JP2004262736A - 炭素結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フラーレン結晶を歩留まり良く製造する製造法を提供する。
【解決手段】ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロンゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液およびフラーレンに対して貧溶媒である第2の溶媒を、液−液界面を形成するように接触させ、ついで前記溶液および前記第2溶媒をその状態で所定時間維持することにより前記溶液中にフラーレンを析出させる。
【選択図】 なし
【解決手段】ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロンゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液およびフラーレンに対して貧溶媒である第2の溶媒を、液−液界面を形成するように接触させ、ついで前記溶液および前記第2溶媒をその状態で所定時間維持することにより前記溶液中にフラーレンを析出させる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は炭素結晶の製造方法、特に炭素の同素体分子フラーレンの結晶の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素元素のみから合成される物質として、ダイヤモンドやグラファイトが知られているが、最近、新たに60個の炭素原子からなる球状クラスター分子が見いだされ、その物性および応用について研究がなされている。例えば非特許文献1によれば、この分子はフラーレンと呼ばれるもので、サッカーボール状の形状を有している。またフラーレン分子の集合体は面心立方格子であり、各種元素をドーピングすることにより超伝導特性を有する物質が得られることが非特許文献2に報告されている。
【0003】
フラーレンの結晶を得る方法として、非特許文献3には、フラーレンを溶解したトルエン溶液にイソプロピルアルコールを添加して直径が200nm〜2μmで長さが0.15mm〜5mmのフラーレンの針状単結晶が得られると記載されている。
【0004】
【非特許文献1】
H.W.Kroto等、Nature 318(1985) 162
【非特許文献2】
A.F.Hebard等、Nature 350(1991) 600
【非特許文献3】
K.Miyazawa等、J.Mater.Res.,Vol.17,No.1,83(2002)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記非特許文献3による単結晶の製造方法では、フラーレン結晶の析出量が少なく、フラーレン結晶の製造歩留まりが低いという問題があった。
本発明の目的は、フラーレンの優れた物性を保持しつつ、各種分野への応用展開が可能なフラーレン結晶を歩留まり良く製造する製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼンおよびトリハロンゲン化ベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液およびフラーレンに対して貧溶媒である第2の溶媒を、液−液界面を形成するように接触させ、ついで前記溶液および前記第2溶媒をその状態で所定時間維持することにより前記溶液中にフラーレンを析出させる炭素結晶の製造方法である。
【0007】
本発明において、ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロンゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液を準備する。前記ベンゼン化合物としては、例えばm−キシレン、m−ジクロロベンゼン、m−ジエチルベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、3−クロロトルエン、3−フルオロトルエン、アニソール、エトキシベンゼン等を挙げることができる。これらの中でm−キシレン、m−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、3−クロロトルエンおよびアニソールが特に好ましく用いられる。
【0008】
本発明における第1の溶媒は前記ベンゼン化合物のいずれか一種であることが最も好ましいが、前記ベンゼン化合物の二種またはそれ以上の混合物であってもよく、また上記一種または二種以上の前記ベンゼン化合物を少なくとも50質量%含有するものであってもよく、フラーレンの溶解度が1.0mg/ml以上である溶媒が好ましい。第1の溶媒に50質量%未満含有させてもよい溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、二硫化炭素、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、2−メチルチオフェン等を挙げることができる。
【0009】
上記第1の溶媒に溶解させるフラーレンとしては、C60、C70,C76,C78,C82,C84,C240,C540およびC720等を使用することができるが、それらの中でC60、C70,C76,C78,C82およびC84を好ましく用いることができ、C60およびC70が最も好ましく用いられる。またフラーレン分子の内部に異元素(例えば典型元素金属または遷移金属)を内包したもの、またはフラーレン分子の間に異元素を配置したものも用いることができる。
【0010】
本発明において、上記第1の溶媒にフラーレンを溶解させて溶液とするが、フラーレンの濃度があまり低すぎるとフラーレン単結晶の析出速度が小さくなったり、析出量が少量になる。従って前記溶液中のフラーレンの濃度は0.3mg/ml以上でかつ第1溶媒に対する溶解度の15%以上の濃度で含有させることが好ましく、0.5mg/ml以上でかつ第1溶媒に対する溶解度の30%以上の濃度で含有させることがさらに好ましい。例えばm−キシレンのC60の溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlであるので、フラーレンの濃度は0.3mg/ml以上にすることが好ましく、0.5mg/ml以上にすることがさらに好ましい。
【0011】
前記溶液に接触させる第2の溶媒としてフラーレンに対して貧溶媒であるものが用いられる。フラーレンに対する貧溶媒とはフラーレンの溶解度(飽和濃度)が0.01mg/ml以下の溶媒を指す。また第2の溶媒は前記溶液の第1溶媒と相互に溶解することができるものが用いられる。第2溶媒としてn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールのようなアルコールが好ましく用いられる。メチルアルコール、エチルアルコールは拡散速度が大き過ぎて粒子状の結晶が成長し難く、沈殿が生じやすいので主成分として使用することは好ましくない。
【0012】
本発明における第2の溶媒は前記アルコールのいずれか一種であることが最も好ましいが、前記アルコールの二種またはそれ以上の混合物であってもよく、また上記一種または二種以上の前記アルコールを少なくとも50質量%含有するものであってもよい。第2溶媒に50質量%未満含有させてもよい溶媒としては、例えばメチルアルコールおよびエチルアルコール等を挙げることができる。
【0013】
本発明において、前記溶液および前記第2溶媒を、前記溶液と前記第2溶媒とが液−液界面を形成するように接触させる。例えば容器に前記溶液を入れ、ついで前記第2溶媒を静かに注いで容器内で前記溶液と前記第2溶媒とが2層に分離してその2層の境界に液−液界面を形成させる。
【0014】
互いに接触させる前記溶液および前記第2溶媒のいずれか一方があまりに多量であったり少量であると、フラーレンの析出が効率的に行われないので、前記溶液および前記第2溶媒の合計体積Vに対して前記溶液が好ましくは80体積%以下、より好ましくは10〜50体積%になるように使用される。
【0015】
この状態の前記溶液および前記第2溶媒を所定時間維持する。好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、ただし前記溶液および前記第2溶媒の凝固点のうち高い方の温度より高い温度で静置することが、均一な大きさの結晶を析出させる上で好ましい。この維持時間が経過するつれて、液−液界面の両側の前記溶液と前記第2溶媒とが徐々に相互に拡散する。フラーレンは液−液界面を中心として析出しそして成長して、前記溶液および前記第2溶媒の相互拡散が終わる10〜100時間経過した後にはフラーレン結晶が得られる。図1および図2は比較的に直径が小さい繊維状のフラーレン単結晶を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真であり、図1は拡大率1,000倍の写真であり、図2は拡大率50,000倍の写真である(いずれも写真の大きさ90mm×118mm)。図3は比較的に直径が大きい針繊維状フラーレン単結晶の光学顕微鏡写真である(拡大率50倍、写真の大きさ90mm×118mm)。図1および図2には直径が60nm〜1000nm(1μm)で長さが100μm以上の繊維状フラーレン単結晶が、図3には直径が約25μmで長さが約3mmの針状のフラーレン単結晶繊維がそれぞれ示されている。
【0016】
もし、上述の前記溶液および前記第2溶媒の接触の際に液−液界面が形成されずに前記溶液と前記第2溶媒が急激に混合されたり、前記静置がされずに前記溶液と前記第2溶媒の相互拡散が急激に生じた場合には、前記溶液中でフラーレンが急速に析出するため、沈殿のみが生成される。
【0017】
また第1の溶媒として用いる上記ベンゼン化合物の代わりに、トルエンを使用した場合にはフラーレン結晶の析出量が少なく、原料としてフラーレン量に対して製造されるフラーレン結晶の量が少なく歩留まりは約30%程度である。それに対して本発明では原料としてフラーレン量に対して製造されるフラーレン結晶の量が多く歩留まりは例えば約70%以上に達する。
【0018】
本発明により得られるフラーレン結晶の形状は使用する第1溶媒および第2溶媒の種類、第1溶媒に溶解するフラーレンの濃度、析出温度等によって異なる。例えば第1溶媒のベンゼン化合物としてm−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、3−クロロトルエンおよびアニソールよりなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる場合には、フラーレン結晶の形状は主として繊維形状となる。この繊維形状は50nm〜1000μmの平均直径、0.10〜100mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する。
【0019】
第1溶媒のベンゼン化合物として1,3,5−トリメチルベンゼンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、フラーレン結晶が50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると綿状に形成されることが多い。この綿状のフラーレン結晶を例えば穴あきシートの上で抄造するなどにより積み重ねて不織布状のフラーレン結晶が得られる。
【0020】
また、前記ベンゼン化合物としてm−キシレンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−プロピルアルコールまたはi−プロピルアルコールが用いられる場合には、フラーレンが50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると綿状に形成されることが多い。この綿状のフラーレン結晶は上記と同様に積み重ねて不織布状のフラーレン結晶が得られる。
【0021】
さらに、前記ベンゼン化合物としてm−キシレンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、フラーレンが2〜1000μmの平均直径、0.2〜20mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると針状に形成されることが多い。
【0022】
このフラーレン単結晶を加圧、例えば3〜9Paでのプレス、加熱、例えば250〜400℃保持またはレーザ照射、例えば波長300nm以下のレーザ光照射の操作により単結晶を構成するフラーレン分子同士の間に存在する前記第1溶媒などを除去して緻密化して機械的強度を高めることができる。空気中で加熱する場合は、450℃以上では分解が起こってしまうので、450℃以下での加熱が望ましい。なお、真空中や窒素雰囲気など、酸素の存在しない環境では昇華が始まる600℃より低い温度での処理が望ましい。
【0023】
本発明により得られる繊維状その他の形状のフラーレン単結晶はπ結合を有するため、フラーレン単結晶の表面では新たな反応や物質の合成が期待できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
[実施例]
以下に、本発明の実施の形態を示す。
[実施例1]
フラーレンC60(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製) 32mgを1,2,3−トリメチルベンゼン(1,2,3−TMB、第1溶媒)20mlに溶解し、2mlを分取した。フラーレンの濃度は1.6mg/mlであり、溶解度(25℃飽和濃度)は約1.6mg/mlである。これをガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。この溶液と混合しないようにガラス容器の側面壁に沿ってゆっくりとi−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlを加えた。容器の中には約6mmの高さの前記溶液の下層と、その溶液の層の上に約10mmの高さの第2溶媒の上層とに分離しており、前記下層と上層との境界に直径1.9cmの円形の液−液界面が形成されていた。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数の針状のフラーレンの単結晶繊維(合計約2.6mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約80%が繊維化されていた。
【0025】
[比較例1]
実施例1において使用した1,2,3−トリメチルベンゼン(第1溶媒)2mlおよびi−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlに代えてトルエン2mlおよびi−プロピルアルコール4.0mlおよびフラーレン濃度2.8mg/ml(飽和濃度約2.8mg/ml)を使用した以外は実施例1と同様に処理した結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数の針状のフラーレンの単結晶繊維(合計約1.7mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約30%が繊維化されていた。残りの約70%のフラーレンは沈殿物となっていた。
【0026】
[実施例2]
フラーレンC60(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製) 24mgをm−キシレン(第1溶媒)20mlに溶解し、2mlを分取した。フラーレンの濃度は1.2mg/mlであり、溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlである。これをガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。この溶液と混合しないようにガラス容器の側面壁に沿ってゆっくりとn−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlを加えた。容器の中には約6mmの高さの前記溶液の下層と、その溶液の層の上に約10mmの高さの第2溶媒の上層とに分離しており、前記下層と上層との境界に直径1.9cmの円形の液−液界面が形成されていた。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数のフラーレンの単結晶繊維(合計約2.0mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約75%が繊維化されていた。
【0027】
[実施例3〜18]
実施例2において使用したm−キシレン(第1溶媒)2mlおよびn−プロピルアルコール(第2溶媒)4mlに代えて表1に示す物質[第1溶媒;1,3,5−トリメチルベンゼン(1,3,5−TMB)、1,2,4−トリメチルベンゼン(1,2,4−TMB)、m−ジクロロベンゼン(m−DCB)、o−キシレン、3−クロロトルエン、アニソール、第2溶媒;2−ブチルアルコール(2−BuA)、n−ブチルアルコール(n−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−プロピルアルコール(i−PrA)、i−ペンチルアルコール(i−PeA)、n−ペンチルアルコール(n−PeA)、エチルアルコール(EtA)]を使用した以外は実施例1と同様にして0.1〜200μmの平均径の繊維状または粒子状のフラーレンの単結晶が得られた。なお、実施例16においては、第1溶媒としてp−キシレン 80体積%およびo−キシレン 20体積%からなる混合溶媒を、そして第2溶媒としてi−ブチルアルコール80体積%およびエチルアルコール 20体積%からなる混合溶媒をそれぞれ使用した。なお、実施例4その他で得られる綿状のフラーレン結晶を溶液とともに濾紙の上に流し出して乾燥させると不織布状になることが確かめられた。また実施例14でのフラーレン結晶の形状「針状*」は芯部を中心にして針状の結晶が放射状に伸びていることを示す。
【0028】
[実施例19]
実施例2において使用したフラーレンC60およびn−プロピルアルコール(第2溶媒)4mlに代えてフラーレンC70(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製)およびi−ブチルアルコール(i−BuA)を表1に示す通り使用した以外は実施例2と同様にして表1に示す綿状のフラーレンの単結晶が得られた。
【0029】
【表1】
1,3,5−TMB:1,3,5−トリメチルベンゼン
1,2,4−TMB:1,2,4−トリメチルベンゼン
m−DCB:m−ジクロロベンゼン
i−PrA:i−プロピルアルコール
n−PrA:n−プロピルアルコール
n−BuA:n−ブチルアルコール
2−BuA:2−ブチルアルコール
i−BuA:i−ブチルアルコール
n−PeA:n−ペンチルアルコール
i−PeA:i−ペンチルアルコール
EtA:エチルアルコール
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、2種類の溶液を拡散混合することにより、フラーレンを構成要素とする繊維状単結晶その他の結晶を高い歩留まりで製造することができる。また、この繊維からシートを得ることができる。さらに繊維状または針状のフラーレン単結晶を用いて、たとえば、マイクロマシンの軸等、微小機械の部材として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られる繊維状のフラーレンの結晶の電子顕微鏡写真
【図2】図1の繊維状のフラーレンの結晶を拡大した電子顕微鏡写真
【図3】本発明で得られる他の針繊維状のフラーレンの結晶の光学顕微鏡写真
【発明が属する技術分野】
本発明は炭素結晶の製造方法、特に炭素の同素体分子フラーレンの結晶の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素元素のみから合成される物質として、ダイヤモンドやグラファイトが知られているが、最近、新たに60個の炭素原子からなる球状クラスター分子が見いだされ、その物性および応用について研究がなされている。例えば非特許文献1によれば、この分子はフラーレンと呼ばれるもので、サッカーボール状の形状を有している。またフラーレン分子の集合体は面心立方格子であり、各種元素をドーピングすることにより超伝導特性を有する物質が得られることが非特許文献2に報告されている。
【0003】
フラーレンの結晶を得る方法として、非特許文献3には、フラーレンを溶解したトルエン溶液にイソプロピルアルコールを添加して直径が200nm〜2μmで長さが0.15mm〜5mmのフラーレンの針状単結晶が得られると記載されている。
【0004】
【非特許文献1】
H.W.Kroto等、Nature 318(1985) 162
【非特許文献2】
A.F.Hebard等、Nature 350(1991) 600
【非特許文献3】
K.Miyazawa等、J.Mater.Res.,Vol.17,No.1,83(2002)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記非特許文献3による単結晶の製造方法では、フラーレン結晶の析出量が少なく、フラーレン結晶の製造歩留まりが低いという問題があった。
本発明の目的は、フラーレンの優れた物性を保持しつつ、各種分野への応用展開が可能なフラーレン結晶を歩留まり良く製造する製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼンおよびトリハロンゲン化ベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液およびフラーレンに対して貧溶媒である第2の溶媒を、液−液界面を形成するように接触させ、ついで前記溶液および前記第2溶媒をその状態で所定時間維持することにより前記溶液中にフラーレンを析出させる炭素結晶の製造方法である。
【0007】
本発明において、ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロンゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液を準備する。前記ベンゼン化合物としては、例えばm−キシレン、m−ジクロロベンゼン、m−ジエチルベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、3−クロロトルエン、3−フルオロトルエン、アニソール、エトキシベンゼン等を挙げることができる。これらの中でm−キシレン、m−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、3−クロロトルエンおよびアニソールが特に好ましく用いられる。
【0008】
本発明における第1の溶媒は前記ベンゼン化合物のいずれか一種であることが最も好ましいが、前記ベンゼン化合物の二種またはそれ以上の混合物であってもよく、また上記一種または二種以上の前記ベンゼン化合物を少なくとも50質量%含有するものであってもよく、フラーレンの溶解度が1.0mg/ml以上である溶媒が好ましい。第1の溶媒に50質量%未満含有させてもよい溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、二硫化炭素、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、2−メチルチオフェン等を挙げることができる。
【0009】
上記第1の溶媒に溶解させるフラーレンとしては、C60、C70,C76,C78,C82,C84,C240,C540およびC720等を使用することができるが、それらの中でC60、C70,C76,C78,C82およびC84を好ましく用いることができ、C60およびC70が最も好ましく用いられる。またフラーレン分子の内部に異元素(例えば典型元素金属または遷移金属)を内包したもの、またはフラーレン分子の間に異元素を配置したものも用いることができる。
【0010】
本発明において、上記第1の溶媒にフラーレンを溶解させて溶液とするが、フラーレンの濃度があまり低すぎるとフラーレン単結晶の析出速度が小さくなったり、析出量が少量になる。従って前記溶液中のフラーレンの濃度は0.3mg/ml以上でかつ第1溶媒に対する溶解度の15%以上の濃度で含有させることが好ましく、0.5mg/ml以上でかつ第1溶媒に対する溶解度の30%以上の濃度で含有させることがさらに好ましい。例えばm−キシレンのC60の溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlであるので、フラーレンの濃度は0.3mg/ml以上にすることが好ましく、0.5mg/ml以上にすることがさらに好ましい。
【0011】
前記溶液に接触させる第2の溶媒としてフラーレンに対して貧溶媒であるものが用いられる。フラーレンに対する貧溶媒とはフラーレンの溶解度(飽和濃度)が0.01mg/ml以下の溶媒を指す。また第2の溶媒は前記溶液の第1溶媒と相互に溶解することができるものが用いられる。第2溶媒としてn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールのようなアルコールが好ましく用いられる。メチルアルコール、エチルアルコールは拡散速度が大き過ぎて粒子状の結晶が成長し難く、沈殿が生じやすいので主成分として使用することは好ましくない。
【0012】
本発明における第2の溶媒は前記アルコールのいずれか一種であることが最も好ましいが、前記アルコールの二種またはそれ以上の混合物であってもよく、また上記一種または二種以上の前記アルコールを少なくとも50質量%含有するものであってもよい。第2溶媒に50質量%未満含有させてもよい溶媒としては、例えばメチルアルコールおよびエチルアルコール等を挙げることができる。
【0013】
本発明において、前記溶液および前記第2溶媒を、前記溶液と前記第2溶媒とが液−液界面を形成するように接触させる。例えば容器に前記溶液を入れ、ついで前記第2溶媒を静かに注いで容器内で前記溶液と前記第2溶媒とが2層に分離してその2層の境界に液−液界面を形成させる。
【0014】
互いに接触させる前記溶液および前記第2溶媒のいずれか一方があまりに多量であったり少量であると、フラーレンの析出が効率的に行われないので、前記溶液および前記第2溶媒の合計体積Vに対して前記溶液が好ましくは80体積%以下、より好ましくは10〜50体積%になるように使用される。
【0015】
この状態の前記溶液および前記第2溶媒を所定時間維持する。好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、ただし前記溶液および前記第2溶媒の凝固点のうち高い方の温度より高い温度で静置することが、均一な大きさの結晶を析出させる上で好ましい。この維持時間が経過するつれて、液−液界面の両側の前記溶液と前記第2溶媒とが徐々に相互に拡散する。フラーレンは液−液界面を中心として析出しそして成長して、前記溶液および前記第2溶媒の相互拡散が終わる10〜100時間経過した後にはフラーレン結晶が得られる。図1および図2は比較的に直径が小さい繊維状のフラーレン単結晶を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真であり、図1は拡大率1,000倍の写真であり、図2は拡大率50,000倍の写真である(いずれも写真の大きさ90mm×118mm)。図3は比較的に直径が大きい針繊維状フラーレン単結晶の光学顕微鏡写真である(拡大率50倍、写真の大きさ90mm×118mm)。図1および図2には直径が60nm〜1000nm(1μm)で長さが100μm以上の繊維状フラーレン単結晶が、図3には直径が約25μmで長さが約3mmの針状のフラーレン単結晶繊維がそれぞれ示されている。
【0016】
もし、上述の前記溶液および前記第2溶媒の接触の際に液−液界面が形成されずに前記溶液と前記第2溶媒が急激に混合されたり、前記静置がされずに前記溶液と前記第2溶媒の相互拡散が急激に生じた場合には、前記溶液中でフラーレンが急速に析出するため、沈殿のみが生成される。
【0017】
また第1の溶媒として用いる上記ベンゼン化合物の代わりに、トルエンを使用した場合にはフラーレン結晶の析出量が少なく、原料としてフラーレン量に対して製造されるフラーレン結晶の量が少なく歩留まりは約30%程度である。それに対して本発明では原料としてフラーレン量に対して製造されるフラーレン結晶の量が多く歩留まりは例えば約70%以上に達する。
【0018】
本発明により得られるフラーレン結晶の形状は使用する第1溶媒および第2溶媒の種類、第1溶媒に溶解するフラーレンの濃度、析出温度等によって異なる。例えば第1溶媒のベンゼン化合物としてm−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、3−クロロトルエンおよびアニソールよりなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる場合には、フラーレン結晶の形状は主として繊維形状となる。この繊維形状は50nm〜1000μmの平均直径、0.10〜100mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する。
【0019】
第1溶媒のベンゼン化合物として1,3,5−トリメチルベンゼンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、フラーレン結晶が50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると綿状に形成されることが多い。この綿状のフラーレン結晶を例えば穴あきシートの上で抄造するなどにより積み重ねて不織布状のフラーレン結晶が得られる。
【0020】
また、前記ベンゼン化合物としてm−キシレンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−プロピルアルコールまたはi−プロピルアルコールが用いられる場合には、フラーレンが50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると綿状に形成されることが多い。この綿状のフラーレン結晶は上記と同様に積み重ねて不織布状のフラーレン結晶が得られる。
【0021】
さらに、前記ベンゼン化合物としてm−キシレンが用いられ、かつ前記第2溶媒としてn−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールが用いられる場合には、フラーレンが2〜1000μmの平均直径、0.2〜20mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する繊維状に析出する。このフラーレン結晶は肉眼で見ると針状に形成されることが多い。
【0022】
このフラーレン単結晶を加圧、例えば3〜9Paでのプレス、加熱、例えば250〜400℃保持またはレーザ照射、例えば波長300nm以下のレーザ光照射の操作により単結晶を構成するフラーレン分子同士の間に存在する前記第1溶媒などを除去して緻密化して機械的強度を高めることができる。空気中で加熱する場合は、450℃以上では分解が起こってしまうので、450℃以下での加熱が望ましい。なお、真空中や窒素雰囲気など、酸素の存在しない環境では昇華が始まる600℃より低い温度での処理が望ましい。
【0023】
本発明により得られる繊維状その他の形状のフラーレン単結晶はπ結合を有するため、フラーレン単結晶の表面では新たな反応や物質の合成が期待できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
[実施例]
以下に、本発明の実施の形態を示す。
[実施例1]
フラーレンC60(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製) 32mgを1,2,3−トリメチルベンゼン(1,2,3−TMB、第1溶媒)20mlに溶解し、2mlを分取した。フラーレンの濃度は1.6mg/mlであり、溶解度(25℃飽和濃度)は約1.6mg/mlである。これをガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。この溶液と混合しないようにガラス容器の側面壁に沿ってゆっくりとi−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlを加えた。容器の中には約6mmの高さの前記溶液の下層と、その溶液の層の上に約10mmの高さの第2溶媒の上層とに分離しており、前記下層と上層との境界に直径1.9cmの円形の液−液界面が形成されていた。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数の針状のフラーレンの単結晶繊維(合計約2.6mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約80%が繊維化されていた。
【0025】
[比較例1]
実施例1において使用した1,2,3−トリメチルベンゼン(第1溶媒)2mlおよびi−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlに代えてトルエン2mlおよびi−プロピルアルコール4.0mlおよびフラーレン濃度2.8mg/ml(飽和濃度約2.8mg/ml)を使用した以外は実施例1と同様に処理した結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数の針状のフラーレンの単結晶繊維(合計約1.7mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約30%が繊維化されていた。残りの約70%のフラーレンは沈殿物となっていた。
【0026】
[実施例2]
フラーレンC60(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製) 24mgをm−キシレン(第1溶媒)20mlに溶解し、2mlを分取した。フラーレンの濃度は1.2mg/mlであり、溶解度(飽和濃度)は約1.4mg/mlである。これをガラス製の円筒形容器(直径1.9cm、高さ3.2cm)に入れた。この溶液と混合しないようにガラス容器の側面壁に沿ってゆっくりとn−プロピルアルコール(第2溶媒)4.0mlを加えた。容器の中には約6mmの高さの前記溶液の下層と、その溶液の層の上に約10mmの高さの第2溶媒の上層とに分離しており、前記下層と上層との境界に直径1.9cmの円形の液−液界面が形成されていた。その後、容器に蓋をかぶせて、20℃で48時間静置した。その結果、溶液内で成長してガラス容器の底面に沈んだ直径2〜100μmの多数のフラーレンの単結晶繊維(合計約2.0mg)が得られた。原料であるフラーレン重量の約75%が繊維化されていた。
【0027】
[実施例3〜18]
実施例2において使用したm−キシレン(第1溶媒)2mlおよびn−プロピルアルコール(第2溶媒)4mlに代えて表1に示す物質[第1溶媒;1,3,5−トリメチルベンゼン(1,3,5−TMB)、1,2,4−トリメチルベンゼン(1,2,4−TMB)、m−ジクロロベンゼン(m−DCB)、o−キシレン、3−クロロトルエン、アニソール、第2溶媒;2−ブチルアルコール(2−BuA)、n−ブチルアルコール(n−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−ブチルアルコール(i−BuA)、i−プロピルアルコール(i−PrA)、i−ペンチルアルコール(i−PeA)、n−ペンチルアルコール(n−PeA)、エチルアルコール(EtA)]を使用した以外は実施例1と同様にして0.1〜200μmの平均径の繊維状または粒子状のフラーレンの単結晶が得られた。なお、実施例16においては、第1溶媒としてp−キシレン 80体積%およびo−キシレン 20体積%からなる混合溶媒を、そして第2溶媒としてi−ブチルアルコール80体積%およびエチルアルコール 20体積%からなる混合溶媒をそれぞれ使用した。なお、実施例4その他で得られる綿状のフラーレン結晶を溶液とともに濾紙の上に流し出して乾燥させると不織布状になることが確かめられた。また実施例14でのフラーレン結晶の形状「針状*」は芯部を中心にして針状の結晶が放射状に伸びていることを示す。
【0028】
[実施例19]
実施例2において使用したフラーレンC60およびn−プロピルアルコール(第2溶媒)4mlに代えてフラーレンC70(純度99%、サイエンスラボラトリーズ社製)およびi−ブチルアルコール(i−BuA)を表1に示す通り使用した以外は実施例2と同様にして表1に示す綿状のフラーレンの単結晶が得られた。
【0029】
【表1】
1,3,5−TMB:1,3,5−トリメチルベンゼン
1,2,4−TMB:1,2,4−トリメチルベンゼン
m−DCB:m−ジクロロベンゼン
i−PrA:i−プロピルアルコール
n−PrA:n−プロピルアルコール
n−BuA:n−ブチルアルコール
2−BuA:2−ブチルアルコール
i−BuA:i−ブチルアルコール
n−PeA:n−ペンチルアルコール
i−PeA:i−ペンチルアルコール
EtA:エチルアルコール
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、2種類の溶液を拡散混合することにより、フラーレンを構成要素とする繊維状単結晶その他の結晶を高い歩留まりで製造することができる。また、この繊維からシートを得ることができる。さらに繊維状または針状のフラーレン単結晶を用いて、たとえば、マイクロマシンの軸等、微小機械の部材として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られる繊維状のフラーレンの結晶の電子顕微鏡写真
【図2】図1の繊維状のフラーレンの結晶を拡大した電子顕微鏡写真
【図3】本発明で得られる他の針繊維状のフラーレンの結晶の光学顕微鏡写真
Claims (13)
- ジアルキルベンゼン、ジハロンゲン化ベンゼン、ハロゲン化ベンゼン、トリアルキルベンゼン、トリハロンゲン化ベンゼン、3−ハロゲン化トルエンおよびアルコキシベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のベンゼン化合物を含有する第1の溶媒にフラーレンを溶解してなる溶液およびフラーレンに対して貧溶媒である第2の溶媒を、液−液界面を形成するように接触させ、ついで前記溶液および前記第2溶媒をその状態で所定時間維持することにより前記溶液中にフラーレンを析出させる炭素結晶の製造方法。
- 前記第1溶媒が前記ベンゼン化合物を少なくとも50質量%含有する請求項1記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記第2溶媒がn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールおよびi−ペンチルアルコールの中から選ばれた少なくとも1種を50質量%以上含有する請求項1または2記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記溶液はフラーレンを0.5mg/ml以上でかつ第1溶媒に対する溶解度の15%以上の濃度で含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記ベンゼン化合物がm−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、3−クロロトルエンおよびアニソールよりなる群から選ばれた少なくとも1種でありフラーレンが繊維状に析出する請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記ベンゼン化合物が1,3,5−トリメチルベンゼンであり、そして前記第2溶媒がn−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールであり、フラーレンが50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する請求項5記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記ベンゼン化合物がm−キシレンであり、そして前記第2溶媒がn−プロピルアルコールまたはi−プロピルアルコールであり、フラーレンが50〜2000nmの平均直径、0.10〜20mmの平均長さを有する繊維状に析出する請求項5記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記ベンゼン化合物がm−キシレンであり、そして前記第2溶媒がn−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコールまたはi−ペンチルアルコールであり、フラーレンが2〜1000μmの平均直径、0.2〜20mmの平均長さおよび100以上のアスペクト比を有する繊維状に析出する請求項5記載の炭素結晶の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法で得られた炭素結晶を加圧、加熱またはレーザ照射する炭素結晶の製造方法。
- 前記溶液に溶解するフラーレンはフラーレン分子、フラーレン分子の内部に異元素を内包したもの、またはフラーレン分子の間に異元素を配置したものである請求項1〜9のいずれか1項記載の炭素結晶の製造方法。
- 前記フラーレン分子はC60またはC70である請求項10記載の炭素結晶の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項記載の製造方法で得られた炭素結晶。
- 請求項6または7記載の製造方法で得られた繊維状の炭素結晶を積み重ねてなる不織布状の炭素結晶。
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CN109205591A (zh) * | 2018-07-05 | 2019-01-15 | 南京理工大学 | 一种新型富勒烯衍生物微球的制备方法 |
CN115735912A (zh) * | 2022-11-22 | 2023-03-07 | 江南大学 | 一种鼠李糖脂/富勒烯复合材料的形貌可控制备方法及其抗菌应用 |
-
2003
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