しかしながら、このような従来の瞬低補償装置にあっては、高価であるために、やたらに多くの装置に具備させることはできない。よって、この瞬低補償装置を具備させて有効に動作させる装置(箇所)を特定する必要があるが、どこに瞬低が発生するのか(系統側あるいは設備内の電源回路の特定箇所か)、また、どこに瞬低の影響による不具合(瞬低の影響を間接的に受けたことによる装置の停止など)が発生するのかなどを特定することができなかった。
このために、瞬低の発生原因を分析することができないとともに、その発生箇所も特定することができないことから、瞬低補償装置を配備するという瞬低対策を、瞬低の影響を受ける可能性のある広範囲の設備に対して行わなければならず、費用が高額となってしまってその対策自体を困難にしていた。
このことから、本願の発明者は、瞬低と調査対象の装置状態とを複数箇所で監視して瞬低による影響を調査することにより、瞬低が不具合の発生要因なのか否か、また、さらにどの装置に瞬低が影響しているのかを特定可能にする瞬低調査システムを発明した。この瞬低調査システムは、瞬低調査装置(信号処理装置)を複数箇所に配置して、いずれかの装置が瞬低発生を検知したときに、調査対象の装置状態を記録するトリガー信号をこれらの調査装置間でリレー式に伝送することにより、直接接続することのできない箇所の調査装置同士も関連付けして、例えば、ライン全体での瞬低調査を実現している。
ここで、このように複数の装置間で信号を受け渡してリレーするときに、その信号に装置状態などの各種情報を乗せることができずに、例えば、検知などの有無のみを知らせるトリガー信号を受け渡す場合には、システム全体の各装置が正常に稼動しているか、また、装置間の信号の受け渡しは上手く行っているかなどを遠隔する装置から把握することはできない。
そこで、本発明は、信号を伝送する各装置間の状態を遠隔する装置から把握可能にすることにより、その遠隔装置から、信号の伝送が正常に行われるか否かを容易に確認し、また、エラーが発生した箇所を容易に特定して対処することのできるシステムを構築可能にすることを目的とする。
上記課題を解決する信号処理装置の第1の発明は、信号を受け渡しする上流側または下流側の一方あるいは双方の相手装置とともに設置されて、該相手装置との間で信号をリレー式にやり取りするシステムを構築する信号処理装置であって、相手装置への信号を出力する出力部および該相手装置からの信号を入力する入力部を有して信号のやり取りをするチャンネルを一組または二組以上備えるとともに、該チャンネル間の信号のやり取りを制御する制御部を備えて、該制御部は、相手装置との間で信号のやり取りをするチャンネル間のシステムにおける区間番号を取得して設定する区間設定モードを有して、該区間設定モードでは、システム中の各チャンネル毎の信号のやり取りを当該モードの開始から第1設定タイミングに一致するように順次に実行することにより、備えるチャンネルの入力部が相手装置からの信号を入力したタイミングに応じた区間番号を取得して当該チャンネルに設定することを特徴とするものである。
この発明では、区間設定モードが電源投入時やリセットなどの手動操作時に実行されると、システム内における各装置が一致する時刻に、あるいは、同期信号を送受するなどすることにより同期を取って、例えば、均等間隔の第1設定タイミング(区間に応じて間隔が増減するなどの任意の間隔でもよい)毎に、各装置は、上流側の相手装置から送られてくる信号を受け取ると、その信号をそのまま下流側の相手装置に受け渡す動作を、備えるチャンネル毎に行うことにより、そのモード開始から信号の受信タイミングまでの経過時間中における第1設定タイミングの繰り返し回数から、自身のチャンネル毎の相手装置との間の区間番号(順番)が判明し取得設定することができる。したがって、システム内の各装置は、単なる信号を送受するだけで、チャンネル間の区間の順番を把握して各種処理に利用することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記制御部は、システムを監視するマスタとして機能する場合の区間設定モードでは、当該区間設定モードの開始タイミングをトリガーにして、下流側の相手装置への信号の出力および該信号に応答する当該相手装置からの信号の入力を、使用するチャンネル毎に順次に行うことを特徴とするものである。
この発明では、マスタ装置として機能する場合には、区間設定モードの開始により下流側のスレーブ装置との間で信号の出入力を、備えるチャンネル毎に順次に、言い換えると、先のチャンネルでの出力と入力(やり取り)が完了した後に次のチャンネルでの出力と入力を行う。したがって、マスタ装置から出力された信号を最初に受け取るスレーブ装置のチャンネル間が第1区間となり、下流側のスレーブ装置同士の信号のリレーがすべて終了して最後に同一または異なるスレーブ装置からの信号が入力されたチャンネル間は最終区間になる。
上記課題を解決する信号処理装置の第3の発明は、上記第2の発明の特定事項に加え、前記制御部は、マスタ装置の下流側に配置されてスレーブとして機能する場合の区間設定モードでは、上流側の相手装置からの信号の入力をトリガーにして、下流側の相手装置への信号の出力および該信号に応答する当該相手装置からの信号の入力を、使用するチャンネル毎に順次に行った後に、該上流側の相手装置に信号を出力することを特徴とするものである。
この発明では、スレーブ装置として機能する場合には、区間設定モードの開始後に上流側のマスタ装置あるいはスレーブ装置から信号が入力されたときに、備える以降のチャンネル毎に下流側のスレーブ装置との間で信号の出入力を順次に、言い換えると、先のチャンネルでの出力と入力(やり取り)が完了した後に次のチャンネルでの出力と入力を行って、この後に、上流側のマスタ装置あるいはスレーブ装置に信号を折り返すように出力する。したがって、上流側のマスタ装置あるいはスレーブ装置から出力された信号を最初に受け取るチャンネル間がそのスレーブ装置での最初の区間となり、下流側のスレーブ装置同士の信号のリレーがすべて終了して最後に同一または異なるスレーブ装置からの信号が入力されたチャンネル間はそのスレーブ装置での最終区間になる。
上記課題を解決する信号処理装置の第4の発明は、上記第2の発明の特定事項に加え、前記制御部は、マスタとして機能する場合の区間設定モードでは、使用するチャンネル毎の相手装置との間で行う信号のやり取りが終了したときのタイミングに応じてシステムにおける総区間数を取得して設定することを特徴とするものである。
この発明では、マスタ装置として機能する場合には、区間設定モードにおける下流側のスレーブ装置同士の信号のリレーがすべて終了した後に、そのうちの最後のスレーブ装置からの信号が入力されるチャンネル間の最終区間がシステムにおける総区間数になる。したがって、マスタ装置は、自身のチャンネルの区間番号でシステムの総区間数を把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第5の発明は、上記第2または第4の発明の特定事項に加え、前記制御部は、マスタとして機能する場合の区間設定モードでは、使用するチャンネル毎の相手装置との間で行う信号のやり取りが終了した後の第2設定タイミングに、下流側に配置されてスレーブとして機能する相手装置に信号を出力することを特徴とするものである。
この発明では、マスタ装置から区間設定モードの第1設定タイミングとは別の第2設定タイミングにスレーブ装置に信号が出力される。したがって、スレーブ装置は、区間番号の設定処理が完了したことを把握することができ、その第2設定タイミングの信号を受け取るタイミングにより、システム全体での処理の終了タイミングを把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第6の発明は、上記第5の発明の特定事項に加え、前記制御部は、マスタ装置の下流側に配置されてスレーブとして機能する場合の区間設定モードでは、該マスタ装置から送られてくる第2設定タイミングの信号が入力されたときには、同時に、他のスレーブ装置に向けて信号を出力するとともに、該第2設定タイミングの信号の入力のタイミングに応じてシステムにおける総区間数を取得して設定することを特徴とするものである。
この発明では、マスタ装置から区間設定モードの第1設定タイミングとは別の第2設定タイミングに出力された信号が下流側のスレーブ装置に同時に入力される。したがって、スレーブ装置は、例えば、第2設定タイミングの信号を受け取るタイミングからその第2設定タイミング(遅延期間)を減算するだけで、マスタ装置に最終区間の信号の入力タイミング(最後のスレーブ装置からの信号が入力されて最終区間を把握するタイミング)を把握して第1設定タイミングの繰り返し回数からシステムにおける総区間数を取得して設定することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第7の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明の特定事項に加え、前記制御部は、チャンネル毎に相手装置との間で行う信号のやり取りをチェックする診断モードを有して、該診断モードでは、システム中の各チャンネルとしての信号のやり取りを当該モードの開始から第1診断タイミングに一致するように順次に実行することにより、チャンネルの入力部に、当該相手装置からの信号が入力された場合には当該区間を正常と判断する一方、当該相手装置からの信号が入力されない場合には当該区間にエラー発生と判断することを特徴とするものである。
この発明では、診断モードが定期的にあるいは手動操作時に実行されると、システム内における各装置が一致する時刻に、あるいは、同期信号を送受するなどすることにより同期を取って、例えば、均等間隔の第1診断タイミング(区間に応じて間隔が増減するなどの任意の間隔でもよい)毎に、各装置は、上流側の相手装置から送られてくる信号を受け取ると、その信号をそのまま下流側の相手装置に受け渡す動作を、備えるチャンネル毎に行うことにより、相手装置からの信号の入力があったときにはその区間は正常に信号のやり取りをすることができ、また、その区間番号に応じたタイミングに相手装置からの信号の入力がないときにはその区間は信号のやり取りにエラーが発生する状態であると判断することができる。したがって、システム内の各装置は、単なる信号を送受するだけで、信号をやり取りするチャンネル間の状態を区間毎に把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第8の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明の特定事項に加え、前記制御部は、チャンネル毎に相手装置との間で行う信号のやり取りをチェックする診断モードを有して、該診断モードでは、システム中の各チャンネルとしての信号のやり取りを当該モードの開始時に実行することにより、チャンネルの入力部に、当該相手装置からの信号が入力された場合には当該区間を正常と判断する一方、当該相手装置からの信号が入力されない場合には当該区間にエラー発生と判断することを特徴とするものである。
この発明では、診断モードが定期的にあるいは手動操作時に実行されると、システム内における各装置が一致する時刻に、各チャンネル毎の相手装置に信号を出力することにより、その各チャンネル毎の相手装置から送られてくる信号の入力があったときにはその区間は正常に信号のやり取りをすることができ、また、その相手装置からの信号の入力がないときにはその区間は信号のやり取りにエラーが発生する状態であると判断することができる。したがって、システム内の各装置は、単なる信号を送受するだけで、信号をやり取りするチャンネル間の状態を区間毎に把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第9の発明は、上記第7または第8の発明の特定事項に加え、前記制御部は、エラーの発生した区間があると判断した場合に、当該区間番号に応じた第2診断タイミングに、各チャンネル毎の相手装置への信号を同時に出力することを特徴とするものである。
この発明では、自身のチャンネルの区間で信号の入力がなくエラーが発生したと判断したときに、エラーの発生した区間番号に応じた第2診断タイミングに、備えるチャンネルから信号が同時に出力される。したがって、信号を受け取ることのできる相手装置に、エラーの発生を知らせることができ、その第2診断タイミングの信号を受け取るタイミングにより、エラー発生区間番号を把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第10の発明は、上記第9の発明の特定事項に加え、前記制御部は、第2診断タイミングの信号が相手装置から送られてきたときには、他のチャンネルの相手装置への信号を同時に出力して他の相手装置に当該信号をリレー形式で受け渡すことを特徴とするものである。
この発明では、信号をやり取りする相手装置から第2診断タイミングに出力された信号を受け取ると、同時に他の相手装置に出力されて、エラーの発生していない装置間でも同時にやり取りされる。したがって、エラーの発生していない他の装置にもエラーの発生を知らせることができ、その第2診断タイミングの信号を受け取るタイミングにより、エラー発生区間番号を把握することができる。
上記課題を解決する信号処理装置の第11の発明は、上記第7から第10のいずれかの発明の特定事項に加え、前記制御部は、エラー発生区間を確認したときには、当該エラー区間を備える表示手段に表示することを特徴とするものである。
この発明では、診断モードの実行によりエラーの発生する状態の区間が把握されたときにはその区間を表示してオペレータなどに報知することができる。したがって、特別な操作をすることなく、診断結果を確認することができ、エラーの発生区間を把握して迅速に対処することができる。
上記課題を解決する信号伝送システムの第1の発明は、上記の第1から第11の発明の信号処理装置のいずれか一つあるいは二つ以上の複数台を、直列またはツリー形式に信号のやり取りを可能に接続して構築することを特徴とするものである。
この発明では、信号のやり取りをする区間番号や総区間数やエラーの発生区間を把握して報知することのできる信号処理装置を直列に、または、ツリー形式に接続するこができる。したがって、信号をリレー式に受け渡しする信号処理装置の間を単なる信号のやり取りで関連付けして、システムの状態や個々の装置の状態を一つの装置から把握することができる。
上記課題を解決する信号伝送システムの第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記信号処理装置は、調査対象を監視する監視手段と、該監視情報に基づいて電力の瞬低の発生を検知する検知手段と、該瞬低発生の検知情報に基づいてトリガー信号を生成する信号生成手段と、内部または外部で生成されたトリガー信号を受け取ったときに前記調査対象と同一または異なる調査対象の状態変化を記録する記録手段と、を備えて、該トリガー信号をやり取りすることにより瞬低発生時における調査対象毎の状態変化を記録する瞬低調査装置として機能して瞬低調査システムを構成することを特徴とするものである。
この発明では、直列やツリー形式に接続された瞬低調査装置のいずれかの調査対象の監視情報から瞬低が検知されると、その瞬低調査装置でトリガー信号が生成されて他の瞬低調査装置に出力され、それぞれで監視する調査対象の状態変化を瞬低調査装置毎に記録するシステムにおいて、その瞬低調査装置(信号処理装置)間で信号のやり取りを行って、各装置のチャンネル間の区間番号や総区間数が把握された上で、エラーの発生区間の報知が行われる。したがって、瞬低調査装置間で単なる信号をリレー式にやり取りするだけで、システムの状態や個々の装置の状態を一つの装置から把握して対処することができ、瞬低調査を行うシステム内の信号のやり取りにエラーが発生していたために、瞬低調査が不完全なものになってしまうことを未然に防止することができる。ここで、やり取りする信号としては、有線接続する際の電気信号や一般的な光信号でもよいが、閃光を用いる場合には、瞬間的にシステム内の装置間に信号を行き渡らせることができ、この閃光信号により極小さなずれの範囲内で同一の信号を同時に受け取ることができる。
上記課題を解決する信号伝送システムの第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記信号処理装置は、出力部が出力信号として閃光を発する閃光手段を備えると共に、入力部が入力信号として光を受光して光電変換する光電変換手段を備えていることを特徴とするものである。
この発明では、瞬間的な強い光の閃光の有無により信号処理装置の間で信号がやり取りされる。したがって、信号処理装置間に信号を伝送する配線を敷設することなく、信号を閃光により瞬間的に相手装置に送ることができる一方、その相手装置は受けた光を光電変換することで信号として処理することができ、よって、システム内のすべての装置に瞬間的に(同時に)信号をリレーすることができる。
上記課題を解決する信号伝送方法の第1の発明は、信号をやり取りするチャンネルを一組または二組以上備える信号処理装置を直列またはツリー形式に接続して該信号処理装置間で信号をリレー式に伝送する方法であって、信号をやり取りするチャンネル間の区間番号を取得して設定する区間設定モードを有しており、該区間設定モードでは、システムを監視するマスタとして機能する信号処理装置から下流側の第1段階のスレーブとして機能する信号処理装置に向けて信号を出力して第1チャンネルに入力した後に、該第1段階以降のスレーブ装置が、上流側のマスタ装置またはスレーブ装置との間で信号をやり取りする第1チャンネル以外の下流側のスレーブ装置との間で信号をやり取りする中継チャンネルを備えていない場合には、末端装置として信号を上流側の相手装置に向けて出力する一方、該中継チャンネルを一つまたは二つ以上備えている場合には、当該中継チャンネル毎に下流側のスレーブ装置に向けての信号の出力および当該下流側のスレーブ装置から出力された信号の入力の確認を順次に行って、当該下流側のスレーブ装置から出力された信号の入力をすべて確認したときに、上流側の相手装置に向けて信号を出力する、という各チャンネル毎の信号のやり取りを、当該区間設定モードの開始から第1設定タイミングに一致するように順次に実行することにより、備えるチャンネルに信号が入力されたタイミングに応じた区間番号を取得して当該チャンネルに設定することを特徴としている。
この発明では、区間設定モードが電源投入時やリセットなどの手動操作時に実行されると、第1設定タイミング毎に信号のやり取りが行われて、まずは、マスタ装置の第1チャンネルから出力された信号が第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルに入力されて、その第1段階のスレーブ装置よりも下流側での信号のやり取りが終了した後に、その第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルからマスタ装置の第1チャンネルに信号が入力される。そのマスタ装置が次のチャンネルを備える場合には、この後に、その次のチャンネルから出力された信号が次の第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルに入力されて、同様の処理が繰り返される。そして、次に信号を入力する第1段階のスレーブ装置がない場合に、最終の第1段階のスレーブ装置からマスタ装置への信号入力で第1設定タイミングに一致する信号のやり取りが完了する。このとき、第1段階のスレーブ装置以降では、上流側のスレーブ装置(中継スレーブ装置)がマスタ装置と同様に各チャンネル毎に信号の出入力を行う一方、下流側に信号を出力することのない末端のスレーブ装置は、信号入力される第1チャンネルでその上流側に信号を出力して返送する。これにより、下流側のスレーブ装置での信号のやり取りが順次に、チャンネル毎に、また、そのスレーブ装置毎に終了して、最終的には最後の第1段階のスレーブ装置からマスタ装置の最後のチャンネルに信号が入力される。したがって、マスタ装置やスレーブ装置のチャンネル間の信号のやり取りが重複することなく第1設定タイミング毎に順次に繰り返されて、それぞれの信号の入力タイミングまでの繰り返し回数から、自身のチャンネル毎の相手装置との間の区間番号(順番)が判明し取得設定することができ、そのチャンネル間の区間の順番を各種処理に利用することができる。ここで、マスタ装置やスレーブ装置が第1チャンネルのみの場合には、その第1チャンネルが最後のチャンネルとなり、また、マスタ装置が第1チャンネルのみの場合には、第1段階のスレーブ装置も一つになることはいうまでもない。
上記課題を解決する信号伝送方法の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記区間設定モードでは、マスタ装置は、スレーブ装置との間で最終のやり取りを行った区間番号を、信号を伝送する総区間数として取得して設定するとともに、該信号のやり取りを終了した後の第2設定タイミングに、下流側のスレーブ装置に向けて信号を出力する一方、スレーブ装置は、該マスタ装置から送られてくる第2設定タイミングの信号が入力されたときには、同時に、他のスレーブ装置に向けて信号を出力するとともに、該第2設定タイミングの信号の入力のタイミングに応じて信号を伝送する総区間数を取得して設定することを特徴としている。
この発明では、マスタ装置はスレーブ装置との間で信号のやり取りを行う最終の区間番号を総区間数として取得設定できるのに加えて、スレーブ装置でも、そのマスタ装置から送られてくる第2設定タイミングの信号をすべてのスレーブ装置が同時に受け取って、その第2設定タイミングの信号の入力タイミングからその第2設定タイミング(遅延期間)を減算するなどして最終の区間番号を取得することができる。したがって、スレーブ装置でも自身の区間番号だけでなくシステム全体の総区間数を取得設定することができる。
上記課題を解決する信号伝送方法の第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、チャンネル毎に行う信号のやり取りをチェックする診断モードを有して、該診断モードでは、マスタ装置から下流側の第1段階のスレーブ装置に向けて信号を出力して第1チャンネルに入力した後に、該第1段階以降のスレーブ装置が、上流側のマスタ装置またはスレーブ装置との間で信号をやり取りする第1チャンネル以外の下流側のスレーブ装置との間で信号をやり取りする中継チャンネルを備えていない場合には、末端装置として信号を上流側の相手装置に向けて出力する一方、該中継チャンネルを一つまたは二つ以上備えている場合には、当該中継チャンネル毎に下流側のスレーブ装置に向けての信号の出力および当該下流側のスレーブ装置から出力された信号の入力の確認を順次に行って、当該下流側のスレーブ装置から出力された信号の入力をすべて確認したときに、上流側の相手装置に向けて信号を出力する、という各チャンネル毎の信号のやり取りを、当該診断モードの開始から第1診断タイミングに一致するように順次に実行することにより、備えるチャンネルに信号が入力された場合には当該区間を正常と判断する一方、該信号が入力されない場合には当該区間にエラー発生と判断することを特徴としている。
この発明では、診断モードが定期的や手動操作時に実行されると、第1診断タイミング毎に信号のやり取りが行われて、まずは、マスタ装置の第1チャンネルから出力された信号が第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルに入力されて、その第1段階のスレーブ装置よりも下流側での信号のやり取りが終了した後に、その第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルからマスタ装置の第1チャンネルに信号が入力される。その第1段階のスレーブ装置よりも下流側での信号のやり取りが終了した後に、その第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルからマスタ装置の第1チャンネルに信号が入力される。そのマスタ装置が次のチャンネルを備える場合には、この後に、その次のチャンネルから出力された信号が次の第1段階のスレーブ装置の第1チャンネルに入力されて、同様の処理が繰り返される。そして、次に信号を入力する第1段階のスレーブ装置がない場合に、最終の第1段階のスレーブ装置からマスタ装置への信号入力で第1診断タイミングに一致する信号のやり取りが完了する。この第1段階のスレーブ装置以降では、上流側のスレーブ装置(中継スレーブ装置)がマスタ装置と同様に各チャンネル毎に信号の出入力を行う一方、下流側に信号を出力することのない末端のスレーブ装置は、信号入力される第1チャンネルでその上流側に信号を出力して返送する。これにより、下流側のスレーブ装置での信号のやり取りが順次に、チャンネル毎に、また、そのスレーブ装置毎に終了して、最終的には最後の第1段階のスレーブ装置からマスタ装置の最後のチャンネルに信号が入力される。このとき、チャンネルの区間番号に応じたタイミングに信号が入力された場合には正常に信号をやり取り可能な区間と判断する一方、そのタイミングに信号が入力されない場合にはその区間は信号のやり取りにエラーの発生する状態であると判断することができる。したがって、マスタ装置やスレーブ装置のチャンネル間で単なる信号を送受するだけで、所望の信号処理を実行する前に、信号をやり取りするチャンネル間の状態を区間毎に把握することができる。
上記課題を解決する信号伝送方法の第4の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、チャンネル毎に行う信号のやり取りをチェックする診断モードを有して、該診断モードでは、該各チャンネル毎の信号のやり取りを、当該診断モードの開始時に実行することにより、備えるチャンネルに信号が入力された場合には当該区間を正常と判断する一方、該信号が入力されない場合には当該区間にエラー発生と判断することを特徴としている。
この発明では、診断モードが定期的にあるいは手動操作時に実行されると、システム内における各装置が一致する時刻に各チャンネル毎の相手装置の相手装置に信号が出力されて、その相手装置からの信号が各チャンネル毎に入力される。このとき、相手装置からの信号が入力された場合には正常に信号をやり取り可能な区間と判断する一方、その相手装置からの信号が入力されない場合にはその区間は信号のやり取りにエラーの発生する状態であると判断することができる。したがって、マスタ装置やスレーブ装置のチャンネル間で単なる信号を送受するだけで、所望の信号処理を実行する前に、信号をやり取りするチャンネル間の状態を区間毎に把握することができる。
上記課題を解決する信号伝送方法の第5の発明は、上記第3または第4の発明の特定事項に加え、前記診断モードでは、エラーの発生した区間があると判断した場合に、当該区間番号に応じた第2診断タイミングに、他の装置への信号を同時に出力する一方、該第2診断タイミングに送られてきた信号が入力されたときには、同時に、他の装置に向けて信号を出力して当該信号をリレー形式で受け渡すことを特徴としている。
この発明では、診断モードで信号のやり取りにエラーの発生する区間が確認された場合には、その区間に応じた第2診断タイミングに一致する信号が他の装置間で同時にリレーされる。したがって、信号を受け取ることのできる相手装置にエラーの発生を知らせることができ、エラー発生を把握した装置以外でもその第2診断タイミングの信号を受け取るタイミングでエラー発生区間を把握することができる。
上記課題を解決する信号伝送方法の第6の発明は、上記第1から第5のいずれかの発明の特定事項に加え、前記信号処理装置は、出力信号として閃光を発する閃光手段を備えると共に、入力信号として光を受光して光電変換する光電変換手段を備えて、閃光により信号のやり取りを行うことを特徴とするものである。
この発明では、信号のやり取りを瞬間的な強い光の閃光で行うことができる。したがって、信号処理装置間に信号を伝送する配線を敷設することなく、信号を閃光により瞬間的にやり取りしてリレーすることができ、例えば、ずれなく同期を取ることができる。
このように本発明によれば、単なる信号を所定のタイミングに一致させつつ繰り返し受け渡してリレーすることにより、その信号のやり取りをする区間番号や総区間数を把握することができ、また、その信号のやり取りにおけるエラーの発生する区間を把握して、エラーの発生していない離隔する装置で表示出力などすることができる。したがって、例えば、ライン内に瞬低調査装置を設置して瞬低による影響を調査する瞬低調査システムで、そのトリガー信号をやり取りする瞬低調査装置間の区間番号や総区間数を容易に把握することができ、また、その各瞬低調査装置のトリガー信号が正常にやり取り可能な状態であるかなどを容易に診断することができる。この結果、エラーが発生していた場合には、そのエラー発生区間を容易に把握して迅速に対処することができる。
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図16は本発明に係る信号伝送方法を実行する信号処理装置により構築された信号伝送システムの一例である瞬低調査システムの第1実施形態を示す図である。
図1は工場内に設置されている設備の一例を示す図であり、変電設備などに接続されて工場内に商用電力を分配する分電盤101が設置されている。この分電盤101には、生産ライン100における製造ライン設備102、制御盤103、104、シーケンサー105、表示盤106、および、計算機107が接続されている。
製造ライン設備102は、例えば、製品を搬送するベルトコンベアや、その製品の加工・検査を行う各種装置が設置されており、分電盤101からの電力供給や、他の装置を介して中継される電力供給により各種動作を実行し稼動する。
制御盤103は、分電盤101からの電力供給を受けるとともに、制御盤104やシーケンサー105などと間で各種の制御信号や検知信号等をやり取りすることにより製造ライン設備102の割り当て箇所を統括制御する。制御盤104は、同様に、分電盤101からの電力供給を受けて製造ライン設備102の割り当て箇所を統括制御するとともに、計算機107に制御信号や検知信号等に基づく稼働信号などを出力する。
シーケンサー105は、分電盤101からの電力供給を受けるとともに、制御盤104、105などから各種の制御信号や検知信号等を受け取って、製造ライン設備102を稼働させるための各種タイミング信号をその制御盤104、105や表示盤106に出力する。表示盤106は、シーケンサー105から送られてくる各種のタイミング信号を受け取って、パイロットランプの点灯/消灯/点滅や各種計器の表示などにより製造ライン設備102の稼働状況等を表示出力する。計算機107は、例えば、パーソナルコンピュータやモニターなどにより構成されており、制御盤104から送られてくる稼働信号などを受け取って稼働実績や稼働状況等を蓄積するとともにモニター出力する。
この生産ライン100には、複数の瞬低調査装置10や信号中継装置20の信号処理装置が設置されており、これら瞬低調査装置10および信号中継装置20は電池やバッテリーを具備することにより、分電盤101から電力供給を受けることなく、所望の信号を相互にリレー式に伝送してやり取りすることにより稼動する瞬低調査システム(信号伝送システム)を構成している。なお、瞬低調査装置10や信号中継装置20は、無停電電源装置などを備えて、商用電源に接続するようにしてもよい。
瞬低調査装置10は、図2に示すように、複数の波形を記録することのできるメモリレコーダ機能11を備えており、複数チャンネル分の電圧波形をそのままアナログ信号として入力することができるとともに、ロジックプローブ11a(図7に図示)を介して複数チャンネル分の電気信号に基づく論理結果(0/1信号)をロジック信号として入力することができる。この瞬低調査装置10は、例えば、図3に示すように、4箇所の交流電圧波形をそのまま入力して記録することができるとともに、4箇所のロジック信号を入力して記録することができる。なお、メモリレコーダ機能11は、後述するようにCPU(中央処理装置)により演算処理するために、アナログ信号をアナログ(A)/デジタル(D)コンバータ11b(図7に図示)によりデジタル信号に変換・入力して処理する。
具体的に、この瞬低調査装置10のアナログ入力としては、電圧に関しては並列接続して影響なく検出できることから、生産ライン100の配線や回路の接点に電圧計を直接接続してアナログ電圧の信号波形を入力する。一方、電流に関しては、生産ライン100の配線や回路をいじることになるので、そのままの状態で瞬低調査を行い得るようにするために、図4(a)に示すクランプ式電流センサ(監視手段)12が接続されている。ここで、このクランプ式電流センサ12を用いて微弱電流の流れる配線、例えば、デジタル信号をやり取りする配線(デジタル信号)を検出対象とする場合には、図4(b)に示すように、検出効率を妨げる電磁誘導が起こらないように、その検出対象の電線Dをクランプ部12aに巻き付けるなどすればよい。
また、瞬低調査装置10のロジック入力としては、図5に示すように、生産ライン100の回路におけるリレー113の近傍に、リードスイッチ13aなどの磁界検出センサ(監視手段)13が設置されて接続されている。この磁界検出センサ13は、そのリレー113のコイル113aが機能する際の磁界の変化を検出してロジックプローブ11aを介してロジック信号として入力する。なお、磁界検出センサ13は、リードスイッチ13aを容器13b内に収納したものであるが、リードスイッチ13aに限らずに、例えば、ホール手段やMR手段(磁気抵抗効果手段)等でもよい。
さらに、瞬低調査装置10のロジック入力としては、図6に示すように、生産ライン100の回路におけるパイロットランプ114の対面位置に、フォトトランジスタ14aなどの光センサ(監視手段)14を設置して接続されている。この光センサ14は、そのパイロットランプ114が点灯/消灯/点滅する際の光の強度変化を検出してロジックプローブ11aを介してロジック信号として入力する。なお、光センサ14は、円筒形状の内周面を反射面に加工した容器14b内にフォトトランジスタ14aを収納したものであるが、フォトトランジスタ14aに限らずに、他の光電変換手段を用いてもよい。
この瞬低調査装置10は、図2に戻って、発光装置16と受光装置17とが図7に図示するトリガー入出力装置18を介して電気信号をやり取り可能に取り付けられており、この発光装置16と受光装置17の一組が離隔する相手装置の瞬低調査装置10との間で信号を伝送する一チャンネル(CH)を構成して、適宜、1チャンネルあるいは2チャンネル以上を備えている。発光装置16は、放電管(閃光手段)16aに高圧電流を瞬間的に流すことにより直ちに強い光の閃光を発する、所謂、ストロボ装置により構成されている。この発光装置16は、その閃光を平行光にして出射するための集光レンズ16bが放電管16aの前面に取り付けられているとともに、特に図示していないが、放電管16aの背面側には閃光を前面側に向けて反射するように集光板が取り付けられている。一方、受光装置17は、受けた光を光電変換して電気信号を出力するフォトトランジスタ(光電変換手段)17aが設置されている。この受光装置17は、フォトトランジスタ17aの前面側に、外部からの光をフォトトランジスタ17aに集光するように集光レンズ17bが取り付けられているとともに、このフォトトランジスタ17aに無用な光を受光させないようにその集光レンズ17bよりも前面側に向かって延長した外乱防止カバー17cが形成されている。
そして、瞬低調査装置10は、図7に示すように、CPU(中央処理装置)31と、メインメモリ32と、補助メモリ33と、ディスプレイ制御装置34と、通信制御装置35とがバス36を介して接続されており、ロジック信号の入力を実現するロジックプローブ11a、アナログ信号の入力を実現するA/Dコンバータ11b、および、発光装置16と受光装置17との間の後述のトリガー信号のやり取りを実現するトリガー入出力装置18は、入出力制御装置37を介してそのバス36に接続されている。これにより、瞬低調査装置10は、CPU31の動作に同期させてのアナログ信号、ロジック信号およびトリガー信号などのやり取りを実現し、瞬低調査システムとしての各種処理を実行する。
具体的には、CPU31は、メインメモリ32内に予め格納されている制御プログラムやパラメータに従って各種処理を実行するようになっており、図3に示すように、後述するトリガー信号の入出力タイミング時(瞬低に起因する事故発生時)にロジックプローブ11aやA/Dコンバータ11bを介して検出した電圧波形などの各種処理結果を、ディスプレイ制御装置34によりディスプレイ34aに表示出力させる。また、この入出力制御装置37には、各種入力操作を行う操作スイッチ38が接続されているとともに、ディスプレイ34aに表示出力する各種処理結果などと同様の内容をプリントアウトするプリンター39が接続されている。なお、補助メモリ33は、着脱して携行可能なメモリカードであり、各種処理結果のデータを長期保存したり、パーソナルコンピュータなどに読み込ませて分析等する際に利用する。また、通信制御装置35は、パーソナルコンピュータなどに有線接続あるいは無線接続してのリモート制御やデータ通信を実現するものである。
例えば、生産ライン100の調査対象毎(瞬低調査装置10毎)に、このCPU31は、図8に示すように、図4(a)に示すクランプ式電流センサ12からアナログ入力される回路電圧・電流(アナログ信号)を繰り返しサンプリング(監視)して補助メモリ33内などに一時記憶するようになっており、そのアナログ信号と予め設定されている閾値などのパラメータとを比較する演算処理を行うことにより、生産ライン100内に瞬低(瞬停を含む、以下同様)が発生していないか確認する。このとき、CPU31は、検出した電圧・電流(アナログ信号)のピーク値が閾値以下に低下するなどして、その生産ライン100の調査対象の箇所において瞬低の発生が確認(検知)された場合には、直ちにトリガー信号を生成して、入出力制御装置37を介してトリガー入出力装置18に出力し、発光装置16から閃光を発せさせるのと同時に、そのタイミングを含むように予め設定されている期間のアナログ信号やロジック信号を書換可能にメインメモリ32内に記憶・保持(記録)させる。すなわち、CPU31が検知手段および信号生成手段を構成して、メインメモリ32が記録手段を構成している。
また、CPU31は、同様に、図5に示す磁界検出センサ13や図6に示す光センサ14からロジック入力される生産ライン100のリレー113やパイロットランプ114の状態に応じたロジック信号(論理結果)を繰り返しサンプリングして、通常状態にあるか否か確認する演算処理を行うことにより、生産ライン100内に瞬低が発生していないか確認する。このとき、CPU31は、瞬低に起因して稼動停止などしたときのリレー113の駆動/停止やパイロットランプ114の点灯/消灯/点滅などに応じたロジック信号(故障信号)の0/1信号が検出・確認された場合にも同様に、直ちにトリガー信号を生成して、発光装置16から閃光を発せさせるのと同時に、そのタイミングを含むように予め設定されている期間のアナログ信号やロジック信号を書換可能にメインメモリ32内に記憶・保持させる。
ここで、メインメモリ32内にアナログ信号やロジック信号を記憶・保持する期間は、図3に示すように、瞬低の発生する前の一定期間を事故前情報とするとともに、これに続く一定期間を事故後情報とすることにより、その瞬低の発生前から瞬低の発生後に現れる影響を、アナログ信号やロジック信号から把握することができるように設定すればよい。具体的には、瞬低発生前後における生産ライン100の電源電力や装置回路における電圧・電流波形はアナログ信号により、また、装置の稼動状態はロジック信号により把握することができ、瞬低そのものや、瞬低に起因する変化を確認することができる。
なお、メインメモリ32内に記憶・保持させるアナログ信号やロジック信号は、適宜、ディスプレイ34aに画面表示させたり、プリンター39によりプリントアウト(印刷)させたり、通信制御装置35を介してパーソナルコンピュータなどの外部装置に自動送信させるようにしてもよい。また、瞬低の発生が確認されなかった場合には、一時記憶するアナログ信号やロジック信号は一定期間保存した後に廃棄するように設定すればよく、その保存期間内に瞬低の発生が確認された場合に利用可能に保持することにより、無用にメモリ容量を浪費してしまうことを回避するように設計されている。メモリ容量が許すときには一時記憶するアナログ信号やロジック信号のすべてを保存するようにしてもよい。メインメモリ32内に保存するアナログ信号やロジック信号は、通信制御装置35を介して外部の記憶装置に有線/無線接続することができる場合には、その記憶装置にアナログ信号やロジック信号を送って保存させるようにしてもよい。
その一方で、CPU31は、トリガー入出力装置18や入出力制御装置37を介して受光装置17が受光して光電変換した電気信号の入力があったときには、その電気信号と予め設定されている閾値などのパラメータとを比較する演算処理を行うことにより、他の瞬低調査装置10などの外部からの閃光を受光装置17が受光したのか否かを確認する。このとき、受光装置17が他の発光装置16からの閃光を受光していて、生産ライン100内のいずれかで瞬低が発生している場合にも、直ちにトリガー信号を生成して、入出力制御装置37を介してトリガー入出力装置18に出力し、発光装置16から閃光を発せさせるのと同時に、そのタイミングを含むように予め設定されている期間のアナログ信号やロジック信号を書換可能にメインメモリ32内に記憶・保持させる。なお、受光装置17は、設定レベル以上の光を受光したときに光電変換を行うように設計するのが一般的であることから、その設定レベルを閃光に合わせることにより、閃光の受光であるか否かを判断する演算処理を省いて迅速に処理するようにしてもよい。また、この閃光の受光であるか否かを判断する演算処理は、入出力制御装置37を経由してCPU31に行わせるのではなく、後述する信号中継装置20のようにトリガー入出力装置18で分散処理させることにより、迅速に閃光の受光・発光を行わせるようにしてもよい。
これにより、瞬低調査装置10は、自機内のメモリレコーダ機能11が瞬低の発生を検知したときには、そのメモリレコーダ機能11が検出するアナログ信号やロジック信号を記録・保存するのに加えて、トリガー信号を生成して発光装置16から閃光を発せさせることができるとともに、受光装置17がトリガー信号の閃光を受光したときにも、自機内のメモリレコーダ機能11が検出するアナログ信号やロジック信号を記録・保存することができ、さらに、トリガー信号を生成して発光装置16から閃光を発せさせることができる。言い換えると、瞬低調査装置10は、単独で監視対象における瞬低の発生の有無を調査する基本的な機能に加えて、その瞬低の発生に伴うアナログ信号やロジック信号の変化の記録・保存を行うタイミングを、トリガー信号の閃光として発信して他の瞬低調査装置10に伝送することができるとともに、そのトリガー信号の閃光を受け取った場合にもそのトリガー信号の閃光を発して他の瞬低調査装置10に中継・伝送することができる。
よって、複数台の瞬低調査装置10は、図9に示すように、互いの発光装置16と受光装置17とを閃光のやり取りをすることができるように対向させることにより、装置間にトリガー信号を伝送する配線を敷設することなく、メモリレコーダ機能11にアナログ信号やロジック信号を記録・保存させるトリガー信号を閃光により複数台で直ちに入出力してリレー式に伝送することができる。すなわち、発光装置16が信号出力部を構成するとともに受光装置17が信号入力部を構成しており、CPU31がこれらの発光・受光を制御する制御部を構成している。
ここで、信号中継装置20は、瞬低調査装置10と同様に、発光装置16および受光装置17を備えて、トリガー信号を伝送可能に構成されており、受光装置17が外部からの閃光を受光したときに、直ちに発光装置16が閃光を発するように構成されている。これにより、信号中継装置20は、図9に示すように、瞬低調査装置10と共に、装置間にトリガー信号を伝送する配線を敷設することなく、トリガー信号を閃光として入出力して直ちに中継・伝送することができる。
したがって、生産ライン100内にトリガー信号を伝送する配線を敷設することなくその生産ライン100に配置された瞬低調査装置10のいずれかが瞬低の発生を検知すると、トリガー信号を生成して他の瞬低調査装置10に直接、あるいは、その他の瞬低調査装置10や信号中継装置20を経由して直ちにリレー式に伝送することができ、生産ライン100内に配置した瞬低調査装置10によりすべての監視対象の状態変化(アナログ信号やロジック信号)を同時に記録して保存することができる。
このとき、発光装置16および受光装置17との間でやり取りする閃光は、一般的なライトとは異なって直ちに発光(出射)させることができ、発光装置16への閃光の発光命令から受光装置17の受光までに掛かる伝送遅延時間としては、数μsec程度に抑えることができる。このため、商用電力は、西日本において60Hzであることから1サイクルが1/60secの16msec(16000μsec)であるのに対して、十分な短時間内にトリガー信号を伝送することができ、短時間に変化してしまう監視対象であっても、瞬低が発生したことが記録に残らないほど遅延してしまうことがなく、生産ライン100の複数箇所の状態変化を同時に記録することができる。なお、東日本においては50Hzで1サイクルが20000μsecであることから、同様に遅延なく、生産ライン100の複数箇所の状態変化を同時に記録することができる。
このように、本実施形態の瞬低調査システムでは、各種装置の稼動する生産ライン100の複数箇所で電圧・電流波形や装置の稼動状況などを監視して、いずれかにおいて瞬低が発生するのと同時にトリガー信号を閃光により瞬時にリレー式に伝送することにより、瞬低の発生前後の監視情報を調査対象毎に記録することができ、瞬低と同時に発生する現象(装置状態)を関連付けして比較検討するなど分析することができる。その結果、例えば、生産ライン100における不具合などが真に瞬低に起因するものなのか、商用電力における瞬低に起因するものなのかなど、不具合の発生要因を特定することができる。
これにより、生産ライン100に関係のない配線などの敷設作業を行うことなく、瞬低調査装置10や信号中継装置20を配置するだけで、電力の周波数単位で変化する電圧・電流波形や装置状態を関連付けして調査することができ、例えば、生産ライン100における不都合の発生要因となる瞬低の発生箇所や、その瞬低による不都合の発生箇所などを特定することができる。よって、無停電電源装置などの最適な設置箇所を明確にすることができ、有効に電力を利用可能に対策することができる。
そして、図10に示すように、この瞬低調査システムを構築する瞬低調査装置10および信号中継装置20は、トリガー信号を相互間でやり取り可能な状態になっているか、言い換えると、それぞれの発光装置16と受光装置17がチェンネルCH毎に互いに向き合って正常に発光・受光動作を行うことにより、相互にトリガー信号(閃光)をリレー式に伝送することができるか否かを診断する機能を備えており、それぞれで内蔵するCPU31がシステムの診断を行う前準備としてトリガー信号をやり取りする区間Rの番号(受光する順番)Nや総区間数Nmを取得設定する区間設定モードを実行した後に適宜診断モードを実行するように設計されている。ここで、信号中継装置20は、少なくも2チャンネルCH以上の発光装置16および受光装置17を備えており、定常動作時と同様に、上流側の相手装置(瞬低調査装置10や信号中継装置20)からのトリガー信号を受け取って下流側の相手装置に受け渡す中継伝送に加えて、逆に、下流側の相手装置からのトリガー信号を受け取って上流側の相手装置に受け渡す中継伝送も実行可能に構成されて、区間設定モードや診断モードを瞬低調査装置10の間で実行する。
ここで、この瞬低調査装置10および信号中継装置20のいずれかがトリガー信号をリレー式に伝送するシステムのマスタ装置Mとして機能するとともに、他はそのマスタ装置Mからの信号入力に応じて動作するスレーブ装置Sとして機能するようになっており、本実施形態では、分電盤101における瞬低の有無や影響を調査する瞬低調査装置10がマスタ装置Mとして機能するように操作スイッチ38から入力設定される一方、他の瞬低調査装置10および信号中継装置20がスレーブ装置Sとして機能するように操作スイッチ38から入力設定される場合を説明する。
すなわち、マスタ装置Mとして機能する分電盤101の瞬低調査装置10(以下では、単にマスタ装置Mともいう)は、発光装置16および受光装置17からなる一つの第1チャンネルCH1を備えており、下流側で第1スレーブ装置S1として機能する表示盤106の瞬低調査装置10(以下では、単にスレーブ装置S1ともいう、以下同様)の第1チャンネルCH1の発光装置16および受光装置17との間の区間Rでトリガー信号の閃光を発光・受光してやり取り可能にそれぞれが対向するように設置されている。一方、そのスレーブ装置S1は、第2チャンネルCH2および第3チャンネルCH3を備えており、第2チャンネルCH2はさらに下流側のシーケンサー105の瞬低調査装置10(スレーブ装置S2)の第1チャンネルCH1との間の区間Rでトリガー信号の閃光を発光・受光してやり取り可能に対向・設置されているとともに、第3チャンネルCH3は同様に下流側の信号中継装置20(スレーブ装置S3)の第1チャンネルCH1との間の区間Rでトリガー信号の閃光を発光・受光してやり取り可能に対向・設置されている。同様に、このスレーブ装置S3は、第2チャンネルCH2および第3チャンネルCH3を備えており、第2チャンネルCH2はさらに下流側の製造ラインの瞬低調査装置10(スレーブ装置S4、S5)のそれぞれの第1チャンネルCH1との間の区間Rでトリガー信号の閃光を発光・受光してやり取り可能に対向・設置されている。
このマスタ装置Mおよびスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、例えば、操作スイッチ38に設定されている区間設定モードの開始時刻に、その区間設定モードを開始して、一定間隔の繰り返しに一致する第1設定タイミングに、発光装置16と受光装置17を向かい合わせた相手装置同士のチャンネルCH間の区間R毎に順次に閃光の発光・受光を繰り返してトリガー信号をリレー式に受け渡しするように設計されており、そのチャンネルCH毎のトリガー信号(閃光)の受光タイミングまでの第1経過時間(一定間隔の第1設定タイミングを繰り返した積算期間)に基づいて区間番号N(第1設定タイミングの繰り返し数)を取得してメインメモリ32内に設定する。
また、このCPU31は、区間設定モードの開始後に第1設定タイミングに一致しないタイミング(一定間隔の繰り返しからずれたタイミング)にトリガー信号(閃光)を受け取って、そのタイミングが第1設定タイミングに第2設定タイミングを加えたタイミングである場合には、直ちに発光装置16と受光装置17の間で閃光の発光・受光を繰り返してトリガー信号を同時にリレー式に受け渡しするように設計されており、そのトリガー信号(閃光)の受光タイミングまでの第2経過時間(第1設定タイミングの繰り返しに第2設定タイミングを加えた加算期間)に基づいて瞬低調査システム内の総区間数Nm(加算期間から第2設定タイミングを減算した積算期間中の第1設定タイミングの繰り返し数)を取得してメインメモリ32内に設定する。
詳細には、マスタ装置MのCPU31は、区間設定モードの開始からの第1設定タイミングの経過に一致するタイミングに、チャンネルCH1の発光装置16を発光させてスレーブ装置S1に向けてトリガー信号(閃光)を受け渡した後に、そのスレーブ装置S1から送られてきたトリガー信号(閃光)を受光装置17で受光して受け取ることにより、区間設定モードの開始からそのトリガー信号の受光タイミングまでの第1経過期間を第1設定タイミングの間隔(以下、単に第1設定タイミングともいう、他のタイミングの間隔でも同様)で除算して、その商をチャンネルCH1の受光順の区間番号Nと瞬低調査システムの総区間数Nmとしてメインメモリ32内に設定する。また、このマスタ装置MのCPU31は、そのチャンネルCH1の受光装置17の受光タイミングに第2設定タイミングを加えたタイミングに、そのチャンネルCH1の発光装置16を発光させてスレーブ装置S1に向けてトリガー信号(閃光)を受け渡す。ここで、このマスタ装置MのCPU31は、チャンネルCH1のみであることからスレーブ装置S1のチャンネルCH1との間でトリガー信号(閃光)を発光・受光させることにより、その間の区間番号Nなどを取得・設定することが可能であるが、複数チャンネルCHを備える場合には、後述する複数チャンネルCHを備えるスレーブ装置S1、S3と同様に、一チャンネルCH毎のトリガー信号(閃光)の発光・受光を完了してその間の区間番号Nなどを取得・設定した後に、第2設定タイミングに一致するトリガー信号(閃光)を最終のスレーブ装置に受け渡すことになる。
一方、スレーブ装置S2、S4、S5のCPU31は、一つのチャンネルCH1のみの発光装置16と受光装置17を備えており、区間設定モードの開始からの第1設定タイミングに一致するタイミングに、上流側のマスタ装置Mやスレーブ装置S1、S3の発光装置16が発光することによるトリガー信号(閃光)を、チャンネルCH1の受光装置17が受光することにより、区間設定モードの開始からそのトリガー信号の受光タイミングまでの第1経過期間を第1設定タイミングで除算して、そのチャンネルCH1の区間番号Nをメインメモリ32内に設定する。また、このスレーブ装置S2、S4、S5のCPU31は、そのトリガー信号を受け渡す下流側のスレーブ装置がないことから、そのチャンネルCH1の受光装置17の受光タイミングからさらに第1設定タイミングが経過したタイミングに、チャンネルCH1の発光装置16を発光させることにより、そのトリガー信号を送ってきたマスタ装置Mやスレーブ装置S1、S3にトリガー信号を返信する。
また、スレーブ装置S1、S3のCPU31は、複数のチャンネルCH1〜CH3を備えており、同様に、上流側のマスタ装置Mやスレーブ装置S1からのトリガー信号(閃光)を受光するチャンネルCH1の区間番号Nを算出してメインメモリ32内に設定した後には、そのチャンネルCH1の受光タイミングからさらに第1設定タイミングが経過したタイミングに、次のチャンネルCH2の発光装置16を発光させて次のスレーブ装置S2、S4にトリガー信号を受け渡す。これにより、このスレーブ装置S1、S3のCPU31は、そのチャンネルCH2の受光装置17が次のスレーブ装置S2、S4から返信されてきたトリガー信号(閃光)を受光して、チャンネルCH2の区間番号Nを算出してメインメモリ32内に設定するようになっており、以降同様に、チャンネルCH毎にトリガー信号のやり取りを順次に行って、このスレーブ装置S1、S3では、さらに次のチャンネルCH3の発光装置16の発光による次のスレーブ装置S3、S5へのトリガー信号の受け渡しと、そのチャンネルCH3の受光装置17の次のスレーブ装置S3、S5から返信されてきたトリガー信号(閃光)の受光により、そのチャンネルCH3の区間番号Nを算出してメインメモリ32内に設定する。この後に、このスレーブ装置S1、S3のCPU31は、さらにそのトリガー信号を受け渡す下流側のスレーブ装置がないことから、チャンネルCH3の受光装置17の受光タイミングからさらに第1設定タイミングが経過したタイミングに、チャンネルCH1の発光装置16を発光させてトリガー信号を送ってきた上流側のマスタ装置Mやスレーブ装置S1にトリガー信号を返信する。
ここで、このマスタ装置Mとスレーブ装置S1〜S5は、この区間設定モードを実行する際には、予め設定されているタイミングに一致するように上流側から下流側へと閃光のトリガー信号を繰り返し受け渡した後に、その反対に、その下流側から上流側に戻すようにその閃光のトリガー信号を受け渡すように、トリガー信号をやり取りするリレーを行っているが、上述した瞬低調査装置10や信号中継装置20として機能する通常モードの場合には、この区間設定モードや診断モードとは異なって、同一のチャンネルCHにおいては、受光装置17が閃光を受光したときには発光装置16が閃光を発することがないので、トリガー信号の発信と受信が途切れることなく連鎖してしまうことはない。
具体的には、瞬低調査システムの区間設定モードや定期診断モードにおける信号伝送方法は、図11のフローチャートおよび図13のタイミングチャートに示すように、瞬低調査装置10および信号中継装置20の各チャンネルCHの発光装置16と受光装置17とをトリガー信号(閃光)をやり取り可能に互いに対向させた状態にセッティングして、それぞれで区間設定モードや定期診断モードを開始する時刻を操作スイッチ38に設定するとともに、分電盤101の瞬低調査装置10(マスタ装置M)の操作スイッチ38の切換スイッチをマスタ側に、また、他の瞬低調査装置10および信号中継装置20(スレーブ装置S1〜S5)の操作スイッチ38の切換スイッチをスレーブ側に切換設定した後に、それぞれの電源を投入すると(ステップP1)、それぞれのCPU31は、まずは、内蔵する時計機能が区間設定モードの開始時刻に達したタイミング(T0)で同期するようにその区間設定モードを開始する(ステップP2)。ここで、この区間設定モードでは、予め設定されている第1設定タイミングtなどの一定期間の経過毎にトリガー信号(閃光)のやり取りを行うので、マスタ装置Mやスレーブ装置S1〜S5毎で計時(カウント)するタイミングが完全に一致している必要はなく、第1設定タイミングt1の繰り返し回数などを正確に算出可能な誤差範囲内で時刻が一致していればよい。
次いで、マスタ装置Mおよびスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、それぞれ区間設定モードの開始(T0)からの経過時間をカウントしつつ、各チャンネルCHの受光装置17による閃光の受光(トリガー信号の受信)の有無を確認するのと並行して、最初に、マスタ装置Mが第1設定タイミングtのカウント時(T0+t)にチャンネルCH1の発光装置16を発光させてトリガー信号(閃光)を次段のスレーブ装置S1のチャンネルCH1に向けて発信する(ステップP3)。これより、次段以降のスレーブ装置S1〜S5がそのトリガー信号(閃光)を各チャンネルCHの受光装置17に受光させるとともに発光装置16に発光させて上流側から下流側へと、さらに、その下流側から上流側へと順次にリレー式に伝送することにより、それぞれの受光側のチャンネルCHで区間R毎の区間番号Nを演算・取得してメインメモリ32内に記憶・設定する(ステップP4)。
このステップP4では、まずは、マスタ装置Mの次段のスレーブ装置S1がそのマスタ装置Mからのトリガー信号(閃光)をチャンネルCH1の受光装置17により受光・受信すると、このスレーブ装置S1は、その受光タイミング(T0+t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差(第1設定タイミングtの積算期間)を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受光までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の1回(商)を算出して、トリガー信号を受光するチャンネルCH1の区間Rの区間番号「1」をメインメモリ32内に設定する。
また、このスレーブ装置S1は、チャンネルCH2、CH3を備えているので、まずは、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受光タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+2t)に、チャンネルCH2の発光装置16を発光させてトリガー信号を発信(以下、単にチャンネルCHの発信ともいう)させることにより、下流側(次段)のスレーブ装置S2のチャンネルCH1の受光装置17に受光させてそのトリガー信号を受信(以下、単にチャンネルの受信ともいう)させる。このとき、スレーブ装置S2は、上流側(前段)のスレーブ装置S1からのトリガー信号(閃光)をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+2t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の2回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH1の区間番号「2」をメインメモリ32内に設定する。
そして、このスレーブ装置S2は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+3t)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)させることにより、上流側のスレーブ装置S1のチャンネルCH2にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S1は、下流側のスレーブ装置S2からのトリガー信号をチャンネルCH2で受信すると、その受信タイミング(T0+3t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の3回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH2の区間番号「3」をメインメモリ32内に設定する。
また、このスレーブ装置S1は、チャンネルCH3でのトリガー信号のやり取りはチャンネルCH2でのやり取りが終了する(そのチャンネルCH2の区間番号Nの設定が完了する)まで待って、そのチャンネルCH2のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+3t)に、チャンネルCH3からトリガー信号を発信させることにより、下流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S3は、上流側のスレーブ装置S1からのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+4t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受光までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の4回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH1の区間番号「4」をメインメモリ32内に設定する。
また、このスレーブ装置S3は、スレーブ装置S1と同様にチャンネルCH2、CH3を備えているので、まずは、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+5t)に、チャンネルCH2からトリガー信号を発信させることにより、下流側のスレーブ装置S4のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S4は、上流側のスレーブ装置S3からのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+5t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受光までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の5回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH1の区間番号「5」をメインメモリ32内に設定する。
また、このスレーブ装置S4は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+6t)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)させることにより、上流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH2にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S3は、下流側のスレーブ装置S4からのトリガー信号をチャンネルCH2で受信すると、その受信タイミング(T0+6t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の6回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH2の区間番号「6」をメインメモリ32内に設定する。
さらに、このスレーブ装置S3は、チャンネルCH3でのトリガー信号のやり取りはチャンネルCH2でのやり取りが終了する(そのチャンネルCH2の区間番号Nの設定が完了する)まで待って、そのチャンネルCH2のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+7t)に、チャンネルCH3からトリガー信号を発信させることにより、下流側のスレーブ装置S5のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S5は、上流側のスレーブ装置S3からのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+7t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その受光までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の7回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH1の区間番号「7」をメインメモリ32内に設定する。
また、このスレーブ装置S5は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+8t)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)させることにより、上流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH3にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S3は、下流側のスレーブ装置S5からのトリガー信号をチャンネルCH3で受信すると、その受信タイミング(T0+8t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の8回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH3の区間番号「8」をメインメモリ32内に設定する。
さらに、このスレーブ装置S3は、これでチャンネルCH2、CH3でのトリガー信号のやり取りが完了したので、そのチャンネルCH3のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+9t)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)させることにより、上流側のスレーブ装置S1のチャンネルCH3にそのトリガー信号を受信させる。このとき、スレーブ装置S1は、下流側のスレーブ装置S3からのトリガー信号をチャンネルCH3で受信すると、その受信タイミング(T0+9t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の9回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH3の区間番号「9」をメインメモリ32内に設定する。
一方、スレーブ装置S1〜S5のチャンネル毎の区間番号Nの設定が完了してステップP4の処理が終了したときには、最も上流側のスレーブ装置S1が、チャンネルCH2、CH3でのトリガー信号のやり取りが終了したので、そのチャンネルCH3のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+10t)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)させることにより、上流側のマスタ装置MのチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。
このとき、マスタ装置Mは、下流側のスレーブ装置S1からのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+10t)から区間設定モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の10回を算出して、トリガー信号を受信するチャンネルCH1の区間番号「10」をメインメモリ32内に設定する。同時に、このマスタ装置Mは、自身のチャンネルCH1の区間番号Nの「10」を、この瞬低調査システムにおける総区間数Nmとして取得・設定するとともに、並行して、下流側のスレーブ装置S1からのトリガー信号の受信(返信)タイミングからの経過時間を計時して第2設定タイミングαのカウント時(T0+10t+α)に、この一連の区間設定モードを完了する(区間設定モードから抜ける)ためのトリガー信号(閃光)をチャンネルCH1から下流側のスレーブ装置S1に向けて発信させて、上述した瞬低調査装置システムにおける分電盤101の瞬低調査装置10として通常動作する通常モードに移行する(ステップP5、S6)。
その一方のスレーブ装置S1〜S5は、区間設定モードの開始後に2回目のトリガー信号を受信したときに、また、そのトリガー信号の受信が第1設定タイミングの繰り返しからずれていて第2設定タイミング(ずらすことなく第1設定タイミングtと同一期間にしても良い)に一致している場合に、この区間設定モードの完了と判断するようになっており、上述の通常動作を行う通常モード時と同様に、そのトリガー信号の受信と同時に、受信チャンネルCH以外、すなわち、上流側からトリガー信号を受信するチャンネルCH1以外のチャンネルCH2、CH3の発光装置16を発光させて下流側のスレーブ装置に向けてそのトリガー信号を発信することにより、トリガー信号をリレー式に瞬時に受け渡す。この2回目のトリガー信号を第2設定タイミングに受信したスレーブ装置S1〜S5は、その受信タイミング(T0+10t+α)から区間設定モードの開始タイミング(T0)およびその第2設定タイミングαを減算して、その差を第1設定タイミングtで除算することにより、その区間設定モードの開始から最終の受信までの第1設定タイミングtの繰り返し回数の10回を算出して、この瞬低調査システムにおける総区間数「10」をメインメモリ32内に設定した後に、それぞれ瞬低調査装置10または信号中継装置20として通常動作する通常モードに移行する(ステップP5、S6)。
ところで、この区間設定モードでは、図12に示すように、マスタ装置Mやスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、それぞれで、その区間設定モードの開始からの経過時間を計時しており、予め長めに設定されている設定期間を経過してもトリガー信号を受信しない場合には(ステップP11)、例えば、チャンネルCH毎の発光装置16と受光装置17を向かい合わせるセッティング不良であると判断して、トリガー信号の受信不能をユーザに報知するメッセージをディスプレイ34aに表示出力して、この区間設定モードを終了する(ステップP12)。
次いで、図11に戻って、この区間設定モードを完了してチャンネルCH毎の区間Rの番号Nや瞬低調査装置システム内の総区間数Nmをそれぞれのメインメモリ32内に設定したマスタ装置Mやスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、瞬低調査装置システムとしての通常動作を継続しつつ時計機能が計時する時刻が予め設定されている定刻に達したときに、定期診断モードを実行する(ステップP6〜S8)。
この定期診断モードは、マスタ装置Mとスレーブ装置S1〜S5の間でトリガー信号をやり取りすることにより、正常に動作可能か否かを診断するように設計されており、このマスタ装置Mおよびスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、例えば、操作スイッチ38に設定されている時刻に定期的(例えば、1回/日)に診断モードを開始して、発光装置16と受光装置17を向かい合わせたチャンネルCH間の区間R毎に閃光の発光・受光を行ってトリガー信号の発信・受信を実行することにより、その区間R毎の診断を行うように設計されている。このとき、それぞれのCPU31は、瞬低調査システムとしてトリガー信号を適切にリレー伝送可能な正常な状態であるのか、あるいは、トリガー信号を伝送不能なエラー発生状態であるのかを、それぞれの区間R毎の閃光の受光の有無により判断して、エラー発生状態である場合には、トリガー信号のリレー伝送不能な区間Rの区間番号Nを他の相手装置にも通知するようになっており、自己の定期診断結果をディスプレイ34aに表示出力するとともに、トリガー信号のリレー伝送不能な区間Rの区間番号Nを受け取った場合には、そのエラー発生区間Rの区間番号Nをディスプレイ34aに表示出力して、オペレータに報知する。
具体的には、図14のフローチャートおよび図15のタイミングチャートに示すように、マスタ装置Mおよびスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、操作スイッチ38に設定されている定期診断モードの開始時刻(T0)になると、備えるチャンネルCHの発光装置16を発光させてトリガー信号を発信するとともに(ステップP21)、予め設定されている時計機能による計時誤差を考慮した期間α内に、そのチャンネルCHの受光装置17による閃光の受光(トリガー信号の受信)の有無を確認する(ステップP22)。このときに、CPU31は、備えるチャンネルCHでのトリガー信号の受信が確認された場合には、この定期診断モードの開始(T0)から後述の処理により最終の区間番号10の区間Rでトリガー信号のやり取りが行われるまでの時刻(T0+10t+α)が経過するまで、その後述処理でやり取りされるエラー報知信号(トリガー信号)の受信の有無を確認し(ステップP23)、そのエラー報知信号の受信がない場合には、すべてのチャンネルCH間の区間Rでエラーが発生していないと判断して、その判断時間の経過後にディスプレイ34aに「エラー区間なし」を表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理に必要な時間を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP24)。
一方、例えば、スレーブ装置S4が何等かの外力により移動していると、スレーブ装置S3との間でトリガー信号をやり取り不能な状態になり、この場合には、図16のタイミングチャートに示すように、ステップP21、P22において、定期診断モードの開始時刻(T0)にスレーブ装置S3のチャンネルCH2とスレーブ装置S4のチャンネルCH1で発信するトリガー信号をそれぞれ受信することができずに、区間5、6がトリガー信号のやり取り不能なエラー区間となっているために、そのスレーブ装置S3、S4がエラーモードに移行する(ステップP25)。
このエラーモードに移行したCPU31は、エラーの発生したチャンネルCHのメインメモリ32内に設定されている区間番号Nに対応する第1診断タイミングtの繰り返し数分だけ遅延させた時間が経過(カウント)した後に、備える各チャンネルCHの発光装置16を発光させてエラー報知信号(トリガー信号)を発信するようになっており、定期診断モードの開始後に受光装置17がエラー報知信号を受信したCPU31は、その受信と同時に発光装置16を発光させてエラー報知信号をリレー式に伝送する(ステップP26)。
これにより、区間番号5のチャンネルCH1でエラーの発生しているスレーブ装置S4は、エラーが発生しているチャンネルCHを報知する「エラーCH1」をディスプレイ34aに表示出力するとともに、そのチャンネルCH1の区間番号5に対応する第1診断タイミングtを5回繰り返した時刻(T0+5t)が経過するタイミングに、発光装置16を発光させてエラー報知信号を発信するが、スレーブ装置S3の受光装置17が受光できずにそのエラー報知信号がリレーされてマスター装置Mなどに伝送されることはない。
また、区間番号6のチャンネルCH2でエラーの発生しているスレーブ装置S3は、エラーが発生しているチャンネルCHを報知する「エラーCH2」をディスプレイ34aに表示出力するとともに、そのチャンネルCH2の区間番号6に対応する第1診断タイミングtを6回繰り返した時刻(T0+6t)が経過するタイミングに、備えるチャンネルCH1〜CH3からエラー報知信号を発信することにより、最終の区間番号10のチャンネルCHからのトリガー信号のやり取りが行われるまでの時刻(T0+10t+α)が経過する前に(ステップP27)、スレーブ装置S1、S5にそのエラー報知信号を受信させることができ、さらに、そのエラー報知信号はスレーブ装置S1からスレーブ装置S2とマスタ装置Mに瞬時に伝送することができる。
したがって、マスタ装置Mやスレーブ装置S1、S2、S5は、2度目のトリガー信号であるエラー報知信号の受信タイミング(T0+6t)から定期診断モードの開始タイミング(T0)を減算して、その差を第1診断タイミングtで除算することにより、その定期診断モードの開始から受信までの第1診断タイミングtの繰り返し回数の6回を算出して、区間6でエラーが発生していることを受け取ることができ、その区間6でエラーが発生している旨を報知する「エラー区間6」をディスプレイ34aに表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP28)。
ここで、マスタ装置Mやスレーブ装置S1が何等かの外力により移動している場合にも、それぞれの間でトリガー信号をやり取り不能な状態になり、この場合には、マスタ装置Mとスレーブ装置S1のそれぞれのチャンネルCH1の区間1、10がエラー区間となるために、そのスレーブ装置S1から下流側のスレーブ装置S2〜S5には区間1でエラーが発生したことを報知することはできるが、マスタ装置Mにまでエラー報知信号を受け渡すことができない。しかし、このマスタ装置MのチャンネルCH1は、定期診断モードの開始時のトリガー信号から受信することができないので、トリガー信号のやり取りが行われる最終の時刻(T0+10t+α)が経過する前に、スレーブ装置S1からエラー報知信号を受信することがなくても(ステップP27)、そのチャンネルCH1の区間10がトリガー信号のやり取り不能なエラー区間と判断して、その区間10でエラーが発生している旨を報知する「エラー区間10」をディスプレイ34aに表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP29)。
このように本実施形態においては、トリガー信号を所定のタイミングに一致させつつやり取りしてマスタ装置Mからスレーブ装置S1〜S5にリレー式に伝送することにより、そのトリガー信号をやり取りする個々の区間Rの番号Nやその総区間数Nmを取得して設定することができ、また、トリガー信号のやり取りが不能な区間Rもその区間番号Nに応じたタイミングにトリガー信号をやり取り可能なマスタ装置Mやスレーブ装置S1〜S5の間でリレー式に伝送することにより、他の装置に報知して表示出力することができる。これにより、オペレータはすべての装置を確認する作業を行うことなく、トリガー信号を正常にやり取り可能な状態にあるのか否かや、エラーが発生している場合にはその区間Rの番号Nを遠隔する装置からでも容易に把握することができる。したがって、エラーの発生している場合には、そのエラー区間Rを容易に特定して迅速に対処することができる。
次に、図17〜図19は本発明に係る信号伝送方法を実行する信号処理装置により構築された信号伝送システムの一例である瞬低調査システムの第2実施形態を示す図である。なお、本実施形態は、上述実施形態と略同様に構成されているので、図1〜図13を流用して特徴部分を説明する。
図1〜図9において、瞬低調査システムは、上述実施形態と同様に、製造ライン設備102、制御盤103、104、シーケンサー105、表示盤106、および、計算機107が分電盤101に接続されている生産ライン100に、複数の瞬低調査装置10や信号中継装置20を設置して構築されており、生産ライン100内にトリガー信号を伝送する配線を敷設することなく、その生産ライン100に配置された瞬低調査装置10のいずれかが瞬低の発生を検知すると、発光装置16および受光装置17との間で閃光のトリガー信号をやり取りすることにより、他の瞬低調査装置10に直接、あるいは、その他の瞬低調査装置10や信号中継装置20を経由して直ちに(瞬間的に)そのトリガー信号をリレー式に伝送することができ、生産ライン100内に配置した瞬低調査装置10によりすべての監視対象の状態変化(アナログ信号やロジック信号)を同時に記録して保存することができる。
この瞬低調査システムを構築する瞬低調査装置10および信号中継装置20は、図10に示すように、それぞれの発光装置16と受光装置17がチェンネルCH毎に互いに向き合って正常に発光・受光動作を行い得るように構築されており、それぞれのCPU31は、トリガー信号をやり取りする区間Rの番号Nや総区間数Nmを取得設定する区間設定モードや、相互にトリガー信号をリレー式に伝送することができるか否かを診断する診断モードを実行するように設計されている。
また、瞬低調査装置10および信号中継装置20は、それぞれマスタ装置Mあるいはスレーブ装置S1〜S5として機能するように操作スイッチ38から入力設定されており、それぞれのCPU31は、電源の投入後に区間設定モードを実行することにより、図11〜図13のフローチャートやタイミングチャートに示す信号伝送方法に従って、発光装置16と受光装置17の間で閃光のトリガー信号をリレー伝送することにより、自身のチャンネルCH毎の区間Rの番号Nや瞬低調査システムにおける総区間数Nmをメインメモリ32内に設定する(ステップP1〜P12)。
そして、図11に戻って、この区間設定モードを完了してチャンネルCH毎の区間Rの番号Nや瞬低調査装置システム内の総区間数Nmを、それぞれのメインメモリ32内に設定したマスタ装置Mやスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、瞬低調査装置システムとしての通常動作を継続しつつ時計機能が計時する時刻を確認して、予め設定されている定刻に達したときに、定期診断モードを実行する(ステップP6〜P8)。
この定期診断モードは、上述した区間設定モードと略同様に、マスタ装置Mとスレーブ装置S1〜S5のそれぞれの間でトリガー信号をリレー式にやり取りすることにより、正常に動作可能か否かを診断するように設計されており、このマスタ装置Mおよびスレーブ装置S1〜S5のCPU31は、操作スイッチ38に設定されている定刻に定期診断モードを開始して、発光装置16と受光装置17を向かい合わせたチャンネルCHの間の区間R毎に閃光の発光・受光を行ってトリガー信号を瞬時にリレー伝送させた後に、この定期診断モードを開始したときから一定間隔の繰り返しに一致する第1診断タイミングに、そのチャンネルCHの間の区間R毎の閃光の発光・受光を順次に繰り返してトリガー信号をリレー式に受け渡すことにより、その区間R毎の診断を行うように設計されている。このとき、それぞれのCPU31は、瞬低調査システムとしてトリガー信号を適切にリレー伝送可能な正常な状態であるか、あるいは、トリガー信号を伝送不能なエラー発生状態であるのかを、それぞれの区間R毎の閃光の受光の有無により判断して、エラー発生状態である場合には、トリガー信号のリレー伝送不能な区間Rの区間番号Nを他の相手装置に通知するようになっており、自身の定期診断結果をディスプレイ34aに表示出力するとともに、トリガー信号のリレー伝送不能な区間Rの区間番号Nの通知を受け取った場合には、そのエラー発生区間Rの番号Nをディスプレイ34aに表示出力して、オペレータに報知する。
具体的には、瞬低調査システムの定期診断モードにおける信号伝送方法は、図17のフローチャートおよび図18のタイミングチャートに示すように、操作スイッチ38に設定されている定期診断モードの開始時刻(T0)になると、マスタ装置MのCPU31は、備えるチャンネルCH1からトリガー信号を発信する(ステップP31)一方、スレーブ装置S1〜S5のCPU31は、予め設定されている一定期間が経過するまでの待機期間中に各チャンネルCHがそのマスタ装置Mから伝送されて来るトリガー信号の受信の有無を確認し(ステップP32、P33)、その待機期間中にトリガー信号の受信を確認できない場合には、備えるチャンネルCHの区間Rがトリガー信号のやり取り不能なエラーが発生している場合を含めて、定期診断モードを実行不能な状態にあると判断して、ディスプレイ34aに「定期診断モード実行不能エラー発生」を表示出力することによりオペレータが視認可能にして、この定期診断モードを終了する(ステップP34)。
一方、その待機期間中にマスタ装置Mから伝送されて来たトリガー信号の受信を確認できた場合には、そのトリガー信号は各チャンネルCH間の発光装置16と受光装置17との間でやり取りされる閃光の発光・受光により瞬時に伝送可能であることから、マスタ装置MのCPU31は、そのトリガー信号の発信タイミングを、また、スレーブ装置S1〜S5のCPU31は、そのトリガー信号の受信タイミングを、定期診断モードの開始時刻(T0)とする同期を取ってから、その定期診断モードを継続する(ステップP35)。
ここで、この定期診断モードは、マスタ装置Mとスレーブ装置S1〜S5のチャンネルCH間でトリガー信号をやり取り可能な状態であれば正確に同期を取ることができるので、時計機能による計時誤差を考慮する必要がなく、この定期診断モードにおける一定期間の診断タイミングtなどは極短時間に設定することにより、定期診断モードを短期間に終了させるように設計することができる。なお、上述の区間設定モードにおいても開始タイミングの同期を取ることにより、設定タイミングt、αを極短時間に設定して短期間に終了させるように設計してもよいことはいうまでもない。また、このマスタ装置Mとスレーブ装置S1〜S5の各チャンネルCH毎の発光装置16と受光装置17は、同期処理を行う際には、通常モードの実行時と同様に、同一のチャンネルCHにおいては、受光装置17が閃光を受光したときには発光装置16が閃光を発することがないので、トリガー信号の発信と受信が途切れることなく連鎖してしまうことはない。
この後に、マスタ装置MのCPU31は、それぞれ定期診断モードの開始(T0)から自身を含む同期処理に必要な十分な期間の第2設定タイミングαのカウント時(T0+α)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信する(ステップP36)。一方、スレーブ装置S1〜S5のCPU31は、上述した区間設定モードと同様に、そのマスタ装置Mや上流側のスレーブ装置からのトリガー信号を各チャンネルCH1が受信すると、第1診断タイミングtに一致するように遅延させて、備える他のチャンネルCH2、3から下流側の相手装置にトリガー信号を順次に伝送するとともに、他のチャンネルCH2、3を備えていないチャンネルCH1のみの場合や、下流側の相手装置からのトリガー信号を受信すると、同様に、第1診断タイミングtに一致するように遅延させて、チャンネルCH1から上流側の相手装置にトリガー信号を順次に返送して、それぞれのチャンネルCH間の区間R毎に正常にトリガー信号をやり取りするリレー伝送を行うことができるか否かを確認する(ステップP37)。
このステップP37では、スレーブ装置S1がマスタ装置Mからのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、このスレーブ装置S1は、チャンネルCH2、CH3を備えているので、まずは、そのチャンネルCH1によるトリガー信号の受信タイミングからさらに第1診断タイミングtをカウントしたとき(T0+t+α)に、チャンネルCH2からトリガー信号を発信して、下流側のスレーブ装置S2のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。このスレーブ装置S2は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+2t+α)に、同じチャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)して、上流側のスレーブ装置S1のチャンネルCH2にそのトリガー信号を受信させる。すると、このスレーブ装置S1は、スレーブ装置S2との間で行うチャンネルCH2でのやり取りが終了するので、そのチャンネルCH2のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+3t+α)に、チャンネルCH3からトリガー信号を発信して、下流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。
そして、スレーブ装置S3は、スレーブ装置S1と同様にチャンネルCH2、CH3を備えているので、まずは、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+4t+α)に、チャンネルCH2からトリガー信号を発信して、下流側のスレーブ装置S4のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。このスレーブ装置S4は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+5t+α)に、同じチャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)して、上流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH2にそのトリガー信号を受信させる。すると、このスレーブ装置S3は、スレーブ装置S4との間で行うチャンネルCH2でのやり取りが終了するので、そのチャンネルCH2のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+6t+α)に、チャンネルCH3からトリガー信号を発信して、下流側のスレーブ装置S5のチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。また、このスレーブ装置S5は、チャンネルCH1のみであるので、そのチャンネルCH1のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+7t+α)に、同じチャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)して、上流側のスレーブ装置S3のチャンネルCH3にそのトリガー信号を受信させる。
この結果、スレーブ装置S3は、チャンネルCH2、CH3でのトリガー信号のやり取りが終了したので、そのチャンネルCH3のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+8t+α)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)して、上流側のスレーブ装置S1のチャンネルCH3にそのトリガー信号を受信させる。
これにより、スレーブ装置S1〜S5の各チャンネルCHがそれぞれの区間Rでやり取りするトリガー信号の受信が確認されたときには(ステップP38)、最も上流側のスレーブ装置S1でも、チャンネルCH2、CH3でのトリガー信号のやり取りが終了したので、そのチャンネルCH3のトリガー信号の受信タイミングからさらに第1設定タイミングtをカウントしたとき(T0+9t+α)に、チャンネルCH1からトリガー信号を発信(返信)して、上流側のマスタ装置MのチャンネルCH1にそのトリガー信号を受信させる。
このとき、マスタ装置Mは、下流側のスレーブ装置S1からのトリガー信号をチャンネルCH1で受信すると、その受信タイミング(T0+9t+α)からさらに第1設定タイミングtをカウントするまで(T0+10t+α)に、チャンネルCH1がトリガー信号を受信したことを確認することができ(ステップP39)、この期間内でのトリガー信号の受信によりすべての区間Rでエラーが発生していないと判断して、ディスプレイ34aに「エラー区間なし」を表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP40)。
一方、例えば、スレーブ装置S4が何等かの外力により移動していると、スレーブ装置S3との間でトリガー信号をやり取り不能な状態になり、この場合には、図19のタイミングチャートに示すように、ステップP32、P33において、定期診断モードの開始時刻(T0)にスレーブ装置S3のチャンネルCH2が発信するトリガー信号をスレーブ装置S4のチャンネルCH1で受信することができずに、このスレーブ装置S4では、区間5が定期診断モードを実行不能な状態にあると判断して、ディスプレイ34aに「定期診断モード実行不能エラー発生」を表示出力することによりオペレータが視認可能にして、この定期診断モードを終了する(ステップP34)。
また、スレーブ装置S3では、チャンネルCH1が上流側のスレーブ装置S1からのトリガー信号を受信して、チャンネルCH2から下流側のスレーブ装置S4にトリガー信号を発信しても、そのスレーブ装置S4からトリガー信号が発信(返信)されることはないので、ステップP38において、そのチャンネルCH2でトリガー信号を受信することができずに、区間6で定期診断モードを実行不能な状態にあると判断して直ちにエラーモードに移行する(ステップP41)。
このようにしてエラーモードに移行したCPU31は、エラーの発生したチャンネルCHでトリガー信号を受信するはずだったその区間番号Nに応じたタイミングから、メインメモリ32内に設定されている総区間数Nmに対応する第1診断タイミングtの繰り返し数分の第2診断タイミング(Nmt)だけ遅延させた時間を経過(カウント)したときに、備える各チャンネルCHの発光装置16を発光させてエラー報知信号(トリガー信号)を発信するようになっており、定期診断モードを開始してから第1診断タイミングtを総区間数Nm分だけを繰り返した遅延時間を経過(カウント)する前に、下流側からのトリガー信号の返信を受け取ることなく、その後のトリガー信号であるエラー報知信号を受信したCPU31は、その受信と同時に発光装置16を発光させてエラー報知信号をリレー式に伝送するようになっている。
これにより、区間番号6のチャンネルCH2でエラーの発生しているスレーブ装置S3は、そのチャンネルCH2でトリガー信号を受信すべきタイミング(T0+5t+α)に第1診断タイミングtを総区間数分だけ10回繰り返した第2診断タイミング(10t)が経過したタイミング(T0+15t+α)に備えるチャンネルCH1〜CH3の発光装置16を発光させてエラー報知信号を発信することにより(ステップP42)、エラーが発生した場合の処理を十分に行いえる時刻(T0+20t+α)が経過する前に(ステップP43)、そのエラー報知信号をスレーブ装置S1、S5に受信させることができ、さらに、そのエラー報知信号はスレーブ装置S1からスレーブ装置S2とマスタ装置Mに瞬時に伝送することができる。
したがって、マスタ装置Mやスレーブ装置S1、S2、S5は、2度目のトリガー信号であるエラー報知信号の受信タイミング(T0+15t+α)から定期診断モードの開始タイミング(T0+α)と第2診断タイミング(10t)を減算して、その差を第1診断タイミングtで除算して「+1」することにより、この定期診断モードの開始から受信までの第1診断タイミングtの繰り返し回数の6回を算出して、区間6でエラーが発生していることを受け取ることができ、その区間6でエラーが発生している旨を報知する「エラー区間6」をディスプレイ34aに表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP44)。
ここで、マスタ装置Mやスレーブ装置S1が何等かの外力により移動している場合にも、それぞれの間でトリガー信号をやり取り不能な状態になり、この場合には、マスタ装置Mとスレーブ装置S1のそれぞれのチャンネルCH1の区間1、10がエラー区間となるために、この定期診断モード自体を開始することができずに、エラー報知信号をも受信することができないので、このマスタ装置MのチャンネルCH1は、エラーが発生した場合の処理を十分に行い得る時刻(T0+20t+α)が経過する前にスレーブ装置S1から正常に診断モードが終了した場合のトリガー信号やエラー報知信号をも受信することができない場合には(ステップP43)、そのチャンネルCH1の区間10がトリガー信号のやり取り不能なエラー区間と判断して、その区間10でエラーが発生している旨を報知する「エラー区間10」をディスプレイ34aに表示出力することによりオペレータが視認可能にし、この後に、一連の処理を考慮した時刻(T0+20t+α)が経過した後に、この定期診断モードを終了する(ステップP45)。
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、診断タイミングt、αを時計機能による計時誤差を考慮するために、例えば、数十秒などと長期間に設定することなく、1秒にも満たない極短時間に設定することができ、瞬低調査を中断する期間をできるだけ短時間にすることができる。したがって、瞬低調査をできるだけ精密に行うことができる。
10……瞬低調査装置 11……メモリレコーダ機能 12……クランプ式電流センサ 13……磁界検出センサ 14……光センサ 16……発光装置 16a……放電管 16b、17b……集光レンズ 17……受光装置 17a……フォトトランジスタ 17c……外乱防止カバー 18……トリガー入出力装置 20……信号中継装置 31……CPU 32……メインメモリ 33……補助メモリ 34……ディスプレイ制御装置 35……通信制御装置 37……入出力制御装置 38……操作スイッチ 39……プリンター 100……生産ライン 101……分電盤 102……製造ライン設備 103、104……制御盤 105……シーケンサー 106……表示盤 107……計算機 113……リレー 114……パイロットランプ