本発明は、美爪化粧における塗り作業から起因する、不快感と手間の問題を解決することである。具体的には、この解決手段と期待されていたフィルム状の組成物を被覆する化粧手段の改善である。
従来から、フィルム状エナメルに関する技術が各種提案されているが、爪部と皮膚部を明瞭に貼り分ける、個人差に対応できる機能が重要な課題となる。また、エナメル併用法等で貼り分けても、その工程には煩わしい塗布作業が伴なっていた。これに加え、美粧性を求める化粧では、貼着や貼り分の精度が重視される。特に、利き腕の爪を処置する場合(右利きの人であれば右手の爪の処方作業)の作業性は、精度を悪くする。従来の提案は、この作業の評価基準では、実用性に欠ける化粧手段となる。
また、安全衛生面では、臭い、有害性、皮膚刺激性、アレルギー性及び創傷等に関する課題がある。特に、近年では、溶剤類によるアレルギー誘発性、化学物質過敏症、中毒性、環境ホルモンの諸問題があり、消費者側から生体や環境に配慮した化粧品が望まれている。これは少量であっても長期使用による影響が懸念されるものである。古くからニトロセルロース系エナメルの問題は認知され、水性エナメルなどが試みられている。しかし、長年築き上げられたニトロセルロース系の美粧性には劣るものである。水性エナメルは、女児玩具用や剥離性エナメルなど一部の愛用者に限られ、未だニトロセルロース系エナメルが主流となっている。これらの背景から、エナメル液のフィルム化で試みられたが、前記と同様の課題が普及の妨げとなった。
また、企業活動では揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)の排出規制や空き瓶回収に関する課題がある。このため、化粧品における化学物質に係る有害性の評価は、化粧品原料基準等以外に、日本産業衛生学会勧告管理濃度、労働安全衛生法の関連規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法等の指針も考慮する必要があり、厳しくなっている。
これらの問題がある美爪化粧品は、美粧性、被覆作業、皮膜品質、安全衛生面、新規性を総合的に評価した場合、従来の塗り仕上げの化粧料より劣るものとなる。例えば、貼り分ける手段はあるが技能と手間を要する、刃具等を使用する危険作業が含まれる、優れた光沢及び耐磨耗性が得られないなどである。商業的処方物では、この劣位で実用性のないものと評価され、塗り処方に代わるものとならなかった。本発明は、従来の美粧性を継承し、作業性(技能と時間)、精度及び安全性に優れた貼り分及び貼着手段により、フィルム状形態で塗りに相当する仕上がりを得る美爪化粧料及び化粧方法並びにその化粧具を提供する。また、これを活用した新規な化粧法及び用途を提供することも課題の1つである。例えば、ネールアートに観られる個性的な装飾への応用である。
本発明は、指における爪部と皮膚部の物性の違いに着目し、貼り分機能に活用したことが第1の特徴である。この手段により、困難であった貼着前の裁断及び貼着後の切断を不要にした。指の表面は、蛋白質のケラチン物質で構成されるが、爪と皮膚では同じ蛋白質でも硬さが大きく異なる。爪や毛などの硬いケラチンは硬ケラチン、柔らかい皮膚の角質層は軟ケラチンと呼ばれる。この違いの領域は、エナメルを塗り分ける領域そのもので、本発明ではフィルムを被着したい部分である。美爪化粧は、この物性の違う面を明確に彩色区別し、美しく見せる化粧の1つである。また、この領域は、硬さ以外に水分率、保湿性、保油性、平滑度、表面温度等の物性も異なる。
例えば、塗装作業において、硬質被着体に付着した硬化塗料は安定に定着しているが、軟質被着体では被着体の変形により剥がれることを経験する。家事での耐摩耗性を要求される適度な硬度を有する爪用エナメルは、口紅やアイシャドウ等の化粧料と異なり、塗料と似た現象が見られる。しかし、軟質被着体の塗膜が確実に剥がれるとは限らない。この剥がれの確実性を制御することで、爪と皮膚の硬さの違いを利用できる技術となる。
この現象は、液状化又は軟化等で半液状化したものが、細かい凹凸面に密着して付着した時に観られる。粘着テープ様のものでは、基材の剛性及び弾性が影響して、この現象は確認できない。皮膚の柔軟性が作用し、爪部の方が剥がれ易いという、逆の現象が発生する。
次に、美爪化粧に要求される機能をもつ爪用エナメルからなるエナメル皮膜(以下皮膜と称す。)が、アルコール系溶剤により変質し、接着性と密着性を発現することに着目した。一般に、アルコール系溶剤は除光液として試みられるが、エナメルに対し溶解力に乏しく能力が欠ける。しかし、この欠点は、本発明では適度な作業性と作業時間が得られる。さらに、皮膜と爪の間で溶解を開始させる溶解部の制御で、皮膜を半塗料状態で扱うことができる。本発明は、アルコール系溶剤の溶解性とその溶解部を制御することで、皮膜を半塗料状態で爪に被着し、従来のエナメルが持つ美粧性を継承したことが第2の特徴である。他の溶剤でも可能であるが、アルコール類は有機溶剤の中でも有害性や臭い等の不快感が少ない。これらの理由から、アルコール系溶剤を主成分とした揮発性組成物を皮膜定着剤とした。この手法は溶媒転写法で、基本的には郵便切手を水で貼り付ける方法と同じである。しかし、従来のフィルム状エナメルと同様に、任意に定められた領域を貼り分ける手段は含まれない。
本明細書において「半塗料状態」とは、皮膜に溶剤を付けてもある程度成膜状態を保って軟化し、押圧等で細かい凹凸面に密着して付着し、押圧してもエナメルが指に付着しない状態である。皮膜状態で塗料の塗布機能が利用できる状態である。これに対し、除光液や専用溶剤のように溶解力が強いと、皮膜は急激に軟化萎縮して成膜状態を保てない。さらに、軟化後は液状化で指に付着する。「皮膜の軟化」は、少なくとも片面が液状化に達しない塑性変形が可能な変質状態で、膨潤は含まれない。
被着又は塗布された皮膜形成化粧料の付着メカニズムは、代表的な説として、界面での投錨効果による機械的結合、共有結合という化学反応による化学的結合、OH基の水素結合による化学的結合、滑剤や可塑剤などの液状物質の濡れ(ファン・デル・ワールスの力)による電気的結合の4説が、接着理論で考えられている。化粧料では被着体が生体であることから、除去を前提とした弱い結合手段しか採用できない。このため、皮膜化粧料の付着は、水素結合と濡れによる接着の中でも粘着に近い状態と考えられる。この粘着による定着状態は、結合界面の界面張力と極性が大きく関係している。
この界面張力に着目し、皮膜が被着した指先に、潤滑油、植物油、洗剤、揮発油等の各種油剤を付着させて揉んだり押えたりして変形させた。この操作状態で油剤の表面張力値を除々に小さくすると、皮膚に付着した皮膜では、ある値から剥がれの実用的確実性が現れた。油剤の中から皮膜を変質させないものを選択すると、爪(硬質被着体)の皮膜に影響を与えず、皮膚(軟質被着体)の皮膜のみを確実に剥がすことができた。溶解する物質が含まれると、ベタツキ又は液状化してこの区別はできなかった。半塗料化して貼着した皮膜では、皮膜を変質させない組成物で、はみ出しのみを選択的に除去できることを見出し、皮膜の貼り分技術を完成した。
本発明は、はみ出しの除去手段として、変形剥離と低表面張力の物性を示す油剤類を併用させたことが第3の特徴である。これにより、無造作に扱っても、皮膚部のはみ出した皮膜のみが除去され、爪の皮膜は理想の状態で残る。この効果は、皮膜の溶媒転写法において、はみ出しが容認できる技術手段となる。本発明は、アルコール系溶剤又はこれに固体接着成分を加えた組成物を定着剤とし、はみ出しを容認して皮膜を転写する方法を採用した。これに皮膜を変質させない成分に構成された低表面張力の流動組成物を、境界部の仕上げ剤とした。皮膜は、既に慣用される各種のエナメル組成物、又は皮膜定着剤に適する組成物をフィルム化して得る。皮膜と皮膜定着剤の関係では、半塗料化して貼着する条件、爪部と皮膚部の堺で皮膜を分断できる条件を定める。仕上げ剤は、皮膚部に対する皮膜の付着力から表面張力値を最適化する。この付着力は、皮膜と皮膜定着剤の関係から決まる。
本発明は、フィルム又はシート状の皮膜を爪に被覆する美爪化粧料において、フィルム又はシート状のエナメル皮膜と、アルコール系溶剤が65容積%以上の揮発性組成物である皮膜定着剤と、25℃における表面張力が40mN/m以下の流動組成物である仕上げ剤からなり、次の条件(A)〜(D);
(A)エナメル皮膜の少なくとも片面は、皮膜定着剤により成分の一部が変質して接着性を有する。
(B)エナメル皮膜は皮膜定着剤により変質して軟化する。
(C)エナメル皮膜の被着処理過程で、皮膜定着剤により変質したエナメル皮膜は爪への接着力より引張強度が小さくなる時間が3分以上有する。
(D)仕上げ剤はエナメル皮膜への変質作用がない組成物である。
を満たす美爪化粧料である。
皮膜定着剤のアルコール系溶剤は、低級一価アルコール類と低級多価アルコール類の1種又は2種以上を調製して得る。皮膜定着剤のアルコール系溶剤残部は、皮膜の付着力、定着剤の揮発性を調整するため、アルコール系溶剤と可溶な他の溶媒を混合できる。付着力を強くするものとして、アルコール類より溶解力の強いアセトン等のケトン類、酢酸エチル等の酢酸エステル類等がある。また、付着力を弱めるものとして水が利用でき、水が0.1〜30容積%含有する揮発性皮膜定着剤として用いる。この定着剤は、物性の違いの1つである保湿性が利用できる。
前記の皮膜の接着機構は、皮膜の一部が皮膜定着剤(溶媒)で変質されることによる。図7は、この揮発性皮膜定着剤による被着の概念図である。これとは別に、皮膜定着剤に接着機能を持たせて、この付着力で皮膜を被着させる手段がある。皮膜定着剤は、溶液型又は分散型接着組成物とし、アルコール系溶剤を主溶剤とした液状又はペースト状で用いる。実質的には、水系エナメル液及び水系接着剤に類似するが、光沢、耐摩耗性、優れた耐水性は要求されない。図8は、この接着性皮膜定着剤による被着の概念図である。
本発明は、フィルム又はシート状の皮膜を爪に被覆する美爪化粧料において、フィルム又はシート状のエナメル皮膜と、揮発性アルコール系溶剤が65容積%以上の溶剤と固体接着成分が全重量の3〜45重量%の組成物である皮膜定着剤と、25℃における表面張力が30mN/m以下の流動組成物である仕上げ剤からなり、次の条件(A)〜(D);
(A)エナメル皮膜は皮膜定着剤により変質して軟化する。
(B)エナメル皮膜の被着処理過程で、皮膜定着剤により変質したエナメル皮膜は、皮膜定着剤による爪への接着力より引張強度が小さくなる時間が3分以上有する。
(C)仕上げ剤はエナメル皮膜への変質作用と皮膜定着剤への溶解作用がない組成物である。
(D)皮膜定着剤の固体接着成分は、剥離又は化粧用溶剤に溶解する組成物である。
を満たす美爪化粧料である。
皮膜定着剤の固体接着成分は、溶剤で均一に溶解又は分散されたもので、溶剤が揮発することで皮膜を爪に被着する。揮発過程の溶剤は、皮膜を密着させる軟化と、引張強度を接着力より小さくする分断条件を発現させる。固体接着成分には、粘着剤、剥離機能を持つ接着剤が含まれる。接着成分は、安全な手段で爪から除去できる組成物が条件となる。「化粧用溶剤」は、化粧品原料基準で認められている成分で構成された溶剤組成物である。
本明細書において「揮発性」とは、皮膚又は爪に接触すると1時間以内に97重量%以上が蒸発してしまう傾向を意味する。揮発性成分は、肌に相当する温度(30℃)と大気圧(1atm)の条件下において液状で、蒸気圧が好ましくは0.7kPa〜40kPaの蒸気圧を有する物質である。組成物の不揮発性成分量は、この条件下での蒸発残分量から決定する。
皮膜定着剤による「接着性」及び「皮膜の接着力と引張強度」の評価は、ケラチン材質である海亀のべっ甲を平滑にした板を被着試験片として用いる。接着性は、和紙で裏打ちされた巾25mmの皮膜と試験片の間に、各皮膜定着剤を充填し、指で押圧して付着させ、室温で3時間乾燥後の接着力で評価する。剥離力は引張速度300mm/分で作用させる。90度方向剥離力が0.8N/25mm以上で接着性を有するものとする。皮膜の接着力と引張強度の関係は、巾25mmの皮膜の片面に各皮膜定着剤を塗布し、被着試験片に長さの1/2面を指で押圧して付着させ、非付着部を90度方向に引張り、引裂力を作用させる。30分以内に、付着面が剥離せずに皮膜が破断する状態が、時間として3分以上のあれば条件を満たすものとする。これは皮膜物性の分断条件と分断の作業条件を確認する引裂試験である。図9は皮膜の接着力と引張強度の関係図である。皮膜は軟化して一時的に弱くなり、その後乾燥して元の強度に戻る。接着性が同じものとして、接着力より強度の強い皮膜Bは、(b1)と(b2)の間に分断作業が限られ、時間的制約を受ける。接着力より弱い皮膜Aは(a1)以降で実施でき、この制約を受けない。
前記化粧料から仕上げ剤を省いた美爪化粧料は、低臭気、処方時の乾燥性、優れた密着性、非溶解性の特徴がある。この特徴を活用して、フィルム又はシート状の皮膜を爪に被覆する美爪化粧料において、フィルム又はシート状のエナメル皮膜と、揮発性脂肪族アルコールが90容積%以上の溶剤と固体接着成分が全重量の0〜45重量%の組成物である皮膜定着剤からなり、次の条件(A)〜(B);
(A)エナメル皮膜は皮膜定着剤により変質して軟化する。
(B)皮膜定着剤が固体接着成分を含まない場合、エナメル皮膜の少なくとも片面は皮膜定着剤により成分の一部が変質して接着性を有する。
を満たす美爪化粧料を、動物用美爪化粧料とした。固体接着成分を含まない定着剤は、揮発性皮膜定着剤である。「動物」は、人間を除く哺乳類、鳥類、爬虫類で、爪を有する動物である。
皮膜は、主に塗工により皮膜形成する組成物で、主体となる層を構成する。ニトロセロース系樹脂やアクリル系樹脂等の美爪化粧用の皮膜形成剤が挙げられる。皮膜厚みは、0.03〜0.5mmが適用できる。皮膜は、有色又は無色で単層又は多層で構成され、皮膜の最適化の多くは多層で試みられる。この多層皮膜の場合の表現を定義する。皮膜が多層で構成される時、「外層」は、皮膜を被覆した時に表面に現れる層であり、「内層」は爪と接する層である。「被膜」は、皮膜上に層となるもので、単独では強度が極めて小さく、層の破断は皮膜に依存する。また。粒子又は箔状のものが層となることも含まれる。
皮膜を多層構造とした場合は、外層と内層は機能層として特徴を持つ成分で構成される。外層では、押圧時の付着防止性を改善するため、外層が離型性被膜層の皮膜である美爪化粧料。また、押圧時の付着防止性と押し跡防止性を改善するため、外層が耐皮膜定着剤性被膜層の皮膜である美爪化粧料が挙げられる。単層の場合は、外層は皮膜の外面である。内層では、除光液を用いなくても除去できる、内層が剥離性樹脂層の皮膜である美爪化粧料が挙げられる。剥離性樹脂層は、粘着剤や剥離性皮膜形成剤が該当する。また、着色層には、絵柄や意匠を印刷等で着色した層を設けることができる。
皮膜化粧料の形態として、皮膜の少なくとも対向する2辺が台紙に固着されている皮膜の美爪化粧料が挙げられる。適度な剛性を有するシート状の台紙に、皮膜を橋架け状態で配置することで、各種の装置での取り扱いが容易となる。また、皮膜断面の少なくとも一方が端方向に除変して薄くなっている皮膜の美爪化粧料は、皮膜の継ぎ足しが可能となり、エナメルの修正等に用いることができる。
仕上げ剤の成分は、皮膜への変質作用がない有機珪素化合物、脂肪族炭化水素化合物、塩素又は臭素原子を全く含まない有機フッ素化合物、これらで変性した有機化合物、洗剤に分類される界面活性剤、動植物油の油剤類が挙げられる。当該表面張力値以下の油剤は、1種又は2種以上を混合した組成物で用いられる。当該表面張力値を超える油剤は、表面張力値の低い油剤の1種又は2種以上で調製して、当該表面張力値以下にして用いられる。表面張力値の上限は、付着力の弱いアクリル系樹脂、剥離性樹脂、粘着剤等の適用値である。
仕上げ剤の「変質作用」とは、化学的(溶解、軟化、膨潤)と物理的(擦り傷、研磨傷)な作用で皮膜の物性が劣化する現象である。具体的には、エナメルの機能である光沢度、平滑度、強度(耐摩耗性など)の低下を意味する。組成物の化学的変質性の有無は、浸漬試験で皮膜の光沢度、硬度、膨潤度を比較判定する。浸漬時間は、仕上げの実作業から、25℃で20分が妥当と考える。また、物理的変質性は光沢度を比較判定する。但し、エナメルの機能としての物性度が向上する成分は、変質成分に該当しない。従来の除光液は、少なくとも1つの該当成分が含まれ、変質が生じる。「溶解作用」とは、25℃で20分の浸漬で液状化する作用である。
これらで構成された美爪化粧料は、皮膜と爪面の間に皮膜定着剤を介在させ、皮膜を変質させて爪を包含する指先に被着さる工程と、1又は複数の該工程後に仕上げ剤で皮膚部に付着した皮膜を除去する化粧方法で実施される。爪面は、既に皮膜を被覆した爪面も含まれる。皮膜は、通常爪を包含する大きさで用いるが、目的に応じて小さなものや意匠形状に裁断したものが用いられる。皮膜は裏面に支持体のない状態で取り扱う。介在する皮膜定着剤の溶媒成分は、爪側から皮膜を変質させ、皮膜を通過して揮発する。この過程で、皮膜には軟化と接着性が発現する。この状態で、皮膜のはみ出しを気にせず押圧して、爪の曲面へ均一に密着させる。皮膜表面は、溶解性と溶解部を制御されているため、指触乾燥状態である。そして、硬化乾燥させることで、元の皮膜と同等の光沢と硬さが得られる。
乾燥状態は、JIS(日本規格協会)で区分された表現を用いる。「指触乾燥」は、軽く触れても指にエナメルが付かないが、強く押えると跡が付く状態である。通常のエナメル商品では、この状態の乾きが乾燥性の目安となる。「半硬化乾燥」は、指先で静かに擦ってもエナメル面に擦り跡が着かない状態である。「硬化乾燥」は、エナメルに通常の生活に耐える摩耗性と艶を与える乾燥である。速いもので1時間、普通のものは3〜6時間を必要とする。
本発明は、はみ出しを容認する被着法で、前工程では皮膚部にも皮膜が付着した状態である。揮発性及び接着性の皮膜定着剤でも同じ状態である。このはみ出し部の除去方法は、仕上げ剤の存在下で、少なくとも皮膚を変形させる作用を与える。この作用で皮膚に付着した皮膜のみが剥離する。変形手段は、押圧、摺動、擦過などの要素を組み合せて実施する。変形作用は、本人の爪やエナメル面を傷付けないスティック等で与えることができる。
本仕上げ剤は、除光液と異なり爪のエナメル面に触れてもよい特徴がある。これを有効に活用して、払拭材で拭き取りと変形を同時に作用させると効率が良い。払拭材は、布帛、拭き取り紙、フェルト芯等が採用できる。例えば、指先を仕上げ剤で濡らし、払拭材でマッサージすると、はみ出し部の皮膜のみが剥離して仕上げが終了する。この操作性は、自動的に近いものとなる。次に、油剤類で構成される仕上げ剤は、払拭時に膜上滑走(滑り)が発生して、仕上げ効率を悪くする。この改善手段として、仕上げ剤と、0.0001〜1.0デニールの極細繊維を主体とした払拭材の美爪化粧具とする。「主体」とは、払拭面に接触する繊維の40%以上を意味する。布帛やフェルト等の繊維を極細繊維で主体に構成すると、膜上滑走が防止でき、表面張力の高い組成物でも同じ効果が得られる。
本発明は、既に愛用しているエナメル液から、皮膜を製作する化粧具を提供する。この化粧具は皮膜形成具である。エナメル塗膜に対し離型性を有するシート又は板と、シート又は板の少なくとも一辺に皮膜断面に相当する切り欠きあり、該切り欠き深さは少なくとも一方の端方向に除変して浅くなっている美爪化粧具である。また、エナメル塗膜に対し離型性を有する表面からなるシート又は板に、皮膜断面の少なくとも一方が端方向に除変して薄くなっている皮膜に相当する凹部がある美爪化粧具でも製作できる。これらの化粧具で製作した皮膜は、修正用の美爪化粧料に用いる。通常のエナメル液の固形分は20〜35%である。「皮膜断面に相当する」は、この固形分を考慮して、乾燥後の皮膜断面を想定する意味である。乾燥後は、想定する皮膜断面に近い厚み及び形状にできる。
本発明に適用する皮膜を、ネールアート等で製作する台紙を美爪化粧具として提供する。この化粧具は、孔又は切り欠きを有するエナメルが定着できるシートと離型シートで構成する台紙で、該孔又は切り欠きは爪面又はつけ爪面の投影面より広くした。提供する台紙の構成は、シートと離型紙、片面に粘着層を有するシートと離型紙が挙げられる。デザインした皮膜は、皮膜定着剤で自爪又はつけ爪に被着する。
本発明では、爪と皮膚との物性の違いを利用することで、半自動的に理想とする位置で皮膜を貼り分けられる。この貼り分けラインは、裁断、刷毛塗り、拭き取りでは容易に実現できない明瞭さがあり、塗りに相当する仕上がりより優れる。必須作用から溶解作用を除いたはみ出し仕上処理は、仕上げた爪部の接触が可能となり、技能を必要としない作業性が実現でき、利き腕でない作業でも容易である。また、マッサージしていると自然に仕上がる美爪化粧のスタイルが創出できる。
フィルム化の効果である製造過程での溶剤回収と再使用に加え、安全かつ不快感のない溶剤で、美粧性の優れた貼着とはみ出し処理が実施できる。これにより、化学物質に関わる課題を解決した品質の良い化粧料を提供し、美爪化粧において快適な環境が得られる。
本発明の特徴である、処方時の指触可能な乾燥性や刺激臭の低減は、動物用エナメル、修正用エナメル、ネールアート、多層化色調、試用サンプル等の広範囲な商業的応用に実施できる。
美爪化粧料の説明の前に、本発明の化粧方法を説明する。図10は、揮発性皮膜定着剤で皮膜1を被着した指部の断面図である。図11は、接着性皮膜定着剤3bで皮膜1を被着した指部の断面図である。工程の1つは、皮膜と爪面の間に皮膜定着剤を介在させ、皮膜を変質させて爪を包含する指先に被着させる工程である。通常は、爪の展開面より広い皮膜を、単独で取り扱う。皮膜裏面の離型シート等の支持体は、変形性を拘束してしわ等の原因となる。また、境界の溝部への密着を不安定にする。皮膜定着剤の介在方法は、揮発性皮膜定着剤では、爪面に直接滴下して濡らす手段と、平滑な板面に滴下した液を皮膜の裏面に付け、表面張力で均一に濡らす手段がある。また、先端が細いノズル様の容器で、爪と皮膜の間に供給してもよい。接着性皮膜定着剤では、爪部に直接塗る手段と、皮膜の裏面に塗る手段がある。但し、従来のエナメル併用法のように、はみ出しや刷毛目がないように塗る必要はない。接着性皮膜定着剤を部分的に塗布した後に、揮発性皮膜定着剤を用いる併用法でもよい。例えば、爪部の外周のみに接着性皮膜定着剤を塗り、その後に揮発性皮膜定着剤を用いて被着する。接着性皮膜定着剤はフェルトペンで爪郭に沿って塗る。
次に、皮膜定着剤の乾燥前に皮膜を爪面に押し付けると、皮膜は皮膜定着剤の接触と同時に、爪側から除々に軟らかくなる。この状態の間に、指や乾いた筆等で軽く押し、図10、図11のように爪全面に密着させる。厚みが0.05mm以下の皮膜では、皮膜定着剤の表面張力と軟化で、押えなくても自然に密着する。この被着工程は、1又は複数で実施される。揮発性皮膜定着剤の複数工程では、各色の薄い皮膜を重ねていくことで、塗りでは実現できない特異な色調を出すことができる。同じ組合せの皮膜でも、重ねる順序を変えることで、色調が異なる。揮発性皮膜定着剤は揮発して消滅するが、接着性皮膜定着剤3bは接着層として残る。
一般に、溶剤が直接触れた面は、溶剤との濃度差や表面張力差のエネルギー変化で荒らされ、白化や光沢の劣化が発生する。しかし、内部(裏面)から溶解した表面は、緩やかに溶解と乾燥が進み、白化等を防止して元の皮膜状態が保てる。溶解性を調整した皮膜定着剤の軟化は、溶媒が皮膜を通過して揮発する過程で、皮膜表面の液化(過度な溶解)を防止する。密閉された爪側と揮発可能な外面では、軟化度と接着性は常に爪側が大きく、指触乾燥状態で押圧接着できる。強く押すと指紋の跡が付くため、加減は必要である。溶解部と溶解性の制御による相互作用は、エナメル質のフィルム状組成物を優れた密着性で接着し、従来の美粧性を継承する。
被着工程後は、図12(イ)のように皮膜1のはみ出し1fが、皮膚部に付着した状態である。本発明は、境界8よりはみ出した皮膚部に付着した(a)範囲の皮膜のみを、仕上げ剤で除去処理する。(b)範囲は、爪などで容易に破断できる。この範囲は、従来の技術でも問題とならない処理範囲である。はみ出し1fを含む範囲を仕上げ剤で濡らし、はみ出し1f部を変形させると、皮膚部に付着したはみ出し1fは剥離して、爪に被着した皮膜1は剥離せずに残る。結果、図12(ロ)のように皮膜1は境界8で分断され、爪部と皮膚部を明瞭に分け、「塗りに相当する仕上がり」が得られる。剥離は、揮発性皮膜定着剤の場合は皮膚と皮膜1の間、接着性皮膜定着剤の場合は皮膚と接着性皮膜定着剤3bの間で発生する。
仕上げ処理のタイミングは、皮膜定着剤の溶解性と揮発性、皮膜の下層の付着力、皮膜の強度により異なるが、密着後から処理でき、好ましくは密着後2〜5分である。図9の関係図で示した皮膜Aでは、(a1)時点以降であれば可能である。強度の強い皮膜Bでは、(b1)と(b2)時点の間に限られる。多くの皮膜は皮膜Aに該当し、ある程度乾燥させてから仕上げ処理する。乾燥は爪郭の奥が最も遅く、この部位が基準となる。また、夏期と冬期では乾燥が異なる。被着作業の手順は、十指を被覆後にはみ出しを処理すればよい。
本発明に適用される皮膜は、化粧用溶剤による溶解又は剥離する組成物で、主要皮膜又は下層皮膜を形成する。また、皮膜定着剤の揮発成分が通気する構造であって、揮発性皮膜定着剤を用いる場合は、爪と接触する面が皮膜定着剤によって接着性を発現する組成とする。これら皮膜層は、通常の溶剤系及び水系美爪料に用いられる皮膜成分が好適である。皮膜成分は、皮膜形成剤、成膜助剤、各種安定剤、目的の着色剤、光沢剤及び保護剤で構成される。これら製剤を適した溶媒で調製及び調色してエナメル液とし、塗布又は印刷の皮膜形成手段で目的の皮膜構造を得る。機械塗装で皮膜形成する場合は、塗装装置、印刷装置、コータ装置等に適したエナメル液に調製する。
皮膜は単層又は多層で構成され、多層の場合は、各層を目的が達成できる成分で形成する。例えば、通常の美爪処方では、爪からベースコート、カラーエナメル、トップコートの順に塗布する。ベースコートは、爪の保護及びカラーエナメルの付着性と発色を向上させる成分で構成される。トップコートは、艶と耐性を向上させる成分で構成される。本発明では、内層にベースコート、中間層にカラーエナメル、外層にトップコートの3層で皮膜を構成できる。本発明では、軟化しても爪に対する接着力より強い層、耐皮膜定着剤性のある層が含まれると、皮膜は分断できず適用できない。例えば、一般的な布帛、紙及び長繊維からなる複合層、耐溶剤剤の強いポリエチレンフィルム等の層を含む皮膜等が挙げられる。
皮膜形成剤は、美爪料に慣用されている蒸発乾燥型、酸化重合型の皮膜形成樹脂であれば使用できる。例えば、ニトロセルロース、セルロース誘導体、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、トルエンスルホンアミド系樹脂、ビニール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、これらの変性樹脂が挙げられる。改質用樹脂として、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。天然樹脂として、セラック樹脂、ロジン、コーパル等、これらの変性樹脂が挙げられる。必要に応じて、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本皮膜形成剤は、揮発性アルコール系溶剤にて変質して、軟化又は接着性を示す成分に調製する。
ニトロセルロース系では、例えば、ニトロセルロースRS1/2、ニトロセルロースLIG1/2、ニトロセルロースHIG1/2、ニトロセルロースHIG1/4、ニトロセルロースHIG1/8等が挙げられる。また、皮膜形成樹脂としては、例えば、エポキシ変性アルキッド樹脂等の変性アルキッド樹脂、トルエンスルホンアミドエポキシ樹脂、ショ糖安息香酸エステル樹脂、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル樹脂、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アクリル酸アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレンマレイン酸樹脂エステル、ヒドロキシセルロース系化合物、カルボキシセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
これら皮膜形成剤の溶剤は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、アセトン等の非芳香族系溶剤が挙げられる。これら溶剤は1種又は2種以上を混合し、設備に適したものを用いる。安全性を考慮した場合は、非芳香族系溶剤が望ましい。
上記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じた成分を配合できる。例えば、可塑剤、粉体、ゲル化剤、粘度調整剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、消泡剤、美容成分、香料等が挙げられる。可塑剤としては、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル系、アジピン酸ジアルキル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジn−アルキル等のアジピン酸エステル系、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル系、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、アクリル酸アルキルコポリマー等の液状樹脂系可塑剤、カンフル等が挙げられる。液状の安定化に関わる沈降防止剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤等は省くことができる。
粉体としては、体質顔料、白色顔料、有色顔料、有機粉末、パール剤、ラメ剤、有機色素等が、皮膜の着色剤、粘度調整剤、補強剤として用いられる。具体的には、タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、シリカ、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭化ケイ素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、有機変性ベントナイト、酸化チタン、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、コンジョウ、群青、酸化鉄雲母、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、シリコンパウダー、結晶セルロース、雲母チタン等が挙げられる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を配合する。
これら皮膜形成剤の組成では、多様な皮膜が製作できる。本発明の被着作業は、皮膜仕様により作業性及び留意点が異なる。この差異は皮膜の物性と要求される美観により左右される。具体的に、商業的に入手可能なエナメル液を分類して説明する。各群は、硬さ及び伸びに関する剛性と光沢による化粧効果で分類した。
A群は、皮膜形成樹脂と無色又は有色の着色料で構成されたエナメル。塗膜物性は硬くて脆い。美観は皮膜形成樹脂の反射光沢や艶で左右される。一例を挙げれば、レブロン(株)製「スピードシャイン(商標)022番」、(株)資生堂製「セルフィット(商標)NA25」、(株)資生堂製「FSPハヤブサネール(商標)20−012」、トップコート類(オーバーコート)等である。
B群は、A群とは塗膜物性が異なり柔軟性のあるエナメル。一例を挙げれば、水系エナメル、アクリル絵具、ベースコート類等である。
C群は、着色顔料で色調を出し、パール顔料やラメ剤で特殊光沢を出すエナメル。塗膜物性は硬くて脆い。美観は特殊光沢顔料の光輝光沢と皮膜形成樹脂の光沢で左右される。パール調、ラメ調、剤乳白調などと呼ばれ、刷毛の筋や塗りむらがよく目立つ。一例を挙げれば、(株)テクノラボ製「ミスエレガンス(商標)48番」、ベルジュラックジャパン製「ワトゥサ(商標)no.337」、(株)資生堂製「FSPハヤブサネール(商標)20−006」等である。
D群は、C群とは塗膜物性が異なり柔軟性のあるエナメル。一例を挙げれば、(株)資生堂製「NA‐PK103」、(株)資生堂製「ピエヌ(商標)OR710」、鐘紡(株)製「ミューク(商標)PK−117S」、ベルジュラックジャパン製「ワトゥサ(商標)no.330」等である。
E群は、マイカ、樹脂片、金属片等の鱗片状の光輝性顔料や光輝粉を多く含むエナメル。美観はこの特殊顔料の均一性で左右され、皮膜形成樹脂の光沢の影響は小さくなる。薄く塗ると顔料が不均一となり見苦しい、逆に厚く塗るとキラキラ感でごまかしがきく。一例を挙げれば、カネボウコスミリオン(株)製「MFCピートニュアンス(商標)17番」、鐘紡(株)製「ミューク(商標)GD−10」等である。
本発明の皮膜の密着機構は、皮膜定着剤による皮膜の軟化作用を利用する。この軟化時に強く押圧すると、皮膜面に指紋の跡が付き、手加減が必要である。美観が皮膜面の平滑度に左右されるエナメルは、この影響を多く受ける。皮膜の柔軟性はこの押圧を軽減できる。本発明の被着作業の難易度は、手加減の必要度と関係し、化粧効果と皮膜剛性に左右される。最も手加減が必要な群はA群で、C群、B群、D群、E群の順に軽減する。E群は手加減なしで実施できる。皮膜の剛性は皮膜形成樹脂と可塑剤や体質顔料で決定され、これらを調製して皮膜の最適化を図る。これとは別に、皮膜の内外層に機能を付与することでも最適化が図れる。
皮膜が皮膜定着剤によって軟化した時、皮膜外層に離型性を付与することで、押圧時の付着防止性を向上できる。硬化又は非硬化性の離型性組成物を表面処理することで、離型性被膜層が得られる。離型性組成物として、ポリシロキサン系、フッ素系、石油パラフィン系等のケミカルワックス、カルナバ蝋、蜜猟、キャンデリラ蝋等の天然蝋ワックスが挙げられる。車、家具、繊維等に用いられている、艶出し用、防水用、保護用の表面処理剤が適用できる。皮膜に塗り付け、スプレー法、ロールコーター法、スキージ法等で塗布して乾燥被膜を得る。この表面処理は、組成物を存在させるだけでよく、フィルム形成性を必須としない。この処理で軟化皮膜面を強く押しても付着を防止できる。また、軟化皮膜面を擦ることが可能となり、凹みが発生しても修正できる。非硬化性の低表面張力組成物は、軟化表面を平滑にして優れた光沢面が得られる。
皮膜が皮膜定着剤によって軟化した時、皮膜外層に耐皮膜定着剤性を付与することで、押圧時の付着防止性と押し跡防止性を向上できる。皮膜定着剤性で変質しない組成物を外層に被膜化して、表面のみを軟化させない構造である。被膜層として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリシロキサン樹脂、フッ素樹脂等及びその混合物の硬化組成物が挙げられる。これら樹脂を重合させて、耐皮膜定着剤性の硬化被膜層を得る。溶剤型、エマルション型、無溶剤湿気硬化型等のコーティング剤を、スプレー法、ロールコーター法、スキージ法等で塗布する。また、オフセット印刷、グラビア印刷、パッド印刷等で絵柄と供に処理してもよい。適した被膜厚は、樹脂強度により異なるが1〜5μm厚が好ましい。厚すぎると、はみ出し処理時に分断の支障となる。
硬化組成物として、光重合開始剤で重合を起こす各種のUV/EB硬化型樹脂が挙げられる。照射装置で電子線や紫外線を照射し、急速に三次元硬化膜を形成できる。生産性の向上、低VOC、省エネルギーの利点以外に硬化調整が自由となり、プリンターでの塗布及び絵柄印刷が可能となる。例えば、硬化型インクを採用した藤本写真工業(株)製「ZUND UVjet215−C」プリントシステム、(株)コムテックス製「Inca Eagle H」プリントシステム等が挙げられる。他に、有機又は無機粉体が挙げられる。また、アルミ、金、銀、銅、亜鉛、チタン等の金属蒸着膜や金属箔が、揮発を妨げない範囲で使用できる。例えば、分断された箔からなるデザイン箔、消粉(箔から作る粉末)等が挙げられる。
皮膜の内層が剥離性樹脂層である美爪化粧料は、除光液を用いなくても皮膜を除去できる機能を付与できる。これが加わると、美爪化粧の安全衛生面では、完成度の高いものとなる。皮膜を剥離性樹脂で被着しても、爪と皮膚の物性の違いは活用できる。一般に、剥離性美爪料は、艶と日常生活での摩耗や欠けに劣る傾向がある。本発明は、外層のニトロセルロース系エナメル等でこの欠点を補い、美粧性と機能を具備する。剥離性樹脂には、剥離性皮膜形成剤や粘着剤が該当する。剥離性樹脂層の厚さは目的によって適宜決定されるが、通常5〜50μmであり、好ましくは剥離性皮膜形成剤では20〜35μm、粘着剤では10〜20μmである。粘着剤層は、基材となる皮膜層を軟化して密着させるため、通常の粘着テープに比べ薄くできる。剥離性樹脂は、溶剤型、エマルション型、UV/EB硬化性等の無溶剤型、ホットメルト型等で用いられる。皮膜層に塗布する方法としては、例えば、粘着剤に採用される、流エン法、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターブレード法等が挙げられる。
剥離性皮膜形成剤は、接着剤の観点では接着力に劣る組成物である。水系エナメルに採用される皮膜形成樹脂の多くが該当する。例えば、水溶性ポリマーとして、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。ポリマーエマルションとして、乳化重合で製造されるアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、スチレン・ブタジエン樹脂系、スチレン・アクリル樹脂系、合成ゴム系、オレフィン樹脂系、アルキッド樹脂系、ポリウレタン樹脂系等が挙げられる。また、通常のエナメル組成物にパラフィン、シリコーン等の剥離剤を配合して、付着性を調整してもよい。剥離性皮膜形成剤は、後記の粘着剤と類似する成分が多い。異なる点は、軟化点のガラス転移点温度(Tg)が高いことである。軟化点は40℃以上のものが該当する。これら粘着性の皮膜形成剤は、非皮膜定着剤によって粘着性又は接着性を活性化させて、爪に被着させる。
粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、酢酸ビニル系等の通常の粘着テープ類に慣用されるものが挙げられる。これらの中ではアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤では、アクリル酸エステルとして、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。また、官能性単量体として、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体が挙げられる。形態としては、溶剤型とエマルション型で用いられ、溶剤型は、前記アクリル系ポリマー、溶剤、架橋剤、必要に応じて粘着付与剤等から構成される。一方、エマルション型は、通常前記アクリル系ポリマー、乳化剤、水性溶媒、必要に応じて粘着付与剤等から構成される。ゴム系粘着剤では、天然ゴム系及び合成ゴム系粘着剤があり、合成ゴム系粘着剤では、例えば、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用する。必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤等を配合できる。
従来、皮膜形態のエナメルは、離型性台紙に定着して取り扱われる。しかし、本皮膜は、接着層を設けることができないものなど、様々な化粧料がある。軟化させて分断する性質上、皮膜は塗膜程度に薄くし、裏面に保持基材がないほうが良い結果を得られる。また、薄い皮膜では粘着力で破断して、取り扱いが不便となる。このため、定着の弱い皮膜は、適度な剛性を有するシートを台紙とし、皮膜の少なくとも対向する2辺を台紙に固着し、橋架け状態で配置する。台紙は、紙、合成樹脂、織物からなる葉状又は帯状のシートが挙げられる。固着面に粘着層を設けた粘着シートにしてもよい。皮膜は台紙にを重ねて、少なくとも2辺を接着手段で固着する。また、切り欠き又は孔を設け、開口部外周に少なくとも2辺を接着手段で固着する。皮膜形成は、エナメル液をスクリーン印刷等で直接塗布する方法と、裁断された形成皮膜を接着する方法がある。台紙に皮膜を保持することで、自動販売機、印刷機、プリンタ装置等で取り扱う場合に好適となる。さらに、ネールアートで絵柄を描写する場合にも利便性が良い。帯状にすると自動販売機等へ容易に装填できる。この形態の装置では、搬送過程で指定された絵柄を印刷して、販売することも可能である。また、規格サイズの用紙に皮膜を固着配置することで、プリンター等で絵柄を印刷することが可能となる。
皮膜定着剤に有用なアルコール系溶剤とは、低級一価アルコール類として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール 、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等の炭素原子が1〜7個を含有するアルコールが挙げられる。低級多価アルコール類として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、グリセリン等が挙げられる。これら溶剤の1種又は2種以上を混合して用いられる。これらのうち、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールの揮発性アルコールが好ましく、エタノールを主体として調製することが特に好ましい。他のアルコール類及び不揮発性アルコール類は、揮発性、溶解性等の調整に用いられる。また、高級アルコール類は、付着性を損なわない範囲で配合でき、エモリエント剤、保湿剤に活用できる。
皮膜定着剤のアルコール系溶剤残部は、主に溶解性の制御に用いられる範囲である。主に皮膜の付着力を強めるものとして、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、アシルアセテート、エチルグリコールアセテート、メチルグリコールアセテート等の酢酸エステル類、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類、エチルエーテル、カルビトール 、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル化合物類が挙げられる。他に、目的を損なわない範囲で、エナメル用溶剤及び除光剤の慣用成分が配合できる。
これに対し、皮膜の付着力を弱めるものとして水が配合できる。皮膜定着剤は水を全容量の0.1〜30容積%含有して用いられる。好ましくは5〜15容積%である。配合された水は、付着力を弱めるだけでなく、爪と皮膚の物性の違いの1つである保湿性が利用できる。皮膜の被着過程で、水は保湿性が良い皮膚面の付着力を低下させる。さらに、押圧時の変形により、この付着力の差が増幅される。保湿性の差を利用することは、はみ出し処理の際に有利となり、オリーブ油や洗剤程度の表面張力値油剤で可能となる。他に、爪への負担を軽減する。この特徴は揮発性皮膜定着剤で発揮できる。この皮膜定着剤は、短期的な用途であるパーティー、試用、販促サンプル等の美爪化粧に用いられる。また、アルコール系溶剤に溶け易い、アクリル系樹脂系、ビニル系樹脂系皮膜の溶解性の調整にも用いられる。
上記の溶剤類で構成される皮膜定着剤が、揮発性皮膜定着剤である。これに対し、皮膜定着剤自体に接着性を付与したものが、接着性皮膜定着剤である。これは、揮発性皮膜定着剤に固体接着成分を配合して溶剤型又は分散型の組成物とすることで得られる。固体接着成分は、前記の皮膜に用いられる皮膜形成剤、粘着剤、剥離性皮膜形成剤が挙げられる。必要に応じて、可塑剤、架橋剤、粉体、顔料、ゲル化剤、粘度調整剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、香料等を配合できる。例えば、ベントナイト、高純度ソジウム・モンモリロナイト、有機ベントナイト等のスメクタイト系粘度鉱物をチクソトロピ−付与剤としてペースト状に調製できる。固体接着成分は、全重量の3〜45重量%、好ましくは10〜15重量%とする。アルコール系溶剤は皮膜を軟化させる役割を担う。実質的に、アルコール系エナメル又はアルコール系接着剤である。この定着剤に適用する皮膜は、機能としての接着性を発現させる必要はない。
固体接着成分に用いられる接着性付与樹脂は、例えば、トルエンスルホンアミド樹脂、ロジン、変性ロジン、ロジンエステル、ダンマルガム、アルキッド樹脂、ケトン樹脂、クマロン−インデン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、セラック、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。重量平均分子量100〜5000、好ましくは200〜1000、軟化点0〜150℃、好ましくは50〜100℃の樹脂から選ばれる。また、樹脂の軟化点が40℃未満であると、乾燥皮膜が粘着性を示し、粘着剤として利用できる。150℃を越えると好ましい接着力を得ることはできない。軟化点とは、環球法によって測定した軟化温度である。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
皮膜定着剤の容器は、滴下構造の容器、刷毛やフェルト等の塗布具を備えた容器、定着剤を含浸させたフェルト、綿体、スポンジを収容した容器が挙げられる。揮発性皮膜定着剤では滴下構造の容器が適している。被着不良部は揮発性皮膜定着剤を皮膜の裏面に補給することで部分的に再貼着できる。このため、皮膜定着剤の容器は先端が細いノズル状のものが良い。接着性皮膜定着剤では塗布具を備えた容器が適している。例えば、蓋に刷毛を備えたエナメル液容器や、フェルト又は刷毛のペン構造の塗布具が挙げられる。
仕上げ剤は、低表面張力の物性を示し、皮膜に対する変質作用及び接着性皮膜定着剤に対する溶解作用のない組成物に構成する。化学的な変質又は溶解作用を決める指針として、配合化学ではその既知物質のSP(Solubility Parameter:溶解度因子)値が日常的に用いられる。このSP値の数値が離れているほど溶解作用等が小さくなる。また、粘度が小さくなるほど作用が強くなる。一般の皮膜形成樹脂に採用されるニトロセルロースやアクリル系樹脂などのSP値は9.1〜12である。従来のアセトンなどの除光液は10〜12の範囲の油剤で、その相溶性を活用したものといえる。
仕上げ剤は、有機珪素化合物[SP値:5.5〜7.5]、脂肪族炭化水素化合物[SP値:6〜8]、塩素又は臭素原子を全く含まない有機フッ素化合物[SP値:5.5〜6.5]、これらで変性した有機化合物、洗剤に分類される界面活性剤、動植物油から1種又は2種以上を混合して、当該表面張力値以下にして用いられる。当該表面張力値を超える油剤は、表面張力値の低い油剤の1種又は2種以上と調製して、当該表面張力値以下にして用いられる。SP値の差は、主要皮膜形成樹脂に対し非極性側2以上が好ましい。また、当該表面張力値を超えない範囲では、保湿剤、湿潤剤、エモリエント剤、艶出し剤などの油剤や薬剤を加えることで、皮膚の恒常性維持などの効能を付与できる。
有機珪素化合物は、直鎖又は分枝状のポリシロキサンとして、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。環状のポリシロキサンとして、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等が挙げられる。ジメチルシロキサン共重合体として、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体等が挙げられる。変性ポリシロキサンとして、ポリエーテル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン等が挙げられる。他に乳化型揮発性ポリシロキサン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上の混合物が使用できる。
これらは、シリコーンオイルといわれるもので、重合分子量により、揮発性、低揮発性、不揮発性のものが存在する。低重合度のジメチルポリシロキサン(25℃にて5cst未満)が低表面張力の物性を示し好ましい。また、揮発性であるため、使用後のベタツキなどの汚染がなく、拭き取りが不用となる。さらに、極性溶剤を含め他の油剤との相溶性もあり好ましい。不揮発性のものは、過度な使用では拭き取りが必要となる。しかし、この残留物が保湿剤や艶出し剤として利用できる。仕上げ剤は、30℃において90重量%以上の揮発性成分で構成されていると、使用後の拭き取りが不用となり、使い勝手が良い。
炭化水素化合物は、合成又は軽質石油成分の精製手段で得られ、一般に芳香族系、ナフテン系及びパラフィン系炭化水素に分類される。これらの中で溶解力の低いパラフィン系炭化水素が採用できる。これは流動パラフィンとも言われ、主としてノルマルパラフィン、イソパラフィン及び単環シクロパラフィンの3成分の混合物である。この中でも炭素数が6〜10のノルマルパラフィンとイソパラフィンが好適である。このパラフィン系炭化水素は洗浄剤として利用されるが、欠点として洗浄力が弱く、他の溶剤と共沸又は擬似共沸状態で使用される。単体では脱脂程度の洗浄能力である。この欠点は洗浄物を傷めない利点となり、本発明では変質させない成分として活用できる。ノルマルパラフィンとして、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンが挙げられる。イソパラフィンとして、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカンが挙げられる。単環シクロパラフィンとして、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上の混合物が使用できる。ただし、単環シクロパラフィンはSP値が8以上となり、前記のものに比べ溶解作用が大きく、適用できる皮膜樹脂の制限を受ける。不揮発性のものは保湿剤や艶出し剤として利用できる。パラフィン系油剤は、精製レベルによっては、硫黄化合物や有害金属などの不純物が多く含まれる。このため、化粧品原料基準、第十四改正日本薬局方及び食品添加物基準、又はこれらに準じた規格における純度試験及び基準値の少なくとも1つに合格しているものが、安全衛生面において好ましい。
有機フッ素化合物は、塩素原子を全く含まない化合物としてパーフルオロカーボン類(PFC)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)、含フッ素化合物のハイドロフルオロエーテル類(HFE)が挙げられる。これらは低い表面張力値を示すが、蒸発潜熱が小さく単体では揮発性が良すぎる。このため、相溶性を示すものに配合する低表面張力剤として好適である。例えば、パーフルオロカーボン類(PFC)として、住友スリーエム(株)製「フロリナート(商標)FC−84」及び「FC−77」。ハイドロフルオロカーボン類として、三井・デュポンフロロケミカル(株)「バートレル(登録商標)XF(HFC−43−10mee)」。ハイドロフルオロエーテル類として、住友スリーエム(株)製「ノベック(商標)HFE−7100」及び「HFE−7200」が挙げられる。
仕上げ剤の油剤として、動植物油が主剤又は皮膚の恒常性維持剤に採用できる。これら動植物油は、主要成分のリノール酸、オレイン酸等の脂肪酸による保湿効果及びエモリエント効果に加え、微量に含まれるビタミンE、ビタミンA、フラボノイド、フィトステロール、芳香物質等の成分が、血行促進、細胞の修復促進、炎症治癒効果などの薬効的な成分として期待できる。
植物油として、オリーブ油、落下生油、ツバキ油、ヤシ油、大豆油、小麦胚芽油、綿実油、ヒマワリ油、ナタネ油、カラシ油、ゴマ油、コーン油、サフラワー油、亜麻仁油、クルミ油、桐油、ローズマリー油、コメヌカ油等が挙げられる。特に性状の点からは、低粘度なオリーブ油、ナタネ油、また、安価な大豆油が好ましい。動物油として、馬油、卵黄油、ミンク油、牛油、豚油、羊脂、魚油、スクワレン等が挙げられる。特に性状の点からは、浸透性の優れる馬油が好ましい。これらの1種又は2種以上の混合物が使用できる。また、精製や重合等で表面張力値等を適した性状に加工しても採用できる。
界面活性剤は、一般にアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性に分類される。これらの中で皮膚刺激性の低い非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が好ましい。界面活性剤はCMC濃度(臨界ミセル濃度)以上の水溶液で用いられる。この濃度で測定された平衡表面張力値が当該表面張力値以下のものを選択する。親水基と疎水基の両作用から、強界面活性は肌荒れが懸念される。このため、界面活性剤では30〜40mN/mの肌荒れの少ないものを選ぶ。非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコール系、β−アラニン系等が挙げられる。両性界面活性剤として、アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
皮膜と皮膜定着剤と仕上げ剤に不揮発性成分が配合された場合、処理後はこの成分が保護層又は美容液層を形成する。この層に皮膚の恒常性又は向上性に有効な成分を、添加することは容易である。従来から慣用されている、皮膚表面の保湿剤、湿潤剤、エモリエント剤、血行促進剤、リラックス効果を目的とする香料等の成分が有効である。例えば、保湿剤として昔から使われているグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール類が挙げられる。他に、動植物からの抽出成分として、例えば、可溶性コラーゲン、ユラスチン、ケラチン等のたんぱく質加水分解物、糖たんぱく質のムチン、カニやエビの殻を主原科とするキチン・キトサン、ビフィズス菌代謝物、酵母の発酵代謝物や抽出物等が挙げられる。また、生体成分と同等又は類似の成分として、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。また、ヒノキチオール、甘草エキス等の殺菌剤、酸化防止剤などの防止剤が挙げられる。これら皮膚の恒常性維持性等を有する各種油剤、薬剤を、本発明の目的を損なわない限り配合できる。
これらで構成される仕上げ剤は、はみ出し部に滴下又は塗布して用いられる。滴下容器は、点眼容器、スポイト等の滴下構造容器が挙げられる。塗布容器は、刷毛、フェルト芯、ブラシ等を備えた容器、仕上げ剤を含浸させた包装体等が挙げられる。揮発性の小さい仕上げ剤は、スプレー容器で噴霧塗布できる。この仕上げ液が表面に存在する環境で、はみ出し部に変形作用を加えると皮膚は変形し、はみ出し部の皮膜に剥離力が作用する。低表面張力の油剤が剥離面に浸透して、「連鎖的な剥離」の剥がれが発生する。変形が困難な爪は、この作用が小さく、皮膜の剥離に至らない。変形手段は、押圧、摺動、擦過などの要素を組み合せて実施する。皮膚が変形しないマッサージやブラッシングでは効果がなく、揉むようにマッサージすると効果がある。変形作用は、最も手近な本人の爪で実施できる。既に仕上げた爪を使用しても、被覆した皮膜には影響しない。他に、エナメル面を傷付けない爪と似た構造及び形状の、ヘラ、スティック等が挙げられる。貯蔵容器と本人の爪の利用形態が、最も構成要素の少ない仕上げ用化粧具である。
仕上げ処理では、塗布と払拭を同時に作用させると使用性が良くなる。さらに、作用範囲を制御できる用具は、仕上げ液の消耗と剥離効果が改善できる。例えば、フェルトペン構造の仕上げ具が挙げられる。払拭材は、織編布又は不織布等の布帛、拭き取り紙(ティッシュペーパーなど)、フェルト芯、綿体、スポンジ、ブラシ等の、清掃で慣用される素材が挙げられる。ペンタイプの化粧具は携帯性と使用性を大幅に改善する。払拭材に極細繊維が含まれると、仕上げ剤による膜上滑走を防止し、付着皮膜に剥離作用を効果的に発生できる。極細繊維の身近な用途として、油膜汚れの除去が知られている。この除去作用は、繊維が細くなることで油膜層の下部に入り込み、被払拭面から油膜をすくい上げて完璧に清浄すると言われる。この作用を被払拭面(皮膜面)から見ると、繊維が皮膜面に直接触れることを意味する。繊維は細くなるほど効果がある。例えば、点眼容器の吐出部に極細繊維の布を被覆すると、使用性の優れた仕上げ具となる。
仕上げ剤の表面張力値の上限は、皮膜樹脂と皮膜定着剤の関係から、皮膚への付着力が最も弱い被着状態の適用値である。例えば、溶解力の強いアセトン等の溶剤を含む接着性皮膜定着剤では、付着力が強くなり表面張力値が20mN/m以下の仕上げ剤が必要である。同様に皮膜内層に付着力が強い組成物を採用した場合も、この値となる。例えば、揮発性皮膜定着剤に水を混合した場合は、35N/m以下の仕上げ剤とする。内層の付着樹脂が、アクリル系樹脂、剥離性樹脂、粘着剤、ネイルアート用絵具等の場合は、上限値を大きくできる。接着性皮膜定着剤が、これらの樹脂で構成される場合も同様である。通常は、接着性皮膜定着剤の場合は22mN/m以下、揮発性皮膜定着剤の場合は26mN/m以下が好ましい。
ペンタイプの皮膜定着用及び仕上げ用化粧具は、一般に使われている塗布タイプの筆記具のインクを、本発明組成物に入れ替えることで容易に製造できる。例えば、液の供給方法では、毛細管効果、鋼球によるポンプ効果、加圧吐出等の各種機構が採用できる。ペン芯構造としてフェルト芯、スポンジ芯、焼結多孔質芯、ペン芯形状として平角芯や平芯、結束繊維としてアクリル繊維、ポリエステル繊維、羊毛繊維でもよい。仕上げ用化粧具では、ペン芯の硬度は皮膜表面硬度より小さいものが好ましい。また、繊維の太さを極細繊維にして構成するか、極細繊維の布帛を被覆した構造のペン芯に替える。
本発明の美爪化粧料及び化粧方法は、乾燥過程で毛などが貼り付く状態がない。また、石油臭に比べ刺激の少ないアルコール臭である。この特徴は、爪の周りに毛が生え、臭覚が敏感な動物の美爪化粧料に好適である。哺乳類、鳥類、爬虫類に属する動物の爪の形は、平爪、かぎ爪、蹄など多種多様である。この中で、曲率が小さく彎曲の激しいかぎ爪にも、本発明は容易に対応できる。家庭で飼養される、犬、猫、鳥、ウサギ、リス及びハムスター等の愛玩動物(ペット)、イベント等の業として扱う、猿、馬、牛、やぎ等の展示動物の爪用エナメルに採用できる。用途として、動物の爪の手入れに用いられる保護エナメル、無色又は有色の装飾エナメルとして用いられる。
動物用美爪化粧料は、仕上げ剤を省く臭度の低い成分で構成される。皮膜定着剤の溶剤は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等の脂肪族アルコールを90容積%以上含む組成物からなる。これらのうち、エタノール、プロパノールが好ましい。臭度の高い芳香族アルコール等は適しない。皮膜定着剤は、溶剤のみの揮発性皮膜定着剤と、これに固体接着成分を全重量の45重量%まで加えた接着性皮膜定着剤のどちらかで用いられる。固体接着成分は、前記で記述したものから、臭度の低いものを選択して用いる。皮膜は前記で記述した組成物が適用できる。皮膜は脂肪族アルコールにより軟化し、皮膜定着剤が固体接着成分を含まない場合、少なくとも片面は皮膜定着剤により成分の一部が変質して接着性を有するものを用いる。この皮膜も臭度の低いものを選択して用いる。
次は、皮膜断面の少なくとも一方が、端方向に除変して薄くなっている皮膜を説明する。図18は、端方向に除変して薄くなっている皮膜の斜視図である。皮膜1に皮膜除変部1eを有する皮膜である。除変部1eは、皮膜1の片側、両端、全周に設けることができる。爪のエナメルと同色の皮膜は、エナメルの欠けや剥がれの修正に利用できる。また、異色の皮膜は、ぼかし等の装飾用に利用できる。一般に、爪のエナメルは、トップコートを塗って光沢等を強くする。修正用に用いる場合は、通常のトップコートで皮膜表面を処理することで、被覆されているエナメルと同等の光沢が得られる。同様に、必要であればベースコートを処理してもよい。皮膜の厚いところは、2回塗り程度の厚み、0.06〜0.1mmにする。この皮膜形態は、修正用や装飾用の専用皮膜としたり、本発明の各種皮膜の端部に設け、必要な時に利用する形態とする。皮膜除変部は、ドクターブレード法、スキージ法、スプレー積層法で成形する。
エナメルは日常生活の作用で摩耗し、欠けや剥がれという形態で劣化を示す。また、爪には、伸びによる隙間の発生といった、致命的な劣化がある。図21は、エナメルの修正方法を示す断面図である。化粧者は、この劣化領域11にエナメル液を付け足して修正を試みるが、その実際はエナメル全体の美観を損ねる。この美観の損ねは、段差、色の濃淡差、刷毛跡、溶剤による境界の強調が生じることにある。本発明は、図18の皮膜で、修正による美観の損ねを低減する。修正方法は、皮膜1が薄くなっている除変部1eを爪の内側に向けて、本発明の化粧法で劣化領域11に付着させる。皮膜の除変部1eは、色の濃度を除々に変化させ、付け足しの段差を目立たなくする。伸びによる劣化領域11(隙間)の修正では、図10のようにはみ出し1fが生じる。これは本仕上げ剤で処理する。
次は、皮膜を製作する切り欠きを有する美爪化粧具を説明する。化粧具は、エナメル塗膜に対し離型性を有するシート又は板の離型シートと、シート又は板の少なくとも一辺に皮膜断面に相当する切り欠きがある皮膜形成具で構成される。この切り欠き深さは、少なくとも一方の端方向に除変して浅くなっている。離型性の対象は、エナメルが乾燥硬化した塗膜である。離型シートは、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系の樹脂又はこれらを表面とした複合材が挙げられる。例えば、粘着ラベルに慣用されている離型紙が挙げられる。水系エナメルであればパラフィン紙でも可能である。皮膜形成具の材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッソ樹脂、ポリウレタン樹脂、これら樹脂の変性樹脂が挙げられる。離型性のない材質では、離型性組成物で表面処理する。離型性のない材質でも、施工後にエナメル液を拭き取れば使用できる。皮膜断面に相当する切り欠き形状は、材質に適した切削加工、レーザ加工、打抜き加工、射出成形加工で成形する。この切り欠きは四辺に異なる形状を設けてもよい。
次は、皮膜を製作する凹部形状を有する美爪化粧具を説明する。化粧具は、エナメル塗膜に対し離型性を有する表面からなるシート又は板に、皮膜断面に相当する深さの凹部がある皮膜形成具である。この凹部の一断面は少なくとも一方の端方向に除変して浅くする。皮膜形成具の材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッソ樹脂、ポリウレタン樹脂、これら樹脂の変性樹脂が挙げられる。凹部形状は、切削加工、打抜き加工、注型加工、射出成形加工等で成形する。板材であればプレス塑性加工で成形できる。また、2枚の板材を重ねた段差の凹部形状を利用できる。
これらの化粧具で、既に愛用しているエナメル液から皮膜を製作して、修正用やぼかし用の美爪化粧料として用いる。切り欠きを有する皮膜形成具は、これをスキージとし、離型シート上に塗布したエナメル液を成形して製作する。凹部形状を有する皮膜形成具は、備えられた刷毛等で垂らすなどして、凹部にエナメル液を充填成形して製作する。余分な量がある場合は、スキージ等で液を欠き取る。後は、化粧具上で乾燥硬化させると、除変部のある皮膜が得られる。
本発明に適用する皮膜を、ネールアート等で製作する台紙を美爪化粧具として提供する。この化粧具は、孔又は切り欠きを有するエナメルが定着できるシートと離型シートで構成する台紙で、該孔又は切り欠きは爪面又はつけ爪面の投影面より広くした。提供する台紙の構成は、シートと離型紙、片面に粘着層を有するシートと離型紙が挙げられる。台紙は、紙、合成樹脂、織物からなる葉状又は帯状のシートが挙げられる。粘着層は、アクリル系、ゴム系、酢酸ビニル系、シリコーン系及びブロック共重合体系等の粘着剤が挙げられる。粘着剤は弱粘着が好ましい。離型シートは、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系の樹脂又はこれらを表面とした複合材が挙げられる。粘着ラベルの離型紙に慣用されている樹脂である。離型シートは家庭用品や文具の離型性シートで代用できる。これらを所持する環境であればシート単独の提供でもよい。
この台紙を用いて、アクリル絵具や水性エナメルで孔又は切り欠き外周の少なくとも対向する2辺まで塗り、絵柄を描く。この時点で、ラインストーン等の宝飾品を定着してもよい。描写後、乾燥させて皮膜を製作する。デザインした皮膜は、台紙と共に剥離して皮膜定着剤で自爪又はつけ爪に被着する。自爪の場合は、台紙から切り離した方が使い勝手はよい。つけ爪の場合は、台紙と共につけ爪を貫通させるように被着できる。この場合の台紙の孔は、皮膜が伸ばされるため、つけ爪面の投影面で可能である。つけ爪(ネイルチップ)は、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂等を、射出成形や真空成形等で爪甲と類似した曲面に成形したものである。