JP4500771B2 - フラーレン結晶およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フラーレン結晶の製造方法、およびそれによって得られるフラーレン結晶に関する。
炭素のみによって構成される物質として、ダイヤモンドやグラファイトが知られているが、最近、60個の炭素原子からなる球状クラスター分子が見いだされ、その物性および応用について研究がなされている。この分子はフラーレンと呼ばれ、サッカーボール状の形状を有している。また、フラーレン分子の集合体は面心立方格子であり、これに各種元素をドーピングすることによって超伝導特性を有する物質が得られることが報告されている。
フラーレンの結晶を得る方法として、フラーレンを溶解したトルエン溶液にイソプロピルアルコールを添加する方法が報告されている(K.Miyazawa等、J.Mater.Res.,Vol.17,No.1,83(2002))。この文献には、直径が200nm〜2μmで長さが0.15mm〜5mmのフラーレンの針状単結晶が得られると記載されている。しかし、この方法では、フラーレン結晶の析出量が少なく、フラーレン結晶の収率が低いという問題があった。
また、フラーレンの大きな単結晶体を得る方法として、特開平05−124894号公報には、臭化ルビジウム、ヨウ化カリウム、またはヨウ化ルビジウムの単結晶基板上に、真空蒸着法によってフラーレン単結晶を析出させる方法が開示されている。しかし、この方法は、真空度が1.3Pa×10−4Pa程度の真空蒸着装置が必要であり、また、フラーレン単結晶を成長させるための単結晶基板が必要となる。そのため、工程が煩雑で、フラーレン単結晶の製造コストが高かった。
また、フラーレンの粒子状の結晶を得る方法として、特開平10−001306号公報には、フラーレンを溶解した溶液(例えばC60フラーレンのベンゼン溶液)に、フラーレンの貧溶媒(例えばエタノール)を添加して、フラーレンの多量体(例えば直径50nm程度の結晶)を作製する方法が開示されている。しかし、この方法で得られる粒子状の結晶は、粒径が数nmと小さく、フラーレンの結晶の観察や評価、および表面反応の材料には適していない。
また、フラーレンの針状の結晶を得る方法として、フラーレンを溶解したトルエン溶液に、イソプロピルアルコールを添加する方法が開示されている(宮澤 薫一、熱処理42巻2号、81ページ)。しかしながら、この方法では、高い収率で結晶を得ることができなかった。
このような状況に鑑み、本発明は、各種分野への応用が可能なフラーレン結晶を収率よく製造する新規な方法を提供することを目的とする。
本発明の製造方法は、
(i)ベンゼン誘導体(A)を50質量%以上の含有率で含む第1の溶媒と前記第1の溶媒に溶解したフラーレンとを含む溶液と、前記第1の溶媒よりも前記フラーレンの溶解度が低い第2の溶媒とを、液−液界面を形成するように接触させる工程と、
(ii)前記溶液および前記第2の溶媒の相互拡散によって前記溶液と前記第2の溶媒とを混合させて前記フラーレンの結晶を析出させる工程とを含む。そして、前記ベンゼン誘導体(A)は、ベンゼン環の2つ以上の水素が置換されたベンゼン誘導体、ハロゲン化ベンゼンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である。
上記製造方法では、前記ベンゼン誘導体(A)が、構造異性を有さない1種類のベンゼン誘導体、または、構造異性を有する1種類のベンゼン誘導体の複数の構造異性体から選ばれる1つの構造異性体であることが好ましい。この構成によれば、特定の形状のフラーレン結晶を高い収率で得ることが可能となる。
上記製造方法の一例では、前記ベンゼン誘導体(A)が、m−ジアルキルベンゼン、m−ジハロゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、1,3,5−トリアルキルベンゼン、1,3,5−トリハロゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である。この構成によれば、前記(ii)の工程において繊維状のフラーレン結晶が得られる。
上記製造方法の他の例では、前記ベンゼン誘導体(A)が、ベンゼン環のオルト位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,4の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である。そして、前記(i)の工程において、前記溶液と固−液界面を形成するように固体の壁を配置する。この構成によれば、前記(ii)の工程において、前記壁の表面に析出した薄片状のフラーレン結晶が得られる。
上記製造方法のその他の例では、前記ベンゼン誘導体(A)は、ベンゼン環のパラ位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,3の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である。この構成によれば、前記(ii)の工程において粒子状のフラーレン結晶が得られる。
本発明によれば、フラーレンを構成要素とする様々な形状の単結晶その他の結晶を高い収率で製造することができる。本発明の方法では、真空蒸着装置のような装置が不要であり、2種類の溶液を拡散・混合させることによってフラーレンの結晶が得られるため、低コストでフラーレンの結晶が得られる。
本発明の方法によって得られる特定の形状のフラーレン結晶は、その特性を利用して様々な分野に適用できる。本発明によって得られる繊維状のフラーレン結晶を用いてシートを形成することができる。また、繊維状または針状のフラーレン単結晶を用いて、例えば、マイクロマシンの軸など、微小機械の部材として利用できる。また、本発明によって得られる薄片状のフラーレン結晶は、その平坦な結晶面を利用して様々な用途に適用できる。また、本発明によれば、簡単な工程で、平均粒径が10μm以上の粒子状のフラーレン結晶が得られる。この粒子状のフラーレン結晶は、その特性を利用して様々な用途に適用できる。また、粒子状のフラーレン結晶を用いて、フラーレンの各種物性を測定することが可能となる。
図1は、本発明の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明で得られた繊維状のフラーレン結晶の電子顕微鏡写真である。
図3は、図2の繊維状のフラーレン結晶を拡大した電子顕微鏡写真である。
図4は、本発明で得られた針状のフラーレン結晶の光学顕微鏡写真である。
図5は、本発明で得られた薄片状のフラーレン結晶を正面から写した電子顕微鏡写真である。
図6は、本発明で得られた薄片状のフラーレン結晶を斜めから写した電子顕微鏡写真である。
図7は、本発明で得られた粒子状のフラーレン結晶の光学顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の製造方法は、フラーレン結晶を製造するための方法である。この方法では、ベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(A)という場合がある)を含む第1の溶媒と第1の溶媒に溶解したフラーレン(以下、フラーレン(A)という場合がある)とを含む溶液(以下、溶液(A)という場合がある)と、フラーレン(A)の溶解度が第1の溶媒よりも低い第2の溶媒とを、液−液界面を形成するように接触させる(工程(i))。
第1の溶媒は、ベンゼン誘導体(A)を50質量%以上(より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、例えば95質量%以上)の含有率で含む。
溶液(A)に接触させる第2の溶媒は、フラーレン(A)の溶解度が第1の溶媒よりも小さい溶媒である。すなわち、第2の溶媒には、フラーレン(A)の溶解度が小さい溶媒(貧溶媒)が用いられる。具体的には、第2の溶媒として、25℃におけるフラーレン(A)の溶解度(飽和濃度)が0.01mg/ml以下(より好ましくは0.002mg/ml以下)の溶媒を用いることが好ましい。第2の溶媒は、第1の溶媒と相溶性を有する。
溶液(A)と第2の溶媒とを接触させる際に、溶液(A)の量と第2の溶媒の量とに差がありすぎると、フラーレンの析出が効率的に行われない。そのため、溶液(A)と第2の溶媒との合計体積に占める溶液(A)の割合は、好ましくは80体積%以下であり、より好ましくは10〜50体積%の範囲である。
工程(i)における溶液(A)および第2の溶媒の状態の一例を図1に模式的に示す。容器11内において、溶液(A)12と第2の溶媒13とは、液−液界面14で接している。容器11に溶液(A)12を入れ、ついで第2の溶媒13を静かに容器内に注ぐと、両者の比重や物理的性質の差によって両者が一時的に2層に分離する。
ベンゼン誘導体(A)は、ベンゼン環の2つ以上の水素が置換されたベンゼン誘導体、ハロゲン化ベンゼンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である。これらのベンゼン誘導体を含む第1の溶媒を用いることによって、高い収率でフラーレン結晶が得られる。
特に、ベンゼン誘導体(A)は、1つの構造式で表される1種類のベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(A’)という場合がある)であることが好ましい。すなわち、ベンゼン誘導体(A’)は、構造異性を有さない1種類のベンゼン誘導体、または、構造異性を有する1種類のベンゼン誘導体の複数の構造異性体から選ばれる1つの構造異性体である。第1の溶媒が、このようなベンゼン誘導体(A’)を50質量%以上(好ましくは75質量%以上でさらに好ましくは90質量%以上で、例えば95質量%以上(例えば100質量%))の含有率で含むことによって、所望の形状のフラーレン結晶が特に高い収率で得られやすくなる。なお、第1の溶媒がベンゼン誘導体(A’)を50質量%以上の割合で含む場合、第1の溶媒は、ベンゼン誘導体(A’)に加えて、ベンゼン誘導体(A)について例示したベンゼン誘導体を含んでもよいし、それ以外の溶媒を含んでもよい。
ベンゼン環の2つ以上の水素を置換する特性基としては、例えば、アルキル基およびハロゲンから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。ベンゼン環の2つ以上の水素が置換されたベンゼン誘導体としては、例えば、ジアルキルベンゼン、ジハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロゲン化ベンゼン、およびハロゲン化トルエンが挙げられる。ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、ハロゲン化トルエンを用いることによって、高い収率でフラーレン結晶を製造できる。
フラーレン(A)としては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C240、C540およびC720を使用することができる。これらの中でも、C60、C70、C76、C78、C82およびC84が好ましく用いられ、C60およびC70が最も好ましく用いられる。また、分子内部に炭素元素以外の元素(例えば典型金属元素または遷移金属元素)を内包したフラーレンを用いてもよい。
次に、溶液(A)および第2の溶媒の相互拡散によって溶液(A)と第2の溶液とを混合させてフラーレン(A)の結晶を析出させる(工程(ii))。工程(ii)では、溶液(A)と第2の溶媒とが混合することによって、フラーレン(A)が過飽和の状態となってその結晶が析出する。そのため、工程(ii)においてフラーレン(A)が過飽和の状態となるように第1の溶媒の種類および量、溶液(A)のフラーレン濃度、第2の溶媒の種類および量が選択される。
なお、この明細書において、「相互拡散による混合」は、外部からの力の影響を実質的に受けない拡散(自発的な拡散)を主要因として生じる混合を意味し、攪拌による混合を含まない。
工程(ii)は、例えば、溶液(A)と第2の溶媒とを、液−液界面を形成するように接触させたのち、両者を所定の時間、静置することによって行うことができる。すなわち、工程(i)ののち、溶液(A)および第2の溶媒を放置することによってフラーレン結晶が得られる。
本発明の方法で得られるフラーレン単結晶に対して、加圧(例えば3〜9Paでのプレス)、加熱(例えば250〜400℃での熱処理)、またはレーザ光照射といった処理をしてもよい。レーザ光を照射する場合には、フラーレンの吸収ピーク付近の波長のレーザ光を照射することが好ましく、例えば600nm以下の波長のレーザ光を照射することが好ましい。加圧、加熱、またはレーザ光照射によって、結晶を構成するフラーレン分子同士の間に存在する第1の溶媒などを除去し、結晶を緻密化して機械的強度を高めることができる。真空中や窒素雰囲気など、酸素の存在しない環境では、フラーレンの昇華が始まる温度(600℃)よりも低い温度での処理が望ましい。空気中で加熱する場合には、450℃よりも高い温度で結晶が分解するため、450℃以下での加熱が望ましい。
また、本発明の方法では、溶液(A)または第2の溶媒に、炭素以外の所定の元素のイオン(例えばカリウムイオンやヨウ素イオン)を含ませることによって、析出するフラーレン結晶中のフラーレン分子間にその元素を配置することが可能である。特定の元素をフラーレン分子間に配置することによって、さまざまな特性のフラーレン結晶を得ることが可能となる。
本発明の方法では、繊維状(針状を含む)の結晶、粒子状の結晶、薄片状の結晶など、様々な形状のフラーレン結晶を得ることができる。これらのフラーレン単結晶はπ結合を有するため、フラーレン単結晶の表面における新たな反応や物質の合成が期待できる。以下、様々な形状のフラーレンの製造方法について説明する。
[実施形態1]
実施形態1では、特に高い収率でフラーレン結晶が得られる製造方法について説明する。この製造方法では、ベンゼン誘導体(A)として、ジアルキルベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体を用いる。これらの中でも、ベンゼン誘導体(A)として、ベンゼン環のメタ位置が置換されたベンゼン誘導体、ベンゼン環の1,3,5の位置が置換されたベンゼン誘導体、ハロゲン化ベンゼンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体を用いることによって、繊維状(針状を含む)のフラーレン結晶が得られる。
これらのベンゼン誘導体の置換基としては、例えば、ハロゲンおよび/またはアルキル基を挙げることができる。例えば、ベンゼン誘導体(A)として、m−ジアルキルベンゼン、m−ジハロゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、1,3,5−トリアルキルベンゼン、1,3,5−トリハロゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体が用いられる。より具体的には、ベンゼン誘導体(A)として、m−キシレン、m−ジクロロベンゼン、m−ジエチルベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼン、3−クロロトルエン、3−フルオロトルエン、メトキシベンゼン(アニソール)、エトキシベンゼンを用いることができる。これらの中で、m−キシレン、m−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、3−クロロトルエンおよびメトキシベンゼンが特に好ましく用いられる。なお、1,3,5−トリアルキルベンゼン、3−ハロゲン化トルエン、またはメトキシベンゼンを用いることによって、より細い繊維状の結晶からなる綿状の結晶が得られる。また、アルコキシベンゼン(例えばメトキシベンゼンまたはエトキシベンゼン)は、フラーレンの溶解度が高いため、これをベンゼン誘導体(A)として用いることによって、一定の体積の溶液から多くのフラーレン結晶を得ることが可能となる。
第1の溶媒は、上記ベンゼン誘導体のいずれか1種であることが最も好ましいが、上記ベンゼン誘導体の2種またはそれ以上の混合物であってもよい。第1の溶媒は、1種類または2種類以上の上記ベンゼン誘導体を、50質量%以上(好ましくは、75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)の含有率で含む。第1の溶媒は、フラーレンの溶解度が1.0mg/ml以上であることが好ましい。第1の溶媒は、50質量%未満の含有率で、上記ベンゼン誘導体以外の溶媒を含んでもよい。そのような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、二硫化炭素、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、および2−メチルチオフェン等が挙げられる。
溶液(A)は、第1の溶媒にフラーレン(A)を溶解させることによって調製できる。溶液(A)中のフラーレンの濃度が低すぎるとフラーレン単結晶の析出速度が小さくなったり、析出量が少なくなったりする。従って、第1の溶媒に対するフラーレン(A)の溶解度をX(mg/ml)としたときに、溶液(A)に含まれるフラーレン(A)の濃度は、0.3mg/ml以上で且つ0.15X(mg/ml)以上であることが好ましく、0.5mg/ml以上で且つ0.3X(mg/ml)以上であることがさらに好ましい。例えば、m−キシレンに対するC60の溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlであるので、第1の溶媒としてm−キシレンを用いる場合には、フラーレンの濃度は0.3mg/ml以上であることが好ましく、0.5mg/ml以上であることがより好ましい。
第2の溶媒としては、例えば、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールが用いられる。メチルアルコールやエチルアルコールは、拡散速度が大き過ぎてフラーレンの結晶が成長しにくく、沈殿が生じやすいので、第2の溶媒の主成分として使用することは好ましくない。
第2の溶媒は、上記アルコールのいずれか1種であることが最も好ましいが、上記アルコールの2種またはそれ以上の混合物であってもよい。また、第2の溶媒は、1種または2種以上の上記アルコールを50質量%以上の含有率で含んでもよい。第2の溶媒は、上記アルコール以外の溶媒を50質量%未満の含有率で含んでもよい。このような溶媒としては、例えば、メチルアルコールおよびエチルアルコール等が挙げられる。
工程(i)では、溶液(A)および第2の溶媒を、溶液(A)と第2の溶媒とが液−液界面を形成するように接触させる。例えば、容器に溶液(A)を入れ、ついで第2の溶媒を静かに容器内に注ぐと、両者が2層に分離する。その結果、両者の境界に液−液界面が形成される。
次に、上記状態の溶液(A)および第2の溶媒を、所定の時間(例えば10時間〜100時間)、静置する。このとき、溶液(A)および第2の溶媒の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。また、溶液(A)および第2の溶媒の温度を、溶液(A)および第2の溶媒の凝固点のうち高い方の温度よりも高い温度とすることが、均一な大きさの結晶を析出させるためには好ましい。
液−液界面に隣接する溶液(A)と第2の溶媒とは、時間の経過に伴い、徐々に相互に拡散する。フラーレンは、主に液−液界面から析出し、成長する。そして、溶液および第2の溶媒の相互拡散が終わった後(10〜100時間経過後)には、フラーレン結晶が得られる。本発明の方法で得られたフラーレン結晶の3つの例の写真を図2〜図4に示す。図2および図3は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真であり、図2は撮影時の拡大率が1,000倍の写真であり、図3は撮影時の拡大率が50,000倍の写真である。図2および図3の写真の結晶は、直径が比較的小さい繊維状のフラーレン単結晶であり、直径が60nm〜1000nm(0.06〜1μm)で長さが100μm以上の繊維状フラーレン単結晶である。図4の写真は、光学顕微鏡写真(撮影時の拡大率は50倍)である。図4の写真の結晶は、直径が比較的大きい針状(直径約25μm、長さ約3mm)のフラーレン単結晶である。
溶液(A)と第2の溶媒とを接触させる際に、液−液界面が形成されずに溶液(A)と第2の溶媒とが急激に混合された場合には、溶液中でフラーレンが急速に析出するため、沈殿のみが生成される。同様に、液−液界面を形成した場合でも、その後に溶液(A)および第2の溶媒が静置されず溶液(A)と第2の溶媒との混合が急激に生じた場合も、沈殿のみが生成される。
また、第1の溶媒として上記ベンゼン誘導体の代わりにトルエンを使用した場合には、フラーレン結晶の析出量が少ない。この場合、溶液(A)に溶解させたフラーレンに対してフラーレン結晶として得られる量は約30%程度である。一方、本発明の方法では、溶液(A)に溶解させたフラーレンに対してフラーレン結晶として得られる量が多く、収率は例えば約70%以上である。
本発明によって得られるフラーレン結晶の形状は、第1および第2の溶媒の種類、溶液(A)中のフラーレンの濃度、フラーレンの析出温度等によって異なる。例えば、ベンゼン誘導体(A)としてm−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、3−クロロトルエンおよびメトキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる場合には、フラーレン結晶の形状は主として繊維状となる。この繊維状のフラーレン結晶は、例えば、50nm〜100μmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さ、および100以上のアスペクト比を有する。なお、繊維形状の結晶のアスペクト比とは、長さ/直径の比を意味する。
また、ベンゼン誘導体(A)として1,3,5−トリメチルベンゼンが用いられ、第2の溶媒としてn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状のフラーレン結晶が析出する。このフラーレン結晶は、肉眼では綿状に見える形状であることが多い。この綿状のフラーレン結晶を積み重ねることによって、不織布状のフラーレン結晶が得られる。例えば、穴あきシートの上でフラーレン結晶を抄造することによって不織布が得られる。
また、ベンゼン誘導体(A)としてm−キシレンが用いられ、第2の溶媒としてn−プロピルアルコールまたはi−プロピルアルコールが用いられる場合には、50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状のフラーレンが析出する。このフラーレン結晶は、肉眼で綿状に見える形状であることが多い。上述したように、この綿状のフラーレン結晶を積み重ねることによって、不織布状のフラーレン結晶が得られる。
また、ベンゼン誘導体(A)としてm−キシレンが用いられ、第2の溶媒としてn−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、2〜100μmの平均直径、0.2〜20mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する繊維状のフラーレンが析出する。このフラーレン結晶は、肉眼で針状に見える形状であることが多い。
以上説明したように、実施形態1の製造方法によれば、繊維状のフラーレン結晶が高い収率で得られる。実施形態1の製造方法は、工程(ii)ののちに、得られた繊維状のフラーレン結晶を用いて不織布を形成する工程をさらに含んでもよい。
[実施形態2]
実施形態2の製造方法では、薄片状のフラーレン結晶が得られる。なお、この明細書において、薄片状とは、例えば、結晶の平均厚さDと、結晶の最小寸法(最短径)Lとが、10≦L/Dの関係を満たし、最大投影面積Sと平均厚さDとが20≦S1/2/Dの関係を満たす形状をいう。ここで、最大投影面積Sは、投影面積が最大となる投影方向における投影面積である。平均厚さDは、最大投影面積Sが得られる投影方向における結晶の平均厚さである。最小寸法Lとは、最大投影面積Sが得られるように投影された形状における最短の径である。
この製造方法では、ベンゼン誘導体(A)として、ベンゼン環のオルト位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,4の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1つのベンゼン誘導体を用いる。
ベンゼン環のオルト位置または1,2,4の位置を置換する置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン、−NH、−NHR、−NR、−OH、および−ORからなる群より選ばれる少なくとも1種を適用できる(Rはアルキル基である)。これらの置換基の中で、メチル基および塩素基が好ましく用いられる。より具体的には、ベンゼン誘導体(A)として、例えば、o−キシレン、o−ジクロロベンゼン、o−ジエチルベンゼン、o−ジブロモベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼンおよび2−クロロトルエンを用いることができる。これらの中で、o−キシレン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、および2−クロロトルエンが特に好ましく用いられる。
第1の溶媒は、上記ベンゼン誘導体(A)のいずれか1種であることが最も好ましいが、上記ベンゼン誘導体(A)の2種またはそれ以上の混合物であってもよい。また、第1の溶媒は、1種類または2種類以上の上記ベンゼン誘導体を、50質量%以上(好ましくは75質量%以上で、より好ましくは90質量%以上)の含有率で含む。第1の溶媒は、フラーレンの溶解度が5mg/ml以上であることが好ましい。第1の溶媒は、50質量%未満の含有率で、上記ベンゼン誘導体以外の溶媒を含んでもよい。そのような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ヨードベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−ジクロロベンゼンおよびp−ジクロロベンゼン、二硫化炭素、トリクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、2−メチルチオフェン等を挙げることができる。
溶液(A)は、第1の溶媒にフラーレン(A)を溶解させることによって調製できる。溶液(A)中のフラーレンの濃度が低すぎるとフラーレン単結晶の析出速度が小さくなったり、析出量が少量になったりする。従って、第1の溶媒に対するフラーレン(A)の溶解度をX(mg/ml)としたときに、溶液(A)に含まれるフラーレン(A)の濃度は、3mg/ml以上で且つ0.3X(mg/ml)以上であることが好ましく、4mg/ml以上で且つ0.35X(mg/ml)以上であることがさらに好ましい。例えば、o−キシレンのC60の溶解度(飽和濃度)は約8.7mg/mlであるので、フラーレンの濃度は3mg/ml以上にすることが好ましく、4mg/ml以上にすることがさらに好ましい。
第2の溶媒としては、側鎖を有するアルコール(好ましくは炭素数が5以下)およびn−ペンチルアルコールを用いることができる。例えば、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールといったアルコールが好ましく用いられる。これらの中でi−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールが特に好ましく用いられる。なお、n−プロピルアルコールを用いて薄片状の結晶が得られる場合もある。メチルアルコールやエチルアルコールは、拡散速度が大き過ぎて薄片状の結晶が成長しにくいため、第2の溶媒の主成分として使用することは好ましくない。
ベンゼン誘導体(A)がo−キシレンの場合には、第2の溶媒として、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコールを用いることが好ましい。また、ベンゼン誘導体(A)が1,2,4−トリメチルベンゼンの場合には、第2の溶媒としてi−ブチルアルコールを用いることが好ましい。
第2の溶媒は、上記アルコールのいずれか1種であることが最も好ましいが、上記アルコールの2種またはそれ以上の混合物であってもよい。また、第2の溶媒は、1種または2種以上の上記アルコールを50質量%以上の含有率で含んでもよい。第2の溶媒は、上記アルコール以外の溶媒を50質量%未満の含有率で含んでもよい。このような溶媒としては、例えば、メチルアルコールおよびエチルアルコール等が挙げられる。
実施形態2の方法では、工程(i)において、溶液(A)と第2の溶媒と固体の壁とを、溶液(A)と第2の溶媒とが液−液界面を形成するように、そして固体の壁と溶液(A)とが固−液界面を形成するように接触させる。例えば、図1に示すように、容器11に溶液(A)12を入れ、ついで第2の溶媒13を静かに注いで容器11内で溶液(A)12と第2の溶媒13と2層に分離させ、その2層の境界に液−液界面14を形成させる。この際に、容器11の底面または側面(固体壁)と、溶液(A)11との境界に固−液界面が形成される。なお、容器とは別に、例えばガラス板からなる固体の壁を容器内に配置し、溶液(A)と接するようにしてもよい。
上記固体の壁としては、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックス、単結晶などからなる容器、板状体、棒状体、繊維等が用いられる。フラーレン分子同士はファンデルワールス結合によって結合されるので、フラーレン分子を非晶質基材上に堆積させると、最密構造が形成されやすい。従って、上記の壁の材質としてはガラスやプラスチックスのような非晶質が好ましく用いられる。上記の固−液界面の表面積(溶液(A)に接触する上記固体壁表面の面積)は、使用される溶液(A)および第2の溶媒の体積にもよるが、10mm以上であることが好ましい。
次に、上記状態の溶液(A)および第2の溶媒を、所定の時間(例えば10時間〜100時間)、静置する。このとき、溶液(A)および第2の溶媒の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。また、溶液(A)および第2の溶媒の温度を、溶液(A)および第2の溶媒の凝固点のうち高い方の温度よりも高い温度とすることが、均一な大きさの結晶を析出させるためには好ましい。
この維持時間が経過するにつれて、液−液界面の両側の溶液(A)と第2の溶媒とが徐々に相互に拡散する。フラーレンは、液−液界面を中心として生じる、溶液(A)と第2の溶媒との一定の厚さの混合部分から溶液(A)の方に追い出される。その結果、溶液(A)中のフラーレン濃度は徐々に高くなり、過飽和となり、容器の底部または側面等の固体壁の表面にフラーレンが析出し、これが壁面と交差する面に沿って成長していく。そして、溶液(A)と第2の溶媒との相互拡散が終わった後(10〜100時間経過後)には、薄片状のフラーレン結晶が得られる。薄片状のフラーレン結晶の一端は固体壁に付着しているが、壁から簡単に剥がすことができる。
フラーレンの析出、成長の過程は次のように考えられる。最初に、固体壁の表面から立ち上がるように、厚さが小さい、例えば数十nmの厚さで最大寸法が1mm〜数mmの薄片状フラーレン単結晶が成長する。その後、その薄片の主表面(両表面)にさらにフラーレンが層状に積み重なって、最終的には、数百nmの厚さで最大寸法が1mm〜数mmの薄片状フラーレン結晶が得られる。
図5および図6は、薄片状フラーレン結晶の表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真である。これらの写真は、薄片の断面が見えやすくするために、薄片の一部を破砕して撮影した。図5は、薄片の主表面を正面から見た写真(撮影時の拡大率:4,000倍)である。図6は、薄片の主表面の正面から40度傾斜した方向から見た写真(撮影時の拡大率:20,000倍)である。図5の写真では、薄片状フラーレン結晶の表面に菱形(最大寸法約10μm)の薄層状のフラーレン単結晶が析出している。この析出が進行して菱形の面積が次第に大きくなって薄片状の結晶の全面を覆われると考えられ、これを繰り返すことによって薄片の厚さが増大すると考えられる。図6の写真には、薄片状フラーレン結晶の断面が示されており、積層構造になっていることが観察される。
溶液(A)と第2の溶媒と固体壁とを接触させる際に、液−液界面が形成されずに溶液(A)と第2の溶媒とが急激に混合された場合には、溶液(A)中で微粒子状のフラーレンが急速に析出するため、薄片状のフラーレン結晶は生成されない。同様に、溶液(A)および第2の溶媒が静置されずに溶液(A)と第2の溶媒との混合が急激に生じた場合も、微粒子状のフラーレンが急速に析出するため、薄片状のフラーレン結晶は生成されない。
実施形態2の方法によれば、100nm〜10μmの平均厚さを有する薄片状のフラーレン結晶が得られる。このような薄片状の結晶は、従来の方法(例えば昇華法)でも基板上に形成することは可能であった。しかし、従来の方法では、基板から分離した薄片状の結晶を作製することは難しかった。なお、平均厚さとは、薄片の厚さの個数平均値である。また後述の平均最大寸法とは、薄片の長径(最大寸法)の個数平均値である。この薄片状のフラーレン結晶はフラーレン分子同士がファンデルワールス結合したものであり、指でつまむ位では壊れない程度の機械的強度を有する。
[実施形態3]
実施形態3の製造方法では、粒子状の結晶が得られる。なお、この明細書において粒子状とは、最大径/最小径の比(アスペクト比)が3以下である形状をいう。
この製造方法では、ベンゼン誘導体(A)として、ベンゼン環のパラ位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,3の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1つのベンゼン誘導体を用いる。
ベンゼン環のパラ位置を置換する置換基、およびベンゼン環の1,2,3の位置を置換する置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン、−NH、−NHR、−NR、−OH、および−ORからなる群より選ばれる少なくとも1種を適用できるが(ここでRはアルキル基である)。これらの置換基の中で、メチル基および塩素基が特に好ましく用いられる。ベンゼン誘導体(A)としては、例えば、p−キシレン、p−ジエチルベンゼン、p−ジフルオロベンゼン、4−クロロトルエン、1,2,3−トリメチルベンゼンおよび1,2,3−トリエチルベンゼン等が挙げられる。これらの中でp−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼンおよび4−クロロトルエンが特に好ましく用いられる。
第1の溶媒は、上記ベンゼン誘導体(A)のいずれか1種であることが最も好ましいが、上記ベンゼン誘導体(A)の2種またはそれ以上の混合物であってもよい。また、第1の溶媒は、1種類または2種類以上の上記ベンゼン誘導体を、50質量%以上(好ましくは、75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)の含有率で含むことが好ましい。第1の溶媒は、フラーレンの溶解度が5mg/ml以上であることが好ましい。第1の溶媒は、50質量%未満の含有率で、上記ベンゼン誘導体以外の溶媒を含んでもよい。そのような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ヨードベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、o−キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、o−ジクロロベンゼンおよびm−ジクロロベンゼン、二硫化炭素、トリクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、2−メチルチオフェン等が挙げられる。
溶液(A)は、第1の溶媒にフラーレン(A)を溶解させることによって調製できる。溶液(A)中のフラーレンの濃度が低すぎるとフラーレン単結晶の析出速度が小さくなったり、析出量が少量になったりする。従って、第1の溶媒に対するフラーレン(A)の溶解度をX(mg/ml)としたときに、溶液(A)に含まれるフラーレン(A)の濃度は、3mg/ml以上で且つ0.3X(mg/ml)以上であることが好ましく、4mg/ml以上で且つ0.35X(mg/ml)以上であることがさらに好ましい。例えば、p−キシレンのC60の溶解度(飽和濃度)は約5.9mg/mlであるので、フラーレンの濃度は3mg/ml以上にすることが好ましく、4mg/ml以上にすることがさらに好ましい。
第2の溶媒としては、例えば、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールといったアルコールが好ましく用いられる。これらの中でn−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールが特に好ましく用いられる。メチルアルコールやエチルアルコールは、拡散速度が大き過ぎて粒子状のフラーレンの結晶が成長しにくく、沈殿が生じやすいので好ましくない。
第2の溶媒は、上記アルコールのいずれか1種であることが最も好ましいが、上記アルコールの2種またはそれ以上の混合物であってもよい。また、第2の溶媒は、1種または2種以上の上記アルコールを50質量%以上の含有率で含んでもよい。第2の溶媒は、上記アルコール以外の溶媒を50質量%未満の含有率で含んでもよい。このような溶媒としては、例えば、メチルアルコールおよびエチルアルコール等が挙げられる。
工程(i)では、溶液(A)および第2の溶媒を、溶液(A)と第2の溶媒とが液−液界面を形成するように接触させる。例えば、容器に溶液(A)を入れ、ついで第2の溶媒を静かに容器内に注ぐと、両者が2層に分離する。その結果、両者の境界に液−液界面が形成される。
次に、上記状態の溶液(A)および第2の溶媒を、所定の時間(例えば10時間〜100時間)、静置する。このとき、溶液(A)および第2の溶媒の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。また、溶液(A)および第2の溶媒の温度を、溶液(A)および第2の溶媒の凝固点のうち高い方の温度よりも高い温度とすることが、均一な大きさの結晶を析出させるためには好ましい。
この維持時間が経過するにつれて、液−液界面に隣接する溶液(A)と第2の溶媒とが徐々に相互に拡散する。フラーレンは、主に液−液界面から析出し、成長する。そして、溶液および第2の溶媒の相互拡散が終わった後(10〜100時間経過後)には、フラーレン結晶が得られる。本発明の方法で得られたフラーレン結晶の一例の写真を図7に示す。図7は、粒子状フラーレン結晶の光学顕微鏡写真(撮影時の拡大率:100倍)であり、粒子状フラーレン結晶の直径は約0.3mmである。
溶液(A)と第2の溶媒とを接触させる際に、液−液界面が形成されずに溶液(A)と第2の溶媒とが急激に混合された場合には、溶液(A)中で微粒子状のフラーレンが急速に析出するため、粒子状のフラーレン結晶は生成されない。同様に、溶液(A)および第2の溶媒が静置されずに溶液(A)と第2の溶媒との混合が急激に生じた場合も、フラーレンが急速に析出するため、粒子状のフラーレン結晶は生成されない。
実施形態3の方法によれば、10〜5000μmの平均粒径および2以下のアスペクト比を有する粒子状のフラーレン結晶が得られる。なお、平均粒径とは粒子の最大寸法の個数平均値であり、アスペクト比とは粒子の最大寸法と最小寸法との比である。この粒子状のフラーレン結晶は、フラーレン分子同士がファンデルワールス結合したものであり、指でつまむ位では壊れない程度の機械的強度を有する。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の製造例に限定されない。なお、以下の実施例において、第1の溶媒として用いた試薬の純度は95質量%以上である。
実施例1では、実施形態1の製造方法でフラーレン単結晶を製造した例について説明する。
[製造例1]
フラーレンC60(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)32mgを1,3,5−トリメチルベンゼン(1,3,5−TMB、第1の溶媒)20mlに溶解して溶液(A)を調製した。溶液(A)中のフラーレンの濃度は1.6mg/mlであった。1,3,5−TMBに対するフラーレンC60の溶解度(25℃飽和濃度)は約1.6mg/mlである。
次に、調製した溶液(A)のうち2mlを、ガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。次に、溶液(A)と混合しないように、ガラス容器の内壁に沿ってゆっくりとi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4.0mlを加えた。容器の中において、2つの液体は、溶液(A)からなる高さ約6mmの下層と、第2の溶媒からなる高さ約10mmの上層とに分離した。そして、下層と上層との境界には、直径1.9cmの円形の液−液界面が形成された。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ多数の針状(直径2〜100μm)のフラーレンの単結晶繊維(合計約2.6mg)が得られた。原料であるフラーレンの約80質量%が繊維化された。
[比較製造例1]
この例では、溶液(A)が異なる以外は、製造例1と同じ処理を行った。具体的には、溶液(A)の調製において、1,3,5−トリメチルベンゼン2mlの代わりにトルエン(飽和濃度約2.8mg/ml)2mlを用い、フラーレン濃度を2.8mg/mlとした。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ多数の針状(直径2〜100μm)のフラーレンの単結晶繊維(合計約1.7mg)が得られた。原料であるフラーレンの約30質量%が繊維化された。残りの約70質量%のフラーレンは沈殿物となっていた。
[製造例2]
フラーレンC60(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)24mgをm−キシレン(第1の溶媒)20mlに溶解して溶液(A)を調製した。溶液(A)中のフラーレンの濃度は1.2mg/mlである。また、m−キシレンに対するC60の溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlである。
次に、調製した溶液(A)2mlを、ガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。次に、溶液(A)と混合しないように、ガラス容器の内壁に沿ってゆっくりとn−プロピルアルコール(第2の溶媒)4.0mlを加えた。容器の中において、2つの液体は、約6mmの高さの溶液(A)からなる下層と、約10mmの高さの第2の溶媒からなる上層とに分離した。そして、下層と上層との境界には、直径1.9cmの円形の液−液界面が形成された。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ多数のフラーレンの単結晶繊維(直径2〜100μm、合計約1.8mg)が得られた。原料であるフラーレンの約75質量%が繊維化された。
[製造例3〜15]
第1の溶媒、第2の溶媒またはフラーレン濃度が異なる以外は、製造例2と同じ方法でフラーレン結晶を作製した。具体的には、表1に示すように、m−キシレン(第1の溶媒)に代えて、m−ジクロロベンゼン(m−DCB)、3−クロロトルエン、メトキシベンゼンを用いた。また、n−プロピルアルコール(第2の溶媒)に代えて、2−ブチルアルコール(2−BuA)、n−ブチルアルコール(n−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−プロピルアルコール(i−PrA)、i−ペンチルアルコール(i−PeA)、n−ペンチルアルコール(n−PeA)、およびエチルアルコール(EtA)を用いた。なお、溶媒の量は製造例2と同じとした。この処理によって、繊維状または粒子状のフラーレンの単結晶(平均径0.1〜200μm)が得られた。得られた結果を表1に示す。
なお、製造例13においては、第1の溶媒としてm−キシレン(80体積%)およびo−キシレン(20体積%)からなる混合溶媒を用い、第2の溶媒としてi−ブチルアルコール(80体積%)およびエチルアルコール(20体積%)からなる混合溶媒をそれぞれ使用した。なお、製造例4その他で得られる綿状のフラーレン結晶を溶液とともに濾紙の上に流し出して乾燥させると、不織布状になった。
[製造例16]
フラーレンC60に代えてフラーレンC70(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)を用い、n−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlに代えてi−ブチルアルコール(i−BuA)4mlを使用した以外は、製造例2と同様の方法でフラーレン結晶を作製した。その結果、表1に示す綿状のフラーレンの単結晶が得られた。
Figure 0004500771
[比較製造例2]
この例では、溶液(A)が異なる以外は、製造例1と同じ処理を行った。具体的には、溶液(A)の調製において、1,3,5−トリメチルベンゼン2mlの代わりに、異性体分離がされていない一般的なキシレン(上野化学工業株式会社製、特級キシレン)を用いた。フラーレン濃度は3.9mg/mlとした。その結果、2.9mgのフラーレン結晶が得られた。収率は37%と低かった。
実施例2では、実施形態2の製造方法でフラーレンの薄片状結晶を製造した一例について説明する。
[製造例1]
フラーレンC60(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)66mgを、o−キシレン(第1の溶媒)20mlに溶解して溶液(A)を調製した。溶液(A)中のフラーレン濃度は3.3mg/mlであった。o−キシレンに対するC60の溶解度(25℃飽和濃度)は約8.7mg/mlである。
次に、調製した溶液(A)のうち2mlを、ガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。次に、溶液(A)と混合しないようにガラス容器の内壁に沿ってゆっくりとi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlを加えた。容器の中において、2つの液体は、溶液(A)からなる高さ約6mmの下層と、第2の溶媒からなる高さ約10mmの上層とに分離した。そして、下層と上層との境界に直径1.9cmの円形の液−液界面が形成された。その後、容器に蓋をかぶせて、10℃で48時間静置した。その結果、ガラス容器内面の底から容器の上方に向かって、薄片状(平均厚さ約0.4μm、平均最大寸法約2mm)のフラーレンの結晶(合計約4.6mg)が成長した。
[製造例2〜11]
第1の溶媒、第2の溶媒またはフラーレン濃度が異なる以外は、製造例1と同じ方法でフラーレン結晶を作製した。具体的には、o−キシレン(第1の溶媒)に代えて、表1に示すように、1,2,4−トリメチルベンゼン(1,2,4−TMB)、o−ジクロロベンゼン(o−DCB)、2−クロロトルエンを用いた。また、i−プロピルアルコール(第2溶媒)に代えて、i−ペンチルアルコール(i−PeA)、n−ペンチルアルコール(n−PeA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、2−ブチルアルコール(2−BuA)を用いた。なお、溶媒の量は製造例1と同じとした。製造例2〜11では、製造例1と同様に、薄片状のフラーレンの結晶が得られた。なお、製造例10においては、第2の溶媒として、i−プロピルアルコール(50体積%)とi−ブチルアルコール(50体積%)とからなる混合溶媒を使用した。
[製造例12]
フラーレンC60およびi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlに代えて、フラーレンC70(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ社製)およびn−プロピルアルコールを使用したことを除き、製造例1と同じ方法でフラーレンの結晶を作製した。その結果、薄片状のフラーレンの単結晶が得られた。製造条件および結晶の形状について表2に示す。なお、n−プロピルアルコールに対するC70の溶解度(飽和濃度)は20℃における値である。
Figure 0004500771
[比較製造例1]
o−キシレン(第1の溶媒)2mlおよびi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlに代えて、トルエン2mlおよびi−プロピルアルコール4mlを用い、フラーレン濃度を2.8mg/ml(飽和濃度約2.8mg/ml)としたこと以外は、製造例1と同様の方法でフラーレン結晶を作製した。その結果、液−液界面から出発して成長した、多数の針状(平均直径約1μm、平均長さ約0.5mm)の単結晶(合計約4mg)が析出した。しかし、薄片状のフラーレンの結晶は得られなかった。
[比較製造例2]
o−キシレン(第1の溶媒)2mlおよびi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlに代えて、ベンゼン2mlおよびi−プロピルアルコール4mlを用い、フラーレン濃度を1.4mg/ml(飽和濃度約1.6mg/ml)としたこと以外は、製造例1と同様の方法でフラーレン結晶を作製した。その結果、液−液界面から出発して成長した、多数の粒子状(平均直径約100μm)の結晶(合計約2mg)が析出した。しかし、薄片状のフラーレンの結晶は得られなかった。
実施例3では、実施形態3の製造方法でフラーレンの粒子状結晶を製造した一例について説明する。
[製造例1]
フラーレンC60(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)100mgをp−キシレン(第1の溶媒)20mlに溶解して溶液(A)を調製した。溶液(A)のフラーレンの濃度は5.0mg/mlであった。p−キシレンに対するC60の溶解度(飽和濃度)は約5.9mg/mlである。
次に、調製した溶液(A)2mlを、ガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。次に、溶液(A)と混合しないように、ガラス容器の内壁に沿って約60秒かけてゆっくりと、i−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlを加えた。容器の中において、2つの液体は、溶液(A)からなる高さ約6mmの下層と、第2の溶媒からなる高さ約10mmの上層とに分離した。そして、下層と上層との境界には、直径1.9cmの円形の液−液界面が形成された。その後、容器に蓋をかぶせて、10℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ多数のフラーレンの結晶(合計約7mg)が得られた。結晶は、平均粒径約200μmで、アスペクト比約1.0の粒子状の形状であった。
[製造例2〜9]
製造例2〜9では、第1の溶媒、第2の溶媒またはフラーレン濃度が異なることを除き、製造例1と同様の方法でフラーレン結晶を作製した。具体的には、表1に示すように、p−キシレン(第1の溶媒)に代えて4−クロロトルエンを用いた。また、i−プロピルアルコール(第2の溶媒)に代えて、2−ブチルアルコール(2−BuA)、n−ブチルアルコール(n−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、n−プロピルアルコール(n−PrA)、エチルアルコール(EtA)を用いた。用いた溶媒の量は、製造例1と同じとした。その結果、粒子状(平均粒径200〜500μm)のフラーレンの結晶が得られた。結果を表1に示す。
なお、製造例8においては、第2の溶媒としてi−ブチルアルコール(80体積%)とエチルアルコール(20体積%)との混合溶媒を使用した。
Figure 0004500771
[製造例10]
フラーレンC60(100mg)に代えて、フラーレンC70(純度99%、株式会社サイエンスラボラトリーズ製)100mgを使用したことを除き、製造例1と同様の方法でフラーレン結晶を作製した。その結果、多数のフラーレンの結晶(合計約7mg)が得られた。結晶は、平均粒径約200μmで、アスペクト比約1.0の粒子状の形状であった。
[比較製造例1]
p−キシレン(第1の溶媒)2mlおよびi−プロピルアルコール(第2の溶媒)4mlに代えて、トルエン2mlおよびi−プロピルアルコール4mlを用い、フラーレン濃度を2.8mg/ml(飽和濃度約2.8mg/ml)としたことを除き、製造例1と同じ方法でフラーレン結晶を作製した。その結果、液−液界面から出発して成長した、多数の針状(平均直径約1μm、平均長さ約0.5mm)の単結晶(合計約3mg)が析出した。しかし、粒子状のフラーレンの結晶は得られなかった。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、さまざまな形状のフラーレン結晶を、収率よく製造できる。本発明によって得られるフラーレン結晶は、様々な分野に適用でき、例えば、フラーレン結晶の研究、微小機械の部材(例えばマイクロマシンの軸)、不織布の材料などに適用できる。

Claims (23)

  1. フラーレン結晶の製造方法であって、
    (i)ベンゼン誘導体(A)を50質量%以上の含有率で含む第1の溶媒と前記第1の溶媒に溶解したフラーレンとを含む溶液と、前記フラーレンの溶解度が前記第1の溶媒よりも低い第2の溶媒とを、液−液界面を形成するように接触させる工程と、
    (ii)前記溶液および前記第2の溶媒の相互拡散によって前記溶液と前記第2の溶媒とを混合させて前記フラーレンの結晶を析出させる工程とを含み、
    前記ベンゼン誘導体(A)は、ベンゼン環の2つ以上の水素が置換されたベンゼン誘導体、およびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体であるフラーレン結晶の製造方法。
  2. 前記(ii)の工程において、前記溶液を所定の時間、静置することによって前記溶液と前記第2の溶媒とを混合させる請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  3. 前記ベンゼン誘導体(A)が、構造異性を有さない1種類のベンゼン誘導体、または、構造異性を有する1種類のベンゼン誘導体の複数の構造異性体から選ばれる1つの構造異性体である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  4. 25℃の前記第2の溶媒に対する前記フラーレンの溶解度が0.01mg/ml以下である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  5. 前記ベンゼン誘導体(A)が、ベンゼン環のメタ位置が置換されたベンゼン誘導体、ベンゼン環の1,3,5の位置が置換されたベンゼン誘導体、およびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  6. 前記ベンゼン誘導体(A)が、m−ジアルキルベンゼン、m−ジハロゲン化ベンゼン、1,3,5−トリアルキルベンゼン、1,3,5−トリハロゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  7. 前記ベンゼン誘導体(A)が、m−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、3−クロロトルエンおよびメトキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  8. 前記第2の溶媒が、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、合計で50質量%以上の含有率で含む請求項5〜7のいずれか1項に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  9. 前記第1の溶媒に対する前記フラーレンの溶解度をX(mg/ml)としたときに、前記溶液中の前記フラーレンの濃度は、0.3mg/ml以上で且つ0.15X(mg/ml)以上である請求項5〜7のいずれか1項に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  10. 前記フラーレン結晶を用いて不織布を形成する工程をさらに含む請求項5〜7のいずれか1項に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  11. 前記ベンゼン誘導体(A)が、ベンゼン環のオルト位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,4の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体であり、
    前記(i)の工程において、前記溶液と固−液界面を形成するように固体の壁を配置する請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  12. 前記ベンゼン誘導体(A)がo−キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、o−ジクロロベンゼンおよび2−クロロトルエンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  13. 前記第2の溶媒が、側鎖を有するアルコールおよびn−ペンチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つのアルコールを50質量%以上の含有率で含む請求項11に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  14. 前記第2の溶媒が、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールである請求項13に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  15. 前記第1の溶媒に対する前記フラーレンの溶解度をX(mg/ml)としたときに、前記溶液中の前記フラーレンの濃度は、3mg/ml以上で且つ0.3X(mg/ml)以上である請求項11に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  16. 前記ベンゼン誘導体(A)は、ベンゼン環のパラ位置が置換されたベンゼン誘導体、および、ベンゼン環の1,2,3の位置が置換されたベンゼン誘導体から選ばれる少なくとも1種のベンゼン誘導体である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  17. 前記ベンゼン誘導体(A)が、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、p−ジクロロベンゼンおよび4−クロロトルエンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項16に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  18. 前記第2の溶媒が、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールの中から選ばれる少なくとも1種を、合計で50質量%以上の含有率で含む請求項16に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  19. 前記第1の溶媒に対する前記フラーレンの溶解度をX(mg/ml)としたときに、前記溶液中の前記フラーレンの濃度は、3mg/ml以上で且つ0.3X(mg/ml)以上である請求項16に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  20. 前記(ii)の工程で得られた前記フラーレン結晶に対して、加圧、加熱およびレーザ照射からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理を行う工程をさらに含む請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  21. 前記フラーレンは、その内部に炭素以外の元素を含む請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  22. 前記フラーレンは、C60またはC70である請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
  23. 前記ベンゼン誘導体(A)が、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、および4−クロロトルエンから選ばれるいずれか1つである請求項1に記載のフラーレン結晶の製造方法。
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