JP4496024B2 - 水道管の更新工法 - Google Patents

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Description

この発明は、既設水道配管を大径の水道配管に更新する工法に関するものである。
今日、大規模な住宅団地を造成する際、例えば、五万人の住宅団地であっても、当初は、数百人の住民であり、そこから、十数年を経て徐々にその五万人に住民が増えていく。
このとき、当然に、その団地への水道配管も設けられるが、例えば、数千人の住民に対する水道配管の大きさ(径)と数万人の住民に対する水道配管の径とは自ずと前者が小さくなる。
数千人の住人の場合にも、数万人の住民に対する大きさの水道配管で配水することも考え得るが、数千人の場合には、その使用水量が少なく、大径の水道配管では、水の流通が少なくて水が淀むため、通常は、数千人の住民に合わせた径の水道配管を設置し、住民の増加に応じて、水道配管を新設したり、既設水道配管を大きくしたりして対応している。
一方、地中に水道配管を構築する際、その水道配管の保護のために、その配管の外側に鞘管を設ける工法が行われている。このとき、従来では、鞘管と水道管の呼び径を、後者を前者より一つ小さいものとし、その両管の間にグラウト材を充填する構造である(特許文献1、2参照)。
特開2001−21063号公報 特開2002−276284号公報
上記大規模団地における住民の増加に応じた水道配管の新設は、通常、既設道路等に行われるが、その用地がない場合には、新たな用地買収費用が必要となる。また、数千人の住民に対する水道配管を撤去し、その撤去跡に、大径の水道配管を新設することも行われている。
一方、鞘管の中に水道管を配設する二重管構造においても、従来では、同様に、既設配管とは別に新設したり、既設配管を撤去し、その撤去跡に、大径の水道配管を新設している。
しかし、水道配管を多くすることは、給水効率の点で好ましくない。また、既設配管の撤去作業は、道路等の掘り起こし等の作業を招いており、この改善が望まれている。
この発明は、上記二重管の水道配管構造において、その大径水道管への更新を安価に行い得るようにすることを課題とする。
上記課題を解決するために、この発明は、既設鞘管内のグラウト材充填層及び既設水道配管のみを除去し、その鞘管内に新水道配管を構築することとしたのである。
このようにすれば、道路には、その除去のための竪穴などを形成するだけでよいため、交通障害も極力少なくすることができる。
この発明は、以上のように、既設鞘管内のグラウト材充填層及び既設水道配管のみを除去し、その鞘管内に新水道配管を構築することとしたので、水道使用量増加に基づく水道管の増設(大径化)の施工費を安くできるとともに、交通障害も極力少なくすることができる。
この発明の実施形態としては、地中に敷設された鞘管内に水道管を順々に挿入してその各水道管を継ぎ合わせて水道配管を形成し、その水道配管と前記鞘管の間にグラウト材を充填した水道配管構造において、前記水道配管に代えてその水道配管より大径の新水道配管を構築する工法であって、前記鞘管を前記新水道配管を予め配設し得る径のものとし、前記水道配管に代えて前記新水道配管を配設する際、前記グラウト材の充填層及び前記水道配管を前記鞘管内から除去した後、その鞘管内に、前記水道管より大径の新水道管を順々に挿入してその各新水道管を継ぎ合わせて新水道配管を形成し、その新水道配管と前記鞘管の間にグラウト材を充填する構成を採用することができる。
上記グラウト材の充填層及び水道配管の鞘管内からの除去は、種々の手段を採用できるが、例えば、前記水道配管をその一端から押して前記グラウト材充填層に亀裂を生じさせた後、その水道配管を鞘管から引き出すことにより行うようにすることができる。
このとき、上記グラウト材充填層に亀裂を生じるように、そのグラウト材には、充填強度としては十分で、かつ圧縮には容易に破壊するものを使用するとよい。このグラウト材は、十分な流動性を得て、所要の充填強度(圧縮強度)を得ることができるとともに、管の引き出し初期、その引き出し力は、管内壁接触面積と充填材(グラウト材)付着強度との積の力以上が必要となるが、引き出し管が順次挙動することで、充填層(グラウト層)は低強度ゆえに破壊されるものと考えられ、小さな引き出し力でもって管とともに容易に引き出し得る。
そのグラウト材の一例として、セメントと水からなる充填材であって、保水剤、発泡剤及びAE減水剤からなる流動化剤を混合したものであり、その固化後の圧縮強度が0.1〜0.5N/mm2であるものとし得る。
ここで、セメントとしてはあらゆる種類のセメントが使用できるが、安価で入手しやすいことから、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどが望ましい。
保水剤としては、保水効果が大きくブリージング低減作用に優れることから、モンモリロナイト又は、それを主成分とするベントナイトが望ましい。
流動化剤としては、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル誘導体、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物などが挙げられるが、保水剤添加による増粘作用を低減する効果が大きい点を考慮すると、アルキルアリルスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩が望ましい。
発泡剤には合成界面活性剤系や加水分解タンパク系といった有機系のものと金属系のものがあるが、有機系のものは液状であるため、保水剤や流動化剤といった粉末状材料とのプレミックスが困難であるため、金属粉末状のものが望ましい。具体的には、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛などの金属粉末を用いることができるが、安価で入手しやすいことやガスの性質(充填材そのもの、又は管に対して腐食などの悪影響を及ぼさないという意味)などを考慮するとアルミニウムが望ましい。
また、金属粉末の発泡時間はかなり長い時間継続するが、発泡による膨張が終わった後に充填材が流動すると、金属粉末から発生した気泡が消滅して、体積収縮が発生する恐れがある。また、逆に発泡による膨張が終わる前に充填材の硬化が始まると、気泡の分布が不均一になったり、膨張が不十分となるため体積収縮の恐れがある。このように、充填材の配合において発泡速度の制御が非常に重要となる。
ここで、一般に、金属粉末の粒径が小さい(比表面積が大きい)と、発泡速度が速くなり、粒径が大きい(比表面積)と発泡速度が遅くなる。このため、金属粉末の粒径の範囲を1〜500μm、好ましくは80〜200μmとすることにより、通常の充填作業において、充填材の流動が終わってから硬化が始まるまでの間に、その発泡がなされるように、発泡速度を制御することが可能となる。
因みに、流動化剤と発泡剤の組合せとしては、流動性と硬化性、ブリージングのバランスを考慮すると、リグニンスルホン酸塩とアルミニウムの組み合わせが最も望ましい。
これらの配合比としては、例えば、セメント重量:1に対して、ベントナイト重量:0.05〜0.45、金属粉末重量:0.00005〜0.001、上記リグニンスルホン酸塩重量:0.0015〜0.05とし得る。セメントと水の重量比は、例えば1:3.0〜10.0とすることにより、流動性に優れた低強度の充填材を得る。
ベントナイトが規定値(0.05)より少量であると、膨潤不良、ブリージングの発生、体積収縮などの問題が生じ、規定値(0.45)より過剰となると、増粘、流動不良などの問題が生じる。リグニンスルホン酸塩が規定値(0.0015)より少量であると、流動不良という問題が生じ、規定値(0.05)より過剰となると、ブリージングの発生、硬化遅延という問題が生じる。金属粉末が規定値(0.00005)より少量であると、ベントナイトと同様の問題があり、規定値(0.001)より過剰となると、過膨張、流動不良となる問題が生じる。
因みに、今日、グラウト材として主流のエアモルタルは、流動性と充填強度の調整が難しく、十分な流動性を確保して、低強度(例えば、0.1〜0.5N/mm2)の充填材を得ることはできず、上記亀裂が生じても、管の引き抜きによって容易に破壊しない。このため、除去作業が容易ではない。
一実施例を図1(a)〜(f)に示し、まず、図1(a)に示すように、従来公知の種々の手段により、鞘管Aを地中に敷設する際、将来、埋設を予定する水道管Dより大径、例えば、その予定水道管Dより呼び径が1つ大きい鞘管Aを選択して、その鞘管Aを施設し、その鞘管A内に、当初に要求される大きさ(径)の水道管Bを順々に挿入してその各水道管Bを継ぎ合わせて水道配管B´を形成し、その水道配管B´と前記鞘管Aの間にグラウト材aを充填して二重の水道配管構造を構築する。
このとき、水道管Bの挿入には、竪穴H等を適宜に形成する。また、グラウト材aは、下記表1に示す配合のものを使用して、従来公知の種々の手段により、水道配管B´と前記鞘管Aの間に充填する。その充填区間の両端にはモルタルバック等により間仕切り壁Eを形成してその間を閉塞する。
Figure 0004496024
この表1において、セメント、ベントナイト、金属粉末、流動化剤、水からなる充填材配合と各種試験結果を示し、その配合表において、「◎」はそのものを使用したことを示す。
充填材の流動性の評価項目としては、フロー性試験、コンシステンシー試験を行った。また、充填材の基礎試験として、ブリージング試験、体積変化試験、一軸圧縮強度試験を行った。
(フロー値試験)JHS:日本道路公団規格
JHS A 313-1992「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」のシリンダー法により測定する。具体的には、平滑な板面上に静置した直径φ80mm×高さ80mmの円筒に充填材を入れ、これを素早く垂直に引き上げ、板面上に広がった充填材の最大、最小寸法を測定する。
(コンシステンシー試験)JSCE:土木学会基準
JSCE F 531-1999「PCグラウトの流動性試験方法」に準拠し、J14ロートによる充填材の流下時間を測定する。
(ブリージング試験)
容量500mlのメスシリンダーに充填材を400ml注入し、上部開口部をラップフィルムで密閉し、24時間静置後のブリージング水量(A ml)の測定を行い、下記の式によりブリージング率に換算して評価する。
ブリージング率={100 × ブリージング水量(A)} ÷ 400
(体積変化試験)
容量500mlのメスシリンダーに充填材を400ml注入し、上部開口部をラップフィルムで密閉し、24時間静置後の体積変化量(B ml)の測定を行い、下記の式により体積変化率に換算して評価する。
体積変化率={100 × 体積変化量(B)} ÷ 400
(一軸圧縮強度試験)JSCE:土木学会基準
材齢28日における一軸圧縮強度の測定をJSCE G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮試験方法」により行った。
この試験結果によれば、各実施例は、各試験において、満足した結果「○」を得ているのに対し、各比較例においては、何れかの試験において、満足し得ない結果「△」又は「×」となっている。このことから、実施例は、低強度であって、水道管Bの引き抜きができる等の所要の目的を達成できるものであることを確認できる。
因みに、充填材設定強度:0.5 N/mm2により、図1(a)に示した2重管配管構造の充填材として使用したところ、注入口7の間隔は50m以上とすることができ、また、耐震管継手とした場合においても、その継手部の十分な伸縮を得ることができた。このとき、既設管呼び径:700mm、新管呼び径:500mm、管路延長は100m、間隙容積は20m3であった。充填には、市販のグラウトポンプ(充填速度:約40L/min)を用いた。充填時間は約9時間であった。
この図1(a)の水道配管構造により給水し、数年後、大径の水道配管D´に更新する場合には、図1(b)に示すように、プレス機Pにより、その水道配管B´をその一端から押すと、同図(c)に示すように、各水道管Bの継手部の凸部(管継手部C)がグラウト材充填層に食い込んでいるため、その押し込みにつれてグラウト材充填層には亀裂cが生じ、引き抜きにより破壊し得るようになる。
このとき、一工区の水道配管D´の長さは、押し込みにより、グラウト材aの充填層に亀裂cが入って、引き抜きにより破壊し得る点や、作業性等を考慮して適宜に設定し、その長さの両端に、竪穴Hを形成する。しかし、好ましくは、既設水道配管B´の一工区の長さにし(D´=B´)、その時の竪穴Hの位置に新たな竪穴Hを形成すると良い。さらに、水道配管B´両端の間仕切り壁Eは、適宜に破壊して撤去する。押圧力で破壊し得れば、撤去しなくても良い。
グラウト材充填層に亀裂cが入れば、図1(d)に示すように、水道配管B´の一方の端にフックeを係止し、そのフックeからロープgをその水道配管B´内を通して他方の端から導き出し、その端をウインチWで引くことにより、水道配管B´をその他方の端側に引き出す。このとき、上記押し込みと同様に、各水道管Bの継手部の凸部(管継手部C)がグラウト材充填層に食い込んでいるため、その水道配管B´の引き出しとともに、グラウト材充填層が引き出される。
水道配管B´を全て引き出せば、鞘管A内のグラウト材aの塊りを除去して、図1(e)に示す、鞘管A内にグラウト材aの残っていない状態とする。この状態となれば、図1(f)に示すように、水道配管B´と同様にして、その鞘管A内に、大径の水道管Dを順々に挿入してその各水道管Dを継ぎ合わせて水道配管D´を形成し、その水道配管D´と前記鞘管Aの間にグラウト材aを充填して二重の水道配管構造を構築する。
なお、水道配管の径を二回に限らず、三回以上更新する場合には、その径の水道管に応じて、上記の作用を繰り返すことにより、一の鞘管A内において、順々に、大径の水道配管路にする。
また、グラウト材aは、表1に示す組成のものに限らず、ベントナイトに代えて浄水発生土、又は両者を採用できる等、この発明を実施し得る限りにおいて、その組成は自由である。
さらに、水道管B、Dの継手部構造としては、図示のものに限らず、従来周知のK形、A形、U形、T形、PII形、S形、NS形、SII形等と任意のものが採用できることは勿論である。
実施例の作用説明図 同実施例の作用説明図 同実施例の作用説明図 同実施例の作用説明図 同実施例の作用説明図 同実施例の作用説明図
符号の説明
A 鞘管
B 小径水道管
B´ 小径水道配管
C 管継手部
D 大径水道管
D´ 大径水道配管
E 間仕切り壁
P プレス機
W ウインチ
a グラウト材

Claims (7)

  1. 地中に敷設された鞘管A内に水道管Bを順々に挿入してその各水道管Bを継ぎ合わせて水道配管B´を形成し、その水道配管B´と前記鞘管Aの間にグラウト材aを充填した水道配管構造において、前記水道配管B´に代えてその水道配管B´より大径の新水道配管D´を構築する工法であって、
    上記鞘管Aを上記新水道配管D´を予め配設し得る径のものとし、上記水道配管B´に代えて前記新水道配管D´を配設する際、上記グラウト材aの充填層及び前記水道配管B´を前記鞘管A内から除去した後、その鞘管A内に、上記水道管Bより大径の新水道管Dを順々に挿入してその各新水道管Dを継ぎ合わせて新水道配管D´を形成し、その新水道配管D´と前記鞘管Aの間にグラウト材aを充填することを特徴とする水道管の更新工法。
  2. 上記グラウト材aの充填層及び前記水道配管B´の前記鞘管A内からの除去を、上記水道配管B´をその一端から押して前記グラウト材aの充填層に亀裂を生じさせた後、その水道配管B´を上記鞘管Aから引き出すことにより行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の水道管の更新工法。
  3. 上記グラウト材aが、セメントと水からなる充填材であって、保水剤、発泡剤及び流動化剤を混合したものであり、その固化後の圧縮強度が0.1〜0.5N/mm2であるものとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水道管の更新工法。
  4. 上記保水剤がベントナイト、上記流動化剤がリグニンスルホン酸塩及び上記発泡剤が金属粉末であることを特徴とする請求項3に記載の水道管の更新工法。
  5. 上記セメント重量:1に対して、上記ベントナイト重量:0.05〜0.45、上記金属粉末重量:0.00005〜0.001、上記リグニンスルホン酸塩重量:0.0015〜0.05であることを特徴とする請求項4に記載の水道管の更新工法。
  6. 上記セメントと水の重量比が、1:3.0〜10.0であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の水道管の更新工法。
  7. 地中に敷設された鞘管A内に水道管を順々に挿入してその各水道管を継ぎ合わせて水道配管を形成し、その水道配管と前記鞘管Aの間にグラウト材aを充填した請求項1乃至6のいずれかに記載の水道管の更新工法を成すための水道配管構造であって、前記鞘管A内に最終的に形成される新水道配管D´に代えてその水道配管D´より小径の新水道配管B´を形成した水道配管構造。
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