JP4508640B2 - 低IgE結合性であり、T細胞抗原性の低下のない組換えアレルゲン - Google Patents

低IgE結合性であり、T細胞抗原性の低下のない組換えアレルゲン Download PDF

Info

Publication number
JP4508640B2
JP4508640B2 JP2003528855A JP2003528855A JP4508640B2 JP 4508640 B2 JP4508640 B2 JP 4508640B2 JP 2003528855 A JP2003528855 A JP 2003528855A JP 2003528855 A JP2003528855 A JP 2003528855A JP 4508640 B2 JP4508640 B2 JP 4508640B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
allergen
ige
protein
modified
lol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003528855A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005511512A (ja
JP2005511512A5 (ja
Inventor
ニコール デウィード
モハン, ビール シン,
プレム, エル. バーラ,
イネス スウォボダ,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Melbourne
Original Assignee
University of Melbourne
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Melbourne filed Critical University of Melbourne
Publication of JP2005511512A publication Critical patent/JP2005511512A/ja
Publication of JP2005511512A5 publication Critical patent/JP2005511512A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4508640B2 publication Critical patent/JP4508640B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/16Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from plants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/35Allergens
    • A61K39/36Allergens from pollen
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P27/00Drugs for disorders of the senses
    • A61P27/02Ophthalmic agents
    • A61P27/14Decongestants or antiallergics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/08Antiallergic agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/415Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/57Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the type of response, e.g. Th1, Th2
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/57Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the type of response, e.g. Th1, Th2
    • A61K2039/577Medicinal preparations containing antigens or antibodies characterised by the type of response, e.g. Th1, Th2 tolerising response

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Ophthalmology & Optometry (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Description

発明の分野
本発明は、概略的には、アレルギー性疾患の免疫療法的又は免疫予防的治療で有用な試薬に関する。より具体的には、本発明は、T細胞抗原性を保持しながらも、IgE産生刺激活性が低いことを含め、低いIgE相互作用性を示す、I型アレルギー性疾患状態の免疫調節に有用な改変されたアレルゲンを提供するものである。さらに本発明では、T細胞抗原性を保持しながらも、低下したIgE相互作用性を示す改変されたアレルゲンを投与することにより、I型アレルギー性疾患状態などのアレルギー疾患を免疫調節する方法を考察する。
発明の背景
本明細書で紹介する参考文献の書誌的詳細を、本明細書の末尾に挙げる。
本明細書におけるいかなる先行技術の引用も、当該先行技術がいずれかの国における共通の一般的知見の一部を成すものとの認知又はいかなる形での示唆でなく、またそう捉えられてはならない。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)、結膜炎、アレルギー性喘息及びアレルギー性皮膚炎などのI型アレルギー性疾患は、工業国において主要な健康上の問題である(Wuthrich, Int. Arch. Allergy Immunol. 90: 3-10, 1989)。現在のところ、先進国の人口の15乃至20%が何らかの形のアレルギーに罹患していると推定されている (Miyamoto, Advances in Allergology and Clinical Immunology. Godard P, Bousquet J, Michel FB (eds) pp. 343-347. The Parthenon Publishing Group, Cornforth, UK, 1992)。従って、これらの疾患の診断及び治療法が、科学的調査の焦点になってきつつある。
I型アレルギー反応の主要な免疫学的及び生化学的基礎は、アレルギー性物質(アレルゲン)と、マスト細胞及び好塩基球の表面にある高親和Fc受容体に結合したIgE抗体との相互作用である。この相互作用の結果、アレルゲン特異的IgE抗体の架橋が起こり、ひいてはアレルギーの症状の原因である炎症媒介物質の迅速な放出及びカスケード産生が刺激される。アレルゲンは、例えばハウスダスト、イネ科植物、雑草及び樹木の花粉、カビの胞子及び動物の鱗屑などの空中浮遊粒子中に存在する。
現在、アレルギー性疾患(例えば鼻炎、結膜炎及びアレルギー性喘息)の治療的処置の1つはアレルギー応答の原因であると予測されるアレルゲンの注射を含むものである。これは脱感作治療と呼ばれる。この手法で現在用いられている抽出物は天然源から調製され、アレルゲンに加え、患者にとってアレルギー性のないタンパク質などの成分も含有する。
組換え技術の開発により、診断及び治療を目的とした高レベルの精製アレルゲンを提供する手段が得られた。しかしながら、このような組換えアレルゲン製剤は、このような高レベルの純度の故に、用量が非常に低い場合でも、そのアナフィラキシー誘発指数は高い。従って、これらを患者に投与する場合には極度の注意が必要である。従って、アナフィラキシー・ショックのリスクの低い組換えアレルゲンを開発する必要性が存在する。
季節性花粉症及びアレルギー性喘息の主要な戸外の原因は空中浮遊性のイネ科植物の花粉である (Smart et al., Int. Arch. Allergy Immunol. 7: 243-248, 1983)。花粉カレンダーでは、イネ科植物の花粉は、イネ科植物が開花する春及び初夏に最も多いことが分かるが、これはアレルギー性喘息の発症率がピークを迎えるときである。イネ科植物の花粉の最重要な源は、全世界に広く導入された、しかし温度及び熱帯で様々な通常の農業用牧草のイネ科植物である。低温地帯ではライグラス(ryegrass)、ケンタッキーブルーグラス及びオオアワガエリ(すべてイチゴツナギ亜科((原語:Pooideae))に属する)などのイネ科植物が臨床上重要であり、他方、温帯及び亜熱帯の環境ではギョウギシバ(カゼクサ亜科((原語:Chloridoideae)))が最も重要なアレルゲン源になる。最も包括的な研究はライグラス花粉由来タンパク質についてなされており、それに次いでケンタッキーブルーグラス及びオオアワガエリについても研究がなされている。
ある1つのイネ科植物由来アレルゲンに対して感受性のある個人が、多数の他のイネ科属由来のものに対しても感受性であることが、しばしばある。これは、免疫学的な交差反応性がIgE結合検定である放射性アレルゲン吸着試験(RAST)を用いた阻害実験で実証されたイチゴツナギ亜科内のイネ科植物花粉に関して特に真実である(Smith et al., "Analysis of rye-grass pollen allergens using two dimensional electrophoresis and immunoblotting." In Kraft D (ed), Molecular Biology and Immunology of Allergens, CRC Press, Boca Raton, FL, 1994)。これらの実験では、ある1つのイネ科植物から採った花粉抽出物が他のイネ科植物由来の抽出物へのIgEの結合を阻害することができた。
イネ科植物の花粉のアレルゲン性成分は、それらの生理化学的及び免疫学的特性に従って異なるグループに分類することができる。イチゴツナギ亜科植物由来の花粉に対するアレルギー反応を惹起する主要なアレルゲンは、応答するアレルギー患者数と、このアレルゲンに結合するIgEの相対量という両方の基準から判断して、1群及び5群アレルゲンである (上記のSingh et al., 1991)。多年生ライグラス、ロリウム・ペレン(原語:Lolium perenne)の場合、花粉抽出物は、イネ科植物花粉アレルギー患者の血清由来のIgEへの結合能を有する17種を越えるタンパク質を含有する (上記のSmith et al., 1993)。しかしながら、1群及び5群のアレルゲンは、一緒になったときに、粗花粉抽出物へのIgeの結合の大半を阻害できることが示されている (Bond et al., J. Allergy Clin. Immunol. 91: 339, 1993)。
28乃至33kDaのタンパク質であるLol p 5は、イネ科植物花粉アレルギーの個人の85乃至90%でアレルギーの原因となる2番目に優勢なライグラス・アレルゲンである。この5群アレルゲンをコードするcDNAの分子クローニング(Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 1384-1388,1991; Ong et al., Gene 134: 235-240, 1993)では、Lol p 5 は、変性SDS-PAGEゲルでの分離及びイムノブロットの後ですらそれらのIgE反応性を保持する相同な、しかし区別可能なアイソフォームの一ファミリとして存在することが示された(上記のSingh et al., 1991)。
従って、アレルギー状態の免疫療法及び免疫予防で有用な改良型の組換えアレルゲンを開発する必要がある。
発明の概要
本明細書全体を通じ、文脈からそれとは異なるものと考えられる場合を除いて、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などのバリエーションは、記載された要素又は完全体あるいは要素もしくは完全体の群が含まれることを意味はするが、他の要素又は完全体あるいは要素もしくは完全体の群の除外を意味するものではないと理解されたい。
ヌクレオチド及びアミノ酸配列は配列同定番号 (配列番号)で参照される。配列番号は順に配列識別子 <400>1 (配列番号1)、<400>2 (配列番号2)等に対応する。配列識別子の要約は表1に示される。配列表は請求項の後に示される。
本発明は、天然型のときには感受性の対象においてアレルギー性疾患状態と関連するようなアレルゲンの改変組換えアレルゲンを提供するものである。都合が良いことに、本改変組換えアレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含む。
好ましくは当該アレルギー性疾患状態がI型アレルギー疾患状態であるとよい。
好ましくは本組換えアレルゲンがイネ科植物花粉アレルゲンであるとよい。
最も好ましくは、当該イネ科植物アレルゲンが、限定はしないが例えばLol p 5などのライグラス花粉アレルゲン、又は、例えばPh1 p 5 及びPoa p 5などの免疫学的もしくは植物学的に関連するアレルゲンであるとよい。
特に好適な実施態様では、本発明は、T細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、改変Lol p 5アレルゲンを提供するものであり、このとき前記Lol p 5 バリアントは、配列番号 乃至12(表1を参照されたい)に記載されたアミノ酸配列を有する分子、又は、免疫学的もしくは植物学的に関連するアレルゲンに相当する改変アレルゲン、から選択される。
さらに本発明は、T細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、イネ科植物アレルゲン(例えばライグラス花粉アレルゲン)などの改変アレルゲンを含む組成物にも関連する。本組成物はさらに一種以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤も含む。
さらに本発明は、T細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、改変アレルゲンを有効量、対象に投与することにより、前記対象におけるアレルギー性疾患状態を予防又は治療する方法にも関する。
本明細書全体を通じて用いられた配列識別子の要約を表1に挙げる。
Figure 0004508640
好適な実施態様の詳細な説明
本発明によって、IgEとの相互作用不能な、又は、IgEとの相互作用能の低下した、遺伝子操作された実質的に低アレルギー性のバリアント型のアレルゲンが、免疫療法及び免疫予防での使用に向けて提供される。特定の種類のアミノ酸配列改変を行うと、IgEエピトープの欠失もしくはIgEエピトープ数の減少、IgEエピトープの活性低下、IgEとの相互作用能の低下、及び/又は、IgE産生刺激活性の低下、が起きると判断された。
従って、本発明の一局面は、天然型のときには感受性ある対象においてアレルギー性疾患状態と関連するようなアレルゲンの改変組換えアレルゲンを提供するものであり、前記改変組換えアレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
用語「感受性の」対象は、その最も広い意味で使用され、アレルゲンに応答して、又は、アレルゲンと関係して、アレルギー性疾患、そしてより具体的にはI型アレルギー性疾患の症状を示す個人を包む。「個人」は好ましくはヒトであるが、さらにヒト以外の霊長類、家畜(例えばヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ)、実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)及びペット(例えばイヌ、ネコ)にも及ぶ。
本発明は特にイネ科植物花粉アレルゲンに関する。
従って本発明の別の局面は、天然型のときにはI型アレルギー性疾患状態と関連するようなアレルゲンである、改変組換えイネ科植物花粉アレルゲンに関するものであり、前記改変組換えイネ科植物花粉アレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
特に好適な実施態様では、当該イネ科植物花粉アレルゲンは、ライグラス、又は限定はしないがLol p 5、Ph1 p 5 及びPao p 5などの免疫学的に関連するイネ科植物花粉アレルゲンである。「イネ科植物花粉アレルゲン」の言及には、全てのライグラス又は免疫学的に関連するイネ科植物花粉アレルゲン又は他のイネ科植物アレルゲンが含まれる。
従って、本発明のこの局面では、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含む改変組換えライグラス花粉アレルゲンに関する。
T細胞抗原性の保持には、T細胞エピトープの保持、又は、T細胞と相互作用してT細胞応答を惹起する能力の保持、の言及も含まれる。
本発明を以下でLol p 5との関係から解説する。その理由は、Lol p 5が現時点までのところ、本発明を実施するために特に有用なアレルゲンだからである。しかしこれは、本発明があらゆるアレルゲン、特に、例えば限定はしないが5群イネ科植物花粉アレルゲンなどのI型アレルギー性疾患に関与するアレルゲンに及ぶということを理解しつつなされている。本発明の方法は、Lol p 5に加え、例えばPhl p 5 及びPoa p 5など、あらゆるライグラス又は免疫学的に関連するイネ科植物花粉アレルゲンに特に応用できる。
本発明に至る研究の中で、本発明者らは、E. coli内で組換えLol p 5 を非融合タンパク質として発現させたが、細菌性発現ベクタ内にクローニングする前にそのcDNAからN末端シグナル・ペプチドを除去すると、可溶性の組換え型アレルゲンとなることを見出した。このアプローチにより、細菌細胞から本アレルゲンを単離する際の厳しい変性条件を避けることが可能となった。組換えLol p 5は、その天然型のタンパク質との抗原性の類似性について阻害ELISA実験で検査され、本発明者らは、本組換え型が、単離されたその天然型花粉タンパク質のIgE結合を十分に阻害したことを示した。単一の組換え型アイソフォームが、IgEの天然型アレルゲンへの結合を阻害できるというこの事実は、さらに、様々なアレルゲン・アイソフォームについても同様であることを示唆した。本発明者らは組換えアレルゲンを用いた免疫ブロット阻害実験で、組換えLol p 5と再インキュベートしたアレルギー血清を用いてライグラス可溶性タンパク質の二次元免疫ブロットをプローブした。本発明に従い、ある1つの型と一緒にプレインキュベートしておくと、異なる遺伝子にコードされた異なる型すべてへの結合が完全に阻害されることが見出された。このことから、配列上、微細な異種性がある様々なアレルゲン・アイソフォームも、抗原性の上で大変似ていることが分かった。
本発明の進展において次の段階は、当該アレルゲン性タンパク質のうちで、T細胞エピトープの全体的構造及び機能性を維持しつつ、IgEとの相互作用を失わせた、又は低下させた鍵となる、変更可能なアミノ酸残基を決定することだった。
本発明者は、Lol p 5のアイソフォームA及びB上のどのアミノ酸残基が保存されているかを決定した。様々なイネ科植物由来の多数のアレルゲン間には交差反応性があるため、このような保存されたアミノ酸残基がIgE結合にとって重要であろうと推論された。これらの保存されたアミノ酸残基を選択的に変異させることにより、T細胞抗原性を保持しながらも、IgE相互作用性を全く持たない、又は、IgE相互作用性の低下した変異型が同定された。
従って、本発明の別の局面は、少なくとも2種の免疫学的に交差反応性のある5群イネ科植物花粉アレルゲンで保存されている1つ以上のアミノ酸残基に置換、欠失及び/又は付加を含むと共に、対応する天然型に比較してIgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、改変5群イネ科植物花粉アレルゲンを包含するものである。
本発明の当該局面では、適した基準アミノ酸配列の1つはLol p 5のアイソフォームAのアミノ酸配列である配列番号1 である。図1などにおけるアミノ酸配列の比較は、Lol p 5のアイソフォームA及びB間、そしてPoa p 5のアイソフォーム間で保存されたアミノ酸残基を示すものである。図1において保存された残基はアスタリスクで示されている。こうして、これらの保存された残基の1つ以上を変更する変異が容易に導入される。
本発明の別の局面は、図3に示すLol p 5の変異1乃至9、又は、免疫学的に関連するアレルゲンの対応する変異、の1つ以上に相当する位置にアミノ酸切断又は置換、欠失及び/又は付加を含む改変5群イネ科植物花粉アレルゲンを提供する。
特に好適な実施態様では、本発明は、T細胞抗原性を維持しながらも、IgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、改変Lol p 5 アレルゲン、又は、免疫学的に関連するアレルゲンに相当する改変アレルゲン、を提供するものであり、但し前記Lol p 5 バリアントは、る配列番号8 乃至12に記載したアミノ酸配列を有する分子から選択される。
る配列番号8 乃至12 で同定されるLol p 5バリアントは、ここではそれぞれ変異体D1 乃至D5と言及されている。
さらに本発明は、天然型のときには感受性のある対象においてアレルギー性疾患状態と関連するようなアレルゲンである、改変組換えアレルゲンをコードするヌクレオチド配列を含む、又は、このようなヌクレオチド配列に相補的な配列を含む、核酸分子を提供するものであり、但し前記改変組換えアレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
本発明の別の局面は、天然型のときには感受性ある対象においてI型アレルギー性疾患状態と関連するようなアレルゲンである、改変組換えアレルゲンをコードするヌクレオチド配列を含む、又は、このようなヌクレオチド配列に相補的な配列を含む、核酸分子を提供するものであり、但し前記改変組換えアレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
本発明のさらに別の局面は、天然型のときには感受性ある対象においてI型アレルギー性疾患状態と関連するようなイネ科植物花粉アレルゲンである、改変組換えイネ科植物花粉アレルゲンをコードするヌクレオチド配列を含む、又は、このようなヌクレオチド配列に相補的な配列を含む、核酸分子に関するものであり、但し前記改変組換えイネ科植物花粉アレルゲンは、本アレルゲンがT細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
本発明のさらに別の局面は、改変組換えライグラス花粉アレルゲンをコードするヌクレオチド配列を含む、又は、このようなヌクレオチド配列に相補的な配列を含む、核酸分子に関し、但し前記改変組換えライグラス花粉アレルゲンは、T細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠くか、もしくは少ない数のIgEエピトープを含むように、及び/又は、低下したIgE結合能を示すように、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すように、天然型のアミノ酸配列から改変されたアミノ酸配列を含むものである。
このように、本発明の特に好適な局面は、改変イネ科植物花粉アレルゲン、そしてより具体的には改変5群イネ科植物花粉アレルゲン、又はその抗原性フラグメント、又はその誘導体もしくは相同体、をコードする精製核酸分子あるいはこのような核酸配列の機能的均等物を提供するものであり、但し前記改変イネ科植物花粉アレルゲンは、T細胞抗原性を保持しながらも、IgEエピトープを欠く、もしくは少ない数のIgEエピトープを含む、及び/又は、低下したIgE結合能を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示すものである。好適な核酸配列は、Lol p 5、Poa p 5 及びPhl p 5などの5群アレルゲンファミリ・メンバをコードするものである。特に有用な核酸分子の1つはLol p 5変異体D1 乃至D5をコードするものである。
本発明の核酸分子はゲノム分子でも、又はcDNA分子でも、又は対応するmRNA分子でもよく、また遺伝子と言及される場合もある。本発明に関する「遺伝子」という言及は、転写されるとmRNA分子が生成される、又は、タンパク質に翻訳可能なmRNA分子自体である、任意の連続したヌクレオチド配列を意味する。5群イネ科植物花粉アレルゲン・ファミリ・メンバをコードする遺伝子とは、当該タンパク質をコードする、あるいは、対応する天然型分子に比較して単一又は複数のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含んでいてもよい当該タンパク質の誘導体もしくは相同体をコードする、ヌクレオチド配列を意味する。改変Lol p 5遺伝子とは、さらに、当該天然型分子に比較して少なくとも1つの切断された又はアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を有するLol p 5タンパク質の完全長又は部分長に相当するmRNAに相補的なcDNAも言及するものである。
さらに本発明は融合分子にも関する。例えば本発明のいくつかの局面の場合、改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその一フラグメント又はその誘導体と、例えばβ-ガラクトシダーゼ、ホスファターゼ、ウレアーゼ等の酵素が例である、別のペプチド又はタンパク質由来のアミノ酸配列とを含む融合タンパク質を作製することが好ましい。大半の融合タンパク質は、2つのコーディング配列が、それらの読み枠が同じ相にあるように接合されているような組換え遺伝子の発現により形成される。代替的には、タンパク質又はペプチドを化学的手段によりin vitroで連結することもできる。イネ科植物花粉アレルゲンのこのような融合タンパク質又はハイブリッド遺伝子誘導体や、又は、それをコードするヌクレオチド配列は、すべて本発明に包含される。さらに、イネ科植物花粉アレルゲンタンパク質の相同体及び誘導体により、それらの合成誘導体も包含することが意図されている。ここで解明されたヌクレオチド配列は、公知の方法(例えば固相合成法)による化学合成により、タンパク質全体を化学合成したり、あるいは、何らかの数の断片(ペプチド)を作製する際に、用いることができる。このような化学合成されたペプチドはすべて、本発明の包含するところである。従って本発明は、組換え手段又は化学合成により作製される、単離された改変イネ科植物花粉アレルゲンファミリ・メンバ、そのフラグメント、並びにそれらの誘導体、相同体及び免疫学的類縁体にも及ぶ。
用語「単離された」及び「精製された」はここでは交換可能に用いられており、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質又は培地、あるいは化学合成された場合には化学的前駆体又は他の化学物質、を実質的に含まないペプチド、タンパク質、タンパク質フラグメント及び核酸配列、を言う。ここで用いる用語「天然型」とは、イネ科植物花粉又は他の植物部分から精製されたタンパク質又はそのフラグメントを言う。それには、cDNA配列で決定されたアミノ酸配列であって、イネ科植物花粉から精製されたアレルゲンと同様にアレルギー状態に関連するようなアミノ酸配列の言及も含まれる。
本発明の範囲内にある核酸分子の断片には、T細胞抗原性を示すが、哺乳動物、好ましくはヒト、におけるIgE相互作用のない、又は、低下したIgE相互作用を示すイネ科植物花粉アレルゲンの部分をコードするものが含まれる。
IgEに結合しない、及び/又は、IgE相互作用能が最小である、及び/又は、IgE産生刺激能の最小である、組換え又は合成により作製された改変イネ科植物花粉アレルゲンのフラグメント及び変異体が望ましい。このような最小のIgE相互作用活性がヒスタミン放出につながらないことが好ましい。例えば、本改変アレルゲンは、マスト細胞又は好塩基球上のIgEの架橋結合を起こさないことが好ましい。最小のIgE相互作用活性とは、組換え又は合成により作製される「天然型の」イネ科植物花粉アレルゲンタンパク質又は、完全な精製された天然イネ科植物花粉アレルゲンによるIgE相互作用量よりも少ないIgE相互作用活性を言う。またIgE相互作用を、IgE産生刺激活性として測定してもよい。好適なフラグメントには、イネ科植物花粉感受性の個人、又は、イネ科植物花粉アレルゲンと交差反応性のアレルゲンに対してアレルギー性の個人、に投与したときに、その個人のイネ科植物花粉アレルゲンに対するアレルギー性応答を修飾できる抗原性フラグメントが含まれる。
T細胞刺激活性、即ちT細胞抗原性を有し、従って少なくとも1つのT細胞エピトープを含有するような本発明の抗原性フラグメントが特に好ましい。T細胞エピトープはアレルギーの臨床上の症状の原因となるタンパク質アレルゲンに対する免疫応答の開始及び永続化に関与していると考えられている。これらのT細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面上の適したHLA分子に結合して、関連するT細胞下位集団を刺激することにより、Tヘルパー細胞のレベルでの初期事象を惹起していると考えられている。これらの事象はT細胞増殖、リンホカイン分泌、局所的炎症性反応、付加的な免疫細胞の当該部位への動員、及びB細胞の抗体産生カスケードの活性化を引き起こす。これらの抗体のアイソタイプのうちの1つであるIgEはアレルギー症状の進展にとって基本的に重要であり、その産生は、前記事象のカスケードの初期のTヘルパー細胞のレベルで、分泌されるリンホカインの性質によって影響を受ける。T細胞エピトープはT細胞受容体による認識の基本的要素又は最小の単位であり、この場合のこのエピトープは受容体認識にとって必須なアミノ酸を含有する。T細胞エピトープのものを模倣し、タンパク質アレルゲンに対するアレルギー性応答を修飾するアミノ酸配列は、本発明の範囲内にある。
少なくとも1つのT細胞エピトープを含有すると共に、タンパク質アレルゲンを由来とする、本発明の精製された改変タンパク質アレルゲン、又は、本発明の抗原性フラグメントに患者を暴露すると、適したT細胞下位集団が寛容化又は免疫性減少し、その結果、これらはタンパク質アレルゲンに対して非反応性となり、またこのような暴露時の免疫応答の刺激に関与しなくなるであろう。加えて、少なくとも1つのT細胞エピトープを含有する本発明のタンパク質アレルゲン又は本発明の抗原性フラグメントを投与すると、天然型のタンパク質アレルゲン又はその一部に暴露した場合に比較してリンホカイン分泌プロファイルが修飾されるであろう(例えばその結果IL-4が減少、及び/又は、IL-2が増加する、など)。さらに、このような抗原性フラグメント又はタンパク質アレルゲンに暴露すると、当該アレルゲンへの応答に通常関与しているT細胞下位集団に影響が及んで、その結果これらのT細胞が、アレルゲンの通常の暴露部位(例えば鼻孔粘膜、皮膚及び肺)から当該フラグメント又はタンパク質アレルゲンの治療的投与部位に指向されるであろう。このようなT細胞下位集団の分布修正の結果、アレルゲンへの通常暴露部位における通常の免疫応答を刺激する上での個人の免疫系の能力が軽減又は低下して、アレルギー症状の緩和が起きるであろう。
本発明は、発現ベクタ及び本発明の核酸配列を発現するように形質転換させたホスト細胞を提供する。本発明の発現ベクタは、改変イネ科植物花粉アレルゲンもしくはその抗原性フラグメント又はその誘導体もしくは相同体をコードする核酸配列、あるいはこのような核酸配列の機能的均等物を含有するものである。当該核酸配列を原核ホスト細胞で発現させても、又は真核ホスト細胞で発現させてもよい。適したホスト細胞にはE. coliなどの細菌細胞、昆虫細胞、酵母、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞、がある。適した発現ベクタ、プロモータ、エンハンサ、及び他の発現制御因子は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に見られよう。酵母での発現に適したベクタにはYepSec1 (Baldari et al., EMBO J. 6: 229-234, 1987); pMF (Kurjan and Herskowtiz, Cell 30: 933-943, 1982);及びJRY88 (Schultz et al., Gene 54: 113-123, 1987)がある。
ホスト細胞は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は電気穿孔法などの従来技術を用いて、本発明の核酸配列を発現するように形質転換することができる。ホスト細胞を形質転換するのに適した方法は、上記のSambrook et al., 1989及び他の研究室用教本に見られよう。本発明の核酸配列を標準的な技術を用いて合成してもよい。
従って、本発明の別の局面では、組換え改変イネ科植物アレルゲンもしくはその一フラグメント、又はその誘導体もしくは相同体、又はその免疫学的類縁体を作製する方法が提供される。この場合当該方法は、前記生物中で発現可能なプロモータと、前記プロモータの下流に配置されて前記プロモータから転写される改変イネ科植物花粉アレルゲンもしくはファミリ・メンバ、もしくはその一フラグメント、又はその誘導体もしくは相同体、又は免疫学的類縁体をコードする遺伝子と、検出可能なマーカと、原核生物もしくは真核生物の複製開始点を含有するDNA伝播体とを含有する複製可能な組換えDNA分子を含有する生物を、前記組換えDNA分子が、安定に維持されるとともに、前記改変イネ科植物花粉アレルゲンもしくはそのフラグメントもしくは誘導体、相同体もしくは免疫学的類縁体の合成を命令するような条件下かつ充分な時間、培養するステップと、選択に応じて同改変イネ科植物花粉アレルゲンもしくはそのフラグメントもしくは誘導体、相同体もしくは免疫学的類縁体を単離するステップと、を含む。
イネ科植物花粉アレルゲン及びそのフラグメント(ペプチド)は、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過、電気泳動法や、当該改変イネ科植物花粉アレルゲンに対して特異的な抗体を用いた免疫精製を含め、ペプチド及びタンパク質を精製するための、当業で公知の技術を用いて、細胞培地、ホスト細胞、又は両者から精製することができる。用語「単離された」及び「精製された」はここでは交換可能に用いられており、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質又は培地を、あるいは化学合成された場合には化学的前駆体又は他の化学物質を、実質的に含まないペプチド、タンパク質、タンパク質フラグメント、及び核酸配列を言う。
本発明の別の局面は、 Lol p5 D1、D2、D3、D4及びD5 又はこれらの機能的もしくは免疫学的均等物、相同体又は誘導体を含むタンパク質製剤を提供するものである。
このように、本発明は、イネ科植物花粉感受性の個人に投与したときに、ライグラス花粉や、又は免疫学的に関連するイネ科植物由来の花粉などのイネ科植物花粉に対する当該個人のアレルギー性応答を低下させる改変イネ科植物花粉アレルゲン又はそれらの誘導体を提供するものである。好適な改変イネ科植物花粉アレルゲンには、改変Lol p5 タンパク質又はその誘導体もしくは相同体がある。他の好適なアレルゲンはPhl p 5 及びPoa p 5である。
アミノ置換、付加及び/又は欠失もしくは切断の誘導に加え、タンパク質又はペプチドの修飾の別の例は、ジスルフィド結合による二量体化を抑えるために、システイン残基を、好ましくはアラニン、セリン、スレオニン、ロイシン又はグルタミン酸と置換するものである。本発明のタンパク質及びペプチドの修飾の別の例は、アミノ酸側鎖の化学修飾や、又は、ペプチドの環化によるものである。
安定性及び/又は反応性を高めるためには、本発明のタンパク質又はペプチドを修飾して、天然のアリルのバリエーションから生じた当該タンパク質アレルゲンのアミノ酸配列に一つ以上の多型を導入することができる。加えて、D型アミノ酸、非天然アミノ酸又は非アミノ酸類似体を置換又は付加して、本発明の範囲内にある改変タンパク質又はペプチドを作製することもできる。
本発明の別の局面は、イネ科植物種の花粉由来の、改変されたアレルゲン性活性を示すタンパク質をコードするDNA配列を含む組換えベクタに関するものである。より具体的には、当該イネ科植物種は、禾本科(原語:Poaceae)(イネ科((原語:Gramineae)))、そしてさらにより具体的にはユリ属(原語:Lolium)に属する。さらにより具体的には、本アレルゲン性タンパク質は、ロリウム−ペレン(原語:Lolium perenne)花粉、即ち:
イチゴツナギ科 (festucoid) イネ科植物。1群:トリティカネア(原語:Triticanea): ブロムグラス−イネルミス(原語:Bromus inermis)、スムース−ブルーム(原語:smooth broom);シバムギ(原語:Agropyron repens)、イングリッシュ−カウチ(原語:English couch);A.クリスタタム(原語:A. cristatum);ライムギ(原語:Secale cereale)ライ−トリティカム−アエスティブム(原語: rye Triticum aestivum)、コムギ。2群:ポアナエ(原語:Poanae):ダクチリス−グロメラータ(原語:Dactylis glomerata)、多年生ライグラスのカモガヤ;L.ムルティフォラム(原語:L. multiflorum)、 ネズミムギ;ポア−プラテンシス(原語:Poa pratensis)、 ケンタッキー−ブルーグラス;P.コンプレッサ(原語:P. compressa)、フラットゥンド・メドー・グラス(原語:flattened meadow grass);アヴェナーサティヴァ(原語:Avena sativa)、カラスムギ;ホルカス−ラナトゥス(原語:Holcus lanatus)、シラゲガヤ又はヨークシャーフォッグ;アントキサンタム−オドラタム(原語: Anthoxanthum odoratum); ハルガヤ;アレナティラム−エラティアス(原語: Arrhenatherum elatius )野生オート麦;アグロスティス−アルバ(原語:Agrostis alba)、コヌカグサ;フレウム−プラテンス(原語:Phleum pratense)、 オオアワガエリ;ファラリス−アルンディナセア(原語:Phalaris arundinacea)クサヨシ。パニコイド−グラス(原語:Panicoid grass)、パスパラム−ノタタム(原語:Paspalum notatum)、バヒアグラス、アンドロポゴノイド−グラス(原語:Andropogonoid grasses):ソーガム−ハレペンシス(原語:Sorghum halepensis)、ヒメモロコシ、
のLol pIb タンパク質に対する抗体と免疫学的に交差反応性であると特徴付けられている。
改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその一フラグメントもしくは誘導体の作製に向けて、多種の発現ベクタを構築することができる。
本発明は、改変イネ科植物花粉アレルゲン又はそのフラグメント、誘導体もしくは相同体に対するモノクローナル及びポリクローナル抗体にも及ぶ。
本モノクローナル抗体は、cDNAライブラリをスクリーニングするためにも、又は、組換えにより作製されたタンパク質の精製にも、さらには、導入されたタンパク質の活性を低下させる治療法においても、有用である。以下の議論において、イネ科植物花粉タンパク質アレルゲンへの言及には、それらの誘導体、相同体及び免疫学的類縁体並びにそれらの化学合成誘導体も含まれる。以下の議論には、さらに、精製された改変Lol p 5 並びにそれらのフラグメント、誘導体及び相同体に特異的な抗体も含まれる。このような抗体は、改変イネ科植物花粉アレルゲンのための、特に治療もしくは診断計画の観察時のための検出検定法(免疫検定法)を開発する際、そして組換えもしくは合成により作製されたイネ科植物花粉ファミリ・メンバ、特に5群イネ科植物花粉アレルゲン、を精製する際に、有用だと考えられる。本抗体はモノクローナルでも、又はポリクローナルでもよい。加えて、上に議論した一次抗体に対するいかなる二次抗体(モノクローナル又はポリクローナル)も包含することが、本発明の範囲内にある。さらに本発明は、検出検定、そして例えば診断用もしくは投与された医薬製剤の作用を観察する場合に、これらの一次もしくは二次抗体を使用することも考察する。さらに、改変イネ科植物花粉タンパク質アレルゲンと複合体形成したいずれかの分子に対する抗体を包含することも、本発明の範囲内にある。従って、イネ科植物花粉タンパク質アレルゲンに対する抗体には、このようなタンパク質アレルゲン、又はその抗原性部分や、関連するあらゆる分子(例えば脂質領域、担体分子、融合タンパク質等)に対する抗体が包含される。
ここで考察されるイネ科植物花粉ファミリ・メンバ、又はそのフラグメントは精製された後に抗体作製に用いられる。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両者とも、組換えもしくは合成改変イネ科植物花粉タンパク質ファミリ・メンバによる免疫処置で得ることができ、いずれの種類も免疫検定で利用できる。両方の種類の血清を得る方法が当業で公知である。ポリクローナル血清の方は余り好ましくないが、有効量の精製済み改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその抗原性部分を適した実験動物に注射し、この動物から血清を採取し、公知の免疫吸着技術のいずれかで特異血清を単離することにより、比較的容易に調製される。この方法で作製される抗体は実質的にすべての種類の免疫検定で利用できるが、これらは一般に、生成物が均質でない可能性があるために余り好ましくない。
免疫検定においてモノクローナル抗体の使用は特に好適であるが、その理由は、それら抗体を大量に生成できることと、生成物が均質であることである。不死化細胞株と、免疫原性プレパラートに感作させたリンパ球とを融合して得られる、モノクローナル抗体作製用のハイブリドーマ細胞株の調製は、当業者に公知の技術により行うことができる(例えば Kohler and Milstein, Nature 256: 495-499, 1975; Kohler and Milsten, Eur. J. Immunol. 6: 511-519, 1976を参照されたい)。
ポリクローナル血清の調製とは異なり、動物の選択は、リンパ球と融合可能な適した不死の株を得られるかどうかに左右される。マウス及びラットがハイブリドーマ技術で選択されてきた動物であり、使用が好ましい。適した不死化ヒト(又は非ヒト)細胞株が入手できれば、ヒトも感作リンパ球の供給源として利用できる。本発明の目的のためには、選択された動物に、約0.1 mg 乃至約20 mgの精製改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその部分を注射してよい。通常は、注射する物質をフロイント完全アジュバント中に乳濁させる。追加刺激注射が必要な場合もある。抗体産生の検出は、適切に標識した抗原で抗血清を検査することにより、行うことができる。リンパ球は、感作動物の脾臓又はリンパ節を無菌的に摘出し、融合を行うことで得ることができる。選択的には、リンパ球をin vitroで刺激又は免疫することもできる。
ここで考察される改変イネ科植物花粉アレルゲン又は同アレルゲンに特異的な抗体の、患者の血清、植物又は哺乳動物組織もしくは組織抽出物中の存在は、上述の通りに調製されたモノクローナル又はポリクローナルのいずれかの抗体を用いて、実質的にはあらゆる種類の免疫検定で検出することができる。米国特許第4,015,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号を参照すると見られるように、幅広い免疫検定技術を利用できる。これには、非競合的種類の単一部位及び二部位、又は「サンドイッチ」検定法や、古典的な競合的結合検定法の両方が含まれる。サンドイッチ検定法が最も有用かつ普通に用いられている検定法の一つであり、本発明で用いるのに好適である。サンドイッチ検定技術には多数の変更例があり、すべて、本発明に包含されるものと、意図されている。簡単に説明すると、典型的な順方向検定では、未標識の抗体を固体の基質に固定し、検査対象の試料を、この結合した分子に接触させる。適したインキュベーション時間後、つまり抗体−抗原二次複合体の形成に充分な時間経過後、検出可能なシグナルを生じることのできるレポータ分子で標識した二次抗体を加え、抗体−抗原−標識化抗体(例えば抗体−改変イネ科植物花粉アレルゲンタンパク質−抗体)の三次複合体の形成に充分な時間、インキュベートする。未反応の物質を洗い流し、レポータ分子の生じるシグナルを観察することで、抗原の存在を判定する。その結果は観察可能なシグナルの単なる観察による定性的なものでも、あるいは、既知の量のハプテンを含有するコントロール試料との比較による定量的なものでもよい。この順方向検定のバリエーションには、試料と、標識化抗体の両方を同時に結合抗体に添加する同時検定や、又は、標識化抗体及び検査試料をまず配合し、インキュベートしておいてから結合抗体に同時に添加する逆方向検定法がある。これらの技術は、容易に明白であるような小さな変形例も含め、当業者に公知である。
以下の議論は改変イネ科植物花粉アレルゲンの検出と関連するが、同アレルゲンに対する抗体の検出にも等しく応用でき、またその充分な解説として意図されている。
典型的な順方向サンドイッチ検定では、本発明で考察される改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその抗原性部分に対する特異性を有する第一抗体は、固体表面上に共有結合又は受動的に結合されている。前記固体表面は典型的にはガラス又はポリマであり、最も普通に用いられているポリマはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。前記固体の支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又は、免疫検定を行うのに適した他の何らかの表面の形状であってよい。その結合プロセスは当業で公知であり、一般的には、架橋結合的な共有結合又は物理的吸着から成り、前記ポリマ−抗体複合体を、検査試料の調製時に洗浄する。次に、一アリクォートの検査試料を固相複合体に加え、約室温から約37℃で、抗体中に存在する何らかのサブユニットの結合が起きるのに充分な時間、インキュベートする。インキュベーション時間は様々であろうが、一般的には約2乃至40分間の範囲か、又は、より都合が良ければ一晩であろう。インキュベーション時間後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥し、ハプテンの一部に特異的な二次抗体と一緒にインキュベートする。この二次抗体は、この二次抗体のハプテンへの結合を示すのに用いるレポータ分子に結合させる。
本明細書で用いる「レポータ分子」とは、その化学的性質により、抗原に結合した抗体の検出を可能にする、分析的に識別可能なシグナルを提供する分子を意味する。検出は定性的でも、又は定量的でもよい。この種類の検定で最も普通に用いられているレポータ分子は酵素、蛍光体又は放射性核種含有分子(即ち放射性同位体)である。酵素免疫検定法の場合、酵素を二次抗体に、一般的にはグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩を利用して、結合させる。しかし容易に認識されるように、幅広い様々な結合技術が存在し、当業者に容易に利用できる。通常用いられている酵素には、とりわけ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼ、がある。特定の酵素と共に用いる基質は、一般に、対応する酵素による加水分解を受けたときに検出可能な色変化を生じるように選択されている。例えばp-ニトロフェニルホスフェートは、アルカリホスファターゼ結合体との使用に適しており、ペルオキシダーゼ結合体には、1,2- フェニレンジアミン、5-アミノサリチル酸、又はトルイジンが通常用いられている。さらに上述した色素産生性基質ではなく、蛍光生成物を生じる蛍光産生性基質を利用することも可能である。いずれの場合も、酵素標識した抗体を一次抗体ハプテン複合体に加え、結合させた後に、過剰な試薬を洗い流す。次に適した基質を含有する溶液を抗体−抗原−抗体の三次複合体に加える。この基質は二次抗体に結合した酵素と反応して、定性的な視覚的シグナルを生じるが、このシグナルを、通常は分光光度分析法によりさらに定量して、試料中に存在したハプテン量の指標としてもよい。「レポータ分子」はさらに、赤血球又はラテックス・ビーズ等など、細胞凝集又は凝集阻害の利用にも及ぶ。
代替的には、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光化合物を、それらの結合能を変化させることなく、抗体に化学的に結合させてもよい。前記蛍光色素標識された抗体は、特定の波長の光の照射で活性化したときに、この光エネルギを吸着して、励起状態を当該分子に誘導し、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色の光を放出する。EIAの場合と同様、この蛍光標識された抗体を、一次抗体−ハプテン複合体に結合させる。未結合の試薬を洗い流した後、残りの三次複合体を適した波長の光に暴露し、観察されるフルオレセインは、目的のハプテンの存在の指標となる。免疫蛍光法及びEIA技術は両方とも、当業で大変良く確立されており、本発明の方法に特に好適である。しかしながら、放射性同位体、化学発光もしくは生物発光分子などの他のレポータ分子も用いてよい。必要な目的に合うように当該手法をどのように変更するかは、当業者には容易に明白であろう。また、前述のものは、本発明のイネ科植物花粉アレルゲンタンパク質を直接又は間接的(即ち抗体を介して)検出するためにも、用いることができる。
従って、本発明の局面の一つは、血清、組織抽出物、植物抽出物又は他の生物学的流体又は組成物中に存在する、改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその誘導体もしくは相同体、あるいは、前記改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその誘導体もしくは相同体に対して免疫学的に反応性のアレルゲン性タンパク質を検出する方法を提供するものである。本方法は、検査対象の前記流体又は組成物を、前記改変イネ科植物花粉タンパク質アレルゲンに対する抗体に、改変アレルゲンタンパク質−抗体の複合体が形成されるのに充分な時間及び条件下で含有させるステップと、前記複合体を検出手段に暴露するステップと、を含む。精製方法については、改変アレルゲンを精製するためには、天然アレルゲンに対する抗体も有効であろうと思われ、このような実施態様も、本発明の包含するところである。
さらに本発明は、哺乳動物体液、例えば血清、組織抽出物、組織流体)、in vitro細胞培養上清、及び細胞ライセート中で、改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその誘導体、相同体もしくは免疫学的類縁体に対する抗体を迅速かつ便利に検定するためのキットにも関する。本キットは、その抗原性成分を含有するよう適合された第一容器と、当該イネ科植物花粉アレルゲンに対する抗体を含有するよう適合された第二容器とを受容するよう、区画化されている。前記抗体は、検出可能なシグナルを生成できるレポータ分子で標識される。前記レポータ分子が酵素である場合、前記酵素に対する基質を含有するよう適合された第三容器が提供される。本キットのある使用例では、試料中に存在する場合の抗体が、前記第一容器内のイネ科植物花粉アレルゲンに結合するための時間及び条件下で、検査対象の試料を前記第一容器内の内容物に接触させる。
花粉症及び季節性喘息は、それらの薬理学及び免疫学でなされた進展にもかかわらず、環境中のアレルゲンの存在を原因として西側諸国で大きな罹患率及び社会経済学的インパクトを持ち続けている。抗ヒスタミン剤及びステロイドを含む幅広い薬物が利用可能となったおかげで、アレルギー性疾患の治療に進歩があったが、これらには長期の使用に伴う残念な副作用がある。これらの問題のために、アレルギー性疾患の免疫治療法において、新たな関心事が示された。免疫治療法は、患者をアレルギー性反応に対して脱感作するために強力なアレルゲン抽出物を注射することを含む。残念ながら、アレルゲンとして用いられる花粉製剤は多価であり、品質に劣る。その結果、IgG応答を誘導するためにしばしば高濃度が用いられているが、アナフィラキシーを含め、全身反応を惹起してしまい、致命的となることがある。アレルゲンの配列に基づいてクローンされた遺伝子産物又は合成ペプチドは、品質管理、特徴付け、及び標準化が可能なために、治療にとって安全な媒体を提供するものとなる。
従って本発明は、イネ科植物花粉に対してアレルギー性の哺乳動物(例えばヒト)を脱感作する方法を考察するものである。本方法は、イネ科植物花粉に対して哺乳動物(例えばヒト)の脱感作を行うのに充分な時間及び条件下で、IgE結合活性を欠く、もしくは少ない数のIgE結合活性を含む、及び/又は、低下したIgE結合活性を示す、及び/又は、低下したIgE産生刺激活性を示す、改変イネ科植物花粉アレルゲン、又はその一フラグメントもしくは誘導体、相同体、もしくは免疫学的類縁体を、脱感作に有効な量、前記哺乳動物に投与するステップを含む。
さらに本発明は、ライグラス花粉又はライグラスの免疫学的類縁体由来の花粉に対して感受性ある哺乳動物(例えばヒト)において、このような花粉への感受性を治療する方法も提供する。本方法は、本発明の治療用組成物を治療上有効量、前記哺乳動物に投与するステップを含む。さらに本発明は、ライグラス花粉アレルゲン、又は、ライグラス花粉アレルゲンと免疫学的に交差反応性のアレルゲン、に対する感受性を治療する方法も提供し、本方法は、本発明の前記タンパク質製剤を治療上有効量、哺乳動物に投与するステップを含む。
本発明のペプチド及びタンパク質を用いることで、治療を目的として(例えばL. ペレンヌ(L. perenne)感受性個人の、このような植物の花粉に対するアレルギー性応答を修飾するなどのために)、一貫した、良く定義された組成物及び生物活性を作製し、投与することができる。このようなペプチド又はタンパク質の投与は、例えば、イネ科植物花粉アレルゲンに対するIgE応答を修飾するであろう。さらに、精製されたペプチドは、L.ペレンヌアレルギーの免疫治療の機序を研究したり、また免疫治療に有用な改変誘導体又は類似体をデザインするためにも、用いることができる。
従って本発明は、アレルゲン感受性の個人の治療又は予防のための医薬の製造に改変アレルゲンを使用することに関する。
従って本発明は、脱感作上もしくは治療上有効量の、改変イネ科植物花粉アレルゲン、特に5群イネ科植物花粉アレルゲンもしくはその誘導体、相同体もしくは免疫学的類縁体と、一種以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供するものである。本改変イネ科植物花粉アレルゲン予防薬を含む医薬組成物の活性成分は、その特定の場合に応じた量を投与したときに、イネ科植物花粉に対してアレルギー性のヒトを脱感作する上などで、優れた治療又は活性を示すと考えられる。例えば、1日当たり、体重1キログラム当たり約0.5 Fg 乃至約20 mg を投与してよい。最適な治療応答が得られるように投薬計画を調整してもよい。例えば、複数に分けた用量を毎日投与してもよく、あるいは、治療状況の緊急度から示された場合には用量を比例的に減少させてもよい。活性化合物は、例えば経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、鼻孔内、皮内又は座薬経路又は移植(徐放性分子を用いるなどして)などにより、都合の良い方法で投与してもよい。投与経路によっては、本発明の医薬組成物を含む活性成分を、当該成分を失活させかねない酵素、酸及び他の天然条件の作用から本成分を保護する物質で被覆する必要がある場合がある。例えば、本改変イネ科植物花粉アレルゲンをアジュバントに入れて投与したり、酵素阻害剤と一緒に投与したり、又はリポソームに入れて投与してもよい。アジュバントはその最も広い意味で用いられており、その中にはインターフェロンなどの免疫刺激性化合物も含まれる。ここで考察されるアジュバントには、レゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤がある。酵素阻害剤には、膵臓トリプシンがある。リポソームには、水中油中水CFエマルジョンや、従来のリポソームがある。T細胞のアネルギを誘導する目的のためには、本医薬組成物を、非免疫原性の形で投与することが好ましい(例えばそれがアジュバントを含まないなど)。
さらに活性化合物を非経口又は腹腔内投与してもよい。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物や、油で調製することができる。通常の保管及び使用条件下であれば、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐ保存剤を含有する。
注射による使用に適した薬品型には、無菌の水溶液(水溶性の場合)、又は、注射可能な溶液を調製するための分散液又は無菌粉末、がある。いずれの場合も、当該剤形は無菌でなければならず、また注射が容易な程度に流動性でなければならない。またそれは製造及び保管条件下で安定でなければならず、細菌及びカビなどの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。当該担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、イロピレン(原語:iropylene)グリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、適したこれらの混合物、及び植物油などを含有する溶媒又は分散媒であってよい。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを使用したり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持できる。微生物の活動は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の多種の抗菌剤及び抗カビ剤により、防ぐことができる。多くの場合、例えば糖類又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物中に用いることで、可能である。
無菌の注射用溶液は、必要な量の活性化合物を、適した溶媒中に、必要に応じて上に列挙した多種の他の成分と一緒に取り入れた後に濾過滅菌して調製される。分散液は一般に、多種の滅菌済み活性成分を、基本的な分散媒と、上に列挙したものの中の必要な他の成分とを含有する無菌の賦形剤に取り入れることにより、調製される。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、その結果、活性成分と、予め無菌濾過されたその溶液から生じる付加的な所望の成分との粉末が生じる。
改変イネ科植物花粉アレルゲン又はその一フラグメントが上述したように適切に保護されている場合は、活性化合物を、例えば不活性の希釈剤や、又は同化可能な食用の担体と一緒にして経口投与してもよいが、あるいはそれを硬質又は軟質のシェル・ゼラチンカプセルに封入してもよく、あるいはそれを圧縮して錠剤にしたり、あるいはそれを食餌と一緒に直接取り入れてもよい。経口による治療用投与の場合、当該活性化合物を医薬品添加物と一緒に取り入れ、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハー等の形で用いてよい。このような組成物及び製剤は、重量で少なくとも1%の活性化合物を含有するべきである。組成物及び製剤のこのパーセンテージは、もちろん、重量で約5乃至80%の単位に支持され、また適宜この範囲であろう。このような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適した投薬量が得られるようなものである。本発明による好適な組成物又は製剤は、経口用の単位剤形が約10Fg乃至2000mgの活性化合物を含有するように調製される。
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等には、以下に挙げる成分も含めてよい。トラガカントゴム、アカシアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどの結着剤;リン酸二カルシウムなどの医薬品添加物;コーンスターチ、いもでんぷん、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びショ糖、ラクトース又はサッカリンなどの甘味料を加えてもよく、又はペパーミント、ウィンターグリーン油、又はサクランボ香料などの着香料を加えてもよい。投薬剤形がカプセルの場合、それに、上述の種類の材料に加え、液体の担体を含めてもよい。多種の他の材料が、コーティングとして、又は単位剤形の物理的形状を改良するために、存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤又はカプセルを、セラック、糖又は両者で被覆してもよい。シロップ又はエリキシルには、活性化合物や、甘味料としてのショ糖、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン(原語:prppylparaben)、サクランボ又はオレンジ香料などの染料及び着香料を含めてもよい。もちろん、いずれの投薬剤形を調製する際に用いる材料はいずれも、薬学的に純粋、かつ、用いる量で実質的に無毒性でなくてはならない。加えて、当該活性化合物を持続放出製剤及び調合物に取り入れてもよい。
ここで用いる「薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤」には、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。このような媒質及び薬剤の、薬学的に活性な物質のための使用は当業で公知である。従来の媒質又は薬剤が、活性成分にとって不適合でない限り、治療用組成物中へのその使用は考察されている。補助的な活性成分も本組成物中に取り入れることができる。
以下の非限定的な実施例で本発明をさらに詳述する。
Lol p 5変異タンパク質の作製
低アレルギー誘発性の、非IgE反応性アレルゲン・バリアントを操作するには、当該タンパク質のうちで、全体的構造及びT細胞エピトープを損なわずに変更できる鍵となる残基を選抜できるかどうかを判断する必要があった。Lol p 5のC末端側半分に渡るペプチドフラグメントでIgE結合が高頻度で観察されるため、本発明は、本アレルゲンのうちの主にC末端に変異を導入した。Lol p 5のうちで、本タンパク質のIgE相互作用に影響を有するであろうアミノ酸位置を特定するために、Lol p 5 のアイソフォームA及びBのタンパク質配列を5群の他のイネ科植物アレルゲンと比較した(図1)。位置指定突然変異法を用いて、5群アレルゲン中で保存度の高い残基を置換した(図2)。一つ又は三つのドメインで変更された変異タンパク質を作製した(図3)。
未変異Lol p 5と、Lol p 5の変異バリアントとを、可溶型の形でE. coli内でpQE 発現ベクタ系(キアゲン社)を用いて発現させた。タンパク質をこのベクタを用いて細菌で発現(下記参照)させると、ポリヒスチジンのタグが当該分子のN末端に導入されるが、このタグは、ワン・ステップ金属キレートアフィニティ・クロマトグラフィにより組換えタンパク質を精製するために有用である。次に、未変異のコントロール及び変異タンパク質を、IgE反応性や、抗Lol p 5モノクローナル抗体A7 (Mab A7)及びポリクローナル抗Lol p 5抗血清に対する反応性についてスロット・ブロット(図5)、ウェスタン・ブロット(図6)及びELISA検定(図7)で検査した。その結果から、 変異タンパク質(例えば mut 4、mut 6、mut 9)のいくつかに、IgE結合活性に実質的な減少があることが分かった。このような操作されたアレルゲン性分子は、I型アレルギー性疾患のためのより安全かつより効果的な免疫治療にとって有用な可能性があり、解説したアプローチは、アレルゲンの非IgE反応性バリアントを作製する際に一般に適用できるであろう。
組換えLol p 5及び変異タンパク質の発現及び精製
Lol p 5 及び変異タンパク質のコーディング配列を、発現ベクタpQE31 (キアゲン社)にインフレームで導入した。このベクタにより、組換えタンパク質を、N末端に6-残基ヒスチジン・タグを付けた状態で発現させることができる。当該タンパク質の発現及び採集は、QIA発現者用マニュアルに概観されたように行われた。ヒスチジン−タグを付けたタンパク質を、TALON 金属アフィニティ・レジン(クロンテック社)を用いて、TALON 金属アフィニティ・レジン・ユーザ・マニュアル(クロンテック社)に概観されたバッチ/重力流カラム精製のための手法に従って精製した。
SDS-PAGE及びウェスタン・ブロット法
SDS-PAGEには、1.3 FgのLol p5 と、変異タンパク質のそれぞれとを、10倍のタンパク質試料緩衝液と一緒に5分間、沸騰させた。試料を、0.2Mのグリシン、0.025 M Tris、0.1% w/v SDSの緩衝液を入れた15% w/v アクリルアミド・ミニゲルに載せて、200 Vで40分間、泳動させた。
染色については、ゲルを0.1% w/v クーマシー・ブリリアント・ブルーR250中で少なくとも1時間、振盪させた。ゲルを20% v/vメタノール、7% v/v氷酢酸、3% v/v グリセロールで、2回緩衝液を交換して、一晩かけて脱色した。
ナイトラン0.2 Fm ナイロン・メンブレン(シュライヒャー・アンド・シュエル社)を0.025 M Tris、0.2 M グリシン、20% v/v メタノールの緩衝液中に入れたBIORAD ミニ−プロティーンIIセル・ウェスタン・ブロット装置で、4℃で100Vを1時間、印加してゲルをウェスタン・ブロットした。
スロット・ブロット分析
スロット・ブロット分析のために、0.7 Fg の変異タンパク質及びLol p5 をHybri-Slotマニホルド・スロット・ブロット装置(ライフ・テクノロジーズ社)のスロットに添加し、ナイトラン 0.2 Fm ナイロン・メンブレン(シュライヒャー・アンド・シュエル社)にウォーター・バキュームからの吸引をかけてブロットした。
抗体及び患者の血清と一緒のブロットのインキュベーション
抗体又は血清と一緒にインキュベートする前に、ウェスタン・ブロット及びスロット・ブロットをすべて、10% w/v スキムミルク粉末のPBS (150 mM 塩化ナトリウム、36 mM 第一リン酸ナトリウム1水和物、7 mM 第二リン酸ナトリウム、2水和物)溶液で1時間かけて、振盪しながら遮断した。ブロットをPBS、0.5% v/v Tween 20で1回、PBSで2回、洗浄し、モノクローナル抗体 (mAb A7: 1:5に希釈)、ポリクローナル抗体 (B1: 1:50に希釈) 又は患者の血清と一緒に一晩、インキュベートした。希釈液はすべて、PBS、0.5% w/v BSA、0.1% w/v アジ化ナトリウムで調製し、ブロットと一緒に一晩、室温で振盪した。ブロットを、上述の通りに洗浄した後、PBS、0.5% v/v Tween 20、1% w/v BSAで1:5000に希釈したアルカリ−ホスファターゼ結合抗マウス (mAb A7) 又は抗ウサギ (B1)二次抗体(プロメガ社)と一緒に1時間、室温で、振盪しながらインキュベートした。その後、全ブロットを上述のように洗浄した。結合した抗マウス及び抗ウサギ抗体を色反応で検出した。−66 Fl のBCIP ストック(5% w/v リン酸ブロモクロロインドリルの100% v/v ジメチルホルムアミド溶液)を加えた10 ml アルカリホスファターゼ緩衝液(0.1 M Tris、pH 9.5、0.1 M 塩化ナトリウム、0.05 M 塩化マグネシウム)。患者の血清と一緒にインキュベートしたブロットを、PBS、0.5% v/v Tween 20、1% w/v BSA(緩衝液 B)で1:5に希釈したI125標識した抗ヒト抗体(バイオクローン社)と一緒に一晩、室温で振盪しながらプローブした。全ブロットを上述のように洗浄した。洗浄後、結合したI125標識抗ヒトIgEを-70℃のコダック・バイオマックスMSフィルムに露光して検出した。
直接的ELISA
ELISAプレート(グライナー社)のウェルを、50 Flアリクォートの100、500、1000、5000及び10000 ng/mlのLol p5 及び4種類の変異タンパク質希釈液で被覆し、4℃で一晩かけてインキュベートした。次にウェルをPBS、0.5% v/v Tween 20で4回、洗浄した。室温の緩衝液Bで1時間遮断した後、ウェルを再度洗浄し、患者血清の緩衝液Bによる適した希釈液50 Fl と一緒に一晩、4℃でインキュベートした。ウェルを上述の通りに洗浄してから、50 Flの抗ヒトIgE抗体(アルカリホスファターゼ結合したもの:シグマ社)の緩衝液Bによる1:2000 希釈液と一緒に室温で1時間、インキュベートした。最終回の洗浄後、結合した抗ヒトIgEをブルー・フォス・マイクロウェル・ホスファターゼ基質系(カークガード・アンド・ペリー・ラボラトリーズ社)で検出した。 発色はスペクトラカウント・プレート・リーダで630nmで(パッカード社)で検出した。
当業者であれば、ここで解説した本発明は、具体的に解説されたもの以外の変形及び改良が可能であることを理解されよう。本発明にはこのようなあらゆる変形及び改良が包含されることを理解されねばならない。さらに本発明は、本明細書で言及した、又は、本明細書で提示した、個々又は集合的なステップ、特徴、組成物及び化合物の全て、並びに、前記ステップ又は特徴のうちのいずれか2つ以上のあらゆる組合せ、を包含するものである。
引用文献
Bond, J.F, Segal, D.B, Yu X-B, Theriault, K.A, Pollock, M.S, Yeung H. J. Allergy Clin. Immunol. 91: 339, 1993.
Baldari et al., EMBO J. 6: 229-234, 1989.
Kohler and Milstein, Nature 256: 495-499, 1975.
Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol . 6: 511-519, 1976.
Kurjan and Herskowitz, Cell 30: 933-943, 1982.
Miyamoto T: Advances in Allergology and Clinical Immunology. Godard P, Bousquet J, Michel FB (eds) pp. 343-347. The Parthenon Publishing Group, Cornforth, UK, 1992.
Ong, E.K, Griffith, I.J., Knox, R.B., Singh, M.B. Gene 134: 235-240, 1993.
Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989.
Schultz et al., Gene 54: 113-123, 1987.
Singh, M.B., Hough, T., Theerakulpisut, P., Avjioglu, A., Davies, S., Smith, P.M., Taylor, P., Simpson, R.J., Ward. L.D., McCluskey, J., Puy, R., Knox, R.B. Proc. Natl. Acad. Sci USA 88: 1384-1388, 1991.
Smart, I.J., Heddle, R.J., Zola, H., Bradley, J., Int. Arch. Allergy Immunol. 72: 243-248, 1983.
Smith, P.M., Ong, E.K, Avjioglu, A., Singh, M.B., Knox, R.B. Analysis of rye-grass pollen allergens using two dimensional electrophoresis and immunoblotting. In Kraft D (ed), Molecular Biology and Immunology of Allergens, CRC Press, Boca Raton, FL, 1993.
Smith, P.M., Ong, E.K., Knox, R.B., Singh, M.B. Mol. Immunol. 31: 491-498, 1994.
Wuthrich, B., Int. Arch. Allergy Immunol. 90: 3-10, 1989.
図1は、5群アレルゲンの推定アミノ酸配列の比較を示す図である。横線はアライメントが最大になるように導入されたギャップを示す。Lol p 5 A と同一な残基をアスタリスクで示す。 図2は、Lol p 5 Aのアミノ酸配列を、D1、D2、D3、D4及びD5変異体を作製するために当該アレルゲンに導入した変異を示しつつ示した図である。Lol p 5 Aのうちで変更したアミノ酸を四角で囲って示し、新しい配列を太字で示す。 図3は、変異型Lol p 5バリアントの概略図を示し、例えば mut 1は変異D1を含有する。 図4は、Lol p 5 Aに変異を作るために用いたプライマの配列を示す図である。 図5は、 Lol p 5 (非変異型) 及び9種類の変異型バリアント(mut 1 乃至mut 9)の、これらの精製タンパク質のポリクローナル(p)、モノクローナル(m)抗体や、7人のライグラス花粉アレルギー患者の血清に対する反応性のスロット・ブロット分析を示す概略図である。 図6は、Lol p 5 (非変異型) 及び9種類の変異型バリアント(mut 1 乃至mut 9)の、これらの精製済みタンパク質のポリクローナル(p)、モノクローナル(m)抗体や、ライグラス花粉アレルギー患者(患者2)の血清に対する反応性の免疫ブロット分析を示す概略図である。 図7A、B及びCは、精製非変異型Lol p 5及び4種類の変異タンパク質(mut 3、mut 4、mut 6、mut 9)を用いたELISA検定の図解であり、変異型バリアントの、モノクローナル (mAb A7) 及び2人の患者(患者4、患者27)のIgEに対する反応性の低下を示す。

Claims (10)

  1. SEQ ID NO.1のアミノ酸配列を有するLol p 5タンパク質の組換えアレルゲン・バリアントであって、以下の(a)、(b)又は(c)の突然変異を含む、組換えアレルゲン・バリアント。
    (a) K172N、F173L、T174A 及びV175A (mut 4)
    (b) K57A、G273A、K275A、K172N、F173L、T174A 及びV175A (mut 6)
    (c) K57A、ΔG272、K172N、F173L、T174A 及びV175A (mut 8)
  2. SEQ ID NO.2のアミノ酸配列を有するLol p 5タンパク質の組換えアレルゲン・バリアントであって、以下の(a)、(b)又は(c)の突然変異を含む、組換えアレルゲン・バリアント。
    (a) K190N、F191L、T192A 及び V193A (mut 4)
    (b) K69A、G311A、K313A、K190N、F191L、T192A 及び V193A (mut 6)
    (c) K69A、ΔG310、K190N、F191L、T192A 及び V193A (mut 8)
  3. 減少した数のIgEエピトープを含む、及び/又はIgEへの結合能低下を示す、及び/又は、T細胞抗原性を保持しながらも、低下したIgE産生刺激活性を示す、請求項1又は2に記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  4. 感受性の対象において天然発生型の前記タンパク質アレルゲンがタイプIアレルギー性疾患に関係している、請求項1乃至のいずれかに記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  5. 前記タイプIアレルギー性疾患が、ライグラス花粉に対する感受性である、請求項に記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  6. 前記感受性の対象がヒト、霊長類、家畜動物、実験用動物又はペットである、請求項に記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  7. 前記感受性の対象がヒトである、請求項に記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載の組換えアレルゲン・バリアントと一種以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は希釈剤とを含む組成物。
  9. ヒト又は動物の身体を処置する方法における使用のための、請求項1乃至のいずれかに記載の組換えアレルゲン・バリアント。
  10. アレルギー性疾患状態の予防又は処置のための方法で使用する医薬の製造における、請求項1乃至のいずれかに記載の組換えアレルゲン・バリアントの使用。
JP2003528855A 2001-09-20 2002-09-13 低IgE結合性であり、T細胞抗原性の低下のない組換えアレルゲン Expired - Lifetime JP4508640B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
AUPR7792A AUPR779201A0 (en) 2001-09-20 2001-09-20 Immunotherapeutic and immunoprophylactic reagents
PCT/AU2002/001261 WO2003025009A1 (en) 2001-09-20 2002-09-13 RECOMBINANT ALLERGEN WITH REDUCED IgE BINDING BUT UNDIMINISHED T-CELL ANTIGENICITY

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005511512A JP2005511512A (ja) 2005-04-28
JP2005511512A5 JP2005511512A5 (ja) 2006-02-16
JP4508640B2 true JP4508640B2 (ja) 2010-07-21

Family

ID=3831632

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003528855A Expired - Lifetime JP4508640B2 (ja) 2001-09-20 2002-09-13 低IgE結合性であり、T細胞抗原性の低下のない組換えアレルゲン

Country Status (12)

Country Link
US (2) US7666428B2 (ja)
EP (1) EP1434793B1 (ja)
JP (1) JP4508640B2 (ja)
KR (1) KR101019865B1 (ja)
CN (2) CN1589278B (ja)
AU (1) AUPR779201A0 (ja)
CA (1) CA2460392C (ja)
ES (1) ES2436605T3 (ja)
NO (1) NO336740B1 (ja)
NZ (2) NZ531882A (ja)
PT (1) PT1434793E (ja)
WO (1) WO2003025009A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2434720T3 (es) * 2003-06-04 2013-12-17 Merck Patent Gmbh Derivados de LOL P 5 con alergenicidad reducida y reactividad frente a células T mantenida
DE10359351A1 (de) 2003-12-16 2005-07-21 Merck Patent Gmbh DNA-Sequenz und rekombinante Herstellung von Gruppe-4 Majorallergenen aus Getreiden
DE102004035337A1 (de) * 2004-07-21 2006-03-16 Merck Patent Gmbh Varianten der Gruppe 1-Allergene aus Poaceae mit reduzierter Allergenität und erhaltener T-Zellreaktivität
WO2011112788A1 (en) * 2010-03-12 2011-09-15 Antigen Laboratories, Inc. Methods of treating allergies with substantially phenol-free carriers
CN114181924A (zh) * 2021-11-19 2022-03-15 山东龙盛食品股份有限公司 一种用来快速降解牲畜骨的恒温生物复合酶复合物及其使用方法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA1340729C (en) 1988-03-23 1999-09-07 Mohan Bir Singh Ryegrass pollen allergen
WO1992003550A1 (en) * 1990-08-17 1992-03-05 The University Of Melbourne Ryegrass pollen allergen
NZ270897A (en) 1991-08-16 1997-06-24 Univ Melbourne Treatment of sensitivity to ryegrass pollen
CA2142370C (en) * 1992-08-14 2008-07-15 Robert Bruce Knox T cell epitopes of ryegrass pollen allergen
JPH08509966A (ja) * 1993-03-12 1996-10-22 イミュロジック ファーマスーティカル コーポレイション ライグラス花粉アレルゲンのt細胞エピトープ
US5710126A (en) * 1993-03-12 1998-01-20 Immulogic Pharmaceutical Corporation T cell epitopes of ryegrass pollen allergen
EP0714440A1 (en) * 1993-08-13 1996-06-05 Immulogic Pharmaceutical Corporation T cell epitopes of ryegrass pollen allergen
DE19713001A1 (de) * 1997-03-27 1998-10-01 Merck Patent Gmbh Graminaenpollenallergenmutanten zur spezifischen Immuntherapie, deren Herstellung und Verwendung
GB2348808B (en) * 1998-01-09 2003-03-19 Circassia Ltd Methods and compositions for desensitisation
DE19918682A1 (de) * 1999-04-23 2000-10-26 Merck Patent Gmbh DNA-Sequenz und rekombinante Herstellung eines Graminaen-Allergens
ES2434720T3 (es) 2003-06-04 2013-12-17 Merck Patent Gmbh Derivados de LOL P 5 con alergenicidad reducida y reactividad frente a células T mantenida

Also Published As

Publication number Publication date
CN103360483A (zh) 2013-10-23
CN1589278B (zh) 2013-06-26
WO2003025009A1 (en) 2003-03-27
US7666428B2 (en) 2010-02-23
EP1434793A1 (en) 2004-07-07
NZ572653A (en) 2010-08-27
CN1589278A (zh) 2005-03-02
CA2460392C (en) 2013-04-02
JP2005511512A (ja) 2005-04-28
US20050074464A1 (en) 2005-04-07
EP1434793B1 (en) 2013-09-04
NZ531882A (en) 2009-06-26
PT1434793E (pt) 2013-12-03
KR20040064692A (ko) 2004-07-19
NO336740B1 (no) 2015-10-26
CN103360483B (zh) 2015-12-23
EP1434793A4 (en) 2006-08-30
AUPR779201A0 (en) 2001-10-11
KR101019865B1 (ko) 2011-03-04
US20100303843A1 (en) 2010-12-02
NO20041146L (no) 2004-05-19
CA2460392A1 (en) 2003-03-27
ES2436605T3 (es) 2014-01-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4150050B2 (ja) ほそ麦花粉アレルゲン
US6849427B1 (en) Nucleic acids encoding a house dust mite allergen, Der p VII, and uses therefor
US6930181B1 (en) Antigen associated with type 1 Diabetes Mellitus
US20100303843A1 (en) RECOMBINANT ALLERGEN WITH REDUCED lgE BINDING BUT UNDIMINISHED T-CELL ANTIGENICITY
US20060099215A1 (en) Walnut and ryegrass allergens
JPH11514852A (ja) 後天性副甲状腺機能低下症患者における自己抗体およびその測定方法
JP3868480B2 (ja) ライグラス花粉アレルゲンのt細胞エピトープ
JP3990730B2 (ja) マラセチア由来の抗原性蛋白質
US20090098167A1 (en) PHL P 1 Allergen Derivative
AU2002325089B2 (en) Recombinant allergen with reduced IgE binding but undiminished T-cell antigenicity
AU2002325089A1 (en) Recombinant allergen with reduced IgE binding but undiminished T-cell antigenicity
JPH07502648A (ja) シノドン・ダクチロン(Cynodon dactylon)種のタンパク質のアレルゲン
WO2000068262A1 (fr) Nouvel antigene pollinique

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050912

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20051222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080620

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20080917

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20080925

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081222

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090327

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090724

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20091026

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091215

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100315

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100406

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100427

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4508640

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130514

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term