JP4482677B2 - 脚車輪分離型ロボット - Google Patents
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すなわち、請求項1に係る発明は、胴体と、該胴体の両側に回転可能に設けられる一対の車輪と、該胴体の前後にそれぞれ旋回可能に設けられる一対の前脚及び一対の後脚と、前記胴体のロール角を調整する段軸機構と、前記各車輪を駆動させるアクチュエータと、前記各前脚及び各後脚を駆動させるアクチュエータと、前記段軸機構を駆動させるアクチュエータと、前記各アクチュエータの回転角度を検出する角度センサと、前記胴体のロール角及びピッチ角を検出する姿勢角センサと、前記各センサからの信号に応じて前記各アクチュエータの駆動を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記各センサからの角度情報により求められた各脚先の位置情報、胴体のピッチ・ロール角情報、及び各脚先の速度・加速度情報の基本情報と、該基本情報に必要に応じて付加される車輪角度偏差情報、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報の付加情報とに応じて、前記各アクチュエータの駆動を制御し、前記車輪角度偏差情報は、前記車輪の目標角度と実際角度との偏差から得られる情報であり、前記推定段差高さ情報は、脚先位置と姿勢角情報から推定される路面高さの情報であり、前記脚荷重分担率情報は、脚と車輪による機体荷重の分担力のうち、脚による分担率の情報であることを特徴とする。
図1〜図5には、本発明による脚車輪分離型ロボットの一実施の形態が示されていて、図1は脚車輪分離ロボットの全体を示す平面図、図2は図1の正面図、図3は図1の左側面図、図4は図1の部分拡大平面図、図5は制御系のブロック図である。
まず、脚車輪分離型ロボットの脚先位置、又は脚先接地位置の機体座標系z方向の高さhrの一定時間における分散の度合いを「荒れ地度」と定義し、分散の度合いが「小」のとき荒れ地度を「小」とし、分散の度合いが「中」のとき荒れ地度を「中」とし、分散の度合いが「大」のとき荒れ地度を「大」とする。
脚車輪分離型ロボットが脚モードで歩行中に、各脚先の荒れ地度が一定時間、ある割合で「中」と判断したときに、脚車輪分離型ロボットは脚モードから脚車輪モードに自動遷移する。なお、オペレータの遷移指示により、手動で脚モードから脚車輪モードに遷移させることも可能である。
脚車輪分離型ロボットが脚車輪モードで歩行(走行)中に、荒れ地度が一定時間、ある割合で「大」と判断としたときに、脚車輪分離型ロボットは脚車輪モードから脚モードに自動遷移する。また、脚車輪分離型ロボットが大不整地の歩行に頻繁に入るときに、脚車輪モードから脚モードに自動遷移する。
脚車輪分離型ロボットが脚モード又は脚車輪モードで歩行(走行)中に、機体の前後左右に配置した障害物センサにより移動路面の周囲の状況を検知し、移動路面の周囲が所定の範囲よりも狭いと判断した場合に、脚モード又は脚車輪モードから車輪モードに自動遷移する。また、脚車輪分離型ロボットの移動経路が予め定められており、その移動経路の途中に所定の範囲よりも狭い場所があることが予想される場合、その狭い場所を障害物センサにより検知したときに、脚モード又は脚車輪モードから車輪モードに自動遷移する。なお、脚モード又は脚車輪モードから車輪モードに自動遷移する場合は、荒れ地度が「小」であることが前提である。また、一定時間、荒れ地度が「小」と判断したときにも、脚モード又は脚車輪モードから車輪モードに自動遷移する。
脚車輪分離型ロボットが車輪モードで歩行(走行)中に、脚によるバランス制御の程度の大小により、車輪モードから他のモードへ自動遷移する。ここで、バランス制御の程度とは、前脚及び後脚の伸縮程度、及び伸縮の頻度をいい、車輪モードのときのバランス制御の程度を「小」とし、脚車輪モード、脚モードの順にバランス制御の程度を「大」とする。
通常不整地の路面上を脚車輪分離型ロボットが移動する場合、コントローラは、各関節部の各角度センサからの角度情報、各角度情報から求められる各脚先の位置情報、胴体のピッチ・ロール角情報、各関節部の各角度センサからの角度情報を加工した各脚先の速度・脚先加速度情報等を用い、これらの情報により、各関節部のアクチュエータ、段軸機構のアクチュエータの駆動を制御し、各脚先に路面の凹凸に応じたコンプライアンスを設定し、胴体のピッチ角、ロール角を制御する。
脚先z方向の基本コンプライアンスを次式に示す。
Ci=Δs/Flegzi ……(1)
ここで、Ci:脚iのz方向の基本コンプライアンス、Flegzi:脚iの接地点におけるz方向力、Δs:脚先のz方向の目標位置と実際位置の偏差の基本設定値(全脚一定)である(偏差=実際位置−目標位置)。
Cstepi=Ci(Δstepi/Δs) ……(2)
ここで、Cstepi:脚iの調整後のz方向コンプライアンス、Ci:脚iのz方向基本コンプライアンス、Δs:脚先目標位置と実際位置の偏差の基本設定値、Δstepi:脚iが段差に接地したときの目標位置と実際位置の偏差である。
なお、後述する下り段差の場合は、脚先目標位置は脚先接地位置に対してΔsだけ低い位置に設定するため、コンプライアンスの調整はない。
大不整地(高さ又は深さが0.1〜0.2m程度までの凹凸不整地)を脚車輪分離型ロボットが移動する場合、主として脚車輪モードを使用する。脚車輪モードにおける支持点は、図14に示すように、前脚と地面との接触点、車輪と地面との接触点、及び後脚と地面との接触点であるが、後脚の接触点は機体が通過した地形であるので、機体がこれから進む地形である前脚の接触点と車輪の接触点との幾何学的関係から大不整地の地形を分類する。
大不整地適応歩容では、路面の凹凸に応じて機体を積極的に上下させるため、例えば、上り段差に応じて機体を上げる場合には、機体を上げるタイミングを検出する必要がある。脚先位置情報で段差の高さは把握できるが、上り段差の始点位置は把握することが困難である。実際には、車輪が上り段差に接地した場合、段差上り歩容が必要な地形では、機体が段差に当たり進みにくくなる。このとき、車輪が滑らないとすると、車輪の目標角度と実際の角度の偏差が大きくなる。一方、脚も進行方向に偏差がたまるが、遊脚相で偏差がクリアされて不連続になるため、車輪の角度偏差情報を上り段差の始点検出等に用いている。
大不整地適応歩容では、路面の凹凸に応じて機体を上下させるためには、路面高さを推定する必要がある。このため、脚先位置と姿勢角情報から推定する推定段差高さを用いている。
大不整地適応歩容では、地形に応じて機体を上下させるが、例えば、下げ終わり時期を判定するためには、機体(車輪)が接地したか否かを検知する必要がある。あるいは、誤った高さ推定値のために機体を上げ過ぎたり、下げ過ぎたりしていないかを判断する必要もある。このような判定のために、脚機構と車輪機構による機体荷重の分担力のうち、脚機構(全ての支持脚)による分担率(以下、「脚荷重分担率」という。)が、機体の接地状態により増加・減少する特性を利用している。
脚の荷重分担率klegを次式で定義する。
ここで、n:支持脚数、δzi:支持脚iのz方向脚先位置の目標位置との偏差(実際位置−目標位置)、Czi:支持脚iのz方向コンプライアンス、W:機体重量である。
kleg>kdleg+δk ……(4)
Pzdi=Pzdiold+dPzd ……(5)
ここで、δk:判定余裕、Pzdi:脚iのz方向目標位置、Pzdiold:1処理周期前のz方向目標位置、dPzd:各脚のz方向調整量である。
このとき、機体が不安定になっている可能性があるため、不安定な状態が解消されるまで上記の脚先力弛緩動作の終了時まで機体を停止させる。
遊脚軌道中に障害物が存在した場合には、脚が障害物に衝突し、適切な接地点に到達できない。これを防ぐために、遊脚中に障害物に衝突したことを検知した場合には、遊脚軌道を調節し、障害物を越えて所望の位置に脚を接地させている。
支持脚の脚先に設定したコンプライアンスで吸収できない不整地を移動する場合には、脚先の目標位置が移動路面より高くなり、脚が浮く可能性がある。脚が浮き、支持ができない場合にはそれだけ機体が不安定となるため、これを防ぐ対策を採っている。
段差上り歩容は、前脚接地点に向かって機体を上げる歩容であり、段差上り歩容では、4脚全てと車輪で機体を支持して、機体を段差に上げる形態をとるものとする。
この路面では、機体を路面に応じて上昇させるために、上り段差の始点を検出する必要がある。車輪が上り段差に接して進むことができなくなると、車輪角度の目標角度からの偏差が大きくなる。上り段差の始点を検出するために、この車輪角度偏差情報が必要になる。始点を検出した後は、前脚接地点高さを目標高さとして機体を上昇させる。その際に必要な情報は、推定段差高さ情報(He)である。
機体が1段目の段差を上がる際には、前脚は2段目上に接地している。前脚接地点高さまで機体を上昇させると上げ過ぎの状態となる。そのため、機体上昇動作終了時には機体を上げ過ぎていない状態とする必要がある。機体を上昇させ過ぎた場合には脚に負担がかかり、脚荷重分担率も上昇するため、脚荷重分担率情報を用いて機体の上昇高さを調節する。
段差を上がる段階では、タイプA1路面と同様、前脚接点高さまで機体を上昇させる。
大不整地を移動する際の歩容形態は、4脚全てと車輪で機体を支持して、機体を段差に上げる形態をとる。段差に応じて機体を持ち上げる際には、安定性、省エネルギ性、推進力の分散などの観点から、このときにも車輪は常時接地して機体を支持している方が望ましい。しかし、地形形状を正確に把握することは困難であり、想定地形と実地形が異なる場合も多い。そのため、車輪の常時接地は前提とはできず、脚のみでも静的安定性を確保しておく必要がある。さらに、前後および左右の不整地など外乱への対応力を均等にするため、4脚支持の形態を選択する。
大不整地は通常不整地に比べると出現する頻度は相対的に低い。そのため、大不整地を移動する場合には、通常歩容から、段差上り歩容への切換を行う必要がある。具体的には、通常歩容では、支持脚が2脚であり、全脚支持歩容では支持脚が4脚であるため、支持脚を2脚から4脚、4脚から2脚へとするための脚の踏み換えが必要となる。全脚支持歩容での移動距離を最大限確保するためには、全脚支持歩容開始時に全ての脚が可動範囲の始点にあればよい。そのため、通常歩容から全脚支持歩容への切換は、全ての脚を可動範囲の始点に踏みかえることで行う。
通常歩容から全脚支持歩容への切換時期は、機体が段差に接し移動できなくなり、車輪角度の目標位置からのずれ(車輪角度偏差)が大きくなることで判別する。
正確な段差地形情報を取得できない状況下で、段差を上り終わったことを確実に判断することは困難である。そのため、既に段差上に機体が上がったとしても、全脚支持での移動を最大限確保することとし、脚の可動限界への到達をもって全脚支持歩容から通常歩容への切換を行う。
脚車輪分離型ロボットが上り段差に到達すると、通常歩容では段差を上がることができないために機体が進めなくなる。このとき、車輪角度に目標位置からのずれ(車輪角度偏差δwi)が生じるため、車輪角度偏差を用いて上り段差開始位置の検知を行う。
車輪iの車輪角度偏差δwiは、次式で表される。
δwi=Angwdi−Angwi ……(6)
ここで、Angwdi:車輪iの目標角度、Angwi:車輪iの現在角度である。
上記の式を用いて、左右車輪の車輪角度偏差の小さい方が、次式のように閾値Δwminを越えた時点で上り段差開始位置だと検知する。
min(δwi)>Δwin(i=1、2) ……(7)
車輪角度偏差の小さい方を用いる理由は、ロボットが通常歩容を行っている場合の左右車輪の角度偏差は、不整地路面形状により変化する。車輪角度偏差の大きい方を用いた場合、機体が進んでいても、閾値を超過する場合が考えられる一方で、車輪角度偏差の小さい方が閾値を超過した場合には、機体は必ず進めない状態となっているからである。
Heforeleft>Δgetover or
Heforeright>Δgetover ……(8)
通常歩容では、仮想面に対して胴体ピッチ角を平行にする。通常歩容との歩容制御の連続性を考えて、大不整地適応歩容においても、胴体ピッチ角は仮想面に平行にする。その場合、段差の高さは、仮想面に対する垂直方向の高さで表す必要がある。これを図15に示す。
hdiff=−Lxitan(αi−αimgnow)……(9)
と表せる。ここで、αiはある瞬間の値であり、それに対応させるためその時点での仮想斜度をαimgnowとしている。通常のαimgは、αimgnowの一周期平均である。また、−は、上り段差の場合を正、下り段差の場合を負とするためのものである。
himg=−Lsisinαimg ……(10)
と表せる。
Hei=hdiff+himg ……(11)
左右で高さの異なる段差を上がる場合、図16に示すように、機体が上がる高さは左右高さの平均値となる。そこで、全脚支持歩容の直前に、左右前脚の推定段差高さの平均を、全脚支持歩容で上る機体の推定段差高さHeとして取得する。それを表したものが次式である。
He=(Hefl+Hefr)/2 ……(12)
ここで、Hefl:左前脚の推定段差高さ、Hefr:右前脚の推定段差高さである。
なお、全脚支持歩容で下る際の推定段差高さHeも同様に左右の平均値をとり、左右段差違いに対応する(下り段差歩容)。
全脚支持歩容は、4脚全てを支持脚として機体が段差を上がるための歩容であり、脚の踏み換え動作により全脚が可動範囲の始点に接地した状態から始まり、全脚と車輪で機体を持ち上げ、脚が可動限界に到達した時点で終了する。つまり、1回の全脚支持歩容により1歩進むことになる。なお、全脚支持歩容時も車輪サスペンションで荷重を分担することを基本とするが、推定段差高さの誤差や段差地形の形状により、車輪が接地しない場合もあり得る。
図17に全脚支持歩容時の車輪の動きを示す。全脚支持歩容開始時における1歩幅分の仮想面は、図中のA,B,C,Dを結んだ路面となる。ここで、脚車輪分離型ロボットのピッチ角は、仮想面に平行になるように制御され、機体は仮想面と平行に進行すると仮定する。このとき、車輪iの微小時間当たりの回転角度dWdiは、dPxdを全脚支持歩容開始時の機体の機体座標系x方向の微小移動量、車輪半径をrとすると、θを図のようにとり、式13で表される。この車輪目標角に対してPD制御を行う。
dWdi=dPxd/(rcosθ)((a)while going up a step)
dWdi=dPxd/r((b)after going up the step)
……(13)
脚軌道についても、車輪の目標回転角度の設定と同様に、機体中心の位置(Pxd、Pzd)との幾何学的な関係から設定する。機体を持ち上げるためには脚を下げる必要があるため、脚軌道次式で表される。
dPzdi=−dPzd((a)while going up step)
dPzdi=0((b)after going up the step)
……(14)
ここで、dPzd:機体のz方向の微小時間移動量の目標値、dPzdi:脚iのz方向の微小時間移動量の目標値である。
胴体目標ロール角θdrを0とするため、スカイフックダンパ理論に基づく式15のフィードバック制御を行う。
ここで、Tθr:段軸機構モータのトルク、θr:胴体ロール角、θdr:胴体目標ロール角、Kr、Dr:角度ゲインおよび角速度ゲインである。
これにより、上り段差の斜め進入時に対しても、胴体ロール角を水平に保ったまま左右車輪を時間差で上げることができ、また、左右段差違い路面に対しても胴体ロール角を水平に保ったまま移動できる。
前脚の接地位置と機体とが離れているために地形形状によっては、推定段差高さHeは正確なものとはならない。推定段差高さの誤差が小さい場合には、脚先コンプライアンスと車輪サスペンションにて吸収できる一方で、大きい場合には、脚先コンプライアンスとサスペンションでは吸収することができない。そこで、全脚支持歩容終了前に車輪による支持がされているかどうかを脚荷重分担率監視機能により判別し、車輪が浮くなどにより車輪による支持負担分が少ない場合には、脚先力弛緩動作により機体を下げて車輪を接地させ、終了踏換中に安定性を確保することで、これに対応する。
上り段差の始点検知と同様に、全脚支持期間の車輪角度の目標位置からの偏差を監視することにより、機体が段差を上れないか否かを判断する。この場合、全脚支持歩容で段差を上っている最中であり、機体が持ち上がって比較的不安定な状態となるため、上れない段差は比較的早期に検知する必要がある。そこで、左右車輪角度偏差の合計値δwheelsで評価することにより、上り段差の始点検知で用いている左右車輪角度の小さい方で評価する手法よりも検知条件を緩める。
段差下り歩容は、前脚接地点に向かって機体を下げる歩容であり、各軸の角度センサと姿勢角センサを用い、通常歩容に必要な情報と、推定段差高さ情報と脚荷重分担率情報とを用いる。
下り段差の存在を検知するため、前脚の推定段差深さ情報(He)が必要である。また、機体が落ちるのを防止するため、下り段差の始点位置を把握する。後述する下り段差始点探索動作によって下り段差の開始位置を検出する。この際には、機体が段差を下り始めると、脚に負担がかかるため、脚荷重分担率が増加するという性質を利用する。下り段差の始点位置検出後は、前脚接地点深さを目標深さとして、機体を下降させる必要がある。その際に必要な情報は、推定段差高さ情報(He)である。なお、タイプB4路面は、段差下に穴が存在するが、車輪半径程度であるため、機体が穴に入ることはなく、基本的にはタイプB1路面と同様である。
機体が1段目の段差を下る際には、前脚は2段下の段差に接触している。前脚接地点深さまで機体を降下させると、下げすぎの状態となる。そのため、機体下降動作終了時には、機体を下げすぎてない状態とする必要がある。脚先位置を上げることで機体を下降させるため、機体を下降させ過ぎる場合は脚が浮き上る。その際には脚荷重分担率が減少するという特徴があるため、脚荷重分担率情報を用いて機体の下降量を調節する。
機体が段差を下がるときには、前脚接地点は穴の外となるため、脚接地点深さを目標とした場合には、機体下降量が不足する。最悪の場合、機体が浮いた状態で脚の踏み換えを行うこととなり、姿勢を大きく崩す可能性がある。そこで、機体下降動作終了時に、機体が浮いていないかを確認する必要がある。機体が浮いている場合には、脚荷重分担率が増加しているため、脚荷重分担率情報を用いて、機体(車輪)が接地するまで機体下降量を調節する。
穴の奥行きが小さい場合には、車輪が穴に入らないため、通常不整地と変わらず、特に必要な移動方法は必要ない。
穴の奥行きが大きい場合には、機体が穴に入ってしまう。そのため、段差下り歩容を用いるが、機体が穴に下りる場面では、前脚は穴から出た位置に接地している。そのため、前脚接地位置に向かって機体を下げた場合には、タイプB5の路面と同様に、機体下降量が不足する。よって、脚荷重分担率情報を用いて、機体(車輪)が接地するまで機体下降量を調節する。
大不整地を移動する際の歩容形態は、4脚全てと車輪で機体を支持して、機体を段差に下ろす形態をとる。段差に応じて機体を下降させる際には、安定性、省エネルギ性、荷重の分散などの観点から、このときにも車輪は常時接地して機体を支持している方が望ましい。しかし、地形形状を正確に把握することは困難であり、想定地形と実地形が異なる場合も多い。そのため、車輪の常時接地は前提とはできず、脚のみでも静的安定性を確保しておく必要がある。さらに、前後および左右の不整地など外乱への対応力を均等にするため、4脚支持の形態を選択する。
大不整地の下り段差を全脚支持歩容を用いて移動するためには、下り段差の始点の位置を把握して、全脚支持歩容に切り換える必要がある。下り段差の始点位置を把握せずに通常歩容で下り段差を移動した場合には、機体が段差の下に落下する可能性があるためである。
前脚の接地深さ情報を用いると、機体の移動する先の路面の状況を把握することができる。そこで、前脚の接地深さ情報により、下り段差の存在を予測する。下り段差は、前脚接地位置と車輪接地位置の間のどこにその始点が存在するかわらかない。そのため、下り段差の存在を予想した時点から下り段差始点探索動作に移行する。
下り段差始点探索動作による始点検出時点では、機体中心は始点位置を多少超えている。そのため、機体を少し後退させて、機体中心を段差の始点位置に合わせる動作「機体位置合わせ動作」が必要となる。下り段差の始点への機体の位置合わせ動作を行う理由は、全脚支持歩容に移行するための脚の踏み換えを行う際に、段差から機体が落ちかかっていると、姿勢が不安定になるからである。なお、下り段差始点探索動作は全ての脚で支持しているため、安定して機体を後退させることが可能である。
正確な段差地形情報が取得できない状況下で、段差を下り終わったことを確実に判断することは困難である。そのため、全脚支持歩容による移動距離を最大限確保することとし、脚の可動限界への到達をもって全脚支持から通常歩容への切換を行う。
下り段差の存在の予測は、前脚の接地深さ情報を用いて行う。すなわち、前述した推定段差高さ(深さ)を用いることで、下り段差を検知する。
具体的には、Heiとhdiffの値を用いる。Heiは、仮想斜度成分をもっており、平らな下り斜面でも深く(負)に算出され、下り段差の検知に至るからである。そのため、hdiffを併せて使用することで誤検知を少なくする。
下り段差を検知すると、全脚が可動範囲の始点になるように脚を踏み換え、下り段差の始点を探索する「下り段差始点探索動作」に移行する。下り段差始点探索動作では、全脚と車輪で支持しながら脚の可動範囲の始点から終点まで、脚荷重分担率を監視しながら進む。
下り段差の始点を検知した時点では、機体は段差の始点より多少進んだ状態にある。この状態で全脚支持歩容のために脚の踏み換えを行った場合には、機体が下に落ちようとして不安定となる可能性がある。そこで、機体を段差の始点まで後退させ、機体の位置を段差の始点に合わせるのが機体位置あわせ動作である。
このときも、脚荷重分担率が段差の始点に戻るまでは下がり、その後は上がるという定性的な特徴を用いて位置を合わせる。
全脚支持歩容は、4脚全てを支持脚とし、脚車輪分離型ロボット本体が段差を下るための歩容である。全脚支持歩容時にも、高安定性および省エネルギ、荷重の分散などの観点から、車輪サスペンションで荷重を分担することを基本とするが、段差高さ推定値の誤差や段差地形の形状により車輪が接地しない場合もありうる。そのため、最大限安定性を確保するために全ての脚での支持とする。
脚の踏み換え動作により全ての可動範囲の始点に接地した状態から始まり、全ての脚と車輪により機体を支持した状態で段差を下り、脚が可動限界に到達した時点で終了する。つまり、1回の全脚支持歩容により1歩進むことになる。
dWdi=dPxd/(rcosθ)((a)while going down step)
dWdi=dPxd/r((b)after going down the step)
……(16)
なお、段差を下り始める時点からの回転角θは、「段差を下りた時点での機体(車輪)中心と図中のA点を結んだ直線」と「点Aを通り、仮想面に垂直な直線」とのなす角度θe,全脚支持歩容開始からの開始時の機体座標系におけるx方向の機体の移動量をPxdとした場合に、図に示すように幾何学的に求められる。
脚軌道についても、車輪の目標回転角度の設定と同様に、機体中心の位置(Pxd,Pzd)との幾何学的な関係から設定する。機体を下げるには脚を上げる必要があるため、脚軌道は次式で表される。
dPzdi=−dPzd((a)while going down astep)
dPzdi=0((b)after going down the step)
……(17)
ここで、dPzd:機体の機体座標系z方向の微少時間移動量、dPzdi:脚iの機体座標系z方向の微少時間移動量である。
なお、車輪の場合と同様、D地点に向かうにつれて生じる路面高さの誤差と方向転換に伴うz方向の脚位置の誤差は、脚先のコンプライアンスで吸収する。
段差上り歩容における全脚支持歩容時の段軸制御と同様に、式(15)にて制御を行う。これにより、下り段差への斜め進入時に対しても、胴体ロール角を水平に保ったまま左右車輪を時間差で下ろすことができるため、移動可能となる。また、左右段違い路面に対しても、胴体ロール角を水平に保ったまま移動できる。
乗り越え歩容は、前脚接地位置と車輪接地位置の間にある凸地形を乗り越えるための歩容であり、図14のタイプC1、A3、B3に示した路面の移動を実現するための歩容である。
乗り越え歩容においても、各軸の角度センサと姿勢角センサのみを用い、通常歩容の際に用いる情報の他に、車輪角度偏差情報、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報を用いる。
凸路面に車輪が接地すると、機体が進むことができなくなり、段差上り歩容と同様に、車輪角偏差情報により凸路面の始点を検出する。推定段差高さ情報(He)が低いにもかかわらず、機体が推進できない場合には、凸地形である。但し、凸地形の上に脚が接地するとは限らないため、その高さを把握できない場合もある。よって、機体を最大限上昇させ、その状態で機体を推進し、下ろすことで凸地形に対応する。機体が接地し、車輪による荷重分担が増加すれば、脚荷重分担率が減少するため、脚荷重分担率情報を用いて機体の路面への接地を検出する。
車輪が段差に接地し、段差上り歩容を行うときの推定段差高さ(Hc)は、凸路面の凸部分より低いため、凸部分を上がることができない。上がれないことの判断は、段差上り歩容の全脚支持歩容期間中に、車輪角度の目標角度からの偏差が大きくなることを利用する。上れないことを検出した時点では、すでに可動範囲は狭くなっており、移動距離が少ないため、一度機体を下ろし脚を踏みかえる。凸地形の高さはタイプC1路面と同様、把握することができるとは限らないため、踏み換えた後に最大限機体を上昇させた状態で機体を推進し、下ろすことで凸地形に対応する。
前脚は段差の下に接地するため、段差下り歩容となり、下り段差始点探索動作をする。このときに凸地形があると、機体が進むことができなくなり、車輪角度の目標角度からの偏差が大きくなる。よって、始点探索動作中に車輪角度偏差情報を用いて、凸地形を検出した際には、機体を上昇させる必要がある。ただし、検出した時点で可動範囲が狭くなっているため、脚の踏み換えを行い、可動範囲の始点に全ての脚を配置する。また、凸地形の高さは必ずしも把握できないため、機体の上昇量は最大限とし、その状態で機体を推進し、下ろすことで対応する。
図20に、実際の路面地形に対して間違った歩容選択をした場合の動作と最終的な歩容の遷移先(ただし、存在する場合)を示し、移動の可否を示したものである。
例えば、一番上段は、実際の路面が通常不整地であるのに誤って段差上り歩容に誤遷移した場合である。この場合には、実際の路面が通常不整地であるため、段差上り歩容に遷移しても、脚の踏み換えや全脚支持歩容のために時間は余分にはかかるが、移動可能(○)である。また、上から5段目を説明すると、実際の路面が上り段差路面である場合に、間違って段差下り歩容に誤遷移した場合は、下り段差始点探索動作中に当該上り段差により移動できなくなり、結果として最終的には乗り越え歩容に遷移するため、その路面を移動することは可能であることを示している。
ただし、11段目のように、実際の路面が下がり段差の場合に、誤って段差上り歩容に遷移した場合には、図21の右側に示すように、段差の途中での終了踏み換えの可能性があり、このときには機体が不安定となり、移動可能であるとはいえない。同様の理由から、実際の路面が下り段差の場合には、他の歩容に誤って遷移することは防ぐ必要がある(10〜12段目)。
ただし、前脚を触覚のようにして用いる脚車輪分離型ロボットでは、前脚が穴に接地してから胴体が穴を下るから、数歩分余裕があるため、数回の検知チャンスが存在し、1回の誤判定で即問題にはならないという特徴がある。
11 前左脚 12 左大腿部
13 第1左大腿部 14 第2左大腿部
15 左股関節部 16 第1左股関節部
17 第2左股関節部 19 左脛部
20 左膝関節部 21 左足部
22 前右脚 23 右大腿部
24 第1右大腿部 25 第2右大腿部
26 右股関節部 27 第1右股関節部
28 第2右股関節部 30 右脛部
31 右膝関節部 32 右足部
34 後左脚 35 後右脚
36 左車輪 39 右車輪
42 サスペンション 43 平行リンク機構
55 段軸機構 60 コントローラ
A1〜A15 アクチュエータ S1〜S15 角度センサ
S16 姿勢角センサ D1〜D15 ドライバ
Claims (5)
- 胴体と、該胴体の両側に回転可能に設けられる一対の車輪と、該胴体の前後にそれぞれ旋回可能に設けられる一対の前脚及び一対の後脚と、前記胴体のロール角を調整する段軸機構と、前記各車輪を駆動させるアクチュエータと、前記各前脚及び各後脚を駆動させるアクチュエータと、前記段軸機構を駆動させるアクチュエータと、前記各アクチュエータの回転角度を検出する角度センサと、前記胴体のロール角及びピッチ角を検出する姿勢角センサと、前記各センサからの信号に応じて前記各アクチュエータの駆動を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記各センサからの角度情報により求められた各脚先の位置情報、胴体のピッチ・ロール角情報、及び各脚先の速度・加速度情報の基本情報と、該基本情報に必要に応じて付加される車輪角度偏差情報、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報の付加情報とに応じて、前記各アクチュエータの駆動を制御し、
前記車輪角度偏差情報は、前記車輪の目標角度と実際角度との偏差から得られる情報であり、前記推定段差高さ情報は、脚先位置と姿勢角情報から推定される路面高さの情報であり、前記脚荷重分担率情報は、脚と車輪による機体荷重の分担力のうち、脚による分担率の情報であることを特徴とする脚車輪分離型ロボット。 - 前脚接地点に向かって胴体を上げる際には、前記基本情報と、前記車輪角度偏差情報、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報の付加情報とを使用して、前記各アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の脚車輪分離型ロボット。
- 前脚接地点に向かって胴体を下げる際には、前記基本情報と、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報の付加情報とを使用して、前記各アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の脚車輪分離型ロボット。
- 前脚接地位置と車輪接地位置の間にある凸地形を乗り越える際には、前記基本情報と、前記車輪角度偏差情報、推定段差高さ情報、及び脚荷重分担率情報の付加情報とを使用して、前記各アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の脚車輪分離型ロボット。
- 前記胴体のピッチ角は、脚と車輪との支持点から導かれる仮想面に平行になるように制御され、前記胴体のロール角は、重力に対して垂直になるように制御されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の脚車輪分離型ロボット。
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