以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
図1(a)〜(d)は、第二の回路部材がフレキシブルプリント基板(FPC)である場合に、FPCと第一の回路部材とを接続する一連の工程図であり、図2(a)〜(e)は、第二の回路部材がテープキャリアパッケージ(TCP)である場合に、TCPと第一の回路部材とを接続する一連の工程図である。以下、回路接続材料として、図3に示すように、熱硬化性組成物及び光硬化性組成物を必須成分として含む接着剤組成物11と、導電性粒子12とからなるフィルム状回路接続材料10を使用する場合の回路接続方法について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。
まず、第二の回路部材がFPCである場合の回路部材の接続方法について図1を用いて説明する。
はじめに、フィルム状回路接続材料10のほか、第一の回路部材20と、FPCからなる第二の回路部材30を用意する。ここで、第一の回路部材20は、回路基板21と、回路基板21の一面上に形成される回路電極22とを備えており、第二の回路部材30も、回路基板31と、回路基板31の一面上に形成される回路電極32とを備えている。なお、第一の回路部材20としては、具体的には、プリント配線板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等が挙げられる。
次に、図1(a)に示すように、フィルム状回路接続材料10を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面(回路電極形成面)上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料10が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料10側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20の回路電極形成面上に載せる。
そして、フィルム状回路接続材料10を加熱しながら、図1(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料10を第一の回路部材20に仮接続する(仮接続ステップ)(図1(b)参照)。このとき、加熱温度は、フィルム状回路接続材料10中の熱硬化性樹脂組成物が硬化しない温度、すなわち硬化を開始する温度よりも低い温度とする。
続いて、図1(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料10上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料10が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料10上に載せる。
そして、フィルム状回路接続材料10を加熱しながら、図1(c)の矢印A及びB方向に加圧して、フィルム状回路接続材料10の硬化処理を行い、本接続を行う(接続ステップ)。このときの加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物が硬化する温度とする。こうして回路部材の接続構造が得られる。
上記のように、フィルム状回路接続材料10に対し、光照射を行うことなく熱硬化性樹脂組成物が硬化を開始する温度よりも低い温度で加熱を行うことにより、光硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が硬化せず、フィルム状回路接続材料10に高い流動性が付与される。このため、本接続時に熱により熱硬化性樹脂組成物を硬化処理することで回路部材の接続構造を得た場合、対向する回路電極間の接続抵抗の上昇を十分に防止することができる。
次に、第二の回路部材がTCPである場合の回路部材の接続方法について図2を用いて説明する。
はじめに、フィルム状回路接続材料10のほか、第一の回路部材20と、TCPからなる第二の回路部材40を用意する。第二の回路部材40は、回路基板41と、回路基板41の一面上に形成される回路電極42とを備えている。
次に、図2(a)に示すように、フィルム状回路接続材料10を第一の回路部材20の回路電極形成面上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料10が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料10側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20の回路電極形成面上に載せる。
そして、フィルム状回路接続材料10を加熱しながら、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料10を第一の回路部材20に仮接続する(仮接続ステップ)(図2(b)参照)。このとき、加熱温度は、フィルム状回路接続材料10中の熱硬化性樹脂組成物が硬化しない温度、すなわち硬化を開始する温度よりも低い温度とする。
続いて、図2(c)に示すように、光源50を用いて、フィルム状回路接続材料10の全体に対し光照射を行い、フィルム状回路接続材料10の流動性が要求される範囲となるように光硬化性組成物を硬化させる(光照射ステップ)。なお、フィルム状回路接続材料10が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから光照射を行う。
その後、図2(d)に示すように、第二の回路部材40を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料10上に載せる。そして、フィルム状回路接続材料10を加熱しながら、図2(d)の矢印A及びB方向に加圧して、フィルム状回路接続材料10の硬化処理を行い、本接続を行う(接続ステップ)。このときの加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物が硬化する温度とする。こうして回路部材の接続構造が得られる。
上記のように、フィルム状回路接続材料10に対して光照射を行うと、光硬化性樹脂組成物が硬化し、フィルム状回路接続材料10の流動性が低下する。このため、本接続時に熱により熱硬化性樹脂組成物を硬化処理するに際して、気泡の巻込み等が十分に防止される。この結果、第一の回路部材20および第二の回路部材40を十分な接着強度で接続することが可能になると共に、経時により対向する回路電極間の接続抵抗が大幅に上昇することを十分に防止することが可能となる。
以上のように、上記回路接続方法では、第二の回路部材としてTCPを用いる場合は、上記光照射ステップにより光硬化性組成物を硬化させて回路接続材料の流動性を低下させているため、気泡の巻込み等が十分に防止された状態で第一の回路部材と第二の回路部材とを接続することが可能となる。このため、第一の回路部材及び第二の回路部材を十分な接着強度で接続することが可能になると共に、経時により対向する回路電極間の接続抵抗が大幅に上昇することを十分に防止することが可能となる。また、第二の回路部材としてFPCを用いる場合は、上記光照射ステップを行うことなく、回路接続材料が十分な流動性を有している状態で第一の回路部材及び第二の回路部材の接続を行う。このため、対向する回路電極間の接続抵抗の上昇が十分に防止される。
また、フィルム状回路接続材料10は、光照射後において、該フィルム状回路接続材料の初期の面積Saに対する加熱加圧後の面積Sbの比で表される流動性(Sb/Sa)の値が、1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。ここで、上記流動性は、15mm×15mm、厚み0.7mmの2枚のガラスの間に、5mm×5mm、厚み35μmのフィルム状回路接続材料10を上記ガラスと同一の厚み方向となるように挟み、150℃、2MPaの条件で10秒間加熱加圧を行う場合における、加熱加圧を行う前の初期のフィルム状回路接続材料10における上記ガラスの一方に接している面の面積Saに対する、上記加熱加圧を行った後の上記面の面積Sbの比(Sb/Sa)を示す。上記流動性(Sb/Sa)が上記下限値未満であると、流動性が悪く良好な接続が得られなくなる傾向があり、上記上限値を超えると、気泡が発生しやくなり、信頼性に劣る傾向がある。
光照射ステップにおいてフィルム状回路接続材料10に照射する光としては、紫外線が好ましく、上記光源50としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ等を使用することができる。
光の照射量は、フィルム状回路接続材料10の流動性が制御できる範囲とすることが好ましく、例えば、0.5J/cm2〜20J/cm2とすることが好ましい。照射量が0.5J/cm2未満であると、照射量が上記範囲内である場合に比べて、流動性の低下が不十分となりTCPを接続する際に気泡の巻き込みが起こりやくすくなる傾向にあり、20J/cm2を超えると、照射量が上記範囲内である場合に比べて、流動性が低下しすぎて接続抵抗が高くなる傾向があるとともに、照射時間が長くなるため生産性が低下する傾向がある。
また、光照射ステップ後のフィルム状回路接続材料10の全体としての反応率は、5〜50%とすることが好ましい。また、このときの回路接続材料の流動性が1.3〜3.0であることが好ましい。なお、上記反応率は、例えば、赤外分光光度計(IR)により、光照射前後の光硬化性組成物及び熱硬化性組成物の強度比(光照射前の光硬化性組成物及び熱硬化性組成物の強度と、光照射後の光硬化性組成物及び熱硬化性組成物の強度との比)から算出することができる。
次に、上述したフィルム状回路接続材料10について詳細に説明する。なお、以下の説明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味するものとする。
フィルム状回路接続材料10は、回路接続材料をフィルム状に加工してなるものであり、回路接続材料は、接着剤組成物11と、導電性粒子12とから構成されている。このフィルム状回路接続材料10は、第一の回路部材と、テープキャリアパッケージ又はフレキシブルプリント基板からなる第二の回路部材とを電気的に接続させるためのものであって、熱硬化性組成物と、光照射により硬化する光硬化性組成物とを接着剤組成物11として含有するものである。
接着剤組成物11に含まれる熱硬化性組成物は、所定の温度以上に加熱することにより硬化を開始するものであり、エポキシ樹脂及びラジカル重合性化合物のいずれか一方を含有するものであることが好ましい。これにより、回路部材同士の接着強度をより十分なものとすることができるとともに、回路電極間の接続抵抗をより十分に低減し、且つ、経時による接続抵抗の上昇をより十分に防止することができる。特に熱硬化性組成物がラジカル重合性化合物を含有するものである場合には、熱硬化性組成物がエポキシ樹脂を含有する場合に比べて低温且つ短時間で硬化させることが可能となる。
上記エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上含んでいるものが好ましく、このようなエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性組成物においてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂を硬化させることが可能な硬化剤を使用する。かかる硬化剤としては、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤としては、例えば、第3級アミン類、イミダゾール類、ヒドラジド系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、オニウム塩(スルホニウム塩、アンモニウム塩等)、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変成物も用いることが可能である。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等が挙げられる。
また、反応性及び保存安定性の観点から、これらの硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型潜在性硬化剤を使用することが好ましい。
このような硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましい。添加量が上記下限値未満の場合には反応性が不十分で信頼性が低下する傾向にあり、上記上限値を超える場合には保存安定性が低下する傾向にある。
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する化合物であり、このようなラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー及びオリゴマーのいずれの状態で用いてもよく、モノマーとオリゴマーとを混合して用いてもよい。
(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン等のラジカル重合禁止剤を硬化性が損なわれない範囲で使用してもよい。
マレイミド樹脂は、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているものであり、このようなマレイミド樹脂としては、例えば、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
シトラコンイミド樹脂は、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有しているシトラコンイミド化合物を重合させてなるものであり、このようなシトラコンイミド化合物としては、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ナジイミド樹脂は、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有しているナジイミド化合物を重合させてなるものであり、このようなナジイミド化合物としては、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのラジカル重合性化合物を使用する場合、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物を併用すると、回路電極(金属等無機物等)に対する接着強度を向上することができるため好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物として得られるものであり、具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このリン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物の添加量は、これ以外のラジカル重合性化合物100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。
熱硬化性組成物においてラジカル重合性化合物を使用する場合には、加熱により遊離ラジカルを発生する重合開始剤を使用する。かかる重合開始剤としては、加熱により遊離ラジカルを発生する化合物であれば特に制限なく使用することができ、過酸化化合物、アゾ化合物等を使用することができる。かかる重合開始剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選択できるが、半減期10時間の温度が40℃以上であり、且つ、半減期1分の温度が180℃以下である有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が50℃以上であり、且つ、半減期1分の温度が170℃以下である有機過酸化物が特に好ましい。
上記有機過酸化物の具体例としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、回路電極の腐食を抑える観点から、重合開始剤中に含有される塩素イオンや有機酸が5000ppm以下のものが好ましく、更に、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。このような観点から、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドは、重合開始剤中の塩素イオンや有機酸が5000ppm以下であり、加熱分解後に発生する有機酸が少なく、回路部材の接続端子の腐食を抑えることができるため特に好ましい。また、フィルム状回路接続材料10の安定性を向上させる観点から、室温、常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有する重合開始剤を用いることが好ましい。
ここで、ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
これら加熱により遊離ラジカルを発生する重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、更に、分解促進剤、抑制剤等を混合して使用してもよい。また、これらの重合開始剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
また、かかる重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性化合物100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることが特に好ましい。添加量が上記下限値未満である場合には反応率が低く信頼性が低下する傾向にあり、上記上限値を超える場合には保存安定性が低下する傾向にある。
更に、フィルム状回路接続材料10における熱硬化性組成物の含有率は、フィルム状回路接続材料10中の固形分(接着剤組成物11及び導電性粒子12)全量を基準として10〜60重量%であることが好ましい。含有率が上記下限値未満であると、接続抵抗が上昇する傾向にあり、上記上限値を超えると、良好に流動性を制御できなくなる傾向にある。
フィルム状回路接続材料10を構成する接着剤組成物11は、以上説明した熱硬化性組成物を含有するとともに、光照射により硬化する光硬化性組成物を含有するものである。
接着剤組成物11に含まれる光硬化性組成物は、光カチオン反応性化合物、光ラジカル反応性化合物及び光アニオン反応性化合物のいずれか1つを含有するものであることが好ましい。これにより、TCPを第一の回路部材に接続する際に、フィルム状回路接続材料10の流動性を容易に且つ確実に低下させることができる
上記光カチオン反応性化合物は、カチオン種によって重合する官能基を有する化合物であり、このような光カチオン反応性化合物としては、エポキシ、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、エポキシ化合物としては、先に説明したエポキシ樹脂を使用することができる。
オキセタン化合物は、分子中にオキセタン環を少なくとも1個有しているものである。分子中に1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
上記一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基等を示す。R2は、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数2〜6のアルケニル基(1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等)、芳香環を有する基(フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等)、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基(エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等)、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)又は炭素数2〜6のN−アルキルカルバモイル基(エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等)等を示す。
分子中に2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
上記一般式(2)において、R1は、上記一般式(1)におけるR1と同義である。R3は、直鎖状若しくは分枝状アルキレン基(エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等)、直鎖状若しくは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基(ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等)、直鎖状若しくは分枝状不飽和炭化水素基(プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等)、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基又は下記一般式(2−1)〜(2−12)で表される基から選択される多価基等を示す。
上記一般式(2−1)において、R4は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基又はカルバモイル基を示す。
上記一般式(2−2)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO2−、−C(CF3)2−、又は、−C(CH3)2−を示す。
上記一般式(2−3)において、R6は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜4個のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基又はカルバモイル基を示す。
上記一般式(2−4)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、−NH−、−SO−、−SO2−、−C(CF3)2−、−C(CH3)2−、又は、下記一般式(2−4a)若しくは(2−4b)で表される2価の基を示す。
上記一般式(2−5)及び一般式(2−6)において、R8は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜4個のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基又はカルバモイル基を示す。なお、R8は、ナフタレン環に2〜4ヶ置換していてもよい。
上記一般式(2−12)において、nは0〜10の整数を示す。なお、上記一般式(2−12)で表される化合物は、nが異なる複数の化合物の混合物であってもよい。
また、分子中に2個のオキセタン環を有するオキセタン化合物として、上述した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。なお、一般式(3)において、R1は、上記一般式(1)におけるR1と同義である。
分子中に3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
上記一般式(4)において、R1は、上記一般式(1)におけるR1と同義であり、mは3又は4を示し、R9は、下記一般式(4−1)〜(4−3)で表される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記一般式(4−4)で表される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基等を示す。
上記一般式(4−1)において、R10は低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)を示す。
上記一般式(4−4)において、pは1〜10の整数を示す。
これら光カチオン反応性化合物として用いられるオキセタン化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(5)〜(10)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(8)〜(10)において、R11はメチル基又はエチル基を示す。
また、これら以外にも、分子量1,000〜5,000程度の比較的高分子量の1〜4個のオキセタン環を有する化合物を用いることもできる。更に、オキセタンを含むポリマーとして、側鎖にオキセタン環を有するポリマー(例えば、K. Sato, A. Kameyama and T. Nishikubo, Macromolecules, 25, 1198 (1992) を参照)等も同様に用いることができる。これらのオキセタン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、光カチオン反応性化合物として使用可能なビニルエーテル化合物としては、例えば、アルキルビニルエーテル化合物、アルケニルビニルエーテル化合物、アリールビニルエーテル化合物等が挙げられる。
光硬化性組成物において、これらの光カチオン反応性化合物を使用する場合、光照射によりカチオン種を発生する光開始剤を使用する。かかる光開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩及びセレノニウム塩等のオニウム塩、金属アレーン錯体及びシラノール/アルミニウム錯体等の錯体化合物、ベンゾイントシレート、並びに、o−ニトロベンジルトシレート等を用いることができる。また、上記オニウム塩の対アニオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が用いられる。
また、かかる光開始剤の添加量は、光カチオン反応性化合物100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましい。
上記光ラジカル反応性化合物としては、先に説明したラジカル重合性化合物を使用することができ、(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド樹脂、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等を使用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー及びオリゴマーのいずれの状態で用いてもよく、モノマー及びオリゴマーを混合して用いてもよい。
かかるラジカル重合性化合物を使用する場合、光照射によってラジカルが発生する光開始剤(光ラジカル発生剤)を使用する。かかる光開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジル、ベンゾフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のケトン類;ビスイミダゾール類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの光開始剤に加え、必要に応じて、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を使用してもよい。
また、かかる光開始剤の添加量は、光ラジカル反応性化合物100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましい。
上記光アニオン反応性化合物は、塩基性化合物によって重合する化合物であり、このような光アニオン反応性化合物としては、先に説明したエポキシ、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物を使用することができる。
また、かかる光アニオン反応性化合物を使用する場合には、放射線照射によって塩基が発生する光開始剤を使用する。
かかる光開始剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であって、発生した塩基が、光アニオン反応性化合物の硬化反応速度を上昇させるものである。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
また、この光開始剤は、波長150〜750nmの光照射によって塩基を発生する化合物であることが好ましく、一般的な光源を使用した際に効率良く塩基を発生させる観点から、250〜500nmの光照射によって塩基を発生する化合物であることがより好ましい。
このような光開始剤として具体的には、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体;ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体;プロリン誘導体;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体;4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体;ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体;トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体;ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。また、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314頁(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176頁(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることもできる。かかる4級アンモニウム塩誘導体は、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂等の光アニオン反応性化合物の硬化には最適である。更に、Journal of American Chemical Society 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体や、活性光線の照射により1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体等を用いることもできる。
更にまた、放射線照射によって塩基が発生する光開始剤として、α−アミノケトン化合物は最も好適に用いることができる。かかるα−アミノケトン化合物として具体的には、市販されている2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、商品名:イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、商品名:イルガキュア369)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等が挙げられる。
このα−アミノケトン化合物は、放射線を照射する前は立体障害のため光アニオン反応性化合物の硬化促進作用を有しないが、放射線を照射することによりα−アミノケトン化合物が解離して立体障害が低下するため、光アニオン反応性化合物の硬化促進作用を示すと推察される。
なお、これらの光開始剤を用いた場合、光フリース転位、光クライゼン転位(光Cleisen転位)、クルチウス転位(Curtius転位)、スチーブンス転位(Stevens転位)によって塩基性化合物を発生させることができ、これにより光アニオン反応性化合物の硬化を行うことができる。
更に、光開始剤としては、上述した化合物以外にもアミンイミド化合物を用いることができる。かかるアミンイミド化合物としては、活性光線の照射によって塩基を発生させることが可能なものを特に制限なく使用することができ、具体的には、例えば、下記一般式(11)又は(12)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(11)及び(12)において、R12〜R14は各々独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキリデン基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルケニル基、炭素数1〜6のフェノキシアルキル基、フェニル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したフェニル基、ベンジル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基等を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖上のアルキル基の他に、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等も含む。これらの置換基の中でも、合成の簡便性、アミンイミドの溶解性等の点から、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜6のフェノキシアルキル基が好ましい。また、R15は炭素数1〜5のアルキル基、水酸基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又はフェニル基を示す。
また、上記一般式(11)におけるAr1は、下記一般式(11−1)〜(11−14)で表される芳香族基を示し、上記一般式(12)におけるAr2は、下記一般式(12−1)〜(12−9)で表される芳香族基を示す。
上記一般式(11−1)〜(11−14)及び上記一般式(12−1)〜(12−9)において、R16〜R47は各々独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜8のアルキリデン基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルケニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基、モルフォリノ基、メルカプト基、水酸基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、炭素数1〜6のエステル基、炭素数1〜6のカルボニル基、アルデヒド基、シアノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、ベンゾイル基、フェニル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したフェニル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基を示す。また、上記一般式(11−1)〜(11−14)において、U〜Zは各々独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を示す。更に、上記一般式(12−1)〜(12−9)において、A、B、D、Eは各々独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を示し、これらはそれぞれ炭素原子、窒素原子、炭素数1〜6のアルキル基、酸素原子、硫黄原子と結合していてもよい。
上記アミンイミド化合物の合成は、公知の方法により行うことができる。例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, John Wiley & Sons Ltd.(1985年)、第1巻、p740に記載されているように、対応するカルボン酸エステルとハロゲン化ヒドラジン及びナトリウムアルコキサイドとの反応や、カルボン酸エステルとヒドラジン及びエポキシ化合物との反応から得ることができる。合成の簡便性、安全性を考慮すると、対応するカルボン酸エステルとヒドラジン及びエポキシ化合物からの合成法が特に好ましい。合成温度、合成時間に関しては、使用する出発物質の分解等が無ければ特に制限を受けないが、一般的には0〜100℃の温度で30分〜7日間攪拌することによって目的のアミンイミド化合物を得ることができる。
また、放射線照射によって塩基が発生する光開始剤としては、上述したもの以外に、イミダゾリウム塩を使用することもできる。かかるイミダゾリウム塩としては、例えば、下記一般式(13)及び(14)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(13)及び(14)において、R48〜R51は各々独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキリデン基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルケニル基、炭素数1〜6のフェノキシアルキル基、炭素数1〜6のフェニルアルキル基、炭素数1〜6のシアノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、フェニル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したフェニル基、ベンジル基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、チオメチル基、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子を示す。
また、上記一般式(13)におけるAr1及び上記一般式(14)におけるAr2は、それぞれ上記一般式(11)におけるAr1及び上記一般式(12)におけるAr2と同義である。
また、上記一般式(13)及び(14)におけるX−は、炭素数1〜6のジアルキルジチオカルバミド酸又は下記一般式(13−1)で表されるほう酸を示す。
上記一般式(13−1)において、R52〜R55は各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、フッ素原子が少なくとも1つ以上置換したフルオロフェニル基又はイミダゾール基を示す。
上記イミダゾリウム塩の合成は、公知の方法により行うことができるが、合成の簡便性、安全性を考慮すると、下記反応式(A)に示すように、ハロゲン化アルキルケトン誘導体とイミダゾール誘導体とで、イミダゾリウム・ハロゲン塩を合成した後、アニオン交換反応によって、イミダゾリウム塩を合成する方法が好ましい。
合成温度、合成時間に関しては、使用する出発物質の分解等が無ければ特に制限を受けないが、一般的には0〜100℃の温度で30分〜7日間攪拌することによって目的のイミダゾリウム塩化合物を得ることができる。これらの化合物は、室温で放射線を照射しない状態では光アニオン反応性化合物と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性は非常に優れているという特徴を持つ。
これらの放射線照射によって塩基を発生する光開始剤の添加量は、光アニオン反応性化合物100重量部に対して、0.01〜200重量部であることが好ましく、0.02〜150重量部であることがより好ましい。添加量が0.01重量部未満であると、流動性を良好に低下させることが困難となる傾向がある。また、添加量が200重量部を超えると、フィルム状の回路接続材料としての特性、保存安定性、フィルムの物性等が悪化する傾向がある。
接着剤組成物11に含まれる光硬化性組成物には、照射光の高吸収化、高感度化を目的に、増感剤を添加することもできる。かかる増感剤としては、光硬化性組成物に悪影響を及ぼさない限り、公知の一重項増感剤、三重項増感剤を用いることができる。
上記増感剤として具体的には、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン等の芳香族化合物誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族カルボニル化合物、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体等が好適に用いられる。これらの中でも、一重項増感剤としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体が特に好ましく、三重項増感剤としては、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体が特に好ましい。
これらの増感剤として更に具体的には、例えば、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1−フルオロナフタレン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール及び上記一般式(11−1)〜(11−14)、(12−1)〜(12−9)で表される芳香族基を有する化合物が挙げられる。
また、増感剤としては、上述した化合物の他にも、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジシアノナフタレン、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−シアノアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、2,6,9,10−テトラシアノアントラセン、カルバゾール、9−メチルカルバゾール、9−フェニルカルバゾール、9−プロペ−2−イニル−9H−カルバゾール、9−プロピル−9H−カルバゾール、9−ビニルカルバゾール、9H−カルバゾール−9−エタノール、9−メチル−3−ニトロ−9H−カルバゾール、9−メチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−オクタノイルカルバゾール、9−カルバゾールメタノール、9−カルバゾールプロピオン酸、9−カルバゾールプロピオニトリル、9−デシル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−エチル−3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、9−エチル−3−ニトロカルバゾール、9−エチルカルバゾール、9−イソプロピルカルバゾール、9−(エトキシカルボニルメチル)カルバゾール、9−(モルホリノメチル)カルバゾール、9−アセチルカルバゾール、9−アリルカルバゾール、9−ベンジル−9H−カルバゾール、9−カルバゾール酢酸、9−(2−ニトロフェニル)カルバゾール、9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール、9−(1−エトキシ−2−メチル−プロピル)−9H−カルバゾール、3−ニトロカルバゾール、4−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジニトロ−9H−カルバゾール、3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール、2−ヒドロキシカルバゾール、3,6−ジアセチル−9−エチルカルバゾール、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタノン、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタノンが挙げられる。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、増感剤の添加量は、使用する増感剤の吸収波長及びモル吸光係数を参考にする必要があるが、光開始剤100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましく、0.1〜2重量部であることが特に好ましい。上記範囲の添加量とすることにより、光吸収の効率や光透過率を向上させることができる。
また、フィルム状回路接続材料10における光硬化性組成物の含有率は、フィルム状回路接続材料10中の固形分全量を基準として5〜50重量%であることが好ましい。含有率が上記下限値未満であると、光照射後の流動性の低下が良好でない傾向にある、上記上限値を超えると、光照射によって硬化反応が進みすぎてしまい、良好な接続が得られない傾向にある。
更に、光硬化性組成物の含有率は、熱硬化性組成物100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましい。この含有率が5重量部未満であると、含有率が上記範囲内にある場合に比べて、流動性の低下が不十分となりTCPを接続する際に気泡の巻き込みが起こりやくすくなる傾向にあり、100重量部を超えると、含有率が上記範囲内にある場合に比べて、流動性が低くなりすぎて接続抵抗が高くなってしまう傾向にある。
また、接着剤組成物11は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和性を付与するため、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等の高分子成分を含有することが好ましい。かかる高分子成分としては、分子量が10,000〜10,000,000のものが好ましい。また、これらの高分子成分は、ラジカル重合性の官能基で変成されていても良く、その場合にはフィルム状回路接続材料10の耐熱性が向上する傾向にある。
高分子成分の含有率は、フィルム状回路接続材料10における固形分全量を基準として2〜80重量%であることが好ましく、5〜70重量%であることがより好ましく、10〜60重量%であることが特に好ましい。含有率が2重量%未満であると、含有率が上記範囲内にある場合に比べて、応力緩和や接着力が不十分となる傾向にあり、80重量%を超えると、含有率が上記範囲内にある場合に比べて、流動性が低下する傾向にある。
更に、接着剤組成物11には、充填剤、軟化剤、老化防止剤、難燃剤、カップリング剤等の添加剤を含有させてもよい。
導電性粒子12としては、電気的接続を得ることができる導電性を有しているものであれば特に制限なく使用することができ、Au,Ag、Ni,Cu、Co,はんだ等の金属粒子やカーボン等を使用することができる。また、非導電性のガラス、セラミックス、プラスチック等を上記の金属粒子等の導電物質で被覆したものも使用することができる。このとき、被覆する導電物質層の厚さは、十分な導電性を得るために100Å以上とすることが好ましい。
また、導電性粒子12の添加量は、フィルム状回路接続材料10における導電性粒子を除いた固形分(接着剤組成物11)100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜20体積部であることがより好ましい。
フィルム状回路接続材料10は、例えば、上述した接着剤組成物11及び導電性粒子12からなる回路接続材料を溶媒に溶解したものを支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に塗工装置を用いて塗布し、上記熱硬化性組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。また、フィルム状回路接続材料10の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。
以上、本発明の回路接続方法をその好適な実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明の回路接続方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料10を用いて回路部材の接続構造を製造しているが、フィルム状回路接続材料10に代えて、フィルムを形成する高分子成分を含まない回路接続材料を用いてもよい。この場合でも、例えば、回路接続材料をトルエン、MEK、酢酸メチル等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液を第一の回路部材20に塗布して乾燥させれば、第一及び第二の回路部材の間に介在させることができる。なお、このときの回路接続材料の流動性や、加熱温度及び光の照射量等の条件は、フィルム状回路接続材料10を使用した場合と同様である。
また、光照射ステップを行う場合、TCPを本接続する前であればどの段階で行ってもよいが、仮接続ステップを行った後、支持体があればそれをフィルム状回路接続材料10から剥がした後に光照射することが好ましい。このとき、回路部材が透明の場合には、光照射は回路部材を通して行うこともできる。
更に、上記実施形態では仮接続ステップを含んでいるが、この仮接続ステップを行うことなく、第一の回路部材20と第二の回路部材30又は40とをフィルム状回路接続材料10を介して直接本接続してもよい。
また、フィルム状回路接続材料10(回路接続材料)によるTCP及びFPCの接続は、加熱加圧により行われるが、必要に応じて熱以外のエネルギー、例えば、超音波、電磁波等を併用してもよい。また、フィルム状回路接続材料10(回路接続材料)を2層以上に分割して使用しても良い。
また、上記実施形態では、導電性粒子12を含むフィルム状回路接続材料10(回路接続材料)を使用する場合について説明したが、本発明の回路接続方法において、導電性粒子12を含まないフィルム状回路接続材料10(回路接続材料)を使用してもよい。
10…フィルム状回路接続材料、11…接着剤組成物、12…導電性粒子、20…第一の回路部材、21…回路基板(第一の回路基板)、22…回路電極(第一の回路電極)、
30…第二の回路部材(FPC)、31…回路基板(第二の回路基板)、32…回路電極(第二の回路電極)、40…第二の回路部材(TCP)、41…回路基板(第二の回路基板)、42…回路電極(第二の回路電極)、50…光源。