JP4491024B2 - 金型装置 - Google Patents

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Description

本発明は、凹凸パターンを有する記録媒体用成形基板を射出成形により製造するのに用いられるスタンパを保持するためのスタンパホルダ、このスタンパホルダを含む成形金型、およびこの成形金型を用いて成形された記録媒体用成形基板に関する。
近年、磁気記録媒体の記録密度を向上するために、記録トラックどうしを物理的に分離したディスクリートトラックレコーディング媒体(DTR媒体)が提案されている。
DTR媒体はインプリント法を用い、以下のようにして製造される。まず、DTR媒体に対応する凹凸パターンが形成されたインプリントスタンパを作製する。一方、媒体基板上に磁性膜を成膜し、その上にレジストを塗布する。媒体基板に塗布されたレジストに対してインプリントスタンパを押し付け、レジストに凹凸パターンを転写し、さらにレジストをマスクとして磁性膜を加工する。
従来、インプリントスタンパとしては電鋳プロセスにより作製されたNiスタンパ(ファザースタンパ、マザースタンパまたはサンスタンパ)が用いられていた。しかし、電鋳プロセスを用いた場合、Niスタンパ1枚あたり1時間程度の作製時間がかかるという問題がある。これに対して、電鋳プロセスにより最初のNiスタンパ(ファザースタンパ)を作製し、その後は射出成形プロセスを用いて成形基板(インプリントスタンパ)を作製すれば、1枚数秒程度で樹脂製のインプリントスタンパを作製することが期待できる。
これまで、2枚の成形基板を貼り合わせたDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクでは、少なくとも1枚の成形基板にトラックピッチ300nm以上の凹凸パターンが形成され、厚さ30μm以上の光記録層が成膜されている光ディスクを製造する際には、射出成形によりスタンパのパターンを転写した成形基板を使用していた。
射出成形により光ディスクの成形基板上にトラックピッチ300nmのランド/グルーブ構造を形成する場合、スタンパを保持する金型とスタンパとの境界部に生じるバリの高さを30μm以下に抑えれば、光記録層が十分厚いためバリが光記録層に埋め込まれ、貼り合わせ工程時にはあまり問題にならなかった。
また、バリの発生による問題をより確実に解消するために、金型の内周部に突起部を設けるとともにスタンパの内周部に記録エリアよりも高い段差を形成し、金型の突起部にスタンパの中心孔を嵌合させたときに、スタンパの段差上面と金型の突起部上面が同一平面になるようにし、射出成形により成形基板の内周部に凹部を形成する方法が提案されている。この方法では、成形基板の凹部にバリが形成されるので、バリの発生による問題を解消できる(たとえば特許文献1参照)。
しかし、射出成形により作製されたトラックピッチ100nm以下の凹凸パターンを有する成形基板をインプリントスタンパとして用いてDTR媒体を製造しようとする場合、上記のような光ディスクの製造方法を採用すると問題が生じる。
トラックピッチ100nm以下の凹凸パターンを有するDTR媒体を製造する場合、媒体基板上に成膜された磁性層の上に塗布されるレジストの厚みを100nm以下に薄くすることが好ましい。ところが、媒体基板上のレジストと成形基板(インプリントスタンパ)を押し付けたときに、成形基板の表面にバリなどの突起や段差があると、成形基板とレジスト間に空隙が生じ、成形基板の凹凸パターンをレジストに転写できないという問題が生じる。特許文献1のように成形基板の内周部に凹部を形成し、この凹部にバリが形成されるようにしたとしても、薄いレジストにパターンを転写するDTR媒体の製造では凹凸パターンをレジストに転写できないという問題を解消できない。
また、Niスタンパを金型に保持する際に、Niスタンパ表面の内周部を保持するスタンパホルダとして保持部がテーパーになったものを用いることが提案されている(特許文献2参照)。これは、Niスタンパの内外周を加工する方法として一般的に打ち抜き加工法が採用されており、Niスタンパの打ち抜き面にテーパーが発生することに対する対策として有利である可能性がある。すなわち、スタンパホルダの保持部のテーパーを、Niスタンパの打ち抜き面に発生するテーパーに合わせれば、スタンパホルダの上面とNiスタンパの上面とをほぼ同一平面とした状態で、Niスタンパを保持できる可能性がある。
しかし、打ち抜き加工時に発生するNiスタンパのテーパーの形状は、Niスタンパの厚みや硬度に依存して大きく変化するので、Niスタンパのテーパーに正確にフィットするスタンパホルダを作製することは困難である。Niスタンパとスタンパホルダの両者のテーパーが正確にフィットしない限り成形基板に段差が生じ、事実上、段差のない成形基板を作製することは困難である。上述したように、トラックピッチ100nm以下の凹凸パターンを有するDTR媒体を製造する場合には、成形基板のパターン面にパターンの高さよりも高い凸部をなす段差があると、凹凸パターンをレジストに転写できないという問題が生じる。
特開2004−310937号公報 特開平10−128807号公報
本発明者らは、Niスタンパ表面の内周部を、フランジを有するスタンパホルダで上から押さえ付けて金型に保持することを検討した。この場合、Niスタンパの上面よりもフランジを有するスタンパホルダの上面が高くなり、射出成形による作製される成形基板の内周部にフランジの厚みに相当する凹部をなす段差が生じる。したがって、インプリント時に凸部をなすバリや段差により、凹凸パターンをレジストに転写できないという問題を解消できる。
しかし、上記の方法で、Niスタンパの上面とフランジを有するスタンパホルダの上面との間に段差がある状態で射出成形を行うと、成形基板の内周部にいわゆるフローマークと呼ばれる欠陥が発生する可能性が高くなることが判明した。フローマークとは、溶融した樹脂の流れが遅いことに起因して、樹脂の流れ方向と直交する方向に溶融樹脂が固まりながらできた流れの跡をいう。フローマークが生じるとパターンの転写性が悪くなるため、フローマークに対する対策も必要になる。
本発明の目的は、DTR媒体のような記録媒体用のインプリントスタンパとして射出成形された成形基板を用いる場合に、インプリント時に凹凸パターンをレジストに転写できないという問題を解消し、かつ射出成形時に樹脂のフローマークによるパターンの転写性の悪化を防止することにある。
本発明の一態様に係る金型装置は、内径17.5mm以下の中心孔を有し表面に記録媒体用の凹凸パターンが形成された円盤状の金属製スタンパが固定される、中心孔を有する第1の金型と、金属製スタンパを前記第1の金型上に固定した状態で保持するためのスタンパホルダであって、前記第1の金型の中心孔に挿入される様、円筒状の形状をなし、一端部にスタンパ表面の中心孔近傍の内周部を保持するフランジが設けられ、前記フランジの外径が17.6mm以下であるスタンパホルダと、前記スタンパホルダ内に配置されるスプルーブッシュと、金属製スタンパが固定された前記第1の金型に対向して配置され、溶融樹脂が充填されるキャビティーを形成する第2の金型とを有し、前記スタンパホルダのフランジの外周は、前記金属製スタンパに形成された凹凸パターンの最内周位置から0.5mm以上離れて配置され、前記スタンパホルダのフランジは、成形される記録媒体用成形基板の内周部に、その厚みに相当する凹部をなす段差を生じさせることを特徴とする。
本発明によれば、一端部にスタンパ表面の中心孔近傍の内周部を保持するフランジが設けられスタンパホルダによって金属製スタンパを保持するので、射出成形による作製される成形基板の内周部にフランジの厚みに相当する凹部をなす段差を生じさせることができ、インプリント時に凸部をなすバリや段差により凹凸パターンをレジストに転写できないという問題を解消できる。また、成形基板の記録エリアの最内周位置よりも内側に向かって0.5mm以上離れた位置に段差が形成されるようにすることによって、フローマークの影響を避け、成形基板の全面で良好な転写性を得ることができる。したがって、1枚10秒程度の速度でインプリントスタンパ(成形基板)を作製できるという射出成形の利点を生かして、DTR媒体の生産効率を向上することができる。
図1(a)〜(c)を参照して、本発明に係るスタンパホルダを含む成形金型を用い、射出成形によりドーナツ型の記録媒体用成形基板(インプリントスタンパ)を製造する方法を説明する。
図1(a)に示すように、図示しない射出成形機に、固定金型(第1の金型)11および可動金型(第2の金型)15が対向して配置され接離可能に搭載される。
中心孔を有する固定金型11上に内径17.5mm以下の中心孔を有し表面に記録媒体用の凹凸パターン21aが形成されたドーナツ型のNiスタンパ21を、凹凸パターンを可動金型15に向けて載置する。Niスタンパ21は通常の方法に従い、原盤にレジストを塗布し電子線リソグラフィーを行った後、電鋳を行うことにより作製されたものである。円筒状の形状をなし、一端部にNiスタンパ21表面の中心孔近傍の内周部を保持するフランジ12aが設けられ、フランジ12aの外径が17.6mm以下であるスタンパホルダ12を、固定金型11の中心孔に挿入してNiスタンパ21を固定する。固定金型11上で凹凸パターンが形成されている記録エリアの最内周位置と、スタンパホルダ12のフランジ12aの外周位置との間は、0.5mm以上離れている。スタンパホルダ12内にはスプルーブッシュ13が装着され、これを通して溶融樹脂が射出される。可動金型15の外周にはキャビティーリング16が設けられている。また、可動金型15の中心部には成形基板の中心孔を打ち抜くためのカットパンチ17が設けられている。
図1(b)に示すように、固定金型11および可動金型15を型締めする。可動金型15のキャビティーリング16が固定金型11上のNiスタンパ21の記録エリアのパターン最外周位置より外側の面に接し、Niスタンパ21と可動金型15との間に溶融樹脂が充填されるキャビティーを形成する。射出成形により作製される成形基板の厚みは、型締めされた時のNiスタンパ21の表面と可動金型15の表面との間隔で決定される。可動金型15の表面は成形基板の裏面を規定する。成形基板の外径はNiスタンパ21に接するキャビティーリング16の位置で決定される。この状態で、スプルーブッシュ13を通して溶融樹脂を注入してキャビティーに充填するとほぼ同時に、カットパンチ17を可動金型15から固定金型11の方向へ突き出して成形基板のセンター孔を形成する。その後、注入された溶融樹脂を金型温度まで冷却して固形化する。
本発明において用いられる樹脂は特に限定されないが、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンが好適である。
図1(c)に示すように、可動金型15を取り外し、固形化した樹脂をNiスタンパ21から分離して、ドーナツ型の成形基板31を作製する。この成形基板31は、表面にNiスタンパ21に対応する凹凸パターン31aが形成された記録エリアを有し、この記録エリアの最内周位置よりも内側に向かって0.5mm以上離れた位置に形成された凹部をなす段差31bを有する。すなわち、段差31bの上面は、凹凸パターン31aの上面よりも低い。段差31bが形成されている位置の直径は17.6mm以下である。
ここで、スタンパホルダの形状について説明する。
本発明においては、図2に示すように、円筒状の形状をなし、一端部にNiスタンパ21表面の中心孔近傍の内周部を保持するフランジ12aが設けられたスタンパホルダ12が用いられる。
このように、Niスタンパ21表面の中心孔近傍の内周部を保持するスタンパホルダ12のフランジ12aで上から押さえ付けて保持した状態で射出成形すると、Niスタンパ21表面とフランジ12aとの段差に対応して、成形基板31の内周部に凹部をなす段差31bが形成される。
一方、特許文献2においては、図3に示すように、円筒状の形状をなし、一端部にNiスタンパ21表面の中心孔近傍の内周部を保持するテーパー41aが設けられたスタンパホルダ41が用いられている。これは、スタンパホルダ41の上面とスタンパ21の上面とをほぼ同一平面とすることを目的としている。
しかし、図4に示すように、打ち抜き刃45でNiスタンパ21の中心孔を打ち抜き加工した時に発生するNiスタンパ21のテーパー21bの形状は、Niスタンパ21の厚みや硬度に依存して大きく変化するので、Niスタンパ21のテーパー21bに正確にフィットするスタンパホルダ41を作製することは困難である。
このため、図5(a)に示すようにスタンパホルダ41の上面がスタンパ21の上面よりも高くなることもあれば、図5(b)に示すようにスタンパホルダ41の上面がスタンパ21の上面よりも低くなることもある。図5(b)に示すようにスタンパホルダ41の上面がスタンパ21の上面よりも低くなった場合、その段差に対応して、成形基板31の内周部に凸部をなす段差が形成される。
内周部に凸部をなす段差31cが形成された成形基板31を用いてDTR媒体のインプリント工程を行うと、パターン転写ができないという問題が生じる。このことを図6(a)および(b)を参照して説明する。
図6(a)に示すように、DRT媒体のインプリント工程では、媒体基板51上に磁性膜52を成膜し、膜厚100nm以下のレジスト53を塗布する。このレジスト53に対向するように、内周部に凸部をなす段差31cが形成された成形基板(インプリントスタンパ)31を対向させる。
図6(b)に示すように、成形基板31のパターンを転写するために、媒体基板51上のレジスト53に対して成形基板31を押し付ける。しかし、成形基板31の内周部に、記録エリアの凹凸パターンの上面より突出した段差31cが形成されていると、この段差31c近傍のパターンがレジスト53の表面から浮いて、パターン転写ができない未転写部31dが生じる。
本発明においては、上述したように、Niスタンパ21表面とフランジ12aとの段差に対応して、成形基板31の内周部に凹部をなす段差31bが形成されるので、凸部をなす段差31cが原因となるパターン転写不良は生じない。
ただし、Niスタンパ21の記録エリアの凹凸パターンの最内周位置からあまり離れていない位置でNiスタンパ21表面の中心孔近傍の内周部をスタンパホルダ12のフランジ12aで保持すると、射出成形時にフランジ12aによる段差でフローマークが生じることがある。
図7(a)および(b)に示すように、成形基板31においてフローマークが生じた内周部では微細なパターンの転写不良が生じて未転写部31dが形成される。
これに対して、本発明では、Niスタンパ21の記録エリアの凹凸パターンの最内周位置からスタンパホルダ12のフランジ12aの外周までの距離を0.5mm以上離して、成形基板31の記録エリアの最内周位置よりも内側に向かって0.5mm以上離れた位置に凹部をなす段差31bが形成されるようにすることによって、フローマークの影響を避けて成形基板31の全面で良好な転写性を得る。
次に、図8(a)〜(e)を参照して、成形基板31をインプリントスタンパとして用いる磁気記録媒体(DTR媒体)の製造方法を説明する。
図8(a)に示すように、媒体基板51上に磁性膜52を成膜し、膜厚100nm以下のレジスト53を塗布する。このレジスト53に対向するように、成形基板(インプリントスタンパ)31を対向させる。
図8(b)に示すように、成形基板31のパターンを転写するために、媒体基板51上のレジスト53に対して成形基板31を押し付ける。
図8(c)に示すように、成形基板31を剥離する。レジスト53の記録エリア表面に成形基板31から転写された凹凸パターンが形成される。
図8(d)に示すように、レジスト53の凹凸パターンの凹部に残存しているレジスト残渣を除去し、磁性膜52の表面を露出させる。
図8(e)に示すように、パターン化されたレジスト53をマスクとしてミリングにより磁性膜52を加工して所望の磁性パターンを得る。
その後、必要に応じて磁性パターンの間の凹部を非磁性体で充填し、磁性パターンの表面にDLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗布することにより、磁気記録媒体(DTR媒体)を得る。
以下、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
製造しようとするDTR媒体の仕様は以下の通りである。直径1.8インチの媒体基板の、半径位置で9.3〜22.3mmの範囲の記録エリアに、トラックピッチ74nmで磁性パターンを形成する。トラック部の磁性パターンの形状は、ランド幅52nm、グルーブ幅26nmである。サーボエリアにおける磁性パターンの形状は通常の通りである。
射出成形に用いるNiスタンパの仕様は以下の通りである。Niスタンパは、通常の方法に従い、電子線リソグラフィーと電鋳を用いて作製する。Niスタンパの形状は外径65.00mm、内径17.50mm、厚み0.290mmである。NiスタンパはDTR媒体の磁性パターンに対応する凹凸パターンを有する。パターンの高さは50nmである。
射出成形に用いるスタンパホルダの仕様は以下の通りである。フランジは、外径がφ17.60mm、スタンパの押さえ代が50μm、高さが10μmである。
一方、可動金型に取り付けられるカットパンチは外径がφ12.05mmである。
Niスタンパを固定金型に載置しスタンパホルダで保持して、下記のようにして射出成形を行った。すなわち、スプルーブッシュを通して固定金型と可動金型とで形成されるキャビティー内に溶融樹脂を注入するのとほぼ同時に加圧し、冷却することにより、キャビティーと同じ構造の成形基板を作製した。射出成形の条件は以下の通りである。
射出成型樹脂材料:環状ポリオレフィン(COP、日本ゼオン製ZEONOR−1060R)、溶融樹脂温度:370℃、金型温度:100℃、型締め力:50t、冷却時間:8秒、成形サイクル:10秒。
[実施例2]
Niスタンパの内径を17.00mm、スタンパホルダのフランジの外径をφ17.10mmにした以外は実施例1と同様にして成形基板を作製した。
[比較例]
スタンパホルダのフランジの外径をφ17.70mmにした以外は実施例1と同様にして成形基板を作製した。
以上のようにして作製される成形基板の仕様は以下の通りである。材質:COP(ZEONOR−1060R)、外径58mm、内径12mm、厚さ0.6mm。また、実施例1、2および比較例のいずれでも成形基板表面の内周部に、深さ10μmの凹部をなす段差がある。成形基板の裏面は平坦である。
実施例1、2および比較例の方法で各々100枚ずつ成形基板を作製し、得られた成形基板の凹凸パターン面をOSAで観察した。図9(a)および(b)に成形基板の観察結果を示す。成形基板31の表面には、トラック領域32とサーボエリア33が周方向に沿って交互に形成されている。
図9(a)は内周までパターンが転写されたことが確認でき、凹凸パターンを全面にわたって転写できた成形基板31を示す。図9(b)は内周部にフローマークの影響による未転写領域31dが生じた成形基板31を示す。それぞれの例において、未転写領域31dが生じた成形基板31の数を調べ、未転写領域31dの最大外径を測定した。その結果を以下に示す。
実施例1では、全面転写された成形基板が95枚、未転写領域を有する成形基板が5枚であり、未転写領域の最大外径は18.9mmであった。
実施例2では、全面転写された成形基板が全数であった。
比較例1では、全面転写された成形基板が72枚、未転写領域を有する成形基板が28枚であり、未転写領域の最大外径は20.8mmであった。
これらの結果から、未転写領域がない成形基板を良品率90%以上で効率よく作製するには、スタンパホルダのフランジの外径を17.6mm以下とし、Niスタンパの記録エリアの凹凸パターンの最内周位置からスタンパホルダの外周までの距離を0.5mm以上にすることが好ましいことがわかる。
全面転写された成形基板をインプリントスタンパとして用い、DTR媒体を製造する方法を説明する。
媒体基板上に厚さ15nmの磁性膜を形成し、その上に厚さ50μmのUV硬化レジストをスピンコートする。媒体基板上のレジストに対して成形基板のパターン面を対向させて押し付ける。成形基板を剥離すると、レジストの記録エリア表面に成形基板から転写された凹凸パターンが形成される。形成された凹凸パターンの高さは50nmである。酸素RIEによりレジストを20nmエッチングして、レジストの凹部に残存しているレジスト残渣を除去し、磁性膜の表面を露出させる。この結果、凹凸パターンの高さは40nmになる。Arイオンミリングによりレジストの凹部に露出した磁性膜を10nm除去して磁性パターンを得る。磁性パターンの表面にDLCを5nm成膜した後、潤滑剤を塗布し、DTR媒体を得る。
以上のように、本発明のスタンパホルダおよび金型装置を用いて作製された成形基板をインプリントスタンパとして用いることにより、媒体基板表面に塗布したレジストの全面にパターン転写が可能となり、全面で記録再生可能なDTR媒体およびこれを搭載した磁気記録装置を製造することができる。したがって、1枚10秒程度の速度でインプリントスタンパ(成形基板)を作製できるという射出成形の利点を生かして、DTR媒体および磁気記録装置の生産効率を向上することができる。
本発明に係るスタンパホルダを含む成形金型を用い射出成形により成形基板を製造する方法を説明する断面図。 本発明に係るフランジを有するスタンパホルダでNiスタンパを保持した状態を示す断面図。 テーパーを有するスタンパホルダでNiスタンパを保持した状態を示す断面図。 打ち抜き刃でNiスタンパの中心孔を打ち抜き加工する工程を示す断面図。 テーパーを有するスタンパホルダでNiスタンパを保持する場合の問題点を示す断面図。 内周部に凸部をなす段差が形成された成形基板を用いてDTR媒体のインプリント工程を行う場合の問題点を示す断面図。 未転写部が形成された成形基板の平面図および断面図。 本発明に係る成形基板をインプリントスタンパとして用いる磁気記録媒体(DTR媒体)の製造方法を説明する断面図。 凹凸パターンを全面にわたって転写できた成形基板、および内周部に未転写領域が生じた成形基板を示す平面図。
符号の説明
11…固定金型、12…スタンパホルダ、12a…フランジ、13…スプルーブッシュ、15…可動金型、16…キャビティーリング、17…カットパンチ、21…Niスタンパ、21a…凹凸パターン、31…成形基板、31a…凹凸パターン、31b…凹部をなす段差、32…トラック領域、33…サーボエリア、51…媒体基板、52…磁性膜、53…レジスト。

Claims (1)

  1. 内径17.5mm以下の中心孔を有し表面に記録媒体用の凹凸パターンが形成された円盤状の金属製スタンパが固定される、中心孔を有する第1の金型と、
    金属製スタンパを前記第1の金型上に固定した状態で保持するためのスタンパホルダであって、前記第1の金型の中心孔に挿入される様、円筒状の形状をなし、一端部にスタンパ表面の中心孔近傍の内周部を保持するフランジが設けられ、前記フランジの外径が17.6mm以下であるスタンパホルダと、
    前記スタンパホルダ内に配置されるスプルーブッシュと、
    金属製スタンパが固定された前記第1の金型に対向して配置され、溶融樹脂が充填されるキャビティーを形成する第2の金型と
    を有し、前記スタンパホルダのフランジの外周は、前記金属製スタンパに形成された凹凸パターンの最内周位置から0.5mm以上離れて配置され、前記スタンパホルダのフランジは、成形される記録媒体用成形基板の内周部に、その厚みに相当する凹部をなす段差を生じさせることを特徴とする金型装置。
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