JP4498793B2 - 溶射方法 - Google Patents
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Description
1)熱によるひずみの影響や溶射装置から強い圧力で基材に溶融した溶射材を吹き付けることにより発生する圧縮応力或いは曲げ応力等の影響等で基材が変形してしまうことがあった。
2)異なる2つの素材が接していることによる膨張率の違いから溶射被膜が基材から剥離しやすかった。特に溶射装置の性能が劣り高温・高圧が得にくい場合には溶射被膜が基材としっかり密着しないため剥離する可能性が高くなる。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、基材がひずみにくく、なおかつ溶射した溶射被膜が剥離しにくい溶射方法を提供することにある。
ここに、テンプレートの透孔のパターンは同一パターンの透孔の繰り返しであっても、ランダムな透孔が形成されていても構わない。テンプレートと基材の間隔は近すぎると溶射材によって両者が接合してしまう可能性もあるため、ある程度離間する必要があるものの、あまりに離間するとテンプレートの透孔を通過した溶射材が拡がってしまう。要は溶射する予定の被膜の厚みよりもテンプレートと基材間の間隔が開いていればよく、その間隔は数十μm〜10mm程度が好ましい。
基材の種類は溶射可能な素材であればすべて対象となる。更に、比較的耐熱性の高いプラスチックも含まれる。溶射すべき面積をすべて被覆するわけはないため溶射部分以外から放熱させることでプラスチックにも溶射が可能となる。好ましいプラスチックとしてはガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(以下GF−PETとする)、4フッ化エチレン等のフッ素樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリイミド等のPPO樹脂、ポリウレタン等のシリコーン樹脂、ポリカーボネートのような耐熱性が高いものが挙げられる。
これによって基材に対して熱によるひずみや応力の影響を与えず溶射すべき面積をすべて被覆することができる。また、数回に分けて溶射することによって溶射部分以外から放熱させることが可能となるため、特に上記のような熱に弱いプラスチックについて適用することが可能となる。前回の溶射とは異なる位置に次回以降の溶射を行う場合には先の溶射部分と一部重複しても構わない。また、次回以降の溶射は前回の溶射の放熱が終了してから行う必要がある。
テンプレートは同一のものをずらして使っても別に用意されたものを差し替えて使っても構わない。
(実施の形態1)
図1(a)及び図1(b)に基づいて実施の形態1の溶射方法について説明する。
実施の形態1において使用される基材1はアルミニウム合金とする。テンプレート2はステンレス合金製とされ図3に示すような円形の繰り返しパターンの透孔3が透設されている。本実施の形態1ではパウダー式高速フレーム溶射装置5(以下溶射装置5とする)を使用する。溶射材としてパウダー状のタングステン−コバルト混合粉末を使用する。
図1(a)に示すように、基材1から数mm離間した位置にテンプレート2を配置する。そして、溶射装置5のノズル6をテンプレート2近傍に配置し、テンプレート2の面に沿って順次溶射していく。これによって図1(b)に示すようなテンプレート2の繰り返しパターンの透孔3に対応した溶射被膜7が形成される。
このように基材1上に溶射被膜7が形成された溶射体10は例えば研磨せずに砥石としてそのまま使用することが可能である。また、ロータリーエンコーダの検出ローラの材料当接面に応用すれば食い込みがよく摩耗しにくく、なおかつ検出ローラ自体を軽量に構成することができるので好適である。また、溶射被膜7を更に研磨することで接触抵抗の少なくなおかつ摩耗しにくく剥離もしにくいスライド面を構成することが可能となる。尚、このようにスライド面を構成した場合にはスライドさせる物体との間に溶射被膜7の厚み分の空間が形成されることとなるためこの空間を利用して空間内に油のような滑りを良くする潤滑剤を流通させたり圧縮エアを供給したりして更にスムーズにスライド動作させるようにすることが可能である。
また、例えばアルミニウム加工におけるプラグゲージの円筒形外周面のようなすり減りやすいスライド面に上記溶射被膜7を形成させるような応用も可能である。プラグゲージは現状ではアルミ合金よりも硬くすり減りにくい鋼やセラミックを使用しているが、これらはアルミ合金と膨張率が異なるため温度条件によっては正確な測定ができないばあいがあった。アルミ合金製のプラグゲージのスライド面に本実施の形態1のような加工を施せばワークと同ゲージの膨張率を同じにでき、なおかつ溶射被膜7はスライド面全周囲に形成されているのではないため剥離しにくいものとなる。
図1(a)〜図1(d)に基づいて実施の形態2の溶射方法について説明する。実施の形態2では上記実施の形態1において基材1上に溶射被膜7が形成された溶射体10に対して図1(c)及び図1(d)に示すように溶射被膜7を覆い隠すように更に溶射を行い第2の溶射被膜11を形成させる。実施の形態2における第2の溶射被膜11の形成においてはパウダー式アーク溶射装置12(以下溶射装置とする)を使用した。第2の溶射材として銅粉末を使用する。
このように基材1上に溶射被膜7が形成された溶射体10に対して更に第2の溶射被膜11を形成することによって、本来溶射体10の表面層としたい第2の溶射被膜11がしっかりと定着することとなる。用途としては部分的に低密着性の溶射を必要とする場合(例えばスポット溶接用の銅ベース面の形成等)において好適である。また、第2の溶射被膜12を研磨することで装飾面を構成することも可能である。
図2(a)〜図2(e)に基づいて実施の形態3の溶射方法について説明する。
実施の形態3において使用される基材15はGF−PETとする。実施の形態3において使用されるテンプレート16はステンレス合金製とされ図4に示すような正方形の繰り返しパターンの透孔17が透設されている。その他の溶射被膜18形成のための条件は実施の形態1と同様である。実施の形態3では図2(a)及び図2(b)に示すように上記実施の形態1と同様の方法で基材15上に溶射被膜18を形成させ所定時間経過して放熱した後に図2(c)に示すように溶射被膜18を形成した際のテンプレート2の透孔17の位置をずらし、溶射被膜18が形成されていない位置に溶射装置5によって溶射を行う(図2(d))。図4に示すようなテンプレート16を使用した場合では1〜4の4つの1マスずつずれた位置で溶射することによって最終的に溶射すべき面積をすべて被覆することが可能となる。次いで図2(e)に示すように研磨して溶射体19を得る。
このように2段階で基材15に溶射することでプラスチックとしてのGF−PETに溶射することが可能である。従って、プラスチック表面に例えばスポット溶接用の銅ベース面を形成させたり、耐摩耗性を向上させたい場合にコート層を形成することが可能となる。
・実施の形態2においてテンプレート2の繰り返しパターンの透孔3の位置をずらし複数回テンプレート2を介在させて溶射してから第2の溶射被膜11を形成させるようにしてもよい。
・上記実施の形態3では溶射すべき面積をすべて被覆するために4段階で溶射したがテンプレート16のパターンの違いによって溶射回数を変更することは自由である。
・溶射装置は上記実施の形態のものに限定されることはない。例えばプラズマ溶射装置等を使用することも可能である。
・溶射装置に使用される溶射材料も上記に限定されることはない。
・テンプレートの材質や厚みは自由に設定可能である。
その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更した態様で実施することは事由である。
Claims (1)
- プラスチック製の基材と所定間隔を開けてテンプレートを配置し、同テンプレートを間に介在させて前記基材に対して溶射材を溶射し、前記基材表面に前記テンプレートの透孔のパターンに応じた溶射被膜を形成させるようにした溶射方法であって、前記基材表面に溶射を行い、その溶射した箇所を所定時間をかけて放熱させるとともに、前記テンプレートをずらし或いは他のテンプレートを配置して放熱後に前回の溶射とは異なる位置に次回以降の溶射を行い、前記基材表面を複数回の溶射によって形成した溶射被膜によって覆うようにしたことを特徴とする溶射方法。
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