JP4500506B2 - 繊維弾性体及び腰掛け - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維弾性体及びそれを座部に配置した腰掛けに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
腰掛けのクッション部材等に使用する繊維弾性体として従来より存在する、綿、羊毛、羽毛等の天然素材やアクリル、ポリエステル、ガラス繊維等の人造繊維で組成した単なる繊維集合体は、圧縮反発性に乏しく、また、着座・尻ずれの繰り返し使用により繊維が移動して偏在化する現象が起き、へたりやすいという問題があった。特許文献1にはこの問題に対処した繊維弾性体が開示されている。この繊維弾性体51は、図7に示すように、繊維集合体52と、繊維集合体52を包む保護シートとしての表生地53と、表生地53を繊維集合体52の着座面に接着する接着剤54とから構成され、繊維集合体52と表生地53とがまとめてキルティング糸55でキルティング加工(刺し縫い)されている。この構成によれば、繊維集合体52が接着剤で表生地53に固定されるとともにキルティング糸55で区別・制限されるため、繊維集合体52の繊維が移動して偏在化する現象を緩和し、へたりを減少させることができる。また、キルティング糸55が繊維弾性体51の圧縮反発力を高めて座り心地を良くし、表生地53が着座・離座時における繊維集合体52の空気の給排速度を規制する効果もある。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−155602号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の繊維弾性体51においても、着座・尻ずれによって着座面の表生地53と繊維集合体52とが凹み変形する際、表生地53は接着した繊維集合体52の表層繊維を連れて変形させるべく水平方向に引張ろうとする一方、内層繊維は表層繊維を前記引張りに抗して逆に引張ろうとするため、繰り返し使用により表層繊維と内層繊維との間で剥離が起こるという問題があった。着座面の表生地53は全面が均一に凹み変形するわけではなく、尻や大腿部が当接する部分とその周囲(以下、当接周囲部という。)が大きく凹み変形するため、特にこの当接周囲部で前記表層繊維の剥離が起きやすい。そして、この剥離が拡がると、表層繊維と内層繊維とがその間の相対移動によりほぐれたり、内層繊維が移動して偏在化したりするため、やがて圧縮反発力が低下してへたることになる。また、表層繊維と内層繊維との相対移動により、繊維集合体52内でキルティング糸55が切れ、キルティング効果がなくなることで圧縮反発力が低下するおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決し、繊維集合体の繊維の剥離、ほぐれ及び偏在化を抑制して良好な圧縮反発力を長期間維持できるへたりにくい繊維弾性体と、それを用いた腰掛けとを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の繊維弾性体は、繊維相互の接触点を結着剤で結着した3次元構造体である繊維集合体と、繊維集合体の受圧面に重ねられ且つ受圧時に相対滑動しないように接着された、構成繊維を相互に結着するための結着剤としての熱硬化性樹脂が含浸されたフェルト状の不織布である第一保護シートと、第一保護シートの表面に重ねられ且つ受圧時に相対滑動しうるように非接着とされた、織布である第二保護シートと、前記繊維集合体、第一保護シート及び第二保護シートをまとめてキルティング加工したキルティング糸とを含み、第一保護シートに含浸された結着剤としての熱硬化性樹脂が第二保護シートを滑動しやすくする潤滑剤としても機能するものであることを特徴としている。
【0007】
本発明の繊維弾性体において、受圧時(例えば腰掛けの座部にクッション材として配置したときには着座・尻ずれ時)には受圧面の第二保護シートと第一保護シートと繊維集合体とが凹み変形する。このとき、次の作用が得られる。
▲1▼ 繊維集合体は受圧面に接着された第一保護シートに固定されるとともにキルティング糸で区別・制限されるため、繊維集合体の繊維が移動して偏在化する現象が緩和される。
▲2▼ 受圧面の第二保護シートは全面が均一に凹み変形するわけではない。前記のとおり第二保護シートのうち尻や大腿部の当接周囲部は大きく凹み変形して大きな水平方向の引張応力を生じさせるが、その他の部位はあまり凹み変形しない。このとき、変形量の大きい第二保護シートの当接周囲部は第一保護シートの上で相対的に滑動し、第二保護シートの下の第一保護シートは接着した繊維集合体の表層繊維と一体に凹み変形する。この第二保護シートの滑動が、第一保護シート及び繊維集合体の表層繊維に作用する水平方向の引張力を均一化して緩和するため、繊維集合体の表層繊維と内層繊維との間の剥離を抑制する。従って、長期間使用した場合でも、繊維集合体の剥離、ほぐれ及び偏在化が起きにくくなリ、良好な圧縮反発力を長期間維持できる。なお、第二保護シートはキルティング糸が刺し縫いされた点の近傍ではある程度滑動が拘束されるが、第二保護シートのその他の部位では滑動が許容されるため、前記引張力の緩和作用が生じる程度の滑動は十分に可能である。
▲3▼ 繊維集合体の剥離が起きにくくなれば、繊維集合体内でキルティング糸が切れることも起きにくくなるので、キルティング効果がなくなることで圧縮反発力が低下するという心配もない。
【0008】
(a)繊維集合体
繊維集合体は、繊維相互を結着剤(熱硬化性繊維を含む)で結着した3次元繊維構造物である。繊維集合体を組成する繊維としては、天然繊維や人造繊維(半合成繊維を含む)、或いはこれらの混合物、通常の天然繊維や人造繊維に物理的、化学的処理を加えたものなど広範な繊維が使用できる。具体的には天然繊維としては例えば綿、麻、羊毛などが使用でき、人造繊維としては例えばアクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維などが使用できる。なお、繊維集合体は、1種類の繊維で組成されたものであってもよく、2種類以上の混合物で組成されていてもよい。
【0009】
但し、繊維集合体を組成する繊維としては、弾性反発力の強いものがよく、好ましくは防災性に優れた難燃性乃至不燃性の繊維がよい。このような繊維としては例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維などが例示できる。また、圧縮反発性(クッション性)、繰り返し使用性(耐へたり性)及び防災性が要求される場合には、繊維集合体として、ポリエステル繊維又は炭素繊維を用い、繊維相互の接触点を結着剤等で結着して3次元的なネットワーク構造を形成させてなる3次元構造体を用いるのがよく、このうち、特に炭素繊維を主材(好ましくは50重量%以上)とする3次元構造体(以下、炭素繊維3次元構造体という)が好適に使用できる。なお、炭素繊維3次元構造体のみを用いて繊維集合体を構成してもよいが、炭素繊維3次元構造体と他の素材からなる3次元構造体及び/又は他の綿状繊維集合物とを組み合わせて繊維集合体を構成してもよい。また、種類の異なる3次元構造体を重ね合わせたものであってもよい。
【0010】
炭素繊維の種類は限定されない。例えばポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、レーヨンなどの高分子、石油ピッチ、石炭ピッチなどのピッチを原料とし、炭化または黒鉛化された炭素繊維を使用できる。特に、ピッチ系炭素繊維は、強制加熱下での発生ガスの毒性が低く、加工も容易である。また、炭素繊維が卷縮繊維であると(好ましくは繊維全体の50〜100重量%が卷縮繊維)、炭素繊維自体の弾性を利用し、小さな嵩密度(軽量)で強い圧縮反発力が得られる。卷縮繊維の繊維長は、0.1〜10cmが好ましい。
【0011】
結着剤の種類は限定されない。例えば熱硬化性樹脂又は熱融着性繊維を使用でき、熱硬化性樹脂を単独で使用してもよく、熱融着性繊維と併用してもよい。全繊維重量に対し熱硬化性樹脂が2〜20重量%含有された炭素繊維3次元構造体であると、繊維相互が強固に結着されているので、一層圧縮反発性、繰り返し使用性に優れた繊維集合体が構成できる。
【0012】
この炭素繊維3次元構造体は、嵩密度を20〜40Kg/m3 、最大荷重を100gf/cm2 (9.8kPa)としたときの圧縮硬さLCを0.7〜0.8、圧縮回復率RCを65%以上、25%圧縮時応力に対する65%圧縮時応力の比を10以上、1回圧縮残留歪率を10%以下、8万回圧縮後残留歪率を10%以下としたときに、一層人間にとって好適な圧縮反発性とでき、また充分な軽量性と優れた繰り返し使用性が確保できる。
【0013】
これらの各物性値は、次のように定義されるものである。すなわち、圧縮硬さLCは、無荷重時の厚みを初期厚みとし、最大荷重100gf/cm2 (9.8kPa)まで圧縮するのに要するエネルギーを、荷重−歪み曲線が線形(一直線)に変化した場合に要する仕事エネルギーで割った値をいう。圧縮回復率RCは、最大荷重100gf/cm2 (9.8kPa)まで圧縮するのに要したエネルギー量で、圧縮状態から無荷重の状態に戻るまでの回復過程におけるエネルギー量を割り、これに100を掛けた値をいう。圧縮応力比は、25%圧縮した時の応力で、65%圧縮した時の応力を割った値をいう。1回圧縮残留歪率は、室温にて初期厚みM0 の50%まで圧縮し、この状態を40時間保持した後除荷し、30分後の厚みM1 を測定し、(1−M1 /M0 )×100から算出した値をいう。8万回圧縮後残留歪率は、室温にて初期厚みM0 の50%まで圧縮した後、復元させるというサイクルを8万回繰り返し、8万回後の変位量(M∞)を求め、(1−M∞/M0 )×100から算出した値である。但し、以上の各物性値のうちLC、RCは10cm2 の円形の試料を用い、また圧縮応力比、1回圧縮残留歪率、8万回圧縮後残留歪率は50mm×50mm角形試料を用いて測定したものである。
【0014】
(b)第一保護シート
第一保護シートは、特定の材料に限定されず、天然繊維や人造繊維(半合成繊維を含む)、或いはこれらの混合物、通常の天然繊維や人造繊維に物理的、化学的処理を加えたものなど広範な繊維からなる不織布を使用できる。第一保護シートは、接着剤で固定した繊維集合体の繊維が移動するのを抑制できる剛性を備え、且つ座り心地を強ばらせすぎない柔軟性を備えたものが好ましく、具体的には、ノボロイド繊維(フェノール樹脂を繊維化した後、架橋処理し、分子構造を三次元化したもの)よりなるフェルト状の不織布、炭素繊維よりなるフェルト状の不織布等を例示できる。第一保護シートの厚さは、繊維弾性体の用途に応じ、耐久性、第一保護シートの材料等を考慮して適宜選定できるが、例えば、フェルト状不織布の場合、2〜3mm程度がよい。3mmを越えると強ばった感触を与える。
【0015】
また、第一保護シートの接着には、専用の接着剤を用いてもよいが、第一保護シートの耐久性を向上させるために第一保護シートに含浸された結着剤(後記のとおり潤滑剤としても機能するとなおよい。)や、繊維集合体に含まれる結着剤を利用して接着することもできる。これらの接着剤や結着剤は、特に限定されず、第一保護シートや繊維集合体の材料に応じて、適宜選定できる。特に、第一保護シート自体の耐久性を向上させるために第一保護シートに含浸された結着剤と、繊維集合体の結着剤とに同質の熱硬化性樹脂を用いると、その熱硬化性樹脂による接着性が増すので好ましい。この場合、繊維集合体の成形時に同時に第一保護シートを繊維集合体に熱硬化性樹脂で接着することができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等を例示できる。このうち、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂は耐熱性・難燃性に優れている点で好ましく、特に、フェノール樹脂は強制加熱下での発生ガスの毒性が少ない点で好ましい。
【0016】
(c)第二保護シート
第二保護シートは、特定の材料に限定されず、天然繊維や人造繊維(半合成繊維を含む)、或いはこれらの混合物、通常の天然繊維や人造繊維に物理的、化学的処理を加えたものなど広範な繊維からなる織布を使用できる。第二保護シートは、滑動性と耐摩耗性に優れたものが好ましく、金巾等の綿織布、ウール織布等を例示できる。
【0017】
繊維集合体の表層繊維の剥離を効果的に抑えるためには、第一保護シート又は第二保護シートに第二保護シートを滑動しやすくする潤滑剤を設けることが好ましい。潤滑剤は第一保護シートの表面や第二保護シートの裏面に塗着してもよいし、第一保護シート中に含浸させてもよい。特に、前記のとおり第一保護シート自体の耐久性を向上させるために第一保護シートに含浸させた結着剤を潤滑剤として機能させるのが好ましい。この結着剤には、前記の熱硬化性樹脂を使用できる。
【0018】
第二保護シートは第一保護シートと同程度の伸縮性を備えたものでもよいが、第二保護シートを第一保護シートよりも低い伸縮性を備えたものにすると、しっかりしたタッチの座り心地が得られ、第二保護シートを第一保護シートよりも高い伸縮性を備えたものにすると、柔らかいタッチの座り心地が得られる。
【0019】
第二保護シートは、第一保護シートの表面のみならず繊維集合体を包むように重ねられた表生地であることが好ましい。ここでいう表生地は、繊維弾性体の最表面に現れるものでもよいし、表生地の上にさらに上張りが設けられるものでもよい。第二保護シートが前記表生地の場合、第二保護シートは、第一保護シートに対しては相対滑動しうるように非接着とするが、繊維集合体に対しては接着しても非接着にしてもよい。また、前記表生地が、受圧時に繊維集合体内の空気が排出されるときの速度を規制でき、かつ解圧時に繊維集合体内へ外部空気が吸引されるときの速度を規制できるものであることが好ましい。表生地の空気透過性を好適に選択することにより、加重圧力が変動した場合における繊維集合体の追従速度を心地よい速度に調節できる。
【0020】
(d)キルティング糸
キルティング糸は、特定の材料に限定されず、天然繊維や人造繊維(半合成繊維を含む)、或いはこれらの混合物、通常の天然繊維や人造繊維に物理的、化学的処理を加えたものなど広範な繊維からなる糸のほか、合成樹脂や金属からなるモノフィラメント等を例示できる。キルティング糸によるキルティング加工は、繊維の偏りを防止して、繊維集合体の形状を保持する機能と、繊維集合体を圧縮して、繊維の反発力を高め、へたりを少なくする機能とを果たす。このため、繊維集合体を圧縮した状態で第二保護シートで包み、これをキルティング加工するとよい。キルティング模様は、特に限定されず、ジグザグ形、波形、渦巻き形、格子柄等を例示できる。
【0021】
(e)面ファスナー
繊維集合体の受圧面とは反対側の面に重ねられた第二保護シートの裏張部に面ファスナーを配置し、面ファスナーもまとめて前記キルティング糸でキルティング加工することができる。裏張部に面ファスナーを配置したとき、裏張部に面ファスナーを例えば縫い付けたり接着したりして固定することが好ましい。面ファスナーを設ける目的としては、▲1▼上張りを止着する目的、▲2▼繊維弾性体を座部の基台上にクッション材として取り付ける際、座部の基台上に配置された面ファスナーと係止する目的、等を例示できる。
【0022】
(f)繊維弾性体の用途
繊維弾性体の用途としては、特に限定されないが、バス、鉄道車両、地下鉄車両、航空機、水上船、宇宙船等の各種乗物用の座席や、劇場、映画館、オフィス、家庭等の椅子をはじめとする各種腰掛けの座部に配置されるクッション部材やバネ覆い部材を例示できる。
【0023】
次に、本発明に係る腰掛けは、上記のように構成された各繊維弾性体が、クッション部材として座部に配置されてなる腰掛けである。また、バネが座部の主クッション部材または補助クッション部材として用いられてなる腰掛けにおいて、上記のように構成された各繊維弾性体が、座部に腰掛けたとき臀部に感じるバネの存在感を隠すためのバネ覆い部材として、前記バネの上方に配置されたことを特徴とする腰掛けである。
【0024】
ここで、「腰掛け」は、最も広義の意味における腰掛けであり、前記のとおり、例えばバス、鉄道車両、地下鉄車両、航空機、水上船、宇宙船等の各種乗物用の座席や、劇場、映画館、オフィス、家庭等の椅子をはじめとする各種腰掛けを含む。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を乗物用座席の座部にクッション材として配置する繊維弾性体として具体化した実施形態例を、図1〜図5に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の繊維弾性体1は、繊維集合体2と、繊維集合体2の受圧面である着座面(上面)に重ねられ且つ受圧時に相対滑動しないように接着された第一保護シート3と、第一保護シート3の表面に重ねられ且つ着座時に相対滑動しうるように非接着とされた第二保護シート4と、前記繊維集合体2、第一保護シート3及び第二保護シート4をまとめてキルティング加工したキルティング糸5とから構成されている。
【0026】
繊維集合体2は、繊維全体の50重量%以上の炭素繊維を含み、炭素繊維相互の接触点を熱硬化性樹脂からなる結着剤で結着した3次元構造体である。炭素繊維には、石油ピッチや石炭ピッチを原料としたピッチ系の卷縮繊維が用いられ、結着剤には、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。
【0027】
なお、コストを抑えるために、繊維集合体2を50重量%以上の炭素繊維に他の繊維を加えて構成してもよい。他の繊維には、不燃性又は難燃性の繊維が好ましく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、鉱物系繊維、金属繊維等の無機繊維、或いは、レーヨン繊維、アセテート繊維、フェノール樹脂繊維、ナイロン繊維、難燃性ポリエステル繊維、アラミド繊維等の有機繊維を使用できる。
【0028】
第一保護シート3は、図2に示すように、繊維集合体2の着座面と前端面と前端内側面とを連続的に覆うように、繊維集合体2の表層部に接着されている。第一保護シート3には、厚さが2〜3mm程度のノボロイド繊維よりなるフェルト状の不織布(例えば商品名カイノール:日本カイノ−ル株式会社の登録商標)が用いられるとともに、この不織布の構成繊維を相互に結着するための結着剤が含浸されている。この結着剤は、第二保護シート4を滑りやすくするための潤滑剤として機能するとともに、第一保護シート3を繊維集合体2の表層部に接着するための接着剤6(図1参照)として機能する。第一保護シート3の結着剤には、繊維集合体2の結着剤と同質の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が用いられている。
【0029】
第二保護シート4は、図1及び図3に示すように、第一保護シート3に対し滑動可能に設けられており、[課題を解決するための手段]の項で述べたとおり、キルティング糸5が刺し縫いされた点の近傍ではある程度拘束されるものの、その他の部位では第二保護シート4及び第一保護シート3の非接着性と各々の柔軟性とによって滑動が許容される。第二保護シート4には、金巾等の綿製の織布が用いられている。この織布は、第一保護シート3に対し非接着の状態で、繊維集合体2の全体を包み込み、周縁を接着剤で貼り合わせて、キルティング糸5によって繊維集合体2に止着されている。
【0030】
第二保護シート4には、繊維集合体2の着座面と反対側の面つまり裏面を覆う裏張部4aが設けられている。裏張部4aの要所には、5本の面ファスナー7が配置され、縫い付けにより固定されている。さらに、面ファスナー7は裏張部4a等と共にまとめてキルティング糸5で繊維集合体2の裏面5箇所に保持されている。
【0031】
繊維弾性体1の製造方法の一例として、図5に示すように、炭素繊維の3次元構造体からなるシート21に結着剤22(熱硬化性樹脂溶液)を含浸し、このシート21を成形型23の内部に積層する。そして、積層されたシート21の表面に第一保護シート3を重ね、加圧成形し、結着剤22を加熱硬化させ、繊維集合体2に第一保護シート3を接着することができる。
【0032】
こうすれば、繊維集合体2の成形と同時に、第一保護シート3を熱硬化性樹脂で繊維集合体2の着座面に能率よく接着できる。その後、第一保護シート3と繊維集合体2とに第二保護シート4を被せ、第二保護シート4及び第一保護シート3をキルティング糸5で繊維集合体2に縫い付け、同時に、面ファスナー7をキルティング糸5で繊維集合体2に保持する。こうすれば、面ファスナー7が繊維集合体2から剥がれるおそれがなく、上張り13の頻繁な交換に充分な耐久性が得られる。
【0033】
上記のように構成された繊維弾性体1は、例えば、図4に示す鉄道車両等の乗物の腰掛け11において、座部の基台12の上にクッション材として取り付けられて使用される。繊維弾性体1には、その着座面を覆う上張り13が交換可能に装着され、上張り13の周縁が面ファスナー7に止着される。また、繊維弾性体1を座部の基台12上にクッション材として取り付ける際、前述したとおり面ファスナー7を、基台12上に配置された面ファスナー(図示略)と係止させるために使用することもできる。なお、腰掛け11の背当14を繊維弾性体1と同じ構造の弾性体とすることも可能である。
【0034】
この腰掛け11において、乗客が繊維弾性体1に着座したりその上で尻を動かしたりすると、[課題を解決するための手段]の項で作用を詳述したとおり、第二保護シート4が第一保護シート3の上で滑動し、第一保護シート3は繊維集合体2の表層部と一体に変形する。このとき、第二保護シート4の滑動によって第一保護シート3及び繊維集合体2の表層繊維に作用する水平方向の引張力が緩和され、繊維集合体2の表層繊維の剥離が抑制される。特に、第一保護シート3に潤滑剤として機能する結着剤が含浸されているため、第二保護シート4が第一保護シート3の上で滑動しやすく、表層繊維の剥離が効果的に抑制される。
【0035】
従って、この実施形態の繊維弾性体1によれば、長期間使用した場合でも、繊維集合体2の表層繊維が剥離しにくく、キルティング糸5の糸切れも防止される。この結果、繊維集合体2の優れた圧縮反発特性を確保し、繊維弾性体1の快適な座り心地を長期間維持することができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図6に示すように、繊維弾性体1の下半分にウレタンフォーム25を設け、繊維集合体2をウレタンフォーム25で下側から支持すること。
(2)繊維弾性体の中心部にウレタンフォームを設け、繊維集合体をウレタンフォームの周囲に巻き付けること。
(3)繊維弾性体の下部にコイルスプリングを設け、繊維集合体をコイルスプリングで下側から支持すること。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、繊維集合体の繊維の剥離、ほぐれ及び偏在化を抑制して良好な圧縮反発力を長期間維持できるへたりにくい繊維弾性体と、それを用いた腰掛けとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の繊維弾性体を示す断面図である。
【図2】同繊維弾性体の第一保護シートを示す斜視図である。
【図3】同繊維弾性体のキルティング糸及び面ファスナーを示す斜視図である。
【図4】 同繊維弾性体の使用形態を示す腰掛けの側面図である。
【図5】 同繊維弾性体の製造方法を説明する概略図である。
【図6】本発明に係る繊維弾性体の変更例を示す断面図である。
【図7】従来の繊維弾性体を示す断面図である。
【符号の説明】
1 繊維弾性体
2 繊維集合体
3 第一保護シート
4 第二保護シート
4a 裏張部
5 キルティング糸
6 接着剤
7 面ファスナー
11 腰掛け

Claims (7)

  1. 繊維相互の接触点を結着剤で結着した3次元構造体である繊維集合体と、
    繊維集合体の受圧面に重ねられ且つ受圧時に相対滑動しないように接着された、構成繊維を相互に結着するための結着剤としての熱硬化性樹脂が含浸されたフェルト状の不織布である第一保護シートと、
    第一保護シートの表面に重ねられ且つ受圧時に相対滑動しうるように非接着とされた、織布である第二保護シートと、
    前記繊維集合体、第一保護シート及び第二保護シートをまとめてキルティング加工したキルティング糸とを含み、
    第一保護シートに含浸された結着剤としての熱硬化性樹脂が第二保護シートを滑動しやすくする潤滑剤としても機能するものである繊維弾性体。
  2. 繊維集合体が、50重量%以上の炭素繊維を含請求項1記載の繊維弾性体。
  3. 第一保護シートの耐久性を向上させるために第一保護シートに含浸された結着剤を利用して、第一保護シートが繊維集合体の受圧面に接着された請求項1又は2記載の繊維弾性体。
  4. 第二保護シートが第一保護シートの表面のみならず繊維集合体を包むように重ねられた表生地である請求項1、2又は3記載の繊維弾性体。
  5. 繊維集合体の受圧面とは反対側の面に重ねられた第二保護シートの裏張部に面ファスナーが配置され、面ファスナーもまとめて前記キルティング糸でキルティング加工された請求項1、2、3又は4記載の繊維弾性体。
  6. 請求項1、2、3、4又は5記載の繊維弾性体が、クッション部材として座部に配置されてなる腰掛け。
  7. バネが座部の主クッション部材または補助クッション部材として用いられてなる腰掛けにおいて、請求項1、2、3、4又は5記載の繊維弾性体が、座部に腰掛けたとき臀部に感じるバネの存在感を隠すためのバネ覆い部材として、前記バネの上方に配置されたことを特徴とする腰掛け。
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Citations (4)

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