JP4482962B2 - 六フッ化硫黄の無害化処理方法 - Google Patents

六フッ化硫黄の無害化処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に電力用設備等で使用されている、六フッ化硫黄の無害化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六フッ化硫黄は、常温、常圧では気体で不活性の化合物である。六フッ化硫黄は、その絶縁特性や熱的特性により、ガス絶縁開閉装置やガス遮断器やガス絶縁変圧器等の電力用設備、エッチング装置や洗浄装置等の半導体製造関連装置、X線発生装置やX線投影装置等の医療装置、電子顕微鏡や電子粒子加速器等の科学的装置等に使用されている。
【0003】
また、六フッ化硫黄は、非常に安定な化合物であり、一旦大気中に放出されると長期間大気中に残存すると考えられている。そのため、地球温暖化への寄与が心配されており、1997年に開催された気候変動に関する国連枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)において規制対象ガスに追加された。したがって、六フッ化硫黄の使用にあたっては極力リサイクルすることが推進されているが、それでもなお大気中へ放出される六フッ化硫黄については完全に分解し無害化することが重要となっている。
【0004】
従来、フッ素含有化合物の無害化処理方法、特にクロロフルオロカーボン類の無害化処理方法が複数報告されている。例えば、クロロフルオロカーボンを火炎内で分解させる方法(特開平03−51611、特開平08−110028、特開平09−324909等)や、触媒の存在下で燃焼する方法(特開平03−106419、特開平07−80303等)が報告されている。
【0005】
六フッ化硫黄は、上記の方法の無害化対象物とされていない。また、上記の方法で分解によって発生するフッ化水素等を中和処理することが記載されているものもあるが、中和処理することで発生する有害廃液の無害化についてまでは考慮されていない。
【0006】
さらに、含フッ素有機ハロゲン化合物(六フッ化硫黄も含フッ素有機ハロゲン化合物の1種として例示している)の分解及び排ガスの処理方法(特開平10−337439)が報告されているが、六フッ化硫黄の具体的な分解方法や六フッ化硫黄の分解により発生する硫黄酸化物の処理については記載されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
六フッ化硫黄は安定な物質であり、容易に分解することはない。これは、含まれるフッ素原子の電子半径が小さく硫黄原子との結合力が強いためである。そのため、六フッ化硫黄は地球温暖化の原因物質の1つとなっている。
【0008】
また、六フッ化硫黄を分解すると、雰囲気中の水分等と反応して六フッ化硫黄に含まれるフッ素原子はフッ化水素(HF)に、また硫黄原子は三酸化硫黄(SO3)や二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物になる。これらのガスはいずれも腐食性が強く有害物質であるため、分解後の生成物についても無害化するための処理が必要である。
【0009】
そこで本発明は、六フッ化硫黄を完全に分解する方法を提供し、さらに分解により発生する排ガスや排水を無害化処理する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、六フッ化硫黄を、可燃性ガス、支燃性ガス及び水とともに1000〜1600℃の燃焼炉内で熱分解した後、生成物を含む排ガスを水酸化ナトリウム水溶液を含む接触器の2以上に順次送って該水溶液と接触させて酸成分を吸収させるとともに、最終的に接触させる水酸化ナトリウム水溶液のpHを7〜11に維持し、排ガスと接触させた後の前記水溶液を中和槽に送りカルシウム化合物で処理して非水溶性塩を析出させ、その後析出した非水溶性塩を含む水溶液から非水溶性塩を分離除去することを特徴とする六フッ化硫黄の無害化処理方法を提供する。
【0011】
次に、本発明の六フッ化硫黄を無害化処理する方法を、本発明の好ましい態様の六フッ化硫黄の無害化処理システムを表す図である図1の処理フローに沿って詳細に説明する。六フッ化硫黄は、可燃性ガス、支燃性ガス及び水とともに、まず燃焼炉1に供給され熱分解される。燃焼炉1から排出される排ガスは、pH7〜11の水溶液と接触させて六フッ化硫黄の熱分解による生成物である、排ガス中の酸性成分(フッ化水素及び硫黄酸化物)を水溶液中に吸収させることが好ましい。
【0012】
図1においては、排ガスはまず一次接触器2に導入され、ここで水溶液と接触することにより、冷却されると同時に排ガスの酸性成分が前記水溶液に吸収される(一次処理)。この一次処理において使用される水溶液は、図1に示されるシステムの運転開始時にはpH7〜11であることが好ましいが、一次接触器2内を循環させて使用することもでき、この場合は排ガスの酸性成分を吸収することによりpHが7未満となっていてもよい。
【0013】
一次処理された排ガスは、次いで二次接触器3に送られ、ここでpH7〜11の水溶液と接触させて、一次処理では処理されずに排ガス中に残った酸性成分を吸収させる(二次処理)。図1では水溶液との2度の接触により、燃焼後の排ガスの酸性成分を除去し、二次接触器3から酸性成分除去後の排ガスを処理ガスとして排出している。したがって、二次接触器3内の水溶液は常にpH7〜11に調整されるように外部よりpH7〜11の水溶液を補充することが好ましい。
【0014】
図1では排ガスの水溶液との2度の接触により、燃焼後の排ガスの酸性成分を除去しているが、この水溶液との接触回数は特に制限されず、さらに三次接触器、四次接触器・・・と回数を重ねて、より徹底的に排ガス中の酸性成分を除去してもよい。その場合は最終的に排ガスを接触させる接触器で使用する水溶液のpHを常に7〜11に調整、他の接触器の水溶液のpHは特に限定されない。
【0015】
二次接触器3で使用されるpH7〜11の水溶液は、排ガスと接触させた後も二次接触器3内で循環して使用されるが、一部は一次接触器2に送られ、また一部は中和槽4に送られてもよい。一次接触器2で使用された水溶液は一次接触器2内で循環して使用されるが、一部は中和槽4に送られ、送られた分を補充するように一次接触器2にpH7〜11の水溶液を供給する。このとき一次接触器2にはpH7〜11の水溶液が外部から供給されてもよいが、二次接触器3から供給されてもよい。二次接触器3から供給される場合は、pHが7未満となっていてもよい。
【0016】
中和槽4では、一次接触器2又は二次接触器3において排ガスの酸性成分を吸収した水溶液を中和し、非水溶性塩を析出させる。この中和の工程ではカルシウム塩等のカルシウム化合物を含む水溶液を添加することが好ましい。中和により形成された非水溶性塩は、反応後の水溶液とともに固液分離器5に送られ、固体と処理水に分離される。
【0017】
次に各工程をさらに詳細に説明する。無害化処理の対象となる六フッ化硫黄は、可燃性ガス、支燃性ガス及び水分とともに燃焼炉1に供給され、これらが混合されて燃焼され、六フッ化硫黄が熱分解される。このとき燃焼前のガスには、クロロフルオロカーボン類、ハイドロクロロフルオロカーボン類及びハイドロフルオロカーボン類等のハロゲン化炭化水素が混入していても同時に分解でき、燃焼に引き続く工程により無害化処理できる。
【0018】
可燃性ガスとしては、エネルギ効率が高く取扱いが容易なことからメタンガスが好ましく、メタンガスを含む天然ガスが好ましい。また本発明における支燃性ガスは酸素を含むガスであり、酸素のみからなってもよいが、酸素以外の成分が不活性である酸素を含むガスとして供給されることが好ましく、具体的には取扱いが容易なことから空気が好ましい。
【0019】
六フッ化硫黄のフッ素原子が分解生成物のフッ化水素になるには、反応の雰囲気中に水素原子が必要である。水素原子は通常可燃性ガスに含まれており、また支燃性ガスとして使用する空気に含まれている水蒸気にも含まれているが、本発明では反応を安定化させるため、水を供給している。供給する水の量としては、供給する可燃性ガスが完全燃焼したときに生じる水の量、支燃性ガスに含まれる水の量及び供給する水の量の合量(重量)が、燃焼炉に供給する六フッ化硫黄の重量の1.2倍以上、さらには3倍以上となるように供給することが好ましい。
【0020】
燃焼の際の温度は、高すぎると燃焼炉等の設備の腐食が激しくなり、低すぎると六フッ化硫黄の分解効率が低下するため本発明では1000〜1600℃で行うが、1100〜1400℃であるとさらに好ましい。また燃焼時間は、長すぎると設備効率が低下し、短すぎると六フッ化硫黄の分解効率が低下するため、0.3〜3秒が好ましく、0.5〜2秒がさらに好ましい。
【0021】
燃焼炉1で六フッ化硫黄を燃焼することにより分解して得られる排ガスは、次に一次接触器2に送られる。一次接触器2に送られた排ガスは、pH7〜11の水溶液又は供給時はpH7〜11であったが循環して使用されるうちにpHが7未満となっている水溶液(以下、これらを合わせて一次処理用水溶液という)と接触し、排ガス中のフッ化水素や硫黄酸化物等の酸性成分が一次処理用水溶液に吸収される。一次接触器2における排ガスと一次処理用水溶液の接触方法は特に限定されないが、シャワー方式、吹き込み方式等が採用できる。ここで使用されるpH7〜11の水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である
【0022】
また、一次処理用水溶液としては、排ガスが次に送られる二次接触器3において使用されたpH7〜11の水溶液を一次接触器2に送って使用することもできる。その場合、二次接触器3において既に酸性成分を水溶液が吸収しているので、一次接触器2に送られるときにはpHが7未満となっている場合もある。しかし、酸性成分を吸収した水溶液の処理を考慮すると、二次接触器3で使用された水溶液を一次接触器2で使用する場合は全体の処理水量が削減できるので、排水処理装置の規模を縮小でき、有効である。
【0023】
一次接触器2で一次処理用水溶液と接触した排ガスは、次に二次接触器3に送られる。二次接触器3においても、一次接触器2と同様にpH7〜11の水溶液(以下、二次処理用水溶液という)と接触させることにより、排ガスに含まれ一次処理では吸収されなかった酸性成分は当該水溶液に吸収される。図1では一次接触器2と二次接触器3との2段階の排ガスの酸性成分の処理なので、二次処理用水溶液は必ずpH7〜11に調整されている。二次接触器3での排ガスと二次処理用水溶液の接触方法は特に限定されず、一次処理同様、シャワー方式、吹き込み方式等が採用できる。またここで使用されるpH7〜11の水溶液も水酸化ナトリウム水溶液である
【0024】
二次接触器3を通過した排ガスは、処理ガスとして放出できる。また、一次処理用水溶液又は二次処理用水溶液がアルカリ水溶液の場合、処理ガス中にアルカリ成分が含まれることがある。その場合はアルカリ成分の放出を抑えるために、最終的に地下水や水道水等の水で処理ガスを再度洗浄した後に放出することが好ましい。
【0025】
二次接触器3で使用された二次処理用水溶液の一部は、上述したように一次接触器2へ送られて一次処理用水溶液として使用され、また一部は中和槽4へ送られ、中和処理される。それら以外の二次処理用水溶液は、二次接触器3内で循環使用される。また一次接触器2で使用された一次処理用水溶液の一部は、中和槽4へ送られ、残りは一次接触器2で循環使用される。したがって、一次処理用水溶液及び二次処理用水溶液には、排ガスの酸性成分と反応して非水溶性塩を析出するものは含まれていない。
【0026】
中和槽4では、送られてきた一次処理用水溶液及び二次処理用水溶液の中和を行う。中和の工程では、カルシウム化合物を使用することが好ましく、具体的には炭酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩、水酸化カルシウム等の水溶液が好ましい。これらと反応させることにより、一次処理用水溶液及び二次処理用水溶液に吸収されているフッ化水素、硫酸、亜硫酸等が、それぞれフッ化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の非水溶性塩へと中和される。この反応により、中和槽4内の水溶液のpHが上昇する場合があるが、その場合には塩酸等の酸を添加してもよい。
【0027】
中和槽4で中和処理された非水溶性塩を含む水溶液は、次に固液分離器5に送られ、濾過、沈降分離等の固液分離が行われる。不溶性のカルシウム塩は固体として分離除去され、液体の処理水は放流されるか、又は再びアルカリ成分を溶解させて一次接触器2や二次接触器3で使用されるアルカリ水溶液として再利用されてもよい。分離された固体は、必要に応じてフィルタープレスや水分蒸発等の脱水処理を行い、フッ素源やカルシウム源として有効利用することもできる。
【0028】
【実施例】
次に実施例(例1〜3)を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。図1に示した処理フローで、可燃性ガスとして天然ガス、支燃性ガスとしては空気を用い、一次接触器及び二次接触器に供給されるpH7〜11の水溶液としてはpH10.5の水酸化ナトリウム水溶液を用い、その他の条件は表1に示す各条件で六フッ化硫黄の無害化処理を行った。
【0029】
すなわち表1には、燃焼炉に導入されるガス中の六フッ化硫黄濃度、燃焼炉において単位時間あたりに処理されるガスの量、燃焼炉内の平均温度、ガスの燃焼炉内の平均滞留時間、及び燃焼時の水の量(供給する水と可燃性ガスが燃焼したときに生成する水と空気に含まれる水との合量)と六フッ化硫黄との重量比をそれぞれ示している。
【0030】
そして表2には、二次接触器3から排出される処理ガス中の六フッ化硫黄、フッ化水素、及び硫黄酸化物(SO2とSO3の合量)の各成分の濃度を示す。また、固液分離器5から排出される処理水中のフッ素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオンの濃度を示す。
【0031】
【表1】
Figure 0004482962
【0032】
【表2】
Figure 0004482962
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、効率よく六フッ化硫黄を分解処理でき、さらに効率よく排ガスを浄化して無害化した処理ガス及び処理水を放出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】六フッ化硫黄の無害化処理システムを表す図。
【符号の説明】
1:燃焼炉
2:一次接触器
3:二次接触器
4:中和槽
5:固液分離器

Claims (3)

  1. 六フッ化硫黄を、可燃性ガス、支燃性ガス及び水とともに1000〜1600℃の燃焼炉内で熱分解した後、生成物を含む排ガスを水酸化ナトリウム水溶液を含む接触器の2以上に順次送って該水溶液と接触させて酸成分を吸収させるとともに、最終的に接触させる水酸化ナトリウム水溶液のpHを7〜11に維持し、排ガスと接触させた後の前記水溶液を中和槽に送りカルシウム化合物で処理して非水溶性塩を析出させ、その後析出した非水溶性塩を含む水溶液から非水溶性塩を分離除去することを特徴とする六フッ化硫黄の無害化処理方法。
  2. 可燃性ガスがメタンであり、支燃性ガスが空気である請求項1に記載の六フッ化硫黄の無害化処理方法。
  3. 前記水の量と可燃性ガスが完全燃焼したときに発生する水の量と支燃性ガスに含まれる水の量との合量が、重量比で六フッ化硫黄の量の1.2倍以上になるように前記水を供給する請求項1又は2に記載の六フッ化硫黄の無害化処理方法。
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