JP4502886B2 - 化成処理性に優れた高強度高延性鋼板 - Google Patents
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(i)上記第2相組織のサイズをナノレベルまで微細化し、マトリックス(母相組織)として第2相組織との界面における応力集中を低減すれば、当該第2相組織は破壊の起点として作用しなくなること;
(ii)「この様なナノサイズの第2相組織は、脆弱なマトリックス界面(粒界)ではなく、マトリックス内(結晶粒内)に生成させればよい」
という知見の下に、「如何にしてナノレベルの第2相組織を安定して結晶粒内に分散させるか」という観点から更に研究を重ねてきた。その結果、上記知見を具現化するには、予め結晶粒内に数nm〜数百nmサイズでオーステナイト安定化元素の偏析部(濃化域)を導入しておけば、その後の熱処理工程で、当該偏析部が消失しない様に留意して熱処理をすることによって、延性、特に伸びフランジ性(λ)が顕著に改善された高強度鋼板が得られることを明らかにした。本発明においても、これらの基本思想は該先願発明と本質的に変わりがない。
Cは強度の確保に有用であり、特にTRIP鋼板の場合は、所定の残留オーステナイトを確保するために重要な元素である。しかし、本発明で強度や延性などに加えて他の重要な特性として意図する化成処理性やめっき性に関する限り、Cは明らかにマイナス作用を示す。従って、化成処理性やめっき性の確保を重要な課題とする本発明では、C含量を極力少なく抑えるのがよく、多くとも0.12%以下に抑える。より好ましくは0.10%未満、更に好ましくは0.08%以下である。
Siは、フェライト相中の固溶C量を減少させて延性向上に寄与すると共に、固溶強化元素としても有用な元素であるが、反面、化成処理性を劣化させるばかりでなく、めっき性にも顕著な悪影響を及ぼす。従って、TRIP鋼板として実用レベルの化成処理性を確保するには、Si含量を多くとも0.8%以下、より好ましくは0.6%以下に抑えるのがよい。またSiは、めっき性にも更に顕著な影響を及ぼし、満足のいくめっき性を確保するには0.2%以下に抑えるべきであり、より好ましくは0.05%以下に抑えるのがよい。
MnもSiと同様に固溶強化元素として有用であり、冷却過程で生じる組織変態を抑制してオーステナイト相を安定化するために不可欠の元素である。またTRIP鋼板の場合は、Siと同様に残留オーステナイトの生成に寄与する。これらの作用を有効に発揮させるには0.7%以上含有させねばならない。好ましくは1.0%以上、更に好ましくは1.5%以上である。しかし、それらの効果は約4%で飽和するので、それを超える過剰量の添加は経済的に無駄である。好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.0%以下である。
これらの元素は強度−延性バランスを高く保持したまま、高強度化を実現するのに有効な元素であり、特にTRIP鋼板ではオーステナイト安定化元素として有用である。これらの元素は、単独で添加してもよいし、2種以上を任意の組合せで併用しても構わない。TRIP鋼板の場合、特にCuとNiを夫々単独で、或いは複合添加するのがよく、それらの好ましい添加量は各々0.1%以上である。一方、これらの元素が過剰になると、熱延時に割れが生じるなど生産性を害するので、合計で10%以下(好ましくは、Ni,Cu共に2%以下)に抑えるのがよい。
Crは強度向上に寄与する元素であり、その作用を有効に発揮させるため0.1%以上(より好ましくは0.2%以上)添加することができる。しかし、その効果は1.0%程度で飽和するばかりか、多過ぎると延性を劣化させ、またTRIP鋼板の場合、過剰量のCrは炭化物を生成して残留オーステナイト(γR)の生成を阻害する。従ってCrは1.0%以下に抑えるのがよい。より好ましくは0.8%以下である。
Alは脱酸に寄与する元素であるが、2.0%を超えると連鋳時に割れを生じ易くなるので、それ以下に抑えるべきであり、より好ましくは1.0%以下である。
これらの元素は、いずれも析出強化元素として作用し、その作用を有効に発揮させるには、上記元素の少なくとも1種(1種でもよいし、2種以上併用してもよい)を、合計で0.01%以上(より好ましくは0.05%以上)添加するのがよい。但し、合計量が0.1%を超えると、炭化物が生成して好適なγR量を確保できなくなるので、より好ましくは合計で0.08%以下に抑えるのがよい。
まず、上記化学成分(但し、オーステナイト安定化元素を必須成分とする)を含む鋼材を溶体化処理する。この溶体化処理(ソーキング)は、Mn等の中心偏析を防止し、鋼中成分を全て均一に溶解させる手段として極めて有用であり、最終的にオーステナイト安定化元素の偏析にも寄与するので重要な工程である。
JIS5号試験片を用いて測定した。
縦70mm×横70mm×厚さ2.0mmの試験片を作製し、中央に直径10mmの穴をパンチ打ち抜きした後、60°円錐パンチを用いてバリ上で穴拡げ加工し、亀裂貫通した時点での穴拡げ率(λ)を測定した(鉄鋼連盟規格JFST 1001)。
各鋼材中の母相組織(焼戻マルテンサイト及びベイナイト)の面積率は、鋼材をナイタールで腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM:倍率1000倍または2000倍)観察により組織を同定した後に測定した。なお残留オーステナイトは、飽和磁化測定法によって体積率(%)を測定した[特開2003−90825号公報、R&D神戸製鋼技報/Vol.52,No.3(Dec.2002)参照]。
各供試鋼板の表面を下記の条件で化成処理した後、鋼板表面を1000倍でSEM観察し、任意に選択した10視野について燐酸亜鉛結晶の付着状況を調べ、下記の基準で化成処理性を評価した。
化成処理液:日本パーカライジング社製の処理液「パルボンドL3020」を使用、
化成処理工程:脱脂→水洗→表面調整→化成処理、
評価基準:
○…10視野の全てに燐酸亜鉛結晶が95%以上の面積で付着している、
×…10視野のうち1視野でも燐酸亜鉛結晶の未付着部(スケと称する)が5%
以上存在する。
0.13%のAlを含有する温度約450℃の溶融亜鉛浴中に各供試鋼板を浸漬することによって溶融亜鉛めっきを行い、得られた各めっき鋼板の表面を500mm×500mmの領域で10視野を目視観察し、めっきが付着していない領域(不めっきと称する)の有無により下記の基準で評価した。
○:10視野の全てに不めっきが見られない、
×:10視野のうち1視野でも不めっきが存在する。
表1に示した成分組成の鋼材を溶製し鋳造した後、加熱温度1100℃で粗圧延して厚さ30mmのスラブを得、1200℃で24時間ソーキングしてから炉冷した。次いで表面の酸化スケールを研削除去した後、仕上げ温度900℃で熱間圧延を行い、厚さ3.2mmの熱延鋼板を得た。酸洗ののち冷間圧延して厚さ1.2mmの薄鋼板を得、これを950℃で5分間加熱してから水焼入れした後、500℃×10時間の時効処理を行なった。この試料を再度920℃で5分間加熱し、400℃まで急冷してから同温度で4分間保持した後空冷した。
表2に示した成分組成の鋼材を溶製し鋳造した後、加熱温度1100℃で粗圧延して厚さ30mmのスラブを得、1200℃で24時間ソーキングしてから炉冷した。次いで表面の酸化スケールを研削除去した後、仕上げ温度900℃で熱間圧延を行なって厚さ3.2mmの熱延鋼板を得た。酸洗ののち冷間圧延して厚さ1.2mmの薄鋼板を得、これを950℃で5分間加熱してから水焼入れした後、500℃×10時間の時効処理を行った。この試料を再度920℃で5分間加熱し、400℃まで急冷してからめっき浴に進入させた後、めっき液から取り出して400℃で4分間保持した後空冷した。
Claims (3)
- C:0.12質量%以下(0質量%を含まない)、
Si:0.8質量%以下(0質量%を含まない)、
Mn:0.7〜4質量%、
Cu:0.1質量%以上、および/またはNi:0.1質量%以上を含有し、且つCuとNiの含有量の合計は10質量%以下であり、
残部Feおよび不可避不純物からなる鋼板であって、母相組織が、焼戻マルテンサイト単独組織、ベイナイト単独組織、焼戻マルテンサイトとフェライトの混合組織、ベイナイトとフェライトの混合組織、フェライト単独組織のいずれかであって、該母相組織の結晶粒内に、第2相組織として平均粒径500nm以下の残留オーステナイトが占積率で3〜20%分散していることを特徴とする化成処理性に優れた700MPa以上の高強度高延性鋼板。 - C:0.12質量%以下(0質量%を含まない)、
Si:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、
Mn:0.7〜4質量%、
Cu:0.1質量%以上、および/またはNi:0.1質量%以上を含有し、且つCuとNiの含有量の合計は10質量%以下であり、
残部Feおよび不可避不純物からなる鋼板であって、母相組織が、焼戻マルテンサイト単独組織、ベイナイト単独組織、焼戻マルテンサイトとフェライトの混合組織、ベイナイトとフェライトの混合組織、フェライト単独組織のいずれかであって、該母相組織の結晶粒内に、第2相組織として平均粒径500nm以下の残留オーステナイトが占積率で3〜20%分散していることを特徴とするめっき性に優れた700MPa以上の高強度高延性鋼板。 - 前記第2相は、Cuおよび/またはNiを含んでおり、該第2相組織中のCuおよび/またはNiの合計含有率が、鋼板全体のオーステナイト安定化元素の含有率よりも10質量%以上高いものである請求項1または2に記載の高強度高延性鋼板。
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