオイルを乳化して成り、前記高分子乳化剤は、アクリル酸系高分子であり、炭素数8〜30の疎水基及びイオン性を示す基を有する低分子イオン性界面活性剤の含有率は0重量%であることを特徴とする水性タイヤワックス。
- 前記アクリル酸系高分子は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム及びアクリル酸・メタクリル酸共重合体のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の水性タイヤワックス。
- 水性相にシリコーンオイル相が分散したO/W型エマルションであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性タイヤワックス。
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