JP4507325B2 - X線撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として医科、歯科などにおいて用いられるX線撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、CMOSやCCDなどのイメージセンサを用いて、フィルムを使わずX線画像を即座に表示、保存できる撮影装置が実用化されている。例えば歯科用のパノラマX線撮影装置としては、図1に示すようなものがある。支柱1に設けられるアーム支持体2に旋回アーム3が鉛直な旋回転軸線4まわりに旋回可能に支持され、この旋回アーム3の一端部にはX線照射手段5が設けられ、旋回アーム3の他端部のカセッテホルダー内に撮影手段6が設けられている。ここには図示していないが、被写体となる人体歯列はX線照射装置5と撮影手段6との間に位置し、旋回アームの回転とともに標準歯列弓の曲線に沿って撮影焦点が移動する。この時、縦長の2次スリット7から撮影手段6に入射するX線の時系列信号を逐次測定し、時間遅延積分(TDI)法によって画像を取得する構成となっている。撮影された被写体のX線画像はX線室外に設置された合成表示手段8で1枚のパノラマ画像として合成表示される。
【0003】
撮影手段6は、図2(a)のように標準フィルムカセッテと同様な薄い箱型筐体内にCMOSやCCDなどの受光素子9が縦方向に複数枚重ね合わせるようにして配置され、重ね合わせ部分で画像が欠落しない構成である。受光素子9は、実際のところ図2(b)9a〜9gのように7個の受光素子がビス締め固定され、各受光素子ごと担当する撮影範囲は25mm幅単位(=画像ピッチ50μm×500画像)というようにあらかじめ定められた状態で、個別に独立して画像取得している。6aは受光素子9を駆動し、撮影データを取得するための撮影制御部であり、通信ポート6cを介して合成表示手段8に撮影データを送信する。
【0004】
図3は合成表示手段8で合成表示されたパノラマX線画像であり、受光素子9a〜9gによって個別に撮影された画像をつなぎ合わせたものである。点線で分離して明示した横長の各画像は上から順に受光素子9a、9b、..9gから得られたものである。受光素子9a〜9gはコスト、生産性の点から口内法デンタル撮影に用いられているCCDセンサをそのまま流用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのような従来のX線撮影装置では、受光素子どうしの固定位置関係がずれている時連続した合成画像にならず、つなぎ目部分で欠落や重複ができてしまう。欠落や重複の存在が判明した場合、受光素子を交換したり取り付け直すなど位置関係を物理的に修復しなければならないし、実際に修正されたかどうかは再度組み立てた後に撮影動作をしなければわからないという課題があった。一般的に画像ピッチは数10μm〜100μmであるため、受光素子の取り付けは精密光学部品として厳しい寸法位置決め精度が要求される。
【0006】
また急激な明暗差のない被写体を撮影している場合、つなぎ目における画像の欠落や重複といった課題の存在すらわからないまま、診断してしまう恐れがあり、画像の欠落や重複をなくす調整をしようとしても、急激な明暗差のない被写体では調整が不正確となる。
【0007】
欠落や重複のない連続合成画像を手動で調整する場合、多くの時間がかかり、不慣れな使用者が実施することは困難であった。
【0008】
複数枚の2次元画像を合成する際に、たとえ拡大率や撮影角度が同一またはつなぎ目部分で連続する被写体像であっても縦軸方向と横軸方向の調整があり、2枚の被写体像の重ね合わせ像を逐次ずらしながら結合位置を導出する単純な探索アルゴリズムでは莫大な時間がかかってしまう。
【0009】
重複部分でどちらの受光素子の出力を採用するかを決定するのも人手で行うと不正確となる。また複数個の受光素子を組み合わせたことによる重ね合わせ部分の感度低下や温度による受光素子特有の暗電流ノイズ増加などS/N劣化も問題となる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、複数個の受光素子を有した撮影手段において、つなぎ目部分で画像の欠落や重複ができないことを目的の1つとする。
【0011】
また受光素子を交換したり取り付け直さなくても各撮影手段によって得られた画像を合成時に計算によって連続した1枚の画像として表示できることを目的の1つとする。さらに複数個の受光素子取り付け時の寸法位置決め精度を緩和し、特別な生産設備、治具を不要とすることを目的の1つとする。
【0012】
また不慣れな使用者でも簡便な操作により短時間のうちに欠落や重複のない連続合成画像を得る調整ができることを目的の1つとする。
【0013】
あるいは短時間のうちに正確に2枚の被写体像から位置関係を導出できることを目的の一つとする。
【0014】
また複数個の受光素子を組み合わせたことによる重ね合わせ部分の感度低下や温度による受光素子特有の暗電流ノイズ増加などS/N劣化を補うことを目的の1つとする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、X線照射手段から照射されたX線により、被写体のX線像を撮影するため複数個の受光素子を有した撮影手段と、前記複数個の受光素子相互の位置関係を設定する設定手段と、有効撮影前記撮影手段および前記設定手段の出力に基づき前記被写体の画像を合成表示する合成表示手段を備えたものである。
【0016】
また複数個の受光素子はそれぞれ有効撮影範囲が重なる位置に配置され、あらかじめ基準の被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力される個別画像に基づいて隣接した受光素子との位置関係を設定手段に記憶させたものである。
【0017】
また基準の被写体は、金属材料を格子状に配置したものである。
【0018】
また被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力された個別画像を、縦横方向に移動させることによって、隣接する2つの前記個別画像の結合状態を合成表示手段の画面上で確認操作できる操作手段を備えたものである。
【0019】
また基準の格子状被写体を撮影した際に個別の受光素子から出力された個別画像から、第1の方向線分と第2の方向線分を分離抽出し、隣接した個別画像の一方を第1または第2の方向線分画像に対応させて移動させることによって線分が連続するよう結合位置を導出する判定手段を備えたものである。
【0020】
また判定手段は、個別画像が重なった領域において、感度の高い受光素子からの出力を選択することを特徴とするものである。
【0021】
また複数個の受光素子のうち、少なくとも1つの受光素子端部にX線非透過材を配置し、前記X線非透過材を配置した当該位置からの出力信号を基準値として他のX線透過領域からの出力信号から前記基準値を差分する演算手段を設けたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
上記のような構成のX線撮影装置により以下のような作用を有する。複数個の受光素子相互の位置関係を設定する設定手段により、すでに各受光素子によって撮影、記憶された個別画像データを用い受光素子相互の位置関係の設定を変更し直すだけで、つなぎ目部分で欠落や重複の幅が広がったり縮んだりしたX線合成画像が再構成される。
【0023】
特に複数個の受光素子はそれぞれ有効撮影範囲が重なる位置に配置されているので、受光素子どうしの固定位置関係がずれている場合何回も受光素子の取り付け位置を変更して組みなおしたり、撮影動作を繰り返しながら良否を判定していかなくても、コンピュータなどからなる合成表示手段において合成に最適な位置関係を導くことができる。設定時にあらかじめ基準の被写体を1回撮影するだけなので、何度も撮影動作を繰り返して受光素子やX線照射装置の寿命に悪影響を与えたり、必要以上に被写体を被曝させてしまう問題もなくなる。また撮影された画像データからつなぎ目部分を詰めたり伸ばしたりといった任意の位置設定が自由にできるので個々の受光素子を精密な寸法精度で取り付けなくてもよい。
【0024】
また基準の被写体として金属材料を格子状にしたので、被写体像は明暗差がはっきりする上に縦軸方向と横軸方向いずれに関しても、つなぎ目部分の良否つまり連続した合成画像を得るための最適ずらし量が判別しやすい。
【0025】
また基準の被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力された個別画像を縦横方向に画素単位で移動させることによって、線分が連続するよう2つの画像を合成表示手段の画面上で確認操作できる操作手段を備えたので、不慣れな使用者でも短時間のうちに正確に位置合わせ調整することができる。万一振動などによって受光素子の位置がずれた場合、基準の被写体を所定場所にセットして撮影するだけで再調整することができる。
【0026】
また基準の格子状被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力された個別画像から、格子の一方の平行線となる第1の方向線分のみからなる画像と他方の平行線となる第2の方向線分のみからなる画像とに分離抽出し、隣接した個別画像の一方を第1または第2の方向線分画像に対応させて移動させることによって線分が連続するよう結合位置を導出する判定手段を備えたので、例えばまず横軸方向にのみ独立して位置合わせを実施完了した後、縦軸方向に関する位置合わせができるなど、簡便かつ確実に結合位置が導出される。
【0027】
また個別画像が重なった領域において、感度の高い受光素子からの出力を選択するので総合的につなぎ目部分での感度低下は最小限に食い止めることができる。重なりあっている部分で片方の受光素子の当該画素に白キズや黒キズといわれる欠陥があった場合も、他方画素データを採用することでキズ不良を低減できる。
【0028】
判定手段は、人手を介することなく自動実行されるので再現性よく短時間かつ正確に最適な合成画像が構成できる。
【0029】
また複数個の受光素子のうち、少なくとも1つの受光素子端部に鉛板などのX線非透過材を配置し、このX線非透過材を配置した当該位置からの出力信号を基準値として他のX線透過領域からの出力信号から前記基準値を差分する演算手段を設けたので、このX線非透過材は可視光のCCDセンサにおけるオプティカルブラックと同等の作用をもたらす。
【0030】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1におけるX線撮影装置および撮影手段6の外観図、撮影対象画像は、従来例で示した図1、図2、図3と同様である。また図4は実施の形態1におけるX線撮影装置のブロック図であり、従来例で示した機能ブロックと同一のものに対しては同一番号を付与し説明を省略する。X線照射装置5から照射されたX線は、被写体10を介して撮影手段6内の7個の受光素子9(9a〜9g)に入射する。8はパーソナルコンピュータからなる合成表示手段であり、設定手段11に記憶された隣接受光素子との位置関係からX(横)軸、Y(縦)軸ずらし量に基づき7個の個別画像を合成して表示する。操作手段12は被写体10を撮影した際に個々の受光素子9a〜9gから出力された個別画像を、画素単位で縦横方向に移動させることによって、2つの前記個別画像の結合状態を合成表示手段の画面上で確認操作し、最適なずらし量パラメータを不揮発性メモリからなる設定手段11に書き込んでおくものである。このX線撮影装置は、図5に示すような標準歯列弓を断面とする曲面上に焦点が来るように設計されている。図6は位置合わせ用の基準被写体10の外観図であり、樹脂材料の表面上に半田線などX線を透過しない鉛を含有する非透過材料が等間隔の格子状に貼り付けられている。この被写体10は、X軸中心線に関し、左右対称であり、パノラマ撮影し平面展開された画像も左右対称の格子状図形となる。実際の撮影は図2(b)に示したように7個の受光素子9a〜9gから同一駆動タイミングで画像データ取得しているので撮影手段6により、7個の独立した画像が作られ合成表示手段8に送られる。7個の受光素子9a〜9bから作られた画像データが上から順に並んでいると仮定しそれぞれ元画像a、元画像b...元画像gと名づけた場合、元画像aの下端部と元画像bの上端部、画像bの下端部と画像cの上端部、...画像fの下端部と画像gの上端部が重なるようになっている。格子の一方は水平面に対し垂直なY軸線上に並び、また他方は斜め方向に並んでいる。格子の交差点は上下2つの元画像を合成するのに重要な点であり、位置関係を正確に観測できるよう、同一水平面上に全てが並ばないよう配置されている。
【0031】
図7は元画像aの下端部と元画像bの上端部それぞれの一部を拡大表示したものであり、操作手段12によって上下左右に画像を移動確認しながら合成に必要なずらし量を手動で設定できるようになっている。また図8は受光素子9a、9b、9cの断面構造を示したものである。
【0032】
図8において13a、13b、13c、はGd2O2S、CaWO4、BaFCl、Cslなどからなる蛍光材料板であり、入射したX線を光に変換する。また14a、14b、14cは光を電荷に変換するフォトダイオードや蓄積電荷を運び出す転送手段を持ったシリコン半導体からなるCCDである。ここで、有効撮像範囲は蛍光材料板下層にあり13a、13b、13cと14a、14b、14cは密着するよう貼り合わせてある。15a、15b、15cはセラミック基板であり、CCD14a、14b、14cに対する駆動信号やCCD出力信号を取り出すための銅箔配線が内部で施されている。受光素子9a、9b、9cは図示したように重ねて配置されており、外部から入射したX線のうち蛍光材料板13a、13b、13cの領域に当たったものは大半がそこで可視光に変換されてしまうため透過しにくい一方、シリコンCCD14a、14b、14cやセラミック基板15a、15b、15c領域に当たったものは大半がそのまま透過されていく。よって受光素子9a、9b、9cの有効撮像素子における受光感度が均一だとしても重ね合わせによる感度分布は、例えば「9bの感度」、「9cの感度」のような段差を持った形となり、これら個別の元画像データをつなぎ合わせることによって「全体合成時の感度」を作っている。図7において元画像bの上端部において重なり領域が暗くなっているのは、受光素子9aの陰影が映っているためである。操作手段12では、元画像gを固定しつつ元画像fを上下左右にずらして重ね合わせながら最適位置を決定する。次に元画像fを固定しつつ元画像eを上下左右にずらして重ね合わせながら最適位置を決定する。同様に繰り返し、最後に元画像bを固定しつつ元画像aを上下左右にずらして重ね合わせながら最適位置を決定する。図7では元画像bを基準に元画像aを右に3画素移動、下に10画素移動すれば、2枚の個別画像を1つに結合できることがわかる。操作手段12は例えばコンピュータのマウス操作によって、対象となる元画像のつなぎ目部分を拡大表示したり、対象となる元画像を画素単位で移動して重ね合わせながら最適な位置関係を目視確認できる。ここで判明した元画像aと元画像bの位置関係、元画像bと元画像cの位置関係、...、元画像fと元画像gの位置関係はそのまま設定手段11で記憶され、以後設定変更されない限り、通常被写体撮影時の合成パラメータとして使用される。
【0033】
このように実施の形態1では、ただ1度だけ撮影保存された格子状の基準被写体の個別元画像を使い、操作手段12によって必要なずらし量を簡便に確認したり、設定手段11に書きこんでおくことができる。これらは全てコンピュータ上の画像処理作業であり、撮影手段6を分解する必要はない。
【0034】
なお実施の形態1では、従来例同様、2次スリットから入射する縦長棒状の画像を時間遅延積分(TDI)法によってパノラマ画像に展開する歯科用パノラマX線撮影装置について説明したがTFTなど2次元スイッチングアレイを用いた撮影装置や動画像撮影装置に適用してもよい。また産業用などで監視対象の内部を非破壊検査するX線撮影装置に適用してもよい。
【0035】
また受光素子9a、9bの数を7個としたがこれに限るものではない。2個の長尺センサを重ね合わせるだけの場合や、縦横方向それぞれに数10個の受光素子を配置する場合も同様である。
【0036】
なお図6に示した基準の被写体ではX線非透過材料が等間隔ピッチの平行線をなすように表面に貼り付けられていたが、線幅ピッチを細かくずらしたものとして解像度チャートを兼ねてもよい。図8は蛍光材料板の両端とCCDの有効撮像範囲は一致しているものとしたが、貼り合わせ位置ずれにより、X線に対し表側にくる受光素子(元画像aなど)の下端部(数ライン分)の方が感度が低ければ、強制的に切り取ってもよい。各受光素子ごとの感度ばらつきや同一素子内の画素間感度ばらつきに対する校正(感度補正)について記述しなかったが、位置合わせ作業の前に均一な厚み、透過率を有する別の被写体を撮影し各画素ごとに変換補正テーブルや補正式を持たせておくなどしてもよい。
【0037】
(実施の形態2)
図9に本発明の実施の形態2におけるX線撮影装置のブロック図を示す。尚、実施の形態1で示した機能ブロックと同一のものに対しては同一番号を付与し説明を省略する。実施の形態2が、実施の形態1と異なる点は基準の格子状被写体10を撮影した際に個々の受光素子9a〜9gから出力された個別画像から、第1の方向線分と第2の方向線分を分離抽出し、隣接した個別画像の一方を第1または第2の方向線分画像に対応させて移動させることによって線分が連続するよう結合位置を自動的に導出する判定手段16を備えたことである。判定手段16はパーソナルコンピュータまたはマイクロコンピュータなどからなり、高速演算処理機能を有している。図10は判定手段16の動作を説明したフローチャートであり、図11は各ステップにおけるつなぎ目部分で画像処理された画像例を示す。すでに基準の格子状被写体10の個別画像が7個保存されているとする。また簡単化のため画像輝度に関する処理は説明を省略する。ステップ101では図11(a)のような太さを持った格子状の元画像を図11(b)のような線分画像にする。次にステップ102では、図11(b)の画像を所定方向成分範囲に入る2種類の平行線分からなる図11(c)および図11(d)に分離する。ここで図11(c)は縦方向画像データ、図11(d)は斜め方向画像データと称す。ステップ103は縦方向画像の回転角度を測定し修正する処理であるが、受光素子が機構上、上下左右方向にしかずれない構造であれば不要である。仮に図11(c)が、取り付けの関係上図11(e)のようにずれ得る場合、縦線と下端線(水平線)の交点におけるX軸座標x01、x02、...に対し、所定距離d離れた水平線上と縦線の交点におけるX軸座標x11、x12、...を測定し、tan-1((x11−x01)/d)、tan-1((x12−x02)/d)、...平均値θが縦線傾斜角度である。ここでそれぞれの個別画像における縦線傾斜角度θを強制的に全てゼロにするように画像角度変換するものである。
【0038】
次にステップ104で変数iの初期値を7とし、ステップ105でi番目と(i−1)番目の縦方向画像間ずれ量を測定し修正する。図11(c)においてあらかじめi−1番目画像下端部と縦線の交点(座標x61、x62、...)をそれぞれ抽出し、同様にi番目画像上端部と縦線の交点(座標x71、x72、...)をそれぞれ抽出しておく。ここで各座標点を最も近い点どうしで対にし、それぞれの差x71−x61、x72−x62、...の平均値xnがi−1番目画像のi番目画像に対するX軸方向のずれ量となる。図11(f)は分離され縦線画像、図11(g)は斜め線画像であるが、まずステップ105では、図11(f)のように上側画像を右にxnだけずらすことでi番目縦線画像とi−1番目縦線画像が連続することがわかる。次にステップ106ではi番目とi−1番目の斜め方向画像間のずれ量を測定し修正する。まず斜め方向画像の重ね合わせに際し、あらかじめステップ105で判明したX軸方向のずらし量xnに基づいてX軸方向の補正をしておく。図11(g)において、i番目画像の上端部と斜め線の交点を求めておき、その交点をi−1番目画像下端部から垂直に伸ばして交差するまでのY軸方向の距離Δy61、Δy62、...の平均ynがi−1番目画像のi番目画像に対するY軸方向のずれ量となる。ステップ107では変数iをデクリメントして、ステップ108で変数i=1になるまでステップ105〜107を繰り返す構成である。
【0039】
つまり判定手段16では、それぞれの個別画像に対し縦線傾斜角度θ1θ2、...とi番目画像に対するi−1番目画像のx軸方向量ずれ量xiおよびY軸方向のずれ量yi(i=2〜7)が位置合わせ合成のためのパラメータとして求められ、設定手段11に書き込まれる。また以後の撮影動作はこのパラメータを位置情報として設定手段11から自動的に読み出し、画像合成が行われる。使用者の手動操作作業が不要で、短時間かつ正確に最適な画像合成ができる。
【0040】
また判定手段16は、実施の形態2で示した結合位置導出とともに個別画像が重なった領域において、感度の高い受光素子からの出力を選択する構成としてもよい。つまり所定の被写体を撮影した時、あらかじめわかっている重複部分で対応する画素どうしからの出力を比較し輝度の高い方を選択するので、つなぎ目部分での感度低下は最小限に食い止めることができる。一方の受光素子の当該画素に白キズや黒キズといわれる欠陥(孤立点)があった場合も、他方の画素データを採用することでキズ不良を低減できる。
【0041】
尚、ここで縦線傾斜角度はゼロに対して補正するものとしたが、隣接する個別画像間の角度差を補正してもよい。
【0042】
(実施の形態3)
図12は実施の形態3におけるX線撮影装置のブロック図であり、図13は実施の形態3における受光素子17a、17b、17cの断面構造を示したものである。尚、実施の形態1で示した機能ブロックと同一のものに対しては同一番号を付与し説明を省略する。図12の受光素子17a、17b、17cが実施の形態1で示した受光素子9a、9b、9cと異なるのは、各受光素子の有効撮像範囲の端部にX線を透過しない鉛板18a、18b、18cを加えた点であり、さらにこの受光素子17(17a、17b、...)のうち鉛板貼り付け位置からの出力信号を基準値として他のX線透過領域からの出力信号から前記基準値を差分する演算手段19を設けた点である。受光素子17(17a、17b、...)の有効撮像領域のうち、鉛板18a、18b、18cに覆われた領域に光は入射しない。よってこの部分をいわゆるオプティカルブラックと呼ばれる黒レベルとすることでX線照射に無関係な暗電流を除去することができる。図12からわかるようにこの鉛板による光遮蔽領域は重ね合わせ部分の一部を使うだけなので、感度のない不感帯が出来たり、総受光面積が狭くなることはない。図13からわかるように、鉛板18(18a、18b、...)の貼り付け位置は、重ね合わせられた受光素子の下側の一部つまり合成時に切り取られる領域を用いているので、有効撮像範囲端部の数ラインを確実に覆い隠し、隣接する受光素子との重ね合わせ部分をはみ出さない限りにおいて、厳密な寸法精度は要求されない。このような実施の形態3により、温度上昇による受光素子特有の暗電流ノイズ増加などS/N劣化を抑制することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば次のような効果を有する。
【0044】
(1)複数個の受光素子を用いても、簡便に連続合成画像を生成できる。
【0045】
(2)設定の際、不必要に受光素子やX線照射装置の寿命を劣化させたり、被写体を被曝させることがない。受光素子がずれていても正確な位置に取り付け直す必要がない。
【0046】
(3)明暗差がはっきりした2方向平行線の2次元画像となるので、つなぎ目部分の良否が判別しやすい。
【0047】
(4)不慣れな使用者でも短時間のうちに正確に位置合わせ調整できる。
【0048】
(5)高速かつ確実に結合位置が自動的に導出できる。
【0049】
(6)つなぎ目部分での感度低下を最小限に食い止めることができる。
【0050】
(7)X線照射に伴う有効信号成分のみ抽出できるので、S/Nが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例および本発明の実施の形態1〜3におけるX線撮影装置の外観図
【図2】撮影手段6の外観図
【図3】合成表示手段8で合成表示されたパノラマX線画像を示した図
【図4】実施の形態1におけるX線撮影装置のブロック図
【図5】標準歯列弓の形状を示した図
【図6】位置合わせ用基準被写体10の外観図
【図7】元画像aの下端部と元画像bの上端部それぞれの一部を拡大表示した図
【図8】受光素子9a、9b、9cの断面構造図
【図9】実施の形態2におけるX線撮影装置のブロック図
【図10】判定手段16の動作を説明したフローチャート
【図11】判定手段16によって処理されたつなぎ目部分の画像を示す図
【図12】実施の形態3におけるX線撮影装置のブロック図
【図13】実施の形態3における受光素子17a、17b、17cの断面構造を示した図
【符号の説明】
5 X線照射手段
6 撮影手段
8 合成表示手段
9 受光素子
10 被写体
11 設定手段
12 操作手段
Claims (6)
- X線照射手段から照射されたX線により、被写体のX線像を撮影するため複数個の受光素子を有した撮影手段と、前記複数個の受光素子相互の位置関係を設定する設定手段と、前記撮影手段および前記設定手段の出力に基づき前記被写体の画像を合成表示する合成表示手段と、前記被写体を撮影した個々の前記受光素子から出力された個別画像を、縦横方向に移動させることによって、隣接する2つの前記個別画像の結合状態を合成表示手段の画面上で確認操作できる操作手段とを備えたX線撮影装置。
- 複数個の受光素子はそれぞれ撮影範囲が重なる位置に配置され、あらかじめ基準の被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力される個別画像に基づいて隣接した受光素子との位置関係を設定手段に記憶させることを特徴とする請求項1記載のX線撮影装置。
- 基準の被写体は、金属材料を格子状に配置したことを特徴とする請求項2記載のX線撮影装置。
- 基準の格子状被写体を撮影した際に個々の受光素子から出力された個別画像から、第1の方向線分と第2の方向線分を分離抽出し、隣接した個別画像の一方を第1または第2の方向線分画像に対応させて移動させることによって線分が連続するよう結合位置を導出する判定手段を備えた請求項1〜3記載のX線撮影装置。
- 判定手段は、個別画像が重なった領域において、感度の高い受光素子からの出力を選択することを特徴とする請求項4記載のX線撮影装置。
- 複数個の受光素子のうち、少なくとも1つの受光素子端部にX線非透過材を配置し、前記X線非透過材を配置した当該位置からの出力信号を基準値として他のX線透過領域からの出力信号から前記基準値を差分する演算手段を設けた請求項1〜5記載のX線撮影装置。
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