JP4481686B2 - 摩擦撹拌締結装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金等の複数枚の金属板をスポット的に摩擦撹拌締結する摩擦撹拌締結装置に関する。
従来は、アルミニウム合金等の複数枚の金属板を接合する場合、リベット打ちやボルト・ナットによる接合方法、スポット溶接による接合方法等が用いられている。
リベット打ちやボルト・ナットによる接合方法は、リベットやボルト・ナットを使用して複数枚の金属板を機械的に締結するものである。
スポット溶接による接合方法は、複数枚の金属板を電極で挟み、この間に大容量の電流を流し、電気抵抗で金属板が重なった部分を溶かし、この部分を冷やして固めることによって、複数枚の金属板をスポット的に溶接するものである。
しかし、リベット打ちやボルト・ナットによる接合方法を使用する場合、消耗材であるリベットやボルト・ナットが多数必要となり、さらに、締結箇所の増加に応じて重量が増加するという問題がある。
また、スポット溶接による接合方法を使用する場合、大容量の電流が必要となるので、接合に要するコストが高いという問題がある。
以上の問題を解決する装置として、特許文献1には、回転するピンの摩擦熱を利用して、複数枚の金属板の接合点を加熱・軟化させ、これらの金属板の内部を撹拌し、複数枚の金属板の接合点をスポット接合するスポット接合装置が開示されている。
また、特許文献2には、板状部材の突合せ接合部の表面に対する回転工具のシャンクの押圧力を検出する圧力センサを設け、この圧力センサの検出信号に基づいて、押圧力が所定範囲内になるように、加圧駆動手段の駆動を制御する摩擦撹拌接合装置が開示されている。
また、本発明に関連する技術として、特許文献3に記載の摩擦撹拌接合装置がある。
特開2003−251472号公報 特開2002−66763号公報 特開2001−340977号公報
特許文献1に開示されたスポット接合装置では、複数枚の金属板の内部を撹拌する位置を安定させることができず、安定した高精度の摩擦撹絆締結を実現することができないという問題がある。
また、特許文献2に記載の摩擦撹拌接合装置は、板状部材の突合せ接合部に高速回転する回転工具が挿入されている状態において、回転工具のシャンクの押圧力を検出しているので、回転工具のシャンクの押圧力について、高精度の検出ができない場合がある。
したがってこの特許文献2に記載の摩擦撹拌接合装置を用いて複数枚の金属板を締結する場合、回転工具のシャンクの押圧力を高精度で検出することができないので、これらの金属板の内部を撹拌する位置を安定させることができず、締結強度が低くなり、安定した高精度の摩擦撹絆締結をすることができないという問題がある。
本発明は、高精度で安定した摩擦撹絆締結によって大きな締結強度で複数枚の金属板を
締結することができる摩擦撹拌締結装置を提供することを目的とする。
本発明の摩擦撹拌締結装置は、複数の金属板を重ね合わせた被締結物を固定する被締結物取付部と、先端部に所定形状のピンを有する締結ツールと、前記締結ツールをその軸線まわりに回転させる主軸モータと、前記締結ツールをその軸線方向に移動させる送り軸モータと、前記固定された被締結物と前記締結ツールの先端部との接触位置を測定する接触位置測定手段と、前記測定した接触位置に基づいて、前記固定された被締結物における締結すべき部分の加工開始点と加工終了点とを設定する設定手段と、前記主軸モータが前記締結ツールを回転させた状態で、前記送り軸モータが前記締結ツールを前記設定された加工開始点から加工終了点まで移動させ、前記被締結物と前記締結ツールとの間に発生する摩擦熱によって前記被締結物を軟化させ、前記軟化させた部分を前記締結ツールで撹拌し、前記被締結物における締結すべき部分を摩擦撹拌締結する摩擦撹拌締結手段と、を有し、前記送り軸モータによって前記締結ツールをその軸線方向に移動させることによって前記締結ツールが被締結物に接触した位置である前記接触位置を前記接触位置測定手段によって測定し、前記設定手段によって前記加工開始点を前記測定した接触位置から設定量だけ前記被締結物から離間した位置に設定し、前記加工終了点を前記測定した接触位置から送り込み距離を加えた位置に設定し、前記接触位置測定手段によって前記接触位置を測定するための接触位置測定開始点と接触位置測定終了点とを前記設定手段によって設定可能とし、前記送り軸モータによって前記締結ツールをその軸線方向に前記接触位置測定開始点から前記接触位置測定終了点に向けて移動させることによって前記締結ツールが被締結物に接触した位置である前記接触位置を測定し、前記接触位置測定手段は、前記締結ツールが軸線方向に移動した送り量を、前記送り軸モータのトルクが所定の値を超えた場合に測定する手段であることを特徴とする。
前記主軸モータ及び前記送り軸モータの少なくともいずれか一のトルクが一定範囲内となるように、前記主軸モータの回転速度及び前記送り軸モータによる前記締結ツールの移動速度の少なくともいずれか一を制御する制御手段を有することが望まれる。
本発明によれば、複数枚の金属板を締結する場合に、重量の増加を防止し、締結に要するコストを抑えると共に、締結強度を強化し、安定した高精度の摩擦撹絆締結をすることができるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態である摩擦撹拌締結装置について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態である摩擦撹拌締結装置100の外観を概略的に示す図である。
摩擦撹拌締結装置100は、電動機が回転させ進退させる締結ツール20によって、ワーク取付部400に固定されたワーク(被締結物)500を軟化・撹拌させ、ワーク500を締結する装置であり、摩擦撹拌締結装置本体101と、締結ツール20と、サーボアンプ200と、インバータ300と、ワーク取付部400とを有する。
各実施の形態において、ワーク500として、100×70×t1のアルミニウム板を2枚使用した場合について説明する。なお、アルミニウム板2枚で構成されるワーク500以外に、他の金属板を複数枚重ね合わせたワークについて、各実施の形態を適用することができる。
図2は、摩擦撹拌締結装置100の断面を示す断面図である。
図2(a)は、摩擦撹拌締結装置本体101の断面を示す断面図である。
摩擦撹拌締結装置本体101は、締結ツール20と、フレーム21と、ラム22と、孔23と、ボールネジ24と、ガイドレール25と、スライダ26と、スクリュサポータ27と、固定部28と、係止部29と、複数のボルト30と、ナット部31と、ベアリング32a、32bと、直線軸受と、電動機とを有する。
図2(b)は、締結ツール20の側面図である。
締結ツール20は、ワーク500よりも硬い材質の鋼製であり、ラム22に装着される。また、締結ツール20の先端部は半球状に形成されたピン形状であり、このピン部分20aには刃が形成されていない。
フレーム21は、摩擦撹拌締結装置本体101が有する各構成要素を内部に納める筐体であり、内部形状が中空の箱形状である。また、フレーム21には、円形の孔23が形成されている。
ラム22は、円筒形状のものであり、先端部には締結ツール20が装着され、円形の孔23に進退可能に保持されている。また、ラム22と孔23との断面形状は略同径であり、ラム22と孔23との間には、ラム22の精度良い進退を確保するインロー部が形成され、ラム22のスムーズな進退を確保するグリス潤滑が施されている。
ボールネジ24は、回転運動を進退運動に変換するボールネジ機構の一部を構成するものであり、ラム22と平行に配置され、フレーム21に埋設されたベアリング32a、32bによって回転可能に支持されている。また、ボールネジ24の周囲にはネジ山が螺刻されており、所望の進退ストロークと略等しい長さを有する。
電動機は、フレーム21に内設され、ボールネジ24を回転する送り軸モータ120(図3に示す)と、ラム22に内設され、締結ツール20とラム22とを回転する主軸モータ130(図3に示す)とで構成されている。
直線軸受は、ラム22の進退時にラム22をガイドするリニアガイドであり、ガイドレール25とスライダ26とで構成されている。
ガイドレール25は、フレーム21内において、ラム22と平行に固定される軌道であり、所望の進退ストロークと略等しい長さを有する。
スライダ26は、ガイドレール25上に移動可能に支持される移動子である。上記直線軸受については、ガイドレール25上をスライダ26が移動する際に、上下方向と左右方向とのブレがほとんど生じないように精度良く構成する。
スクリュサポータ27は、フレーム21内に進退可能に配置され、固定部28と係止部29とナット部31とを有し、ボールネジ機構の回転運動をラム22の進退運動に正確に変換すると共に、上記直線軸受の精度をラム22の移動に安定して反映するように構成されている。
固定部28は、スクリュサポータ27の下部に取り付けられ、複数のボルト(図示せず)が、スライダ26に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込まれることにより、その右側面がスライダ26に固定される板状の部材である。
係止部29は、スクリュサポータ27の中部に形成され、その前面にラム22の基端部を係止する部位であり、その下部に複数の孔(図示せず)を備え、この孔に挿通された複数のボルト30が、固定部28に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込まれることにより、その右側面が固定部28に固定される部位である。
ナット部31は、スクリュサポータ27の上部に形成され、円形の孔の内部にボール(図示せず)を備え、このボールが、ボールネジ24に形成されたネジ山に嵌合することにより、ボールネジ24に螺合する部位である。つまり、ナット部31は、回転運動を進退運動に変換するボールネジ機構の一部をなすものである。
図3は、摩擦撹拌締結装置100における制御系の内部構成を示すブロック図である。
摩擦撹拌締結装置100は、入力部110と、送り軸モータ120と、主軸モータ130と、送り軸モータエンコーダ140と、主軸モータホールセンサ150と、サーボアンプ200と、インバータ300とを有する。
入力部110は、ワーク500の材質や厚さに応じた各種情報(接触位置測定開始点L1、接触位置測定終了点E1、早送り速度FF、接触検出速度F0、接触検出トルクTα、上限トルクTβ等)を入力し、入力した各種情報を入出力部202に出力するものである。
送り軸モータ120は、モータ駆動回路205の指示に基づいて、ボールネジ24を回転させるモータである。主軸モータ130は、モータ駆動回路304の指示に基づいて、ラム22と共にラム22に装着された締結ツール20を回転させるモータである。
送り軸モータエンコーダ140は、送り軸モータ120の回転量を測定し、測定した送り軸モータ120の回転量をフィードバック制御部206に出力するものである。主軸モータホールセンサ150は、主軸モータ130の回転速度を測定し、測定した主軸モータ130の回転速度をフィードバック制御部305に出力するものである。
サーボアンプ200は、入出力部201と、入出力部202と、目標値設定部203と、モータ制御出力部204と、モータ駆動回路205と、フィードバック制御部206とを有する。
サーボアンプ200は、基本的なハードウェア構成として、入力部110、送り軸モータ120、送り軸モータエンコーダ140、インバータ300との間の入出力インタフェースI/Oと、送り軸モータエンコーダ140が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、各種データやプログラムを記憶するROMと、各種データを一時的に記憶するRAMと、各種の演算処理を行うCPUとを有する。
入出力部201は、インバータ300、入出力部202との間で情報のやりとりをするものである。
入出力部202は、入力部110と入出力部201とフィードバック制御部206とから入力された情報を、目標値設定部203に出力し、入力部110とフィードバック制御部206とから入力された情報を、入出力部201に出力するものである。
目標値設定部203は、送り軸モータ120の回転量等の各種目標値を設定する目標値設定部であって、入出力部202から入力された情報を保持し、保持している情報をモータ制御出力部204に出力するものである。また、目標値設定部203は、フィードバック制御部206が出力した情報を入出力部202から入力し、フィードバック制御部206からの情報に基づいて、保持している情報を更新するものである。
モータ制御出力部204は、目標値設定部203に保持されている情報と、フィードバック制御部206が出力した動作信号とに基いて、送り軸モータ120を制御する制御信号を生成し、この制御信号をモータ駆動回路205に出力するものである。
モータ駆動回路205は、モータ制御出力部204が出力した制御信号に基づいて、送り軸モータ120を回転駆動させると共に、送り軸モータ120のトルクを測定し、測定した送り軸モータ120のトルクをフィードバック制御部206に出力するものである。
フィードバック制御部206は、送り軸モータエンコーダ140が測定した送り軸モータ120の回転量と、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータ120のトルクとを入力し、入力した送り軸モータ120の回転量とトルクとに基づいて、モータ駆動回路205の動作信号を生成し、この動作信号をモータ制御出力部204に出力するものである。また、フィードバック制御部206は、入力した送り軸モータ120の回転量とトルクとに基づいて、締結ツール20の先端部とワーク500との接触位置を測定し、目標値設定部203が保持している情報を更新するために、測定した締結ツール20の先端部とワーク500との接触位置を入出力部202に出力するものである。
インバータ300は、入出力部301と、目標値設定部302と、モータ制御出力部303と、モータ駆動回路304と、フィードバック制御部305とを有する。
インバータ300は、基本的なハードウェア構成として、主軸モータ130、主軸モータホールセンサ150、サーボアンプ200との間の入出力インタフェースI/Oと、主軸モータホールセンサ150が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、各種データやプログラムを記憶するROMと、各種データを一時的に記憶するRAMと、各種の演算処理を行うCPUとを有する。
入出力部301は、サーボアンプ200の入出力部201とフィードバック制御部305とから入力された情報を、目標値設定部302に出力し、フィードバック制御部305から入力された情報を、入出力部201に出力するものである。
目標値設定部302は、主軸モータ130の回転速度等の各種目標値を設定する目標値設定部であって、入出力部301から入力された情報を保持し、保持している情報をモータ制御出力部303に出力するものである。また、目標値設定部302は、フィードバック制御部305が出力した情報を入出力部301から入力し、フィードバック制御部305からの情報に基づいて、保持している情報を更新するものである。
モータ制御出力部303は、目標値設定部302に保持されている情報と、フィードバック制御部305が出力した動作信号とに基いて、主軸モータ130を制御する制御信号を生成し、この制御信号をモータ駆動回路304に出力するものである。
モータ駆動回路304は、モータ制御出力部303が出力した制御信号に基づいて、主軸モータ130を回転駆動させると共に、主軸モータ130のトルクを測定し、測定した主軸モータ130のトルクをフィードバック制御部305に出力するものである。
フィードバック制御部305は、主軸モータホールセンサ150が測定した主軸モータ130の回転速度と、モータ駆動回路304が測定した主軸モータ130のトルクとを入力し、入力した主軸モータ130の回転速度とトルクとに基づいて、モータ駆動回路304の動作信号を生成し、この動作信号をモータ制御出力部303に出力するものである。
次に、摩擦撹拌締結装置100の締結ツール20の進退に関する基本動作について説明する。
フレーム21が所望の方向に向けて固定されている状態において、モータ駆動回路205からの指示に基づいて送り軸モータ120がボールネジ24を回転させると、スクリュサポータ27が直線軸受に倣いながらボールネジ24に沿って前進し、ラム22も孔23に保持されながら前進する。一方、送り軸モータ120がボールネジ24を逆に回転させると、ラム22が退避する。このように、ボールネジ機構によって、締結ツール20を有するラム22が進退するように構成されている。
次に、摩擦撹拌締結装置100の制御動作について説明する。
図4は、摩擦撹拌締結装置100の制御動作を示すフローチャートである。
図5は、摩擦撹拌締結装置100がワーク500を摩擦撹拌締結する場合における締結ツール20の動作を概略的に示す図である。
第1の実施の形態において、接触検出トルクTαを送り軸モータ120の定格トルクの35%とし、締結加工時の送り込み距離d0を接触位置から1.5mmとし、主軸モータ130の回転速度を1100min−1とし、加工送り速度F1を0.5mm/sとし、加工終了点における撹拌時間を3.5秒と設定した場合について説明する。
なお、入力部110から入力された、ワーク500の材質や厚さに応じた各種情報(接触位置測定開始点L1、接触位置測定終了点E1、早送り速度FF、接触検出速度F0、接触検出トルクTα、上限トルクTβ、送り込み距離d0等)は、目標値設定部203に保持される。
入力部110において動作の開始が指示されると、主軸モータ130を回転させずに、送り軸モータ120を回転させ、原点Gから接触位置測定開始点L1まで、早送り速度FFで締結ツール20を送る(S41)。
送り軸モータエンコーダ140が測定した送り軸モータ120の回転量から、締結ツール20の先端部が接触位置測定開始点L1に到達したと判断すると、主軸モータ130を回転させない状態のままで、接触位置測定開始点L1から接触位置測定終了点E1まで、接触検出速度F0で締結ツール20を送る(S42)。
接触位置測定開始点L1から接触位置測定終了点E1までの間で、締結ツール20の先端部がワーク500に接触すると、送り軸モータ120の負荷が増加するので、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が高くなる。このため、送り軸モータトルクの値を利用して、締結ツール20の先端部とワーク500との接触位置を測定する。具体的には、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が、接触検出トルクTαを越えたか否かを判断する(S43)。
モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が、接触検出トルクTαを越えていなければ(S43)、送り軸モータエンコーダ140が測定した送り軸モータ120の回転量に基づいて、締結ツール20の先端部が接触位置測定終了点E1に到達したか否かを判断し(S44)、締結ツール20の先端部が接触位置測定終了点E1に到達していなければ、ステップS43に戻る。
締結ツール20の先端部が接触位置測定終了点E1に到達していれば(S44)、何らかの異常が発生したと判断し、送り軸モータ120を逆回転させ、原点Gまで早送り速度FFで締結ツール20を送り(S45)、異常終了させる。
モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクが、接触検出トルクTαを越えていれば(S43)、送り軸モータ120の回転を停止させ、送り軸モータエンコーダ140が送り軸モータ120の回転量を測定し、測定した送り軸モータ120の回転量に基づいて、締結ツール20の先端部とワーク500との接触位置(停止位置P0)を測定する。続いて、測定した締結ツール20の先端部とワーク500との停止位置P0を基準にして、目標値設定部203に保持されている接触位置測定開始点L1を加工開始点L2に、接触位置測定終了点E1を加工終了点E2に更新する(S46)。
具体的には、停止位置P0から摩擦撹拌締結装置本体101側に0.5mm戻った位置を加工開始点L2とし、停止位置P0に送り込み距離d0を加えた位置を加工終了点E2とする変更を行う(S46)。なお、入力部110から接触位置測定開始点L1と接触位置測定終了点E1とを予め入力し、入力した接触位置測定開始点L1と接触位置測定終了点E1とを目標値設定部203に保持させておく代わりに、停止位置P0の測定後に停止位置P0を基準にした加工開始点と加工終了点とを設定するようにしてもよい。つまり、送り軸モータトルクが接触検出トルクTαを越えた場合における送り軸モータ120の回転量を測定し、測定した送り軸モータ120の回転量に基づいて停止位置P0を測定した後に、測定した停止位置P0を基準にして加工開始点と加工終了点とを設定し、設定した加工開始点と加工終了点とを目標値設定部203に保持させる。
続いて、送り軸モータ120を逆回転させ、早送り速度FFで締結ツール20の先端部を加工開始点L2まで送る(S47)。締結ツール20の先端部が加工開始点L2に到達すると、主軸モータ130を回転させ、主軸モータ130の回転速度が目標回転速度S0に到達するまでの間(食付き時ドウェルH0)待機する(S48)。
主軸モータ130の回転速度が、目標回転速度S0に到達すれば、主軸モータ130を目標回転速度S0で回転させた状態で、送り軸モータ120を回転させ、加工開始点L2から加工終了点E2まで、加工送り速度F1で締結ツール20を送る(S49)。
目標回転速度S0で回転する締結ツール20の先端部がワーク500に接触し突入すると、締結ツール20とワーク500との間で摩擦熱が発生する。この摩擦熱によってワーク500の温度が、ワーク500の溶融温度付近まで上昇すると、ワーク500が軟化し始める。
軟化したワーク500を締結ツール20でさらに撹拌しながら送り進めていくことによって、ワーク500を構成する2枚のアルミニウム板のそれぞれを軟化・撹拌させることができる。そして、この状態でワーク500を冷やせば、ワーク500を構成する2枚のアルミニウム板のそれぞれが混ざり合った状態で硬化し、2枚のアルミニウム板を締結することができる。
締結ツール20の先端部が加工終了点E2に到達すれば(S50)、撹拌を持続することによって高い締結力を得るために、目標回転速度S0で締結ツール20を回転させた状態のままで、加工終了点E2において所定時間(加工終了点ドウェルH1)待機する(S51)。
続いて、所定時間が経過したか否かを判断し(S51)、所定時間が経過していなければ、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が、上限トルクTβを越えたか否かを判断する(S52)。
モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が、上限トルクTβを越えていなければ(S52)、ステップS51に戻る。一方、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータトルクの値が、上限トルクTβを越えていれば(S52)、原点まで早送り速度FFで戻り(S53)、正常終了する。
また、加工終了点E2において所定時間が経過していれば(S51)、原点まで早送り速度FFで戻り(S53)、正常終了する。
図6は、送り軸(回転する締結ツール20)の送り量と、送り軸モータ120のモータトルクと、ワーク500の表面温度との関係を示す図である。
なお、図6(a)は、横軸を時間軸とし、縦軸を送り軸の送り量の値を示す軸としたグラフを示す図であり、図6(b)は、横軸を時間軸とし、縦軸を送り軸モータ120のモータトルクの値を示す軸としたグラフを示す図であり、図6(c)は、横軸を時間軸とし、縦軸をワーク500の表面温度の値を示す軸としたグラフを示す図である。
上記制御動作を実行する場合、送り軸の送り量と、送り軸モータ120のモータトルクと、ワーク500の表面温度とが、図6に示すように変化することが望ましい。
第1の実施の形態において、入力部110から入力され、目標値設定部203に保持される各種情報は、ワークの材質や厚さに応じて適宜変更される各種情報のうちの一例である。したがって、目標値設定部203に保持される各種情報は、ワークの材質や厚さに応じて適宜変更する。
第1の実施の形態によれば、締結ツール20によって、ワーク取付部400に固定されたワーク500を締結する場合に、締結加工を実行する前に、締結ツール20の先端部とワーク500との位置関係を正確に測定し、ワーク500に対する送り量(送り深さ)を常に一定にすることができるので、締結強度を強化し、安定した摩擦撹絆締結を実現することができる。
[第2の実施の形態]
回転する締結ツール20がワーク500を撹拌している状態において、締結ツール20とワーク500との間で発生する摩擦熱によってワーク500の温度が上昇と下降とによって大きく変動すると、ワーク500の内部で軟化と硬化とが不規則に繰り返されることになる。このように、ワーク500の内部において軟化と硬化とが繰り返されると、ワーク500の内部状態が不均一となり、ワーク500の締結強度が低下する原因となる。このため、回転する締結ツール20がワーク500を撹拌している状態において、ワーク500内部の温度変化を極力小さく抑えることが重要である。
第2の実施の形態は、摩擦撹拌締結装置100において、ワーク500内部の温度変化を極力小さく抑え、ワーク500の締結強度が低下することを防止するために、ワーク500の撹拌状態を一定に保つようにするものである。
つまり、回転する締結ツール20の先端部が押し当てられてワーク500が軟化している状態において、モータ駆動回路205が測定した送り軸モータ120の送り軸モータトルクを、フィードバック制御部206にフィードバックし、モータ駆動回路304が測定した主軸モータ130の主軸モータトルクをフィードバック制御部305にフィードバックし、それぞれのトルクが一定範囲内に収まるように、送り軸モータ120の回転速度と、主軸モータ130の回転速度とを制御する。
具体的には、送り軸モータ120の送り軸モータトルクが、予め設定した上限トルクT11を上回った場合には、送り軸モータ120の回転速度を下げて送り軸(回転する締結ツール20)の移動速度を遅くする。一方、送り軸モータ120の送り軸モータトルクが、予め設定した下限トルクT12を下回った場合には、送り軸モータ120の回転速度を上げて送り軸の移動速度を速くする。
また、主軸モータ130の主軸モータトルクが、予め設定した上限トルクT21を上回った場合には、主軸モータ130の回転速度を下げる。一方、主軸モータ130の主軸モータトルクが、予め設定した下限トルクT22を下回った場合には、主軸モータ130の回転速度を上げる。送り軸モータ120と主軸モータ130とのいずれについても、モータの回転速度の変化が即時に撹拌状態の変化に影響を与える。このため、回転速度を上げる場合は、目標回転速度を元の回転速度の101〜110%程度にすることが好ましい。また、回転速度を下げる場合は、目標回転速度を元の回転速度の90〜99%程度にすることが好ましい。
このように、それぞれのトルクが一定範囲内に収まるように制御することによって、ワーク500の撹拌状態を一定範囲に維持することができる。
第2の実施の形態によれば、回転する締結ツール20の先端部が押し当てられてワーク500が軟化している状態において、送り軸モータ120と主軸モータ130との負荷の変化に応じて、送り速度と主軸回転速度とを変化させることによって、一定量以上の摩擦熱を持続させることができる。これにより、高効率の撹拌をすることができ、締結強度を強化し、内部状態が安定した摩擦撹絆締結を実現することができる。
なお、本実施例をプログラムの発明として把握することができる。
つまり、上記制御動作に係るプログラムを所定の記憶媒体に記憶させ、このプログラムを摩擦撹拌締結装置に実行させることで、本発明を実現することができる。
穴あけ加工機に取り付けられたドリルの代わりに、摩擦撹拌締結用の締結ツールを穴あけ加工機に取り付けることによって、この穴あけ加工機に本発明を適用することができる。
本発明の実施の形態の摩擦撹拌締結装置を概略的に示す模式図である。 図1に示す摩擦撹拌締結装置の(a)部分拡大断面図、(b)部分拡大側面図である。 本発明の実施の形態の摩擦撹拌締結装置の制御系の内部構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態の摩擦撹拌締結装置の制御動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態の摩擦撹拌締結装置の動作を概略的に示す説明図である。 図5に示す摩擦撹拌締結装置の動作における(a)送り軸の送り量、(b)送り軸モータのモータトルク、(c)ワークの表面温度、の時間変化を示すグラフである。
20…締結ツール、
21…フレーム、
22…ラム、
23…孔、
24…ボールネジ、
25…ガイドレール、
26…スライダ、
27…スクリュサポータ、
28…固定部、
29…係止部、
30…複数のボルト、
31…ナット部、
32…ベアリング、
100…摩擦撹拌締結装置、
101…摩擦撹拌締結装置本体、
110…入力部、
120…送り軸モータ、
130…主軸モータ、
140…送り軸モータエンコーダ、
150…主軸モータホールセンサ、
200…サーボアンプ、
201…入出力部、
202…入出力部、
203…目標値設定部、
204…モータ制御出力部、
205…モータ駆動回路、
206…フィードバック制御部、
300…インバータ、
301…入出力部、
302…目標値設定部、
303…モータ制御出力部、
304…モータ駆動回路、
305…フィードバック制御部、
400…ワーク取付部、
500…ワーク。

Claims (2)

  1. 複数の金属板を重ね合わせた被締結物を固定する被締結物取付部と、
    先端部に所定形状のピンを有する締結ツールと、
    前記締結ツールをその軸線まわりに回転させる主軸モータと、
    前記締結ツールをその軸線方向に移動させる送り軸モータと、
    前記固定された被締結物と前記締結ツールの先端部との接触位置を測定する接触位置測
    定手段と、
    前記測定した接触位置に基づいて、前記固定された被締結物における締結すべき部分の
    加工開始点と加工終了点とを設定する設定手段と、
    前記主軸モータが前記締結ツールを回転させた状態で、前記送り軸モータが前記締結ツ
    ールを前記設定された加工開始点から加工終了点まで移動させ、前記被締結物と前記締結
    ツールとの間に発生する摩擦熱によって前記被締結物を軟化させ、前記軟化させた部分を
    前記締結ツールで撹拌し、前記被締結物における締結すべき部分を摩擦撹拌締結する摩擦
    撹拌締結手段と、
    を有し、
    前記送り軸モータによって前記締結ツールをその軸線方向に移動させることによって前
    記締結ツールが被締結物に接触した位置である前記接触位置を前記接触位置測定手段によ
    って測定し、
    前記設定手段によって前記加工開始点を前記測定した接触位置から設定量だけ前記被締
    結物から離間した位置に設定し、前記加工終了点を前記測定した接触位置から送り込み距
    離を加えた位置に設定し、前記接触位置測定手段によって前記接触位置を測定するための接触位置測定開始点と接触位置測定終了点とを前記設定手段によって設定可能とし、
    前記送り軸モータによって前記締結ツールをその軸線方向に前記接触位置測定開始点か
    ら前記接触位置測定終了点に向けて移動させることによって前記締結ツールが被締結物に
    接触した位置である前記接触位置を測定し、
    前記接触位置測定手段は、前記締結ツールが軸線方向に移動した送り量を、前記送り軸
    モータのトルクが所定の値を超えた場合に測定する手段であることを特徴とする摩擦撹拌締結装置。
  2. 前記主軸モータ及び前記送り軸モータの少なくともいずれか一のトルクが一定範囲内と
    なるように、前記主軸モータの回転速度及び前記送り軸モータによる前記締結ツールの移
    動速度の少なくともいずれか一を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌締結装置。
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