JP4499219B2 - エチレンオキシドの製造方法 - Google Patents

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【発明の属する技術分野】
本発明はエチレンオキシドの製造方法に関し、詳しくは縦型シェルアンドチューブ式反応器を用い、エチレンを酸化触媒の存在下に気相酸化してエチレンオキシドを製造するにあたり、生成するエチレンオキシドの更なる反応を抑制して、不純物含量の少ない高品質のエチレンオキシドを製造する方法に関する。
【従来の技術】
シェルアンドチューブ式反応器を用いて酸化触媒の存在下に炭化水素類を分子状酸素により酸化すること、例えばエチレンを気相酸化してエチレンオキシドを製造することは広く工業的に行われている。このエチレンの気相酸化は発熱反応であるため、反応管の反応ガス出口側では急激な燃焼反応、いわゆるポスト・イグニッションが起こり、一旦生成したエチレンオキシドの更なる反応によってエチレンオキシドの選択率が低下する。
このようなポスト・イグニッションを防止するために、反応ガス出口側に不活性充填材を充填し、反応ガスを急速に冷却することが行われている。例えば、特開昭54−32408号公報には、その第2図に示すように、特定の材質および性質を有する不活性充填材を反応器出口側に充填し、しかも不活性充填材層の少なくとも50mmの高さがシェル側の冷却媒体によって冷却されるようにすることにより、ポスト・イグニッションを効果的に防止できることが記載されている。
この方法は、それなりにポスト・イグニッションの問題を解決したものといえる。しかし、このように不活性充填材を反応ガス出口側に充填する従来方法に従って、エチレンを気相酸化してエチレンオキシドを製造するとしても、なお得られるエチレンオキシド中には、蒸留などによって分離困難なアルデヒドなどの不純物が少なからず含まれていて、商業的に十分満足し得る純度を有する高品質のエチレンオキシドを得ることはできない。
【発明が解決しようとする課題】
かくして、本発明は、エチレンの気相酸化によるエチレンオキシドの製造という発熱反応をシェルアンドチューブ式反応器を用いて実施するにあたり、アルデヒドなどの不純物の副生を可及的に抑制して、不純物含量の少ない高純度のエチレンオキシドを製造し得るようにした気相酸化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、従来方法の不活性充填材層に関し、その一部または全部を空間にする、すなわち反応ガス出口側の不活性充填材層の一部または全部を除いて空間部を設けると、アルデヒドなどの不純物の副生を効果的に抑制できることがわかった。
本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明は、縦型シェルアンドチューブ式反応器を用い、エチレンを上方から下方に流し、酸化触媒の存在下に気相酸化してエチレンオキシドを製造するにあたり、該反応管の反応ガス出口側に、空隙率80%以上の空間部形成部材を配置し、空間部の長さ(h)が反応器管板の厚さ(d)に対し5xd≧h≧1xdとなる空間部を設けることを特徴とするエチレンオキシドの製造方法である。
【発明の実施の形態】
図1は、従来方法における、反応管出口側の触媒および不活性充填材の充填状態を示す縦断概念図であり、1は反応管、2は触媒層、3は不活性充填材層、4は管板、5は支え部材(例えば網材)を示す。
図2は、本発明で使用する反応管において、空間部を、スペーサを装着して設けた態様を示す、反応管出口側の縦断概念図であり、1は反応管、2は触媒層、4は管板、5はスペーサの支え部材、6は空間部、7はスペーサを示す。
図3は、本発明で使用する反応管において、空間部を、スプリングを装着して設けた態様を示す、反応管出口側の縦断概念図であり、1は反応管、2は触媒層、4は管板、6は空間部、8はスプリングを示す。
以下、図1ないし図3に基づき本発明を説明する。
従来方法においては、図1に示すように、不活性充填材層3は支え部材5に至るまで充填されていて、不活性充填材3は管板4の側面、すなわち管板4の厚さに対応する反応管内表面と全面的に接触している。
しかし、管板との接触部では反応ガスは十分に冷却されず、さらに触媒物質が反応によって粉化したりして下流に運ばれ、不活性充填材上に付着・蓄積し、好ましくない副反応をさらに引き起こす。その結果、不活性充填材層中では、生成したエチレンオキシドの更なる反応が進行して、望ましくないアルデヒドなどの不純物が生成する。
これに対し、本発明においては、図2および図3に示すように、反応ガス出口側に空間部が設けられている。その結果、材質などによってはアルデヒドを生成するような充填剤も存在せず、また上記のような蓄積物を生じる不活性充填材部分がないので、この部分を通過する生成エチレンオキシドの更なる反応が発生することが抑制される。
本発明で使用する反応器、触媒、不活性充填材などについては特に制限はなく、エチレンオキシドの製造に一般に用いられているものを使用することができる。例えば、反応管の長さ(空間部の長さを含め、本発明にいう「長さ」は管軸方向への長さを意味する)、実内径、管板の厚さなどは適宜選択することができる。そして、空間部を、その長さ(h)が管板の厚さ(d)の2/3以上(h≧(2/3)×d)となるように設ければ、生成したエチレンオキシドの更なる反応を抑制でき、特にh>dとするのが、エチレンオキシドの更なる反応をより効果的に抑制できるので好ましいものである。
空間部の長さ(h)を管板の厚さ(d)に対して、5×d≧h≧1×dの範囲に調製するのが好ましい。通常、反応管の長さが9,000〜18,000mm、管板厚みが100〜200mmの場合、空間部の長さは70mm以上、好ましくは100〜1,000mmである。上記空間部は、反応管の出口側に空間部形成部材、例えば、スペーサまたはスプリングを挿入することにより設けることができる。
図4および図5はそれぞれ本発明の空間部を形成するために使用されるスペーサおよびスプリングの一具体例を示すものであり、図2および図3は、それぞれ、空間部にスペーサおよびスプリングを挿入した状態を示す概念図である。スペーサは、反応管内に収まり触媒または不活性充填材がすり抜けない構造であればよく、図4では、長方形のスリットであるが、丸穴でもよい。材質は金属、好ましくはステンレス鋼である。スプリングは、触媒および不活性充填材からくる重量、ガスの流通抵抗に耐え、かつ挿入・抜き出しができるように、反応管径よりも若干大きく作られる。この空間部形成部材としてのスペーサおよびスプリングは、反応ガスの良好な通過性を維持するために、その空隙率が80%以上、好ましくは90〜99.9%のものが好適に用いられる。
なお、本発明にいう「空隙率」とは、次の方法によって測定したものである。空隙率={1−(空間部形成部材の体積)÷(hx(π/4)xa )}x100「%」
上記式で、hは空間部の長さ、aは反応管の内径を意味する。
【発明の効果】
本発明の方法によれば、アルデヒドなど、蒸留などの精製操作によっても分離の困難な不純物の副生を効果的に抑制できるので、高純度、すなわち高品質のエチレンオキシドを製造することができる。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
内径35mm、長さ14,000mmのシェル付モノチューブラ反応管を用いた。図2に示すように、反応ガス出口側から長さ220mmの空間部を設け、その上流に活性が安定したリング状の銀触媒10,000mm充填した。なお、原料ガス入口側には、入口から700mm迄の入口予熱帯域を設けた。なお、多管式の反応管における管板部の厚さは一般的に100〜200mmであるので、空間部の長さは管板の厚さの1.1〜1.2倍に相当する。なお、上記空間部は、空隙率92.6%のスペーサを挿入して形成した。上記反応管にエチレン含有ガスを導入し、気相酸化を3日間行った。なお、反応条件などは次のとおりであった。
空間速度(l/hr):4,880
入口ガス温度(℃):100
圧力(MPa/G):2.45
エチレン(vol%):23.1
酸素(vol%):7.5
CO (vol%):6.5
その他(アルゴン、窒素、メタン等)(vol%):62.9
出口ガス温度(℃):230
エチレンオキシド(vol%):2.0
上記反応3日後の出口ガス中のアルデヒド濃度は1.8ppmであった。
比較例1
実施例1において、空間部の代わりに、直径10mmの不活性充填材を500mm充填し、その上流側に触媒、予熱帯域を設けた。反応3日後の出口ガス中のアルデヒド濃度は3.0ppmであった。反応後に抜き出した不活性充填材に触媒粉の付着がみられた。実施例1によれば、比較例1に比べて、高品質のエチレンオキシドを製造できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来方法による反応管出口側における触媒および不活性充填材の充填状態を示す縦断概念図である。
【図2】 本発明の、反応管出口側にスペーサを挿入して空間部を設けた態様を示す縦断概念図である。
【図3】 本発明の、反応管出口側にスプリングを挿入して空間部を設けた態様を示す縦断概念図である。
【図4】 スペーサの斜視図である。
【図5】 スプリングの斜視図である。
【符号の説明】
1 反応管
2 触媒層
3 不活性充填材層
4 管板
5 支え部材
6 空間部
7 スペーサ
8 スプリング

Claims (2)

  1. 縦型シェルアンドチューブ式反応器を用い、エチレンを上方から下方に流し、酸化触媒の存在下に気相酸化してエチレンオキシドを製造するにあたり、該反応管の反応ガス出口側に、空隙率80%以上の空間部形成部材を配置し、空間部の長さ(h)が反応器管板の厚さ(d)に対し5xd≧h≧1xdとなる空間部を設けることを特徴とするエチレンオキシドの製造方法。
  2. 空間部形成部材がスペーサである請求項1記載のエチレンオキシドの製造方法。
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