JP4480063B2 - 低圧引込電線 - Google Patents

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Description

本発明は、低圧配電線から建物までの区間で電力供給に用いられる低圧引込電線に関し、特に、耐トラッキング性及び取扱い性に優れる低圧引込電線に関する。
電力供給のために用いられる電線やケーブルのうち、低圧配電線と需要者の建物間に架設又は布設されて使用される屋外用の低圧引込電線としては、2心以上の撚り合わせ型又は各心並行配置の平型のDV電線があり、絶縁体として塩化ビニル樹脂を使用したものが一般的である。
こうした低圧引込電線の撚り合わせられた各心線は、それぞれを識別できるように導体を被覆する絶縁体がそれぞれ異なった色彩の樹脂とされている。これらの絶縁体に黒色以外の樹脂、すなわち、カーボンを含有していない樹脂を用いていると、こうした絶縁体はカーボンを含有している黒色樹脂製の絶縁体に比べて紫外線の遮断効果が小さく、酸化劣化が起りやすく、太陽光の下で劣化による亀裂が生じやすくなっていた。この絶縁体に生じた亀裂や傷が進行すると、部分的に導体が露出するようになる。
一方、こうした電線では、絶縁体表面が湿潤又は汚損すると、絶縁体表面に沿って漏れ電流が流れ、発生したジュール熱による水分の蒸発に伴って表面が局部的に乾燥し、電気抵抗の高い部分が生成する結果、電界の不整が生じ、シンチレーションと呼ばれる微小発光を伴う局部的な微小放電が発生し、この放電に伴う熱により絶縁材料の一部が分解されて炭化物が生成するというトラッキング現象が生じることもあった。この現象は、電線表面に塩分を含んだ塵埃が堆積するとさらに発生しやすくなる。
2心以上の低圧引込電線においてトラッキング現象が発生すると、絶縁体から生じた炭化物は導電率が大きいため、心線間の漏れ電流がこれを流れてこの近傍に電界が集中し、シンチレーション、炭化物生成の過程が促進されて炭化物はさらに成長していく。やがて、心線間は導電率の高い炭化物で覆われてしまい、常時漏れ電流が流れるようになる。
低圧引込電線の各心線が互いに近接している部分に絶縁体表面の亀裂や傷による導体露出部が存在する場合に、この導体露出部近傍でトラッキング現象により前記炭化物が成長した状態に至ると、小雨、霧雨、霧、あるいは結露等で絶縁体表面に適当な水分が供給された際、シンチレーション(火花放電)が生じて導体露出部分間のアーク放電を誘発することとなる。このアーク放電が連続的に発生する状態まで絶縁体劣化が進行すると、アーク放電の熱により導体が軟化、溶融し、架設張力に耐えられなくなって断線に至る。
このような低圧引込電線の劣化の問題に対して、導体を被覆する所定色の絶縁体外側にさらにカーボンが含まれた黒色樹脂製の絶縁層を配設して絶縁体の劣化を防ぐと共に、端部で各心線の識別を可能とした低圧引込電線の例が、特開2002−324443号公報に開示されている。
一方、トラッキング現象については、高圧用の絶縁電線でも表面への塩分と湿分の付着により起り得、絶縁性能を劣化させて電線寿命を縮めるという問題があることから、従来から耐トラッキング性を確保する研究開発が行われており、近年、絶縁体表面に導電部分を生じにくくしてトラッキング現象による絶縁体劣化を防止できる電線が各種提案されており、その一例として、特開2000−133048号公報、特開2001−52535号公報、及び特開2002−358839号公報に記載されるものがある。
前記各公報で示される従来の電線は、ポリオレフィン系又はゴム系ベース樹脂に金属水酸化物を配合した樹脂を最外層の絶縁体とした絶縁電線であり、十分な機械的強度を確保しつつ耐トラッキング性を向上させており、長期間にわたって安定した絶縁性能を備え、トラッキング現象の発生を防止するものである。
特開2002−324443号公報 特開2000−133048号公報 特開2001−52535号公報 特開2002−358839号公報
従来のケーブルは以上のように構成されており、前記特許文献1に示される従来の低圧引込電線の場合、紫外線による劣化に対しては強くなるものの、紫外線以外の各種要因でも絶縁体に傷や亀裂が生じる場合があり、さらにこれらの進行により、部分的に導体が露出するようになることがある。この導体露出部が形成されるケースとしては、(一)台風等の強風により、トタン等の飛来物が電線に当たって導体に達する傷が入る場合、(二)施工時に電線を引きずるなどして誤って傷を入れてしまう場合、(三)施工後に他の電線等と接触し摩擦により絶縁体が削られる場合、等がある。
従来の低圧引込電線に一般的に用いられている塩化ビニル樹脂製絶縁体は、口出し等の作業性は優れているものの、傷が入りやすく摩耗しやすい性質を有しており、また、耐トラッキング性能が著しく劣っているため、塩化ビニル樹脂を絶縁体に使用している2心以上の低圧引込電線において、傷による導体露出部が2心線の互いに近付いている部分に形成された場合、湿潤状態で発生するトラッキング現象で絶縁体の劣化がさらに進行し、導体露出部分間にアーク放電が生じて断線に至る割合が著しく高くなるという課題を有していた。
一方、前記特許文献2ないし4に示される従来の耐トラッキング性絶縁電線は、複数本の絶縁心線を耐トラッキング組成物からなる絶縁体で覆って形成される高圧電線であり、絶縁心線を複数本撚り合わせたり並列に一体化させたりした低圧引込電線としては考慮されておらず、絶縁体に用いたのと同じ素材を単純に低圧引込電線の絶縁体に転用するのみでは各線の絶縁体の強度及び耐トラッキング性が不足することとなり、施工時や施工後に様々な要因で入る傷や亀裂の進行を食止めることはできず、また、心線の間隔が近く、十分に絶縁沿面距離を確保できないこともあり、部分的に導体が露出するようになると、結局、近接する2心線間で発生するトラッキング現象が導体露出部分間でのアーク放電を誘発し、アーク放電による断線の危険性が高くなるという課題を有していた。
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、耐トラッキング性を向上させて心線絶縁体表面での放電現象による発火や断線事故を防止できる低圧引込電線を提供することを目的とする。
本発明に係る低圧引込電線は、複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、所定の外径Rとなる前記心線のうち、少なくとも一つの心線が、突起が表面周方向に等間隔でn個配置されてなる断面形状を、心線長手方向に連続させて、又は、少なくとも所定長さ連続させた形状部分を心線長手方向に所定間隔で繰返し配置されて形成され、前記各突起は、表面周方向角度範囲φにわたり外径位置から所定高さL突出する突起形状とされてなり、撚り合わせ状態で隣合う二つの心線を、一方の心線における突起部分間の溝位置で他方の心線の外周に隣接させ、各心線の導体中心同士を最短距離で結ぶ線上にある心線外面位置間の間隔dを、0.1(mm)≦d≦R/2とするものである。
このように本発明においては、低圧引込電線における少なくとも一つの心線の絶縁体表面を、複数の突起が周方向に所定間隔で設けられた断面形状の連続状態に形成し、心線表面に連続する凹凸形状を与える一方、撚り合わせて隣合う心線同士が一方の心線における突起間の溝部分に他方の心線外面を隣接させて心線間に間隔を空けた状態とされ、各心線間の絶縁沿面距離を単純な円断面形状の場合に比べ大きく取ったことにより、耐トラッキング性を高められ、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体の炭化が起こりにくく、様々な要因で入った絶縁体の傷や亀裂から導体露出部間のアーク短絡につながることがほとんどなくなり、発火や断線事故の危険性を小さくして信頼性を高められる。
また、本発明に係る低圧引込電線は必要に応じて、前記心線のいずれか一つが、突起のない円断面形状とされ、他の心線が複数存在する場合、それぞれ各突起の数n及び/又は突起の周方向角度範囲φを互いに異ならせた断面形状として形成されるものである。
このように本発明においては、心線の一つを円断面とすると共に、残りの心線が複数の場合に心線毎に断面形状を異ならせて形成し、各心線の外形を各心線相互で異ならせることにより、目視や触感で心線を容易に識別可能となり、仮に色が同じ場合でも確実に心線を識別でき、導体の露出、接続や布設又は点検時の相確認といった心線に対する各種作業性を大きく向上させられる。
また、本発明に係る低圧引込電線は必要に応じて、前記心線の少なくとも一つが、前記突起部分の少なくとも一つの表面に、突起の周方向角度範囲φより小さい角度範囲δの溝幅、及び突起の外径位置からの高さLより小さい溝深さlとなる溝を一又は複数並列状態で心線長手方向に連続させて形成されるものである。
このように本発明においては、心線表面の連続する突起部分に別途溝を設け、心線における絶縁沿面距離をさらに増大させることにより、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体の炭化がより一層起こりにくくなり、導体露出部分間でのアーク短絡の危険性を排除でき、安全性と信頼性を向上させられると共に、小さな溝の存在で心線の識別性が上がり、作業時の心線取扱いにおける間違い等も起りにくくなる。
また、本発明に係る低圧引込電線は、複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、各心線の外周表面における他の一又は複数の心線と撚り合わせ状態で最も近接する一又は複数の略螺旋状の連続部位に、心線間で互いに係合する一又は複数並列状態の突条部をそれぞれ形成し、各心線毎に突条部の配設数を異ならせるものである。
このように本発明においては、心線撚り合わせ状態で他心線との近接部分となる各心線表面の略螺旋状部位に突条部を形成し、心線間で突条部を互いに係合させて各心線間の間隔を一定量確保しつつ撚り合わせて一体化し、心線間の絶縁沿面距離を単純な円断面形状の場合に比べ大きく取ったことにより、耐トラッキング性を高められ、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体の炭化が起こりにくく、様々な要因で入った絶縁体の傷や亀裂からアーク短絡につながることがほとんどなくなり、発火や断線事故の危険性を小さくして信頼性を高められる。さらに、突条部の数を各心線毎に変えて各心線の外形を異ならせることで、目視や触感で心線を容易に識別可能となり、仮に色が同じ場合でも確実に心線を識別でき、導体の露出、接続や布設又は点検時の相確認といった心線に対する各種作業性を大きく向上させられる。
また、本発明に係る低圧引込電線は、複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、心線表面に長手方向へ連続する一又は複数の突条部を形成し、撚り合わせ状態で近接する心線同士の間に少なくとも一方の心線の一突条部を撚り合わせピッチに基づく所定間隔で位置させる一方、前記突条部が複数の心線にそれぞれ配設される場合には、各心線毎に突条部の配設数を異ならせるものである。
このように本発明においては、心線表面に心線長手方向へ連続する突条部を形成し、撚り合わせ状態で近接する心線と心線の間に所定長さ毎にいずれかの心線の突条部が位置する状態として、突条部の介在に伴う心線間の間隔の広がった部分が所定長さ毎に確保されることにより、心線表面に付着した水が心線から流れ落ちる際に、一部が心線間の間隔の広い部分を通って流れ落ち、この水で心線間の隙間に付いた塵埃を洗い流せることとなり、水と一緒に塵埃を心線から分離でき、塵埃が心線表面に堆積物として付着した状態になりにくく、耐トラッキング性を高めてトラッキング現象による心線表面への導電路の形成を防止でき、アーク短絡及びこれに伴う発火や断線事故の起る危険性を著しく低減できる。さらに、突条部の数を各心線毎に変えて各心線の外形を異ならせることで、目視や触感で心線を容易に識別可能となり、仮に色が同じ場合でも確実に心線を識別でき、導体の露出、接続や布設又は点検時の相確認といった心線に対する各種作業性を大きく向上させられる。
また、本発明に係る低圧引込電線は、複数の電力供給用の絶縁心線を並列させて一体化させてなる平の低圧引込電線において、前記各心線間に、当該心線の絶縁体と同素材で隣合う心線同士を一体に連結しつつ心線長手方向に連続する略薄板状のブリッジ部を備え、当該ブリッジ部に心線長手方向へ所定間隔で開口部を配置し、ブリッジ部が、心線長手方向に連続する長さを前記開口部の心線長手方向の開口長さより長くして形成されると共に、ブリッジ部が三つ以上の心線に対応して複数配設される場合には、各ブリッジ部毎に開口部の位置を心線長手方向に異ならせるものである。
このように本発明においては、並列状態の各心線間のブリッジ部に開口部が設けられ、所定長さ毎に心線間に水等の通過可能な孔が確保されることにより、心線表面に付着した水が心線から流れ落ちる際に、一部がブリッジ部の開口部を通って流れ落ち、この水で心線間の隙間に付いた塵埃を洗い流せることとなり、水と一緒に塵埃を心線から分離でき、塵埃が心線表面に堆積物として付着した状態になりにくく、耐トラッキング性を高めてトラッキング現象による心線表面への導電路の形成を防止でき、アーク短絡及びこれに伴う発火や断線事故の起る危険性を著しく低減できる。
また、本発明に係る低圧引込電線は必要に応じて、少なくともオレフィン系またはゴム系ベース樹脂に金属水酸化物を所定割合配合した材料で前記心線の絶縁体を形成するものである。
このように本発明においては、絶縁体としてオレフィン系またはゴム系ベース樹脂を用いると共に、これに金属水酸化物を配合させ、高絶縁性能を付与することにより、耐トラッキング性を高め、表面への導電路の形成を防止でき、絶縁体に傷や亀裂が生じても導体露出部分間でのアーク放電につながる危険性が低く、発火や断線事故を起りにくくすることができる。さらに、絶縁体が仮に燃焼した場合でも、金属水酸化物の結晶水が噴出し、生じるジュール熱を奪って周囲に放散させる消火作用を発揮し、絶縁体を燃えにくくすると共に、噴出する結晶水の蒸発ガスの勢いで炭化物を吹飛ばして散逸させ、導電路となる炭化物の成長を抑えてトラッキング現象の進行も防止できる。
また、本発明に係る低圧引込電線は必要に応じて、高密度ポリエチレンを含んだオレフィン系ベース樹脂に少なくとも金属水酸化物を所定割合配合した材料で前記心線の絶縁体を形成するものである。
このように本発明においては、絶縁体として高密度ポリエチレンを含んだオレフィン系ベース樹脂を用いると共に、これに金属水酸化物を配合させ、高絶縁性能を与えつつ、耐摩耗性、耐傷付き性の優れた絶縁体とすることにより、耐トラッキング性が高まることと合わせて、水分や塵埃が付きやすく放電の起点となりがちな表面の傷が生じにくく、放電が起りにくくなる上、断線に至る要因の一つである導体に達するような傷も入りにくくなり、安全性及び信頼性の一層の向上が図れる。さらに、絶縁体が仮に燃焼した場合でも、金属水酸化物の結晶水が噴出し、生じるジュール熱を奪って周囲に放散させる消火作用を与えられ、絶縁体を燃えにくくすると共に、噴出する結晶水の蒸発ガスの勢いで炭化物を吹飛ばして散逸させ、導電路となる炭化物の成長を抑えてトラッキング現象の進行も防止できる。
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る低圧引込電線の断面図、図2は本実施形態に係る低圧引込電線の概略斜視図である。
前記各図において本実施形態に係る低圧引込電線1は、所定の外径Rとなる三本の絶縁心線11、12、13を撚り合わせてなるものであり、このうち二つの心線12、13が、心線外周に等間隔で複数個の突起16が配置された断面形状を長手方向に連続させて形成されてなり、各心線11、12、13の導体中心同士を最短距離で結ぶ線上にある心線外面位置間に所定の間隔dを確保した構成である。
前記心線11、12、13は、中心の導体14外側に絶縁体15を被覆してなる構成である。この心線11、12、13のうち一つ(心線11)は、突起のない円断面形状とされ、他の心線12、13は、それぞれ各突起16の周方向角度範囲φ及び突起数nを互いに異ならせた表面形状として形成される構成である。心線12は、周方向角度範囲φ=70°にわたって外径位置から所定高さL突出する突起16を表面周方向に等間隔でn=4個配置される断面形状を、長手方向に連続させて形成される構成である。心線13は、周方向角度範囲φ=30°にわたり外径位置から所定高さL突出する突起16を表面周方向に等間隔でn=6個配置される断面形状を、長手方向に連続させて形成される構成である。
各心線11、12、13の撚り合わせ状態においては、隣合う二つの心線を、一方の心線がその突起16部分間の溝17位置で他方の心線の外周に隣接する配置関係としており、各心線11、12、13の各導体14中心同士を最短距離で結ぶ線上にある心線外面位置間において所定の間隔dを発生させている。この間隔dは、0.1(mm)≦d≦R/2としており、各心線11、12、13間の絶縁沿面距離は単純な円断面形状の場合に比べ大きくなっている。なお、突起16部分間の溝17の心線周方向角度範囲θは、
θ=360°/n−φ
となるが、この溝17の角度範囲θのとりうる範囲は、
θ<2tan-1〔R{(3R/2+d)(R/2+d)}-1/2/2〕
となる。また、突起16の高さLは、この溝17の周方向角度範囲θを用いて、
L=R〔2−{1−3tan2(θ/2)}1/2〕{1+tan2(θ/2)}-1/2/2−R/2+d/cos(θ/2)
で表される。
前記絶縁体15は、耐摩耗性、耐傷付き性に優れる高密度ポリエチレンを含んだオレフィン系ベース樹脂に金属水酸化物を配合したものであり、導体14に達する傷が入りにくく、断線に至る要因を減じることができることに加え、オレフィン系樹脂の備える塩化ビニル樹脂に比べて耐トラッキング性が優れるという性質により、さらなる信頼性向上を図れる。また、絶縁体15にはカーボンブラック等も配合しており、長期間屋外で使用する場合に必要な耐候性を確保している。さらに、この絶縁体15は、熱可塑性、非架橋系材料を使用することにより、リサイクル可能であり、且つ、焼却しても有害なガスを発生しないなど、環境に与える負担が小さいことに加え、塩化ビニル樹脂に比べて耐熱温度が高いことから許容電流を大きくでき、電線サイズの縮小化も図れる、といったメリットが得られる。
絶縁体15に配合される金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが主で、1種類のみを配合する場合と、2種類以上の金属水酸化物を併用し配合する場合がある。この金属水酸化物の全配合割合は、オレフィン系ベース樹脂100重量部に対し、50〜180重量部である。この配合割合が50重量部を下回ると、難燃性や耐トラッキング性の低下を招き、180重量部を上回ると、絶縁性能や機械的特性の低下を招く。
こうした金属水酸化物は、絶縁体15表面の水分を漏れ電流が流れて生じるジュール熱や局部放電により生じた熱に対し、金属水酸化物の含有する水分を蒸発させてこれらの熱を拡散させ、また、放電や熱により分解する一方、同時に発生するガスで炭化物を散逸させ、トラッキング現象の進行を抑制する性質を有する。また、金属水酸化物は、絶縁体15を燃えにくくする効果も併せ持ち、燃焼しやすいポリエチレン等オレフィン系樹脂の性質を補って、家屋に引き込む低圧引込電線の絶縁材料としての十分な難燃性を確保できる。
次に、前記構成に基づく低圧引込電線のトラッキング現象抑制状態について説明する。絶縁体15表面に長手方向へ連続し且つ周方向に所定間隔で配置される突起16部分により、各心線11、12、13間に所定の間隔が確保されている上、近接する心線間の絶縁沿面距離が大きくなっていることから、耐トラッキング性が高く、アーク短絡につながる危険性は極めて小さいが、仮に、絶縁体15表面に水分や塩分を含んだ塵埃が付着又は堆積して絶縁体15表面が湿潤又は汚損状態になると、絶縁体15表面に沿って漏れ電流が流れる。
この電流で発生したジュール熱による水分の蒸発に伴い、絶縁体15の一部表面が局部的に乾燥すると、電流路が遮断されて放電が生じ、この放電に伴う熱で絶縁体15の一部が熱分解するが、絶縁体15に含まれる金属水酸化物にこの熱が加わると、金属水酸化物の結晶水が噴出し、熱を奪って周囲に放散させ、絶縁体15を燃えにくくして炭化物の生成を抑えると共に、噴出する結晶水の蒸発ガスの勢いで炭化物を吹飛ばして散逸させ、導電路となる炭化物の成長を抑えてトラッキング現象の進行を防止する。
一方、こうした2心以上の撚り合わされた低圧引込電線は、点検作業や、布設、接続等にあたって導体を露出させる作業では、相確認を行うために心線の識別が必要となるが、低圧引込電線1において各心線11、12、13毎に突起16部分の数を異ならせていることで、こうした心線外形の差異を基に識別することができ、所望の心線を目視や触感で容易に識別して作業が行える。耐候性を確保するためにカーボンブラックを配合した黒色の絶縁体を全ての心線に使用して色が同じである場合でも、何ら問題なく心線の識別が可能である。
このように、本実施形態に係る低圧引込電線は、二つの心線12、13の絶縁体15表面を、複数の突起16が周方向に所定間隔で設けられた断面形状の連続状態に形成し、心線表面に連続する凹凸形状を与える一方、撚り合わせて隣合う心線同士が一方の突起16間の溝17部分に他方の外面を隣接させて心線間に間隔が空いた状態とされ、各心線11、12、13間の絶縁沿面距離を単純な円断面形状の場合に比べ大きく取ったことから、耐トラッキング性を高められ、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体15の炭化が起こりにくく、様々な要因で入った絶縁体15の傷や亀裂からアーク短絡につながることがほとんどなくなり、発火や断線事故の危険性を小さくして信頼性を高められる。
なお、前記実施形態に係る低圧引込電線においては、心線12、13の絶縁体15の表面に長手方向へ連続する突起16部分を周方向所定間隔で複数設ける構成としているが、これに加えて、図3に示すように、前記突起16部分に、突起16の周方向角度範囲φより小さい角度範囲δ、突起16の高さLより小さい溝深さlとなる溝18を一又は複数並列状態で心線長手方向に連続形成する構成とすることもでき、心線における絶縁沿面距離をさらに増大させられることとなり、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体の炭化がより一層起こりにくくなり、導体露出部分間でのアーク短絡の危険性を排除でき、安全性と信頼性を向上させられると共に、小さな溝18の存在で心線の識別性が上がり、作業時の心線取扱いにおける間違い等も起りにくくなる。
また、前記実施形態に係る低圧引込電線においては、心線12、13の絶縁体15の表面に突起16部分を心線長手方向へ連続する突条状として形成する構成としているが、これに限らず、所定長さの突条部分を心線長手方向へ所定間隔で繰り返し配置する断続形状として突起16を形成する構成とすることもできる。さらに、突起16を突条状に連続させる場合も、連続する突起16の一部を所定長さごとに隣り合う他の突起16と連結し、突起16部分間を連続する溝ではなく所定間隔ごとに凹部が配置される形状とすることもできる。
また、前記実施形態に係る低圧引込電線においては、心線11、12、13間で突起の数や配置状態を異ならせ、外形の差異で心線同士を識別可能とする構成としているが、これに加えて、絶縁体15の長手方向に識別用の色帯の付加や、絶縁体15表面へのマーキングで識別可能とする構成とすることもできる。さらに、上記以外の識別方法として、絶縁体15の色により識別するため、絶縁体15を2層以上とし最外層に着色し耐候性を向上させた着色絶縁材料を適用する構成としてもかまわない。
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。図4は本実施の形態に係る低圧引込電線の断面図、図5は本実施形態に係る低圧引込電線の側面図である。
前記各図において本実施形態に係る低圧引込電線2は、それぞれ導体24と絶縁体25からなる三本の絶縁心線21、22、23を撚り合わせてなるものであり、前記心線21、22、23のそれぞれが、各心線の外周表面における他の二つの心線と撚り合わせ状態で最も近接する二つの略螺旋状の連続部位に、心線間で互いに係合する一又は複数並列状態の突条部26をそれぞれ形成され、且つ各心線21、22、23毎に突条部26の配設数を異ならせてなる構成である。
三本の心線21、22、23のうち、心線21は、一列で略螺旋状に連続する突条部26を周方向に所定間隔空けて二つ形成される構成である。また、心線22は、一列で連続する突条部26と、二列並列状態で連続する突条部26とを周方向に所定間隔空けてそれぞれ形成される構成である。さらに、心線23は、二列並列状態で連続する突条部26を周方向に所定間隔空けて二組形成される構成である。二列に並列している突条部26の間には溝部27が生じており、これに他の心線における一列の突条部26を係合させる仕組みであり、各心線21、22、23は撚り合わせ状態でそれぞれ突条部26と溝部27とを係合させ、各心線間の間隔を一定寸法に保っている。
前記絶縁体25は、その組成が前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
次に、本実施形態に係る低圧引込電線のトラッキング現象抑制状態について説明する。絶縁体25表面で略螺旋状に連続して互いに係合する突条部26により、心線21、22、23間に所定の間隔が確保され、近接する心線21、22、23間の絶縁沿面距離が大きくなっていることから、耐トラッキング性が高く、アーク短絡につながる危険性は極めて小さく、また、前記第1の実施形態同様、絶縁体25をオレフィン系ベース樹脂に金属水酸化物を配合したものとしており、仮に、ケーブル表面に水分や塩分を含んだ塵埃が付着又は堆積して絶縁体25表面が湿潤又は汚損し、絶縁体25表面に沿って漏れ電流が流れる場合でも、導電路となる炭化物の生成、成長を抑えてトラッキング現象の進行を防止できる。
このように、本実施形態に係る低圧引込電線は、心線撚り合わせ状態で他心線との近接部分となる各心線21、22、23表面の略螺旋状部位に突条部26を形成し、心線間で突条部26を互いに係合させて各心線21、22、23間の間隔を一定量確保しつつ撚り合わせて一体化し、心線間の絶縁沿面距離を単純な円断面形状の場合に比べ大きく取ったことから、耐トラッキング性を高められ、トラッキング現象に起因した放電とこれに伴う絶縁体25の炭化が起こりにくく、様々な要因で入った絶縁体25の傷や亀裂からアーク短絡につながることがほとんどなくなり、発火や断線事故の危険性を小さくして信頼性を高められる。さらに、突条部26の数を各心線21、22、23毎に変えて各心線21、22、23の外形を異ならせることで、目視や触感で心線を容易に識別可能となり、仮に色が同じ場合でも確実に心線を識別でき、導体の露出、接続や布設又は点検時の相確認といった心線に対する各種作業性を大きく向上させられる。
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図6ないし図8に基づいて説明する。図6は本実施の形態に係る低圧引込電線の断面図である。図7は本実施形態に係る低圧引込電線の側面図、図8は図7のA−A、B−B、及びC−C各断面図である。
前記各図において本実施形態に係る低圧引込電線3は、それぞれ導体34と絶縁体35からなる三本の絶縁心線31、32、33を撚り合わせて一体化させてなる低圧引込用電線であり、二つの心線32、33表面に心線長手方向へ連続する突条部36を形成し、撚り合わせ状態で近接する心線31、32、33同士の間に心線32、33の突条部36を、心線32、33の撚りに伴う螺旋配置状態で介在させ、この突条部36の心線間介在部分を撚り合わせピッチに基づく電線長手方向所定間隔で位置させる一方、各心線32、33毎に突条部36の配設数を異ならせる構成である。
三本の心線31、32、33のうち、心線31は、突起のない一般的な円断面形状に形成される構成である。また、心線32は、一つの連続する突条部36を形成される構成である。さらに、心線33は、二つの連続する突条部36を心線中心について対称となる位置にそれぞれ形成される構成である。各心線31、32、33を撚り合わせると、図7、図8に示すように、突条部36が心線32、33の撚りに伴って心線表面で螺旋配置状態となって、各心線間に長手方向所定間隔で突条部36が介在する状態となり、この突条部36介在部分で、隣合う心線間の間隔を大きくする仕組みである。
前記絶縁体35は、その組成が前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
次に、本実施形態に係る低圧引込電線のトラッキング現象抑制状態について説明する。絶縁体35表面で長手方向へ連続する凸部36が撚り合わせ状態で各心線31、32、33間に所定長さ毎に介在することにより、心線31、32、33間の突条部36の介在箇所毎に隙間が確保され、心線表面に付着した水分の一部がここを通って流れ落ちることができ、この流れ落ちる水で心線表面に付いた塵埃を洗い流して表面にそのまま堆積させない状態が得られる。こうして絶縁体35表面が湿潤又は汚損して絶縁体35表面に沿って漏れ電流が流れる状態まで移行するのを抑えられる。また、近接する心線31、32、33間の絶縁沿面距離が大きくなっていることに加え、前記第1の実施形態同様、絶縁体35をオレフィン系ベース樹脂に金属水酸化物を配合したものとしており、耐トラッキング性が高く、仮に、絶縁体35表面が湿潤又は汚損し、絶縁体35表面に沿って漏れ電流が流れる場合でも、導電路となる炭化物の生成、成長を抑えてトラッキング現象の進行を防止でき、アーク短絡につながる危険性は極めて小さい。
このように、本実施形態に係る低圧引込電線は、心線32、33表面に心線長手方向へ連続する突条部36を形成し、撚り合わせ状態で近接する心線と心線の間に所定長さ毎にいずれかの心線の突条部36が位置する状態として、突条部36の介在に伴う心線間の間隔の広がった部分が所定長さ毎に確保されることから、心線31、32、33表面に付着した水が心線から流れ落ちる際に、一部が心線間の間隔の広い部分を通って流れ落ち、この水で心線間の隙間に付いた塵埃を洗い流せることとなり、水と一緒に塵埃を心線31、32、33から分離でき、塵埃が心線31、32、33表面に堆積物として付着した状態になりにくく、耐トラッキング性を高めてトラッキング現象による心線表面への導電路の形成を防止でき、アーク短絡及びこれに伴う発火や断線事故の起る危険性を著しく低減できる。また、突条部36の数を各心線毎に変えて各心線31、32、33の外形を異ならせることで、目視や触感で心線を容易に識別可能となり、仮に色が同じ場合でも確実に心線31、32、33を識別でき、導体34の露出、接続や布設又は点検時の相確認といった心線に対する各種作業性を大きく向上させられる。
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を図9に基づいて説明する。図9は本実施形態に係る低圧引込電線の概略斜視図である。
前記図9において本実施形態に係る低圧引込電線1は、それぞれ導体44と絶縁体45からなる三本の絶縁心線41、42、43を並列させて平に一体化させてなるものであり、各心線間に、絶縁体45と同素材で隣合う心線同士を一体に連結するブリッジ部46を備え、このブリッジ部46に心線長手方向へ所定間隔で開口部47を配置する構成である。
このブリッジ部46は、図9に示すように、心線長手方向に連続する長さを開口部47の心線長手方向の開口長さより長くして形成されると共に、三本の心線41、42、43に対応して配設される二つのブリッジ部毎に開口部47の位置を心線長手方向に異ならせる構成である。
前記絶縁体45は、その組成が前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
次に、本実施形態に係る低圧引込電線のトラッキング現象抑制状態について説明する。各心線41、42、43間に長手方向所定間隔で開口部47が確保され、心線表面に付着した水分の一部がこの開口部47を通じて流れ落ちることができ、この流れ落ちる水で心線表面に付いた塵埃を洗い流して表面にそのまま堆積させない状態が得られる。こうして絶縁体45表面が湿潤又は汚損して絶縁体45表面に沿って漏れ電流が流れる状態まで移行するのを抑えられる。また、前記第1の実施形態同様、絶縁体45をオレフィン系ベース樹脂に金属水酸化物を配合したものとしており、仮に、絶縁体45表面が湿潤又は汚損し、絶縁体45表面に沿って漏れ電流が流れる場合でも、導電路となる炭化物の生成、成長を抑えてトラッキング現象の進行を防止できる。
このように、本実施形態に係る低圧引込電線は、各心線41、42、43間のブリッジ部46に開口部47が設けられ、所定長さ毎に心線間に水等の通過可能な孔が確保されることから、心線41、42、43表面に付着した水が心線から流れ落ちる際に、一部がブリッジ部46の開口部47を通って流れ落ち、この水で心線41、42、43間の隙間に付いた塵埃を洗い流せることとなり、水と一緒に塵埃を心線から分離でき、塵埃が心線表面に堆積物として付着した状態になりにくく、耐トラッキング性を高めてトラッキング現象による心線表面への導電路の形成を防止でき、アーク短絡及びこれに伴う発火や断線事故の起る危険性を著しく低減できる。
なお、前記第1ないし第4の各実施形態に係る低圧引込電線においては、心線数を3心とする構成としているが、これに限らず、適宜必要とされる心線をそれぞれ所定数撚り合わせて、又は所定数並列させて一体化して、低圧引込電線として用いる構成とすることもできる。
本発明に係る低圧引込電線を、従来と同様の低圧引込電線と耐トラッキング性その他について比較した評価結果を説明する。
本発明に係る低圧引込電線のそれぞれ構造の異なる三例について、実際に電線を製造し、従来品と耐トラッキング性の比較を行った。第1の実施例として、二つのうち一方の心線に長手方向へ連続する突条部を形成して撚り合わせた2心撚り合わせ形の低圧引込電線を用いた。また、第2の実施例として、二つの心線におけるそれぞれの外周表面における他の心線と撚り合わせ状態で最も近接する略螺旋状の連続部位に、心線間で互いに係合する一列又は二列並列状態の突条部をそれぞれ形成し、互いの突条部を係合させつつ心線を撚り合わせた2心撚り合わせ形の低圧引込電線を用いた。さらに、第3の実施例として、心線間のブリッジ部に開口部を設けた2心平形の低圧引込電線を用いた。
また、第1の比較例として、2心撚り合わせ形の従来の低圧引込電線を、第2の比較例として、2心平形の従来の低圧引込電線を、それぞれ用いた。なお、実施例と比較例のいずれの低圧引込電線も、導体となる直径2.6mmの硬銅線に厚さ1mmの絶縁体が被覆されてなる心線2本を使用した2心の低圧引込電線である。
前記各実施例と比較例の各試料について、耐トラッキング性の比較試験を行った。耐トラッキング性については、実際にトラッキング現象が開始して断線に至るまでの現象を模擬する必要があるため、2心線の同一箇所に、ナイフ等で2心線の絶縁体の上面を削り取った部分、絶縁体の亀裂を模擬した傷を作り、2心線間にAC200Vを印加した状態で試験液を噴霧し、トラッキング発生時間と断線に至るまでの経過時間を調べた。なお、100時間を経過しても断線しない場合は、その時点で試験を終了した。試験液には、現場では塩分と塵埃の付着があることから、JIS C 3005の耐トラッキング試験で規定されている液にJCAA B 001汚損閃絡試験に規定されている汚損液と同等のとの粉を混合したもの(水1l中に塩化ナトリウム2g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1ml、との粉40gを混合した液)を用いた。なお、噴霧条件として各試料の評価部分の表面が常時湿潤状態を保てる程度を目安に、適宜噴霧を行った。
以上の要領で行った比較試験の結果を、表1に示す。
前記表1から、各実施例及び比較例のいずれの試料についても、試験開始直後からトラッキングが発生しているものの、第1ないし第3の各実施例については100時間経過しても断線に至らず、構造的な特徴により十分な断線防止性能が得られていることがわかる。
続いて、本発明に係る低圧引込電線のそれぞれ絶縁体材料の異なる二例について、実際に電線を製造し従来品と各特性の比較を行った。第4の実施例として、オレフィン系のベース樹脂100重量部に対し、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムを合計70重量部配合した材料で絶縁体を構成した低圧引込電線を用いた。また、第5の実施例として、オレフィン系ベース樹脂100重量部のうち70重量部を高密度ポリエチレンとし、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムを合計70重量部配合した材料で絶縁体を構成した低圧引込電線を用いた。さらに、第3の比較例として、従来のポリ塩化ビニル樹脂を絶縁体に用いた低圧引込電線を用いた。なお、前記各実施例と比較例のいずれの低圧引込電線も、導体となる直径2.6mmの硬銅線に厚さ1mmの絶縁体が被覆されてなる心線2本を撚り合わせた2心の低圧引込電線である。
前記各実施例と比較例の各試料について、耐摩耗性、耐傷付き性、耐トラッキング性、及び難燃性の比較試験を行った。それぞれの試験方法を以下に示す。まず、耐摩耗性については、JIS−C−3005の摩耗試験に基づき、荷重を3kgとして導体が現れるまでの回転数を調べた。
耐傷付き性については、電線を水平より45°傾けた状態で、厚さ1mmの鉄板の上部または側面に5kgの荷重を取付け、この鉄板が電線表面に突き刺さることが可能な状態で電線上方にセットし、電線に接触する位置を基準として鉄板を落下させる高さを変化させ、導体に達する傷が入る衝撃の強さ(エネルギー)を調べた。
耐トラッキング性については、構造を異ならせた前記第1ないし第3の各実施例の比較試験の場合と同様に調べており、説明を省略する。また、難燃性については、JIS−C−3005難燃試験の60°傾斜試験に基づく試験を実施して調べた。
以上の要領で行った各比較試験の結果を、表2に示す。
前記表2から、第5の実施例における低圧引込電線が、耐摩耗性及び耐傷付き性については、他例に比べ極めて優れていることがわかる。また、耐トラッキング性については、比較例が試験開始直後からトラッキング現象を発生させているのに対し、第4及び第5の実施例では、トラッキングが発生せず、且つ100時間経過しても断線に至らず、十分な耐トラッキング性を備えることがわかる。一方、難燃性については、いずれの試料も十分な自己消化性を有することがわかる。
これらにより、低圧引込電線においては、撚り合わせ形では心線に突条部を設けることで、また、平形では心線間のブリッジ部に開口部を設けることで、それぞれトラッキングに基づく断線が起りにくくなることが確認できた。加えて、金属水酸化物を配合したオレフィン系ベース樹脂を絶縁体材料として使用することにより、優れた耐トラッキング性を得られることが確認できた。さらに、高密度ポリエチレンを含んだオレフィン系ベース樹脂を使用すると、優れた耐摩耗性及び耐傷付き性も得られることが確認できた。
本発明の第1の実施形態に係る低圧引込電線の断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る低圧引込電線の概略斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る他の低圧引込電線の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る低圧引込電線の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る低圧引込電線の側面図である。 本発明の第3の実施形態に係る低圧引込電線の断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る低圧引込電線の側面図である。 図7のA−A、B−B、及びC−C各断面図である。 本発明の第4の実施形態に係る低圧引込電線の概略斜視図である。
符号の説明
1、2、3、4 低圧引込電線
11、12、13 心線
14 導体
15 絶縁体
16 突起
17 溝
18 溝
21、22、23 心線
24 導体
25 絶縁体
26 突条部
27 溝部
31、32、33 心線
34 導体
35 絶縁体
36 突条部
41、42、43 心線
44 導体
45 絶縁体
46 ブリッジ部
47 開口部

Claims (8)

  1. 複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、
    所定の外径Rとなる前記各心線のうち、少なくとも一つの心線が、突起が表面周方向に等間隔でn個配置されてなる断面形状を、心線長手方向に連続させて、又は、少なくとも所定長さ連続させた形状部分を心線長手方向に所定間隔で繰返し配置されて形成され、
    前記各突起は、表面周方向角度範囲φにわたり外径位置から所定高さL突出する突起形状とされてなり、
    撚り合わせ状態で隣合う二つの心線を、一方の心線における突起部分間の溝位置で他方の心線の外周に隣接させ、
    各心線の導体中心同士を最短距離で結ぶ線上にある心線外面位置間の間隔dを、0.1(mm)≦d≦R/2とすることを
    特徴とする低圧引込電線。
  2. 前記請求項1に記載の低圧引込電線において、
    前記心線のいずれか一つが、突起のない円断面形状とされ、
    他の心線が複数存在する場合、それぞれ各突起の数n及び/又は突起の周方向角度範囲φを互いに異ならせた断面形状として形成されることを
    特徴とする低圧引込電線。
  3. 前記請求項1又は2に記載の低圧引込電線において、
    前記心線の少なくとも一つが、前記突起部分の少なくとも一つの表面に、突起の周方向角度範囲φより小さい角度範囲δの溝幅、及び突起の外径位置からの高さLより小さい溝深さlとなる溝を一又は複数並列状態で心線長手方向に連続させて形成されることを
    特徴とする低圧引込電線。
  4. 複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、
    各心線の外周表面における他の一又は複数の心線と撚り合わせ状態で最も近接する一又は複数の略螺旋状の連続部位に、心線間で互いに係合する一又は複数並列状態の突条部をそれぞれ形成し、各心線毎に突条部の配設数を異ならせることを
    特徴とする低圧引込電線。
  5. 複数の電力供給用の絶縁心線を並列させて一体化させてなる平型の低圧引込電線において、
    前記各心線間に、当該心線の絶縁体と同素材で隣合う心線同士を一体に連結しつつ心線長手方向に連続する略薄板状のブリッジ部を備え、
    当該ブリッジ部に心線長手方向へ所定間隔で開口部を配置し、
    ブリッジ部が、心線長手方向に連続する長さを前記開口部の心線長手方向の開口長さより長くして形成されると共に、
    ブリッジ部が三つ以上の心線に対応して複数配設される場合には、各ブリッジ部毎に開口部の位置を心線長手方向に異ならせることを
    特徴とする低圧引込電線。
  6. 複数の絶縁心線を撚り合わせてなる低圧引込電線において、
    各心線表面に長手方向へ連続する一又は複数の突条部を形成し、
    撚り合わせ状態で近接する心線同士の間に、少なくとも一方の心線の一突条部を、心線の撚りに伴う螺旋配置状態で介在させて、当該突条部の心線間介在部分を撚り合わせピッチに基づく電線長手方向所定間隔で位置させ、
    各心線毎に突条部の配設数を異ならせることを
    特徴とする低圧引込電線。
  7. 前記請求項1ないし6のいずれかに記載の低圧引込電線において、
    少なくともオレフィン系またはゴム系ベース樹脂に金属水酸化物を所定割合配合した材料で前記心線の絶縁体を形成することを
    特徴とする低圧引込電線。
  8. 前記請求項1ないしのいずれかに記載の低圧引込電線において、
    高密度ポリエチレンを含んだオレフィン系ベース樹脂に少なくとも金属水酸化物を所定割合配合した材料で前記心線の絶縁体を形成することを
    特徴とする低圧引込電線。
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