JP4485076B2 - ドクターブレードの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、刃先部分がめっき処理されたドクターブレードの製造方法に関する。さらに詳しく言えば、刃先部分のめっき幅が一定で、インキ切れ性に優れたドクターブレードの製造方法及びその方法で得られるドクターブレードに関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
グラビア印刷においては、版胴の円周面に鋼製のドクターブレードを一定の圧力で押圧しておいて、版胴の非画像部に付着しているインキを掻き落として除去している。このドクターブレードは、非画像部のインキを完全に除去するとともに、画像部に所定量のインキを残す機能を有するものであるから、版胴とドクターブレードとの接触は常に一定の状態に維持されなければならず、その先端部には耐磨耗性が要求され、一般には、ブレードにめっきを施したドクターブレードが利用されている。
【0003】
このドクターブレードのめっき皮膜は、インクを掻き取る版胴と接触する刃先のみに施すことで十分であり、コスト的にも有利なことから刃先のみにめっきを施すドクターブレードが検討されている。
【0004】
例えば、特開平4-70343号に提案されている、ゴム製のスペーサーを用いる方法によれば、スペーサーとブレードが接触している部分にはめっきがつかず、刃先近辺にのみめっきを行うことが可能である。
【0005】
しかし、ゴム製のスペーサーを用いる場合には、スペーサーとブレード基材を巻くときの巻圧のバラツキによって様々な問題が生じる。例えば、巻圧がゆるい場合スペーサーがずれる恐れがあり、またスペーサーとブレ−ドの隙間よりめっき液が侵入する。また、逆に巻圧が強いと、ゴム製スペーサーがつぶれて所定の幅よりめっき幅が狭くなるだけでなく、ゴム製スペーサーの劣化が促進されスペーサーを頻繁に交換する必要があり、コストアップにつながっていた。
【0006】
このように、ドクターブレードの刃先先端部で(刃先先端から1.5〜7mmのめっき幅で)安定してめっきを行うことは困難なことから、従来技術ではめっき幅のバラツキの問題を回避するため、刃先部分のめっき幅を広くとり、刃先端から7mmを超える幅でめっきを行っているが、ブレード基材の幅方向に均一にめっき液を送り込むことが難しく、そのためめっき皮膜の硬さが不均一となり、インキの切れ性が悪くなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の課題は、ドクターブレードの刃先先端部に安定しためっきを施し、インキ切れ性のよいドクターブレードを効率よく得ることのできる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ドクターブレードの刃先を含む所定幅以外の部分を特定の樹脂からなる塗料でマスキングすることにより前記課題を解決して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
1.ドクターブレード用スチール基材の刃先部以外の部分にアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる塗料を、乾燥時の膜厚で5〜200μmになるように塗布し、100℃から350℃の温度で乾燥させてマスキング樹脂の皮膜を形成した後、マスキングをされていない刃先部分に1〜40μmの厚みのめっきを施すことを特徴とする刃先部にめっきが施されたドクターブレードの製造方法。
2.めっきが、ニッケル系及び/またはクロム系の無電解めっきあるいは電気めっきである前記1に記載のドクターブレードの製造方法。
3.めっきが、ニッケル系めっき中に炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化チタン及び窒化チタンから選択される1種以上のセラミック微粒子が分散したセラミック分散複合めっきである前記1に記載のドクターブレードの製造方法。
4.めっきが、ブレード基材の刃先先端からブレード幅方向に7mmまでの範囲に施されている前記1乃至3に記載のドクターブレードの製造方法。
5.マスキング皮膜樹脂のガラス転移温度が5〜130℃である前記1乃至4に記載のドクターブレードの製造方法。
6.前記1乃至5のいずれかに記載の方法で得られたドクターブレードのマスキング樹脂皮膜を剥離液により剥離した後、さらに、0.05〜5μmの膜厚でニッケル系及び/またはクロム系の無電解めっきあるいは電気めっきを施すことを特徴とするドクターブレードの製造方法。
7.前記1乃至6に記載の方法によって得られるドクターブレード。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のドクターブレードの製造方法を、(i)塗装によるマスキング樹脂皮膜形成工程、(ii)刃先部分のめっき処理工程、及び所望により採用される(iii)マスキング樹脂皮膜の剥離工程、 (iv)防錆処理工程、及び(v)焼付け処理工程に分けて説明する。
【0011】
(i)塗装によるマスキング樹脂皮膜形成工程
本発明に使用されるドクターブレードスチール基材は、印刷用、塗装用に使用される鋼製基材であればよく、刃の形状は片刃、両刃、平行刃、傾斜刃等いずれについても適用可能である。ブレード基材の代表例は、厚さが0.15〜0.60mm、幅が40〜60mm程度の帯状鋼板(鋼帯)からなる。
本発明のドクターブレードのマスキングに使用される塗料は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる。これ以外の樹脂からなる塗料では、コスト高となるか、耐アルカリ性もしくは耐酸性に劣るため、めっき時に樹脂皮膜が劣化し、劣化した部分よりめっき液等が侵入し、ブレード基材のエッチング、汚れ、不要なめっきの生成等(以下、マスキング性)の問題が生じ本発明には適さない。特にめっき形成後、マスキング樹脂皮膜を剥離して、研磨処理、焼付け処理、防錆処理等の後処理を行う場合は、剥離が容易なアクリル樹脂系塗料がもっとも好ましい。
【0012】
マスキング皮膜樹脂のガラス転移温度(Tg)は5〜130℃の範囲が適当である。5℃未満では、樹脂皮膜の付着性が劣化するのみでなく、例えば無電解めっき処理のような高温薬液(約90℃)中での処理の場合、めっき中に樹脂皮膜が軟化、剥離するためマスキング性が劣化する。一方、130℃を超えると皮膜の加工性が劣化し、例えば、皮膜形成後のブレードを特開平4-70403に示される方法によりスペーサーと共に巻き取りめっきを行う場合、巻き取り及び巻き戻し時に加わる応力により皮膜が損傷、剥離するため好ましくない。好ましいマスキング皮膜樹脂のガラス転移温度は50〜120℃であり、さらに好ましい温度は70〜110℃である。
【0013】
ガラス転移温度(Tg)は、種々の方法で測定できる。本発明のマスキング皮膜樹脂のTgは、例えばDSC(示差走査熱量計)、TMA(熱機械分析)、熱膨張等により測定可能である。但し、本発明で利用するマスキング皮膜樹脂のTgの測定方法には特別な制約はなく、ガラス転移温度(Tg)において樹脂の物理的特性が大幅に変わることを利用した方法でTgを確認することも可能である。また、ガラス転移温度(Tg)は樹脂の組成からも算出可能であり、マスキング皮膜樹脂のTgが測定困難な場合には、組成から算出することもできる。
【0014】
本発明では、皮膜樹脂のマスキング効果を劣化させない範囲であれば、塗料中に、着色顔料、防錆顔料、体質顔料、界面活性剤、パール顔料、染料等の成分を含有させ、これら顔料の特徴を備えたマスキング樹脂皮膜とすることができる。
【0015】
前述の樹脂塗料によるマスキング処理を行うにあたっては、塗布の前に皮膜の密着性を向上させるため、溶剤による洗浄、アルカリ系薬液による電解脱脂または浸漬脱脂を行った後、水洗、乾燥を行い、ドクターブレードスチール基材表面の油等の汚れを洗浄することが好ましい。
【0016】
ドクターブレード基材への塗料の塗布は、樹脂皮膜の膜厚が制御可能な方法であればよく、ロールコーター法、はけ塗り等の公知方法で実施可能である。特に連続的に塗布できるロールコーター法が好ましい。
【0017】
塗布後の塗膜は乾燥硬化させ、ブレード基材上にマスキング樹脂皮膜が形成される。乾燥温度は100〜350℃とする。100℃未満では、樹脂皮膜の造膜または硬化が不十分なため、皮膜が耐酸、耐アルカリ性に劣ったものとなり、めっき時に皮膜が破壊されマスキング性に劣る。350℃を超えると、コスト的に不利なだけでなく樹脂皮膜の分解が始まり皮膜欠陥が生じるため好ましくない。好ましい乾燥温度は、200〜300℃である。乾燥に際しては、熱風乾燥炉、誘導加熱炉等公知の乾燥炉が利用できる。
【0018】
マスキング樹脂皮膜の厚みは、乾燥時の膜厚で5〜200μmとする。5μm未満では、ドクターブレード基材の表面の凸部等で局所的に皮膜が薄くなる等の皮膜欠陥が生じやすくなり、そこにめっき液が侵入しマスキング性は劣ったものとなる。また200μmを超えると、コスト的に不利になるばかりか、リールに巻き取る時あるいは巻き戻す時にかかる応力により、皮膜が割れて、めっき液が侵入しマスキング性が劣化するので好ましくない。
マスキング性及びコストの観点から、マスキング樹脂皮膜の厚みは、7〜50μmが望ましく、さらには10〜30μmがより望ましい。
【0019】
マスキング樹脂塗料は、図1に両刃用ドクターブレード基材1の部分平面図を示すように、刃先部分2に耐磨耗性を付与するため、めっきが施されるめっき幅(すなわち、刃先最先端からブレード幅方向で7mmまでの範囲)以外のマスキング樹脂塗布部3に塗布される。めっき幅が7mmを超えるとコスト的に不利になるばかりでなく、スペーサーと共に巻き取られた状態でめっきを行う際に、基材間の内部までめっきを均一に送り込むことが難しく、めっき皮膜の硬さが不均一になりインキの切れ性が悪くなる。コスト及び性能の点からめっき幅は5mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下となるようマスキング樹脂塗料を塗布する。めっき幅の下限値は、刃先の加工長さ(1.0〜3.0mm)が品種によって異なるために、一概に規定できないが、刃先加工部分のみめっきを行えば十分であり、多くても刃先加工部分よりブレード幅方向に0.5mm程度余分(刃先加工長さ+0.5mm)がめっき領域となるようにすれば十分である。
【0020】
(ii)刃先部分のめっき処理工程
刃先部分に施すめっきの種類は特に限定されないが、耐磨耗性の点でニッケル系めっき、クロム系めっきまたはこれらの合金めっきが好ましい。また、耐磨耗性が特に優れていることから、ニッケル系めっき中に炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化チタン及び窒化チタン等のセラミックス微粒子が分散した、セラミック分散複合めっきが特に望ましい。
めっき厚は1〜40μmとする。1μm未満では、耐磨耗性が劣るため好ましくなく、40μmを超えると、その効果が飽和しコスト高となるため好ましくない。特に3〜30μmが望ましい。
【0021】
また、めっき方法は無電解めっき、電気めっきのいずれも可能であるが、めっき厚の均一性の点から無電解めっきが望ましい。また、具体的なめっき方法としては、特開平4-70343に提案されているブレードをスペーサーと共に渦巻状に巻き取った後めっきを行う方法、あるいは特開平10−278222に提案されるているブレードを連続的にめっきする方法等いずれの方法も可能である。
【0022】
渦巻状に巻き取る際に使用されるスペーサーは、ブレード基材をリールに巻いた巻回基材間の隙間にめっき液が流入する間隔を保つ厚みを有し、めっき前処理の洗浄工程の洗浄液(アルカリ液、酸液)、及びめっき液に耐性のある材料が使用される。厚みとしては、0.2〜5.0mm、好ましくは0.4〜1.0mmである。スペーサーの具体的材料としては、例えばポリエステル系、あるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系プラスチック材料が挙げられる。
【0023】
本発明のドクターブレードの製造方法では、必要に応じて、めっき後に刃先を均一に加工する研磨処理及び/またはめっきの密着性及び硬度を向上させる焼き付け処理を行うことができる。
【0024】
(iii)マスキング樹脂皮膜の剥離工程
研磨処理または焼付け処理を行う際には、めっき後それらの処理を行う前に、溶剤及び/または強アルカリ等よりなる剥離液を用いて樹脂皮膜を剥離することが好ましい。剥離を行わないと、研磨処理及び/または焼き付け処理により樹脂皮膜の密着性が劣化し、この樹脂皮膜がグラビア印刷時に剥離し印刷欠陥を生じる恐れがあるからである。剥離液として使用される溶剤としては、例えばジメチルフォルムアミド、ジクロルメタン、アセトン等が挙げられ、強アルカリとしては例えば、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
【0025】
(iv)防錆処理工程
マスキング樹脂皮膜剥離後、刃先部分以外のめっきが施されていない鋼材露出部分については防錆処理を行うことが好ましい。防錆処理は、めっき処理、防錆油塗布等の公知のいずれの方法も適用可能である。
また、この防錆処理はめっきが施されていない部分のみでなく、めっきが施されている部分に行っても何ら支障はない。
【0026】
特に、近年、環境問題から油性タイプに代えて水性タイプのインキの利用が増加している。水性タイプのインキは、水分を含有するため油性タイプに比べて錆びが生じやすい環境にある。そのため、水性のインキ、塗料を対象とするドクターブレードについては、樹脂皮膜剥離後のドクターブレードに、さらに耐食性のあるニッケルめっき、ニッケル−リンめっき、ニッケル−スズ合金めっき等のニッケル系めっき、硬質クロムめっき、マイクロクラッククロムめっき、黒色クロムめっき等のクロム系めっきの少なくとも1種のめっき処理を行い、樹脂皮膜剥離後の鋼露出部に0.01〜5μmのめっき皮膜を形成することが好ましい。この際、すでにめっきが施されている刃先部は結果として2層めっきとなるが、この膜厚範囲であれば本発明にはなんら支障がなく、刃先部の耐磨耗性が一層向上する。
【0027】
(v)焼き付け処理工程
マスキング樹脂剥離後、防錆処理工程前あるいは防錆処理工程後に、さらに250〜400℃の雰囲気中で0.5〜2時間の焼付け処理を行うことが好ましい。この焼付け処理により、めっきの硬度が上昇し耐磨耗性はさらに向上する。
【0028】
さらには、焼付け処理工程、防錆処理工程の前及び/または後に、表面に付着しているめっき中に含まれなかったセラミック微粒子等を完全に除去するため、刃先及び/またはブレードの全面を、バフ研磨及び/または#2000程度のサンドペーパーにより研磨することが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は下記の記載により限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜11及び比較例1:各種塗料によるマスキング効果
板幅50mm、板厚0.15mm、刃先長さ1.4mm、刃先先端厚0.07mm、片側平行刃のドクターブレードスチール基材(鋼帯)をリールから巻き出しながら、苛性ソーダーを主体とし、界面活性剤、消泡剤を含むアルカリ液中で電解脱脂洗浄し、水洗、乾燥した。その後、刃先から3.5mmの一定幅を残して、表1に示すガラス転移温度(Tg)を有する各種樹脂(アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂)からなる塗料を、乾燥時の皮膜厚が15μmとなるようにロールコーターで塗布し、ブレード基材が280℃になるように熱風乾燥炉で焼き付け、基材上にマスキング樹脂皮膜を形成した。樹脂皮膜が形成されたブレード基材を、厚さ0.6mmのポリエステル系プラスチックのスペーサーと共に、このスペーサーが刃先部分と重ならないようにしてリール状に巻き取った。
巻き取った鋼帯をリールごと、50℃のアルカリ脱脂液(パクナRT−T 60g/L)中に15分間浸漬し、水洗後、塩酸酸洗液中で15分間、塩酸活性処理し、さらに水洗した。その後、SiC微粒子を分散させた複合セラミックス無電解ニッケルめっき液(日本カニゼン社製のめっき液,シューマーSC−93−0:20vol%、シューマーSC−93−4:2vol%、水:78vol%)中にリールを浸漬し、リールをゆっくり回転させながら87℃で35〜45分間ニッケルとSiCのセラミック複合めっきを行い、水洗後、乾燥して厚さ7μmのセラめっき被膜を形成した。
基材リールを巻き出し、スペーサーとブレード基材を分割した後、基材上のマスキング樹脂皮膜を剥離液により完全に剥離し、剥離後、300℃で1時間ベーキング処理を行いドクターブレードを作製した。作製したドクターブレードについて、下記の方法によりブレードの性能(マスキング性、めっき幅の均一性、硬度の均一性、耐磨耗性、及び水性インキ耐久性)を評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
マスキング性の評価方法:
非めっき領域にマスキング不良によるめっきの生成、錆び及び汚れが発生していないか、100m全長に渡って目視観察して、以下の基準により評価した。
○:非めっき領域にめっきの生成、錆び、汚れの何れもなし、
×:非めっき領域にめっきの生成、錆び、汚れの何れかが発生。
【0032】
めっき幅均一性の評価方法:
めっき幅の、最大値、最小値を測定し、所定幅からのバラツキから以下の基準により、その安定製造性を評価した。
◎:所定幅からのめっき幅のバラツキが±5%以内、
○+:所定幅からのめっき幅のバラツキが±5〜10%、
○:所定幅からのめっき幅のバラツキが±10〜30%、
△:所定幅からのめっき幅のバラツキが±30〜50%、
×:所定幅からのめっき幅のバラツキが±50%以上。
【0033】
硬度の均一性の評価方法:
10mごとにサンプル10cmを採取し、各サンプルにつき微小硬さ試験方法(JIS Z2251)に従って刃先硬度を各3点ずつ測定し(マイクロビッカース硬度計を使用)硬度の最大値、最小値の差から、以下の基準により評価した。
◎:硬度の最大値、最小値の差が50以下、
○:硬度の最大値、最小値の差が50〜100、
△:硬度の最大値、最小値の差が100〜300、
×:硬度の最大値、最小値の差が300以上。
【0034】
耐磨耗性の評価方法:
油性インキを使用し、印刷機による印刷を行い、刃先が摩滅して印刷物にドクタースジが発生した時点を寿命とし、めっき処理していないスチール品の寿命と比較して以下の基準により評価した。
◎:寿命がスチール品の2倍以上、
○:寿命がスチール品の1.5〜2倍、
×:寿命がスチール品の1.5倍未満。
【0035】
水性インキ耐久性の評価方法:
水性インキを使用して印刷機による印刷を行い、刃先摩滅、錆び発生等によりドクターブレードを交換するまでの間に処理できた印刷物の長さ(m)から以下の基準により評価した。
○:印刷物の長さが1500m以上、
△:印刷物の長さが1000〜1500m、
×:印刷物の長さが1000m以下。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、ウレタン系樹脂からなる塗料の場合(比較例1)、全ての評価項目において性能が劣る。アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びエポキシ系樹脂において、ガラス転移温度(Tg)が5〜130℃の樹脂を用いた場合(実施例2〜8,10〜11)に、性能に優れたドクターブレードを製造できることが分かる。また、Tgが70〜110℃の場合(実施例4〜6,10〜11)に特にブレード性能が優れている。Tgが4℃(実施例1)では、めっき工程において塗膜が軟化し、マスキング性が劣化する。Tgが140℃(実施例9)では、樹脂皮膜の加工性が悪化しリールに巻き取る時に、樹脂皮膜の損傷および剥離が生じるためブレード性能は劣る。
【0038】
実施例12〜17及び比較例2〜3:皮膜の膜厚による効果
アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布して、表2に示す膜厚で樹脂皮膜を形成した以外は、実施例1〜11と同様にしてドクターブレードを製造した。評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から樹脂皮膜の膜厚が5〜200μmの場合(実施例12〜17)に、性能に優れたドクターブレードとなり、膜厚が10〜30μmの場合(実施例14〜15)に、特に性能に優れることが分かる。膜厚が3μm(比較例2)では、マスキングが不完全で、ブレード性能に劣る。膜厚が300μm(比較例3)では、リールに巻く時にマスキング皮膜が割れるためブレード性能が劣る。
【0041】
実施例18〜19及び比較例4:刃先部分のめっき幅による影響
めっき幅を表3に示すめっき幅に変えて、アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布し、刃先部分をめっきした以外は、実施例1〜11と同様にしてドクターブレードを製造した。評価結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、めっき幅が7mm以下の場合(実施例18〜19)、性能の優れたドクターブレードが製造できることが分かる。めっき幅が5mmの場合(実施例18)、特に硬度の均一性及び耐磨耗性に優れている。めっき幅を10mm(比較例4)と広くすると、リールに巻き取った状態で刃先部分をめっきする時に、基材間にめっき液を均一に送り込むことが難しく、セラミック微粒子が均一に分散析出せず、めっき幅が7mmを超えると、硬度の均一性が低下し、インキの切れ性等のブレード性能に劣る。
【0044】
実施例20〜23及び比較例5〜6:塗料の乾燥温度による影響
アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布し、表4に示す温度で乾燥した以外は、実施例1〜11と同様にしてドクターブレードを製造した。評価結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
表4から、乾燥温度が100℃〜350℃の場合(実施例20〜23)に、性能が優れたドクターブレードを製造でき、乾燥温度が200〜300℃の場合(実施例21〜22)、ブレード性能は特に優れていることが分かる。乾燥温度が90℃(比較例5)では、樹脂皮膜の硬化が不十分で、マスキングが不完全となり全ての評価項目において性能は劣る。乾燥温度が400℃(比較例6)では、マスキング樹脂皮膜が分解して欠陥が生じるためにブレード性能は劣る。
【0047】
実施例24〜27及び比較例7:めっき厚の影響
アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布し、複合めっき時の処理時間、処理温度を調節し、表5に示すめっき厚で刃先部分をめっきした以外は、実施例1〜11と同様にしてドクターブレードを製造した。評価結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5からめっき厚が1〜40μmの場合(実施例24〜27)に、性能の優れたドクターブレードが製造できることが分かる。めっき厚が0.5μm(比較例7)では、ドクターブレードの耐磨耗性が劣る。めっき厚が30μm(実施例26)と40μm(実施例27)のドクターブレードにおいては、耐磨耗性は殆ど差がなく、めっき厚が40μm以上では耐磨耗性の効果は飽和している。
【0050】
実施例28及び比較例8:防錆めっき処理による効果
アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布して、実施例1〜11と同様にして、刃先部分にセラめっきを施した。ブレード基材を巻き出し、スペーサーとブレード基材を分割し、基材上のマスキング樹脂皮膜を剥離液により完全に剥離し電解脱脂した。その後、ピロリン酸カリウム250g/L、硫酸ニッケル25g/L、硫酸スズ50g/Lを含む、液温40℃のめっき液中で5A/dm2の電流密度で連続電解めっきを行い、厚さ1.5μmのニッケル−スズ合金めっきを施した。350℃で1時間のベーキング処理を行い防錆ドクターブレードを作製した。評価結果を表6に示す。また、比較のため、実施例5で得た防錆処理されていないドクターブレードについて水性インキ耐久性試験を行った(比較例8)。その結果をも表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
表6より、ドクターブレードを防錆処理した場合(実施例28)、水性インキに使用しても錆を生じず、長期間に亘って印刷に使用できることが分かる。
【0053】
実施例29:クロム系めっき処理ドクターブレード
アクリル系樹脂(Tg=90℃)からなる塗料を塗布して実施例1〜11と同様にマスキング処理したブレード基材をリールに巻き取った後、リールから巻き出しながら電解処理(パナエクレーターJ:50ml/L,NaOH:50g/L)、水洗、電気クロムめっき(めっき液:CrO3:250g/L,H2SO4:2.5 g/L,HEEF25C:20ml/L、浴温50℃、めっき厚:30μm)の一連の工程を連続的に行った。その後、ブレード基材を剥離液に浸漬して基材上のマスキング樹脂皮膜を完全に剥離し、水洗乾燥してドクターブレードを製造し、ブレード性能を評価してマスキング性:○、めっき幅の均一性:◎、硬度の均一性:○、耐磨耗性:◎の結果を得た。
これより刃先部分にクロム系めっきを施した場合もドクターブレードとして実際使用するのに十分な性能を有していることが分かる。
【0054】
比較例9:ゴム製スペーサーを用いて作成したドクターブレード
板幅50mm、板厚0.15mm、刃先長さ1.4mm、刃先先端厚0.07mm、片側平行刃のドクターブレードスチール基材(鋼帯)をリールから巻き出しながら、苛性ソーダーを主体とし、界面活性剤、消泡剤を含むアルカリ液中で電解脱脂洗浄し、刃先から3.5mm幅以外の部分に接触するように厚み2.5mm、幅46.5mmのゴム製スペーサーを挟みながらリールに巻き取った。この状態で実施例1〜11と同様に脱脂、水洗、酸洗、水洗の前処理後、セラミック複合めっきを行い、厚さ7μmのセラめっき被膜を形成した。その後、リールを巻き出し、ゴム製スペーサーとブレードを分割したのち、300℃で1時間ベーキング処理を行い、従来の方法でドクターブレードを製造し、ブレード性能を評価し、マスキング性:×、めっき幅の均一性:×、硬度の均一性:×、耐磨耗性:○の結果を得た。これよりゴム製のスペーサーによってマスキングする従来の方法では、めっき幅を3.5mmに一定に維持できず、めっき幅の均一性が劣り、めっき幅が不均一となるため、セラめっき微粒子が均一に析出せず、硬度の均一性も劣ることが分かる。
【0055】
【発明の効果】
本発明は、ドクターブレード用スチール基材の刃先部以外の部分を塗料でマスキングしてめっきを行うドクターブレードの製造方法を提供したものであり、ドクターブレードの刃先部分を一定の狭い幅でめっきすることができ、めっきが均一に施されるため、得られるドクターブレードはインキ切れ性に優れていること、めっき幅が狭いためめっき原料の削減ができるなど、従来の方法に比べて高品質のドクターブレードを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ドクターブレード基材のマスキング樹脂塗料塗布部の説明図である。
【符号の説明】
1 ドクターブレード基材
2 刃先部
3 マスキング樹脂塗布部
Claims (2)
- ドクターブレード用スチール基材の刃先部以外の部分にアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる塗料を、乾燥時の膜厚で5〜200μmになるように塗布し、100℃から350℃の温度で乾燥させてマスキング樹脂の皮膜を形成した後、マスキングをされていない刃先部分に1〜40μmの厚みのめっきを施し、次いでマスキング樹脂皮膜を剥離液により剥離した後、さらに、0.05〜5μmの膜厚でニッケル系及び/またはクロム系の無電解めっきあるいは電気めっきを施すことを特徴とする刃先部にめっきが施されたドクターブレードの製造方法。
- ドクターブレード用スチール基材のめっきとして、刃先部にニッケル系めっき中に炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化チタン及び窒化チタンから選択される1種以上のセラミック微粒子が分散した厚み1〜40μmのセラミック分散複合めっきとそのめっき上に厚み0.05〜5μmのニッケル系めっき及び/またはクロム系めっきとからなる2層めっきが設けられ、前記刃先部以外の部分に厚み0.05〜5μmのニッケル系めっき及び/またはクロム系めっきの単層めっきが設けられているドクターブレード。
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