JP4514930B2 - リニアモータの制御装置及び制御方法並びにエレベータ装置 - Google Patents

リニアモータの制御装置及び制御方法並びにエレベータ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリニアモータの制御技術及びリニアモータを備えたロープレスエレベータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エレベータ装置においては、巻上げ機のシーブに巻き掛けたロープの一端に人や荷物を搭載するかごを、他端にカウンタウェイトを吊り下げ、ロープとシーブの間の摩擦を利用してかごを昇降させる、いわゆるロープトラクション方式が一般的であるが、最近では、リニアモータを駆動源とし、ロープを用いない、いわゆるロープレスエレベータ装置が提案されている。
【0003】
図3に従来のロープレスエレベータ装置の構成を示す。ロープレスエレベータ装置では、かご10の対向する一組の面に永久磁石3を備え、昇降路壁20に電機子巻線22が設けられている。すなわち、永久磁石3を可動子とし、電機子巻線22を固定子とするリニアモータが構成され、このリニアモータによりかご10が駆動されてガイドレール8に沿って昇降するようになっている。
【0004】
昇降路壁20に設けられた電機子巻線22に三相交流電圧を供給し、移動磁界を発生させる。この移動磁界の位相とかご10に設けられた永久磁石3の磁界の位相とのずれにより、案内力が発生し、エレベータの推進力が得られる。
【0005】
エレベータのかご10の位置及び速度は、投光器6aと受光器6bとからなるリニアセンサにより検出される。また、かご10(可動子)と昇降路壁20(固定子)間の距離すなわちギャップδは、ギャップセンサ5により検出される。リニアセンサからの信号出力は変換回路93に入力され、速度v、位置xの情報に変換され、推進力制御器95に出力される。推進力制御器95は、かご10の速度v、位置x及びギャップδに基き実効電流値I*を演算し、位相変換器97に出力する。その後、位相変換器97では、実効電流値I*から電圧指令(Vu、Vv、Vw)に変換し、インバータ91に出力する。インバータ91は電圧指令に基き、電機子巻線22の駆動電流(iu、iv、iw)を制御する。
【0006】
以上のようにリニアモータを用いた従来のロープレスエレベータ装置では、電流帰還制御に用いるリニアモータの可動子(永久磁石3)の位置信号として、リニアセンサからの出力に基いて演算した値を使用していた。しかし、このリニアセンサは高価であるため、昇降路20の長さが長くなり、その数が増加すると、コストが上昇するという問題がある。
【0007】
したがって、実用化の点から、センサを用いないでリニアモータを制御するセンサレス方式が望ましいと考えられ、いくつかのリニアモータのセンサレス制御方式が提案されている。例えば、特開平9−65676号公報に開示されたものがある。この方法では、二次側(固定子側)の電機子巻線の電流、電圧から磁束ベクトルを求め、これから可動子の位置、速度を推定している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この公報に開示された方法では、固定子と可動子間に働く案内力と、可動子を移動させるための推進力の両方を制御するための技術までは開示されていない。リニアモータをより安定して制御するためには、案内力と推進力の双方を非干渉に制御することが望ましく、今後、案内力と推進力の双方を非干渉に制御するための技術が要望される。
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、リニアモータの可動子の位置や速度を検出するセンサを用いず、可動子の案内力と推進力とを非干渉に制御可能なリニアモータの制御装置及びそれを用いたエレベータ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリニアモータの制御装置は、可動子と、該可動子を駆動するための磁界を発生する電機子巻線を有する固定子とからなるリニアモータに対し、可動子を所定方向に走行させる推進力と、可動子と固定子間の空隙量を一定に保持する案内力とを制御する制御装置である。そのリニアモータの制御装置は、固定子からの帰還電流及び固定子の印加電圧に基いて、可動子の磁束と、固定子の磁束と可動子の磁束の合成鎖交磁束とを推定する手段と、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、それらの磁束間の位相差を求める手段と、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、可動子の位置及び速度を推定する手段と、推定した可動子の位置及び速度に基いて推進力の目標値である目標推進力を演算する第1の演算手段と、可動子と固定子間の空隙量に基いて案内力の目標値である目標案内力を求める第2の演算手段と、目標推進力と前記目標案内力とに基き、固定子磁束と可動子磁束とを合成した合成鎖交磁束の目標値である目標合成鎖交磁束と、可動子磁束と合成鎖交磁束間の位相差の目標値である目標位相差とを演算する第3の演算手段と、目標合成鎖交磁束と目標位相差に基き、推進力及び案内力を独立に制御すべく前記電機子巻線の電流を制御するための制御信号を生成し出力する第4の演算手段と、制御信号に基き、電機子巻線に供給する電流の電流値及び位相を制御するインバータ手段とを備える。
【0011】
好ましくは、第1の演算手段は、推定した可動子の位置及び速度と、可動子の位置及び速度に対する指令値との差分に基いて目標推進力を演算する。
【0012】
好ましくは、第2の演算手段は、可動子と固定子間の空隙量と、その空隙量の指令値との差分に基いて目標案内力を求める。
【0013】
好ましくは、第4の演算手段は、推定した合成鎖交磁束量に応じて決定される位相の範囲と、推定した合成鎖交磁束と目標合成鎖交磁束との差分と、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから求めた位相差と目標位相差との差分とに基いて制御信号を生成する。
【0014】
本発明に係るエレベータ装置は、上記のリニアモータの制御装置を備える。好ましくは、エレベータ装置において、可動子の位置及び速度を検出するための位置センサをエレベータの乗降口近傍にのみ設られており、第1の演算手段は、可動子が所定速度以下の速度で移動するときは、位置センサにより検出された可動子の位置及び速度情報を用いて目標推進力を求め、前記可動子が所定速度より大きい速度で移動するときは、推定された可動子の位置及び速度情報を用いて目標推進力を求める。
【0015】
本発明に係るリニアモータの制御装置は、可動子と、該可動子を駆動するための磁界を発生する電機子巻線を有する固定子とからなるリニアモータに対し、可動子を所定方向に走行させる推進力と、可動子と固定子間の空隙量を一定に保持する案内力とを制御する制御方法である。その制御方法は、固定子からの帰還電流及び固定子の印加電圧に基いて、可動子の磁束と、固定子の磁束と可動子の磁束の合成鎖交磁束とを推定する第1のステップと、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とからそれらの磁束間の位相差を求める第2のステップと、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、可動子の位置及び速度を推定する第3のステップと、推定した可動子の位置及び速度に基いて推進力の目標値である目標推進力を演算する第4のステップと、可動子と固定子間の空隙量に基いて案内力の目標値である目標案内力を求める第5のステップと、目標推進力と目標案内力とに基き、固定子磁束と可動子磁束とを合成した合成鎖交磁束の目標値である目標合成鎖交磁束と、可動子磁束と合成鎖交磁束間の位相差の目標値である目標位相差とを演算する第6のステップと、目標合成鎖交磁束と目標位相差に基き、推進力及び案内力を独立に制御すべく前記電機子巻線の電流を制御するための制御信号を生成し出力する第7のステップと、制御信号に基き、電機子巻線に供給する電流の電流値及び位相を制御する第8のステップとからなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照し、本発明に係るリニアモータの制御装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に、本発明に係るロープレスエレベータ装置の構成を示す。エレベータ装置は人や荷物を搭載するかご10を備え、かご10が昇降路壁20により形成される昇降路中を、昇降路壁20に設けられたガイド機構に沿って昇降する。かご10はリニア同期モータ15により駆動される。
【0018】
リニア同期モータ15は、かご10に設けられた永久磁石3と、昇降路壁20に設けられたU、V、W相の電機子巻線22とからなり、永久磁石3が一次側の可動子を、電機子巻線22が二次側の固定子を構成する。
【0019】
かご10にはさらに一次側の永久磁石3と二次側の電機子巻線22との間のギャップ量δを測定するギャップセンサ5と、かご10に搭載された人や荷物の荷重Wを検出する荷重センサ9とが設けられている。
【0020】
エレベータ装置は、固定子の電機子巻線22の各相へ供給する電流の電流値及び位相を制御するインバータ31を備えている。インバータ31はスイッチングテーブル53により制御される。この制御において、リニア同期モータ15における永久磁石3の磁束の位相と、電機子巻線22の磁束と永久磁石3の磁束の合成鎖交磁束の位相との差、つまり、可動子磁束と合成鎖交磁束との位相差(以下「一次二次位相差」という。)を帰還するフィードバック制御が行なわれる。一次二次位相差は所定の角度(例えば90°)に保持されるように帰還制御される。このため、エレベータ装置において、電圧検出器33、電流検出器35、磁束推定器37、案内力推定器39、位置・速度推定器41、位相角演算器43a、43b、目標推進力演算器47、目標位相差及び磁束演算器49、目標案内力演算器50及びスイッチングテーブル53とによりフィードバックループが形成されている。
【0021】
以下、本実施形態のエレベータ装置のフィードバック制御について説明する。本実施形態のエレベータ装置は推進力Fxと案内力Fzとを非干渉に制御する。ここで、推進力Fxは、リニア同期モータの可動子(すなわち、永久磁石3及びかご10)を昇降路壁20に沿って垂直方向に移動させるために可動子と固定子間に作用する力である。案内力Fzは、水平方向走行方式のリニア同期モータの浮上力に相当するものであり、推進力Fxと直交する方向に働く力である。この案内力Fzの制御により、永久磁石3と電機子巻線22間のギャップ量δが一定に制御される。リニア同期モータにおいて推進力Fxと案内力Fzは次式で求められる。
【数1】
Figure 0004514930
ここで、Lは電機子巻線22の同期インダクタンス、λsは電機子巻線22(固定子)の磁束と永久磁石3(可動子)の磁束との合成鎖交磁束、λPMは永久磁石3(可動子)の鎖交磁束、τは磁極ピッチ、γは合成鎖交磁束λsと鎖交磁束λPMの位相差(一次二次位相差)である。
【0022】
上式(1)、(2)において推進力Fxと案内力Fzとはいずれも合成鎖交磁束λsと、一次二次位相差γの関数であるため、合成鎖交磁束λsと位相差γを制御することで、推進力Fxと案内力Fzを互いに独立してすなわち非干渉に制御することが可能となる。合成鎖交磁束λs、鎖交磁束λPM、一次二次位相差γは次式で求められる。
【数2】
Figure 0004514930
【0023】
以上の関係を踏まえて図1を参照しながらフィードバック制御を説明する。なお、本エレベータ装置には、使用者の操作に基く停止階の情報等に基いて、可動子の速度指令、位置指令等の指令情報(v0、x0、δ0等)が適宜入力されるものとする。図1において、電圧検出器33は電機子巻線22の電圧Vを検出し、電流検出器35は電機子巻線22に流れる電流Iを検出する。磁束推定器37は、検出された電機子巻線22の電圧Vと電流Iから、電機子巻線22と永久磁石3とによる合成鎖交磁束λsと、永久磁石3による鎖交磁束λPMとを式(3)、式(4)を用いて推定する。
【0024】
位置・速度推定器41は推定された合成鎖交磁束λsと、永久磁石3による鎖交磁束λPMとにより、可動子(永久磁石3)の速度v、位置xを次式を用いて推定する。
【数3】
Figure 0004514930
ここで、kは磁束回転速度から可動子移動速度へ変換するための変換定数である。
【0025】
目標推進力演算器47は、かご10の自重Mと、かご10の荷重Wと、可動子の推定された位置x及び推定された速度vと、可動子の指令位置x0及び指令速度v0とを入力し、これらにより、かご10に与えるべき推進力Fを次式で求める(なお、図1において上方向を正の向きとする。)。
【数4】
Figure 0004514930
ここで、gは重力加速度、Kp、K1、KDは適宜求められた定数である。
【0026】
案内力推定器39は、かご10の自重M、かご10の荷重W、測定された可動子と固定子間のギャップ量δ、推定された電機子巻線22による磁束と可動子の磁束との合成鎖交磁束λs^及び永久磁石3による鎖交磁束λPM^により、かご10に作用する案内力Fzを式(2)で計算する。
【0027】
求められた案内力Fzと、目標推進力F及びガイド機構による摩擦力に対する摩擦係数μから、かご10に指令すべき、推進力の制御目標値となる目標推進力Fx *は次式で求められる。
x *=F+μ・Fz …(9)
【0028】
目標案内力演算器50は、測定されたギャップ量δと指令されたギャップ量δ0とから、かご10に指令すべき、案内力の制御目標値となる案内力Fz *を次式で求める。
【数5】
Figure 0004514930
ここで、Kδは定数である。
【0029】
目標位相差及び磁束演算器49は、式(9)、(10)より求められた目標値Fx *、Fz *に基き、式(1)、(2)により位相差及び合成鎖交磁束の目標値である目標位相差γ*と目標合成鎖交磁束λs *をそれぞれ算出する。
【0030】
位相角演算器43a、43bにおいて、推定された固定子磁束と可動子磁束の合成鎖交磁束λsと、推定された可動子の鎖交磁束λPMの位相がそれぞれ求められる。その後、それらの磁束の位相角から式(5)の関係に基き、すなわち次式によって一次二次位相差の推定値γ^が求められる。
γ^=argλs^−argλPM^ …(11)
ここで、位相差γ^は、電機子巻線22の電流帰還信号に基いて求められた位相差となる。
【0031】
位相角領域選択器(ゾーンセレクタ)51では、式(3)に基いて推定された合成鎖交磁束λs^から位相角領域(ゾーン)を特定し、スイッチングテーブル53に出力する。このときの位相角領域は全領域(360°)を六分割した60°毎の領域となり、位相角領域選択器(ゾーンセレクタ)51は、合成鎖交磁束λs^がどの位相角領域に属するかを判断し、合成鎖交磁束λs^が属する位相角領域を領域値N(N=1,2,…,6)として出力する。
【0032】
スイッチングテーブル53は、目標位相差及び磁束演算器49により求められた目標位相差γ*と式(11)により求められた位相差γ^との差分Δγ、目標合成鎖交磁束λs *と式(3)により求められた磁束λs^との差分Δλs、及び、位相角領域選択器51により求められた領域値Nにより、インバータ31の各相に指令する指令信号を決定し、出力する。インバータ31はこの指令信号に基き各相の電機子巻線22に流れる電流を制御する。
【0033】
以上のように本実施形態のエレベータ装置は、リニア同期モータの可動子の位置をリニアセンサを用いて検出することなく、リニア同期モータのフィードバック制御を可能とし、また、式(1)と式(2)で表される理論に基づき、推進力Fxと案内力Fzとを互いに非干渉に制御することができる。
【0034】
このように、リニア同期モータの可動子の位置をリニアセンサを用いて検出する必要がないため、構成が簡単になり、製造コストの低減が図れる。また、推進力Fxと案内力Fzとの非干渉制御が可能であるため、リニア同期モータのより安定なかつ高度な制御が実現できる。
【0035】
なお、上記の説明において、ガイド機構の摩擦係数μは定数としたが、この摩擦係数μの値を推定するループを設けてもよい。これは、水平方向走行方式では重力と釣り合う形で浮上させる完全な物理的非干渉を実現できるのに対し、垂直方向走行方式のエレベータでは、浮上力に相当する物理量は案内力の形で現出し、ガイド機構による摩擦力を避けることはできず、したがって物理的非干渉な状態が実現不可能だからである。
【0036】
なお、上記の例では可動子のマグネットとして永久磁石を使用しているが、そのかわりに超伝導コイル等を使用してもよい。
【0037】
(実施の形態2)
本実施形態では、低速域でのみ、固定子の位置と速度を検出する位置センサからの出力信号に基いてフィードバック制御を行なうエレベータ装置の例を説明する。
【0038】
より具体的には、本実施形態のエレベータ装置は、可動子の位置及び速度を検出する位置センサを設け、エレベータ(可動子)が低速で動作中は、その位置センサからの検出信号に基いてフィードバック制御を行ない、エレベータが中高速で動作中は実施の形態1で示したセンサレス制御方式でフィードバック制御を行なう。但し、可動子の位置を検出する位置センサは、その数が多くならないようにするため、昇降路壁20側のエレベータの停止階の乗降口付近のみに設けるようにする。
【0039】
本実施形態のエレベータ装置の構成は図1に示した構成と基本的に同様であるが、図2に示す部分が異なる。すなわち、同図に示すように、かご10の位置と速度を検出するための位置センサ7を設けている。位置センサ7は、停止階の乗降口付近の昇降路壁20側に取りつけられた投光器7aと、かご10側に設けられた受光器7bとからなる。投光器7aは昇降路壁20側においてエレベータの乗降口付近のみに取り付けるようにし、これにより取りつける位置センサの数の増加を抑えることによる製造コストの増加を抑えている。位置センサ7は、かご10が乗降口近傍まで移動し、受光器7bが投光器7aからの光を受けることができる範囲内に入り、かつ、かご10の移動速度が所定速度以下にあるときのみ、かご10の位置及び速度を示す検出信号を出力するものとする。
【0040】
さらに、本実施形態のエレベータ装置は、目標推進力演算器47への入力である位置及び速度情報を切り換えるセレクタ45を設けている。セレクタ45は、位置・速度推定器41からの出力信号または位置センサ7からの検出信号を切り換えて目標推進力演算器47へ出力する。より具体的には、セレクタ45は、位置センサ7からの検出信号を受信したときに、位置センサ7からの位置、速度情報を目標推進力演算器47に出力するようにし、位置センサ7からの検出信号を受信しないときは、位置・速度推定器41からの位置、速度情報を目標推進力演算器47に出力するように、目標推進力演算器47への出力を切り換える。
【0041】
以上のように位置センサ7及びセレクタ45を設けることで、所定の低速域ではセンサにより位置検出を行ない、中高速域ではセンサレス方式でリニアモータを制御することが可能となる。センサレス方式は低速域での応答性がよくないため、低速域はセンサによる速度、位置検出を行なうことにより、低速域での制御の安定性を改善できるとともに、停止制御を行なうことが可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明のリニアモータの制御装置及び制御方法によれば、リニアモータの可動子の位置を検出するためのセンサを用いずに、リニアモータのフィードバック制御が可能となり、また、リニアモータの推進力と案内力とを独立して非干渉に制御することが可能となる。
【0043】
また、本発明のエレベータ装置によれば、リニアモータの制御装置を備えることにより、リニアモータの可動子の位置を検出するためのセンサを要しないため、エレベータ装置の製造コストを抑制できる。また、リニアモータの推進力と案内力とを独立して非干渉に制御できるため、より高度なエレベータ装置の駆動制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のリニア同期モータを用いたロープレスエレベータ装置の構成を示した図。
【図2】 本発明のリニア同期モータを用いたロープレスエレベータ装置の別の実施形態の構成を示した図。
【図3】 従来のリニア同期モータを用いたロープレスエレベータ装置の構成を示した図。
【符号の説明】
3 永久磁石(可動子)
5 ギャップセンサ
7 位置センサ
9 荷重センサ
10 かご
15 リニア同期モータ
20 昇降路壁
22 3相電機子巻線(固定子)
31 インバータ
33 電流検出器
35 電圧検出器
37 磁束推定器
39 案内力推定器
41 位置・速度推定器
43a、43b 位相角演算器
45 セレクタ
47 目標推進力演算器
49 目標位相差及び磁束演算器
50 目標案内力演算器
51 位相角領域選択器
53 スイッチングテーブル

Claims (10)

  1. 可動子と、該可動子を駆動するための磁界を発生する電機子巻線を有する固定子とからなるリニアモータに対し、可動子を所定方向に走行させる推進力と、可動子と固定子間の空隙量を一定に保持する案内力とを制御する制御装置であって、
    固定子からの帰還電流及び固定子の印加電圧に基いて、可動子の磁束と、固定子の磁束と可動子の磁束の合成鎖交磁束とを推定する手段と、
    前記推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、それらの磁束間の位相差を求める手段と、
    前記推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、可動子の位置及び速度を推定する手段と、
    前記推定した可動子の位置及び速度に基いて推進力の目標値である目標推進力を演算する第1の演算手段と、
    可動子と固定子間の空隙量に基いて案内力の目標値である目標案内力を求める第2の演算手段と、
    前記目標推進力と前記目標案内力とに基き、固定子磁束と可動子磁束とを合成した合成鎖交磁束の目標値である目標合成鎖交磁束と、可動子磁束と合成鎖交磁束間の位相差の目標値である目標位相差とを演算する第3の演算手段と、
    前記目標合成鎖交磁束と目標位相差に基き、推進力及び案内力を独立に制御すべく前記電機子巻線の電流を制御するための制御信号を生成し出力する第4の演算手段と、
    該制御信号に基き、前記電機子巻線に供給する電流の電流値及び位相を制御するインバータ手段と
    を備えたことを特徴とするリニアモータの制御装置。
  2. 前記第1の演算手段は、前記推定した可動子の位置及び速度と、可動子の位置及び速度に対する指令値との差分に基いて前記目標推進力を演算することを特徴とする請求項1記載のリニアモータの制御装置。
  3. 前記第2の演算手段は、可動子と固定子間の空隙量と、その空隙量の指令値との差分に基いて前記目標案内力を求めることを特徴とする請求項1記載のリニアモータの制御装置。
  4. 前記第4の演算手段は、前記推定した合成鎖交磁束量に応じて決定される位相の範囲と、前記推定した合成鎖交磁束と前記目標合成鎖交磁束との差分と、前記推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから求めた位相差と前記目標位相差との差分とに基いて制御信号を生成することを特徴とする請求項1記載のリニアモータの制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一に記載のリニアモータの制御装置を備えたエレベータ装置。
  6. 前記可動子の位置及び速度を検出するための位置センサをエレベータの乗降口近傍にのみ設けており、
    前記第1の演算手段は、可動子が所定速度以下の速度で移動するときは、前記位置センサにより検出された可動子の位置及び速度情報を用いて前記目標推進力を求め、前記可動子が所定速度より大きい速度で移動するときは、前記推定された可動子の位置及び速度情報を用いて前記目標推進力を求めることを特徴とする請求項5記載のエレベータ装置。
  7. 可動子と、該可動子を駆動するための磁界を発生する電機子巻線を有する固定子とからなるリニアモータに対し、可動子を所定方向に走行させる推進力と、可動子と固定子間の空隙量を一定に保持する案内力とを制御する制御方法であって、
    固定子からの帰還電流及び固定子の印加電圧に基いて、可動子の磁束と、固定子の磁束と可動子の磁束の合成鎖交磁束とを推定する第1のステップと、
    前記推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とからそれらの磁束間の位相差を求める第2のステップと、
    前記推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから、可動子の位置及び速度を推定する第3のステップと、
    前記推定した可動子の位置及び速度に基いて推進力の目標値である目標推進力を演算する第4のステップと、
    可動子と固定子間の空隙量に基いて案内力の目標値である目標案内力を求める第5のステップと、
    前記目標推進力と前記目標案内力とに基き、固定子磁束と可動子磁束とを合成した合成鎖交磁束の目標値である目標合成鎖交磁束と、可動子磁束と合成鎖交磁束間の位相差の目標値である目標位相差とを演算する第6のステップと、
    前記目標合成鎖交磁束と目標位相差に基き、推進力及び案内力を独立に制御すべく前記電機子巻線の電流を制御するための制御信号を生成し出力する第7のステップと、
    該制御信号に基き、前記電機子巻線に供給する電流の電流値及び位相を制御する第8のステップと
    からなることを特徴とするリニアモータの制御方法。
  8. 前記第4のステップは、前記推定した可動子の位置及び速度と、可動子の位置及び速度に対する指令値との差分に基いて前記目標推進力を演算することを特徴とする請求項7記載のリニアモータの制御方法。
  9. 前記第5のステップは、可動子と固定子間の空隙量と、その空隙量の指令値との差分に基いて前記目標案内力を求めることを特徴とする請求項7記載のリニアモータの制御方法。
  10. 前記第7のステップは、前記推定した合成鎖交磁束量に応じて決定される位相の範囲と、前記推定した合成鎖交磁束と前記目標合成鎖交磁束との差分と、推定した可動子の磁束と合成鎖交磁束とから求めた前記位相差と前記目標位相差との差分とに基いて制御信号を生成することを特徴とする請求項7記載のリニアモータの制御方法。
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