本発明の第1実施形態を図1〜図17を参照して説明する。図1は本実施形態の加熱システムの全体構成を示すブロック図である。
図1を参照して、本実施形態の加熱システム1は、燃料電池2の発電エネルギーをエネルギー源として走行する車両に搭載され、低温環境下(燃料電池2の初期温度が低温となっている環境下)で燃料電池2の発電運転を開始する前(車両の走行開始前)に燃料電池2を被加熱物として加熱し、該燃料電池2の暖機を行なうものである。
燃料電池2は、その詳細な内部構造の図示は省略するが、アノードガスとしての水素ガスとカソードガスとしての空気中の酸素とを膜電極構造体(MEA)で反応させて起電力を発生する複数の単位セルを積層して構成されたものであり、その内部には水素ガス、空気の流通路が形成されていると共に、燃料電池2が過剰に高温になるのを防止するために冷媒を流す流通路が形成されている。このような燃料電池2は通常、燃料電池スタックといわれる。
このような燃料電池2は、0℃を下回るような低温環境下では、円滑な発電運転を行なうことが困難であり、また、ある所定温度以上の温度に暖められていないと、十分な発電能力を発揮することができない。そのために、加熱システム1は、燃料電池2を必要に応じて加熱して、該燃料電池2の暖機を行なうものである。
加熱システム1は、蓄電装置3と、この蓄電装置3に貯蔵された電力を使用して(蓄電装置3を電源として)燃料電池2を加熱する加熱手段4と、加熱手段4の動作制御を行なうコントローラ5(以下、ECU5という)とを備えている。蓄電装置3は、コンデンサあるいは2次電池から構成されたものである。本実施形態では、蓄電装置3として、例えばウルトラキャパシタ(電気二重層コンデンサ)が採用されている。
加熱手段4は、水素ガスと空気との混合気を触媒反応によって燃焼させる触媒燃焼手段としての触媒燃焼器6と、この触媒燃焼器6に水素ガスを供給する水素ガス供給手段としての水素ガス供給器7と、触媒燃焼器6に空気を供給する空気供給手段としてのスーパーチャージャ(コンプレッサ)8と、触媒燃焼器6に供給する水素ガスおよび空気を混合する混合器(ミキサー)9とを備えている。水素ガス供給器7から送出される水素ガスと、スーパーチャージャ8から送出される空気とは、それぞれ水素ガス供給路7a、空気供給路8aを通ってミキサー(混合器)9に導入されて混合され、混合気として触媒燃焼器6に供給されるようになっている。
触媒燃焼器6は、その内部に形成されたハニカム構造のガス通路(図示せず)の内壁に白金、パラジウムなどの触媒を担持したものである。このような触媒燃焼器6に水素ガスおよび空気の混合気を供給すると、該触媒燃焼器6の内部で触媒の作用(触媒反応)によって混合気が燃焼する。
水素ガス供給器7は、例えば、図示しない水素ガスタンクから、電磁弁(図示せず)を介して水素ガスを送出する電動式のものであり、蓄電装置3から電力を供給することで作動する。この水素ガス供給器7が送出する水素ガスの流量は、該水素ガス供給器7に入力する制御信号としてのパルス信号のデューティによって制御可能となっている。
スーパーチャージャ8は、大気を吸引・加圧して送出する電動式のものであり、蓄電装置3から電力を供給することで作動する。このスーパーチャージャ8が送出する空気の流量は、該スーパーチャージャ8に入力する制御信号としてのパルス信号のデューティによって制御可能となっている。
加熱手段4は、さらに、冷媒を循環させる流路である冷媒循環路9と、この冷媒循環路9に介装された冷媒循環手段としての循環ポンプ10と、触媒燃焼器6での混合気の燃焼によって生成された高温ガスの熱を冷媒循環路9の冷媒に伝熱する熱交換器11とを備えている。冷媒循環路9は燃料電池2を経由して設けられており、循環ポンプ10の作動時に該冷媒循環路9で流れる冷媒が、燃料電池2の内部の冷媒流通路を通過すると共に、その通過時に、冷媒と燃料電池2との間の熱伝達が行なわれるようになっている。
また、本実施形態では、触媒燃焼器6から導出された排ガス流路6aと冷媒循環路9とが熱交換器11を経由して設けられており、この熱交換器11内で、触媒燃焼器6で生成された高温ガスとしての排ガスの熱が冷媒循環路9を流れる冷媒に伝達され、これにより冷媒が加熱されるようになっている。
なお、循環ポンプ10は、電動式のものであり、蓄電装置3から電力を供給することで作動する。この循環ポンプ10の吐出流量(冷媒循環路9で流す冷媒の流量)は、循環ポンプ10に入力する制御信号としてのパルス信号のデューティによって制御可能となっている。
以下の説明では、前記水素ガス供給器7、スーパーチャージャ8、および循環ポンプ10を特に区別する必要がないときは、それらを総称的に電動補機という。
また、本実施形態の加熱システム1は、次のようなセンサを備えている。すなわち、蓄電装置3の出力電圧(出力端子間の電圧)Vbを検出する電圧センサ20、蓄電装置3の出力電流Ibを検出する電流センサ21、蓄電装置3の温度Tbを検出する温度センサ22、スーパーチャージャ8の吸入空気温度(大気温度)を検出する温度センサ23、触媒燃焼器6での混合気の着火を検知する着火センサ24、触媒燃焼器6の内部温度を検出する温度センサ25、触媒燃焼器6の出口近傍で該触媒燃焼器6から流出するガスの温度を検出する温度センサ26、触媒燃焼器6から流出した水素ガスの濃度を検出する水素濃度センサ27、熱交換器11の内部温度を検出する温度センサ28、冷媒循環路9における熱交換器11の出口近傍で、冷媒の温度を検出する温度センサ29、冷媒循環路9における燃料電池2の出口近傍で冷媒の温度を検出する温度センサ30、燃料電池2の内部温度を検出する温度センサ31が備えられている。蓄電装置3に係る電圧センサ20、電流センサ21および温度センサ22は、それぞれ本発明における電圧検出手段、電流検出手段、温度検出手段に相当するものである。
なお、蓄電装置3に係る電圧センサ20、電流センサ21、および温度センサ22以外のセンサは、加熱システム1の補助的な動作、例えば、それらのセンサの検出値が異常な値になっている場合に加熱システム1の運転を停止する等の動作を行なうためのものであり、省略することも可能である。
ECU5は、マイクロコンピュータを含む電子回路から構成されたものであり、前記した各センサ20〜31の検出出力が入力される。そして、ECU5は、入力された検出出力やあらかじめ図示しないメモリに記憶保持されたデータ、プログラムに基づいて前記電動補機7,8,10の作動を、これらに入力する制御信号(パルス信号)のデューティにより制御し、それにより加熱手段4の作動を制御するようにしている。
なお、ECU5は、その制御処理による機能的手段として、電力供給能力把握手段、加熱作動制御手段(空気流量決定手段、水素ガス流量決定手段、冷媒流量決定手段)を備えている。また、本実施形態では、ECU5(各センサに係わる駆動回路を含む)は、蓄電装置3とは別に備えられた2次電池を電源として作動するようになっている。
次に、本実施形態の加熱システム1の作動を説明する。
図2は、ECU5が実行するメインルーチン処理を示している。ECU5は、車両の図示しない起動スイッチがON操作されたときに、このメインルーチン処理を実行し、これにより、加熱手段4の作動を制御する。同図を参照して、まず、STEP1において、蓄電装置3の初期状態を把握する蓄電装置初期状態把握処理が行なわれる。この蓄電装置初期状態把握処理は、図3(a)のフローチャートで示すサブルーチン処理により行なわれる。なお、図3(b)は第2実施形態に関するものであり、これについては後述する。
図3(a)を参照して、まず、温度センサ22の検出出力から、蓄電装置3の現在の温度(初期温度)Tbが検出される(STEP1−1)。この初期温度Tbは、蓄電装置3自体の初期温度であると共に、加熱システム1の系に含まれる要素(燃料電池2、触媒燃焼器6など)の初期温度あるいはそれらの要素の近辺の初期環境温度を代表するものとしての意味を持つものである。なお、「初期」は加熱手段4の作動開始時を意味する。
次いで、蓄電装置3の出力端子間の電圧の現在値が蓄電装置3の開放電圧Vbo(蓄電装置3の出力電流が0もしくはほぼ0である状態での端子間電圧)の初期値Vbo_oとして、電圧センサ21の検出出力から検出される(STEP1−2)。さらに、図示しないメモリから蓄電装置3(コンデンサ)の出荷時(新品時)の静電容量である出荷時静電容量Coと、蓄電装置3の出荷時の最大開放電圧(新品の蓄電装置3の満充電状態での開放電圧)である出荷時最大開放電圧Vb_maxとが読み込まれる(STEP1−3)。これらのCoおよびVb_maxは、あらかじめROMに記憶保持された固定値である。さらに、図示しないメモリから、蓄電装置3の容量劣化係数kcの現在値が読み込まれる(STEP1−4)。ここで、容量劣化係数kcは、蓄電装置3の経時的劣化に伴い、その静電容量が低下することを考慮し、前記出荷時静電容量Coを補正するための係数(≦1)である。その値は、後述する処理によって適宜修正されて、EEPROMなどの不揮発性のRAMに記憶保持される。なお、容量劣化係数kcの初期値(出荷時の値)は「1」である。
次いで、蓄電装置3の温度Tbと、蓄電装置3の出荷時(新品時)の内部抵抗である出荷時内部抵抗Roとの相関関係を示すものとしてあらかじめ定められたデータテーブルに基づいて、STEP1−1で検出した初期温度Tbの値に対応するRoの値が求められる(STEP1−5)。ここで、蓄電装置3の内部抵抗は、温度Tbに応じて変化し、Tbが低いほど、内部抵抗は増加する。このため、上記データテーブルは、例えば図4のグラフで示すように設定されている。このデータテーブルは、あらかじめROMに記憶保持されている。
次いで、蓄電装置3の温度Tbと、抵抗劣化係数krとの相関関係を示すデータテーブルに基づいて、STEP1−1で検出した初期温度Tbの値に対応するkrの値が求められる(STEP1−6)。ここで、抵抗劣化係数krは、蓄電装置3の経時的劣化に伴い、その内部抵抗が変化することを考慮し、前記出荷時内部抵抗Roを補正するための係数である。Tbとkrとの相関関係を示すデータテーブルは、後述する処理によって適宜修正されて、EEPROMなどの不揮発性のRAMに記憶保持されている。このデータテーブルは、例えば図5のグラフで示すようなものとなる。上記抵抗劣化係数krは、前記容量劣化係数kcと共に、蓄電装置3の劣化状態を表す劣化パラメータに相当するものである。
次いで、STEP1−5,1−6でそれぞれ求めたRoとkrとを乗算することで、蓄電装置3の内部抵抗Rの現在値が求められる(STEP1−7)。このRは、蓄電装置3の現在の温度(初期温度Tb)および現在の劣化状態に応じたものとなる。さらに、STEP1−3,1−4でそれぞれ読込んだCoとkcとを乗算することで、蓄電装置3の静電容量Cの現在値が求められる(STEP1−8)。このCは、蓄電装置3の現在の劣化状態に応じたものとなる。
次いで、STEP1−2で検出した蓄電装置3の開放電圧の初期値Vbo_oを、STEP1−3で読み込んだ出荷時最大開放電圧Vb_maxにより除算することによって、蓄電装置3の残容量としてのSOCの現在値(初期値)が算出される(STEP1−9)。本実施形態では、SOCは、蓄電装置3の満充電状態での開放電圧(出荷時最大開放電圧Vb_max)に対する現在の開放電圧の割合として表される。
次いで、STEP1−3で読込んだCoを、STEP1−2で検出した開放電圧の初期値Vbo_oに乗算することにより、電荷量Qooが求められる(STEP1−10)。このQooは、蓄電装置3が出荷時の状態(新品状態)であると仮定したときの、開放電圧の初期値Vbo_oに対応する蓄電装置3の電荷量を意味する。
次いで、STEP1−8で求めた静電容量Cを、STEP1−2で検出した開放電圧の初期値Vbo_oに乗算することによって、蓄電装置3の初期電荷量Qoが求められる(STEP1−11)。さらに、この初期電荷量Qoが、蓄電装置3の電荷量Qの現在値として設定される(STEP1−12)。
以上の処理が、STEP1の蓄電装置初期状態把握処理である。
図2に戻って、STEP1の処理の後、前記STEP1−1で検出した温度Tb(初期温度Tb)が、所定の暖機開始上限温度TbHと比較され、Tb<TbHであるか否かが判断される(STEP2)。TbHは例えば10℃である。このとき、Tb≧TbHとなる状況は、初期温度Tbにより代表的に示される初期環境温度が高く、燃料電池2の暖機を行なう必要がない状況(燃料電池2の温度が、燃料電池2の発電能力を十分に発揮し得る所定温度以上になっている状況)である。このため、STEP2でTb≧TbHである場合には、ECU5の制御処理は、STEP25の処理に移行して、燃料電池2の暖機のための加熱手段4の作動制御の処理(具体的には図2のSTEP5〜24の処理)が直ちに終了される。なお、このときには、詳細を後述するSTEP26,27の処理が続いて実行される。
STEP2の判断結果がTb<TbHである場合には、初期温度Tbが、所定の暖機開始下限温度TbLと比較され、Tb>TbLであるか否かが判断される(STEP3)。TbLは例えば−45℃である。このとき、Tb≦TbLとなる状況は、初期環境温度が低過ぎて(蓄電装置3や燃料電池2の初期温度が低過ぎて)、蓄電装置3から取り出せる総電力量内では、燃料電池2の暖機を十分に行なうことができない状況である。このため、STEP3でTb≦TbLである場合には、ECU5の制御処理は、STEP11の処理に移行して、燃料電池2の暖機のための処理が中止される。このときには、STEP25で暖機のための処理を終了する場合と異なり、STEP26,27の処理は実行されない。
なお、STEP2,3では、加熱システム1の初期環境温度を代表するものとして蓄電装置3の初期温度Tbを用いたが、これに代えて、例えば前記温度センサ23,25,26,28〜31の検出出力のいずれかを使用してもよい。
STEP3の判断結果がTb>TbLである場合には、蓄電装置3の残容量SOCの現在値(STEP1−9で求めたSOC)が、所定の暖機開始下限値SOC_Lと比較され、SOC>SOC_Lであるか否かが判断される(STEP4)。このとき、SOC≦SOC_Lとなる状況は、蓄電装置3が保有する電力が少な過ぎて、その電力では、燃料電池2の暖機を十分に行なうことができない状況である。そこで、SETP4で、SOC≦SOC_Lである場合には、STEP3の判断結果がNOである場合と同様に、ECU5の制御処理は、前記STEP11の処理に移行して、燃料電池2の暖機のための処理が中止される。なお、STEP4の判断で使用するSOCは、前記STEP1(STEP1−2)で検出した開放電圧Vboの初期値Vbo_oに比例する値である。従って、STEP4の判断は、Vbo_oをSOC_Lに対応する所定値と比較することで行なうようにしてもよい。
STEP4の判断結果がSOC>SOC_Lである場合には、燃料電池2の暖機を行なうための必要条件が満たされている。この場合には、まず、タイマーの計時が開始される(STEP5)。次いで、触媒燃焼器6の燃焼運転を開始するための着火シーケンス処理が実行される(STEP6)。この着火シーケンス処理では、ECU5は、前記水素ガス供給器7およびスーパーチャージャ8にそれぞれ所定のデューティのパルス信号を出力して、これらを作動させ(所定流量の空気と水素ガスとを送出させる)、触媒燃焼器6に水素ガスおよび空気の混合気を供給せしめる。
そして、ECU5は、この着火シーケンス処理を実行しながら、蓄電装置3の電荷量を逐次算出する処理である蓄電装置電荷量把握処理を実行する(STEP7)。この蓄電装置電荷量把握処理は、図6のフローチャートに示すサブルーチン処理により行なわれる。
すなわち、まず、前記電流センサ21の検出出力から、蓄電装置3の出力電流Ibの現在値が検出される(STEP7−1)。次いで、現在時刻t(i)と、前回時刻t(i-1)(STEP7の処理を実行した前回の時刻)との差Δtが算出される(STEP7−2)。なお、このΔtは、STEP7の蓄電装置電荷量把握処理の演算処理周期であり、それは一定値(固定値)でよい。この場合には、STEP7−2の演算は行なう必要はない。
次いで、蓄電装置3の電荷量Qの前回値(今現在の値)から、STEP7−1で検出した出力電流Ibと上記Δtとの積(これはΔtの時間内で蓄電装置3から放出された電荷量を意味する)を減算することにより、電荷量Qの値が更新され、電荷量Qの最新値が求められる(STEP7−3)。なお、蓄電装置電荷量把握処理における電荷量Qの初期値は、前記STEP1−11で求めた値である。以上の処理が、STEP7の蓄電装置電荷量把握処理である。
図2に戻って、上記の如くSTEP7の処理が行なわれた後、前記着火センサ24の検出出力に基づいて、触媒燃焼器6で混合気が正常に着火したか否かが判断される(STEP8)。このとき、着火していない場合には、さらに、タイマーの計時時間の現在値が、所定の着火上限時間tHと比較され、計時時間<tHであるか否かが判断される(STEP9)。このとき、計時時間<tHである場合には、STEP6からの処理が繰り返される。また、計時時間≧tHである場合は、触媒燃焼器6の触媒の活性低下(劣化)などによって、触媒燃焼器6での混合気の着火が正常に行なわれなかった場合である。この場合には、STEP10でタイマーの計時が終了された後、ECU5の制御処理は前記STEP11の処理に移行し、燃料電池2の暖機のための処理が中止される。
なお、本実施形態では、着火シーケンス処理を開始してから、所定の着火上限時間tH内に着火が検知されない場合に、暖機のための処理を中止するようにしたが、例えば、前記水素濃度センサ27の検出出力が示す水素ガス濃度が所定値以上である場合(水素ガス濃度が比較的高い場合)に暖機のための処理を中止するようにしてもよい。あるいは、温度センサ25の検出出力が示す触媒燃焼器6の内部温度、もしくは温度センサ26の検出出力が示す触媒燃焼器6の出口近傍の排ガス温度が、着火シーケンス処理を開始してから所定時間内に、所定温度以上に上昇しない場合に、暖機のための処理を中止するようにしてもよい。
前記タイマーの計時時間がtHに達する前に、混合気が正常に着火すると、STEP8の判断結果がYESになる。このとき、STEP12でタイマーの計時がリセットされた後(現在時刻からの計時が再開された後)、蓄電装置3の電力供給能力を示す能力パラメータを把握する処理である蓄電装置能力把握処理が実行される(STEP13)。この蓄電装置能力把握処理は、図7(a)のフローチャートで示すサブルーチン処理により行なわれる。なお、図7(b)は第2実施形態に関するものであり、これについては後述する。
図7(a)を参照して、まず、前記電流センサ21の検出出力から、蓄電装置3の出力電流Ibの現在値が検出される(STEP13−1)。次いで、前記電圧センサ20の検出出力から、蓄電装置3の出力電圧Vbの現在値が検出される(STEP13−2)。次いで、前記STEP7−2、7−3(図6参照)と同じ処理が、それぞれSTEP13−3、13−4で実行され、蓄電装置3の電荷量Qの現在値が求められる。なお、STEP13−3で求めるΔtは一定値でよく、この場合には、STEP13−3の処理は省略してもよい。
次いで、STEP13−4で求めた電荷量Qの現在値を、前記STEP1−8で求めた静電容量Cで除算することにより、蓄電装置3の開放電圧Vboの現在値が求められる(STEP13−5)。本実施形態では、この開放電圧Vboが蓄電装置3の電力供給能力を示す能力パラメータとして用いられる。
以上の処理がSTEP13の蓄電装置能力把握処理である。補足すると、触媒燃焼器6の着火後、最初のSTEP13の処理により求められるVboは、本発明における加熱手段4の作動開始時における蓄電装置3の能力パラメータの値としての意味を持つものである。従って、STEP13の処理は、本発明における電力供給能力把握手段に相当するものである。
図2に戻って、STEP13の処理の後、触媒燃焼器6に供給する空気流量の目標値である目標空気流量Qairを決定する処理が実行される(STEP14)。この処理は、図8(a)のフローチャートで示すサブルーチン処理により行なわれる。なお、図8(b)は第2実施形態に関するものであり、これについては後述する。
ここで、図8(a)の処理を具体的に説明する前に、STEP14で求める目標空気流量Qairの技術的意味について説明しておく。燃料電池2の暖機に要する時間(加熱手段4の作動開始時から、燃料電池2の温度(燃料電池2の全体の平均温度)が燃料電池2の発電運転を適切に開始し得る所定温度に達するまでの時間)を暖機所要時間とする。なお、本実施形態では、暖機所要時間の起点時刻は、触媒燃焼器6の着火直後の時刻(STEP12でタイマーをリセットした時刻)であり、これは、本発明における加熱手段4の作動開始時に相当する時刻である。また、蓄電装置3の電力供給能力が、加熱手段4の作動開始時から、加熱手段4の電動補機7,8,10を作動させ得る限界の電力供給能力(以下、下限電力供給能力という)まで低下するまでの時間を放電持続時間(これは本発明における電力供給持続時間に相当する)とする。なお、本実施形態では、下限電力供給能力は、電動補機7,8,10を作動させ得る開放電圧Vboの下限値が相当している。また、本実施形態では、放電持続時間の起点時刻は、暖機所要時間の起点時刻と同じである。これらの暖機所要時間および放電持続時間は、電動補機7,8,10への供給電力や環境温度(特に蓄電装置3の温度)の影響を受ける。
図9(a),(b),(c)は、それぞれ−15℃、−30℃、−50℃の環境温度(初期環境温度)で加熱手段4を作動させたときの電動補機7,8,10の総必要電力(各電動補機7,8,10に供給すべき電力の総量)と、放電持続時間および暖機所要時間との関係を示すグラフである。総必要電力の各値に対応する放電持続時間および暖機所要時間は、電動補機7,8,10の総必要電力をその値に一定に維持し、且つ、各電動補機7,8,10のそれぞれの必要電力を一定に維持したときの放電持続時間および暖機所要時間である。これらのグラフに見られるように、放電持続時間および暖機所要時間は、電動補機7,8,10の総必要電力の増加に伴い、短くなる。また、特に放電持続時間は、環境温度(特に蓄電装置3の温度)の影響を受けやすく、環境温度が低くなると、放電持続時間は急激に短くなる。
この場合、図9(a)に示す、−15℃の環境温度では、電動補機7,8,10の総必要電力によらずに、放電持続時間は暖機所要時間よりも長い。このような場合には、電動補機7,8,10の総必要電力を特に制限することなく、放電持続時間内で燃料電池2の暖機を完了することができる。また、図9(b)に示す、−30℃の環境温度では、放電持続時間と暖機所要時間とが等しくなるような電動補機7,8,10の総必要電力Wpが存在し、このWpよりも小さい総必要電力の領域では、暖機所要時間が放電持続時間を下回るが、Wpよりも大きい総必要電力の領域では、暖機所要時間が放電持続時間を上回って、放電持続時間内で、燃料電池2の暖機を完了することができなくなる。また、図9(c)に示す、−50℃の環境温度では、電動補機7,8,10の総必要電力をどのような値に制御しても、暖機所要時間が放電持続時間を上回って、放電持続時間内で、燃料電池2の暖機を完了することができない。
このようなことから、本実施形態では、放電持続時間が暖機所要時間を上回るという条件(以下、暖機完遂条件という)を満たすように電動補機7,8,10への電力供給を行なって加熱手段4を作動させる。補足すると、前記STEP3および4の比較結果がNOとなる状態は、暖機完遂条件を満たすように加熱手段4を作動させることが不可能な状態である。
また、本願発明者等の知見によれば、加熱手段4の電動補機7,8,10の総必要電力は、概ね、触媒燃焼器6に供給する空気流量に応じて一義的に定まる。つまり、空気流量に応じて、触媒燃焼器6での混合気の燃焼温度が暖機に適したある所定温度になるような水素ガス流量が定まる。さらに、その空気流量と水素ガス流量とに対応する燃焼熱(排ガスの熱)を熱交換器11および冷媒を介して燃料電池2に好適に伝達し得る冷媒の流量(より具体的には燃料電池2をできるだけ均一的に、且つできるだけ短い時間で燃料電池2の効率よく暖機することができる冷媒の流量)が、空気流量もしくはこれに応じて定まる水素ガス流量に応じて定まる。
従って、暖機完遂条件を満たすように加熱手段4を作動させる上では、暖機完遂条件を満たすように触媒燃焼器6に供給する空気流量を決定すればよい。また、暖機完遂条件を満たすような空気流量(あるいは電動補機7,8,10の総必要電力)は、種々の値が存在するが、燃料電池2の暖機はできるだけ短時間で行なうことが望ましい。従って、暖気完遂条件を満たすような空気流量のうち、暖機所要時間がほぼ最短となるような空気流量を選択して、電動補機7,8,10を作動させることが望ましい。そして、そのような空気流量は、蓄電装置3の電力供給能力と蓄電装置3の温度と蓄電装置3の劣化状態とに応じて定めることができる。
このようなことを考慮して、STEP14では、暖機完遂条件を満たす目標空気流量Qairが、図8(a)に示すサブルーチン処理により求められる。以下、説明すると、まず、現在のQairの値(Qairの前回値)がQair’の値として記憶保持される(STEP14−1)。なお、触媒燃焼器6の着火直後におけるQairの初期値は、前記STEP6の着火シーケンス処理におけるスーパーチャージャ8の所定の空気流量である。
次いで、蓄電装置3の初期温度Tbと能力パラメータである蓄電装置3の開放電圧Vboとを変数として持ち、これらの変数と目標空気流量Qairとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められた4種類のマップ(相関データ)に基づいて、前記STEP1(STEP1−1)で検出した初期温度Tbと、STEP13(STEP13−5)で求めた蓄電装置3の開放電圧Vboの現在値(能力パラーメータの現在値)とから、それぞれのマップに対応する4種類の目標空気流量としてのQair1,Qair2,Qair3,Qair4をそれぞれ順番に求める(STEP14−2、14−3、14−4、14−5)。なお、これらのQair1,Qair2,Qair3,Qair4は、STEP14で最終的に決定する目標空気流量Qairの仮値(暫定値)としての意味を持つものである。
ここで、先に述べたように、放電持続時間が暖機所要時間を上回るような空気流量は、蓄電装置3の電力供給能力と蓄電装置3の温度と蓄電装置3の劣化状態とに応じたものとなる。従って、目標空気流量Qairは、例えば、蓄電装置3の初期温度Tb、開放電圧Vbo、容量劣化係数kcで補正した静電容量C、抵抗劣化係数krで補正した内部抵抗Rとを変数として持ち、これらの変数とQairとの相関関係を表すように設定した単一のマップを用いて求めることも可能である。しかし、このようなマップは、メモリの使用量が膨大になる。そこで、本実施形態では、上記の4種類のマップをそれぞれ、蓄電装置3の互いに異なる劣化状態に対応させ、それぞれのマップに基づき求められるQair1,Qair2,Qair3,Qair4の値から、4点補間の処理(蓄電装置3の劣化状態に応じた補正処理)により目標空気流量Qairを決定することとした。
前記STEP14−2で使用するマップは、蓄電装置3の静電容量Cと内部抵抗Rとが、それぞれ出荷時静電容量Co、出荷時内部抵抗Roに等しいとき(蓄電装置3の劣化が発生していないとき)に対応するマップであり、STEP14−3で使用するマップは、静電容量Cが、kcの予想される下限値としてあらかじめ定めた値kc1(<1)に対応するC1(=Co・kc1)であり、且つR=Roであるときに対応するマップである。また、STEP14−4で使用するマップは、C=Coであり、且つ、内部抵抗Rが、krの予想される上限値としてあらかじめ定めた値kr1(>1)に対応するR1(=kr1・Ro)であるときに対応するマップであり、STEP14−5で使用するマップは、C=C1且つR=R1であるときに対応するマップである。
それぞれのマップに基づいて求められる値Qair1,Qair2,Qair3,Qair4は、それぞれのマップに対応する蓄電装置3の劣化状態で、Qair1,Qair2,Qair3,Qair4の値に対応させて加熱手段4の電動補機7,8,10を作動させたときに、前記暖機完遂条件を満たすような空気流量のうち、その値がほぼ最大となるような空気流量である。その各マップは、あらかじめ実験に基づいて設定されており、概ね図10のグラフで示すような傾向で設定されている。すなわち、Qair1またはQair2またはQair3またはQair4は、蓄電装置3の初期温度Tbが所定温度(これは、Vboに応じたものとなり、図10の破線上の温度である)よりも低いときには、「0」であるが、それよりも高い温度域では、Qair1またはQair2またはQair3またはQair4は、初期温度Tbが高くなるほど、大きな値となり、また、Vboが小さいほど、小さな値となる。なお、Qair1またはQair2またはQair3またはQair4の値が0となる場合は、暖機完遂条件を満たすようなQair1またはQair2またはQair3またはQair4の値が存在しないことを意味している。また、図10は、Qair1,Qair2,Qair3,Qair4のそれぞれに対応するマップの傾向を示したものであり、当然のことながら、VboおよびTbの値の各組に対するQair1,Qair2,Qair3,Qair4の値は各マップ毎に若干相違している。
次いで、上記の如くマップに基づき求めたQair1,Qair2,Qair3,Qair4の値と、前記STEP1の蓄電装置初期状態把握処理で求めた蓄電装置3の現在の容量劣化係数kcおよび抵抗劣化係数krの値と、前記kc1,kr1の値とから、4点補間の処理により目標空気流量Qairが求められる(STEP14−6)。具体的には、Qairは次式(1)により算出される。
Qair=q・t・Qair1+q・s・Qair2+r・t・Qair3+r・s・Qair4……(1)
但し、r=(kr−1)/(kr1−1)、q=1−r
s=(1−kc)/(1−kc1)、t=1−s
このSTEP14−6で求められるQairは、Qair≒0となる場合を除き、蓄電装置3の現在の電力供給能力に対して、前記暖機完遂条件を満たすような目標空気流量であって、且つそのような目標空気流量のうちのほぼ最大の目標空気流量である。より詳しくは、Qairは、Qair≒0となる場合を除き、放電持続時間が暖機所要時間を上回り(暖機完遂条件を満たし)、且つ、該暖機完遂条件が満たされる範囲内で、暖機所要時間がほぼ最小となるような目標空気流量である。この目標空気流量は、本発明において、「暖機所要時間が最小となる作動状態」に相当する。暖機完遂条件を満たすようなQairは、前記図9(a)の場合にあっては、スーパーチャージャ7から供給可能な空気流量の範囲内の任意の値でよく、また、前記図9(b)の場合にあっては、電動補機7,8,10の総必要電力がWpを下回るような任意の空気流量でよいが、Qairが小さ過ぎると(ひいては、総必要電力が小さすぎると)、暖機所要時間が長くなる。そこで、本実施形態では、暖機完遂条件を満たす範囲内で、暖機所要時間がなるべく短くなるようなQairを求めるようにした。
次いで、Qairの値の急変を避ける(Qairの値を徐々に変化させる)ために、STEP14−6で求められたQairとSTEP14−1で記憶保持した前回値Qair’とから、次式(2)により、最終的にQairが決定される(STEP14−7)。
Qair ←j・Qair+(1−j)・Qair’……(2)
ここで、jは0<j<1となる値で、「0」に近い値(例えば0.1)である。この式(2)により求められるQairは、前記STEP14−6で求められたQairに応答遅れを伴いながら(徐々に)追従していくものとなる。
以上が、STEP14の処理である。なお、STEP14の処理は、本発明における空気流量決定手段に相当するものである。
図2に戻って、上記の如く目標空気流量Qairを求めた後、このQairを所定の下限空気流量QaLと比較し、Qair>QaLであるか否かが判断される(STEP15)。下限空気流量QaLは0近傍の正の値である。このとき、Qair≦QaLである場合には、目標空気流量Qairがほぼ0であり、前記暖機完遂条件を満たすことが不可能な場合である。従って、この場合には、前記STEP10でタイマーの計時が終了された後、前記STEP11において、燃料電池2の暖機のための処理が中止される。
次いで、初期温度Tbと目標空気流量Qairとを変数として持ち、これらの変数と暖機所要時間twarmとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたマップに基づいて、前記STEP1(STEP1−1)で検出した初期温度Tbと、STEP14で決定したQairとから、暖機所要時間twarmが求められる(STEP16)。ここで使用するマップは、例えば図11のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、twarmは、Qairの増加に伴い(ひいては加熱手段4の総必要電力の増加に伴い)短くなり、また、初期温度Tbが高くなるほど、短くなる。このマップにより求められるtwarmは、触媒燃焼器6の着火直後から、目標空気流量QairをSTEP14で決定した値に維持して、連続的に加熱手段4の電動補機7,8,10を作動させたとした場合の暖機所要時間の推定値である。
次いで、初期温度Tbと目標空気流量Qairとを変数として持ち、これらの変数と目標水素ガス流量Qhとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたマップ(相関データ)に基づいて、前記STEP1(STEP1−1)で検出した初期温度Tbと、STEP14で決定したQairとから、目標水素ガス流量Qhが求められる(STEP17)。ここで使用するマップは、例えば図12のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、Qhは、Qairの増加に伴い増加し、また、初期温度Tbが高くなるほど任意のQairに対するQhが減少する。
なお、このマップにより求められるQhは、そのQhの流量の水素ガスとQairの流量の空気とを混合して触媒燃焼器6で燃焼させたとき、その燃焼温度がほぼ所定温度(例えば600℃)になるような目標水素ガス流量である。また、STEP17の処理は、本発明における水素ガス流量決定手段に相当するものである。
次いで、初期温度Tbと目標空気流量Qairとを変数として持ち、これらの変数と目標冷媒流量Qwとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたマップ(相関データ)に基づいて、前記STEP1(STEP1−1)で検出した初期温度Tbと、STEP14で決定したQairとから、目標冷媒流量Qwが求められる(STEP18)。ここで使用するマップは、例えば図13のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、Qwは、Qairの増加に伴い増加し、また、初期温度Tbが高くなるほど任意のQairに対するQhが増加する。
なお、このマップにより求められるQwは、任意の初期温度Tb(初期環境温度)において、Qairの空気流量の空気とQhの水素ガス流量の水素ガスとの混合気の燃焼によって発生する熱量を前記熱交換器11を介して冷媒循環路9の冷媒に伝熱したときに、燃料電池2の暖機をできるだけ均一的に行なうことができ、また、暖機所要時間をできるだけ短くできるような目標冷媒流量である。また、STEP19の処理は、本発明における冷媒流量決定手段に相当するものである。
また、STEP18では、マップの変数の1つとして、Qairを使用したが、これの代わりに、SETP17で決定するQhを使用するようにしてもよい。
前記STEP16〜18で使用するマップは、あらかじめ実験などに基づいて設定されている。
次いで、初期温度Tbと目標空気流量Qairとを変数として持ち、これらの変数とスーパーチャージャ8に入力するパルス信号(制御信号)のデューティDairとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたマップ(相関データ)に基づいて、前記STEP1(STEP1−1)ので検出した初期温度Tbと、STEP14で決定したQairとから、Dairが求められる(STEP19)。ここで使用するマップは、例えば図14のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、Dairは、Qairの増加に伴い増加し、また、初期温度Tbが高くなるほど任意のQairに対するDairが増加する。
そして、STEP19では、求めたDairのデューティを持つパルス信号がECU5からスーパーチャージャ8に入力され、これにより、スーパーチャージャ8が送出する空気流量が、目標空気流量Qairに制御される。
次いで、目標水素ガス流量Qhと水素ガス供給器7に入力するパルス信号(制御信号)のデューティDhとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたデータテーブル(相関データ)に基づいて、前記STEP17で決定したQhとから、Dhが求められる(STEP20)。ここで使用するデータテーブルは、例えば図15のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、Dhは、Qhの増加に伴い増加する。
そして、STEP20では、求めたDhのデューティを持つパルス信号がECU5から水素ガス供給器7に入力され、これにより、水素ガス供給器7が送出する水素ガス流量が、目標水素ガス流量Qhに制御される。
次いで、目標冷媒流量Qwと循環ポンプ10に入力するパルス信号(制御信号)のデューティDwとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたデータテーブル(相関データ)に基づいて、前記STEP18で決定したQwとから、Dwが求められる(STEP21)。ここで使用するデータテーブルは、例えば図16のグラフで示すような傾向で設定されたマップである。すなわち、Dwは、Qwの増加に伴い増加する。
そして、STEP21では、求めたDwのデューティを持つパルス信号がECU5から循環ポンプ10に入力され、これにより、冷媒循環路9で循環ポンプ10が流す冷媒流量が、目標冷媒流量Qwに制御される。
補足すると、前記STEP14、16〜19の処理では、STEP1−1で検出したTbを使用したが、例えば触媒燃焼器6の着火直後に蓄電装置3の温度Tbを検出し、その値をSTEP14、16〜19の処理で使用するようにしてもよい。
次いで、STEP22でフェイルセーフのチェック処理が行なわれる。この処理では、例えば、前記温度センサ25または26または28または29の検出出力が示す温度が、第1の所定温度以上の高温になったときに、触媒燃焼器6への空気流量に対する水素ガス流量の比が低くなるように水素ガス供給器7から送出する水素ガス流量が減少側に補正される。すなわち、STEP17で求めた目標水素ガス流量Qhよりも水素ガス供給器7から送出する水素ガス流量を少なくするように水素ガス供給器7が補正制御される。併せて、循環ポンプ10による冷媒流量が、目標冷媒流量Qwよりも多くなるように、循環ポンプ10が補正制御される。また、温度センサ25または26または28または29の検出出力が示す温度が、上記第1の所定温度よりも高い第2所定温度を超えたとき、すなわち、過剰高温になったときには、加熱手段4の作動が強制停止される。具体的には、まず、水素ガス供給器7の作動が強制停止され、その所定時間後にスーパーチャージャ8および循環ポンプ10の作動が強制停止される。
また、前記温度センサ31(これは燃料電池2の暖機中に、該燃料電池2の他の部位に比して、低温となると予想される部位に設けられているとする)あるいは温度センサ30の検出出力が示す温度が、所定値を上回るまでのタイマーの計時時間が、目標空気流量Qairの現在値に応じて定めた予想時間よりも第1の所定時間を超えたときには、加熱手段4の劣化が発生していると判断される。そして、この場合には、実際の空気流量および水素ガス流量と、冷媒流量とがそれぞれの目標流量Qair、Qh、Qwよりも少なくなるように各電動補機7,8,10が制御される。これにより、蓄電装置3の電力消費を抑制して、できる限り、燃料電池2の暖機が完了するようにされる。さらに、タイマーの計時時間が、上記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間を経過しても、温度センサ31または30の検出出力が示す温度が上記所定値を上回らないような場合には、加熱手段4の作動が強制停止される。具体的には、まず、水素ガス供給器7の作動が強制停止され、その所定時間後にスーパーチャージャ8および循環ポンプ10の作動が強制停止される。
次いで、タイマーの現在の計時時間(触媒燃焼器6の着火直後からの経過時間)がSTEP16で求めた暖機所要時間twarmを超えたか否かが判断される(STEP23)。このとき、計時時間≦twarmである場合、前記STEP13からの処理が繰り返される。なお、この場合、STEP13の蓄電装置能力把握処理で求められる能力パラメータとしてのVboは、蓄電装置4の電力が電動補機7,8,10により消費されていくことで、徐々に減少していき、下限電力供給能力に相当する値に近づいていく。従って、STEP14で決定されるQairは、徐々に減少方向に修正されることとなる。
前記STEP23の判断で、計時時間>twarmである場合には、燃料電池2の暖機が完了し、該燃料電池2の温度が燃料電池2の発電を適切に行い得る温度に達している。
この場合には、STEP24でタイマーが再びリセットされた後、燃料電池2の暖機のための処理が終了される(STEP25)。以上説明したSTEP1〜STEP25までの処理が、本発明における加熱作動制御手段に相当するものである。
次いで、STEP26において、燃料電池2の発電運転が開始される。この場合、本実施形態では、図示は省略するが、前記スーパーチャージャ8から送出される空気と、水素ガス供給器7から送出される水素ガスとの供給先が、触媒燃焼器6から燃料電池2に切り替えられるようになっている。そして、冷媒循環路9で循環ポンプ10により冷媒を循環させつつ、空気と水素ガスとを燃料電池2に供給することで、燃料電池2の過剰な昇温が抑制されつつ、該燃料電池2の発電運転が行なわれる。なお、その発電電力は、図示しない車両の走行用電動機に供給されると共に、蓄電装置3に供給される。これにより、車両の走行が適宜行なわれると共に、燃料電池2の暖機のために電力を消費した蓄電装置3が充電される。
次いで、上記のような燃料電池2の発電運転を行いながら、蓄電装置3の劣化状態を学習する(容量劣化係数kcおよび抵抗劣化係数krの値を更新する)処理である蓄電装置状態学習処理が繰り返し実行される(STEP27)。この処理は、本発明における劣化状態把握手段に相当するものであり、図17のフローチャートで示すサブルーチン処理により行なわれる。
以下説明すると、まず、温度センサ22、電流センサ21および電圧センサ20の検出出力からそれぞれ蓄電装置3の温度Tb、出力電流Ib、出力電圧Vbの現在値が検出される(STEP27−1、27−2、27−3)。次いで、Tbの現在値が、所定の学習上限温度TbSと比較され、Tb<TbSであるか否かが判断される(STEP27−4)。TbSは例えば30℃である。このとき、Tb≧TbSとなる状態は、kc、krの値の算出に適さない状態であるので、蓄電装置状態学習処理は直ちに終了される。
STEP27−4の判断結果が、Tb<TbSであるときには、次に、現在時刻t(i)と、前回時刻t(i-1)(STEP27の処理を実行した前回の時刻)との差Δtが算出される(STEP27−5)。なお、このΔtは、STEP27の蓄電装置状態学習処理の演算処理周期であり、それは一定値(固定値)でよい。この場合には、STEP27−5の演算は行なう必要はない。
次いで、図示しないメモリから現在のkcの値が読み込まれる(STEP27−6)。次いで、前記図4に示したデータテーブル、すなわちTbとRoとの相関関係を表すデータテーブルに基づいて、前記STEP27−1で検出した蓄電装置3の温度Tbの現在値から、そのTbの現在値に対応する出荷時内部抵抗Roの値が求められる(STEP27−7)。さらに、前記図5に示したデータテーブル、すなわち、Tbとkrとの相関関係を表すデータテーブルに基づいて、STEP27−1で検出したTbの現在値から、それに対応する抵抗劣化係数krの値が求められる(STEP27−8)。
次いで、前記STEP1(STEP1−3)でメモリから読込んだ出荷時静電容量Coに、STEP27−6で読込んだkcを乗算することにより、現在の蓄電装置3の劣化状態に対応した静電容量Cが求められ(STEP27−9)。さらに、蓄電装置3の電荷量Qの現在値(前回値)から、STEP27−2で検出した出力電流IbとSTEP27−5で求めたΔt(あるいはΔtの設定値)との積を減算することにより、電荷量Qの値が更新される(STEP27−10)。なお、蓄電装置状態学習処理における電荷量Qの初期値は、燃焼電池2の暖機の終了前にSTEP13で最後に求めたQの値である。
次いで、STEP27−2で検出したIbと所定の抵抗補正下限電流値Ib_Lrとが比較され、Ib>Ib_Lrであるか否かが判断される(STEP27−11)。krの算出およびその補正(学習)は、出力電流Ibが比較的大きい状態であるときに行なうことが望ましい。そこで、本実施形態では、Ib>Ib_Lrである状態でのみ、krの学習演算を行なうようにした。
STEP27−2の判断結果がYESであるときには、STEP27−10で求めた電荷量Qの現在値をSTEP27−9で求めた静電容量Cで除算することにより、蓄電装置3の開放電圧Vboの現在値が求められる(STEP27−12)。次いで、この開放電圧Vboから、STEP27−3で検出した出力電圧Vbの現在値を差し引いた値(これは蓄電装置3の内部抵抗による電圧降下分を意味する)を、STEP27−2で検出した出力電流Ibの現在値で除算することにより、蓄電装置3の内部抵抗Rの現在値R’が求められる(STEP27−13)。そして、このR’をSTEP27−7で求めたRoで除算することにより、抵抗劣化係数krの現在値kr'(蓄電装置3の温度Tbの現在値に対応する抵抗劣化係数krの現在値)が求められる(STEP27−14)。ここで求められたkr'はIb、Vbの瞬時値を使用して求めたものであるので、外乱の影響を受ける恐れがある。そこで、本実施形態では、次に、STEP27−14で求めたkr'と先にSTEP27−8で求めたkrの値とから、次式(3)により表される移動平均処理により、krの値が更新される(STEP27−15)。
kr←j・kr'+(1−j)・kr ……(3)
ここで、jは0<j<1となる値で、「0」に近い値(例えば0.1)である。この式(3)により求められるkrは、kr'の定常的な値に収束していくこととなる。
このようにして求められたkrの値が、図5のデータテーブルの、Tbの現在値(STEP27−1で検出した値)に最も近い温度に対応する格子点のkrの値として図示しないメモリ(不揮発性のRAM)に格納(記憶保持)される(STEP27−16)。
STEP27−11の判断結果がIb>Ib_Lrとなる状態では、以上説明したSTEP27−12〜27−16の処理が繰り返されることで、蓄電装置3の抵抗劣化係数krの値が蓄電装置3の現在の劣化状態に対応した値に更新されることとなる。
一方、STEP27−11の判断結果がNOであるときには、さらに、STEP27−2で検出したIbの現在値が所定の容量補正下限電流値Ib_Lcと比較され、Ib<Ib_Lcであるか否かが判断される(STEP27−17)。Ib_Lcは0に近い小さい値である。kcの算出およびその補正(学習)は、出力電流Ibが「0」に近い状態であるときに行なうことが望ましい。そこで、本実施形態では、Ib<Ib_Lcである状態でのみ、kcの学習演算を行なうようにした。
従って、STEP27−17でIb≧Ib_Lcであるときには、kcの値を更新することなく、蓄電装置状態学習処理(今回のSTEP27の処理)は終了される。
STEP27−17の判断結果がYESであるときには、STEP27−7で求めたRoにSTEP27−8で求めたkrを乗算することにより、蓄電装置3の温度Tbの現在値に対応した内部抵抗Rの現在値が求められる(STEP27−18)。次いで、STEP27−3で検出した出力電圧Vbの現在値に、STEP27−2で検出した出力電流Ibの現在値とSTEP27−18で求めた内部抵抗Rの現在値との積(これは内部抵抗の電圧降下分を意味する)を加えることにより、開放電圧の現在値Vbo'が求められる(STEP27−19)。次いで、このVbo'に、前記STEP1−3で読込んだ静電容量Coを乗算することにより電荷量Q’が求められる(STEP27−20)。ここで、求められるQ’は蓄電装置3が新品状態(出荷時の状態)であると仮定したときの、開放電圧の現在値Vbo'に対応する蓄電装置3の電荷量Q’の現在値を意味する。
次いで、前記STEP1の蓄電装置初期状態把握処理(STEP1−11)で求めた初期電荷量QoとSTEP27−10で求めた電荷量の現在値Qとの差分を、STEP1−10で求めた電荷量Qoo(蓄電装置3が出荷時の状態(新品状態)であると仮定したときの、開放電圧の初期値Vbo_oに対応する蓄電装置3の初期電荷量)とSTEP27−20で求めた上記Q’との差分で除算することによって、容量劣化係数の現在値kc'が求められる(STEP27−21)。ここで求められたkc'はIb、Vbの瞬時値を使用して求めたものであるので、外乱の影響を受ける恐れがある。そこで、本実施形態では、抵抗劣化係数krを求めた場合と同様にして、STEP27−21で求めたkc'と先にSTEP27−9で求めたkcの値とから、次式(4)により表される移動平均処理により、kcの値が更新される(STEP27−22)。
kc←j・kc'+(1−j)・kc ……(4)
ここで、jは0<j<1となる値で、「0」に近い値(例えば0.1)である。この式(4)により求められるkcは、kc'の定常的な値に収束していくこととなる。
このようにして求められたkcの値が、図示しないメモリ(不揮発性のRAM)に記憶保持される(STEP27−23)。
STEP27−17の判断結果がIb<Ib_Lcとなる状態では、以上説明したSTEP27−18〜27−23の処理が繰り返されることで、蓄電装置3の容量劣化係数kcの値が更新されることとなる。
以上のようにして、STEP27の蓄電装置状態学習処理では、蓄電装置3の劣化状態を示す抵抗劣化係数krの値と、容量劣化係数kcの値とが更新される。
なお、蓄電装置状態学習処理は、車両の運転を停止したとき(車両の起動スイッチをOFF操作したとき)に終了する。
以上説明した第1実施形態では、前記暖機完遂条件を満たすように加熱手段4の電動補機7,8,10を作動させて、燃料電池2の暖機を行なうので、燃料電池2の暖機が完了する前に、蓄電装置3の電力が不足して、燃料電池2の暖機が完了できなくなるような事態の発生を防止することができる。また、暖機完遂条件を満たしつつ、暖機所要時間ができるだけ短くなるように電動補機7,8,10を作動させるので、燃料電池2の暖機を効率よく短時間で行なうことができる。また、蓄電装置3の劣化状態を示す抵抗劣化係数krの値と容量劣化係数kcの値とを学習して、更新することにより、燃料電池2の暖機を開始するとき(触媒燃焼器6の着火後、加熱手段4の作動を開始するとき)の蓄電装置3の電力供給能力を適切に把握することができる。このため、前記暖機完遂条件を満たし、且つ、暖機所要時間ができるだけ短くなるような最適な加熱手段4の電動補機7,8,10の作動状態を決定することができる。さらに、本実施形態では、基本的には、燃料電池2の実際の暖機状態(温度状態)によらずに、Qair、Qh、Qwがマップを使用してフィードフォワード的に決定されるので、触媒燃焼器6における混合気の燃焼熱が一時的に過大になったりすることなく、安定な燃焼熱を発生できる。その結果、燃料電池2が部分的に過熱状態となったりすることなく、燃料電池2の暖機を適切に行なうことができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。前記第1実施形態では、蓄電装置3をコンデンサ(電気二重層コンデンサ)から構成したものを示したが、蓄電装置3としては2次電池を使用してもよい。第2実施形態は、蓄電装置3として、2次電池、例えばリチウムイオン電池を使用したものである。この第2実施形態では、加熱システム1の構成は、蓄電装置3がリチウムイオン電池である点を除いて、第1図に示した第1実施形態のものと同一である。従って、加熱システム1の構成については前記第1実施形態と同一の参照符号を用い、説明を省略する。
第2実施形態では、加熱手段4を作動させて燃料電池2の暖機を行なうときのECU5の一部の制御処理が第1実施形態と相違している。以下、その相違点を中心に、第2実施形態の加熱システム1の作動を説明する。
ECU5のメインルーチンの制御処理は、第1実施形態と同様、図2のフローチャートに従って行なわれる。この場合、第2実施形態では、STEP1の蓄電装置初期状態把握処理、STEP13の蓄電装置能力把握処理、およびSTEP27の蓄電装置状態学習処理のサブルーチン処理のみが、第1実施形態と相違し、その他の制御処理は第1実施形態と同一である。以下、これらの相違する処理を図3(b)、図7(b)、図8(b)、並びに図18〜図20を参照して説明する。
図3(b)は、第2実施形態におけるSTEP1の蓄電装置初期状態把握処理のサブルーチン処理を示すフローチャートである。以下、図3(b)の処理を説明すると、まず、STEP1−21および1−22の処理が実行される。これらの処理は、それぞれ第1実施形態におけるSTEP1−1、1−2と同一である。
次いで、図示しないメモリ(ROM)から、蓄電装置3(リチウムイオン電池)の出荷時(新品時)の電池容量である出荷時容量Coが読込まれる(STEP1−23)。Coは、第1実施形態では蓄電装置(ウルトラキャパシタ)の出荷時の静電容量を意味するものであったが、本実施形態では、出荷時容量Coは、新品の満充電状態の蓄電装置3が、ある一定電流をどれだけの時間、連続的に出力し得るかを示す電池容量を意味する。その単位は[A・h]で表される。従って、このCoに3600[秒]を乗算したものが、蓄電装置3の出荷時の総電荷量を表すものとなる。
次いで、蓄電装置3の温度Tbと容量劣化係数kcとの相関関係を示すデータテーブルに基づいて、STEP1−21で検出した初期温度Tbの値に対応するkcの値が求められる(STEP1−24)。ここで、kcは、蓄電装置3の温度変化および経時的劣化に伴い、電池容量が変化することを考慮し、後述する如く温度Tbにおける満充電状態での蓄電装置3の電荷量を補正するための係数である。Tbとkcとの相関関係を示すデータテーブルは、後述する処理によって適宜修正されて、EEPROMなどの不揮発性のRAMに記憶保持されている。このデータテーブルは、例えば図18のグラフで示すようなものとなる。補足すると、第1実施形態における蓄電装置3であるウルトラキャパシタでは、容量劣化係数kcは蓄電装置3の温度の影響をほとんど受けないが、第2実施形態における蓄電装置3であるリチウムイオン電池(一般的には2次電池)では、容量劣化係数kcは蓄電装置3の温度の影響を受ける。このため、第2実施形態では、kcをその値が温度Tbに応じて変化するものとした。本実施形態では、図18のデータテーブルは、出荷時の状態(蓄電装置3の新品状態)では、蓄電装置3の温度が常温程度であるときに「1」となり、蓄電装置3の温度が低温であるときに「1」よりも小さい値になるように設定されている。
次いで、STEP1−25、1−26、1−27の処理がそれぞれ第1実施形態のSTEP1−5、1−6、1−7と同様に行なわれる。なお、STEP1−25で使用するデータテーブル、およびSTEP1−26で使用するデータテーブルは、図示は省略するが、それぞれ第1実施形態における図4、図5と同様の形のデータテーブルである。但し、Tbの各値に対する出荷時内部抵抗Ro、抵抗劣化係数krの値は、一般には、第1実施形態のものと相違する。また、抵抗劣化係数krおよび容量劣化係数kcは、第1実施形態の場合と同様、蓄電装置3の劣化状態を表す劣化パラメータに相当するものである。
次いで、STEP1−22で検出した開放電圧の初期値Vbo_oが、開放電圧Vboの現在値として設定される(STEP1−28)。さらに、蓄電装置3の開放電圧Vboと、温度Tbと、残容量SOCとの相関関係を示すものとしてあらかじめ定められたマップに基づいて、STEP1−28で設定した開放電圧Vboの現在値(=Vbo_o)と、STEP1−21で検出した初期温度Tbとから、SOCの現在値(初期値)が求められる。ここで使用するマップは、図19(a)に示す如く設定されており、基本的には、Vboが高いほど、SOCが高くなる。補足すると、本実施形態では、SOCは、蓄電装置3の各温度において、蓄電装置3の満充電状態での電荷量と、蓄電装置3の開放電圧Vboが所定の下限電圧となった状態での電荷量との差(前者の電荷量から後者の電荷量を減算したもの)をΔQtb、蓄電装置3の満充電状態での電荷量と、蓄電装置3の現在の電荷量との差(前者の電荷量から後者の電荷量を減算したもの)をΔQradとしたとき、SOC=1−ΔQrad/ΔQtbにより定義される残容量である。換言すれば、本実施形態では、SOCは、蓄電装置3の各温度において、蓄電装置3の現在の電荷量と、蓄電装置3の開放電圧Vboが所定の下限電圧となった状態での電荷量との差(前者の電荷量から後者の電荷量を減算したもの)の、上記ΔQtbに対する割合として定義されるものである。従って、蓄電装置3の各温度において、蓄電装置3の開放電圧Vboが所定の下限電圧まで低下したときのSOCは0%である。
なお、本実施形態では、蓄電装置3の各温度におけるVboとSOCとの相関性は、その温度に対する依存性が小さいものとなっている。従って、STEP1−29でSOCを求めるとき、例えば、図19(b)に示すように設定されたデータテーブル(VboとSOCとの相関関係を示すデータテーブル)を基に、開放電圧Vboの現在値からSOCを求めるようにしてもよい。
次いで、STEP1−23で読込んだ出荷時容量Coに3600[秒]を乗算することにより、Coが電荷量Qooに換算される(STEP1−30)。このQooは、蓄電装置3の出荷時の状態(新品状態)であるときの満充電状態での電荷量を意味する。さらに、このQooにSTEP1−24で求めた容量劣化係数kcを乗算することにより、蓄電装置3が現在の温度および劣化状態で、満充電状態であると仮定した場合(SOC=100%と仮定した場合)の電荷量である満充電時電荷量Qoが求められる(STEP1−31)。このQoは蓄電装置3の劣化状態を考慮した満充電時電荷量である。そして、このQoに、STEP1−29で求めたSOC(蓄電装置3の残容量の現在値)を乗算したもの(これは、蓄電装置3の実際の初期電荷量を意味する)が、蓄電装置3の電荷量Qの現在値として設定される(STEP1−32)。
以上の処理が、第2実施形態におけるSTEP1の蓄電装置初期状態把握処理である。
図7(b)は、第2実施形態におけるSTEP13の蓄電装置能力把握処理のサブルーチン処理を示している。以下、図7(b)の処理を説明すると、まず、STEP13−21〜STEP13−24の処理が順次実行される。これらの処理は、第1実施形態におけるSTEP13−1〜STEP13−4の処理と同一である。次いで、STEP13−24で求めた蓄電装置3の電荷量Qの現在値を、前記蓄電装置初期状態把握処理で求めた満充電時電荷量Qoで除算することにより、残容量SOCの現在値が求められる(STEP13−25)。第2実施形態では、このSOCが蓄電装置3の電力供給能力を表す能力パラメータとして用いられる。第2実施形態における蓄電装置能力把握処理は、STEP13−25の処理のみが、第1実施形態と相違している。
図8(b)は、第2実施形態におけるSTEP14の処理(目標空気流量Qairの決定処理)のサブルーチン処理を示すフローチャートである。このQairの決定処理で、第1実施形態と相違する点は、STEP14−22,14−23,14−24,14−25でそれぞれQair1、Qair2、Qair3、Qair4(これらの意味は、第1実施形態と同じである)を求めるために使用するパラメータおよびマップのみであり、これ以外は第1実施形態と同一である。従って、STEP14−21、STEP14−26、STEP14−27の処理は、それぞれ図8(a)のSTEP14−1、STEP14−6、STEP14−7の処理と同じである。
ここで、STEP14−22,14−23,14−24,14−25でそれぞれQair1、Qair2、Qair3、Qair4を求めるために使用する変数は、STEP1(STEP1−21)で求めた蓄電装置3の初期温度Tbと、STEP13(STEP13−25)で求めた残容量SOCとである。そして、これらの値からQair1、Qair2、Qair3、Qair4を求めるために使用するマップ(相関データ)は、蓄電装置3の温度Tbと、残容量SOCとを変数として持ち、これらの変数とQairとの相関関係を示すマップである。そのマップは、図示を省略するが、前記第1実施形態に係る図10の「Vbo」を「SOC」に置き換えたものと同じような形態で表されるマップである。
図20は、第2実施形態におけるSTEP27の処理(蓄電装置状態学習処理)のサブルーチン処理を示すフローチャートである。以下、図20の処理を説明すると、STEP27−31〜27−35において、第1実施形態に係る図17のSTEP27−1〜STEP27−5の処理と同じ処理が順次実行される。次いで、前記図18のデータテーブル、すなわちTbとkcとの間の相関関係を表すデータテーブルに基づいて、STEP27−31で検出した蓄電装置3の温度Tbの現在値から、これに対応する容量劣化係数kcの値が求められる(STEP27−36)。さらに、STEP27−37、27−38において、第1実施形態の図27−7、図27−8と同じ処理が実行され、それぞれ温度Tbの現在値に対応する出荷時内部抵抗Ro、抵抗劣化係数krが求められる。
次いで、前記STEP1(STEP1−23)でメモリから読込んだ出荷時容量Coに3600[秒]を乗算したものにさらにSTEP27−36で求めたkcを乗算することによって、蓄電装置3の満充電時電荷量Qo(蓄電装置3の現在の温度、劣化状態に対応したQo)が求められる(STEP27−39)。次いで、STEP27−40において、第1実施形態における図17のSTEP27−10と同じ処理により、蓄電装置3の電荷量Qの現在値が求められる。さらに、このQの現在値をSTEP27−39で求めたQoで除算することにより、残容量SOCの現在値が求められる(STEP27−41)。次いで、前記図19(a)に示したマップ、すなわち、TbとSOCとVboとの相関関係を表すマップに基づいて、前記STEP27−1で検出したTbの現在値と、STEP27−41で求めたSOCの現在値とから、蓄電装置3の開放電圧Vboの現在値が求められる(STEP27−42)。なお、STEP27−41で求めたSOCの現在値から図19(b)に示したデータテーブルを基にVboを求めるようにしてもよい。
次いで、STEP27−32で検出した出力電流Ibの現在値が、所定の抵抗補正下限電流値Ib_Lrとが比較され、Ib>Ib_Lrであるか否かが判断される(STEP27−43)。この判断は、第1実施形態における図17のSTEP27−11と同様、抵抗抵抗劣化係数krの補正(学習)を、Ibが比較的大きい状態で行なうことが好ましいことから、その好ましい条件を満たしているか否かを判断するものである。
そして、STEP27−43の判断結果がYESである場合には、STEP27−44〜27−47において、第1実施形態における図17のSTEP27−13〜27−16と同じ処理が順次実行され、これにより、抵抗劣化係数krの値が更新される。なお、この場合、STEP27−44の演算で使用するVboの値は、STEP27−42で求めた値である。
STEP27−43の判断結果がIb>Ib_Lrとなる状態では、以上説明した蓄電装置状態学習処理が繰り返されることで、蓄電装置3の抵抗劣化係数krの値が更新されることとなる。
一方、STEP27−43の判断結果がNOである場合である場合には、STEP27−32で検出したIbの現在値と所定の容量補正下限電流値Ib_Lcとが比較され、Ib<Ib_Lcであるか否かが判断される(STEP27−48)。この判断は、第1実施形態における図17のSTEP27−17と同様、容量劣化係数kcの補正(学習)を、Ibが0に近い状態で行なうことが好ましいことから、その好ましい条件を満たしているか否かを判断するものである。従って、STEP27−48でIb≧Ib_Lcであるときには、蓄電装置状態学習処理(今回のSTEP27の処理)は終了される。
そして、STEP27−48の判断結果が、YESである場合には、STEP27−37で求めたRoにSTEP27−38で求めたkrを乗算することにより、蓄電装置3の温度Tbの現在値に対応した内部抵抗Rの現在値が求められる(STEP27−49)。次いで、STEP27−33で検出した出力電圧Vbの現在値に、STEP27−32で検出した出力電流Ibの現在値とSTEP27−49で求めた内部抵抗Rの現在値との積(これは内部抵抗の電圧降下分を意味する)を加えることにより、開放電圧の現在値Vbo'が求められる(STEP27−50)。
次いで、このSTEP27−50で求められた開放電圧Vbo’の現在値と、所定の容量補正用下限電圧値Vb_Lcとが比較され、Vbo’<Vb_Lcであるか否かが判断される(STEP27−51)。ここで、容量補正用下限電圧値Vb_Lcは、蓄電装置3のSOCに係る下限電圧(SOC=0%とする開放電圧)に相当するものである。従って、STEP27−50の判断結果がYESとなる状態は、蓄電装置3の前記した如く定義されるSOCが0%まで低下した状態を意味している。そして、STEP27−51の判断結果がNOであるときには、蓄電装置状態学習処理(今回のSTEP27の処理)は終了される。
STEP27−51の判断結果がYESである場合には、容量劣化係数kcの値を更新するための条件が満たされている。この場合には、前記STEP27−39で求めたQoからSTEP27−41で求めた電荷量Qの現在値を減算したものを前記STEP1−30で求めたQooで除算することにより、容量劣化係数の現在値kc'が求められる(STEP27−51)。補足すると、このようにして求められるkc'は、kcの現在値(STEP27−36で求めた最新値)に、STEP27−41で求めたSOCの現在値を「1」から差し引いた値を乗算したもの(=kc・(1−SOC))に一致する。従って、kc’は、STEP27−41で求めたSOCの現在値(STEP27−51の判断結果がYESになったときのSOCの値)が0%になっておれば( これはkcの現在値が蓄電装置3の電池容量の現在の劣化状態を正しく表している言える状態である)、kcの現在値に一致する。
次いで、このようにして求めたkc'の値と、STEP27−36で求めたkcの値とから、前記第1実施形態の図17のSTEP27−22と同様に、前記式(4)の移動平均処理の演算によって、kcの値が更新される(STEP27−53)。
このようにして求められたkcの値が、図18のデータテーブルの、Tbの現在値(STEP27−31で検出した値)に最も近い温度に対応する格子点のkcの値として図示しないメモリ(不揮発性のRAM)に格納(記憶保持)される(STEP27−53)。
STEP27−48の判断結果がIb<Ib_Lcとなり、且つ、STEP27−50の判断結果がVbo’<Vb_Lcとなる状態では、以上説明したSTEP27−49、27−50、27−52〜27−54の処理が繰り返されることで、蓄電装置3の容量劣化係数kcの値が更新されることとなる。
以上のようにして、STEP27の蓄電装置状態学習処理では、蓄電装置3の劣化状態を示す抵抗劣化係数krの値と、容量劣化係数kcの値とが更新される。
以上説明した第2実施形態では、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
なお、以上説明した第1および第2実施形態では、ECU5のメインルーチン処理である図2の処理において、燃料電池2の暖機が完了するまで(STEP23の判断結果がYESになるまで)、STEP13〜22の処理を繰り返すようにしたが、最初にSTEP14の処理で決定した目標空気流量Qairを、燃料電池2の暖機が完了するまで(STEP23の判断結果がYESになるまで)維持する(ひいてはQair、Qh、Qwを継続的に一定に維持する)ようにしてもよい。この場合には、例えばSTEP23の判断結果がNOであるときに、STEP22の処理に移行するようにすればよい。
また、前記第1および第2実施形態では、STEP14でQairをマップに基づいて決定したが、例えば図21のフローチャートで示すような処理によって決定するようにすることも可能である。以下、この例を第3実施形態として説明する。なお、この第3実施形態では、蓄電装置3は、第1実施形態と同じコンデンサであるとする。また、この第3実施形態では、図2のSTEP13の蓄電装置能力把握処理は、触媒燃焼器6の着火直後に一度だけ実行される(図2のSTEP23の判断結果がNOであるとき、STEP22の処理に移行する)ことと、STEP14におけるQairの決定処理とが前記第1実施形態のものと相違し、これ以外は、第1実施形態と同一である。
本実施形態におけるQairの決定処理を以下に図21を参照して説明すると、まず、目標空気流量Qairが所定の初期値(例えば、触媒燃焼器6の着火時の空気流量)に設定される(STEP14−41)。さらに所定のフラグの値が0に初期化される(STEP14−42)。次いで、蓄電装置3の温度Tbと、Qairと、前記電動補機7,8,10の総必要電力Lbとの相関関係を表すものとしてあらかじめ定められたマップ(図示省略)を基に、前記STEP1の蓄電装置初期状態把握処理で検出した蓄電装置3の初期温度TbとQairの現在値とから総必要電力Lbが求められる(STEP14−43)。
次いで、蓄電装置3の放電持続時間tradが算出される(STEP14−44)。この放電持続時間tradは例えば次のような演算により算出される。
触媒燃焼器6の着火直後のSTEP13の蓄電装置能力把握処理で最初に求めた開放電圧Vbo(能力パラメータ)の値Vbo1、STEP14−43で求めた総必要電力Lbで電動補機7,8,10を作動させる上で必要な蓄電装置3の出力電圧Vbの下限値をVL、この下限値VLに対応する開放電圧Vbo(能力パラメータの下限値)をVbo2とする。また、Vbo=Vbo1であるときに、STEP14−43で求めた総必要電力Lに対応して流れる蓄電装置3の出力電流をIb1、Vbo=Vbo2であるときに、STEP14−43で求めた総必要電力Lに対応して流れる蓄電装置3の出力電流をIb2とする。
このとき、放電持続時間tradは、Vbo1の値と、前記STEP1の蓄電装置初期状態把握処理で求めた内部抵抗Rの値と、STEP14−43で求めた総必要電力Lbの値と、前記STEP1の蓄電装置初期状態把握処理で求めた静電容量Cの値とから、以下の式(5)〜(10)の演算を順次実行することで求められる。
Ib1=(Vbo1−sqrt(Vbo12−4・R・Lb))/(2・R)……(5)
Ib2=Lb/VL ……(6)
Ib_ave=(Ib1+Ib2)/2 ……(7)
Vbo2=VL+Ib2・R ……(8)
ΔQ=C・(Vbo1−Vbo2) ……(9)
trad=ΔQ/Ib_ave ……(10)
なお、式(5)のsqrt( )は、平方根の演算を意味する。また、式(6)のVLはあらかじめ定めた所定値である。
以上のように算出されるtradは、Qairの現在値(これは図21の処理の中で現在設定されている値で、加熱手段4の実際の制御のために使用しているQairの現在値ではない)に目標空気流量を一定に維持して、加熱手段4を作動させたと仮定した場合に、蓄電装置3の開放電圧Vboがその下限値Vbo2に低下するまでの時間(触媒燃焼器6の着火直後の時刻からの時間)を意味している。なお、放電持続時間tradは、Vbo1の値、Rの値もしくは蓄電装置3の初期温度Tbの値と、Lの値とからマップを基に求めるようにすることも可能である。
次いで、暖機所要時間twarmが算出される(STEP14−45)。この暖機所要時間twarmは例えば次の式(11)〜(14)の演算を順次行なうことにより算出される。
水素ガス流量=K・空気流量 ……(11)
熱交換器の交換熱量=水素ガス流量×水素ガスのLHV
×熱交換器の高温側温度効率 ……(12)
暖機総熱量=燃料電池の熱容量
×(暖機後の燃料電池の目標平均温度−燃料電池の初期温度)
……(13)
twarm=暖機総熱量/熱交換器の交換熱量 ……(14)
これらの式(11)〜(14)は近似演算式である。この場合、式(11)の「K」はあらかじめ定められた所定値であり、「空気流量」の値としては、Qairの現在値が用いられる。また、式(12)の「交換熱量」は、触媒燃焼器6の排ガスから冷媒循環路9への単位時間当たりの伝熱量を意味しており、同式右辺の「LHV」(水素ガスの単位量当たりの真発熱量)は、「高温側温度効率」はあらかじめ定められた所定値である。また、式(13)の「暖機総熱量」は、燃料電池2の暖機に必要な総熱量であり、同式右辺の「熱容量」、「目標平均温度」は、あらかじめ定められた所定値である。そして、式(13)の右辺の「初期温度」としては、本実施形態では、STEP1の蓄電装置初期状態把握処理で検出した初期温度(初期環境温度)Tbが使用される。
以上のように算出されるtwarmは、Qairの現在値(図21の処理の中で現在設定されている値)に目標空気流量を一定に維持して、加熱手段4を作動させたと仮定した場合に、燃料電池2の暖機が完了するまでの時間(触媒燃焼器5の着火直後の時刻からの時間)を意味している。なお、twarmは、前記図2のSTEP16と同様にマップを用いて求めるようにしてもよい。
次いで、上記の如く算出したtradとtwarmとが比較され、trad>twarmであるか否か、すなわち、前記暖機完遂条件を満たすか否かが判断される(STEP14−46)。この判断結果がYESである場合には、Qairの値が、現在値に、所定量ΔQairを加えた値に更新されて、現在値から増加される(STEP14−47)。さらに、フラグの値が1にセットされる(STEP14−48)。
次いで、STEP14−47で更新したQairの値が、所定の上限値(スーパーチャージャ8から供給し得る最大空気流量)を超えているか否かが判断される(STEP14−49)。そして、この判断結果がYESである場合には、Qairの値が上限値に設定され(STEP14−50)、これにより、図21の処理が終了される。補足すると、Qairが上限値に設定される場合は、前記図9(c)の場合に対応している。
また、STEP14−49の判断結果がNOである場合には、STEP14−43からの処理が再び実行される。なお、この場合に、STEP14−43〜14−45で使用するQairの値は、STEP14−47で更新された値である。
前記STEP14−46の判断結果がNOである場合には、Qairの値が、現在値から所定量ΔQairを減算した値に更新されて、現在値から減少される(STEP14−51)。次いで、フラグの値が判断される(STEP14−52)。このときフラグの値が1であるときには、STEP14−51で求めたQairの値は、前記暖機完遂条件が満たされる目標空気流量のうち、暖機所要時間twarmができるだけ短くなるような(あるいは別の言い方をすれば、電動補機7,8,10の総必要電力ができるだけ大きくなるような)目標空気流量である。例示的に言えば、そのQairの値は、前記図9(b)のWpの総必要電力に対応する空気流量にほぼ等しい空気流量であり、この場合には、trad≒twarmである。そこで、STEP14−52でフラグ=1であるときには、STEP14−51で求めたQairの値がそのまま目標空気流量として決定され、図21の処理が終了される。
一方、STEP14−52でフラグ≠1である場合は、STEP14−41で設定したQairの初期値が、前記暖機完遂条件を満たさないような値である場合である。そして、この場合には、Qairの現在値(STEP14−51で求めたQairの値)が、所定の下限値(例えば0)よりも小さいか否かが判断される(STEP14−53)。この判断結果がYESである場合には、Qairの値が下限値に設定され(STEP14−54)、これにより、図21の処理が終了される。補足すると、Qairが下限値に設定される場合は、前記図9(a)の場合(暖機完遂条件を満たすことが不可能な状態)に対応している。
また、STEP14−53の判断結果がNOである場合には、STEP14−43からの処理が再び実行される。なお、この場合に、STEP14−43〜14−45で使用するQairの値は、STEP14−51で更新された値である。
以上が本実施形態(第3実施形態)で目標空気流量Qairを決定する処理である。この処理では、暖機完遂条件を満たし、且つ、暖機所要時間ができるだけ短くなるようなQairが探索的に決定される。補足すると、本実施形態では、前記したように、図2のSTEP13の蓄電装置能力把握処理は、触媒燃焼器6の着火直後に一度だけ実行される(図2のSTEP23の判断結果がNOであるとき、STEP22の処理に移行する)。このため、本実施形態では、燃料電池2の暖機のための加熱手段4の電動補機7,8,10の作動(触媒燃焼器6の着火後の作動)は、目標空気量Qairを上記の如く決定した値に一定に維持して行なわれる。
なお、第3実施形態では、蓄電装置3がウルトラキャパシタである場合について説明したが、蓄電装置3がリチウムイオン電池などの2次電池である場合にも、第3実施形態と同様に、Qairを決定して、加熱手段4の作動を制御することも可能であることはもちろんである。
また、第3実施形態では、STEP13〜21の処理が、触媒燃焼器6の着火直後に一度だけ行なわれるようにしたが、これらの処理を前記第1実施形態の如く、燃料電池2の暖機完了までに繰り返して行なうようにしてもよい。この場合には、STEP14の処理(図21の処理)において、例えば次のようにしてQairを決定するようにすればよい。
すなわち、図21のSTEP14−44でtradを求めるときに、前記式(5)のVbo1の値として、STEP13の処理で求めた開放電圧Vboの最新値を使用し、これにより現在時刻(STEP14の処理の実行時刻)からの放電持続時間trad’を求める。そして、このtrad’に、触媒燃焼器6の着火直後から現在時刻までの経過時間tpastを加算することで、触媒燃焼器6の着火直後からの放電持続時間tradを算出する。
すなわち、次式(15)によりtradが算出される。
trad=tpast+trad’ ……(15)
また、STEP14−45でtwarmを求めるときに、前記式(11)〜(14)の演算により求めた値twarmの値(以下、ここでは参照符号twarm'を付する)に、(1−tpast/twarm'')を乗算したものを、tpastに加算することにより、暖機所要時間twarmを算出する。
すなわち、次式(16)によりtwarmが算出される。
twarm=tpast+twarm'×(1−tpast/twarm'') ……(16)
ここで、twarm’’は、Qairの前回値(加熱手段4の制御のために現在使用している目標空気量)に対応して前記式(11)〜(14)により定まる暖機所要時間であり、twarm'×(1−tpast/twarm'')は、燃料電池2の暖機に要する残り時間に相当するものである。
上記のようにtradおよびtwarmを求めること以外の図21の処理は、第3実施形態と同一でよい。なお、この場合、図21のSTEP14−41では、Qairの初期値として、例えば、加熱手段4の作動制御に使用しているQairの現在値を使用すればよい。
また、前記第1〜第3実施形態では、目標水素ガス流量Qhと目標冷媒流量Qwとをそれぞれマップを用いて決定するようにしたが、それらをQairから演算により算出するようにすることも可能である。
この場合、Qh、Qwはそれぞれ次式(17)、(18)により算出すればよい。
Qh=Qair/(ΔH/Cp_ave/(Tbn−Tgin)−1/2)……(17)
Qw=ΔH・Qh/22.41・φh/(Cpw・ΔTw_hex) ……(18)
ここで、式(17)におけるΔHは、水素ガスのLHV(単位量当たりの真発熱量)、Cp_aveは混合気の平均定圧比熱、Tbnは触媒燃焼器6での燃焼温度、Tginは触媒燃焼器6の入口のガス温度であり、ΔH、Cp_ave、Tbnはあらかじめ定めた所定値が用いられる。また、Tginの値としては、例えば蓄電装置3の初期温度Tbが用いられる。
また、式(18)におけるφhは熱交換器11の高温側温度効率、Cpwは、冷媒の平均比熱、ΔTw_hexは、熱交換器11の冷媒の出口と入口との温度差であり、これらの値はあらかじめ定めた所定値が用いられる。なお、ΔTw_hexは、温度センサにより検出するようにしてもよい。
1…加熱システム、2…燃料電池(被加熱物)、3…蓄電装置、4…加熱手段、5…ECU(加熱作動制御手段、電力供給能力把握手段、劣化状態把握手段)、6…触媒燃焼器(触媒燃焼手段)、7…水素ガス供給器(水素ガス供給手段)、8…スーパーチャージャ(空気供給手段)、9…冷媒循環路、10…循環ポンプ(冷媒供給手段)、11…熱交換器、20…電圧センサ(電圧検出手段)、21…電流センサ(電流検出手段)、22…温度センサ(温度検出手段)。