JP4515702B2 - 印刷用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷用シートに関し、詳しくは、表面の引掻強度や層内の剥離強度または凝集強度に優れた熱可塑性樹脂製印刷用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印刷等により情報を記録する材料として紙が使用されてきたが、近年になり紙の主原料である木材の大量消費による環境への影響を懸念する声が高まってきている。また、木材パルプ製の紙は、耐水性に乏しく、表面の引掻強度や層内の剥離または凝集強度に劣るという欠点があり、それらの欠点を改良した紙の代替品が求められてきている。そのようなパルプ紙に代わるものとして、樹脂製の合成紙が広く検討されている。その例として、熱可塑性樹脂にフィラーを充填したものを製膜し、その後一軸および/または二軸に延伸することで膜に微多孔を生成させ、紙の特徴をもたせるもの(特公平2−20417)や、熱可塑性樹脂フィルムの表面に乾燥時にインクや鉛筆等の受容性を持つ無機充填剤含有樹脂組成物を塗布したもの(特開平11−309821)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの合成紙は、前記パルプ紙の欠点をある程度改良してはいるものの、依然として満足のいく合成紙とはいえない。オフセット印刷やグラビア印刷などの工業印刷から、さらにはインクジェットなどのプライベート印刷に至る今日の多様化・高度化した情報記録手段に対応するには、より一層の改良が要求される。
【0004】
そこで、本発明の目的は、表面の引掻強度や、層内の剥離強度および凝集強度に優れ、印刷面が時間の経過とともに剥がれ落ちたり、あるいは粘着テープなどで固定した場合に印刷面が破壊されたりしないような、いわゆる「紙力」の強い熱可塑性樹脂製印刷用シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の分子鎖長を有する分子を、規定量以上含有するポリオレフィン樹脂を使用することにより所期の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の印刷用シートは、微細孔を有する熱可塑性ポリオレフィン系樹脂製多孔性フィルムを印刷記録層として少なくとも1層含む印刷用シートであって、前記多孔性フィルムは、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを20重量%以上含有し、バブルポイント法(ASTM F316−86)により求めた前記微細孔の平均細孔直径d(μm)と、水銀圧入法(JIS K 1150)により求めた前記微細孔の平均細孔半径r(μm)とが、式:1.2≦2r/d≦1.7を満たすものであることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、シート表面の引掻強度や、シート層内の剥離強度および凝集強度に優れた印刷用シートを提供することができる。また、多数形成される微細孔の細孔径などを調節することにより、インクの受容性(吸収性および乾燥性)にも優れた印刷用シートとすることができる。
【0008】
印刷用シートとしての十分な強度を発揮するためには、前記多孔性フィルムは、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン(以下、長分子鎖長ポリオレフィンと称することがある)を10重量%以上含有し、長分子鎖長ポリオレフィンを20重量%以上含有することが好ましく、長分子鎖長ポリオレフィンを30重量%以上含有することがより好ましい。
【0010】
2r/dの値が前記範囲内にあると、印刷用シートの印刷記録層は、強度およびインクの受容性のバランスに特に優れたものとなる。なお、シートの強度の点から、2r/dの値は1.65以下であることがより好ましく、1.60以下であることが更に好ましい。
【0011】
前記多孔性フィルムを印刷用記録層とした場合、記録層1層の厚みは通常10〜500μmであり、好ましくは30〜200μmである。厚すぎるとシートの搬送性が低下し、薄すぎると機械的強度が低下する傾向がある。
【0012】
前記微細孔は、平均細孔直径dが0.05〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0013】
平均細孔直径dが0.1〜5μmであると、インクの吸収性および乾燥性に特に優れたものとなる。
【0014】
前記多孔性フィルムは、インクジェット印刷用などのインクを吸収および乾燥させるためには、前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、充填剤が10〜300重量部配合されていることが好ましく、30〜200重量部がより好ましく、50〜150重量部がさらに好ましい。
【0015】
このような配合量からなる多孔性フィルムは、概して、ガーレー値が厚さ25μmあたり10〜500秒/100cm3 、空孔率が30〜80%となり、インクの吸収性および乾燥性に優れた記録層を構成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の印刷用シートの記録層を構成する多孔性フィルムの主原料である熱可塑性樹脂は、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン(長分子鎖長ポリオレフィン)を10重量%以上含有する。これにより、本発明の印刷用シートは従来品に比して強度に優れるものとなっている。前記熱可塑性樹脂は、長分子鎖長ポリオレフィンを10重量%以上含有していることが好ましく、20重量%以上含有することがより好ましく、30重量%以上含有することが一層好ましい。前記長分子鎖長ポリオレフィンには、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等)の単独重合体、2種類以上のオレフィンの共重合体、および1種以上のオレフィンと他の1種類以上の重合性単量体との共重合体であって、分子鎖長が2850nm以上のものが該当し、より具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)またはエチレン−酢酸ビニル共重合体で、分子鎖長が2850nm以上のものが挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、1種類の長分子鎖長ポリオレフィンを含有してもよく、また、2種類以上の長分子鎖長ポリオレフィンを含有してもよい。
【0017】
本発明において、前記長分子鎖長ポリオレフィンは、他の1種類以上の熱可塑性樹脂と併用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、水不溶性または水難溶性熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、分子鎖長が2850nm未満のポリオレフィン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマーやこれらの架橋物などが挙げられる。
【0018】
本発明の印刷用シートの記録層を構成する熱可塑性樹脂は、その50重量%を超える部分がポリオレフィン樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂全部がポリオレフィン樹脂であることも好ましい。ポリオレフィン樹脂は、機械的強度および化学的安定性に優れるからである。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。また、該ポリオレフィン樹脂は、前記長分子鎖長ポリオレフィンを10重量%以上含有することが好ましく、20重量%以上含有することが特に好ましく、30重量%以上含有することがとりわけ好ましい。
【0019】
ポリオレフィンの分子鎖長、重量平均分子鎖長、分子量および重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、特定分子鎖長範囲または特定分子量範囲のポリオレフィンの混合比率(重量%)はGPC測定により得られる分子量分布曲線の積分により求めることができる。
【0020】
ここに、ポリオレフィンの分子鎖長は、後述するGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の分子鎖長であり、より具体的には以下の手順で求められるパラメータである。
【0021】
すなわち、GPC測定の移動相としては、測定する未知試料も分子量既知の標準ポリスチレンも溶解することができる溶媒を使用する。まず、分子量が異なる複数種の標準ポリスチレンのGPC測定を行い、各標準ポリスチレンの保持時間を求める。ポリスチレンのQファクターを用いて各標準ポリスチレンの分子鎖長を求め、これにより、各標準ポリスチレンの分子鎖長とそれに対応する保持時間を知る。尚、標準ポリスチレンの分子量、分子鎖長およびQファクターは下記の関係にある。
分子量=分子鎖長×Qファクター
次に、未知試料のGPC測定を行い、保持時間−溶出成分量曲線を得る。標準ポリスチレンのGPC測定において、保持時間Tであった標準ポリスチレンの分子鎖長をLとするとき、未知試料のGPC測定において保持時間Tであった成分の「ポリスチレン換算の分子鎖長」をLとする。この関係を用いて、当該未知試料の前記保持時間−溶出成分量曲線から、当該未知試料のポリスチレン換算の分子鎖長分布(ポリスチレン換算の分子鎖長と溶出成分量との関係)が求められる。
【0022】
前記印刷用シートに用いるフィルムは、無機充填剤または有機充填剤などの充填剤を含有していてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で脂肪酸エステルや低分子量ポリオレフィン樹脂などの延伸助剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの添加剤を含有してもよい。
【0023】
前記印刷用シートに用いるフィルムが、例えば分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂を原料とする場合、樹脂原料と無機充填剤および/または樹脂の微粉末とを、強混練できるようセグメント設計した2軸混練機を使用して混練した後、ロール圧延法によりフィルム化し、得られた原反フィルムを延伸機により延伸することによって、目的とするフィルムを製造することができる。延伸に使用する装置としては、公知の延伸装置が限定なく使用可能であり、クリップテンターが好適な手段として例示される。
【0024】
上述の充填剤としては、平均粒子径が0.1〜1μmの酸化アルミニウムや水酸化アルミニウム、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、天然または合成シリカなどの無機系充填剤や、架橋PSビーズや架橋MMAビーズ、メラミン樹脂ビーズなどの有機系充填剤が例示される。このうち、該印刷用シートとして用いる場合に、充填剤を除去した多孔質体として用いる方が好ましい場合には充填剤を除去して用いることができるが、この場合充填剤としては、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムのような、酸洗浄によって溶解除去できる充填剤を使用することが好ましい。
【0025】
印刷用シートを構成する熱可塑性樹脂は、放射線の照射により架橋されていてもよい。熱可塑性樹脂が架橋されているフィルムは、非架橋の熱可塑性樹脂からなる印刷用シートよりも耐熱性や強度において優れる。
【0026】
本発明の印刷用シートは、厚み30〜200μm程度であることが特に好ましく、当該シートを構成する熱可塑性樹脂が放射線照射により架橋されていることが更に効果的である。通常は、樹脂フィルムを薄くすると、強度が低下してしまうという問題がある。これに対して、本発明にかかる印刷用シートに用いる多孔性フィルムは、その厚みが30〜200μm程度が好ましく、かつ、それを構成する熱可塑性樹脂が放射線の照射により架橋されているフィルムは、インクの受容性が特に優れており、かつ高い強度を有する印刷記録層となり得る。
【0027】
本発明の印刷用シートの記録層であって熱可塑性樹脂が架橋されているフィルムは、非架橋の熱可塑性樹脂を用いて製造した多孔性フィルムに対して、更に放射線を照射することにより得ることができる。
【0028】
架橋のために未架橋の多孔性フィルムに照射する放射線の種類は特に限定されないが、ガンマー線、アルファー線、電子線などが好ましく用いられ、生産速度や安全性の面から電子線の使用が特に好ましい。
【0029】
放射線源としては、加速電圧が100〜3000kVの電子線加速器が好ましく用いられる。加速電圧が100kVより小さいと電子線の透過深さが充分でなく、3000kVより大きいと装置が大掛かりとなって、コスト的に好ましくない。放射線照射装置の例としては、バンデグラーフ型などの電子線走査型装置やエレクトロンカーテン型などの電子線固定・コンベア移動型装置などが挙げられる。
【0030】
放射線の吸収線量は0.1〜100Mradであることが好ましく、0.5〜50Mradであることがより好ましい。吸収線量が0.1Mradより小さい場合には樹脂を架橋させる効果が充分でなく、100Mradより大きい場合は強度が著しく低下するため好ましくない。
【0031】
放射線を照射するときの照射雰囲気は、空気中としてもよいが、窒素など不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0032】
このようにして製造された多孔性フィルムは、適当な大きさに裁断して記録層とし、単独で印刷用シートとして使用することができる。本発明の印刷用シートは、従来の多孔性シートからなる合成紙、または基材上にインク吸収性層を設けた印刷用シートなどに比べて、表面の引掻強度や層内の剥離強度または凝集強度に優れるものであり、印刷面が使用途中で剥がれたりすることがなく長持ちする。特に、その優れたインク吸収性とともに、屋外で使用するインクジェット印刷物用の印刷用シートとしての使用に適する。
【0033】
[他の実施の形態]
前記実施形態では、多孔性フィルムを記録層として1層からなる印刷用シートについて説明したが、本発明の印刷用シートは、前記多孔性フィルムの裏面に基材層を有した構成または多孔性フィルムの間に基材層をはさんだ構成としてもよい。基材層としては、印刷用シートに厚みや弾力性をもたせるため、インクの吸収や乾燥を補完するためなどの目的に応じて、適宜公知のものを用いることができる。
【0034】
例えば、基材層としてポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を使用する場合、前記多孔性フィルムのロール圧延と同時に圧延して2層または3層のシートとすることができる。あるいは、記録層と基材層を構成するフィルムを別々に成形した後、公知の方法により接着させることもできる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例および比較例に示す印刷用シートの物性は、下記の評価方法により測定した。
【0036】
[評価方法]
(1)耐水性評価
フィルムの耐水圧(単位:mm水柱)をJIS L1092に規定されている静水圧A法(低水圧法)に準じて測定した。耐水圧が高いほど、耐水圧性は優れる。
【0037】
(2)透湿性評価
フィルムの透湿度(単位:g/m2 ・day)をJIS Z0208に規定されているカップ法に準じて測定した。透湿度が高いほど、透湿性は優れる。
【0038】
(3)通気性評価
フィルムのガーレー値(秒/100cm3 )は、JIS P8117に準じて、B型デンソメーター(東洋精機製)にて測定した。ガーレー値が小さいほど、通気性は優れる。
【0039】
(4)フィルム厚み測定
フィルムの厚みは、山文電気社製、オフラインシート厚み計(TOF2 Var3.22)を用いて、幅方向、長さ方向にわたり、10点でフィルムの厚みを測定し、全測定値の平均値を算出した。その平均値をフィルムの厚みとした。
【0040】
(5)平均細孔直径
ASTM F316−86に準拠し、バブルポイント法により、Perm−Porometer(PMI社製)にて平均細孔直径d(μm)を測定した。
【0041】
(6)平均細孔半径
JIS K1150に準拠し、水銀圧入法により、オートポア III9420(MICROMERITICS社製)にて平均細孔半径r(μm)を測定した。尚、平均細孔半径を求めるにあたり、0.0032〜7.4μmの範囲の細孔半径分布を測定した。
【0042】
(7)突刺強度
直径12mmのワッシャーにて固定したフィルムに、直径1mm、針先曲率半径0.5mmの金属製の針を、200mm/分の速さで突き刺した際に、孔が開口する最大荷重を測定し、突刺強度とした。
【0043】
(8)空孔率
フィルムを5cm角の大きさのサンプルとし、水中置換式の比重計によってフィルムの見掛け比重(d1)を測定する。これとは別に、このフィルムを熱プレスによって熱融解して圧縮し、完全に空孔を排除したシートを作製してその見掛け比重(d2)を測定する。フィルムの空孔率は下記によって求める。
空孔率=(1−d1/d2)×100。
【0044】
(実施例1)
炭酸カルシウム(商品名:スターピゴット15A、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm)30vol%と、ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン340M、三井化学製、重量平均分子鎖長17000nm、重量平均分子量300万、融点136℃)70重量%とポリエチレンワックス(ハイワックス110P、三井化学製、重量平均分子量1000、融点110℃)30重量%の混合ポリエチレン樹脂70vol%に、添加剤としてイルガノックス1010(チバ・ガイギー製)、イルガフォス168(チバ・ガイギー製)およびステアリン酸カルシウム(日本油脂製)を、ポリエチレン粉末とポリエチレンワックスの合計100重量部に対してそれぞれ5000ppm、10000ppm、200ppm添加したものを強混練できるようセグメント設計した2軸混練機(プラスチック工学研究所製)を使用して混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物中の分子鎖長2850nm以上のポリエチレンの含有率は、27重量%であった。この樹脂組成物をロール圧延(ロール温度150℃)することにより、150μmの膜厚の原反フィルムを作製した。
【0045】
得られた原反フィルムをテンター延伸機により延伸温度110℃で約5倍に延伸し、印刷用シート用延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの表面の走査電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0046】
この実施例1にて得られた印刷用シートの耐水圧性、透湿性、通気度、膜厚、平均細孔直径d、平均細孔半径rおよび2r/d、突刺強度ならびに空孔率の測定結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2)
炭酸カルシウム(商品名:ピゴット10、白石カルシウム社製、平均粒子径0.1μm)30vol%と、ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン340M、三井化学製、重量平均分子鎖長17000nm、重量平均分子量300万、融点136℃)70重量%とポリエチレンワックス(ハイワックス110P、三井化学製、重量平均分子量1000、融点110℃)30重量%の混合ポリエチレン樹脂70vol%に、添加剤としてイルガノックス1010(チバ・ガイギー製)、イルガフォス168(チバ・ガイギー製)およびステアリン酸カルシウム(日本油脂製)を、ポリエチレン粉末とポリエチレンワックスの合計100重量部に対してそれぞれ5000ppm、10000ppm、200ppm添加したものを強混練できるようセグメント設計した2軸混練機を使用して混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をロール圧延(ロール温度150℃)することにより、150μmの膜厚の原反フィルムを作製した。
【0048】
得られた原反フィルムをテンター延伸機により延伸温度110℃で約5倍に延伸し、印刷用シート用延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性等を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
市販の通気性フィルムを印刷用シートとして使用したときの耐水性、通気度、膜厚、平均細孔直径d、平均細孔半径rおよび2r/d、突刺強度ならびに空孔率の測定結果を表1に示す。この通気性フィルムを構成する樹脂において、GPC測定により求められる分子鎖長2850nm以上のポリエチレンの含有量は1重量%未満であった。
【0050】
(比較例2)
下記の印刷評価試験の対照とするため、市販のインクジェット用紙(表面がマット調でPET基材)を使用した。
【0051】
(印刷評価試験)
実施例および比較例の印刷用シートを、セイコーエプソン製インクジェットプリンターPM−820C(インクカートリッジ1C5CL05Wおよび1C1BK05W)を用いて印字を行った。
【0052】
(1)インク吸収性
ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色をベタ印字し、その部分の吸収性および乾燥性を評価した。
【0053】
○:印刷直後のインク浮きが全くなく、指で触れても汚れない。
△:印刷直後に指で触れると若干汚れるが、実用上問題のないレベルである。
×:印刷直後に指で触れると汚れる。また、印刷中にインクヘッド等との擦れにより印刷面が乱れる。
【0054】
(2)剥離強度
上記の方法によりインクジェット印刷を施して乾燥させた印刷面に対し、セロハンテープを貼付したのち剥がすセロハンテープ剥離試験を行なった。基材内部では剥離しないがインクが脱落する場合には、インク密着性不良とした。
【0055】
○:基材内部で剥離が起こらず、またインクもセロハンテープ側に移行しない。
△:基材内部で剥離が僅かに見られる。
×:基材内部で剥離が発生し、セロハンテープ側にインクとともに基材の破片が取られる。
【0056】
(3)引掻強度
上記の方法によりインクジェット印刷を施して乾燥させた印刷面を、番手120の紙ヤスリで擦過してその引掻耐性を測定した。
【0057】
○:擦過されるものの印刷面は良好な状態を保ち、紙ヤスリ側に基材粉やインク粉が移行しない。
△:基材表面がやや欠落し不鮮明となり、紙ヤスリ側に基材粉やインク粉がやや移行する。
×:基材表面が完全に欠落し印刷が不明となり、紙ヤスリ側に基材粉やインク粉が大量に移行する。
【0058】
【表1】
表1よりわかるように、実施例1および実施例2は、比較例1に比べて印刷面の剥離強度およびインク吸収性が優れる。また実施例1および実施例2は、比較例2に比べて印刷面の剥離強度および印刷面の引掻強度に優れる。これらのことより、実施例のフィルムは印刷用シートに求められる特性をバランスよく保持していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の印刷用シートに用いられる多孔性フィルムの電子顕微鏡写真
Claims (1)
- 微細孔を有する熱可塑性ポリオレフィン系樹脂製多孔性フィルムを印刷記録層として少なくとも1層含む印刷用シートであって、前記多孔性フィルムは、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを20重量%以上含有し、バブルポイント法(ASTM F316−86)により求めた前記微細孔の平均細孔直径d(μm)と、水銀圧入法(JIS K 1150)により求めた前記微細孔の平均細孔半径r(μm)とが、式:1.2≦2r/d≦1.7を満たすものであることを特徴とする印刷用シート。
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