JP4486249B2 - ブレード用高性能翼型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタの上方に設けられ、回転により発生する揚力Lによって、ヘリコプタを空中に浮揚させるとともに、前進飛行に必要な推進力を発生させるロータブレード、若しくは航空機に推進力を発生させるプロペラ等に適用されるブレード用高性能翼型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のヘリコプタのロータブレード等に適用されるブレード用高性能翼型(以下単に翼型という)としては、米国航空評議委員会(National Advisory Comittee for Aeronautics:NACA)により開発された、数式2で算出される翼弦方向の翼厚方向座標にされた、図4に示すNACA00XX系の翼型01が用いられている。
【0003】
【数2】
【0004】
但し、数2において、yは翼厚方向座標、xは翼弦方向座標、cは翼弦長、tは各翼弦方向が最大となる翼厚と翼弦長cとの比である翼厚比(%)をそれぞれ示している。
なお、数式2における翼厚比tの分母0.2は、単なる係数で特別の意味を有するものではない。
【0005】
また、NACAにより開発されたヘリコプタのロータブレードに適用される翼型としては、各翼弦方向位置x/cにおける翼型座標が、表4に示す数値にされて形成された翼型NACA23012等のNACA230XX系の翼型も用いられている。
【0006】
なお、これらの翼型01等の翼型系統を示す符号の数値のうち最後の二桁XXは、当該翼型の翼弦長方向の翼型の最大翼厚と翼弦長cの比である、前述した翼厚比tを%で示すものである。
【0007】
これらの翼型01のうち、NACA00XX系の翼型01は、図4に示すように、翼型01の上面および下面の形状が、前縁04と後縁05とを直線で結ぶ翼弦線CLに対して対称に配置された、いわゆる、対称翼型と称する翼型にされている。
また、翼型のうち、NACA230XX系の翼型の図示は省略しているが、NACA23012の翼型座標である表4から分かるように、翼弦方向位置x/cの15%付近が最大値になるようにされ、上方へわずかな凸形を形成させるようにしたキャンバを設けるようにした翼型にされている。
このため、図5に示されるNACA00XX系の翼型01に作用する大気による空気力で示すように、前縁04から翼弦長cの1/4の点である、いわゆる、空力中心CP回りの回転力を示すピッチングモーメントMを無次元化したピッチングモーメント係数Cm は、表5に示す従来の翼型データで示されるように、NACA00XX系、NACA230XX系の翼型01の双方ともに、対気速度Vの大きさに拘わらず、略零に近い非常に小さいものになる。
【0008】
従って、このような翼型01等の従来の翼型で形成されたヘリコプタ07のブレード06においては、前進飛行中のヘリコプタ07に固有の、後述するブレード06の迎角α(ピッチ角)の制御を行う頻繁に行うためのピッチ角制御装置にかかる構造的荷重を小さくすることができる利点がある。
すなわち、ヘリコプタ07に使用されるブレード06においては、各対気速度Vにおける揚力係数Cl =0のときのピッチングモーメント係数Cm は、0.01以下にするというのが一般的になっている。
【0009】
このために、その後、各ヘリコプタメーカから提案されている翼型、例えば、後述する図3に示す、より先進翼型である第3世代の翼型のVR系、又は第2世代型の翼型であるOA系、DKR系又はSC系等の翼型は、これらNACAの開発した翼型を基に開発されたものと同様に、ピッチングモーメント係数Cm の小さい翼型にされて、使用されているのが現状である。
すなわち、ブレード06用として使用される殆んどの翼型01は、ピッチングモーメントMを小さくするため、比較的、対称翼型に近い形状にされるのが通例となっている。
【0010】
一方、近年になって、ヘリコプタ07は、最大離陸重量の増加、いわゆる、ペイロードの増大化、飛行速度の高速化等が進められ、性能向上を図ることが緊急の課題となっている。
【0011】
次に、このようなヘリコプタ07のロータブレードとして使用されているブレード06の作動および制御について説明する。
図6は、このようなヘリコプタ07の前進飛行時のブレード06の作動環境を示す平面図である。
【0012】
図に示すように、ブレード06は、通常平面視において反時計まわりに回転させるようにしており、このため、ヘリコプタ07進行方向右側を回転するブレード06では、ブレード06の回転速度Rに伴う前進速度成分に、飛行時のヘリコプタ07の前進速度Fが加わったものが対気速度Vとなるため、翼型01は大きな対気速度Vにさらされることになる。
逆に、進行方向左側を回転するブレード06は、ブレード06回転速度Rの後進速度成分から前進速度Fが減らされた速度が対気速度Vになるため、翼型01は遅い対気速度Vで移動することになる。
【0013】
従って、このような翼型01において、左右のブレード06の迎角αを、例えば、同一にしておくと、対気速度Vの大小に対応して発生する揚力Lの差異に伴うアンバランスが生じ、ヘリコプタ07の水平姿勢保持が困難になる。
このような、揚力Lのアンバランスを打消し、ヘリコプタ07の水平姿勢を維持するためには、ヘリコプタ07の進行方向右側で回転するブレード06の揚力Lを小さくするため、図6(b)に示すように、右側で回転するブレード06では迎角αを小さくし、しかも、前進速度F方向と直交する位置を回転するときのブレード06では、対気速度Vは最も大きくなるために、この位置で迎角αが最も小さくなるように、ブレード06の回転角に対応して、迎角αを変える必要がある。
【0014】
さらに、左側で回転し、対気速度Vが小さくなるブレード06の揚力Lを大きくするため、図6(c)に示すように、左側で回転するブレード06では迎角αを大きくし、しかも、飛行方向と直交する位置を回転するブレード06では、対気速度Vが最も小さくなるために、迎角αが最も大きくなるように回転角に対応して迎角αを変える必要がある。
この様に、ブレード06の1回転中における、ブレード06の迎角αをブレード06の回転位置に応じてサイクリックに変化させるピッチ角制御が必要となり、ピッチ角制御装置の設置が必須のものとなる。
【0015】
また、ブレード06はスパン方向の長さが5〜6mにもなり、5Hzで回転するブレード06の回転方向各位置での迎角αをサイクリックに、しかも、スパン方向に一様に変化させるピッチ角制御装置は、図6に示すヘリコプタ07の機体中心付近の機体上方に設けるようにしているために、ヘリコプタ07のロータブレードに採用されるブレード06の翼型01には、前述したように、ブレード06のピッチ角制御装置にかかる構造的荷重をできるだけ小さくするために、ピッチングモーメントMを小さくすることが重要になる。
【0016】
また、近年ヘリコプタ07に要求されているペイロードの増大又は前進飛行性能向上のためには、翼型01には、次の性能の実現が要求されることになる。
【0017】
(1)高速飛行時の急激な抵抗D増加をおさえるための高抵抗発散マッハ数の実現。
すなわち、大気中を移動する飛行体(翼型01)の対気速度Vが音速に近づくと、翼型01の表面では衝撃波が発生し、急激に抵抗Dが増大し、その対気速度V以上に増速することができなくなる。
この抵抗Dが急激に増大する対気速度Vと音速との比であるマッハ数Mを抵抗発散マッハ数Mddといい、横軸にマッハ数Mを、縦軸に抵抗Dを無次元化した抵抗係数Cd を取った際、その曲線の傾きdCd/dMが、0.1となるときのマッハ数Mで定義される抵抗発散マッハ数Mddの発生を、できるだけ大きなマッハ数Mで発生させるようにした、高抵抗発散マッハ数を実現することが、ヘリコプタ07を高速で飛行させる、前進飛行性能を向上させるために要求されることになる。
【0018】
(2)対気速度Vが低減する、前述したヘリコプタ07の左側を回転するブレード06等のように、対気速度Vが低減するにも拘わらず、大揚力を発生させるための高揚力装置の実現。
【0019】
すなわち、ヘリコプタ06の前進飛行時における水平バランスを維持するために、前述したように、ピッチ角制御装置により、対気速度Vが増大するヘリコプタ07の右側を回転するブレード06の迎角αに比較して、対気速度Vが低減するヘリコプタ07の左側を回転するブレード06の迎角αを大きくして、ヘリコプタ07の左、右側のブレード06に発生する揚力Lが均等になるように制御しているが、ペイロードの増加又は飛行速度の増加によっては、左側のブレード06の迎角αを、より大きな迎角αにしなければ、水平飛行が維持できなくなることがある。
【0020】
このために、迎角αの大きさに対するヘリコプタブレード06で発生する揚力Lの大きさ、いわゆる、揚力Lを無次元した揚力係数Cl の迎角αの変化に対する変化である、揚力傾斜の大きさを大きなものにするとともに、迎角αの増加に伴い増加する揚力Lが最大値になった後急激に低減する迎角α、いわゆる、失速角をより大きなものにするようにして、翼型01の最大揚力係数Cl max を大きくするための高揚力装置の実現が、前進飛行性能の向上、およびペイロードの向上のためには、要求されることになる。
【0021】
さらには、空中のほぼ一定の位置で飛行する、ヘリコプタ06固有のホバリング時、すなわち、揚力係数Cl が0.6で評定されるホバリング時の抵抗係数Cd を減少させて、ホバリング時の必要馬力を減少させ、ホバリング性能を向上させるため、翼型01には、次の性能の実現も要求される。
【0022】
(3)揚力係数Cl が0.6で評定されるホバリング時の揚力係数Cl と抵抗係数Cd との比である揚抗比Cl /Cd の増大の実現。
等が求められている。
【0023】
しかしながら、これらの要求に対し、従来の翼型01では、前述したように、対称翼型に近い形状にされているため、表5の翼型データに示すように、ピッチングモーメントMを無次元化したピッチングモーメント係数Cm は、小さくできるものの、最大揚力係数Cl max は比較的小さく、大揚力を発生させることは困難であり、また、抵抗発散マッハ数Mdd及び揚抗比Cl /Cd も比較的小さくなり、前述したように、最大離陸重量の増加、飛行速度の高速化、およびホバリング時の必要馬力の低下が求められている、近年の性能を向上させる必要のあるヘリコプタ07のブレード06への適用には問題があった。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明のヘリコプタブレード用翼型は、従来のブレード用翼型に比べ、従来と同様に、ピッチングモーメント係数を小さく保つと同時に、高抵抗発散マッハ数、高最大揚力係数、及び高揚抗比を実現できる翼型にして、近年になって、急速に進められているヘリコプタ離陸時の最大離陸重量の増加、前進飛行時の飛行速度の高速化にも対応でき、さらには、ホバリング時における必要馬力を低下させることができ、ホバリング性能をも向上させることのできるブレード用翼型を提供することを課題とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
このため、第1番目の本発明のブレード用高性能翼型は、次の手段とした。
【0026】
(1)翼型の各スパン方向の翼弦方向各位置での翼厚さが前述した数式1で表わされ、数1で使用される係数a0 ,a1 ,a2 ,a3 ,a4 ,a5 およびa6 が、表1に記載された数値の±3%の範囲の数値を使用して算出される形状の翼型にされるものとした。
すなわち、本発明のブレード用高性能翼型は、失速を遅らせ高最大揚力を発生させるため、図1の太線のA部に示すように、従来の翼型に比較して大きな前縁半径を有し、さらに、高最大揚力を発生させるため、図4の翼型を示す図1における細線で示す従来の対称翼型に近い形状から、図1の太線で示す大きなキャンバを有し、非対称性が強くなる非対称翼型のものとした。
【0027】
また、飛行時の抵抗増加を押さえるため、さらには、高速飛行を可能にする高抵抗発散マッハ数を実現するため、翼型の上面および下面における中央部のB部およびC部を、従来の翼型の中央部の円弧面から、平らな形状に近い形状になるものにした。
また、ブレード用翼型、特に、ヘリコプタのロータブレードとして使用されるブレード用翼型では重要であり、従来からほぼ零近くにされていたピッチングモーメント係数を、従来と同様の大きさにおさえるため、翼型の後縁近傍の形状を、D部で示すように下に凸の形状となる、いわゆる逆キャンバ性の強い翼型になるものにした。
【0028】
(a)これにより、本発明のブレード用翼型では、大きな前縁半径を設けた翼型とすることにより、翼前縁部での急激な圧力や速度の変化をおさえて、翼前縁部Aで発生する剥離をおくらせ、できるだけ翼面の後流側で起させるようにすることにより、剥離の発生に伴い生じる失速が、より高迎角で起るように遅らせて、高最大揚力になる大きな揚力を発生できるものにすることができるようになる。
【0029】
また、大きなキャンバを設けるようにして、強い非対称性の翼型にしたことにより、同一の迎角において、対称翼型に近い従来の翼型に比べ、高揚力を発生させることができるようになる高揚力傾斜のものにし、しかも、高迎角まで失速を起さないようにし、表3に示すように、最大揚力係数Cl max が1.32になる、高最大揚力のものにすることができるようになる。
【0030】
また、このキャンバを大きくすることにより、翼型の厚みを薄くしても高揚力を発生させることができ、さらには、翼型の厚みを従来の翼型に比べ薄くすることにより、揚力係数Cl =0.6で評定されるホバリング時の翼型の抵抗を、より小さい0.0097程度にまで小さくすることができ、これにより揚抗比が61.9になる高揚抗比を実現させることができ、ホバリング時に必要とする動力を小さくすることができる。
さらに、翼型の厚みを従来の翼型に比べて薄くすることは、翼型の上面のB部及び下面のC部を平らにすることとあいまって、飛行時の抵抗増大をおさえることができ、特に、衝撃波の発生を、対気速度がより音速に近くなるまでおさえ、抵抗発散マッハ数を0.86程度にまで向上させることができ、より音速に近い対気速度によるブレードの回転による高速飛行ができるようになる、高抵抗発散マッハ数を実現できる翼型とすることができる。
【0031】
また、翼型後縁近傍を、下に凸の形状をつくったD部で示すようにすることにより、翼型の前方とは逆方向のキャンバを設けたことにより、翼型後縁近傍では、迎角0°付近においては、下向きの揚力が発生し、しかも、この揚力発生個所が空力中心CPから離れ、モーメントアームを大きくする位置であるために、迎角0°付近において、後縁部をのぞく翼型全体で発生するピッチングモーメントと相殺する逆方向の大きなピッチングモーメントを、翼型後縁近傍に発生させることができ、翼型を対称翼型から大きなキャンバを設けるものにしたものに拘わらず、翼型全体のピッチングモーメント係数を0.01以下のものにでき、従来使用されているブレードと同様に小さいものにすることができる。
【0032】
従って、本発明は、表5に示す従来の翼型データに比較して、表3に示すように、従来の翼型と同様にピッチングモーメント係数Cn を小さくして、ピッチ角制御装置にかかる構造的荷重を小さくすることができるとともに、抵抗係数Cd を小さくでき、従来同様のエンジンで飛行速度を向上させることができる。
また、揚抗比Cl /Cd を大幅に大きくでき、ホバリング時のエンジンに必要な馬力を大幅に小さくすることができる。
【0033】
さらには、抵抗発散マッハ数Mddを高くでき、音速により近い高マッハ数になるまで、急激な抵抗増大を抑えることができ、特に、ブレードの対気速度を音速近傍まで高めることができ、高速で飛行できる高速性能に秀れたヘリコプタとすることができる。
また、本発明は前縁半径を大きくし、大きなキャンバを有する翼型にすることによりピッチングモーメント係数を大きくすることなく、また翼厚を大きくすることなく揚力係数を大きくでき、しかも失速角がより大きくなることから高揚力を発生させることができ、搭載重量の大きいヘリコプタとすることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のブレード用翼型の実施の一形態を図面にもとづき説明する。
図2は、本発明のブレード用翼型の実施の第1形態を示す図で、表1に示す係数を使い、前述した数式1によって算出した翼型1で、この翼型01を実質的に規定する翼型座標は、表2に示す数値の±3%以内のものとなっている。
この図2で示す実施の第1形態の翼型1では、ヘリコプタ07のブレード06の80%スパン位置よりも付け根側で用いられて好適な翼型1にするために、翼厚比tは、9%と大きくしている。
【0035】
前述したように、ブレード06が進行方向と反対の方向に回るときブレード06からみた対気速度Vは、回転速度Rの後進速度成分から、ヘリコプタ07の前進速度Fを差し引いたものとなり、低速域となり、進行方向に回り対気速度Vの大きくなるブレード06とのバランスを保つためには、迎角αを大きくとることになるが、ブレード06の内側ではさらに速度が小さくなるため、大きな迎角αでも失速することなく、大きな揚力Lが得られるように最大揚力係数Cl max を大きなものにしなければならない。
【0036】
このため、図に示すように、本実施の形態のブレード用翼型は、失速が高迎角になるまで生じないように遅らせ、高最大揚力を発生させるため、図1における従来の翼型01との比較からも明らかなように、A部で示す前縁部は、大きな前縁半径のものにし、さらに、高最大揚力を発生させるため、従来の対称翼型に近い形状から、翼弦方向の各ステーションX/Cでの翼厚の中央を結んだキャンバラインが、前縁4と後縁5とを直線で結ぶ翼弦線CLより、大きく上方にずれたものになる、大きなキャンバを持ち、大きな非対称性の非対称翼型になるものにした。
【0037】
また、高速飛行時の抵抗D増加を押さえるための、高抵抗発散マッハ数を実現するため、翼型1の上面および下面における中央部のB部およびC部における形状を、小さい曲率にされた従来の翼型の中央部の円弧面より大きい曲率半径、換言すれば、平らな形状に近い形状になるものにした。
また、ピッチングモーメント係数Cm を、従来の翼型01同様の大きさにおさえるため、後縁5近傍の形状をD部で示すように下に凸の形状となる逆キャンバ形状のものにするとともに、後縁5は製造上の理由から図2(b)に示すように鉛直に切断した形状のものにした。
【0038】
これにより、本実施の形態のブレード用翼型では、大きな前縁半径を設けた翼型1としたことにより、翼前縁部Aでの急激な圧力や速度の変化をおさえられるので、翼前縁部Aに沿って流れる大気の流れFが、より後流側まで翼面に沿って流れるようになり、剥離ができるだけ翼面の後流側で起させることができ、剥離の発生に伴う失速を遅らせて、高最大揚力が得られるものにすることができるようになる。
【0039】
また、後縁5を除く翼型1の翼弦方向の殆んどの部分に、上方に向けて凸になる大きなキャンバを設けるようにして、非対称性の強い翼型1にしたことにより、同一の迎角αにおいて、対称翼型に比較して高揚力を発生させることができ、さらには、迎角αの変化に対して揚力係数Cl が大きく変化する、高揚力傾斜の大きいものにすることができ、高最大揚力係数を実現できるものにできるようになる。
【0040】
また、このキャンバの大きさを大きくしたことにより、翼型1の厚みを薄くしても高揚力を発生させることができ、前述したように、高最大揚力係数のものにでき、さらに、翼型1の厚みを従来の翼型1に比べ薄くしたことにより、抵抗Dを小さくすることができる。
これにより、高揚抗比を実現させることができるとともに、飛行時の抵抗D増大をおさえ、さらには、急激に抵抗が増大する抵抗発散マッハ数Mddがより音速に近くなる、高抵抗発散マッハ数の翼型01を実現することができる。
【0041】
なお、本実施の形態の翼型1のように付け根側で用いられる、いわゆる内翼の揚抗比は、マッハ数M=0.5で評定されることになっているが、表5に示す実施の形態翼型データの抵抗係数Cd および揚抗比Cl /Cd は、M=0.6のデータを示している。
【0042】
また、翼型1の上面のB部及び下面のC部を平らにすることによって、高速時の衝撃波の発生を、音速に近いマッハ数近傍までおさえることができ、翼型1を薄くすることと相まって、高速飛行時の抵抗Dをより小さくすることができ、さらには、高抵抗発散マッハ数を実現でき、音速に近いマッハ数Mまでブレード06の対気速度Vを高めることが可能になる。
【0043】
また、翼型1の後縁近傍では、翼型1の他の部分と異り、キャンバラインが翼弦線CLより大きく下方にずれた、下に凸の形状をつくったD部で示す形状の逆キャンバを設けたことにより、翼型後縁近傍では、迎角0°付近において、下向きの揚力Lが発生し、しかも、下向きの揚力Lが発生する位置が、圧力中心CP(X/C=0.25)より離れた位置であるため、迎角0°付近において後縁05部をのぞく翼型全体で発生するピッチングモーメントMと相殺する逆方向のピッチングモーメントMを発生させることができ、翼型1を対称翼型から大きなキャンバを設けた非対称翼にしたにも拘わらず、翼型1全体のピッチングモーメント係数Cm を、従来の対称翼と同様に小さいものにすることができる。
【0044】
さらに、後縁5を鉛直面を形状するように切断した形状にしたので、FRPで形成される上面2と下面3との合せ面の形状の成形が容易になる。
【0045】
すなわち、本実施の形態のブレード用翼型では、表3に示すように、表5に示す従来の翼型01に比較して、最大揚力係数Cl max を大きなものにでき、また、ホバリング時の揚力係数Cl が0.6になるときの抵抗係数Cd を小さくでき、揚抗比Cl /Cd を大幅に大きくできる。
さらに、抵抗発散マッハ数Mddも、従来の翼型01に比較して小さくすることができる。
【0046】
なお、表5におけるNACA0006のMdd=1.38に比較して、本実施の形態のMddは、1.32と小さなものになっているが、これは翼厚比tが前者では6%であるのに対して、表5に示すものは9%のデータを示しているためで、同じ翼厚比tのもので比較すれば、より高抵抗発散マッハ数にできることは、NACA0012およびNACA23012のデータとの比較から容易に推定できるものである。
【0047】
また、ブレード用高性能翼型のうち、内翼型に使用されるものでは、このような性能を、ピッチングモーメント係数Cm を大きくすることなく向上させることが必要であり、内翼側に使用される翼型としては、0.03以下のピッチングモーメント係数というのが一般的な値となっており、本実施の形態の翼型では、何れのマッハ数Mでも満足するものとなっている。
【0048】
さらに、図3は、本実施の形態の翼型1の最大揚力係数Cl max と抵抗発散マッハ数Mddの値をNACA00XX系を含む、従来のヘリコプタブレード用翼型の他の翼型と比較したものを示すものであるが、この図においては、図の右上に来るほど高性能であることを示すが、本実施の形態のヘリコプタブレード用高性能翼型では、従来のものに比較して、より秀れていることがこの図からもわかる。
【0049】
特に、本実施の形態の翼型1と同様に秀れた空力特性を示すものとして、図に示すVR−12等があるが、これらの翼型は翼厚比tが10.6%にされており、これに対して、本実施の形態の翼型1では翼厚比を9%にして、同等の空力特性を有し、しかも翼厚比tの減少に伴う抵抗係数を減少させることができ、より秀れた翼型1とすることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のブレード用翼型においては、翼型の各翼弦方向位置での上面側および下面側の翼厚さが数1で表わされ、前記数1中の係数a0 ,a1 ,a2 ,a3 ,a4 ,a5 およびa6 が、表1に示す数値の±3%の範囲の数値にされているものとした。
【0051】
これにより、本発明に係るブレード用翼型は、大きな前縁半径、後縁形状を除き大きなキャンバ、平らな上・下面および下に凸の後縁形状を有するものとなり、高最大揚力、高抵抗発散マッハ数、高揚抗比及び低ピッチングモーメントのものにすることができ、ヘリコプタブレードの外翼側の使用に好適なものとすることができる。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブレード用高性能翼型と従来のブレード用翼型との比較を示す翼型断面図、
【図2】本発明のブレード用高性能翼型の実施の第1形態を示す翼型断面図、図2(a)は全断面図、図2(b)は図2(a)に示すE部の詳細断面図、
【図3】従来のブレード用翼型および本実施の形態の翼型の最大揚力係数と抵抗発散マッハ数の関係を示す図、
【図4】従来のブレード用翼型のうち、NACA00XX系の翼型断面図、
【図5】ブレード用翼型に働く空気力を示す図、
【図6】ヘリコプタの前進飛行時のブレードの作動を示す図である。
【符号の説明】
01 翼型
02 上面
03 下面
04 前縁
05 後縁
06 ブレード
07 ヘリコプタ
1 翼型(実施の第1形態)
2 翼型(実施の第2形態)
a0 ,a1 ,a2 ,a3 ,a4 ,a5 ,a6 係数
y 翼厚方向座標
x 翼弦方向座標
C 翼弦長
CL 翼弦線
t 翼厚比
Cl 揚力係数
Cl max 最大揚力係数
Cd 抵抗係数
Cm ピッチングモーメント係数
Cp 空力中心
F 前進速度
R 回転速度
V 対気速度
α 迎角
M マッハ数
Mdd 抵抗発散マッハ数
L 揚力
D 抗力(抵抗)
M ピッチングモーメント
ρ 空気密度
A 大気の流れ方向
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