JP4503380B2 - D−キロ−イノシトールの製造方法 - Google Patents

D−キロ−イノシトールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物より、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物を製造する方法、及びD−キロ−イノシトールを製造する方法に関する。
D−キロ−イノシトールは、9種類存在するイノシトールの立体異性体の一つであり、近年、インシュリン非依存性糖尿病の治療薬として公知であり(例えば、特許文献1参照)、また多嚢胞性卵巣症候群の治療薬としても知られている(例えば、非特許文献1参照)。
このD−キロ−イノシトールの代表的な製造方法としては次の (a) 〜 (e) の方法が知られている。
(a)抗生物質のカスガマイシンを加水分解して、その分子構成部分であるD−キロ−イノシトールを得る次の3つの方法、すなわち (i) カスガマイシンの強酸による加水分解法(例えば、特許文献2参照)、(ii)カスガマイシンをアセチル化した後に加水分解する方法(例えば、特許文献3参照)、及び(iii)強酸性イオン交換樹脂によるカスガマイシンの加水分解法(例えば、特許文献4参照)。
(b)グルクロン酸を原料として10段階以上の化学合成ステップを経て、D−キロ−イノシトールを合成する方法(例えば、特許文献5参照)。
(c)ブーゲンビリアなどの植物中に含まれるピニトールを、脱メチル化してD−キロ−イノシトールを調製する方法(例えば、特許文献6、特許文献7参照)。
(d)微生物培養または、酵素を用いて、ミオ−イノシトールをD−キロ−イノシトールへ変換する方法(例えば、特許文献8参照)。
(e)ミオ−イノシトールを原料として1D−2,3−ジ−O−アセタール化ミオ−イノシトールを経て、D−キロ−イノシトールを合成する方法(例えば、特許文献9参照)。
これらの方法の中で(d)の方法は、製造工程も少なく、D−キロ−イノシトールを製造する安価な方法である。しかしながら、(d)の方法によって、微生物培養または酵素を用いて、ミオ−イノシトールをD−キロイノシトールへ変換すると、D−キロ−イノシトールと未変換のミオ−イノシトールとの混合物としてしか得られない。
ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを分離する方法としては、クロマトグラフィー分析用強塩基性陰イオン交換樹脂CG400を用いて分離する方法が知られている。しかしながら、この強塩基性陰イオン交換樹脂CG400は、分析級のイオン交換樹脂を粉砕して75〜150μmに粒度を調整し、クロマトグラフ分析用途の実験用樹脂として製造販売されているのものであって、工業的規模で使用するには、次のような問題点があり、必ずしも満足できるものではなかった。すなわち、(イ)このイオン交換樹脂は高価であり、これを用いた場合製造コストが上がる。(ロ)粒子が細かく沈降するのに時間がかかるため、大型カラムを調製するのに長時間を要する。(ハ)また、破砕型で樹脂形状が必ずしも一定でなくバラツキがあり、充填状態にムラができやすいため大型カラムに均一に充填するのが難しい。
国際公開第90/10439号パンフレット 米国特許第5091596号明細書 米国特許第5463142号明細書 米国特許第5714643号明細書 米国特許第5406005号明細書 米国特許第5827896号明細書 特開2001−261600号公報 特開平9−140388号公報 特開2001−163810号公報 「ザ・ニュウ・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)」, (米国), 1999年,第340巻, p.1314−1320
本発明の目的は、高純度のD−キロ−イノシトールを効率よく、安価に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を達成するため、特にミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを効率よく分離するための方法について種々検討を重ねた。その結果、均一係数が1.0〜1.3で、球形の陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー分離により、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとを効率よく分離することができることを知見するにいたった。
ここで、「均一係数」とは、粒子の粒度分布の特徴を表す数値の1つで、ふるいを通過した粒子が6割のときのふるいの寸法(目開き)を、粒子が1割通過したときのふるいの寸法(目開き)で割った数値である。
より詳しく説明すれば、粒子の大きさをふるい分けにより測定して正規分布の状態を対数確率グラフに直線として作図し、ふるい残留百分率累計値が90%および40%に対するふるいの目開き(mm)を求める。90%に対する目開き(mm)を有効径と称し、40%に対する目開きと有効径の比を「均一係数」としている。このようにして求められる均一係数は、1.0に近いほど粒径がそろっていることになる。
また、粒形に関しては、球形でない場合すなわち破砕型樹脂は、一般的に粒子が小さく粒子形状が一定でないため、工業用カラムに均一に充填することが困難である。これに対し、球形の場合は粒子形状が一定しており、工業用カラムに充填したときに均一になり、工業用カラムに適している。
本発明を実施することにより、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールとの組成物から、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物を得る方法、及びD−キロ−イノシトールを得る方法が提供される。ここで本発明の「D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物」とは、成分組成が、D−キロ−イノシトールが51〜100%、ミオ−イノシトールが0〜49%およびその他の成分が0〜2%の場合の組成物をいう。
より具体的には、本発明は次のごとくに要約することができる。
第1には、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物の製造方法。
第2には、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
第3には、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の強塩基性陰イオン交換樹脂の水酸基型を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物の製造方法。
第4には、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の強塩基性陰イオン交換樹脂の水酸基型を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
第5には、ミオ−イノシトールに微生物または酵素を作用させることにより得られた、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物の製造方法。
第6には、ミオ−イノシトールに微生物または酵素を作用させることにより得られた、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
第7には、ミオ−イノシトールに微生物または酵素を作用させることにより得られた、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の強塩基性陰イオン交換樹脂の水酸基型を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールを主成分とする組成物の製造方法。
第8には、ミオ−イノシトールに微生物または酵素を作用させることにより得られた、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の強塩基性陰イオン交換樹脂の水酸基型を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
本発明を実施すれば、高純度のD−キロ−イノシトールを効率よく安価に製造する方法を提供することができる。
本発明は次の通りに実施される。
本発明に用いられるD−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物は、天然界からの抽出物あるいはミオ−イノシトールを原料とした微生物または酵素による変換によって得られたものなど、どのような由来のものでもよい。そして、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールの組成比もどのような比率でもよいが、好ましくは、D−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの比率が5:95〜98:2のものがよい。さらに好ましくは、50:50よりもD−キロ−イノシトール含量の多いものがよい。また、出発材料のD−キロ−イノシトール含量が大きいものほど、より精製度の高いD−キロ−イノシトールを得やすいため、これらの観点から出発材料の組成比を決定してもよい。他の成分の存在については、陰イオン交換樹脂に吸着しないものであれば、混在しても問題はない。
なお、組成物は、クロマトグラフィー分離において良好な分離を保つために、脱イオン化されていることが望ましい。少々のイオン物質の混在した状態の組成物、例えばイオン交換樹脂の交換容量に対し、数パーセント程度のイオンが混入している組成物であれば、脱イオン化せずにクロマトグラフィー分離することも可能であるが、コスト面から複数回の使用が好ましいので、クロマトグラフィー用樹脂にイオンが吸着するにつれて徐々に分離能が低下することを防ぐ為に、脱イオン化することが望ましい。
樹脂の粒度の調整つまり均一係数が1.0〜1.3であることを特徴とする陰イオン交換樹脂の調整は、どのような方法によっても良いが、簡単な方法を例示すれば、市販イオン交換樹脂(例えば、デュオライト(登録商標)A−113 均一係数1.6)をふるいにかけて、粒度を揃えることによりできる。市販されている工業用イオン交換樹脂は通常球形をしているが、実験用に用いるクロマトグラフィー分析用イオン交換樹脂には破砕型もある(例えば、アンバーライト(登録商標)CG−400)ため、球形のイオン交換樹脂を選んで使用するのがよい。
使用する樹脂は、D−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを分離する能力の高い強塩基性樹脂が好ましく、この中でも1型の強塩基性樹脂が好ましい。
クロマトグラフィー分離に供するD−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物は溶媒に溶解させておくことが好ましい。その溶媒としては、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを溶解させることができ、樹脂にも悪影響を与えないものが好ましい。これらの条件にあう溶媒としては水を主体とする溶媒、例えばイオン交換水や水を主体とする水アルコール混液(例えば、5%エチルアルコール溶液)が挙げられる。
クロマトグラフィー分離に供するD−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物の濃度は、総イノシトール濃度として10〜70%が望ましい。また、分離の条件にもよるが、クロマトグラフィー分離に供する組成物の1回の注入量は、樹脂容量に対し3〜20%が望ましい。
クロマトグラフィー分離の条件は、まず溶離液としては、D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを溶解させることができ、樹脂にも悪影響を与えないものとして、水を主体とする溶媒が使用できる。例えばイオン交換水や水を主体とする水アルコール混液(例えば、5%エチルアルコール溶液)が挙げられる。
クロマトグラフィー分離の他の条件としては、温度10〜70℃、流速、SV=0.5〜5、が望ましい。また、樹脂の劣化を防ぐためにプレカラムを用いてもよい。
ここで、上記した流速を表すSV(Space Velocity)とは、空間速度のことであり、イオン交換樹脂の充填してあるカラムを1時間に通過する液量(ml)とカラムに充填している樹脂量(ml)との比として求められる。
上記条件で得られる溶出液を、樹脂容量の2〜10%程度の容量で分画を行い、それぞれの画分に含まれるD−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを分析し、高純度のD−キロ−イノシトール画分のみを回収すれば、高純度のD−キロ−イノシトールを得ることができる。
また、2回目以降の分画を同条件で行った場合、分離条件は再現されるので、第1回目の結果を参考に目的の画分のみを得ることも可能である。
さらには、クロマトグラフィー分離装置に検出器を設置すれば、目的のピークのみをクロマトグラフィー分離と同時に簡単に目的物を回収することも可能である。検出器の例としては第1にRI検出器が挙げられる。RI検出器を用いれば、液中のイノシトール濃度が測定されるため、第1ピークとしてミオ−イノシトールを、第2ピークとしてD−キロ−イノシトールを検出することができる。さらに旋光度を検出するためのOR検出器を付加すれば、旋光度を持つD−キロ−イノシトールを検出することができる。
以下に本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<イノシトール異性体及びその他糖類の分析方法>
以下の実施例で得られた組成物等のサンプルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
カラム:Wakosil 5NH2(4.6×250mm)
カラム温度:40℃
検出器:RI DETECTER RI−1530(日本分光株式会社)
注入量:20μl
溶媒:アセトニトリル:水=4:1
流量:2ml/min
<陰イオン交換樹脂(OH−型)の調製>
以下の実施例で使用するそれぞれの陰イオン交換樹脂(OH−型)は、それぞれの陰イオン交換樹脂(Cl−型)をカラムに充填し、樹脂量の3倍量のイオン交換水で洗浄した後、2規定の水酸化ナトリウム溶液を樹脂量の3倍量通液し、さらに樹脂量の3倍量のイオン交換水で洗浄することにより調製した。
陰イオン交換樹脂の粒度の調整
吸着用陰イオン交換樹脂(デュオライト(登録商標)A−113(Cl−型)、均一係数:1.6、球形)を目開き0.7mm(内径75mm内高20mm)のふるいに乗せ、上からイオン交換水を流しながら軽くふるい、ふるいを通過した陰イオン交換樹脂をビーカーに回収した。通過するイオン交換樹脂が少なくなったところで、ふるい上の樹脂を除去し、また新たな樹脂を乗せ同様の操作を繰り返した。
上記操作により粒度のそろった約200mlのイオン交換樹脂を得た。以下、このイオン交換樹脂を粒度調整イオン交換樹脂と呼ぶ。粒度調整イオン交換樹脂の均一係数を計算したところ、1.3であった。
均一係数は以下の方法により計算した。すなわち、イオン交換樹脂の粒子の大きさをふるい分け、ふるい上に残る残留体積(ml)を測定して、イオン交換樹脂の残留体積(ml)とふるいの目開き(mm)をそれぞれ縦軸と横軸にとりグラフに作図する。グラフより、ふるい残留百分率累計値が90%及び40%に対応するふるいの目開き(mm)を求める。90%に対応する目開き(mm)40%に対応する目開き(mm)で割ることにより、均一係数を計算した。
陰イオン交換樹脂の粒形および均一係数の違いによる分離能比較
D−キロ−イノシトール1gとミオ−イノシトール9gを混合し、イオン交換水50mlに溶解した。
上記溶液を、それぞれ異なった3 種類のタイプの樹脂((B)吸着用樹脂(デュオライト(登録商標)A−113(OH−型) … 均一係数:1.6、球形)、(A)粒度調製イオン交換樹脂(OH−型)(実施例1で調整した樹脂 … 均一係数:1.3、球形)、(C)クロマト分析用陰イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)CG−400(OH−型) … 破砕型))30mlを充填したカラムに1.5ml(樹脂容量に対し5%)ずつ供し、60℃、SV=1の条件で、イオン交換水を溶離液としたクロマトグラフィー分離を行った。溶出液は2mlずつの分画として集めた。各画分を分析した結果を表1〜3に示した。クロマトグラフィー分離に供したD−キロ−イノシトール全量(g)の内、純度100%のD−キロ−イノシトール画分として得られたD−キロ−イノシトール量(g)の割合は、(B)吸着用樹脂、(A)粒度調整イオン交換樹脂、(C)クロマト分析用陰イオン交換樹脂それぞれ16%、65%、64%であった。また、それぞれの純度100%のD−キロ−イノシトール画分の液量は22ml、16ml、32mlであった。
上記の結果から、まず(B)吸着用樹脂の分離能は低いが、(A)粒度調整イオン交換樹脂と(C)クロマトグラフィー分析用陰イオン交換樹脂は、同程度の高い分離能を示している。このことは、(A)粒度調整イオン交換樹脂(均一係数:1.3)の分離能が、(B)吸着用樹脂(均一係数:1.6)の分離能より優れ、分離能のよいクロマトグラフィー分析用の(C)の場合と同程度であり、均一係数が、1.3より小さい場合に十分な分離能が得られることがわかる。
さらに、純度100%のD−キロ−イノシトール画分の液量を比較すると、球形の(A)粒度調整イオン交換樹脂が、破砕型の(C)クロマトグラフィー分析用陰イオン交換樹脂の半量であり、工業生産の際の濃縮コストを考えた場合、(A)粒度調整イオン交換樹脂の方が優れた樹脂と考えられた。また、溶出ピークの対称性においても(A)粒度調整イオン交換樹脂が優れていた。
このように工業的に高純度のD−キロ−イノシトールを生産するためには、(A)粒度調整イオン交換樹脂が最も適しているのである。
陰イオン交換樹脂のタイプによる分離能比較
D-キロ−イノシトールとミオ−イノシトールの分離能を容易に比較するために以下の試験を行った。
下記したそれぞれのイオン交換樹脂をカラム(内径4.6mm×250mm)に充填し、1%D−キロ−イノシトール溶液、1%ミオ−イノシトール溶液をそれぞれ10μlずつ注入してイオン交換水を流速1mlで通液し、それぞれのピークの保持時間を測定した。そしてD−キロ−イノシトールの保持時間をミオ−イノシトールの保持時間で割ることにより、D−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールの分離能の高い樹脂のタイプを判定した。この場合、D−キロ−イノシトールの保持時間をミオ−イノシトールの保持時間で割った値が大きいほど、D−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールの分離能がよいことになる。
(1)(水酸基型とCl型の比較)
デュオライト(登録商標)A−116(Cl−型)とデュオライト(登録商標)A−116(OH−型)との比較を行った結果、D−キロ−イノシトールの保持時間をミオ−イノシトールの保持時間で割った値は、(Cl−型)1.01、(OH−型)1.19であり、(OH−型)の方が分離能が高かった。
(2)(陰イオン交換樹脂のタイプの比較)
1型の強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A−113(OH−型)、2型の強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A−116(OH−型)、弱塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A−7(OH−型)の比較を行った。その結果、それぞれのイオン交換樹脂で測定したD−キロ−イノシトールの保持時間をミオ−イノシトールの保持時間で割った値は、それぞれ、1型の強塩基性陰イオン交換樹脂 1.78、2型の強塩基性陰イオン交換樹脂 1.19、弱塩基性陰イオン交換樹脂 1.01であり、3つのタイプのうち、1型の強塩基性陰イオン交換樹脂の分離能が最も高かった。
培養変換物からのD−キロ−イノシトールの製造
ミオ−イノシトール 4.0%(120g)、酵母エキス 0.1%、(NHSO 0.1%、 KHPO 0.7%、KHPO 0.2%、MgSO・7HO 0.01%、ZnSO・7HO 0.002%、NiCl・6HO 0.00025%、CaCl・2HO 0.0005%を含む液体培地 3リットルを、100mlずつ500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。各々の三角フラスコにアグロバクテリウム・エスピー AB10121株(FERM P−17383として寄託)を接種し、33℃で7日間振とう培養した。培養液を遠心分離(8,000rpm、20分間)し、得られた上清を培養上清液とした(収量 約3リットル)。この培養上清液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、培養上清液中にはD−キロ−イノシトールが3.0mg/mlの濃度で生成し、ミオ−イノシトールが12.0mg/ml残存していることがわかった。
上記の培養上清液に対し、まず脱イオン化のため次の操作を行った。すなわち強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C−20(H+型)500mlを充填したカラム(内径5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに1000mlのイオン交換水を通過させて洗浄した。
このカラム通過液及び洗浄液を合併して、強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A−113(OH−型)(均一係数1.3、球形)500mlを充填したカラム(内径5cm、長さ30cm)に通過させた。その後このカラムに 1500mlのイオン交換水を通過させて洗浄した(収量 約5リットル)。得られた脱イオン化された通過液及び洗浄液を、減圧下で約80mlまで濃縮した。濃縮液は、結晶と液体の混合液として得られた。ろ過により、結晶と液体を分離した。それぞれ高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、固体は約21gのミオ−イノシトール、液体は約9gのD−キロ−イノシトールと約15gのミオ−イノシトールが含まれている組成物であることが判明した。
該液体成分を、強塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)MA01SS(均一係数1.3)1000mlを充填したカラムに供し、20℃、SV=1の条件で、クロマトグラフィー分離を行った。溶媒はイオン交換水で溶出し、溶出液を50mlの分画として集めた。各画分を分析し、D−キロ−イノシトールの純度が100%である画分を集めて、これらを濃縮した。濃縮液40mlにエタノール160mlを添加し、水−エタノール(1:4)の混合溶媒中で結晶化した。結晶をろ別した後乾燥し、D−キロ−イノシトール7gを得た。
なお、強塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)MA01SSは、市販の強塩基性イオン交換樹脂の中から、均一係数が1.0〜1.3であることを特徴とする球形の陰イオン交換樹脂として選抜したものである。
酵素変換物からのD−キロ−イノシトールの製造
酵母エキス 0.1%を含む10mMリン酸カリウム(pH7.0)40リットル(20リットル容器2基)に、アグロバクテリウム・エスピー AB10121株(FERM P−17383として寄託)よりミオ−イノシトールをD−キロ−イノシトールに変換する酵素を国際公開WO2002/055715号パンフレット記載の方法により大腸菌に組み込んだJM109−pBA19株を植菌し、36℃で1日培養した後、培養液を連続遠心(9,000rpm)にかけ、菌体を分離回収した。回収した菌体に1800mlのリゾチーム溶液(1.7mg/ml)を加え、30分処理した後、2.4%TritonX100を3ml加え、超音波処理により菌体を完全に破砕した。これを酵素溶液とした。
ミオ−イノシトール10Kg、NAD(+)10g、MnCl・4HO 5g、MgSO・7HO 6gを、イオン交換水に溶解し、40リットルとした。これに、上で調製した酵素溶液全量を加え、36℃で1日間振とうした。反応液を80℃で30分加熱処理し、連続遠心(9,000rpm)した。得られた上清を、脱イオン化のため強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C−20(H+型)5リットルを充填したカラムに通過させ、その後このカラムに15リットルのイオン交換水を通過させて洗浄した。このカラム通過液及び洗浄液を合併して、強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A−113(OH−型)5リットルを充填したカラムに通過させた。その後このカラムに 15リットルのイオン交換水を通過させて洗浄した。さらにこのカラム通過液及び洗浄液を合併して、クロマト用活性炭200mlを充填したカラムに通過させた。その後このカラムに1リットルのイオン交換水を通過させて洗浄した。
上記により得た通過液及び洗浄液はD−キロ−イノシトール960gとミオ−イノシトール9040gが含まれている組成物であった。これを、減圧下で約15リットルまで濃縮し、イソプロピルアルコール3.3リットルを加え、結晶化を行った。ろ過により、結晶と液体を分離した。得られた液体はD−キロ−イノシトール930gとミオ−イノシトール460gが含まれている組成物であった。その溶液を6リットルまで濃縮し、2リットルずつ、強塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)MA01SS 30リットルを充填したカラムに供し、25℃、SV=1の条件で、クロマトグラフィー分離を行った。溶離液はイオン交換水とし、溶出液を2リットルの分画として集めた。各画分を分析し、D−キロ−イノシトールの純度が97%以上である画分を集めて、これらを濃縮乾固した。その結果、99%以上の純度のD−キロ−イノシトール860gを得た。
検出器設置タイプのクロマト分離装置によるD−キロ−イノシトール精製
D−キロ−イノシトール1gとミオ−イノシトール9gを混合し、イオン交換水50mlに溶解した。
上記溶液のうち1.5ml(樹脂容量に対し5%)を、強塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)MA01SS 30mlを充填したカラムに供し、60℃、SV=1の条件で、イオン交換水で溶出し、溶出液がOR検出器(OR DETECTER OR−1590日本分光株式会社)、RI検出器(RI DETECTER RI−1530日本分光株式会社)を通過するようにし、通過液の成分をモニタリングした。モニター画面を見ながら、ミオ−イノシトールが溶出し終わり、D−キロ−イノシトールの純度が100%となったところで、溶出液を回収し始め、D−キロ−イノシトールの溶出が終わるまで回収した。これにより、純度100%のD−キロ−イノシトール18mgを得た。
Figure 0004503380
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Claims (2)

  1. D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物を、均一係数が1.0〜1.3で、球形の1型の強塩基性陰イオン交換樹脂の水酸基型を用いたクロマトグラフィー分離により分離することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  2. D−キロ−イノシトール及びミオ−イノシトールを含む組成物が、ミオ−イノシトールに微生物または酵素を作用させることにより得られた組成物であることを特徴とする、請求項に記載のD−キロ−イノシトールの製造方法。
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