JP4518405B2 - 内燃機関の燃料供給制御装置 - Google Patents

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この発明は、内燃機関の燃料供給を制御する装置に関する。
内燃機関(エンジン)において高負荷運転状態が継続すると排気系の触媒温度が高くなり、触媒の熱損、焼損を生じるおそれがある。特許文献1には、高負荷運転状態が一定時間以上継続すると、空燃比フィードバック制御を停止して、燃料の供給量を増やして気筒での燃焼温度を下げ、触媒の性能を維持することが記載されている。
また、特許文献2には、高負荷運転時に燃料を増量する際、触媒の温度を推定し、この推定温度が所定値以上であるとき、増量を実行して触媒の熱損を抑制することが記載されている。
特開昭53-8427号公報 特許第3262157号公報
エンジンが高負荷運転の後、クルーズ状態に入ったようなとき、エンジンの回転数など負荷状態を示すパラメータに応じて推定される触媒温度は低くなるが、実際の触媒温度は、その前の高負荷運転の影響で上昇を続ける。したがって、特許文献2に示される手法では、触媒の熱損を生じるおそれがある。
上記の課題を解決するため、この発明の燃料供給制御装置は、内燃機関の排気系に設けられた触媒の温度を該内燃機関の運転状態に応じて推定する温度推定手段と、推定された温度が基準値より大きいとき内燃機関に供給する燃料を増量する手段と、推定された温度の今回値と前回値との差をなまし演算することによって温度の変化量を求める算出手段と、を備え、基準値は、前記変化量が増大するにしたがって小さい値をとり、前記なまし演算のなまし係数は、前記推定された温度の変化度合いに応じて変えるようにした。
このようにすることにより、実際の触媒温度と推定される触媒温度との間の誤差が大きくなる状況においても、適切に触媒の熱損防止のための燃料増量を開始することができ、触媒の劣化を抑制することができる。
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の実施形態に従う、内燃機関およびその制御装置の全体構成図である。
電子制御ユニット(以下、「ECU」)という)1は、車両の各部から送られてくるデータを受け入れる入力インターフェース1a、車両の各部の制御を行うための演算を実行するCPU1b、読み取り専用メモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を有するメモリ1c、および車両の各部に制御信号を送る出力インターフェース1dを備える。メモリ1cのROMには、車両の各部の制御を行うためのプログラムおよび各種のデータが格納されている。ROMは、EPROMのような書き換え可能なROMでもよい。RAMには、CPU1bによる演算のための作業領域が設けられる。車両の各部から送られてくるデータおよび車両の各部に送り出す制御信号は、RAMに一時的に記憶される。
内燃機関(以下、「エンジン」という)2は、複数の気筒を備える。一例としてV型6気筒のエンジンが示されており、第1の気筒群(以下、第1のバンクと呼ぶ)21は3つの気筒(#1〜#3)を備え、第2の気筒群(以下、第2のバンクと呼ぶ)22も3つの気筒(#4〜#6)を備える。
エンジン2には、気筒休止機構23が設けられている。気筒休止機構23は、エンジン2の潤滑油を用いて油圧駆動される。気筒休止機構23は、第1のバンク21および第2のバンク22の6つの気筒をすべて稼働させる全気筒運転と、第1のバンク21の3つの気筒への燃料供給を停止する気筒休止運転との間で、エンジン2を切り換える。気筒休止運転を実施するときは、気筒休止機構23により、第1のバンク21の3つの気筒の吸気弁および排気弁が閉弁状態に維持される。
吸気管3は、スロットル弁4の下流で、第1のバンクに至る通路3aと、第2のバンクに至る通路3bとに分岐する。さらに、通路3aは、第1のバンクの気筒#1〜#3のそれぞれに至る通路に分岐し、通路3bは、第2のバンクの気筒#4〜#6のそれぞれに至る通路に分岐する。
燃料噴射弁5は、それぞれの気筒に至る通路に、気筒ごとに設けられる。図には、簡略化のため、1つの燃料噴射弁5のみが示されている。燃料噴射弁5は、図示しない燃料タンクから燃料の供給を受け、該燃料を噴射する。燃料噴射弁5の開弁時間は、ECU1からの制御信号によって制御される。
吸気管3の上流側にはスロットル弁4が配されている。スロットル弁4に連結されたスロットル弁開度センサ(TH)6は、スロットル弁4の開度に応じた電気信号をECU1に送る。スロットル弁4の開度は、ECU1からの制御信号によって制御される。スロットル弁4を介して取り込まれた空気は、吸気管3を通り、燃料噴射弁5から噴射される燃料と混合して各気筒に供給される。
スロットル弁4の上流には、エアフローメータ(AFM)7が設けられている。エアフローメータ7は、スロットル弁4を通過する空気量を検出し、それをECU1に送る。エアフローメータ7は、ベーン式エアフローメータ、カルマン渦式エアフローメータ、および熱線式エアフローメータ等であることができる。
吸気管圧力(Pb)センサ8および吸気温(Ta)センサ9は、吸気管3のスロットル弁4の下流側に設けられており、吸気管圧力Pbおよび吸気温TAをそれぞれ検出してECU1に送る。
エンジン水温(TW)センサ11は、エンジン2のシリンダブロックの、冷却水が充満した気筒周壁(図示せず)に取り付けられ、エンジン冷却水の温度TWを検出してECU1に送る。
エンジン2には、クランク角(CRK)センサ12が設けられている。クランク角センサ12は、クランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU1に出力する。CRK信号は、所定のクランク角(たとえば、30度)で出力されるパルス信号である。ECU1は、該CRK信号に応じ、エンジン2の回転数NEを算出する。さらに、TDC信号が、ピストンのTDC位置に関連したクランク角度で出力され、ECU1に送られる。
第1のバンクには排気管15aが連結されており、第1のバンクの気筒から排出されるガスは、該排気管15aに流入する。第2のバンクには排気管15bが連結されており、第2のバンクの気筒から排出されるガスは、該排気管15bに流入する。
排気管15aおよび15bのそれぞれに、広域空燃比センサ(LAF)センサ16aおよび16bが設けられている。LAFセンサ16aおよび16bは、リーンからリッチにわたる広範囲の空燃比領域において、排気ガス中の酸素濃度をリニアに検出する。検出された酸素濃度は、ECU1に送られる。
LAFセンサ16aおよび16bの下流には、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒装置17aおよび17bがそれぞれ設けられている。O2(排ガス)センサ18aおよび18bが、触媒装置17aおよび17bの下流に設けられている。O2センサ17aおよび17bは、2値型の排気ガス濃度センサである。O2センサ18aおよび18bは、空燃比が理論空燃比よりもリッチであるとき高レベルの信号を出力し、空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき低レベルの信号を出力する。出力された電気信号は、ECU1に送られる。
排気管15aおよび15bは、O2センサ18aおよび18bの下流にて、排気通路15に合流する。排気通路15に、さらなる触媒装置、LAFセンサおよびO2センサを設けてもよい。
車速(VP)センサ19は、エンジン2が搭載された車両の速度VPを検出してECU1に送る。
各種センサからの入力信号はECU1の入力インターフェース1aに渡される。入力インターフェース1aは、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する。CPU1bは、変換されたデジタル信号を処理し、メモリ1cに格納されているプログラムに従って演算を実行し、車の各部のアクチュエータに送る制御信号を作り出す。この制御信号は出力インターフェース1dに送られ、出力インターフェース1dは、燃料噴射弁5などのアクチュエータに制御信号を送る。
図2(A)および(B)において、波形TCTMは、エンジン回転数NEおよび吸気管内の絶対圧力PBに基づいて、予め用意されROMに格納されている触媒温度マップを参照して算出される触媒温度のマップ値TCTMを示す。TCTMの算出方法は、前述の特許文献2に記載されている。
波形TCTは、触媒温度マップ値TCTMをなまし演算して得られる触媒温度推定値であり、なまし係数をCで表すと、次の式で求められる。
TCT(i)=C * TCTM + (1-C) * TCT(i-1) (1)

図2(A)は、エンジンが比較的短い時間、高負荷状態にあった後、クルーズ状態に入った状態を示している。このような状態では、TCTMは、エンジンの負荷を表すエンジン回転数NEおよび吸気管内圧PBに基づいてマップから求められる値であるので、クルーズ状態に入ったとたんに低い値になる。これに応じて、TCTMのなまし値である触媒温度推定値TCTは図2(A)に示すように変化する。ところが、実際には、触媒の温度は熱マスにより、高負荷運転から低負荷運転に移った後もしばらく上昇を続けるので、図2(A)の触媒温度推定値TCTは、実際の触媒温度との乖離が大きくなる。
図2(B)は、高負荷運転状態から徐々に低負荷運転状態に移るときの触媒温度マップ値TCTMおよび触媒温度推定値TCTを表している。この場合は、触媒温度推定値TCTと実際の触媒温度との間に大きな乖離は生じない。
この発明の装置は、図2(A)のような運転状態の変化があったときにも、触媒の熱損を抑制するための燃料増量を適切に実施する。図3は、この発明の一実施例の燃料供給制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
図3を参照すると、触媒温度推定部31は、式(1)により触媒温度の推定値TCTを算出する。減算部33は、TCTの今回値TCTと前回値TCTZとの差DTCTBSを算出する。DTCTBSは、なまし計算部41でなまし計算される。この計算に使われるなまし係数Cdは、DTCTBSが正であるか負であるかによって異なる値をとる。すなわち、判断部35がDTCTBSが正であるかどうかを判断し、正であれば相対的に大きいなまし係数Cdを設定し(37)、負であれば相対的に小さいなまし係数Cdを設定する(39)。
なまし計算部41は、次の式にしたがって、温度変化DCTCBSのなまし値DTCTを計算する。
DTCT(i) = Cd * DTCTBS + (1-Cd) * DTCT(i-1) (2)

基準値テーブル43は予め用意されROMに格納されており、こうして求めた触媒温度推定値の変化を示す値DTCTに対応して、触媒の熱損を抑制するための燃料増量を開始する温度の基準値tctxを与える。増量決定部45は、触媒推定温度TCTが基準値tctxより大きいとき、燃料増量を決定し、それ以外のときは、燃料増量を行わない。
図4は、この発明の一実施例における、触媒の熱による劣化を抑制するための燃料増量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。まず、初期化フラグが1になっているかどうか判断し(S11)、1になっていなければ、今回の触媒温度推定値TCTを前回値TCTZとして設定し(S15)、初期化フラグを1にセットして(S17)プロセスを抜ける。次にこの処理に入るときは初期化フラグが1になっているので、ステップS12に進む。ステップS12では触媒温度推定値の今回値TCTと前回値TCTZとの差DTCTBSを算出する。今回値TCTを次回の処理のために前回値TCTZとして設定し(S13)、次のステップS19に移る。この処理は、前述のエンジンのバンク1およびバンク2についてそれぞれ実行される。
ステップS19では、触媒温度推定値の今回値TCTと前回値TCTZとの差DTCTBSが正かどうかを判断し、正であれば予め用意されROMに格納されているテーブルを検索して昇温時のなまし係数Cdの値を求める(S21)。差DTCBSが負であるときは、同様にテーブルを検索して降温時のなまし係数Cdの値を求める(S23)。昇温時のなまし係数Cdの値は、降温時のなまし係数Cdの値よりも大きく設定されている。
こうして得られたなまし係数Cdを用いて、ステップS25において、温度変化DTCTのなまし演算が実施される。なまし演算は、上述の式(2)にしたがって行われる。昇温時のなまし係数Cdの値は、降温時のなまし係数Cdの値よりも大きく設定されているから、推定温度が上昇しているときは、温度上昇が温度変化DTCTに敏感に反映される。ここでのなまし演算もバンク1およびバンク2についてそれぞれ行われる。
次いで触媒温度による燃料増の実施を示すフラグが1になっているかどうか、すなわち、既に触媒の劣化を抑制するための燃料増が実行中であるかどうかを判断し(S27)、実行中であれば図5に曲線BBで示す低側の温度テーブルを検索して基準値tctxとなる温度を求める(S29)。また、燃料増を示すフラグが1になっていないときは、図5に曲線AAで示す高側の温度テーブルを検索して基準値tctxとなる温度を求める(S31)。
次いでバンク1のTCTがtctxより大きいかどうか判断し(S33)、大きければ燃料増フラグを1にセットする(S37)。これにより、触媒の熱による劣化を抑制するための燃料の増量が実施される。ステップS33で判断がNoのときは、バンク2について同様の判断を行い(S35)、バンク2のTCT(図ではTCTB2で示す)が基準値tctx(図ではtctxb2で示す)より大きいときは、燃料の増量が実施される。バンク1、バンク2ともに触媒の推定温度TCTが基準値tctx以下であるときは、燃料増フラグを0にセットし(S39)、燃料の増量を停止する。
図5に関連して以上の処理を補足説明すると、触媒の推定温度TCTが高側の曲線AAで与えられる基準値tctxを越えるとき、燃料の増量を行い、低側の曲線BBで与えられる基準値tctxより小さくなるとき、燃料の増量を停止する。
以上にこの発明を一実施例について説明したが、この発明はこのような実施例に限定されるものではない。
この発明が適用されるエンジンの全体的な構成を示す図。 触媒温度のマップ値TCTMとそのなまし値TCTとの関係を示す図。 この発明の一実施例の装置を機能ブロックで示す図。 この発明の一実施例における処理の流れを示すフローチャート。 基準値tctxを与えるテーブルに対応する曲線を示す図。
符号の説明
31 触媒温度推定部
41 なまし計算部
43 基準値テーブル

Claims (2)

  1. 内燃機関の燃料供給を制御する装置であって、
    前記内燃機関の排気系に設けられた触媒の温度を該内燃機関の運転状態に応じて推定する温度推定手段と、
    前記推定された温度が基準値より大きいとき前記内燃機関に供給する燃料を増量する手段と、
    前記推定された温度の今回値と前回値との差をとり、該差、該差の前回値、およびなまし係数を用いてなまし演算することによって温度の変化量を求める算出手段と、を備え、
    前記基準値は、前記変化量が増大するにしたがって小さい値をとり、前記なまし係数は、前記推定された温度の今回値と前回値との差が正のとき第1の値をとり、該差が負のとき前記第1の値より小さい第2の値をとるようにした、内燃機関の燃料供給制御装置。
  2. 前記内燃機関は、第1の気筒群および第2の気筒群を有し、前記触媒は該第1および第2の気筒群のそれぞれに対応して設けられており、前記温度推定手段は、それぞれの触媒の温度を推定し、前記燃料を増量する手段は、少なくとも一つの推定温度が前記基準値より大きいとき燃料を増量する、請求項1に記載の燃料供給制御装置。
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