JP4504494B2 - 予混合圧縮自着火エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料供給手段から供給される燃料と酸素含有ガスとの予混合気を燃焼室において圧縮して自着火燃焼させて、クランク軸の回転を維持する予混合圧縮自着火エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、自然着火を積極的に利用する予混合圧縮自着火エンジンのコンセプトが話題になっている。この種の予混合圧縮自着火エンジンは、ディーゼルエンジンのパティキュレートを防止する目的で開発されたものであって、研究開発の端緒についたところである。着火形式は、ディーゼルエンジンと同様に、断熱圧縮を利用した自然着火形式であるが、圧縮空気中に燃料を噴射するのではなく、主には、火花点火式のエンジンのように空気(酸素含有ガスの一例)と燃料の予混合気を燃焼室に形成し、その予混合気を圧縮して自然着火燃焼させ、クランク軸の回転を続ける。
この手法をガスエンジンに適用すれば、圧縮比を増大させると共に超希薄な予混合気を圧縮自着火させ、高効率及び低NOxが可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、予混合圧縮自着火エンジンにおいて、予混合気を圧縮自着火させるので、出力を変化させるために予混合気の当量比を大幅に変化させると、安定した圧縮自着火燃焼を得ることができなくなる。例えば、当量比を増加させすぎて燃焼室における図示有効圧力が上昇しすぎると、燃焼室における圧力波の伝播速度が音速を超えて衝撃音等が発生する所謂ノッキングが発生してしまう。また逆に、当量比を低下させすぎて燃焼室における図示有効圧が低下しすぎると、予混合気を完全に自着火に至らせることができず予混合気を完全燃焼させることができないために図示熱効率が低下してしまう。よって従来の予混合圧縮自着火エンジンにおいては高い効率を維持したまま運転を継続することは困難であり、例えば過給圧1.25kg/cm2 、給気の温度130℃の運転状態における図示熱効率を50%程度で維持した状態での当量比の設定幅は高々0.31から0.34程度であり、ほとんど出力を変化させることができなかった。
従って、本発明は、上記問題点を解消し、予混合圧縮自着火エンジンにおいて、高い図示熱効率を維持した状態での出力の設定範囲を拡大する技術を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明の予混合圧縮自着火エンジンの特徴・作用・効果は次の通りである。
【0005】
〔特徴〕
前記燃料供給手段から供給される燃料の供給量を設定して前記予混合気の当量比を設定する当量比設定手段と、
前記燃焼室に供給される給気の温度を設定する給気温度設定手段と、
前記給気を過給する過給機を備えるとともに、前記過給機の過給状態を検出する過給状態検出手段と、
出力増加及び出力減少に関して、異なった過給状態に対して予め記憶している夫々の出力値に対して図示熱効率を高く維持することができる前記当量比及び前記給気の温度の値を示す前記当量比と前記給気の温度との関係に基づいて、前記当量比設定手段及び前記給気温度設定手段を働かせて、前記当量比及び前記給気の温度を調整し、出力を設定する出力設定手段とを備え、
前記出力設定手段が、前記出力を増加させるに、予め記憶している前記検出される過給状態におけるそれぞれの給気圧に対応した前記当量比と前記給気の温度との出力に関する前記関係に基づいて、前記当量比を増加させると共に、前記給気の温度を減少させ、前記出力を減少させるに、予め記憶している前記検出される過給状態におけるそれぞれの給気圧に対応した前記当量比と前記給気の温度との出力に関する前記関係に基づいて、前記当量比を減少させると共に、前記給気の温度を増加させる。
【0006】
〔作用・効果〕
本発明の予混合圧縮自着火エンジンは、燃料供給手段から供給される燃料の供給量を設定して予混合気の当量比を設定する当量比設定手段と、例えば、給気と冷却水との熱交換により給気を冷却すると共に、冷却水の温度と流量の少なくとも何れかを調整して給気の温度を設定するように構成された熱交換器のように、燃焼室に供給される給気の温度を設定する給気温度設定手段とを備えており、当量比及び給気の温度を設定自在に構成されている。
さらに、本発明の予混合圧縮自着火エンジンは、クランク軸からの出力を設定するに、予め記憶している前記当量比と前記給気の温度との出力に関する関係、即ち予め実験等で求めて記憶しておいた、設定する出力に対して高い図示熱効率を実現することができる当量比及び給気の温度の夫々の値を予め実験等で求め記憶しておき、その記憶された値に基づいて当量比及び給気の温度を調整するので、常に高い図示熱効率を維持しながら、出力を大きな設定幅で設定することができる。例えば、図示熱効率を50%程度に維持した状態で、出力所謂燃焼室の図示有効圧を最低値に対して2倍以上幅で変化させることができる。
よって、本発明の予混合圧縮自着火エンジンにおいては、出力を変化させて設定するに、例えば従来のエンジンのように給気路に設けられた絞り弁の開度調整等を行う必要がなく、ポンピングロスを抑制することができ、さらに、高効率且つ低NOxな予混合圧縮自着火エンジンにおいて出力の可変範囲を大幅に拡大することができる。
【0007】
【0008】
【0009】
しかも、例えば予混合圧縮自着火エンジンにおいて、出力を増加させるために当量比のみを増加させると、燃焼室においてノッキング等が発生してしまうが、本発明の予混合圧縮自着火エンジンは、本構成のごとく、出力設定手段において、出力を増加させる場合は、当量比を連続的若しくは段階的に増加させると共に、その当量比に対して好ましい給気の温度になるように、給気の温度を連続的若しくは段階的に減少させるので、結果、当量比を増加による燃焼室の図示有効圧の上昇率を、給気の温度を低下することで緩慢な状態として、ノッキングの発生を抑制することができる。また、出力を低下させる場合においても、当量比の減少と共に、給気の温度を増加させることで、ノッキングを回避しながら高い図示熱効率を維持した運転を実現することができる。
よって、超低NOxを実現する予混合圧縮自着火エンジンにおいて、高い図示熱効率を維持したままで出力の設定範囲を拡大することができる。
【0010】
【0011】
【0012】
さらに、本構成のごとく、過給機を備えた予混合圧縮自着火エンジンにおいては、過給機における過給状態が変化すると、前記当量比と前記給気の温度との出力に関する関係、即ち、設定する出力に対して高い図示熱効率を実現する当量比及び給気の温度の値が若干変化する。
よって、本発明の予混合圧縮自着火エンジンの出力設定手段は、その過給状態として過給機の下流側の給気の圧力若しくは過給機のブロアの回転数等を検出して過給状態を検出する過給状態検出手段を備えており、予め記憶している前記検出される過給状態における前記当量比と前記給気の温度との出力に関する関係に基づいて、当量比及び給気の温度を調整し、出力を設定することができる。
よって、過給機を備えた予混合圧縮自着火エンジンにおいて過給状態が変化した場合においてもその過給状態における当量比及び給気の温度を高い図示熱効率に維持するものに設定して、出力を変更することができる。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の予混合圧縮自着火エンジン100に関する実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、予混合圧縮自着火エンジン100は、過給機17によって加圧され給気路11に流通する空気(酸素含有ガスの一例)に、燃料ノズル8(燃料供給手段の一例)によって燃料としての天然ガス系都市ガスを供給して予混合気を形成し、形成された予混合気を給気弁1を介してシリンダ3内に形成された燃焼室7に供給し、燃焼室7において予混合気を圧縮して自着火燃焼させて、ピストン4の往復運動を連結棒5を介してクランク軸6の回転として出力するものである。また、燃焼後の排ガスは、燃焼室7から排気弁2を介して排気路12へ排出される。
【0020】
さらに、本発明の予混合圧縮自着火エンジン100は、燃料ノズル8から供給される燃料の供給量を調整する制御弁9と、クランク軸6の回転数を検出するクランク軸回転数検出センサ10とを備えており、夫々が制御手段20に接続されている。制御装置20は、クランク軸回転数検出センサ10の出力信号によって、給気される空気量を算出することができる。よって、制御手段20、その算出される空気量に基づいて燃料の供給量を決定し、制御弁9を働かせて決定された供給量の燃料を給気路11の空気に供給し、形成される予混合気の当量比を設定することができる。このように、制御弁9を働かせて予混合気の当量比を設定する手段を当量比設定手段Aと呼ぶ。
【0021】
またさらに、エンジン100は、給気路11における過給機17の下流側に、
クーリングタワー16によって空冷された冷却水と給気路11に流通する空気との熱交換を行う熱交換器13を備えており、過給機17によって加圧されて昇温した空気を冷却することができる。さらに、熱交換気13を流通する冷却水の流量を調整する制御弁14と、熱交換器13の下流側の空気の温度を検出する温度センサ15を備えており、制御装置20は、温度センサ15の検出信号に基づいて、制御弁14の開度を制御して、給気路11内の空気の温度を設定することができ、結果、燃焼室7に供給される予混合気(給気)の温度を設定することができる。このように、燃焼室7に供給される空気の冷却量を調整して、給気の温度を設定する手段を給気温度設定手段Bと呼ぶ。
【0022】
次に、本発明の予混合圧縮自着火エンジン100において、出力を設定する出力設定手段Cについて以下に説明する。
制御装置20には、記憶手段200が設けられており、記憶手段200には、前記当量比と前記給気の温度との出力所謂図示有効圧に関する関係が記憶されている。
この関係は、図2(イ)に示すように、予め実験等で求められた給気の温度及び当量比に対する出力所謂図示有効圧の関係により、夫々の出力値に対して最も図示熱効率を高く維持することができる当量比及び給気の温度の値である。
よって、制御装置20は外部から入力された出力設定指令等に従って予混合圧縮自着火エンジン100の出力を設定するのであるが、記憶手段200に記憶されている上記の当量比及び給気の温度の好ましい値に基づいて、当量比設定手段A及び給気温度設定手段Bを働かせて当量比及び給気の温度を連続的若しくは段階的に調整し、例えば、当量比が0.20から0.26程度の値であるときは給気の温度を150℃、当量比が0.26から0.32程度の値であるときは給気の温度を140℃、当量比が0.32から0.34程度の値であるときは給気の温度を130℃と調整して、図示有効圧を0.47MPaから1.0MPaまで変化させ、最小値に対して2倍以上変化幅で出力を変化させることができ、図2(ロ)からもわかるように、ほとんどの当量比において図示熱効率を50%以上に維持させることができる。これは、当量比に対して給気の温度を好ましい値に
設定することで、図示有効圧力の上昇の増加率を、ノッキングの発生限界以下且つ、燃焼室7において予混合気を完全に自着火に至らせることができる温度以上に設定することで、図示熱効率を高く維持できるからである。このように、記憶手段200において記憶されているそれぞれの出力に対する相関関係に基づいて当量比及び給気の温度を調整して出力を設定する手段を出力設定手段Cと呼ぶ。
なお、図2に示すデータは、給気の圧力が1.25kg/cm2 のときのデータである。
【0023】
また、予混合圧縮自着火エンジン100は、給気路11内の圧力を検出して制御装置20に出力する圧力計18(過給状態検出手段の一例)を備えており、さらに、記憶手段200はそれぞれの給気圧に対応した当量比と給気の温度との出力に関する関係を記憶している。即ち、圧力計18によって検出された給気の圧力が1.0kg/cm2 のときは、図3(イ)に示すように、給気圧が1.0kg/cm2 において、給気の温度及び当量比の出力所謂図示有効圧に関する関係を予め実験等で求めて記憶した好ましい当量比と給気の温度との関係により当量比及び給気の温度を設定し、さらに、圧力計18によって検出された給気の圧力が0.75kg/cm2 のときは、図4(イ)に示すように、給気圧が0.75kg/cm2 において、給気の温度及び当量比の出力所謂図示有効圧に関する関係を予め実験等で求めて記憶した好ましい当量比と給気の温度との関係により当量比及び給気の温度を設定する。
よって、例えばクランク軸6の回転数が変化して、排気路12内を流通する排ガスの速度が変化し、過給機17のタービン(図示せず。)の回転数が変化することで給気の圧力が変化しても、その圧力にあった好ましい値に当量比及び給気の温度を設定することができ、図3(ロ)、図4(ロ)からもわかるように、それぞれ図示熱効率を高いものに維持しながら出力を変化させて設定することができる。
【0024】
【0025】
〔別実施の形態〕
〈1〉 本発明のエンジン装置に備えられた予混合圧縮自着火エンジンに使用できる燃料としては、都市ガスが好適であるが、ガソリン、プロパン、メタノール、水素等、任意の燃料を使用することができる。
【0026】
〈2〉 予混合気を生成するにあたっては、燃料とこの燃料の燃焼のための酸素を含有するガスとを混合すれば良いが、例えば、燃焼用酸素含有ガスとして空気を使用することが一般的である。しかしながら、このようなガスとしては、例えば、酸素成分含有量が空気に対して高い酸素富化ガス等を使用することが可能である。
【0027】
〈3〉 上記の実施の形態例においては、所謂、4サイクルエンジンに関連して説明したが、本願は、2サイクルエンジンにおいても適応可能である。
【0028】
〈4〉 上記の実施の形態において、燃焼室7で圧縮自着火燃焼する予混合気を、給気路11において形成する構成を示したが、別に、燃料を燃焼室7に直接噴射する燃料噴射弁を備え、空気のみを吸気し、吸気行程若しくは圧縮行程初期において燃料を噴射して燃焼室に予混合気を形成し、この予混合気を圧縮して自着火させるように構成することもできる。
【0029】
〈5〉 上記実施例1で説明した予混合圧縮自着火エンジン100において、過給機17の過給状態を検出するに給気路11の圧力を検出する圧力計18を設けたが、別に、過給機17の回転数を検出して過給状態を検出することもできる。この場合は、記憶手段200には、過給機17のそれぞれの回転数に対応した当量比及び給気の温度の設定値を記憶させることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る予混合圧縮自着火エンジンの実施の形態を示す概略構成図
【図2】 給気圧1.25kg/cm2 における給気の温度及び当量比の関係を示すグラフ図
【図3】 給気圧1.0kg/cm2 における給気の温度及び当量比の関係を示すグラフ図
【図4】 給気圧0.75kg/cm2 における給気の温度及び当量比の関係を示すグラフ図
【符号の説明】
6 クランク軸
7 燃焼室
8 燃料ノズル(燃料供給手段)
17 過給機
18 圧力計(過給状態検出手段)
21 ノッキングセンサ
100 予混合圧縮自着火エンジン
A 当量比設定手段
B 給気温度設定手段
C 出力設定手段
Claims (1)
- 燃料供給手段から供給される燃料と酸素含有ガスとの予混合気を燃焼室において圧縮して自着火燃焼させて、クランク軸の回転を維持する予混合圧縮自着火エンジンであって、
前記燃料供給手段から供給される燃料の供給量を設定して前記予混合気の当量比を設定する当量比設定手段と、
前記燃焼室に供給される給気の温度を設定する給気温度設定手段と、
前記給気を過給する過給機を備えるとともに、前記過給機の過給状態を検出する過給状態検出手段と、
出力増加及び出力減少に関して、異なった過給状態に対して予め記憶している夫々の出力値に対して図示熱効率を高く維持することができる前記当量比及び前記給気の温度の値を示す前記当量比と前記給気の温度との関係に基づいて、前記当量比設定手段及び前記給気温度設定手段を働かせて、前記当量比及び前記給気の温度を調整し、出力を設定する出力設定手段とを備え、
前記出力設定手段が、前記出力を増加させるに、予め記憶している前記検出される過給状態におけるそれぞれの給気圧に対応した前記当量比と前記給気の温度との出力に関する前記関係に基づいて、前記当量比を増加させると共に、前記給気の温度を減少させ、前記出力を減少させるに、予め記憶している前記検出される過給状態におけるそれぞれの給気圧に対応した前記当量比と前記給気の温度との出力に関する前記関係に基づいて、前記当量比を減少させると共に、前記給気の温度を増加させる予混合圧縮自着火エンジン。
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