JP4517218B2 - タッチパネル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置などの各種表示装置におけるディスプレイ画面に配置されるタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のタッチパネルとして、片側表面に抵抗膜が形成された2つの基板を、各抵抗膜が対向するようにスペーサを介して積層した抵抗膜式のものが広く知られており、表示装置のディスプレイ画面に配置されて使用される。最近では、カーナビゲーションやノートパソコン等のように屋外等で使用されることが多いため、外光の反射によるディスプレイの視認性低下を防ぐべく、上側基板の外面側に偏光板を貼り合わせて防眩性を付与したものが良く用いられている。
【0003】
ところが、従来の偏光板は高温下で大きく膨張するため、偏光板の線膨張係数が下側基板に比べて非常に大きい場合(例えば、下側基板がガラスの場合)、下側基板との間で膨張量の差を生じる結果、偏光板と共に上側基板が徐々に湾曲して膨らんでいく。この結果、タッチパネルの見栄えが悪くなるだけでなく、下側基板との間隔が広くなるのでタッチパネルの操作性が悪化するおそれがある。
【0004】
このため、特開2001−142638号公報には、図6に示すように、偏光板の上面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを積層することで操作面の膨らみを防止したタッチパネルの構成が開示されている。同図に示すように、このタッチパネルは、上側基板304および下側基板330がスペーサ360を介して対向するように配置されており、一対の基板304,330の対向面には、それぞれ抵抗膜311,331が形成されている。上側基板304には、外面側(図の上側)から順に、PETフィルム301、偏光板302および位相差板303が接着剤により貼り合わされて積層されている。偏光板302は、ポリビニルアルコール(PVA)の延伸フィルムからなる偏光子302aを、トリアセチルアセテート(TAC)フィルムからなる保護フィルム302bにより上下から挟持した構成となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のタッチパネルは、偏光板302自体が偏光子302aを一対の保護フィルム302bで挟持した積層構造であるのに加えて、この偏光板302にPETフィルム301を更に積層して構成されているので、使用するフィルム部材の枚数が多くなる。このため、製造工程が増加するだけでなく、タッチパネルの厚みが増す原因となっていた。一方、最近においては、タッチパネルを使用する機器が小型化、軽量化する傾向にあり、タッチパネルや表示装置に対する薄型化の要求が高まっている。
【0006】
本発明は、このような観点からなされたものであって、操作性を良好に維持しつつ薄型化が可能なタッチパネルの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
表面に抵抗膜が形成された2つの基板を前記各抵抗膜が対向するように所定の間隔をあけて配置し、少なくとも一方の前記基板の外面側に偏光板を積層したタッチパネルであって、前記偏光板は、面状の偏光子と、該偏光子に対して前記基板と反対側の面に接着剤を介して貼り合わされる保護フィルムとを備え、前記保護フィルムは、二軸延伸されたポリエステル系フィルムからなり、前記偏光子と前記保護フィルムとは、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合わされており、前記保護フィルムの貼合面における酸素原子比率が32.01%〜34.55%であり、前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムからなるタッチパネルにより達成される。
【0010】
また、前記保護フィルムは、最外面にハードコート層が積層されていることが好ましく、該ハードコート層の表面硬度が鉛筆硬度H以上であることが好ましい。
【0011】
前記偏光板が積層される前記基板は、光学的等方性フィルムからなるものであっても良く、或いは、位相差フィルムからなるものであっても良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。図1は、タッチパネルの全体構成を示す斜視図であり、図2は、このタッチパネルを分解した状態を示している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のタッチパネル100は、面状積層体110と下側基板130とを備えており、面状積層体と下側基板の間には、スペーサ140が介在され、更に、コネクタ120の差込部142が形成されている。
【0014】
図2に示すように、面状積層体110は、下面(下側基板130と対向する面)側に抵抗膜111が設けられている。抵抗膜111は、例えばITO(インジウム−スズ酸化物)からなり、スパッタリング加工により形成される。抵抗膜111の側辺部2カ所には、一対の電極112,112が対向するように設けられている。電極112,112は、配線パターン113を介して、差込部142に設けられた端子114,114にそれぞれ接続されており、コネクタ120の上面端子122と導通可能になっている。
【0015】
また、下側基板130は、面状積層体110と同様に、ITOからなる抵抗膜131が上面(面状積層体110と対向する面)側に設けられ、抵抗膜131の側辺部2カ所に一対の電極132,132が対向して設けられている。下側基板130としては、厚みが0.5〜2.0mm程度の薄ガラス、または厚み0.03〜3.0mm程度の光学的等方性フィルム(シート)が好適であり、必要に応じて光学的等方性フィルム(シート)に薄ガラスなどの支持体を積層しても良い。光学的等方性フィルム(シート)は、液晶等の表示機能のコントラストに支障がないように、面内位相差が40nm以下のフィルム(シート)を使用するのが好ましい。また、液晶等の表示方式などによっては、光学的等方性フィルム(シート)の代わりに、1/4λ、1/2λ等の位相差フィルム(シート)を使用しても良く、光学的面内位相差を制御して液晶などの表示性能を広波長域で補償する役目を兼ねるようにしても良い。
【0016】
下側基板130にフィルム(シート)を使用する場合、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、環状ポリオレフィン系、ノルボルネン系、セルロース系等の材料を例示することができるが、表示コントラストを著しく低下させないものであれば、他の材料も適宜選択できる。
【0017】
電極132,132は、対向方向が面状積層体110における電極112,112の対向方向と直交しており、配線パターン133を介して差込部142に設けられた端子134,134にそれぞれ接続されて、コネクタ120の下面端子123と導通可能になっている。
【0018】
スペーサ140は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどからなるフレーム状の部材であり、表裏面に塗布された接着剤により面状積層体110および下側基板130の周縁部に貼着され、所定の間隔(例えば、100μm程度)を保持している。コネクタ120の差込部142は、スペーサ140の一部を切除することによって形成されている。尚、スペーサ140には、差込部142以外にも数カ所において切除されており、これらは内圧上昇時の通気部141として機能する。
【0019】
また、下側基板130の上面には、ドット状絶縁スペーサ160が略均一に配置されている。このドット状絶縁スペーサ160は、スペーサ140よりも低い高さに形成されている。
【0020】
図3は、タッチパネル100の断面を模式的に示す図である。同図に示すように、面状積層体110は、上面側(表面側)から順に、保護フィルム101、偏光子102、光学的等方性フィルム103、位相差フィルム104および上側基板105が積層された構成となっており、保護フィルム101、偏光子102および光学的等方性フィルム103によって、偏光板120を構成している。
【0021】
保護フィルム101は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムなどのポリエステル系樹脂フィルムを使用することができる。保護フィルム101は、縦方向および横方向に延伸された二軸延伸フィルムであることが好ましく、厚みを50〜250μm程度にすることが好ましい。50μmより薄くなるとタッチパネルの強度が低下する傾向にある一方、250μmより厚くなると薄型化が図りにくくなるため、いずれも好ましくない。
【0022】
この保護フィルム101の線膨張係数は、高温時におけるタッチパネルの膨らみを有効に防止するために、3.5×10-5cm/cm/℃以下であることが好ましい。保護フィルム101の線膨張係数が大きすぎると、下側基板130がガラス板などの場合に保護フィルム101と下側基板130との膨張量の差が大きくなるので、面状積層体110が湾曲して膨らむ結果、見栄えや操作性の悪化を生じやすくなる。
【0023】
偏光子102は、ポリビニルアルコール(PVA)又はその誘導体からなるフィルムを一軸延伸により配向させた後にヨウ素を吸着させ、ホウ酸水処理を施してから緊張下で乾燥させることによって得られる。或いは、PVA又はその誘導体からなるフィルムをヨウ素の水溶液に浸漬してヨウ素を吸着させた後、ホウ酸水中で一軸延伸配向させて、緊張下で乾燥させることによっても得られる。上記各製法においては、ヨウ素を用いる代わりに、アゾ系、アントラキノン系、テトラジン系等の二色性染料を用いても良い。こうして得られる偏光子102の偏光度は、好ましくは95.0%以上、より好ましくは99.0%以上、さらに好ましくは99.7%以上である。偏光子102の厚みは特に限定されないが、例えば、10〜40μm程度である。
【0024】
光学的等方性フィルム103は、環状オレフィン系、ノルボルネン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、酢酸セルロース系、ポリカーボネート系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテルサルホン系、ポリアリレート系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミド系などの樹脂フィルムを例示することができる。偏光子102の性能を最大限に生かすためには、その中でも、フィルムの外観が優れており、表面平滑性が良い酢酸セルロース系または環状オレフィン系の樹脂フィルムであることが好ましい。
【0025】
酢酸セルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、二酢酸セルロースフィルムが挙げられる。また、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、環状オレフィンの付加(共)重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α−オレフィンとのランダム共重合体、或いは、これら(共)重合体を不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体などを例示することができる。環状オレフィンは、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体(例えば、カルボキシル基やエステル基を有するもの)などを例示することができる。
【0026】
この光学的等方性フィルム103は、光学的面内位相差が小さいことが好ましく、具体的には、光学的面内位相差が、30nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが更に好ましい。尚、本実施形態においては、光学的面内位相差の測定を、自動複屈折計(王子計測機器(株)製「KOBRA」)を用いて行った。
【0027】
光学的面内位相差が3nm以下という非常に小さい値の光学的等方性フィルム103を得るためには、適宜の方法により保護膜の内部分子鎖の歪みを是正する必要がある。例えば、フィルムを巻き取る前にマイナスドローでフィルムを加熱する方法や、ゆるく巻き取ったロール状フィルムを加熱室内に放置する方法が例示できる。また溶液流延法による場合、残留溶剤を低減することが好ましく、乾燥炉を長くするのも1つの方法である。光学的等方性フィルム103の厚みについても特に限定されないが、例えば、20〜100μm程度である。
【0028】
位相差板104は、例えば、環状オレフィン系(例えば、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(b)環状オレフィンの付加(共)重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α−オレフィンとのランダム共重合体、(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等)、ポリエステル系、ポリオレフィン系、酢酸セルロース系、ポリカーボネート系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテルサルホン系、ポリアリレート系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミド系、ポリカーボネート系フィルム等を素材とするλ/4位相差板とすることができる。尚、環状オレフィンとしては、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体(例えば、カルボキシル基やエステル基を有するもの)が例示できる。より具体的には、JSR製の「アートン」、日本ゼオン製の「ゼオノア」、積水化学製の「エスシーナ」などを好適に使用することができる。
【0029】
また、上側基板105は、全ての入射光に対して偏光性を有しない光等方性材料からなり、例えば、環状オレフィン系、ノルボルネン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、酢酸セルロース系、ポリカーボネート系、ポリビニルアルコール系、ポリエーテルサルホン系、ポリアリレート系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミド系、ポリカーボネート系フィルム等の透明熱可塑性樹脂を挙げることができる。厚みについては、50〜250μm程度を例示することができる。
【0030】
このように構成されたタッチパネルによれば、偏光子102の上面側に貼り合わされる保護フィルム101が線膨張係数の小さいポリエステル系フィルムにより形成されているので、この保護フィルム101により偏光子102を保護するだけでなく、上側基板105の膨らみを防止して見栄えや操作性を良好に維持することができる。したがって、従来のタッチパネルのように、偏光板の上面側にPETフィルムを積層する必要がないので、タッチパネルの薄型化や、製造工程の短縮化を図ることができる。
【0031】
タッチパネルを構成する面状積層体110において、各構成要素の貼り合わせは、紫外線硬化型、熱硬化型、溶剤系、水系など、適度な接着(粘着)強度を得られる接着剤(粘着剤)を用いて行うことができ、その他の公知の接着手段または粘着手段によることもできる。特に、偏光子との貼り合わせについては、高温下や高湿下における偏光性能を損なわないように、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を主成分とする水溶液を接着剤として用いることが従来から知られている。
【0032】
ところが、本実施形態のように偏光子102に保護フィルム101を直接貼り合わせる場合に、未処理のポリエステル系フィルムを保護フィルム101として使用すると、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶液では良好な接着強度が得られず、製造工程において剥がやすくなるという問題を生じる。
【0033】
そこで、本実施形態においては、保護フィルム101に大気中でコロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理などを施すことにより、保護フィルム101の表面を大気中に含まれる酸素により酸化して酸素濃度を高めている。これにより、接着剤として使用するPVAの水酸基により、酸化された保護フィルム101の表面と接着剤との分子間力(ファンデルワールス力、水素結合)が増加して、接着強度が高くなると考えられる。
【0034】
即ち、保護フィルム101の貼合面における酸素原子比率が高くなるにつれて、保護フィルム101と偏光子102との貼合がより確実なものとなる。本発明者らが保護フィルム101の貼合面における酸素原子比率と接着性との関係を調べたところ、後述するように、酸素原子比率が32%以上の場合に良好な接着性が得られることを確認できた。この酸素原子比率は、X線光電子分光法(ESCA)による表面元素分析により酸素原子濃度および炭素原子濃度を測定し、次式により得た値である。
【0035】
【数1】
Figure 0004517218
【0036】
保護フィルム101の貼合面における酸素原子比率を32%以上に高める方法としては、上述したコロナ処理、紫外線照射処理、火炎処理に限定されず、化学薬品処理などの他の公知の方法を用いることも可能である。コロナ放電処理や紫外線照射処理を施す場合、大気中で行う以外に、窒素や希ガスの雰囲気下で行うこともできる。酸素原子比率の下限値は、いずれの処理方法による場合であっても、理論上は同じである。なお、酸素原子比率の上限値は特に存在せず、高い方が好ましいが、実用性の観点からは45%以下である。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様が上記実施形態に限定されるものではない。例えば、保護フィルム101の最外面には、ハードコート層を形成することが好ましく、これによって、ペン耐久性を良好にすることができ、ペン傷による視認性低下を防止することができる。ハードコート層を形成する方法としては、例えば、アクリル系のハードコート性塗料をコーティングする方法を挙げることができる。
【0038】
ハードコート層の表面硬度は、視認性を良好に維持するために、鉛筆硬度H以上であることが好ましい。この鉛筆硬度は、JIS−K−5400(8.4 鉛筆引掻試験)による測定結果である。
【0039】
また、本実施形態においては、光学的等方性フィルム103と上側基板105との間に位相差フィルム104が狭持された構成としているが、上側基板105をこの位相差フィルム104と同じλ/4位相差板として、図4に示すように、光学的等方性フィルム103と上側基板105とを、接着剤または粘着剤を介して直接貼り合わせることも可能である。この場合には、保護フィルム101、偏光子102、光学的等方性フィルム103および上側基板105により面状積層体110を構成し、保護フィルム101、偏光子102、および光学的等方性フィルム103により偏光板120を構成する。
【0040】
更に、図5に示すように、光学的等方性フィルム103および位相差フィルム104を設けずに、上側基板105を位相差フィルム104と同じλ/4位相差板として、偏光子102と上側基板105とを直接貼り合わせることも可能である。この場合には、保護フィルム101、偏光子102、および上側基板105により面状積層体110を構成し、保護フィルム101および偏光子102により偏光板120を構成する。
【0041】
このように、図4および図5に示す構成にすることで、製造工程の更なる短縮化や、タッチパネルの更なる薄型化を図ることができる。図4に示すタッチパネル100において、光学的等方性フィルム103は、λ/2位相差板に置き換えることも可能であり、これによって、400〜700nm程度の広波長域で反射防止性能を向上させることができる。
【0042】
また、図5に示すタッチパネル100において、λ/4位相差板からなる上側基板105は、光学的等方性フィルムから形成することもできる。この場合にはλ/4位相差板が存在しない構成となるが、ある程度の防眩性を得ることは可能である。
【0043】
これらのタッチパネルは、液晶表示装置の他、ブラウン管(CRT)、エレクトロルミネッサンス(EL)、プラズマ(PDP)などの各種表示装置に使用することができる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
図3に示すタッチパネル100において、保護フィルム101の貼合面における酸素原子比率と接着性との関係を調べた。保護フィルム101としては、線膨張係数が2.3×10-5cm/cm/℃、厚みが100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム)を使用した。
【0045】
まず、保護フィルム101の一方面に、アクリル系ハードコート塗料をグラビアコーティング法によってコーティングし、約2μmのハードコート層を形成させた。このハードコート層の表面硬度は、鉛筆硬度2Hであった。そして、保護フィルム101の他方面にコロナ放電処理を施し、酸化された表面の酸素原子比率を測定した。酸素原子比率の測定には、アルバック・ファイ(株)のULVAC−PHI(ESCA MODEL5400)を使用した。
【0046】
ついで、保護フィルム101の表面処理を施した面に、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコールフィルム(厚さ20μm)からなる偏光子102を貼り合わせた。保護フィルム101と偏光子102との接着には、(株)クラレ製ポリビニルアルコール(品番:RS−117)の3%水溶液を使用し、ラミネート時の圧力0.3MPa、温度75℃、乾燥時間10分の条件下で接着した。
【0047】
次に、偏光子102の下面側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、トリアセチルセルロースフィルム(厚み80μm)からなる光学的等方性フィルム103を貼り合わせた。そして、光学的等方性フィルム103の下面側に、アクリル系の粘着剤を介して、ポリカーボネートフィルムからなる位相差フィルム104(位相値138nm、厚み100μm)を貼り合わせた。更に、位相差フィルム104の下面側に、JSR(株)製のアートンフィルム(厚さ188μm)からなる上側基板105を貼り合わせて、パネルサイズが275×200mm(12.1インチ)のタッチパネルを製造した。なお、下側基板130は厚さ0.7mmのITOガラスとした。また、位相差値は、王子計測機器株式会社製の自動複屈折計KOBRA(測定波長:590nm)を用いて測定した。
【0048】
このタッチパネルの製造工程において、保護フィルム101にコロナ放電処理を施す際の処理電力を変化させて、種々の処理条件下で試験品を製造し、保護フィルム101と偏光子102との接着性を調べたところ、以下の表1に示す結果となった。ここで、処理電力は次式により計算している。
【0049】
【数2】
Figure 0004517218
【0050】
【表1】
Figure 0004517218
【0051】
表1に示すように、保護フィルム101にコロナ放電処理を施さない試験品1においては、酸素原子比率が31.45%であり、この条件で製造したタッチパネルは、偏光子102から保護フィルム101が容易に剥がれる結果となった。
【0052】
また、処理電力を65 W・min/m2としてコロナ放電処理を行った試験品2においては、酸素原子比率が31.90%であり、未処理の場合に比べて酸素原子比率は上昇しているものの、保護フィルム101を手で剥がそうとすると容易に剥がすことができ、実用上十分な強度が得られなかった。
【0053】
これに対し、コロナ放電処理の電力をより高めて98 W・min/m2とした試験品3においては、酸素原子比率が32.01%であり、この場合には手で剥がそうとしても容易に剥がすことができず、実用可能な程度の接着強度が得られた。処理電力を更に高めた試験品4〜7においても、同様に良好な接着強度が得られた。
【0054】
この結果から、保護フィルム101の貼合面における酸素原子比率が32%以上になると、保護フィルム101と偏光子102との良好な接着強度が得られることがわかる。
【0055】
(実施例2)
次に、接着性の点で良好な結果が得られた試験品3〜7(表1参照)のタッチパネルについて、高温放置試験を行った。即ち、70℃環境下および60℃で90%RHの環境下のそれぞれにおいて240時間放置した後、常温に戻し、24時間経過後の操作面(保護フィルム101の表面)の膨らみを測定した。この結果、いずれの環境下においても膨らみは全くなく、操作性は良好であった。
【0056】
さらに、試験後に保護フィルム101と偏光子102との接着性を再度確認したところ、界面での剥離現象は全く無かった。
【0057】
(実施例3)
偏光子102に貼り合わせる光学的等方性フィルム103を、厚み60μmの環状オレフィン系フィルム(ZEONOR:日本ゼオン製)とする他は、実施例1と同様にしてタッチパネルを製造した。このタッチパネルについて、実施例2と同様の高温放置試験を行ったところ、試験品3〜7について試験後も良好な操作性および接着性が得られた。
【0058】
(実施例4)
光学的等方性フィルム103に、ポリカーボネート製位相差フィルム104(位相差値138nm、厚み100μm)、及び、ノルボルネン系素材の位相差フィルム(積水化学製「エスシーナ」、位相差値138nm、厚み50μm)からなる上側基板105を貼り合わせる他は、実施例1と同様に製造した。このタッチパネルについて、実施例2と同様の高温放置試験を行ったところ、試験品3〜7について試験後も良好な操作性および接着性が得られた。また、このタッチパネルによれば、従来の構成に比べて半分程度の厚みにすることができた。
【0059】
(比較例1)
保護フィルム101を、ポリアリレートフィルム(線膨張係数6.2×10-5cm/cm/℃、厚み100μm)とする他は、実施例1と同様にしてタッチパネルを製造した。なお、保護フィルム101の表面には、ポリウレタン系のアンカーコート層をあらかじめ設けて、偏光子との接着性を確保した。このタッチパネルについて、実施例2と同様の高温放置試験を行った。70℃環境下で240時間放置した後、常温に戻し、24時間経過後の操作面(保護フィルム101の表面)の膨らみを測定したところ、保護フィルム101の周縁部に対して中央部が2.0mm膨らみ、操作性が悪化した。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、操作性を良好に維持しつつ薄型化が可能なタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るタッチパネルの斜視図である。
【図2】 上記タッチパネルの分解状態を示す図である。
【図3】 上記タッチパネルの積層構造を模式的に示す断面図である。
【図4】 本発明の他の実施形態に係るタッチパネルの積層構造を模式的に示す断面図である。
【図5】 本発明の更に他の実施形態に係るタッチパネルの積層構造を模式的に示す断面図である。
【図6】 従来のタッチパネルの積層構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
100 タッチパネル
101 保護フィルム
102 偏光子
103 光学的等方性フィルム
104 位相差フィルム
105 上側基板
110 面状積層体
111 抵抗膜
120 偏光板
130 下側基板
131 抵抗膜
140 スペーサ
160 ドット状絶縁スペーサ

Claims (5)

  1. 表面に抵抗膜が形成された2つの基板を前記各抵抗膜が対向するように所定の間隔をあけて配置し、少なくとも一方の前記基板の外面側に偏光板を積層したタッチパネルであって、
    前記偏光板は、面状の偏光子と、該偏光子に対して前記基板と反対側の面に接着剤を介して貼り合わされる保護フィルムとを備え、
    前記保護フィルムは、二軸延伸されたポリエステル系フィルムからなり、
    前記偏光子と前記保護フィルムとは、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合わされており、
    前記保護フィルムの貼合面における酸素原子比率が32.01%〜34.55%であり、
    前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムからなるタッチパネル。
  2. 前記保護フィルムは、最外面にハードコート層が積層されており、該ハードコート層の表面硬度が鉛筆硬度H以上である請求項1に記載のタッチパネル。
  3. 前記偏光板が積層される前記基板は、光学的等方性フィルムからなる請求項1又は2に記載のタッチパネル。
  4. 前記偏光板が積層される前記基板は、位相差フィルムからなる請求項1又は2に記載のタッチパネル。
  5. 前記保護フィルムの線膨張係数は、3.5×10−5cm/cm/℃以下である請求項1から4のいずれかに記載のタッチパネル。
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