JP4502252B2 - エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション及び水系ハードコート剤 - Google Patents

エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション及び水系ハードコート剤 Download PDF

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Description

本発明は、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、及び該エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションからなるハードコート剤に関する。更に詳しくは、経時的に安定で、人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈塗工でき、プラスチック基材への塗工が可能な水系のエネルギー線硬化型ハードコート剤に関する。
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界、電気電子業界を始めとして種々の産業界で大量に使われている。このようにプラスチックが大量に使われている理由はその加工性、透明性等に加えて、軽量であること、安価であること、光学特性に優れる等の理由による。しかしながらガラス等に比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有している。これらの欠点を改良するために表面にハードコート剤をコーティングすることが一般的な手段として採用されている。
近年、エネルギー線硬化型のアクリル系ハードコート剤が開発され、実用に供されるようになった。エネルギー線硬化型のアクリル系ハードコート剤は、紫外線等のエネルギー線を照射することによって容易に硬化して硬い皮膜(ハードコート)を形成するために、加工の処理スピードが速く、また得られたハードコートのハードネス、耐摩耗性等に優れた性能を持ち、トータルコスト的に安価になるので、今やハードコート分野の主流に成っている。特にポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエーテルスルフォン等のフィルムのハードコートや、建材用途としての木工用ハードコート、プラスチックの立体成型物のハードコートなどがその例である。それらの中でも、フィルムやプラスチックのハードコート加工では、グラビアコーティングやスプレーコーティング等のように比較的低粘度での塗工方式でコーティング出来るように、エネルギー線硬化型樹脂を溶剤や低粘度の希釈モノマーで希釈して塗工するケースがほとんどである。この際に使用される溶剤としては、作業環境の改善、環境汚染の防止等の観点から水が使用出来ることが好ましい。
このような事情から、アクリレート化合物を乳化剤により水分散する方法や(例えば特許文献1参照)、化合物の構造中に親水性官能基を持たせて水溶化する方法(例えば特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、それらで提案されている方法では、硬化膜の機械的な強度や耐熱性、耐水性などは十分とは言い難く、その改善策が各種検討されており、例えば分子内にエチレン性不飽和基をもつ親水性樹脂を乳化剤として使用する方法(例えば特許文献3)などが提案されている。
またフィルムやプラスチック成型物などの被塗物はその表面張力が低いことにより、従来提案されているような水系の塗料を用いても、塗工時のハジキや表面状態の不良、密着不良などの問題を起こす等種々の問題を抱えていた。
いずれにしてもフィルムやプラスチック成型物等のハードコート剤として、充分満足出来る性能が得られるような水系のエネルギー線硬化型の塗料が求められていた。
特開昭50−79533号公報(第1−2頁) 特開平4−114020号公報(第1−2頁) 特許第3114898号公報(第1−2頁)
本発明の目的は、経時的に安定で、人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈塗工でき、樹脂フイルム、樹脂成型物等のプラスチック基材への塗工が容易で、充分に満足出来るような性能を有するハードコートが得られるような、及び該エネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションの水系ハードコート剤を提供することにある。
本発明者等は上記の問題を解決するために鋭意努力した結果、特定の組成を有するエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションからなる水系ハードコート剤が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(1)分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を含有するエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(2)全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂剤(B)が、その分子内にさらにエチレン性不飽和基を持つ(1)に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(3)分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである(1)又は(2)に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション、
(4)ジアルキルスルホコハク酸塩(C)のアルキル基が2−エチルヘキシル基又はオクチル基である(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション。
(5)全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の含有量が、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中の水を除く全質量中のそれぞれ5〜20質量%、1〜8質量%である(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
(6)(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションからなるハードコート剤、
に関する。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションは安定性が良好で、人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈可能で、プラスチック基材への塗工性が良好であり、又その硬化膜の密着性や硬度、擦傷性が良好である。
本発明を詳細に説明する。
(メタ)アクリレート類は、一般に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能モノマー、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を3個若しくは4個以上有する多官能モノマーに大別されるが、被膜形成能や被膜硬度の点から、(メタ)アクリロイル基を3個以上有するオリゴマーや多官能モノマーを本発明では用いる。本発明で使用する、分子内に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)としては常温で液状のものが好ましい。
かかる多官能モノマーの具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
更に、オリゴマーとしては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等のうち、分子内に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物として挙げられる。
中でも本発明の用途には、硬化性や硬度などの点からジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
分子中に少なくとも3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)の使用量(含有量)は、成膜性や塗膜強度等の膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中水を除く全質量中のの通常60〜100質量%、好ましくは80〜97質量%の範囲である。
全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩などのアニオン系化合物など、一般に商品化されている乳化分散剤・界面活性剤のうち、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占めるものが挙げられる。全質量のうちエチレンオキサイド基が占める質量の割合が70質量%未満であるものは、安定なO/W型エマルションを形成しづらく本発明においては好ましくない。
ここで、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)とは、(エチレンオキサイド基部分が占める分子量)/(親水性樹脂の分子量)が70%以上であることを意味する。
本発明においては、親水性樹脂(B)の分子構造中に更にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基などのエチレン性不飽和基を有する樹脂であるものがより好ましい。そのようなものとしては、例えば、アクアロンRN−50(反応性乳化剤
エチレンオキサイド基の割合89質量% プロペニル基を有する 第一工業製薬(株)製、)、アクアロンRN−30(反応性乳化剤 エチレンオキサイド基の割合84質量%、プロペニル基を有する 第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−40(エチレンオキサイド84質量%、ビニル基を有する 旭電化工業(株)製)などが挙げられる。エチレン性不飽和基を有さないものとしては、例えば旭電化工業(株)製プルロニックF68(エチレンオキサイド基の割合80質量% 旭電化工業(株)製)、ノイゲンTDS−120(エチレンオキサイド基の割合74質量% 第一工業製薬(株)製)、ノイゲンXL−160(エチレンオキサイド基の割合82質量% 第一工業製薬(株)製)、DKS NL−350(エチレンオキサイド基の割合89質量% 第一工業製薬(株)製)などが市販されている。
これらの親水性樹脂(B)は単独でも2種類以上を併用しても良いが、親水性樹脂(B)がノニオン系化合物である場合には、少量のアニオン系化合物を併用する方がより好ましい。併用するアニオン系化合物は特に限定はされないが、その構造中にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基などのエチレン性不飽和基を有する化合物がより好ましい。このようなものとしては、例えばAntox MS−60(メタクリロイル基含有 日本乳化剤(株)製)や、アクアロンHS−10(プロペニル基含有 第一工業製薬(株)製)、アクアロンKH−10(アリル基含有 第一工業製薬(株)製)などが挙げられる。
全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)の使用量(含有量)はエマルションの安定性や耐水性などの膜性能を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの水を除く全質量中の通常4〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲である。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションはジアルキルスルホコハク酸塩(C)を必須成分として含有する。塩の種類としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。アルキル基は炭素数3〜20の直鎖あるいは分岐したものが挙げられ、中でも炭素数5〜14のものが好ましく、2−エチルヘキシル基あるいはオクチル基が特に好ましい。
ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の使用量(含有量)は、エマルションの塗工適性や耐水性などの膜性能、あるいはプラスチックへの密着性等を考慮すると、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの水を除く全質量中の通常0.2〜10質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲である。
本発明においては前記した各成分の他に、単官能モノマー、2官能モノマー、先に挙げたオリゴマーのうち分子内に2個以下の(メタ)アクリレートを有するもの等を、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの粘度調整を目的として使用しても良い。
使用しうる単官能モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等があげられる。
又、使用しうる2官能モノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等があげられる。
オリゴマーのうち分子内に2個以下の(メタ)アクリレートを有するオリゴマ−としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等のうち、分子内に2個以下のアクリロイル基を有する化合物等が挙げられる。
これらの単官能モノマー、2官能モノマー、2個以下の(メタ)アクリレートを有するオリゴマ−は、必要に応じて、エネルギー線硬化性全重量中、0〜40重量%の範囲で含有される。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションにおいて、これを電子線で硬化させる場合は使用しなくてもよいが、紫外線で硬化させる場合は光重合開始剤、又必要に応じ、光重合促進剤を使用するのが好ましい。使用しうる光重合開始剤の具体としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ベンジルなどが挙げられる。同じく、光重合促進剤の具体としてはN−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアモン、ジエタノールアミン、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、N,N−ジエチル−P−アミノベンゾニトリル等のアミン系化合物や、トリ−n−ブチルホスフィン等のリン化合物、ヘキサクロロエタン等の塩素化合物、ミヒラーケトン等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの重合開始剤及び促進剤の含有割合は、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの水を除く全質量中の、それぞれ通常0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
さらに、本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションには、必要に応じて、ポリマー、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、蛍光染料などの添加剤を、その種類、使用量を適宜選択して併用することができる。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションは、例えば、次のようにして製造される。
すなわち、まず、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)を水に溶解又は分散させ分散液又は溶液(a)を得る。他方、分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)に、必要に応じ光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤等も一緒に添加して溶解液あるいは分散液(b)を得る。こうして得られた(b)と前記(a)を混合し、ホモミキサー 、サンドミル等の高速撹拌機又はマイクロフルイダイザー等を用いて乳化・分散させることによりエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションが得られる。その後ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を混合添加して本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを得る。あるいはジアルキルスルホコハク酸塩(C)は、エネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを得る際に、全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)を水に溶解又は分散させた分散液又は溶液(a)に、予め添加して用いることもできる。 また、光重合開始剤、光重合促進剤、その他の添加剤等が水に容易に溶解・分散可能な形態である場合には、同様にエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを得た後に混合添加してもよい。
このようにして得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションは、その中に固形分質量が通常20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%含有されるように調製される。こうして得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションは経時的に安定であり、又、塗工に際し必要に応じて水で希釈した場合もエマルションは安定である。このような本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションはそのままハードコート剤として使用が可能である。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションには、水で希釈・分散可能な材料であれば、ポリマー、レベリング剤、消泡剤、光安定化剤、帯電防止剤、蛍光染料などの添加剤を、種類、使用量を適宜選択して添加することができる。
また、本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションには必要に応じてフィラーを添加しても良い。その粒径は、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中の樹脂組成物の硬化膜厚より小さいものが好ましく、より好ましくは平均粒径として0.01〜5μm程度である(測定は、例えば1μm以下のような細かいものはBET法、それより大きいものは沈降法による)。
フィラーとしては、無機フィラーや有機フィラーがあげられる。無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、タルク、クレイ、カオリン、コロイダルシリカ、金属粉末等の無機粉末やこれらの無機粉末を表面処理したフィラー等が挙げられる。又、有機フィラーとしては、例えばスチレンマイクロボール、ポリスチレン樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、尿素−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、アスパラギン酸エステル誘導体、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アマイド、エポキシ樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、芳香族ポリエステル等が挙げられる。
また、さらに本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションには必要に応じて着色剤を添加することもできる。着色剤としては有機顔料や無機顔料を特に制限なく用いることが出来る。
有機顔料としては例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、ベンゾイミダゾロン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系等の顔料や酸性染料、塩基性染料、直接染料等をそれぞれの沈澱剤で不溶化したレーキ顔料、染付けレーキ顔料が使用できる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、無機顔料の例としては、複合金属酸化物顔料、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、鉄黒、鉛丹、硫化亜鉛、カドニウムエロー、カドニウムレッド、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の金属酸化物、金属硫化物、硫酸塩、金属水酸化物、金属炭酸塩等が挙げられる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
フィラーや着色剤は、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを製造する際に、予め分子中に少なくとも3つ以上のアクリロイル基を有する化合物(A)の中に溶解または分散混合しておき、先に述べた方法と同様に乳化分散して水中油滴型エマルションを得るのが好ましい。その際の分散方法としてはボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の分散機を用いる方法が挙げられ、分散剤として、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、変性シリコーンオイル等のシリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤などを用いることは、フィラーや着色剤の分散状態を向上させる上で好ましい。
本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションの硬化膜を形成させる方法は、スプレー塗工、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などによりそれ自体公知の方法を用いて基材に塗工する。基材は特に限定されないが、フィルム、プラスチック成型物、紙、合成紙、木などが例として挙げられる。この際、使用する基材には柄や易接着層を設けたものであっても良い。
その後塗工物を乾燥し、次いで紫外線や電子線等のエネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。その際、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置が好ましい。一方、紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが決定されるが、高圧水銀灯を用いる場合、80〜120W/cmの光量を有したランプにより搬送速度20〜60m/分、1〜4回照射して硬化させるのが好ましい。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。尚、以下において、部は質量部を、%は質量%をそれぞれ意味する。
実施例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 46部
光重合開始剤(イルガキュアー184;チバガイギー社製) 3部
親水性樹脂(B)(プルロニックF68;旭電化工業製) 6部
ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液 5部
水 41部
先ず、プルロニックF68を水に溶解した。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに光重合開始剤を添加、溶解し、そこに前記プルロニックF68の水溶液を添加、混合し、乳化分散して、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを得た。この水中油滴型エマルションにジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液を添加混合し、本発明のエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを得た。これを固形分が50%になるように水で希釈し、バーコーターにより乾燥塗工量が10g/m2 (膜厚10μm)となるようににABS樹脂製基板上に塗工した。これを80℃×5分乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度10m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを硬化させて、その硬化膜を有するABS樹脂製基板を得た。
実施例2
実施例1において、プルロニックF68の代わりにアクアロンRN−50(第一工業製薬製)5部およびAntox MS−60(日本乳化剤製)1部を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明のエネルエネルギー線硬化性ギー線硬化性水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有するABS樹脂製基板を得た。
実施例3
実施例2において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート46部の代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート23部及びEO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート23部を、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液の代わりにジオクチルシルスルホコハク酸Na塩の70%溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして本発明の水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有する塗工物(ABS樹脂製基板)を得た。
比較例1
実施例2において、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸Na塩の80%溶液を用いない以外は、実施例2と同様にして比較用の水中油滴型エマルション及びその硬化膜を有する塗工物(ABS樹脂製基板)を得た。
この様にして得られた各水中油滴型エマルション及び硬化膜の評価を行い、それぞれの結果を表1に示した。また、評価基準は以下に述べるものを採用した。
実施例1のエマルションを用いたものは塗工性が良好で表面の状態が良好な硬化膜が得られ、耐擦傷性および密着性が良好だった。しかし比較例1のエマルションを用いたものはハジキがひどく基材が硬化膜で覆われていない部分もあり評価不能だった。
表1 評価結果
(1)エマルションの (2)塗工性 (3)耐擦傷性 (4)密着性
安定性
実施例1 ◎ ○ ○ 100
実施例2 ◎ ○ ○ 100
実施例3 ◎ ○ ○ 100
比較例1 ◎ × ○ 100
(1)水中油滴型エマルションの安定性
得られた各エマルションを室温にて1ヶ月間静置し、外観観察および粒度分布(大塚電子(株)製LPA−3100)により安定性を評価した。
◎:粒度、液の状態ともに殆んど変化がない。
○:若干の離水がみられるが再分散性が良好であり、粒度はほとんど変化がない。
△:再分散性は良好であるが、粒度の変化あり。
×:油相と水相の分離がみられる。
(2)塗工性
○:ハジキなどがなく良好
△:ハジキが若干認められる
×:ハジキなどのため塗工不能
(3)耐擦傷性試験
スチールウール#0000上に200g/cm2の荷重をかけて10往復させ、傷の状況を目視で判定した。
○:傷なし
×:傷発生
(4)密着性
JIS K 5400碁盤目試験に準じ、フィルムの表面の密着性の評価を行った。判定は100個の碁盤目のうち、残った個数を表示した。
実施例4
実施例1で得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションおよび比較例1で得られた比較用のエネルギー線硬化性の水中油滴型エマルションを、それぞれ固形分50%に水で希釈し、乾燥塗工量が10g/m2 (膜厚10μm)となるように、溶剤系アクリルラッカーで表面が着色されたABS基材にスプレー塗工した。これを80℃×5分乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度10m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを硬化させて、その硬化膜を得た。
実施例5
実施例1で得られた本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションおよび比較例1で得られた比較用のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを、それぞれ固形分50%になるように水で希釈し、バーコーターにより乾燥塗工量が10g/m2 (膜厚10μm)となるようにに188μmの易接着処理PETフィルム(東レルミラーA4300)に塗工した。これを80℃×5分乾燥した後に、80W/cmの高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(GS ASE−20;日本電池社製)によりコンベアー速度10m/minで1回照射させることによりエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションを硬化させて、その硬化膜を得た。実施例1のエマルションを用いたものは塗工性が良好で表面の状態が良好な硬化膜が得られ、耐擦傷性および密着性が良好だった。JIS K 5400に準じ、鉛筆引っかき試験機を用いて、3Hの鉛筆引っかき試験を測定したところ傷は生じなかった。それに対して比較例1のエマルションを用いたものはハジキがひどく表面状態が不良であり、透明な塗工フィルムは得られなかった。
表1、実施例4及び実施例5から明らかなように、本発明のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションは安定性が良好で、人体および環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を使用することなく水で希釈可能で、プラスチック基材への塗工性が良好であり、またその硬化膜の密着性や硬度、擦傷性は良好であった。

Claims (6)

  1. 分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、からなる群から選ばれる1以上である全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)を含有するエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
  2. 全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂剤(B)が、その分子内にさらにエチレン性不飽和基を持つ請求項1に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
  3. 分子中に少なくとも3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである請求項1又は請求項2に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
  4. ジアルキルスルホコハク酸塩(C)のアルキル基が2−エチルヘキシル基又はオクチル基である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水中油滴型エマルション。
  5. 全質量のうち70質量%以上をエチレンオキサイド基が占める親水性樹脂(B)、ジアルキルスルホコハク酸塩(C)の含有量が、エネルギー線硬化性水中油滴型エマルション中の水を除く全質量中のそれぞれ5〜20質量%、1〜8質量%である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルション。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のエネルギー線硬化性水中油滴型エマルションからなるハードコート剤。
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