本発明は電動機を駆動する電動機駆動装置に係り、特に、モートル電流を検出してフィードバック制御を構成した電流制御ループを内部に備え、位置、速度、電流、トルク等を制御するのに好適な電動機駆動装置に関するものである。
マイクロプロセッサーの発達により、一般産業機械に使用されるモートル制御装置も、従来のアナログ制御からマイクロコントローラを使ったデジタル制御へと移り変わってきた。プリント基板に使用される部品もトランジスタから集積回路IC(Integrated Circuit)へ、更に中規模集積回路MSI、大規模集積回路LSI、超大規模集積回路VLSIと移り変わり、ASIC(Application SpecificIC)や顧客仕様による専用のカスタム用LSI、ゲートアレイ等が使われるようになり、制御装置の小型化が進んでいる。これらのデジタルICのパッケージはプリント基板へ表面実装することにより、より一層の小型化が進んでいる。また、これらICの高密度集積化が進み、ICのリード端子数(ピン数)も100ピンを越えるものになっており、それに伴いリード端子のピッチも、従来の2.54mmから、ハーフピッチと呼ばれる1.27mm、さらに1.00mm、0.8mm、0.75mmピッチのものが使用されている。さらに最近では、0.5mmピッチのリードパッケージが使われるようになってきた。これに合わせて、プリント基板の導体パターン間隔も2.54mmのリードピッチ間に、導体パターンを1本通すピン間1本から、最近はピン間3本または3本以上通すような設計が進められ、プリント基板としての高実装化が進んでいる。
一方、一般産業機械の可変速運転を行う動力源として、交流モートルである誘導電動機をインバータで駆動する速度センサーレスベクトル制御、速度センサー付きベクトル制御が使われ、また、工作機、金属加工機械、組立機械、繊維機械、織機、ロボット等の位置、速度センサを内蔵したACサーボモートルが、自動化、省力化の要求により、加工組立て現場などで盛んに使われる様になってきた。これらの基本制御は位置、速度、電流、トルク制御であり、最近のライン速度の高速化、タクトタイムの高速化の要求により、誘導電動機のベクトル制御では、モートルの電流をトルクに比例するトルク分電流と、このトルク分電流に直交する磁束分電流に分離して、高速電流制御が行われている。またACサーボモートルの場合は、回転子に永久磁石を用いた回転界磁形同期電動機を、磁極位置検出器で永久磁石の位置を検出して高速の電流制御を行なっており、いづれの場合も電流の瞬時値を制御している。
これらの交流モートル制御装置の設置場所は、組立て現場や加工現場のモートルの近くに設置された制御盤内であり、この周囲の環境は切削した金属の屑、切削油、タイヤ加工工場であればタイヤを加工した炭素を含んだ粉塵が浮遊し、繊維工場、織機工場であれば綿ボコリが浮遊している。これらの粉塵、綿ボコリは制御装置内のプリント基板上に少しづつ付着する。また織機工場で、縦糸と横糸を編む自動織機の横糸をウォータで飛ばすウォータジェット方式では水を扱っているため周囲の湿度が高くなり、気温の上昇下降と共にモートル制御回路のプリント基板上が結露する。プリント基板上には集積回路が実装されており、上述のリードピッチの狭い部品が搭載されている。このため、プリント基板上に長期間かけて付着した炭素を含む粉塵、綿ボコリが集積回路のリードを覆う事になる。
交流モートルを毎日朝、運転開始し、運転と共に制御盤内の気温が上昇し、夜、運転停止して制御盤内の気温は下降し、外気温も下降する。このため、昼暖められた制御盤内の空気は湿度が上昇し、夜、臨界温度以下でプリント基板上に付着した炭素を含む粉塵、綿ボコリと共に結露する。つぎの日、朝運転開始時、粉塵、綿ボコリと共に結露した状態で通電すると、集積回路のリード間が電気ショートを起こす事がある。これは湿度の高い梅雨時期に多く発生するが、水を使用するウォータージェットタイプの織機の場合は、時期に限らず発生する。このためモートル制御回路が誤動作し、場合によってはインバータ主回路の半導体素子が破損する事がある。
つぎに、位置、速度、電流、トルクを制御するACサーボモートル制御回路のプリント基板上に実装されている集積回路のリード端子が、粉塵、綿ボコリが付着し結露することによって、隣接するリードどうしが、ショートした場合についての影響を述べる。
図14に従来の一実施形態であるACサーボモートルの制御ブロック図を示す。1はACサーボモートル、2はエンコーダでACサーボモートルのロータの磁極位置を検出する磁極位置センサー2-1と、ACサーボモートルの回転位置を検出する回転位置センサー2-2を、複合的に合わせ持ち、ACサーボモートルに内蔵されている。3は位置制御、5は速度制御、7は電流制御、8はPWM(Pulse Width Modulation)制御演算部で、前向きのループを構成している。4は位置カウンタ回路、6は速度演算回路、10は電流検出回路で、それぞれ位置、速度、電流フィードバックループの後向きループを構成している。9はACサーボモートル1のロータの磁極位置センサー2-1と回転位置センサー2-2を入力して磁極位置を演算する磁極位置演算回路である。13はスイッチング素子を駆動するドライバとその制御電源回路を含むインバータ主回路である。このうちインバータ主回路はエポキシ樹脂などの樹脂でモールドされたパワーモジュールの中に実装されている。11は電流検出器で、ACサーボモートルに流れる電流を検出して電流検出回路10にフィードバックしている。なお、12−1〜12−3は指令信号とフィードバック信号を加算する加算点であり、符号をつけて+は加算、−は減算となる。図では指令信号は+、フィードバックは−としているため負帰還フィードバック回路を構成している。
ACサーボモートルの制御回路は、ロジックプリント基板19に実装され、マイクロプロセッサCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、A/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)、各種のLSI、インターフェイス用部品等の電子部品で構成され、図14の枠19で囲んだ範囲で示される。これらに採用される部品のリード端子のピッチは、0.5〜0.8mm前後の高密度パッケージとなっている。
ここで、位置、速度、電流(またはトルク)の3種類のフィードバックループが構成されており、一般に各フィードバックループの応答性は、内側に構成されているループ程、応答性を早くして、オーバーシュート、アンダーシュートの少ない安定な制御系を構成する。その応答は速度制御の場合は、位置制御の応答の4〜6倍高く設定し、電流制御の応答は速度制御応答の4〜6倍高く設定する。このため、マイクロプロセッサCPUでソフトウェア処理する場合、ソフトウェアの演算周期は電流フィードバックループが最も速く、つぎに速度フィードバックループとなり、位置フィードバックは最も遅い処理となるのが一般的である。
図15は一般的な外部保護形態の一実施形態で、ACサーボモートル1、エンコーダ2と、ACサーボモートル制御装置20の外部に設けた外部保護装置18である。ACサーボモートルが誤動作を起こした場合、作業者の安全を図るための装置で、機械に合わせた保護システムが設置される。これらのセンサーには機械側に設置された加速度センサー14、オーバー速度センサー15、稼動範囲の両端に取り付けた、右、左側エッジセンサー16で、規定の加速度を越えた場合や、規定速度を越えた場合、また、規定の機械の稼動範囲を越えた場合に、これらのセンサーからの信号で暴走防止のための保護処理回路17に入力し、ACサーボモートルを停止させる。また、この外部保護装置18により主回路電源をオフさせたり、さらに機械ブレーキを動作させる等の、安全処置を行っている。一般にACサーボモートル1とエンコーダ2とACサーボモートル制御装置20は汎用品として電機メーカが製作し、セットメーカはこれらの電機品を購入して機械設計を行い、電気、機械を含めた全体システムに対しての外部保護システムを設置する。
図16に、従来のACサーボモートル制御装置に使われているパワーモジュールの一実施形態の内部回路図を示す。交流電源はR、S、T端子に接続されダイオード整流器43で交流から直流に変換される。端子P−P1にはパワーモジュールの外部に図示しない限流抵抗が接続され、またP1−N端子間には図示しない平滑コンデンサが接続され、交流電源投入時の平滑コンデンサに流れる突入電流を限流抵抗で制限する。平滑コンデンサで平滑された直流電圧は、スイッチング素子Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz(パワートランジスタなど)とダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy,Dzの逆並列回路が6組で構成されたインバータ回路45に印加され、この各スイッチング素子のベースまたはゲートをオン・オフ制御することにより交流を出力し、出力端子U、V、Wに接続された図示しないACサーボモートルを駆動する。また、ACサーボモートルから回生されるエネルギーは、P1−N間に接続された平滑コンデンサに蓄えられ、直流電圧が上昇した時に図示しないP1−BR端子間に接続された放電抵抗と共に、回生制動回路44のスイッチング素子がオンし、放電抵抗で回生エネルギーを消費する。回生制動回路とインバータ回路の7個のスイッチング素子のゲート入力は、パワーモジュールの外部のドライバー回路から供給される。このゲート端子GU、EU、GV、EV、GW、EWとGX、GY、GZ、GB、Eは、後述する図17のパワーモジール22に示すように、細いリード端子であり、狭いピッチで並んでいる。これに対し、主回路端子は太いリード端子であり、並んだ間隔は広く開けられており、粉塵は通り抜ける。主回路プリント基板はパワーモジュール22の端子位置に合わせて、このリード端子が貫通し、半田付けにより電気的に接続される様になっており、主回路プリント基板のゲート端子のリードピッチは、同様に狭くなり、集積回路のリードピッチと全く同様に、粉塵、綿ボコリと共に結露した状態で通電すると、パワーモジュールのゲート端子のリード間がショートを起こす事がある。
図17は従来のACサーボモートル制御装置の一実施形態の分解構造図である。22は図16で説明したパワーモジュールで、冷却フィン21に取り付けられている。19はロジックプリント基板で、23は主回路プリント基板である。24はパワーモジュール22と2枚のプリント基板19、23を覆っているカバーである。カバーは通風孔39があけられており、装置内で暖められた空気を自然空冷で外部に排出できる様になっている。また正面に主回路プリント基板23に取り付けられた主回路コネクタ26とロジックプリント基板19に取り付けられた入出力コネクタ37とエンコーダコネクタ38を外部に出すための貫通孔40、41、42があけられている。
ロジックプリント基板19は、図14の19で囲まれた枠内の構成部品を搭載したものを示しており、位置、速度、電流(トルク)等を制御演算する1個のマイクロプロセッサ(CPU)31、ACサーボモートルの電流をアナログからデジタルに変換するA/Dコンバータ32、ゲートアレイ33、ROM(Read Only Memory)34、インターフェイスIC35、RAM(Random Access Memory)36等の集積回路部品で構成されている。
主回路プリント基板23は、交流を直流に変換するダイオード整流器43の出力のP−P1端子間の限流抵抗、P1−N端子間に接続された平滑コンデンサ25や、ACサーボモートル1の電流を検出する2個の電流検出器11等の主回路部品が実装され、また、制御電源回路を構成するスイッチングトランス27、およびスイッチング電源用IC29と、PWM制御演算から出力された信号を28のドライバICで駆動するドライブ回路、主回路とのインターフェイスをやり取りするインターフェイスIC30等が実装されている。このように図17のロジックプリント基板19、主回路プリント基板23には、各種の集積回路部品が実装されており、これらIC、LSI、VLSI、ゲートアレイ、ASICのリードピッチは、0.5〜0.8mm前後の高密度パッケージが採用されている。
つぎに、プリント基板上に実装されている集積回路のリード端子が、粉塵、綿ボコリが付着し結露することによって、隣接するリード端子どうしが、ショートした場合についての動作を述べる。隣接するリード端子どうしがショートする場合は、隣のリード端子がロジック電源5V(ハイレベルのH電位に固定)であったり、コモンの0V(ローレベルのL電位に固定)であったり、別の信号ライン(H電位、L電位混在)であったりするが、簡易的にロジック電源5V(H電位に固定)と、コモンの0V(L電位に固定)ついて述べる。
一般に、フィードバックを持った自動制御ループの信号がコモンとなる0Vラインにショートした場合についてその動作を検討する。図14で、加算点12−1〜12−3の−側のフィードバック信号である後ろ向きの信号の位置フィードバック信号θf、速度フィードバック信号Nf、電流フィードバック信号Ifがコモン電位の0Vラインにショートした場合は、指令信号θref、Nref、Irefに対して実際の位置、速度、電流(トルク)が、指令値どおりに追従するようフィードバック制御が働く。
まず、位置制御ループの位置フィードバック信号θfが0Vラインにショートした場合では、実際はその位置に達しているのに指令位置まで達していないと判断して、加速する。しかし位置フィードバック信号は0Vラインにショートしているため正規の位置はフィードバックされず加速を続け暴走する。しかし、電流制御ループが正常に動作していれば、ACサーボモートルの電流は最大値以下に制限されており、外部保護装置18が動作してくれるので、ACサーボモートル1、エンコーダ2やACサーボモートル制御装置20が破損する事はない。
次に、速度制御ループの速度フィードバック信号Nfが0Vラインにショートした場合では、実際はその速度に達しているのに、指令速度まで達していないと判断して増速する。しかし速度フィードバック信号は0Vラインにショートしているため正規の速度はフィードバックされず増速を続け暴走となる。この場合も、電流制御ループが正常に動作していれば、ACサーボモートルの電流は最大値以下に制限され、ACサーボモートル1、エンコーダ2やACサーボモートル制御装置20が破損する事はない。
次に、電流制御ループの電流フィードバック信号Ifが0Vラインにショートした場合では、実際はその電流に達しているのに指令電流まで達していないと判断して瞬時に増加する。しかし電流フィードバック信号は0Vラインにショートしているため正規の電流はフィードバックされず増加を続け瞬時に、最大電流を越え、過電流となり、ACサーボモートルが加速する時間もなく、過電流検出回路の保護動作を行い、インバータ主回路のスイッチング素子はベース遮断し、ACサーボモートル制御装置20はトリップする。この時、パワーモジュール22のスイッチング素子に流れる電流は、スイッチング素子の電流増幅率で決まる飽和電流まで大きな電流が流れ、過電流検出回路が動作して遮断する。この時、スイッチング素子の内部の温度は上昇しており、内部温度が下がっていない状態で繰り返すと、熱疲労でスイッチング素子が破損する。
位置制御ループ、速度制御ループでの応答時間は、実際の機械が移動するための加減速時間であり、この加減速時間はACサーボモートルの慣性モーメントとモートル軸に換算した機械の慣性モーメントの和に比例し、モートルトルクと負荷トルクの差に反比例する。したがって、機械の慣性モーメントが関係し、応答性は遅い。また、前述のようにオーバーシュート、アンダーシュートの少ない安定な制御系を構成するために、応答性は速い順に電流ループ、速度ループ、位置ループとなる。したがって、位置ループ、速度ループの応答時間は電流ループの応答時間より遅く設計している。このため、機械に加速度センサー、オーバー速度センサー、稼動範囲を逸脱しないように稼動範囲の両端に取り付けた右左のエッジセンサーで、時間的に遅れることなく検出し保護する事ができた。例えばセットメーカは電気、機械を含めた全体システムに対しての外部保護装置18を製作し、機械側に設置された加速度センサー14、オーバー速度センサー15、稼動範囲の両端に取り付けた、右側エッジセンサーと左側エッジセンサー16で、暴走防止を行い人命の安全を確保し、機械の保護を行うので、ACサーボモートルの保護を行う事ができた。
また、フィードバック系でそのループ内の信号がHレベルとなる5Vラインにショートした場合についてその動作を検討する。
加算点12−1〜12−3の−で加算される位置フィードバック信号θf、速度フィードバック信号Nf、電流フィードバック信号Ifが、Hレベルの5Vラインすなわち、正方向の最大値にショートした場合は、指令信号θref、Nref、Irefに対して実際の位置、速度、電流(トルク)が、指令値どおりに追従するようフィードバック制御が働く。
まず、位置制御ループでは、実際はその指定位置に達しているのに正の最大位置がフィードバックされるため、行き過ぎたと判断して、逆転方向に加速する。しかし、位置フィードバック信号はHレベルの5Vにショートしているため正規の位置はフィードバックされず逆転方向に加速を続け暴走する。
次に、速度制御ループでは、実際はその指令速度に達しているのに指令速度を越え、最大速度まで達したと判断して減速し、さらに逆転方向に加速する。しかし速度フィードバック信号は5Vラインにショートしているため正規の速度はフィードバックされず、逆転加速を続け暴走状態となる。しかし、フィードバック信号が0Vラインにショートした場合と同様に、電流制御ループが正常に動作していれば、ACサーボモートルの電流は最大値以下に制限されており、 ACサーボモートル1、エンコーダ2やACサーボモートル制御装置20が破損する事はない。さらに、全体システムに対しての外部保護装置18を製作し、機械側に設置された加速度センサー14、オーバー速度センサー15、稼動範囲の両端に取り付けた、右側エッジセンサーと左側エッジセンサー16で、暴走防止を行い人命の安全を確保し、機械の保護を行うので、ACサーボモートルの保護を行う事ができる。
次に、電流制御ループでは、実際は指令電流に達しているのに、最大電流まで達していると判断して瞬時に減少し、逆極性側の負の最大電流を越えてなおも増加する。しかし電流フィードバック信号は5Vラインにショートしているため正規の電流はフィードバックされず負側に増加を続け瞬時に過電流となる。これが繰り返せば、熱疲労でスイッチング素子が瞬時に破損する。
なお、エンコーダ2の磁極位置センサー2−1および、回転位置センサー2−2とACサーボモートル制御装置20への出力線の断線検出は、実開昭62−44262号公報に示されており、基準パルスと、この基準パルスを反転した反転パルスの、両方出力したパルスエンコーダを使用し、 ACサーボモートル制御装置の受信側で、両者のパルスの排他的論理和で断線検出する事が行われていた。これにより、エンコーダ2とACサーボモートル制御装置20とのエンコーダ出力線の断線は、断線すると共に瞬時に検出するので、機械が暴走する事はありえない。
つぎに、図14の加算点12−1〜12−3から前向きのループ側で、Lレベル、Hレベルにショートした場合について述べる。
位置制御演算部3、速度制御演算部5の出力がLレベルにショートした場合、速度指令Nref、電流指令Irefがゼロとなる。位置制御演算部3の出力がショートした場合では、ACサーボモートルの速度は減速し停止する。また、速度制御演算部5の出力がショートした場合では、ACサーボモートルはフリーランとなり、破損する事はない。
次に、Hレベルにショートした場合、速度指令Nref、電流指令IrefがHレベルとなる。位置制御演算部3の出力がショートした場合には最高速度で運転し、速度制御演算部5の出力がショートした場合では最大電流が流れACサーボモートルは加速するが外部保護装置18が働き保護できる。
次に、電流制御部7の出力がLレベル、Hレベルにショートした場合を考える。電流制御部7の出力がLレベルにショートであればフリーランとなるが、Hレベルにショートした場合では電圧指令が最大となり、電流は最大電流を越え、過電流となりトリップする。この時、スイッチング素子の内部の温度は上昇しており、内部温度が下がっていない状態で繰り返すと、熱疲労でスイッチング素子が破損する。
また、PWM制御演算部8の出力においてピン間短絡した場合には、通常PWM信号は上アームスイッチング素子と、下アームスイッチング素子が交互にオン、オフを繰り返しており、短絡するとインバータ回路の平滑コンデンサ間を短絡するアーム短絡となり、この場合も繰り返すと熱疲労でスイッチング素子が破損する。
以上より位置制御ループ、速度制御ループがプリント基板上で集積回路のリード端子が、粉塵、綿ボコリが付着し、結露した結果、ショートしてもACサーボモートルは最大電流以下に制御されており、パワーモジュールは破損する事はない。プリント基板が乾燥すれば再び正常に動作する事もある。しかし、電流制御ループで、集積回路のリードが、粉塵、綿ボコリが付着し、結露した結果、瞬時に最大電流を越えるので、これを繰り返せばパワーモジュールは熱疲労により破損する。このため、電流制御ループだけがパワーモジュール破損に対して最も敏感であり、環境の悪い場所に設置されて結露した場合には破損の危険性が十分にあり得る。
なお、特開平6−169578号公報によれば、パワーモジュールの上にプリント基板が搭載されており、またエポキシ等で固められていないため、IC等のリード端子間に粉塵、綿ボコリが付着して結露する可能性がある。このため、リードピッチの狭い部分はショートする事に対して保護が十分でなかった。また、特開平9−229972号公報によればマイクロプロセッサCPUで位置制御、速度制御、電流制御を処理しており、電流フィードバックデータが他のループのデータバスの中を走るため、粉塵、綿ボコリがマイクロプロセッサCPU、A/Dコンバータあるいはプリント基板上に付着して結露した場合には、リード端子のピッチ、あるいはプリント基板上の導体パターン間の間隔が狭い部品であるためショートしてしまう。このことに対して何ら考慮されていなかった。
一般産業機械の場合、製作現場や加工現場の近くに、ACサーボモートル制御装置が収納された制御盤が設置される。制御盤の中に粉塵、綿ボコリが中に入らないように防塵構造にしても、定期点検や定期検査で制御盤のドアを開けることになり、長期間の運転に入れば制御盤内のACサーボモートル制御装置のロジック基板や、主回路基板には粉塵、綿ボコリが付着してくる。また湿度の高くなる梅雨時期ではプリント基板は結露することがあるので、このような場合でもACサーボモートル制御装置が破損する等の復帰できない故障をなくし、高信頼性製品を作り上げる事にある。
この場合、破損しない事が目的であり、破損しなければ、仮に機械の動作に異常が発生しても、外部保護回路で安全性は確保される。結露が乾燥すれば、また正常に動作するので、外部保護動作が働いた場合には、粉塵、綿ボコリの付着をとって、清掃してもらえばまた元のように正常に動作する事ができる。
これらの課題を解決する手段として
(1) 電流検出器から加算点までのフィードバックの後向きのループの導電部分を、外部の雰囲気に触れることなく密封する。その一つの方法として、エポキシ樹脂などの樹脂でモールドして作られるパワーモジールの中に実装し、粉塵、綿ボコリの付着する外部に露出しないように密封する。このため、電流検出器をパワーモジュールの内部で検出するようにする。
(2) 電流制御の加算点から、スイッチング素子のゲート端子まで、前向きのループの導電部分を、外部の雰囲気に触れることなく密封する。その一つの方法として、エポキシ樹脂などの樹脂でモールドして作られるパワーモジールの中に電流制御の加算点から、スイッチング素子のゲート端子まで、前向きのループの導電部分を実装し、粉塵、綿ボコリの付着する外部に露出しないように密封する。このように密封することにより、ゲート端子GU、EU、GV、EV、GW、EWとGX、GY、GZ、GB、Eの端子は、パワーモジュール内部の信号として扱えるので、これらの端子をパワーモジュールから出てくる端子として設けなくてもよくなる。したがって従来狭いピッチで立っていたゲート端子及びこれに対応するプリント基板に狭いピッチでリード端子を設ける必要が無くなり、粉塵、綿
ボコリによりショートする問題がなくなる。
(3) 従来の、位置制御、速度制御、電流制御、インターフェイス処理を1個のマイクロプロセッサに集中する集中制御では、電流ループの分離は不可能である。そこで本発明では、電流ループと、それ以外の位置制御、速度制御、インターフェイス処理を2個所に分けて分散処理を行う。このため電流フィードバックを含む電流制御ループを、別の副マイクロプロセッサで構成して、共にエポキシ樹脂などの樹脂でモールドして作られるパワーモジールの中に実装する。
(4) 主、副マイクロプロセッサのシステムクロック信号は共通化せず、分散化のためそれぞれ個別に所有する。
(5) また、本発明の実施形態として好適なものとして、パワーモジュールの制御信号用入出力端子を少なくするために、主マイクロプロセッサとパワーモジュール内の副マイクロプロセッサ間で、シリアル通信による信号の授受を行い、入出力端子が最小となるようにする。そして、その入出力はリード端子間がショートしても、パワーモジュールが破損しない信号の所、すなわち、電流指令(Iref)で分離するようにしたものがあげられる。なお、電流指令には電流指令リミッタを設け、過大電圧が入力しても最大電流値以下になるようにする。
(6) 更に、本発明の実施形態として好適なものとして、磁極位置データは、エンコーダから出力された信号を主マイクロプロセッサで受信し、シリアル通信でパワーモジュールに転送するものがあげられる。電流制御ループの副マイクロプロセッサの制御演算周期は、位置、速度、インターフェイス処理の周期より早く演算するので、磁極位置データは、副マイクロプロセッサで、主マイクロプロセッサの周期より速い演算周期の補間を行い、電流制御を行うようにする。
以上述べたように本発明によれば、電流フィードバックループの前向きループ、後ろ向きループの、信号導電部分が外気に触れる事がないので、隣のリード端子とショートすることがない。また電流指令に電流リミッタが設けられているので、指令入力端子に過大入力やショートが生じても電流指令は最大値以下に制限され、インバータ回路のスイッチング素子が破損することがない。このため、製品信頼性は大きく向上する。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の全体構成図。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置のパワーモジュール内部構成図。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の制御ブロック図。
本発明による電流検出タイムチャート。
本発明によるA/Dコンバータ電流検出タイムチャート。
本発明による主、副マイクロプロセッサ間のシリアル通信タイムチャート。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の分解構造図。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置のパワーモジュールの構造。
本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の制御ブロック図。
本発明による一実施形態を説明するための速度トルク特性図。
本発明による一実施形態である速度センサーレスべクトルインバータの制御ブロック図。
本発明による一実施形態である電源側コンバータ制御装置のパワーモジュール内部構成図。
本発明による一実施形態である電源側コンバータ制御装置の全体構成図。
従来の一実施形態であるACサーボモートルの制御ブロック図。
一般的な外部保護形態の一実施形態。
従来の一実施形態であるACサーボモートル制御装置のパワーモジュール内部回路図。
従来の一実施形態であるACサーボモートル制御装置の分解構造図。
本発明は、電動機駆動装置の制御回路に電流制御ループを有するものに広く適用できるが、以下簡単のために、まずACサーボモートル制御装置の一実施形態を例にとって詳しく説明する。
ACサーボモートル制御装置の全体構成図を図1に、パワーモジュール122の内部構成図を図2に示す。1はACサーボモートル、2はACサーボモートルに内蔵されたエンコーダで、エンコーダ2は磁極位置センサー2−1と回転位置センサー2−2を持っている。
31-2は主マイクロプロセッサ(CPU)で、ACサーボモートル1の位置制御、速度制御や外部インターフェイスとのやり取りを行う。外部インターフェイス回路68にはアナログ入出力インターフェイス(AIO)69および、デジタル入出力インターフェイス(DIO)70と、シリアル通信インターフェイス(SIO)67、エンコーダ2から、磁極位置センサー2−1と回転位置センサー2−2の信号を入力するエンコーダインターフェイス回路66が有る。また主マイクロプロセッサ31−2の周辺にはROM( Read Only Memory)34、 RAM(Random Access Memory)36、不揮発性メモリ(EEPROM)58等がある。スイッチング電源回路65は外部から制御電源を入力し、主マイクロプロセッサ31−2等のロジック電源やアナログ回路の制御電源、エンコーダに供給するエンコーダ電源と、パワーモジュール122のロジック回路に供給するパワーモジュールロジック電源15Vを供給する。なお、デジタル入出力インターフェイス70、シリアル通信インターフェイス67はノイズ対策のため、主マイクロプロセッサ31−2のロジック回路と絶縁されている。また、パワーモジュールロジック電源15V、0Vはインバータ回路からのN電位と同一のコモンとなっており、他の電源とは電気的に絶縁されている。主マイクロプロセッサ31−2とパワーモジュール122との信号の授受はシリアル通信で行い、シリアル通信同期クロックSCK、第一のシリアルデータRXDを主マイクロプロセッサ31−2からインバータゲート59を通して、パワーモジュール122へ送信し、パワーモジュール122から主マイクロプロセッサ31−2には、第2のシリアルデータTXDがシリアル通信同期クロックSCKに同期して、インバータゲート59を通って受信される。これらのシリアルデータはパワーモジュール内で、フォトカプラ63で電気的に絶縁されて信号が伝送される。
パワーモジュール122のP、N1、N、BR端子に接続されている平滑コンデンサ25、限流抵抗48、放電抵抗49はパワーモジュール外部で主回路の一部を構成している。
パワーモジュール122の詳細構成を図2で説明する。
三相交流電源はR、S、T端子に接続され、ダイオード整流器43で交流から直流に変換される。
端子N1−Nには限流抵抗48が接続され、またP−N端子間には平滑コンデンサ25が接続され、交流電源投入時の平滑コンデンサ25に流れる突入電流を限流抵抗48で制限する。平滑コンデンサ25に充電された後、限流抵抗48を短絡するためにサイリスタ50を点弧し、導通状態にする。平滑コンデンサ25で平滑された直流電圧は、スイッチング素子Su,Sv,Sw,Sx,Sy,SzとダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy,Dzの逆並列回路を6個用いてインバータ回路45を構成し、出力端子U、V、Wに接続されるACサーボモートル1を駆動する。
また、ACサーボモートルから回生されたエネルギーは、一旦、P−N間に接続された平滑コンデンサ25に蓄えられ、直流電圧がある一定の電圧まで上昇した時に、回生制動回路44のスイッチング素子がオンされて、P−BR端子間に接続された放電抵抗49により消費される。
回生制動回路44はP−N間電圧を抵抗R1、R2で分圧して検出し、V/Fコンバータ54で電圧/周波数変換し、副マイクロプロセッサ31−1に入力し、その周波数の周期を測定して周波数を求め、 V/Fコンバータ54の電圧/周波数関係と抵抗R1、R2の分圧比の関係より直流電圧を知る。副マイクロプロセッサ31−1は、直流電圧がある一定の電圧まで上昇した時、回生制動用ドライブ回路60にオン信号を送り回生制動回路44のスイッチング素子を導通させる。回生エネルギーが放電抵抗49で消費し、P−N間電圧が下がれば、副マイクロプロセッサ31−1は回生制動用ドライブ回路60にオフ信号を出力する。
ACサーボモートル1の電流は、インバータ回路45のN側の電流検出用シャント抵抗SH1、SH3のそれぞれの両端電圧で検出する。この電圧は増幅器52−1、52−2で増幅されて、2個のサンプルホールド付きA/D(アナログ/デジタル)コンバータ32−1、32−2で、同時タイミングでデジタル信号に変換される。このデジタルデータは、交互に、D形フリップフロップ57を通して副マイクロプロセッサ31−1にシリアル転送し入力する。これらのA/D変換タイミング、データセレクト、シリアル同期クロック信号の出力は、副マイクロプロセッサ31−1が行う。
副マイクロプロセサ31−1は主マイクロプロセッサ31−2から送られた電流指令データIrefと2個のA/Dコンバータ32−1、32−2で検出した値から演算して、電流フィードバックIfとの差(Iref−If)を演算し、電流制御演算、PWM制御演算を行い、ドライバーIC28へ6個分のPWM信号を出力する。ドライバーIC28では、インバータ回路の6個のスイッチング素子のゲート信号のレベル変換を行い、インバータ回路45のスイッチング素子を駆動する。
インバータ主回路部の保護回路53は、インバータ直流電圧P−N間の過電圧検出OV、P−N間の不足電圧検出UV、インバータの電流検出用シャント抵抗SH1、SH2、SH3による上下アーム間の過電流OC、スイッチング素子付近の温度上昇検出によるスイッチング素子過熱OHを検出して副マイクロプロセッサ31−1へ出力する。副マイクロプロセッサ31−1はこれらの検出に対し、ドライバーIC28に対しPWM信号を緊急遮断してフリーランさせ、その後、主マイクロプロセッサ31−2へアラーム内容を報告する。不揮発性メモリ58は、ACサーボモートル1の巻線抵抗、インダクタンス、誘起電圧定数、出力、定格および最大回転数、最大トルク、極数およびエンコーダ分解能や電流制御の比例、積分定数等を、電源をオフした時においても記憶しておくために用いられ、つぎの電源オン時、これらのデータを読み込んで通常制御に使用する。
主マイクロプロセッサ31−2との通信は、シリアル通信同期クロックSCKと第一のシリアルデータRXDを、フォトカプラ63で電気絶縁して受信する。またアラームデータ、ステータスモニタ等の第2のシリアルデータTXDを、シリアル通信同期クロックSCKに同期してインバータゲート59、フォトカプラ63を通して送信する。
クロック同期信号異常検出回路47は、シリアル通信同期クロックSCKが“L”レベルに固定した場合、その時間を測定して異常を検出し、インバータ回路の出力を遮断する。また、制御電源異常検出回路72は、パワーモジュール内制御電源15V、5V、0Vに異常が生じた場合、副マイクロプロセッサ31−1がリセットされインバータ回路45、回生制動回路44の7個のスイッチング素子を遮断状態にする。
図3は本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の制御ブロック図を示す。
従来の一実施形態である図14の制御ブロック図に対して異なるところは、パワーモジュール122に含まれる電流制御系と、119の枠内に含まれる速度、位置制御系の2つに分散処理している事である。主マイクロプロセッサ31−2では119の枠内の位置制御3、速度制御5の演算、位置カウンタ4、速度演算回路6、磁極位置演算回路9の処理を行い、電流指令Iref、磁極位置信号データを等をシリアル通信でパワーモジュール122ヘ転送する。
パワーモジュール122の中の副マイクロプロセッサ31−1では、電流制御7、PWM制御8、電流検出回路10、電流指令リミッタ71で、ACサーボモートル1の電流制御ループの制御を分担する。そして、インバータ主回路13のスイッチング素子を駆動する。また、アラーム・ステータスモニタ回路46などのモニタデータを主マイクロプロセッサ31−2に送信する。
つぎに図4に、本発明による電流検出タイムチャートを説明する。
図4のa)は、図2におけるインバータ回路45の出力のU相モートル電流を示したものである(電流の正方向は図1のIuの矢印を参照)。モートル電流検出用シャント抵抗SH1は下アームスイッチング素子とN端子の間に挿入されている。U相モートル電流の正の半サイクルの下アームのスイッチング素子がオンするタイミングでは、下アームのスイッチング素子には電流は流れず、これと並列に接続されたダイオードに電流が流れ、この時電流検出用シャント抵抗SH1にはN側から上向きに電流が流れる。また、U相モートル電流の負の半サイクルの下アームのスイッチング素子がオンしたタイミングでは、下アームのスイッチング素子に電流が流れ、この時電流検出用シャント抵抗SH1にはN側へ下向きに電流が流れる。この電流検出用シャント抵抗SH1の両端電圧を図4のb)に示す。この両端電圧は、増幅器52−1で増幅されてA/Dコンバータ32−1に入力される。A/Dコンバータはサンプルホールド回路が内蔵されており、図4のc)はそのA/Dコンバータ32−1の内部のサンプルホールド回路出力波形を示したものである。なお、上記はU相について述べたが、W相についても同様である。図4から分かるように、モートル電流は下アームの電流検出用シャント抵抗でサンプルホールドする事で検出する事ができる。
つぎに図5に本発明によるA/Dコンバータ電流検出タイムチャートについて、図2のパワーモジュール内部構成図より説明する。
図5のa)は副マイクロプロセッサ31−1からA/Dコンバータ32−1、32−2に、A/D変換開始信号CONVを出力した波形を示したものである。CONV信号は、PWM信号を作るキャリア周波数に同期して出力され、立ち上がり信号でA/Dコンバータ32−1、32−2は増幅器52−1、52−2の信号を同時にサンプルホールドする。そして、サンプルホールド完了と共にA/D変換を開始する。A/D変換中の場合には図5のb)に示すように、A/Dコンバータ32−1、32−2よりBUSY信号が出力され、両者の信号をORゲート56で論理和を取り、副マイクロプロセッサ31−1に変換中である事を送信する。変換が完了するとBUSY信号はLレベルとなり、副マイクロプロセッサ31−1は各A/Dコンバータよりデータを受け取るために、セレクト信号SEL1(A/Dコンバータ32−1を選択信号)、SEL2(A/Dコンバータ32−2を選択信号)を交互に図5のc)、d)に示すように与える。つぎに、副マイクロプロセッサ31−1は同期クロック信号SCLKを出力し、前述のセレクト信号とANDゲート55で論理積を取り、各A/Dコンバータに送る。A/Dコンバータ32−1、32−2は同期クロック信号SCLKに同期して、図5のf)、g)に示すように、デジタルに変換された電流データを、シリアル信号でD形フリップフロップ57に送り、タイミングを合わせて副マイクロプロセッサ31−1のSDATA端子に出力する。デジタルに変換された電流データは、セレクト信号SEL1、SEL2で選択され、U相電流データ、W相電流データの順に図5のh)のように入力されデータ転送が完了する。
図6は本発明による主、副マイクロプロセッサ間のシリアル通信タイムチャートを、図1より説明する。主マイクロプロセッサ31−2での速度制御演算周期をtasr、副マイクロプロセッサ31−1の電流制御演算周期をtacrとすると、電流制御演算tacrの方が早い処理をしている。これについては、前に述べた。また、主マイクロプロセッサ31−2と副マイクロプロセッサ31−1のシステムクロックは分散処理を行うため、別々の水晶発振器で動作させており、それぞれの処理は非同期方式である。主マイクロプロセッサ31−2から副マイクロプロセッサ31−1へシリアル通信同期クロックSCKは図6のa)のように出力される。データ伝送していない時は、Hレベルで待機状態であり、発振状態の時にシリアル通信同期クロックSCKに同期して、図6のb)の第一のシリアルデータRXDが送られる。
一方、副マイクロプロセッサ31−1では、前述した電流検出用A/Dコンバータ32−1、32−2に、図6のc)のようにA/D変換開始信号CONVをキャリア周波数に同期して出力している。主マイクロプロセッサ31−2から送られた電流指令Irefや、ACサーボモートルの磁極位置データは、データ転送するために転送時間がかかり、図6では遅れ時間tdで示している。したがって、副マイクロプロセッサ31−1で反映されるデータ更新は、遅れ時間td後となる。電流指令データIrefでは図6のd)に示すようにtd時間遅れ、副マイクロプロセッサ31−1の電流制御演算周期tacrは、データ更新されるまで同じデータが使用される。
つぎに、磁極位置検出データは主マイクロプロッセッサ31−2よりtasr間隔で更新されているので、副マイクロプロセッサ31−1の電流制御演算周期tacrに計算し直す必要がある。図6のe)では、磁極位置データは、主マイクロプロッセッサ31−2よりデータ更新されるまで、同じデータで使用されるのでなく、図中、(1)の直線で補間して求める。具体的には時間t1-0においてデータ更新された時、前回のt0-0と今回のt1-0のデータを結んだ直線を延長し、各時間t1-1,t1-2,t1-3の黒丸で図示されているようにデータを補間して制御する。同様に時間t2-0においてデータ更新された時、前回のt1-0と今回のt2-0のデータを結んだ直線を延長し、各時間t2-1・・・・・で図示されているように補間して制御する。
このように、磁極位置データは、モートルは常に回転しているので、加速、減速している時にも、前回と同じ傾斜で加減速しているとして、きめ細かに制御すれば、より滑らかに運転することができる。
また、エンコーダの磁極位置信号、回転位置信号のフィードバックはパワーモジュールで側ではなく、速度、位置制御側にフィードバックしており、パワーモジュールとシリアル通信で最小限のI/O端子数で構成しているので、粉塵、綿ボコリの付着や、腐食に対しても、信頼性が大きく向上している。
なお、tsは磁極位置データを副マイクロプロセッサ31−1の演算周期に変換するための演算時間遅れを表した値である。
図7に本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置の分解構造図を示す。
122はパワーモジュールで電流制御フィードバックループの後向きのループ、前向きのループ、電流指令リミッタ等、副マイクロプロセッサ31−1やドライバーIC28、電流検出用A/Dコンバータ32−1、32−2が内蔵されている。その内部構成は図2に示すとおりである。このパワーモジュールは冷却フィン21に取り付けられており、発生した熱を冷却フィンにより、自然空冷で外部へ放熱できる様になっている。プリント基板119は主マイクロプロセッサ31−2、ROM34、RAM36、シリアル通信インターフェイス67不揮発性メモリ58、アナログ入出力インターフェイス69等のIC、LSIや平滑コンデンサ25、スイッチングトランス27、交流電源およびモートル出力接続用主回路コネクタ26、入出力用コネクタ37、エンコーダコネクタ38等実装されている。これらの部品は図2に示すパワーモジュール122を除いた部分で、位置、速度制御演算を行っている。124はパワーモジュール122とロジックプリント基板119を覆っているカバーである。カバーは通風孔139があけられており、装置内で暖められた空気を自然空冷で外部に排出できる様になっている。また正面にロジックプリント基板119に取り付けられた主回路コネクタ26と入出力コネクタ37、エンコーダコネクタ38を外部に出すための貫通孔140、141、142があけられている。このように、パワーモジュール122にはリードピッチの狭いIC、LSI、ゲートアレイ等を含む電流制御ループが内蔵され、外部の雰囲気に触れることのないように、密封されている。
図8に、本発明による一実施形態であるACサーボモートル制御装置のパワーモジュールの構造を示す。パワーモジュール122は放熱を兼ねた金属ベース75を用い、その上に図示していない絶縁層を形成してから、その上にスイッチング素子とダイオードからなるインバータ主回路45および電流検出用シャント抵抗SH1〜SH3、回生制動回路44、ダイオード整流器43、サイリスタ50、分圧抵抗R1、R2などを実装し、さらにパワーモジュールロジックプリント基板73を中に実装している。図8には、部品の配置を破線で示している。さらに、これらをモールド樹脂または相当品で絶縁封止を行ったものである。このパワーモジュールロジックプリント基板73には、図2のパワーモジュール64の枠内に示す部品が実装されている。また、モールド樹脂上に出ている端子には、図2の122の枠にある端子に付されている符号と同じ符号が付してある。そして、このモジュール122は取付穴74により、インバータ装置の冷却フィン21に取り付けられて使用される。
図9は本発明による別の一実施形態であるACサーボモートル制御装置の制御ブロック図を示したものである。パワーモジュール122の電流制御ループは図3と同一であるが、ロジックプリント基板119が位置制御、速度制御でなく、トルク制御構成となっている。
巻取機の張力を制御する場合、ACサーボモートルのトルク制御が必要になる。図9はACサーボモートルのトルク指令Trefを、主マイクロプロセッサ31−2から副マイクロプロセッサ31−1にシリアル通信で転送し、パワーモジュール122で電流制御を行なっている。
1はACサーボモートル、2はエンコーダでACサーボモートルのロータの磁極位置を検出する磁極位置センサー2-1と、ACサーボモートルの回転位置を検出する回転位置センサー2-2を、複合的に合わせ持ち、ACサーボモートルに内蔵されている。7は電流制御、8はPWM(Pulse Width Modulation)制御演算部で、それぞれ前向きのループを構成している。11はACサーボモートル1の電流を検出する電流検出器でインバータ主回路の下アームから電流を検出している。この信号は10の電流検出回路に送られ、12−3の加算点で負帰還フィードバックされ、後ろ向きループの電流フィードバックを構成している。この詳細は図4〜6と同様であり、説明を省略する。6は速度演算回路でACサーボモートル1の速度を監視している。9はACサーボモートル1のロータの磁極位置センサー2-1と回転位置センサー2-2を入力して磁極位置を演算する磁極位置演算回路である。79は暴走防止回路で、比較回路80、リミッタ回路81で構成される。リミッタ回路81の特性は図10で示すトルク−速度特性で、トルク制御範囲である回転数N1からN2区間であれば出力Tbはゼロであり、トルク指令Trefとの加算点12−4には何ら影響を与えない。
トルク指令Trefに対し、負荷トルクが小さく、例えば巻取機の張力制御中、材料切れして巻取機が暴走状態のときに、回転数N1からN2の範囲外となった時、比較回路80が動作し、比例制御の速度制御に切り替わり、速度リミッタとして動作し、暴走防止を行なう。
次に、図11は本発明による別の一実施形態である速度センサーレスべクトルインバータの制御ブロック図である。84は誘導電動機であり速度センサーは不付きである。パワーモジュール122には電流制御ループが2ループあり、トルクに寄与する電流のトルク電流制御と、これに直交する磁束電流制御で7−1、7−2で演算される。8−1はトルク電流制御と磁束電流制御の出力をベクトル合成してPWM制御を行なうベクトル合成PWM制御回路で、13のドライバ、制御電源回路とインバータ主回路に送られる。電流検出は図9と同様であるが、電流フィードバックはトルク電流成分Itfと磁束電流成分Imfの直交成分の直流量に変換される。それぞれの直流フィードバック電流は、加算点12−3、12−5で電流指令リミッタ71からの出力の2つの電流指令、即ちトルク電流指令Itと磁束電流指令Imと比較されて負帰還制御を構成される。これらの制御は副マイクロプロセッサ31−1で行なわれ、ロジックプリント基板119からの主マイクロプロセッサ31−2の指令で動作する。磁束制御回路83の入力の一次角周波数ω1はパワーモジュール122のトルク電流制御7−1の出力より検出し、シリアル通信で転送される。ω1は磁束制御回路83で磁束電流指令Imを演算して、再びパワーモジュール122へシリアル通信で転送する。一方すべり角周波数演算回路82ではパワーモジュール122で、電流検出回路10−1より出力されたトルク電流フィードバックItfをシリアル通信で転送し、トルク電流フィードバックItfに比例したすべり角周波数ωsを出力し、一次角周波数ω1との差をとり、速度フィードバックωr=ω1−ωsを演算する。加算点12−6で速度指令ωrefと速度フィードバックωrの差演算を行ない、5−1で速度制御演算が行なわれる。この出力はトルク電流指令Itとして、シリアル通信でパワーモジュール122に転送され、速度センサーレスベクトル制御が構成される。
図12は本発明の別の一実施形態である電源側コンバータ制御装置のパワーモジュール内部構成図を示したものである。電源投入時、電源からの電流は交流電源R,S,Tより限流抵抗RS、高調波吸収リアクトルACL0、電源協調リアクトルACL1を通って、電源側コンバータ主回路151のダイオードより整流され平滑コンデンサ25を充電する。平滑コンデンサ25に充電完了後、電磁接触器Mgがオンして、以後電磁接触器Mgを通してパワーを供給する。
次に電源側コンバータ主回路151のスイッチング素子Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Szが、ゲート端子GU、GV、GW、GX、GY、GZからオン・オフ信号を受けてPWMスイッチングを開始し、P−N間出力電圧が一定電圧になるよう昇圧制御を行ない、電力を電源側R、S、Tから負荷側P、Nに供給する。また、逆に負荷側P、Nから電源側コンバータ主回路151を通してR、S、T側へ電力が回生された場合でも、P−N間電圧が一定電圧になるよう、回生された電力を電源に戻す、すなわち回生動作を行うものである。
このとき、従来は電源側の端子R-1、S-1、T-1の交流側電流を変流器CTで検出し、電流フィードバックを行なっていたが、本実施例では図2と同様、電源側コンバータ主回路151のN側の電流検出用シャント抵抗SH1、SH3のそれぞれの両端電圧で検出する。電流検出については図4のタイムチャート、図5のA/Dコンバータ電流検出タイムチャートと同様であり、パワーモジュール150に電流フィードバック回路が内蔵されている。なお、ACサーボモートルではエンコーダより磁極位置検出を主マイクロプロセッサ31−2で行なっていたが、それに替わるものとして電源電圧位相を主マイクロプロセッサ31−2で行い、副マイクロプロセッサ31−1で補間して求めることは同様である。
図13は本発明による一実施形態である電源側コンバータ制御装置の全体構成図を示したものである。負荷としてはACサーボモートル制御装置155、ACサーボモートル1が接続され、P−N間直流電圧が一定電圧に制御されている。図13で、既に説明したACサーボモートルの場合は、エンコーダフィードバックにより、速度、位置をフィードバックしていたが、電源側コンバータ制御装置では、電源側コンバータ主回路151の出力である平滑コンデンサ25の両端電圧をフィードバックしている。
以上の実施例ではパワーモジュールの入出力を三相交流とするACサーボモートル制御装置で説明したが、単相交流あるいは、単相、三相混在であっても、三相を越える多相交流であっても同様の制御装置で有れば、本発明を同様に適用できる。またACサーボモートル制御装置でなくても電流制御と他の速度制御などが混在している制御系を有するインバータ装置に同様に適用できる(ACサーボモートル制御装置も一種のインバータ装置である)。またダイオード整流器43が不要の直流受電であっても本発明を同様に適用できる。また、インバータ回路45をチョッパ回路に置き換えた直流出力で直流電動機を駆動するであっても本発明を同様に適用できる。
また、図1〜図13の本発明の実施例は、実施例を示すものであって、これに限定されることはなく発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能なことは言うまでもない。
また本発明は、粉塵、綿ボコリが多く、湿度の高い環境でその大きな効果を発揮するが、このような厳しい環境でなくても長期間の使用によって導体間の絶縁は劣化してくるものを本発明によって防止することができ、したがって一般の環境に広く本発明を適用することが出きる。
以上は粉塵、綿ボコリなどの影響で電流制御系が誤動作を起こしたとき、重大な事故などにつながるので、この部分の信頼性を向上することが重要であることを説明してきたが、以上の実施例によれば次の効果も奏する。即ち位置又は速度のフィードバック制御ループは、ユーザなどの要求を入れた制御方法に変更したり制御の制御方法(例えばベクトル制御におけるオートチューニングの方法など)などに変更が生じると、図1に示した記憶手段であるROM34やEEPROM58の記憶内容やその他の制御回路構成を変える必要が生じる。これに対し電流制御制御系や主回路はこのような変更が発生することがほとんどない。したがって電流制御系のみで一体化、あるいは電流制御系と主回路を一体化してひとまとまりにしてモジュール化しておけば、電流制御系の上位で変更が生じても、電流制御系は共通に使用でき、従って量産化に適するようになるという効果がある。
また、以上の実施例によれば、低速タスクであるが全体を管理、使い勝手などの機能を重視するソフトウェアを受け持つ上位専用CPUと、電流制御の高速応答を実現する高速タスクのソフトウェアを受け持つ電流制御専用CPUとを設けて、しかも上位専用CPU部分とは別にして電流制御専用CPUが受け持つ電流制御ループ内の処理をモジュール化し、上記上位専用CPUと電流制御専用CPUとの間をシリアルデータ伝送している。このシリアルデータ伝送部分は、従来の三相交流モータ用の各相データ(3相データ)から、ベクトル制御の内部信号として得られるDCデータ(一般には励磁分(d軸)とトルク分(q軸)であるd−q軸2相、但し永久磁石形同期モータの場合は励磁分を制御しないのでId=0でありq軸1相分のみにできる)としてデータ数を少なくし、しかも電動機の磁極位置検出側で検出して上記DCデータと共にシリアル伝送することができる。従って上記実施例によれば電流制御系が纏められたモジュールと上位専用CPUとのデータ伝送のインターフェースが非常に単純化され、データ伝送の信号本数が少なくなる効果があり、また、これら上位専用CPUがある上位部分と、電流制御専用CPUがあるモジュール部分との電気絶縁が容易に行えるという効果もある。これは、例えば制御装置122の一部分を一体化してモジュール化する場合に、他の部分(例えば位置制御系と速度制御系の間)でインターフェースを形成するのに比べ、より有利になる。
1…ACサーボモートル、2…エンコーダ、2−1…磁極位置センサー、2−2…回転位置センサー、3…位置制御演算部、4…位置カウンタ回路、5…速度制御演算部、5−1…速度制御演算部、6…速度演算回路、7…電流制御演算部、7−1…トルク電流制御演算部、7−2…磁束電流制御演算部、8…PWM制御演算部、8−1…ベクトル合成PWM制御演算部、9…磁極位置演算回路、10…電流検出回路、10−1…電流検出回路、11…電流検出器、12−1,12−2,12−3,12−4,12−5,12−6,12−7…加算部、13…ドライバ、制御電源回路及びインバータ主回路、14…加速度センサー、15…オーバー速度センサー、16…右、左側エッジセンサー、17…保護処理回路、18…外部保護装置、19…ロジックプリント基板、20…ACサーボモートル制御装置、21…冷却フィン、22…パワーモジュール、23…主回路プリント基板、24、124…カバー、25…平滑コンデンサ、26…主回路コネクタ、27…スイッチングトランス、28…ドライバIC、29…スイッチング電源IC、30…主回路インターフェイスIC、31…マイクロプロセッサ、31−1…副マイクロプロセッサ、31−2…主マイクロプロセッサ、32…A/Dコンバータ、32−1…U相A/Dコンバータ、32−2…W相A/Dコンバータ、33…ゲートアレイ、34…ROM、35…インターフェイスIC、36…RAM、37…入出力コネクタ、38…エンコーダコネクタ、39…通風孔、40…主回路コネクタ貫通孔、41…入出力コネクタ貫通孔、42…エンコーダコネクタ貫通孔、43…ダイオード整流器、44…回生制動回路、45…インバータ回路、46…アラーム・ステータスモニタ回路、47…クロック同期信号異常検出回路、48…限流抵抗、49…放電抵抗、50…サイリスタ、51…温度検出器、52−1…増幅器1、52−2…増幅器2、53…保護回路、54…V/Fコンバータ、55…ANDゲート、56…ORゲート、57…D形フリップフロップ、58…不揮発性メモリ、59…インバータゲート、60…回生制動用ドライブ回路、61…サイリスタドライブ回路、62…ロジック電源回路、63…フォトカプラ、64…パワーモジュール内部制御回路、65…スイッチング電源回路、66…エンコーダインターフェイス回路、67…シリアル通信インターフェイス回路、68…外部インターフェイス回路、69…アナログ入出力インターフェイス回路、70…デジタル入出力インターフェイス回路、71…電流指令リミッタ、72…制御電源異常検出回路、73…パワーモジュールロジックプリント基板、74…取付穴、75…金属ベース、79…暴走防止回路、80…比較回路、81…リミッタ回路、82…すべり角周波数演算回路、83…磁束制御回路、84…誘導電動機、119…ロジックプリント基板、120…ACサーボモートル制御装置、122…パワーモジュール、139…通風孔、140…主回路コネクタ貫通孔、141…入出力コネクタ貫通孔、142…エンコーダコネクタ貫通孔、150…パワーモジュール、151…電源側コンバータ主回路、152…パワーモジュール内部制御回路、153…電源側コンバータ制御回路、155…ACサーボモートル制御装置、R1〜R3…抵抗、SH1〜SH3…電流検出用シャント抵抗、Mg…電磁接触器、Rs…限流抵抗、ACL0…高調波吸収リアクトル、ACL1…電源協調リアクトル、C0…高調波吸収コンデンサ、Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz…ダイオード、Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz…スイッチング素子。