JP4497368B2 - 鉄系焼結部材の製造方法およびそれにより得られた鉄系焼結部材 - Google Patents

鉄系焼結部材の製造方法およびそれにより得られた鉄系焼結部材 Download PDF

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Description

本発明は、鉄系焼結部材の製造方法およびそれにより得られた鉄系焼結部材係り、特に、一の焼結部材の中に、強度に優れた箇所と被削性に優れた箇所とを別個に高いレベルで設定することのできる、鉄系焼結部材の製造技術に関する。
粉末冶金法による鉄系焼結部材は、製造コストが低廉で、強度や耐摩耗性などの機械的特性に優れていることから、種々の分野で利用されている。このような鉄系焼結部材は、機械部品などに使用するに際し、焼結後に機械加工を要する場合があり、かかる場合には特に良好な被削性が要求される。
したがって、このような観点から、鉄系焼結部材の被削性を向上させる目的で、種々の技術が提案されている。すなわち、硼素を含む溶液を粉末冶金法により作製された炭素を含む鉄系材料の成形体、仮焼結体または焼結体の表面に塗布或いは気孔に含浸させたのち、焼結または再焼結する鉄系焼結材料の改質方法が開示されている(特許文献1参照)。また、炭素を含む鉄系焼結合金用粉末の粉末成形体またはこの粉末成形体を炭素の拡散温度以下の温度で加熱して得た仮焼結体の表面に、硼素の化合物を含むペースト状の上塗剤を塗布する工程と、上記上塗剤が塗布された上記粉末成形体または仮焼結体を炭素の拡散温度以上の温度で焼結する工程とを具備する鉄系焼結合金の製造方法が開示されている(特許文献2参照)。
さらに、焼結後にパーライト組織を呈する鉄系焼結材料用の粉末混合物より黒鉛粉末を除いた鉄系粉末混合物に対し、配合比で、酸化硼素を0.01〜1.0質量%と、黒鉛粉末を0.1〜2.0質量%とを添加した、焼結後にフェライトとパーライトからなる基地組織中に黒鉛が分散した組織を呈する鉄系焼結材料を得るための鉄系粉末混合物が開示されている(特許文献3参照)。加えて、基地硬さが150〜250HVで、かつ、全体組成が、質量比で、P:0.1〜1.0%、B:0.003〜0.31%、O:0.007〜0.69%、C:0.1〜2.0%、残部がFeおよび不可避不純物であって、基地中に遊離黒鉛が分散している快削性鉄系焼結合金が開示されている(特許文献4参照)。
特許第3325173号公報(特許請求の範囲) 特許第3410326号公報(特許請求の範囲) 特許第3413628号公報(特許請求の範囲) 特開2000−144350号公報(特許請求の範囲)
特許文献1、2に記載の技術は、所定箇所に塗布等された硼素化合物によって粉末成形体などを焼結する際の炭素の拡散を抑制し、基地中のパーライトの生成を抑制して、被削性の良好なフェライトとパーライトからなる組織を生成するものである。このような技術は、必要箇所の被削性を向上させることができるが、仮焼結前または焼結前において成形体などに硼素化合物を塗布する工程や、ペースト状の上塗剤を塗布する工程が必要である。このため、焼結に先立って手間がかかるとともに、上塗剤の塗布工程に使用する設備が必要となり、製造経済上問題がある。
また、特許文献3,4に記載した技術は、原料粉末の組成の適正化を図ることによって、酸化硼素により炭素の基地への拡散を抑制し、被削性の良好なフェライトとパーライトからなる組織を得るものである。このような技術は、材料粉末の選定のみによって焼結部材の被削性を簡便に向上させることができるが、焼結部材の被削性を必要としない箇所の強度が低下してしまう。このため、実際に機械部品に応用する場合には、強度と被削性とを別個に与えることができず、さらに改良の余地がある。
さらに、近年においては、特に、自動車部品などの高性能化の要請に伴い、強度と被削性とを高いレベルで実現するだけでなく、それらの特性を一の焼結部品内において別個の必要箇所のみに付与することが要求されるようになってきた。例えば、ボルト締めにより締結するためのボルト穴を備える焼結機械部品においては、ボルト座面との接触部分の強度を比較的高くすることで、上記接触部分に生ずる応力に十分耐えるものとし、しかも、それ以外の部分の被削性を比較的高くすることで、機械加工を効率的に実施可能とすることが要請されている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、強度と被削性とを高いレベルで実現するだけでなく、それらの特性を別個の必要箇所のみに付与することができる、鉄系焼結部材の製造方法およびそれにより得られた鉄系焼結部材提供することを目的としている。
発明者らは、上記要請に鑑み、強度と被削性とを別個の必要箇所のみに高いレベルで付与することができる、鉄系焼結部材の製造技術について鋭意検討を重ねた。従来技術においては、上述したように、鉄系焼結部材を製造するにあたり、原料粉末として、鉄粉末と炭素粉末とを用意するとともに、溶液状態または粉末状態の硼素化合物を加えて焼結することで、酸化硼素を含有させなければパーライト組織となる粉末をフェライトとパーライトからなる組織として、優れた被削性を与えていた。
このフェライト組織生成のメカニズムは、以下のとおりである。すなわち、硼素化合物(酸化硼素)の融点は約500℃であり、焼結時に上記温度に達すると、液化した硼素化合物が炭素の周りに被膜を形成し、炭素の基地への拡散を阻害する。その結果パーライト組織に比してフェライト組織が多く生成する。
そこで、発明者らは、このような酸化硼素によるフェライト生成に起因した被削性向上効果を保持しつつ、さらに、必要箇所の強度のみを高める手法について、検討した。一般に、鉄系焼結部材の強度を高める手法としては、焼結体に銅溶浸を施すことが知られている。銅溶浸は、焼結体の気孔に毛細管力によって銅が充填されることによる焼結体の密度向上、および基地中への銅の拡散による焼入性向上によって、溶浸後の焼結体の強度を向上させる手法である。発明者らは、実際に、鉄、炭素および酸化硼素を含有する混合粉末からなる成形体やその焼結体に銅や銅合金を溶浸した。その結果、上記した焼結体密度の向上および焼入性向上に起因する強度向上のみならず、以下に示す現象により溶浸後には焼結体の強度が向上するとの知見を得た。
すなわち、鉄、炭素および酸化硼素を含有する混合粉末の成形体に銅粉末や銅合金粉末を成形して得た溶浸材を載置して焼結(溶浸)を行う場合には、焼結温度が約500℃になると炭素の周りに液状の酸化硼素の被膜が形成される。しかしながら、焼結温度がさらに上昇して、銅または銅合金の融点(例えば、銅を単味粉で使用した場合には約1083℃)に達すると、溶融した銅や銅合金が気孔中に浸入して炭素を包囲している硼素化合物の被膜を攻撃し、これを破壊する。また、炭素の鉄基地への拡散は銅や銅合金の融点近傍においても起きるため、炭素は硼素化合物の被膜から開放されると基地中に自由に拡散することができる。このため、銅を溶浸した箇所においては、基地への炭素の拡散が十分に行われ、結果的に基地はパーライト組織が主となり、強度が向上する。それに対し、銅を溶浸した箇所以外においては、フェライトとパーライト組織からなる基地となり、良好な被削性が維持される。
本発明の第1の鉄系焼結部材の製造方法は、以上のような知見に基づくものであり、鉄系焼結部材用粉末の粉末成形体またはこの粉末成形体の焼結体の表面の少なくとも一部に、金属粉末を成形して得た溶浸材を載置し、上記溶浸材が載置された上記粉末成形体または焼結体を炭素の拡散温度以上の温度かつ溶浸材の融点以上の温度で焼結し、上記鉄系焼結部材用粉末が、焼結後にパーライト組織を呈する鉄系焼結材料用の粉末混合物より黒鉛粉末を除いた鉄系粉末混合物に対し、配合比で、酸化硼素を0.01〜1.0質量%と、黒鉛粉末を0.1〜2.0質量%とを添加した粉末であり、上記金属粉末が、銅粉末または銅合金粉末であることを特徴としている。
また、発明者らは、上記第1の鉄系焼結部材の製造方法と同様の知見により、鉄系焼結材料に銅や銅合金を溶浸する他の手法について検討した。その結果、鉄系混合粉末に所定量のリンを含有させることにより、フェライトの強化が効率的に実現され、被削性をより向上させることができるとの知見を得た。すなわち、リンは、その含有量が十分でないと、フェライトの強化作用に乏しく、基地の硬さが十分に得られない。これに対し、その含有量が多すぎると、焼結中にFe−P液相の発生量が多くなって、焼結中に成形体の型くずれが生じ易くなる。
本発明の第2の鉄系焼結部材の製造方法は、以上のような知見に基づくものであり、鉄系焼結部材用粉末の粉末成形体またはこの粉末成形体を加熱して得た焼結体の表面の少なくとも一部に、金属粉末を成形して得た溶浸材を載置し、上記溶浸材が載置された上記粉末成形体または焼結体を炭素の拡散温度以上の温度かつ溶浸材の融点以上の温度で焼結し、上記鉄系焼結部材用粉末が、質量比で、P:0.1〜1.0%、B:0.003〜0.31%、O:0.007〜0.69%、C:0.1〜2.0%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる粉末であり、上記鉄系焼結部材用粉末中のBおよびOは、酸化硼素の形態で添加され、Cは黒鉛粉末の形態で添加され、上記金属粉末が、銅粉末または銅合金粉末であることを特徴としている。
さらに、第3の鉄系焼結部材の製造方法は、上記第2の製造方法において、鉄系焼結部材用粉末は、Cuを1.0〜5.0質量%さらに含有することを特徴としている。このようにCuを含有させることで、被削性を維持しまま強度の向上を図ることができる。Cuも基地中に拡散して強化するが、Cu含有量が1.0質量%未満では、その効果に乏しい。一方、Cuを5質量%を超えて含有すると、軟質なCu相が生じて強度が低下するとともに、焼結時にCu液相の発生による寸法収縮、および液相発生によりFe基地へ容易に拡散したCuによるCu膨張現象により製品の各部でミクロ的な収縮と膨張とが生じ、結果として製品全体の寸法変化のばらつきが大きく、寸法精度が悪くなる。
以上は、本発明の鉄系焼結部材の製造方法であるが、本発明は、このような製造方法により得られた鉄系焼結部材に関するものでもある。また、本発明の上記製造方法は、特に、焼結機械部品の製造に応用することができ、例えば、ボルト締めにより締結するためのボルト穴を備える焼結機械部品にあっては、ボルトとの接触部分に上述したような溶浸を施すことで、その硬さを200〜600HVとして強度を十分に確保することができ、それ以外の部分には溶浸を施すことなく硬さを100〜190HVとして被削性を十分に確保することができる。
本発明の鉄系焼結部材の製造技術によれば、鉄系焼結部材を製造するに際し、鉄系焼結部材用粉末の組成を適正化するとともに、銅または銅合金からなる溶浸材を必要箇所のみに適用することにより、強度と被削性とを高いレベルで実現するだけでなく、それらの特性を別個の必要箇所にのみ付与した焼結部材を得ることできる。
図1は、自動車部品等に用いられるベアリングキャップ10を示す正面図である。このベアリングキャップ10は、使用時には、図2に示すように、自動車エンジンのシリンダブロック11の側壁に、ベアリング12を介してクランクシャフト13を装着するために用いられ、上側ベアリング12aと下側ベアリング12bとの接触面を位置合わせした上で、上側ベアリング12aの上方から装着し、シリンダブロック11にボルト14a,14bによって締め付け固定される。また、図1に示すベアリングキャップ10の凹部10aは、通常、アルミ合金からなるシリンダブロック11の凹部11aと一体的に仕上げ加工される。
このようなベアリングキャップ10の加工態様(仕上げ加工)および使用態様(ボルト締め)を考慮すれば、上記凹部10aには優れた被削性を与えることが要求されるとともに、ボルト座面との接触部分10bには優れた強度が要求される。これらの要求特性を考慮して、以下に、本発明の鉄系焼結部材の製造技術に関する好適な実施形態を、ベアリングキャップを例にとって説明する。
図3は、図2に示すベアリングキャップの製造方法を示す工程図である。同図によれば、まず鉄系焼結部材用粉末により粉末成形体を作製するとともに、銅粉末または銅合金粉末により溶浸材を成形する。上記したように、本発明の目的は、最終的に、焼結体の必要箇所に強度と被削性とを別個に付与することである。強度については、後述する焼結(溶浸)工程で銅または銅合金を粉末成形体に溶浸することにより付与することができる。このため、強度付与の前提として、溶浸が行われない焼結体部分にはその材料選択により被削性を付与しておくことが肝要である。
このような観点から、鉄系焼結部材を製造する際には、上記鉄系焼結部材用粉末は、
(1)焼結後にパーライト組織を呈する鉄系焼結材料用の粉末混合物より黒鉛粉末を除いた鉄系粉末混合物に対し、配合比で、酸化硼素を0.01〜1.0質量%と、黒鉛粉末を0.1〜2.0質量%とを添加した粉末(以下、単に「混合粉末1」と称する場合がある)、または
(2)質量比で、P:0.1〜1.0%、B:0.003〜0.31%、O:0.007〜0.69%、C:0.1〜2.0%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる粉末(以下、単に「混合粉末2」と称する場合がある)
とする。以下に、混合粉末1,2の各成分の限定理由について述べる。
<混合粉末1の各成分の限定理由>
焼結体に優れた被削性を付与するためには、焼結後の基地組織をパーライトではなくフェライトとパーライトからなる組織とし、固体潤滑剤として遊離黒鉛を分散させることが重要である。そのためには、鉄系焼結材料用粉末の炭素量の限定が必須である。焼結体において基地をフェライト主体の組織とするとともに遊離黒鉛を得るためには、従来、炭素の拡散温度未満で焼結を行い、炭素を基地に拡散させない手法が採用されていたが、焼結温度が低いために基地の鉄粉どうしの間に形成されるネックの成長が十分ではなく、焼結体強度が著しく低くなるといった問題があった。
そこで、発明者らは、焼結体の低強度化を防止し、しかも遊離黒鉛の分散を実現する手法について検討した。その結果、酸化硼素を0.01〜1.0質量%含有させるととともに、黒鉛粉末を0.1〜2.0質量%含有させることで、焼結温度を炭素の拡散温度以上の温度とした場合であっても、酸化硼素により炭素の基地への拡散を抑制することで焼結体の基地組織をフェライトとパーライトからなる組織として優れた被削性を得ることができ、併せて鉄粉末どうしの間に形成されるネックを十分に成長させて所定の強度が得られることを確認した。
ここで、酸化硼素の含有量の限定理由について述べる。酸化硼素の含有量が0.01質量%未満の場合には、酸化硼素が500℃付近で液化しても、その量が十分でないため、黒鉛の周囲を包囲し切れず、黒鉛の基地への拡散を抑制する効果に乏しく、基地組織がパーライト主体の組織となる。また、1.0質量%を超えて含有させても、これ以上の炭素の拡散抑制効果が得られないばかりか、酸化硼素が基地中に多く残存するため、焼結体強度が低下する。このため、酸化硼素の含有量は0.01〜1.0質量%とした。
また、黒鉛粉末の含有量の限定理由について述べる。黒鉛粉末は、上記したように、酸化硼素の含有量に適合させて含有させる。その含有量が0.1質量%未満であると、基地中に拡散する炭素の量があまりにも少なく、所望の強度が得られないばかりか、未拡散の遊離黒鉛の量が少なくて被削性改善の効果が得られない。一方、黒鉛粉末の添加量が2.0質量%を上回ると、炭素の基地への拡散を十分に抑制することができず、基地組織がパーライトとなる。よって、黒鉛の添加量は0.1〜2.0質量%とした。
<混合粉末2の各成分の限定理由>
P:Pの含有量が0.1質量%未満であると、フェライトの強化作用に乏しく、その結果、基地の硬さを著しく高くすることができない。一方、Pの含有量が1.0質量%を上回ると、焼結中にFe−P液相の発生量が多くなり、焼結中の圧粉体の型くずれが生じ易くなる。よって、Pの含有量は0.1〜1.0質量%とした。なお、Pは単味粉の形態で添加することも可能であるが、毒性が強いため、Fe−P合金粉の形態で添加することが好ましい。
B,O:BおよびOは、酸化硼素の形態で添加することにより含有される。B:0.003〜0.31質量%、O:0.007〜0.69質量%は、B2O3としては0.01〜1.0質量%であり、各々の下限を下回ると焼結時に炭素の基地への拡散を抑制できない。一方、各々の上限を上回るとそれ以上の炭素の拡散抑制の効果が期待できないばかりでなく、酸化硼素が基地中に多く残存して焼結体の強度を低下させる。よって、Bの添加量は0.003〜0.31質量%とし、Oの添加量は0.007〜0.69質量%とした。
C:Cは黒鉛粉末の形態で添加されるが、その含有量が0.1質量%未満であると、基地中に拡散する炭素の量があまりにも少なく、所望の強度が得られないばかりか、未拡散の遊離黒鉛の量が少なくて被削性改善の効果が得られない。一方、黒鉛粉末の添加量が2.0質量%を上回ると、Cの基地への拡散を十分に抑制することができず、基地組織がパーライトとなる。よって、Cの添加量は0.1〜2.0質量%とした。
以上のような鉄系焼結部材用粉末(混合粉末1または混合粉末2)を使用して、図3に示すベアリングキャップ形状の粉末成形体を作製するとともに、同図に示すように、銅粉末または銅合金粉末を成形した溶浸材を用意する。ここで、銅合金としては、例えば、銅とコバルトとからなる合金を使用することができる。
次に、ボルトとの締結時にボルト座面と接触する部分に溶浸材を浸入させるべく、図3に示すように粉末成形体上に溶浸材を載置し、この状態で焼結(溶浸)を行う。なお、溶浸材の載置態様は、図3に示す態様に限られず、炉内での粉末成形体の体勢を適宜変更することで、粉末成形体の溶浸を要する箇所近傍のいかなる表面に溶浸材を載置することもできる。
さらに、焼結は、炭素の基地への拡散温度以上の温度(約850〜900℃)以上で、かつ、溶浸材の融点以上の温度(例えば、溶浸材として銅を単味で使用した場合には、1083℃以上)で行う。なお、銅の鉄基地への拡散に起因する強度向上や鉄粉末どうしの間に形成されるネックの十分な成長に起因する強度向上を図り、かつ、酸化硼素の揮発を防止するためには、焼結温度を1050〜1150℃の範囲とすることが好ましい。また、焼結雰囲気は、還元性ガス雰囲気とする。
このような焼結工程においては、まず、焼結温度が約500℃に達すると、鉄系焼結部材用粉末中に含まれる酸化硼素が液化し、酸化硼素が炭素の周りを包囲して被膜を形成し、炭素の基地への拡散を阻害する。次に、焼結温度が溶浸材の融点に達すると、溶融した銅などが気孔中に浸入して炭素を包囲している酸化硼素の被膜を攻撃し、この被膜を破壊する。これにより、炭素は酸化硼素の被膜から開放されると自由に基地中に拡散することができ、銅などを溶浸した箇所においては、炭素の基地への拡散が十分に行われ、結果的に基地はパーライト組織となって、焼結体の強度が部分的に向上する。
また、銅または銅合金を溶浸した箇所においては、銅などが、毛細管力によって気孔に侵入することにより、気孔の充填に起因した焼結体密度の向上によっても強度は向上する。さらに、気孔に侵入した銅などがさらに基地中に拡散し、焼入性を向上させることによっても強度は向上する。
これにより、事後的にシリンダブロックとともに仕上げ加工される凹部には良好な被削性を備えるとともに、使用時に相当の応力がかかるボルト座面との接触部分には良好な強度を備えるベアリングキャップが得られる。なお、図3に示す例では、ボルト穴は溶浸前に設けられているが、本発明はこのような態様に限定されず、ボルト穴を溶浸後に機械加工により設けることもできる。
以上は、本発明の好適な実施形態の一例である。上記例では、鉄系焼結部材用粉末からなる粉末成形体に溶浸材を載置して焼結したが、この載置の前に、粉末成形体を400〜950℃の温度で仮焼結しておくことが好ましい。この仮焼結によれば、鉄系焼結部材用粉末中の成形潤滑剤を除去しておくことにより、溶浸性を向上させることができる。
また、鉄系焼結部材用粉末(混合粉末1または混合粉末2)には、さらに窒化硼素を含有させることもできる。この場合には、鉄系焼結部材用粉末中の窒化硼素の含有量を0.06〜2.25質量%に限定することで、基地の強度を低下させることなく、チップブレーキング効果や固体潤滑効果を発揮させることができ、被削性をさらに向上させることができる。すなわち、窒化硼素の含有量が0.06質量%に満たない場合には、上記効果に乏しく、2.25質量%を上回る場合には、基地の強度が低下する。なお、窒化硼素の添加態様としては、例えば、特許文献3,4に記載されているように、10〜40質量%の酸化硼素を含有する比較的安価な粉末(酸化硼素と窒化硼素との混合粉末)を0.1〜2.5質量%添加して酸化硼素とともに添加する態様が好ましい。
(銅溶浸の被削性および強度への影響)
原料粉末として、質量比で、Cu:3.0質量%、C:1.0質量%、B2O3:0.07質量%を含有し、残部がFeと不可避的不純物である鉄系焼結部材用粉末を用意し、V型ミキサーで30分間混合した後、混合粉末を密度6.7g/cm3に圧粉成形し、図3に示すようなベアリングキャップ形状の粉末成形体を得た。また、純銅粉末を圧粉成形し、図3に示すような2個の溶浸材を得た。
次に、上記粉末成形体を還元性雰囲気中で690℃にて仮焼結した後、仮焼結体の、ボルト座面との接触部分に溶浸材を浸入させるべく、図3に示す態様で仮焼結体上に溶浸材を載置し、この状態で還元性雰囲気中1130℃にて焼結(溶浸)を行った。
図4は、焼結後のベアリングキャップの組織写真であり、図中(a)は溶浸部を示し、(b)は非溶浸部を示す。図4(a)に示すように、溶浸部については基地の組織がパーライトを呈しており、気孔は銅溶浸により消滅している。このため、良好な強度が得られているものと推測される。硬さ試験の結果、基地の硬さは、250HVであって、これは本願請求項4に合致するものであり、やはり良好な硬さが得られていた。よって、溶浸部においては、ボルト座面が接触した場合にも、十分に耐え得る強度が得られていることが確認された。
これに対し、図4(b)に示すように、非溶浸部については基地の組織はフェライトとパーライトを呈している。このため、良好な被削性が得られている。なお、非溶浸部についても硬さ試験を行ったが、基地の硬さは140HVであり、本願請求項4に合致するものであった。よって、非溶浸部(ベアリングキャップの凹部を含む)においては、溶浸部ほどの硬さは得られていないが、通常、アルミ合金からなるシリンダブロックの凹部と一体的に仕上げ加工されるに十分な被削性が得られていることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、強度と被削性とを高いレベルで実現するだけでなく、それらの特性を別個の必要箇所のみに付与した鉄系焼結部材を提供することができる。よって、本発明は、例えば、自動車や自動二輪車に用いる各種鉄系焼結部材に適用することができる点で有望である。
自動車部品として用いられるベアリングキャップを示す正面図である。 図1に示すベアリングキャップの使用態様を示す正面図である。 図2に示すベアリングキャップの製造方法を示す工程図である。 焼結後のベアリングキャップの組織写真であり、図中(a)は溶浸部を示し、(b)は非溶浸部を示す。
符号の説明
10 …ベアリングキャップ
10a…凹部
10b…ボルト座面との接触部分
11 …シリンダブロック
11a…凹部
12 …ベアリング
12a…上側ベアリング
12b…下側ベアリング
13 …クランクシャフト
14a,14b…ボルト

Claims (4)

  1. 鉄系焼結部材用粉末の粉末成形体またはこの粉末成形体を加熱して得た焼結体の表面の少なくとも一部に、金属粉末を成形して得た溶浸材を載置し、前記溶浸材が載置された前記粉末成形体または焼結体を炭素の拡散温度以上の温度かつ溶浸材の融点以上の温度で焼結する鉄系焼結部材の製造方法であって、前記鉄系焼結部材用粉末が、焼結後にパーライト組織を呈する鉄系焼結材料用の粉末混合物より黒鉛粉末を除いた鉄系粉末混合物に対し、配合比で、酸化硼素を0.01〜1.0質量%と、黒鉛粉末を0.1〜2.0質量%とを添加した粉末であり、前記金属粉末が、銅粉末または銅合金粉末であることを特徴とする鉄系焼結部材の製造方法。
  2. 鉄系焼結部材用粉末の粉末成形体またはこの粉末成形体を加熱して得た焼結体の表面の少なくとも一部に、金属粉末を成形して得た溶浸材を載置し、前記溶浸材が載置された前記粉末成形体または焼結体を炭素の拡散温度以上の温度かつ溶浸材の融点以上の温度で焼結する鉄系焼結部材の製造方法であって、前記鉄系焼結部材用粉末が、質量比で、P:0.1〜1.0%、B:0.003〜0.31%、O:0.007〜0.69%、C:0.1〜2.0%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる粉末であり、前記鉄系焼結部材用粉末中のBおよびOは、酸化硼素の形態で添加され、Cは黒鉛粉末の形態で添加され、前記金属粉末が、銅粉末または銅合金粉末であることを特徴とする鉄系焼結部材の製造方法。
  3. 前記鉄系焼結部材用粉末は、Cuを1.0〜5.0質量%さらに含有することを特徴とする請求項2に記載の鉄系焼結部材の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた鉄系焼結部材。
JP2005074553A 2005-03-16 2005-03-16 鉄系焼結部材の製造方法およびそれにより得られた鉄系焼結部材 Active JP4497368B2 (ja)

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