JP4502252B2 - エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション及び水系ハードコート剤 - Google Patents
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Description
このような事情から、アクリレート化合物を乳化剤により水分散する方法や(例えば特許文献1参照)、化合物の構造中に親水性官能基を持たせて水溶化する方法(例えば特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、それらで提案されている方法では、硬化膜の機械的な強度や耐熱性、耐水性などは十分とは言い難く、その改善策が各種検討されており、例えば分子内にエチレン性不飽和基をもつ親水性樹脂を乳化剤として使用する方法(例えば特許文献3)などが提案されている。
またフィルムやプラスチック成型物などの被塗物はその表面張力が低いことにより、従来提案されているような水系の塗料を用いても、塗工時のハジキや表面状態の不良、密着不良などの問題を起こす等種々の問題を抱えていた。
いずれにしてもフィルムやプラスチック成型物等のハードコート剤として、充分満足出来る性能が得られるような水系のエネルギー線硬化型の塗料が求められていた。
すなわち本発明は、
(1)分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を含有するエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(2)全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂剤(B)が、その分子内にさらにエチレン性不飽和基を持つ(1)に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(3)分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである(1)又は(2)に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(4)ジアルキルスルホコハク酸塩(C)のアルキル基が2−エチルヘキシル基又はオクチル基である(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション。
(5)全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の含有量が、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中の水を除く全質量中のそれぞれ5〜20質量%、1〜8質量%である(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
(6)(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションからなるハードコート剤、
に関する。
(メタ)アクリレート類は、一般に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を3個若しくは4個以上有する多官能モノマーに大別されるが、被膜形成能や被膜硬度の点から、(メタ)アクリロイル基を3個以上有するオリゴマーや多官能モノマーを本発明では用いる。本発明で使用する、分子内に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)としては常温で液状のものが好ましい。
中でも本発明の用途には、硬化性や硬度などの点からジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
分子中に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)の使用量(含有量)は、成膜性や塗膜強度等の膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中水を除く全質量中のの通常60〜100質量%、好ましくは80〜97質量%の範囲である。
ここで、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)とは、(エチレンオキサイド基部分が占める分子量)/(親水性樹脂の分子量)が70%以上であることを意味する。
本発明においては、親水性樹脂(B)の分子構造中に更にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基などのエチレン性不飽和基を有する樹脂であるものがより好ましい。そのようなものとしては、例えば、アクアロンRN−50(反応性乳化剤
エチレンオキサイド基の割合89質量% プロペニル基を有する 第一工業製薬(株)製、)、アクアロンRN−30(反応性乳化剤 エチレンオキサイド基の割合84質量%、プロペニル基を有する 第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−40(エチレンオキサイド84質量%、ビニル基を有する 旭電化工業(株)製)などが挙げられる。エチレン性不飽和基を有さないものとしては、例えば旭電化工業(株)製プルロニックF68(エチレンオキサイド基の割合80質量% 旭電化工業(株)製)、ノイゲンTDS−120(エチレンオキサイド基の割合74質量% 第一工業製薬(株)製)、ノイゲンXL−160(エチレンオキサイド基の割合82質量% 第一工業製薬(株)製)、DKS NL−350(エチレンオキサイド基の割合89質量% 第一工業製薬(株)製)などが市販されている。
これらの親水性樹脂(B)は単独でも2種類以上を併用しても良いが、親水性樹脂(B)がノニオン系化合物である場合には、少量のアニオン系化合物を併用する方がより好ましい。併用するアニオン系化合物は特に限定はされないが、その構造中にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基などのエチレン性不飽和基を有する化合物がより好ましい。このようなものとしては、例えばAntox MS−60(メタクリロイル基含有 日本乳化剤(株)製)や、アクアロンHS−10(プロペニル基含有 第一工業製薬(株)製)、アクアロンKH−10(アリル基含有 第一工業製薬(株)製)などが挙げられる。
全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)の使用量(含有量)はエマルションの安定性や耐水性などの膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの水を除く全質量中の通常4〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲である。
ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の使用量(含有量)は、エマルションの塗工適性や耐水性などの膜性能、あるいはプラスチックへの密着性等を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの水を除く全質量中の通常0.2〜10質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲である。
使用しうる単官能モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等があげられる。
これらの単官能モノマー、2官能モノマー、2個以下の(メタ)アクリレートを有するオリゴマ−は、必要に応じて、エネルギー線硬化性全重量中、0〜40重量%の範囲で含有される。
すなわち、まず、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)を水に溶解又は分散させ分散液又は溶液(a)を得る。他方、分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)に、必要に応じ光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤等も一緒に添加して溶解液あるいは分散液(b)を得る。こうして得られた(b)と前記(a)を混合し、ホモミキサー 、サンドミル等の高速撹拌機又はマイクロフルイダイザー等を用いて乳化・分散させることによりエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションが得られる。その後ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を混合添加して本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを得る。あるいはジアルキルスルホコハク酸塩(C)は、エネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを得る際に、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)を水に溶解又は分散させた分散液又は溶液(a)に、予め添加して用いることもできる。 また、光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤等が水に容易に溶解・分散可能な形態である場合には、同様にエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを得た後に混合添加してもよい。
有機顔料としては例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、ベンゾイミダゾロン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系等の顔料や酸性染料、塩基性染料、直接染料等をそれぞれの沈澱剤で不溶化したレーキ顔料、染付けレーキ顔料が使用できる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
その後塗工物を乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。その際、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが決定されるが、高圧水銀灯を用いる場合、80〜120W/cmの光量を有したランプにより搬送速度20〜60m/分、1〜4回照射して硬化させるのが好ましい。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 46部
光重合開始剤(イルガキュアー184;チバガイギー社製) 3部
親水性樹脂(B)(プルロニックF68;旭電化工業製) 6部
ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液 5部
水 41部
実施例1において、プルロニックF68の代わりにアクアロンRN−50(第一工業製薬製)5部およびAntox MS−60(日本乳化剤製)1部を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明のエネルエネルギー線硬化性ギー線硬化性水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有するABS樹脂製基板を得た。
実施例2において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート46部の代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート23部及びEO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート23部を、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液の代わりにジオクチルシルスルホコハク酸Na塩の70%溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有する塗工物(ABS樹脂製基板)を得た。
実施例2において、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液を用いない以外は、実施例2と同様にして比較用の水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有する塗工物(ABS樹脂製基板)を得た。
実施例1のエマルションを用いたものは塗工性が良好で表面の状態が良好な硬化膜が得られ、耐擦傷性および密着性が良好だった。しかし比較例1のエマルションを用いたものはハジキがひどく基材が硬化膜で覆われていない部分もあり評価不能だった。
(1)エマルションの (2)塗工性 (3)耐擦傷性 (4)密着性
安定性
実施例1 ◎ ○ ○ 100
実施例2 ◎ ○ ○ 100
実施例3 ◎ ○ ○ 100
比較例1 ◎ × ○ 100
得られた各エマルションを室温にて1ヶ月間静置し、外観観察および粒度分布(大塚電子(株)製LPA−3100)により安定性を評価した。
◎:粒度、液の状態ともに殆んど変化がない。
○:若干の離水がみられるが再分散性が良好であり、粒度はほとんど変化がない。
△:再分散性は良好であるが、粒度の変化あり。
×:油相と水相の分離がみられる。
(2)塗工性
○:ハジキなどがなく良好
△:ハジキが若干認められる
×:ハジキなどのため塗工不能
スチールウール#0000上に200g/cm2の荷重をかけて10往復させ、傷の状況を目視で判定した。
○:傷なし
×:傷発生
JIS K 5400碁盤目試験に準じ、フィルムの表面の密着性の評価を行った。判定は100個の碁盤目のうち、残った個数を表示した。
実施例1で得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションおよび比較例1で得られた比較用のエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを、それぞれ固形分50%に水で希釈し、乾燥塗工量が10g/m2 (膜厚10μm)となるように、溶剤系アクリルラッカーで表面が着色されたABS基材にスプレー塗工した。これを80℃×5分乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度10m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを硬化させて、その硬化膜を得た。
実施例1で得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションおよび比較例1で得られた比較用のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを、それぞれ固形分50%になるように水で希釈し、バーコーターにより乾燥塗工量が10g/m2 (膜厚10μm)となるようにに188μmの易接着処理PETフィルム(東レルミラーA4300)に塗工した。これを80℃×5分乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度10m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを硬化させて、その硬化膜を得た。実施例1のエマルションを用いたものは塗工性が良好で表面の状態が良好な硬化膜が得られ、耐擦傷性および密着性が良好だった。JIS K 5400に準じ、鉛筆引っかき試験機を用いて、3Hの鉛筆引っかき試験を測定したところ傷は生じなかった。それに対して比較例1のエマルションを用いたものはハジキがひどく表面状態が不良であり、透明な塗工フィルムは得られなかった。
Claims (6)
- 分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、からなる群から選ばれる1以上である全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を含有するエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
- 全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂剤(B)が、その分子内にさらにエチレン性不飽和基を持つ請求項1に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
- 分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである請求項1又は請求項2に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
- ジアルキルスルホコハク酸塩(C)のアルキル基が2−エチルヘキシル基又はオクチル基である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション。
- 全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の含有量が、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中の水を除く全質量中のそれぞれ5〜20質量%、1〜8質量%である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションからなるハードコート剤。
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