JP4513434B2 - コイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

コイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車、家電等においてプレス成形工程を経て使用される高強度冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車車体のより一層の軽量化のニーズからサイドパネルなどの外板パネルにも440MPa級のIFハイテンが適用されつつある。しかし、このような厳しい深絞り成形、張り出し成形の施される部位に440MPa級以上のハイテンを適用すると、r値の低下に起因した絞り成形割れや、n値の低下に起因した張り出し成形割れが起こり、また張り出しと絞りが混在するような部位では面ひずみの発生が顕在化するため、更なる高r値、高n値、低YR化といった材質の向上が求められているのが現状である。
また、Mn、P等の固溶強化元素の多量添加を必要とする440MPa級ハイテンは、軟鋼と比べてNbC、TiC、Ti-Fe-Pといった析出物の析出形態が熱延コイルのT部(長手先端)、B部(後端)とM部(中央)で変化しやすいため、コイル内で材質変動が生じやすいという課題も有している。例えばTi-B系の冷延440MPa級IFハイテンではコイルのM部では1.6程度のr値を有しているにも拘わらず、コイルのT、B部はM部と比べて硬質になりやすくr値は1.3程度にまで低下する。このため、自動車メーカ等で使用するとコイル端部では高い頻度でプレス割れが発生する。このように、従来、270E、Fといった軟鋼が使用されてきたパネル用途に440MPa級以上のハイテンを適用するためには、鋼板特性を向上させるだけでなく、コイル内の材質変動を低減することも重要課題の一つとなりつつある。
鋼板特性を向上させ、なおかつコイル内の材質変動を低減する方法として、特許文献1には、TiとNbを複合で添加したいわゆるNb-Ti系のIF鋼とすることで、NをTiNとしてまたCを(Ti、Nb)CとしてTiNに複合で粗大に析出させて、r値を高めるとともに長手方向の材質変動を低減する方法が開示されている。
特許文献2では、TiとSの含有量を制御して熱延スラブ加熱時にTi(C、S)を形成させることで巻取時に生成する微細なTiCの析出を防止し、コイル内材質変動を低減する技術が開示されている。
また、特許文献3〜5では、従来の極低炭素鋼より高めの0.004〜0.012%程度にC量を調整し、かつNbとCの量比を所定範囲に制御することで従来鋼より低YR、高n値、高r値でなおかつコイル内材質均一性にも優れた鋼板を得る方法が開示されている。
特開昭61-32375号公報 特開平8-3686号公報 特開2000-303141号公報 特開2000-12943号公報 特開2000-303144号公報
しかしながら、特許文献1では、620℃以上の高温巻取を必要とするが、実製造においては巻取温度が600℃以下に低下することもあり、必ずしも長手方向に均一な材質を確保することが出来なかった。また、Mn量が0.5%程度以下の軟鋼あるいは340MPa級のハイテンにおいては上記の材質向上効果、材質均一化効果が得られるものの、一般に多量のMn添加を必要とするTS:440MPa級以上の高強度鋼板では、r値は極端に低下し、なおかつコイル内の材質変動も著しく大きくなるのが実情であった。
特許文献2では、Ti(C、S)を形成させるためにMnを0.15%以下に制御してMnSの生成を抑制する必要があり、Mnを0.15%超えで添加する鋼では効果が得られない。また、微細なTiCの生成を抑制するので、析出物や結晶粒が粗大化し過ぎて、ハイテンに適用するには鋼板の強度が低下し過ぎるという問題を有していた。さらに、Tiの添加量が比較的多いため表面品質が劣化しやすい問題も有していた。
特許文献3〜5では、コイル内材質均一性に関しては、TS:340〜390MPa級の鋼においては非常に優れた効果を発揮するものの、TS:440MPa級以上の鋼においては同一CTで巻き取ってもコイルのT、B部は硬質、低r値になりやすいという問題があり、より一層の材質均一性の向上が望まれていた。
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、従来鋼より優れた深絞り成形性、張り出し成形性を有しつつ、かつ従来鋼より優れた材質均一性を有するTS:440MPa以上の高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、TS:440MPa級以上の高強度冷延鋼板においてコイル内材質均一性を向上させるべく各種合金元素の影響を鋭意調査した。その結果、元素の中でも特にSiおよびsol.Alを適量添加し、Si、Mn、P、sol.Al、Cu、Niの含有量の関係を適正化し、さらに、Nb、Ti等の炭窒化物形成元素とCの添加量の関係を適正化することにより従来と同等以上の高いr値、n値を保持しつつ材質均一性が格段に向上することが判明した。また、熱延仕上げ温度、巻取温度、焼鈍温度等の製造条件を適正化することにより一層材質均一性が向上することも見いだした。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.004〜0.01%、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03〜0.10%、S:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、Si:1.0%以下、sol.Al:0.15〜1.0%0.15%≦Si+sol.Alで含有し、かつ、700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al≦800を満足し、さらに、Nb:0.045〜0.15%を1.3≦(Nb/93)/(C/12)≦3を満たす範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、引張強度が440MPa以上であることを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[2]前記[1]において、さらに、質量%で、Ti:0.03%以下を1.3≦(Nb/93+Ti*/48)/(C/12)≦3を満たし含有することを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。ただし、Ti*= Ti-48/14×N、Ti-48/14×N≦0のときはTi*=0。
[3]前記[1]または[2]において、さらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1%以下を含有し、かつ、700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al-30×Cu-50×Ni≦800を満たすことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[4]前記[1]ないし[3]のいずれかにおいて、さらに、質量%で、Bを0.0001〜0.003%含有することを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[5]前記[1]ないし[4]のいずれかにおいて、さらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.15%以下、Sb:0.15%以下の1種以上を含有することを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[6]前記[1]ないし[5]のいずれかにおいて、0.25%≦Si+sol.Alであることを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[7]前記[1]ないし[6]のいずれかにおいて、95×Si+30×Mn+990×P+30×sol.Al≦160であることを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[8]前記[1]ないし[7]のいずれかにおいて、前記鋼板は、鋼板表面に亜鉛系めっき層を有することを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
[9]前記[1]ないし[7]のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を用いて、熱延仕上げ温度FDT:Ar3-10〜Ar3+120℃、巻取温度CT:450〜650℃で熱間圧延を行い、次いで、圧下率:50〜90%で冷間圧延を行い、焼鈍温度:770〜880℃で連続焼鈍を行うことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
10]前記[1]ないし[7]のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を用いて、熱延仕上げ温度FDT:Ar3-10〜Ar3+120℃、巻取温度CT:450〜650℃で熱間圧延を行い、次いで、圧下率:50〜90%で冷間圧延を行い、焼鈍温度:600〜750℃でBAF焼鈍を行うことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
[11]前記[9]または[10]において、前記焼鈍後、亜鉛系めっきを施すことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
また、本発明において、高強度冷延鋼板とは、例えばプレス成形用部品として好適な引張強度(以下TSと称す)が440MPa以上の冷延鋼板である。
本発明によれば、深絞り性、張り出し性に優れ、かつコイル内の材質変動の少ない高強度薄鋼板を得ることができる。また、本発明の高強度冷延鋼板を従来困難であったプレス成形用高強度薄鋼板として適用することにより、プレス部品の軽量化、剛性向上、部品点数削減等に寄与することが可能となる。
本発明の高強度冷延鋼板は、以下に示す成分に規定し、その中でも特にSi:1%以下、sol.Al:0.15〜1.0%0.15%≦Si+sol.Alで含有し、700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al≦800とし、さらにNb:0.045〜0.15%を、1.3≦(Nb/93)/(C/12)≦3を満足するように含有すること、あるいはNb:0.045〜0.15%、Ti:0.03%以下を1.3≦(Nb/93+Ti*/48)/(C/12)≦3(ただし、Ti*= Ti-48/14×N、Ti-48/14×N≦0のときはTi*=0)を満足するように含有することを特徴とする。
これらは本発明において最も重要な要件であり、上記のようにSi及びsol.Alの適量添加、Si、Mn、P、sol.Alの含有量の適正化、さらにNb、Ti等の炭窒化物形成元素とCの添加量の関係を適正化し、変態点を適正範囲に調整することで440MPa級の鋼においてコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板を得ることができる。また、上記高強度冷延鋼板は、本発明規定の化学成分を有する鋼を用いて、熱延仕上げ温度FDT:Ar3-10〜Ar3+120℃、巻取温度CT:450〜650℃で熱間圧延を行い、圧下率:50〜90%で冷間圧延を行い、焼鈍温度:780〜880℃で焼鈍を行うことにより製造が可能となる。
以下、本発明をその限定理由とともに詳細に説明する。
本発明者らは、材質特性の非常に優れているC:0.004〜0.01%、Nb:0.04〜0.15%含有する鋼板をベースとして、440MPa級以上の高強度鋼板における材質均一性の向上の方策について鋭意検討を行うため、まず、材質変動が大きくなる原因を明らかにすることを目的に340〜440MPa級の各鋼についてNbCの析出挙動を調査した。その結果、以下のことが明らかになった。
Nb、Cを多量に含有する鋼ではNbCの析出の駆動力が大きいために、NbCはスラブ加熱時に一旦ほぼ完全に固溶したのち、熱延でのランナウト冷却中にNbCとして均一に生成しやすい。このため、例えば340MPa級の鋼では巻取工程までに大部分のNbC析出が完了しているので、巻取条件の影響を受けにくく非常にコイル内材質均一性が良い。しかしながら、このような析出挙動はMnの含有量によって大きく左右される。つまり、Mn量が少ないとランナウトでの析出が容易に生じるが、Mn量を増加させるとランナウト中での析出がおこりにくくなり、結果として巻取工程で多くのNbCが析出して巻取温度や巻取後の冷却速度の影響を受けやすくなる。
次に上記結果をもとに、Mn添加により上記の様な現象が生じる原因を調査した。その結果、NbCは固溶限の大きいγから固溶限の小さいαに変態するときに生じやすく、すなわちγ→α変態に連動してNbC析出が生じやすく、Mn量が少なく変態点が十分高い鋼ではNbC析出が十分進行するが、Mnを多量に含有した鋼では変態点が低下しすぎてNbC析出が遅延し、ランナウトで十分析出が進行しないことが判明した。NbCが巻取過程で析出する場合には巻取温度の影響を顕著に受け、しかも巻取時の冷却速度の影響も受けやすくなるため、冷却速度が速くNbCが極めて微細に析出するコイルのT、B端では焼鈍後の鋼板が硬質化してElが低下するとともにr値も低下する。
以上の結果に基づき、本発明者らは材質変動に影響する主因子が熱延冷却時の変態点にあると考え、440MPa級ハイテンの材質変動に及ぼす合金元素の影響を調査した。その結果、Si、sol.Alを所定量含有させるとともに、さらに変態点を顕著に変化させるSi、Mn、P、sol.Alの含有量を適正化し、変態点を適正範囲に調整することで440MPa級の鋼においても著しくコイル内の材質変動が低減されることが判明した。
図1は、Si:0.2%、Mn:1.4%、P:0.06%、sol.Al:0.2%を含有する鋼(A鋼:本発明鋼)とSi:0.01%、Mn:2.3%、P:0.05%、sol.Al:0.03%を含有する鋼(B鋼:従来鋼)のコイル長手方向のr値の変化を示したものである。なお、これらの鋼は上記成分以外としてC:0.007%、S:0.007%、Nb:0.1%、N:0.002%、B:0.0003%を含有しており、製造条件は、SRT:1200℃、FDT:850℃、CT:550℃、冷間圧延率:71%、CGL焼鈍温度:810℃、SKP圧延率:0.5%とした。また、r値は圧延方向、圧延方向と直角方向、圧延方向と45度方向のそれぞれについて測定し平均r値で示した。図中の長手位置を表すT、M、Bは熱延位置のT、M、Bに対応する。
図1より、主としてMn、Pで固溶強化されたB鋼(従来鋼)では、コイルのM部では1.73程度の高いr値を示しているが、コイルT、B端部では著しくr値が劣化していることがわかる。コイルB部は熱延巻取コイルの最外周部に位置しており、この部位は巻取後の冷却速度が特に速いためr値の低下が著しい。またr値の低い領域はコイル最エッジから数100mに及んでいる。
これに対して、Si、Mn、P、sol.Alを適量添加したA鋼(本発明鋼)では、r値の絶対値が高いうえ、コイル内のr値の変動がほとんど認められず、極めてコイル内の材質均一性が良いことがわかる。また、B鋼で認められるr値の劣化している部位ではTSが10〜20MPa上昇しElが1〜3%低いが、A鋼ではTS、Elの変動も生じていない。
そこで、Si、Mn、P、sol.Alの適正範囲をより詳細に調査するために、C:0.007%、S:0.007%、Nb:0.1%、N:0.002%、B:0.0003%を含有し、Si、Mn、P、sol.AlをSi:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.4%、P:0.03〜0.08%、sol.Al:0.01〜0.5%の範囲で変化させた鋼を製造し、これらの鋼の元素の含有量と材質変動の関係を調査した。製造条件は、SRT:1200℃、FDT:850〜920℃、CT:560℃、冷間圧延率:71%、CGL焼鈍温度:810℃、SKP圧延率:0.5%とした。得られた結果を図2に示す。なお、図2において、○印はYRが65%以下の鋼板を、△印はYRが65%を超えている鋼板を示す。
図2より、Si、Mn、P、sol.Alの含有量を700≦785+40×Si−60×Mn+150×P+70×sol.Alとなるように制御することで、コイル内のr値の変動を0.1以内と著しく低減できることがわかる。なお、上式はAr3変態点とAr1変態点を求めた結果からその中間温度を求めた式であり、変態がある程度進行した時の温度を示す。つまり、変態開始点では大部分がγでありこの温度ではNbC析出がそれほど顕著に生じないが、変態がある程度進行し、なおかつ変態の進行が顕著になるAr3とAr1の中間温度付近ではNbCの析出も顕著に生じるため、材質変動量と成分の関係が上式により相関良く整理されたものと考えられる。なお、Ar3変態点は、熱延でのFDTを種々変化させて表層に粗大粒が発生し始めたFDTをAr3点と判断した。Ar1変態点は上記と同一スラブから切り出したサンプルにつき加工フォーマスタを利用して40℃/secで冷却したときの変態開始、終了温度を測定して、実機製造から得られたAr3変態点にその差分を加算してAr1変態点とした。なお、上式によると、比較的Mnに対する係数が大きいため、従来のようにMnを主体とする成分系ではなく、Si、sol.Alを積極的に活用してMnの含有量を適正化することが材質変動の低減に重要であることがわかる。
ただし、上式の値が800を超えるとr値は緩やかに低下するとともにYRが高くなる。r値が低下するのは、変態点が高くなりすぎ熱延板のフェライト組織が粗大になるためと考えられる。一方、YRが高くなる理由については必ずしも明らかではないが、NbCのサイズと分散形態が適正化されないためと推察される。つまり、C、Nbの含有量が適正化された鋼では、熱延板中に直径1〜3nmの極めて微細なNbCが均一に析出し、その後の焼鈍中にこのNbCが粒界近傍のみで粗大化して粒界近傍には析出物の分布密度の極めて少ないPFZ(Precipitate-free Zone:無析出物帯)が形成される。この、PFZと粒内の微細NbCが分散する領域とで大きな強度差が生じるために、強度レベルの低いPFZから変形が開始して高いn値と低いYRを示すと考えられる。ところが、変態点が高くなりすぎると、NbCの析出温度が高くなりすぎNbCが粗大に析出するためにPFZ内と粒内の強度差が小さくなりYRが低下しにくくなるものと考えられる。また、変態点が高くなりすぎると熱延板組織が顕著に粗大化し、そのような鋼板では再結晶後の組織も粗大化するので、再結晶後の粒界の面積が非常に少なくなりPFZが形成されにくくなるものと考えられる。
以上より、良好な材質を確保しつつ、なおかつコイル内の材質変動を低減するために、Si、Mn、P、sol.Alの含有量は700≦785+40×Si−60×Mn+150×P+70×sol.Al≦800とする。さらに好ましくは、Si、Mn、P、sol.Alの含有量を710≦785+40×Si−60×Mn+150×P+70×sol.Al≦780の範囲に制御することで、より一層材質変動を低減することができ、なおかつYRを64%以下に低減することが出来る。
次に、その他の成分の限定理由について説明する。
C:0.004〜0.01%
CはNbと結合してNbCを形成し、低YR化するのに重要な元素である。また、C含有量を0.004%以上とすることで析出の駆動力が増し熱延ランナウトでの析出が促進されるため、材質安定性が向上する。したがって、低YR化の効果を享受し、材質安定性を向上させるにはCの含有量は0.004%以上とする。一方、Cの含有量が0.01%を超えると析出物が増加し過ぎて低YR化の効果が小さくなってくる。またr値が低下し始める。さらに再結晶温度が上昇してCAL、CGLでの焼鈍時に830℃以上の高温で長時間均熱しなければコイル内で部分的に未再結晶となり材質変動が生じる。以上より、Cの含有量は0.004%以上0.01%以下とする。
Si:1.0%以下
Siは変態点を上昇させる元素であるので材質変動を低減するのに有効な元素の一つである。また、Siは固溶強化能が極めて大きく、例えば、0.1%のSi添加により約0.3%のMnを低減することができる。このため、Siを添加し、Mnを削減することで極めて顕著な材質変動の低減効果が得られる。また、Siを添加してMnを低減することでr値の絶対値が増加し、なおかつ再結晶後の組織が微細化、ポリゴナル化してPFZの形成が促進されるのでYRが低減、n値が増加する。このような効果はsol.Alを含有した場合にも得られる。よって、本発明では、Siはsol.Alと複合で含有させることとし、その含有量は後述の通りとする。しかし、Siの含有量が1.0%を超えると変態点が上昇しすぎて材質向上効果が小さくなる。また表面外観品質、化成処理性も劣化する。以上より、Siの含有量は1.0%以下とする。めっきを施す場合にはSiは0.5%以下とすることが望ましい。また化成処理性もSiを0.5%以下とすることでより一層改善される。
sol.Al:0.15%以上1.0%以下
sol.Alは変態点を極めて顕著に上昇させる元素であるので材質変動を低減するのに有効な元素の一つである。また、sol.AlはSiほどではないがMnと同等の固溶強化能を有しsol.Alの添加により同量のMnを削減することが出来る。このため、sol.Alを添加して同量のMnを低減することで極めて顕著な材質変動の低減効果が得られる。また、Siと同様にsol.Alの添加によりr値の絶対値が増加し、再結晶後の組織が微細化、ポリゴナル化し、YRが低減、n値が増加する作用がある。したがって、sol.AlはSiと複合で含有させることとし、その含有量は後述の通りとする。ただし、sol.Alが1.0%を超えて添加されると変態点が高くなりすぎ、特に熱延B部などでは部分的にα域圧延となりやすくなりコイル内の材質均一性が低下する。また、sol.Alが1.0%を超えると化成処理性、めっき性も劣化する。以上より、sol.Alの含有量は1.0%以下とする。
0.15%≦Si+sol.Al
上記のとおり、材質変動の低減効果および添加によるr値の絶対値の増加、YRの低減、n値の増加する作用効果のため、Si、sol.Al は、それぞれSi:1.0%以下、sol.Al:0.15〜1.0%の範囲で0.15%≦Si+sol.Alとする。Si、sol.Al含有の効果をより一層発揮させるには0.25%≦Si+sol.Alが好ましい。
Mn:0.5〜2.5%
Mnは固溶強化により強度を向上させる元素であり、440MPaの強度を得るには少なくとも0.5%以上の添加を必要とする。これより少ないと、SiやPを極めて多量に添加する必要があり材質が劣化する。しかし、2.5%を超えるとr値の絶対値が低下する。以上より、Mnの含有量は0.5%以上2.5%以下とする。材質均一性、r値向上の観点からはMnは2%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.6%以下である。
P:0.03〜0.10%
Pはそれ自体大きな固溶強化能を有しており、例えば、0.01%のP添加により約0.3%のMn削減が可能であり、材質変動を低減する元素である。また、Pを適量添加することでr値の絶対値が増加する。したがって、本発明においてはPを積極的に活用することとし、P添加により十分Mnを低減して材質変動を低減し、かつr値の向上効果を享受するためにPの含有量は0.03%以上とする。しかし、Pの含有量が0.10%を超えるとスポット溶接性が劣化し、またP化物が生成しやすくなるので材質安定性が低下する。以上より、Pの含有量は0.03%以上0.10%以下とする。
S:0.03%以下
Sは硫化物として鋼中に存在し、過剰に含まれると延性の劣化を招く。したがって、Sの含有量は0.03%以下とする。デスケーリング性の観点からはSを0.004%以上含有させることが好ましく、延性向上の観点からはSは0.01%以下とすることが好ましい。
N:0.01%以下
NはAl、Ti、NbによりAlN、TiN、もしくはNb(C、N)として無害化されるが、Nは少ないほど好ましく、0.01%以下とする。
Nb: 0.04〜0.15%
Nbを0.04%以上添加することで熱延ランナウトでのNbCの析出が促進し材質均一性が大幅に向上する。また、Cと結合し、NbCを形成してn値を高めるとともに、熱延板での固溶Cの低減、熱延板組織の微細化によりr値を高める。材質均一性を向上させ、n値、r値等の材質を向上させるためにはNbの含有量は0.04%以上とする必要がある。一方、Nb含有量が0.15%を超えると材質向上効果が飽和するばかりか圧延荷重が著しく増大する。以上より、Nbの含有量は0.04%以上0.15%以下とする。
1.3≦(Nb/93)/(C/12)≦3
さらに、高いr値と高いn値を安定して得るためには、Nbの含有量をCの含有量に対して適正範囲に制御して、残存する固溶C量およびマトリックスに残存する固溶Nb量を所定範囲に調整する必要がある。したがって、Nbは上記に加え、1.3≦(Nb/93)/(C/12)≦3とする。
本発明の鋼板は、上記の必須添加元素(C、Si、sol.Al、Mn、P、S、NおよびNb)で目的とする特性が得られるが、所望の特性に応じて以下の元素を含有することができる。
Ti: 0.03%以下
TiもC、Nと結合し、r値を向上させる作用がある。ただし、Tiは0.03%を超えて含有させてもr値向上効果は小さく、いたずらにコストアップを招く。また、Tiの添加量が増加すると析出物が粗大化するので強度が低下する。さらにはTiの含有量が0.03%を超えると炉内酸化、窒化に起因した表面ムラが生じやすくなる。したがってTiは添加する場合0.03%以下とする。強度確保の観点からはTiは0.012%以下とすることが好ましい。
1.3≦(Nb/93+Ti*/48)/(C/12)≦3
さらに、高いr値と高いn値を安定して得るためには、Tiは添加する場合、Nb及びTiの含有量をCの含有量に対して適正範囲に制御して、残存する固溶C量およびマトリックスに残存する固溶Nb量及び固溶Tiを所定範囲に調整する必要がある。したがって、Nb、Tiは上記に加え、1.3≦(Nb/93+Ti*/48)/(C/12)≦3とする。なお、ここで、Ti*= Ti-48/14×N、Ti-48/14×N≦0のときはTi*=0である。
Cu:1%以下
Cuはr値や耐二次加工脆性等の材質を劣化させることなく強度を増加させるので1%以下で添加することができる。ただしCuを添加すると、スラブ加熱時に粒界に濃化して表面欠陥が生じやすくなる。このような表面欠陥を低減するために、Cuを添加する場合にはCuと等量程度のNiを添加することが望ましい。
Ni:1%以下
NiもCuと同様にr値や耐二次加工脆性等の材質を劣化させることなく強度上昇させることのできる元素であるので1%以下で添加することができる。
さらに、Ni、CuもMnと同様に変態点を低下させる元素であるので、Ni及びCuを添加する場合には700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al-30×Cu-50×Ni≦800とする必要がある。
B:0.0001〜0.003%
さらに耐二次加工脆性の向上のためにBを0.0001%以上添加することが望ましい。一方、0.003%以上を超えて添加しても耐二次加工脆性の改善効果は小さく、r値の劣化、圧延負荷の増大を招く。以上より、Bは0.0001%以上0.003%以下で含有させることが好ましい。
Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.15%以下、Sb:0.15%以下
さらに強度アップ、めっき品質の向上を図るために、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.15%以下、Sb:0.15%以下を添加することが出来る。
Crは、r値や耐二次加工脆性等の材質を劣化させることなくわずかに強度を増加させるが、0.5%を超えて添加すると表面品質、酸洗性を劣化させる。以上より、Crは0.5%以下で含有することが好ましい。
Mo、Vは、Nb、TiがC量に対して十分添加された鋼では添加してもCと結合する効果は小さく、むしろ、主として固溶強化元素として作用する。これらの元素はr値や耐二次加工脆性等の材質を劣化させることなく強度上昇させることのできる元素であるが、高価な元素である。以上よりMoは0.5%以下、Vは0.5%以下で含有することが好ましい。
また、Sn、Sbはスラブ加熱時、巻取時、CAL、CGL焼鈍時、および中間焼鈍を施す場合には中間焼鈍時の表層窒化、酸化が防止され、窒化に起因しためっきムラが抑制されるとともに、炉内酸化に起因しためっき密着性の改善効果がある。まためっき浴中での亜鉛酸化物の付着を防止し、めっき外観を向上させる効果もある。以上より、Sb、Snはともに0.15%以下で含有することが好ましい。
さらに、上記に加えSi、Mn、P、sol.Alの含有量は95×Si+30×Mn+990×P+30×sol.Al≦160の範囲に調整することが望ましい。これは、これらの含有量が多くなりすぎると、本発明鋼のC、Nb含有量をベースとする鋼においては耐二次加工脆性が劣化するためである。なお、上式は各元素を1%添加したときの二次加工脆性遷移温度に及ぼす各元素の影響を示した式であり、例えば、本鋼においてSiは1%あたり95℃遷移温度を上昇させる。この値が160となるとBを添加した鋼であっても遷移温度は-20℃程度まで上昇するので、これを超えてSi、Mn、P、sol.Alが添加された鋼は二次加工脆性が劣化し実部品で脆性割れが発生する可能性が高い。よって、440MPa超えの強度を確保しようとする場合はSi、Mn、P、sol.Alの含有量を上記範囲に調整した上で、Cu、Ni、Mo等の元素を活用することが望ましい。また、上式の値を140以下とすることで遷移温度は-40℃以下になるので、Si、Mn、P、sol.Alの含有量は上式において140以下とすることがより一層好ましい。
なお、上記以外の残部はFe及び不可避不純物とする。
次に、本発明のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法について述べる。なお、下記に示す製造条件は本発明の高強度冷延鋼板を得るための一実施態様であり、これに限定されるものではない。
本発明の冷延鋼板は、以上の化学成分範囲に調整された鋼スラブを熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍等の一連の工程を経ることにより製造され、必要に応じてめっき処理がなされる。本発明の鋼板を製造する場合、熱延プロセスはスラブ加熱後圧延する方法、連続鋳造後短時間の加熱処理を施して、あるいは該加熱工程を省略して、直ちに圧延する方法のいずれでもよい。
熱間圧延工程においては、鋳片スラブ中に生成したNbC、TiC等の炭化物を十分固溶させるために、スラブ加熱温度SRT(℃)は、1080℃以上とすることが望ましい。ただし、1350℃となると表面品質が劣化するので、1350℃以下とすることが望ましい。優れた外板適性を付与するためには、一次スケールのみならず熱間圧延時に生成する二次スケールについても十分に除去するのが望ましい。なお、熱間圧延中においては、バーヒーターにより加熱を行ってもよい。
仕上げ圧延温度FDT(℃)は、熱延組織を微細化し、かつ結晶粒径等の組織の変動を軽減するために(Ar3-10℃)以上(Ar3+120℃)以下の範囲で行うこととする。FDTがAr3より10℃超えで低下すると表層に粗大粒が発生してr値が低下する。またコイル長手方向および幅方向に材質変動が生じる。一方、FDTがAr3より120℃超えで高くなると熱延組織が粗大化しr値が低下する。また、FDTが880℃を超えるとウロコ状のスケールの噛み込みが生じやすくなり、CGL後の表面外観が劣化する。以上より、FDTは(Ar3-10℃)以上(Ar3+120℃)以下とし、より好ましくはAr3以上880℃以下とする。ただし、Ar3=835+70×Si-40×Mn+250×P+140×sol.Al-20もしくはAr3=835+70×Si-40×Mn+250×P+140×sol.Al-20×Cu-30×Niとする。
巻取温度CT(℃)は、450℃以上650℃以下とする。鋼板成分が所定範囲に調整された本発明鋼では、従来鋼と比べて巻取温度に対する材質変動が小さくなるが、それでもCTが450℃より低くなると微量に残存した固溶Cが巻取過程で十分析出出来なくなりr値がわずかに低下する。また、P、Nbを比較的多量に含有している鋼では高温巻取するとP化物が生成してr値、n値が低下する。この場合、巻取後の冷却速度が速いコイルT、B部と比べ、長時間高温保持されるコイルのM部で顕著にP化物が生成して材質が劣化する。以上より、CTは450℃以上650℃以下とする。また、本発明鋼ではNbCの大部分が熱延ランナウトで析出しており巻取温度に対する材質変化は小さいので、酸洗性等を考慮するとCTは480℃以上580℃以下が好ましい。
冷間圧延の圧下率は50%以上90%以下とする。圧下率をこの範囲に制御することで、再結晶焼鈍後に高いr値を得るのに有利な集合組織が発達し、なおかつ再結晶後の組織が微細化してPFZが顕著に生成するのでr値、n値とも向上する。r値を向上させる観点から、好ましくは70%以上90%以下とする。
焼鈍温度は、連続焼鈍の場合、770〜880℃とする。770℃より低い温度では十分長時間均熱保持しなければ再結晶が不十分となる部分がコイル内に発生し、n値、El等がコイル内で変動する。880℃を超えた温度では、焼鈍するとMnの高い鋼板では変態点を超えて焼鈍することとなり、n値、El等の材質が劣化する。以上より、焼鈍温度は770℃以上880℃以下とする。さらに、焼鈍温度を810℃以上とすることで通板速度を増加させてもコイル全長にわたって良好な材質が得られるので、好ましくは810℃以上880℃以下とする。
また、BAF焼鈍の場合は、焼鈍時間が長いので最適焼鈍温度は連続焼鈍に比べ低温側にずれる。そのため、BAF焼鈍の場合の焼鈍温度は、600〜750℃の範囲とする。
以上より、コイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。なお、焼鈍後の冷延鋼板は、鋼板表面に電気めっきまたは溶融めっきによって、亜鉛系めっきを施した亜鉛系めっき鋼板として使用することもできる。この場合も上記と同様にコイル内材質均一性に優れた高強度の亜鉛系めっき鋼板が得られることになる。亜鉛系めっきとしては、純亜鉛めっき、合金化亜鉛めっき(亜鉛めっき後に合金化加熱処理して得られた亜鉛めっき)、亜鉛-Ni合金めっき等が挙げられ、また、めっき後に有機皮膜処理を施した鋼板においても同様の性能を付与することができる。
さらに、プレス時のしわ発生(ストレッチャーストレイン)を防止するために焼鈍後の冷延鋼板またはめっき鋼板において0.3〜1.5%の圧下率の調質圧延を施すことが望ましい。Nb、C量の適正化された本発明鋼では調質圧延率は0.3〜0.7%の範囲に制御することでより一層高いn値、高いElが確保でき、プレス成形性が向上する。
表1に示す成分の鋼を溶製後、230mm厚のスラブに連続鋳造した。次いで得られたスラブを1200〜1300℃に加熱後、表2に示す熱延条件で熱間圧延して板厚3.2mmの熱間板とし、板厚0.8mmまで冷間圧延(圧下率=75%)後、表2に示す条件で、連続焼鈍(CAL)、連続焼鈍・溶融亜鉛めっき(CGL)、箱焼鈍(BAF)のいずれかを行った。なお、CGLでは、焼鈍後460℃で溶融亜鉛めっき処理を行い、直ちにインライン合金化処理炉で500℃に加熱してめっき層の合金化処理を行った。めっき目付量は片側あたり45g/m2とし両面に付着させた。また、焼鈍または焼鈍・溶融亜鉛めっき後の鋼板には、圧下率0.5%で調質圧延を行った。このようにして得られた鋼板に対し、以下に示す方法により、機械特性を調査した。得られた結果を表2に併せて示す。
引張試験はJIS5号試験片を用いて行い、面内平均値として3方向の平均値を用いた。
[面内平均YS]=([YS0]+2[YS45]+[YS90])/4
但し、[YS0]:鋼板圧延方向でのYS
[YS45]:鋼板圧延方向に対し45°方向でのYS
[YS90]:鋼板圧延方向に対し90°方向でのYS
[面内平均TS]=([TS0]+2[TS45]+[TS90])/4
但し、[TS0]:鋼板圧延方向でのTS
[TS45]:鋼板圧延方向に対し45°方向でのTS
[TS90]:鋼板圧延方向に対し90°方向でのTS
[面内平均r値]=([r0]+2[r45]+[r90])/4
但し、[r0]:鋼板圧延方向でのr値
[r45]:鋼板圧延方向に対し45°方向でのr値
[r90]:鋼板圧延方向に対し90°方向でのr値
なお、機械特性は、コイル長手方向のT、M、B各位置にて測定した。
Figure 0004513434
Figure 0004513434
表2より、本発明の成分を有する鋼は、比較例である極低炭素鋼をベースにSi、Mn、Pで強化した鋼:No.28(鋼番T)やC、Nbを調整しているがMn、Pを主体に強化した鋼:No.30(鋼番V)と比べてr値の絶対値が高く、なおかつコイル内での材質変動が小さいことがわかる。また、Si、sol.Alが複合で0.25%以上と最適範囲内にあり、785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al-30×Cu-50×Niの値が適正化された鋼:No.14、16、17(鋼番F、H、I)ではr値が特に高くYRが低いうえ、コイル内の材質変動も極めて小さい。なお、95×Si+30×Mn+990×P+30×sol.Alの値が所定範囲にある鋼:No.2(鋼番B)の二次加工脆性遷移温度は-50℃である。
一方、C、Nb及び785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Alが本発明範囲外であるIFハイテンNo.28(鋼番T)、NbとCの量比が適正化されていない鋼:No.29(鋼番U)、sol.Al本発明範囲外であり、Mn、Pにより強化された鋼:No.30(鋼番V)はいずれも熱延でのNbC析出がおこりにくく、コイル内の材質変動が大きい。785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al-30×Cu-50×Niの値が本発明範囲外である鋼:No.31(鋼番W)はYRが高く、またr値の変動もやや大きい。sol.Alが本発明範囲外である鋼:No.32(鋼番X)は変態点の低下を抑えるためにPを多量に添加しているのでP化物が生成しやすい。このため、コイルM部のr値が特に低下して材質変動がやや大きくなっている。また、強度を確保するためにMnも1.7%と比較的多量に添加する必要があるのでr値の絶対値が低い。Si、Mn、P及び785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Alのいずれか一つ以上が本発明範囲外の鋼:No.33、34、35(鋼番Y、Z、AA)はr値の絶対値が低い。Sol.Alの含有量が本発明範囲外の鋼:No.36(鋼番AB)は変態点が高くコイルB部でフェライト域圧延となりやすく材質変動が大きくなっている。
本発明の鋼板は、優れた材質特性が求められる自動車あるいは家電製品でのプレス成形用として好適である。
Si、Mn、P、sol.Alが適正化された鋼と適正化されていない鋼のコイル長手方向のr値の変化を示す図である。 コイルB部とコイルM部のr値の変化量とSi、Mn、P、sol.Al含有量の関係を示す図である。

Claims (11)

  1. 質量%で、C:0.004〜0.01%、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03〜0.10%、S:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、Si:1.0%以下、sol.Al:0.15〜1.0%0.15%≦Si+sol.Alで含有し、かつ、700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al≦800を満足し、さらに、Nb:0.045〜0.15%を1.3≦(Nb/93)/(C/12)≦3を満たす範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、引張強度が440MPa以上であることを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  2. さらに、質量%で、Ti:0.03%以下を1.3≦(Nb/93+Ti*/48)/(C/12)≦3を満たし含有することを特徴とする請求項1に記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
    ただし、Ti*= Ti-48/14×N、Ti-48/14×N≦0のときはTi*=0。
  3. さらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1%以下を含有し、かつ、700≦785+40×Si-60×Mn+150×P+70×sol.Al-30×Cu-50×Ni≦800を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  4. さらに、質量%で、Bを0.0001〜0.003%含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  5. さらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.15%以下、Sb:0.15%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  6. 0.25%≦Si+sol.Alであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  7. 95×Si+30×Mn+990×P+30×sol.Al≦160であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  8. 前記鋼板は、鋼板表面に亜鉛系めっき層を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板。
  9. 請求項1ないし7のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を用いて、熱延仕上げ温度FDT:Ar3-10〜Ar3+120℃、巻取温度CT:450〜650℃で熱間圧延を行い、次いで、圧下率:50〜90%で冷間圧延を行い、焼鈍温度:770〜880℃で連続焼鈍を行うことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  10. 請求項1ないし7のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を用いて、熱延仕上げ温度FDT:Ar3-10〜Ar3+120℃、巻取温度CT:450〜650℃で熱間圧延を行い、次いで、圧下率:50〜90%で冷間圧延を行い、焼鈍温度:600〜750℃でBAF焼鈍を行うことを特徴とするコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  11. 前記焼鈍後、亜鉛系めっきを施すことを特徴とする請求項9または10に記載のコイル内材質均一性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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