JP4479079B2 - プリプレグ及び積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子機器等に使用されるプリント配線板の製造に用いられるプリプレグ及び積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリプレグは、エポキシ樹脂等を含むエポキシ樹脂組成物を溶剤に分散させて得られる熱硬化性樹脂ワニスをガラス布等の基材に含浸した後、これを加熱乾燥して半硬化させることによって作製されている。そしてこのプリプレグを所要枚重ねると共に必要に応じてその片側あるいは両側に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧して積層成形することによって、プリント配線板の製造に用いられる銅張り積層板などの金属張りの積層板を得ることができる。
【0003】
このようなプリプレグや積層板は、難燃性を付与するために、テトラブロモビスフェノールA等の臭素含有芳香族化合物や三酸化アンチモンといったハロゲン系化合物を含有させたエポキシ樹脂組成物を用いて作製されており、これにより自己消火性、良好な機械的強度、電気的特性等を有するプリプレグや積層板が作製されていた。
【0004】
しかし、この従来の難燃性のプリプレグや積層板はハロゲン系化合物を含有するため、火災等で燃焼した際に、燃焼条件によってはポリ臭素化されたジベンゾダイオキシンやフラン等の、人体に悪影響を及ぼす化合物が発生してしまうものであり、さらに、プリプレグや積層板に上記のように臭素を含有させると、加熱された際に臭素が分解しやすく、長期耐熱性が悪いものであった。
【0005】
そのため臭素等のハロゲン系化合物を添加しないで、要求される難燃性を達成することのできるプリプレグ及び積層板が要望されるようになり、近年、リン変性樹脂やリン化合物を含有させることにより難燃化を達成したプリプレグや積層板が提供されるようになってきている。
【0006】
一方、近年の電気・電子機器等の小型化や軽量化への要望により、プリント配線板の多層化、高集積化が進展しており、このため、多層に形成されたプリント配線板の導体層の間の電気的接続をスルーホールやバイアホールによって行うにあたって、これらスルーホールやバイアホールの小径化が要望されてきている。そのため、近年、プリプレグにて成形されるプリント配線板の絶縁層に対して、レーザ光を照射することにより孔あけ加工を施し、その内面にめっき加工を施したり導電ペーストを充填したりするなどしてスルーホールやバイアホールを形成することが行われるようになってきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにして難燃化されたプリプレグや積層板は、基材としてガラス基材が用いられていたため、基材がレーザ光によって除去されにくいものであり、そのためスルーホールやバイアホールを形成するにあたっての加工性が悪いものであった。また、基材に有機繊維を用いることによりレーザ加工性を向上することも考えられるが、従来使用されている有機繊維基材は燃焼性が高く、このためプリプレグや積層板の難燃性を確保することが困難なものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ハロゲンを含有させなくても優れた難燃性が確保されると共にレーザ光による孔あけ加工性が良好であり、小型、軽量、高集積されたプリント配線板の製造のために好適に使用することができるプリプレグ、及びこのプリプレグにて作製される積層板を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るプリプレグは、有機繊維基材に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−1−フォスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとを反応させ、更にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂又は10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドとビフェニル型エポキシ樹脂とを反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を含浸して成ることを特徴とするものである。
【0010】
このエポキシ樹脂組成物中には有機リン化合物と無機リン化合物とのうちの少なくともいずれかを含有させる。エポキシ樹脂組成物中の有機リン化合物及び無機リン化合物の総量の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量に対して1〜20質量%の範囲とすることが好ましい。
【0011】
また、エポキシ樹脂組成物中に無機フィラーを含有させると共にその含有量をエポキシ樹脂組成物全量に対して10〜60質量%とすることが好ましい。
【0012】
更に、有機繊維基材としては、芳香族ポリアミド不織布を用いることが好ましい。
【0013】
またこのようなプリプレグには、レーザ光による孔あけ加工を施すことが好ましい。
【0014】
また本発明に係る積層板は、上記のようなプリプレグを硬化成形して成ることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
プリプレグの作製に用いられるエポキシ樹脂組成物は、リン変性エポキシ樹脂に必要に応じて硬化剤、硬化促進剤を配合したものが用いられるものであり、更にリン化合物や無機充填材を配合することが好ましい。そしてこのようなエポキシ樹脂を有機繊維基材に含浸させ、半硬化させることにより、プリプレグを得ることができ、このプリプレグを成形することにより積層板を得ることができる。
【0017】
リン変性エポキシ樹脂としては、例えば9,10−ジヒドロ−9−オキサ−1−フォスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとを反応させ、更にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を反応させて得られるものを用いることができる。このようなリン変性エポキシ樹脂を配合することにより、エポキシ樹脂組成物にハロゲン化合物を含有させなくても、プリプレグや積層板の難燃性を向上することができるものであり、しかもプリプレグを作製するための基材として有機繊維基材を用いているにも係わらず優れた難燃性を付与することができるものである。
【0018】
また、リン変性エポキシ樹脂に加えて、他のエポキシ樹脂を併用することもできる。このエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば、特に制限されることなく用いることができるものであり、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂等の各種のものを用いることができる。
【0019】
ここで、リン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物中に配合されるエポキシ樹脂成分の総量に対して50〜100質量%の範囲とすることが好ましい。
【0020】
また、リン変性エポキシ樹脂に加えて、リン変性エポキシ樹脂以外の他の有機リン化合物や、無機リン化合物を配合する。ここで有機リン化合物としてはリン酸エステル系難燃剤(例えばALBRIGHT WILSON社製の品名「Antiblaze1045」)等を用いることができる。また無機リン化合物としてはモリブデン酸亜鉛とケイ酸マグネシウムとの化合物(例えば日本シャーウィン・ウィリアムズ社製の商品名「KEMGARD911C」)等を用いることができる。
【0021】
これらの有機リン化合物及び無機リン化合物は、一種のみを用いることができるほか、二種以上を併用することもできる。また有機リン化合物と無機リン化合物のいずれかを用いることも、双方共に用いることもできる。
【0022】
このようにエポキシ樹脂組成物中に有機リン化合物と無機リン化合物のうちの少なくともいずれかを配合すると、プリプレグや積層板に更に高い難燃性を付与することができる。エポキシ樹脂組成物中における有機リン化合物及び無機リン化合物の総量は、溶剤を除くエポキシ樹脂組成物全量に対して1〜20質量%の範囲とすることが好ましく、これらのリン化合物の含有量がこの範囲に満たないと有機リン化合物や無機リン化合物を配合することによる難燃性向上の効果が充分に発揮されず、また配合量がこの範囲を超えるとガラス転移温度が低下したり、接着性等の特性が低下するおそれがある。
【0023】
また、エポキシ樹脂の硬化剤としては、4,4−ジアミノジメチルスルフォンを用いることができるが、これに特に限定されるものではなく、例えばジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤や、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルアミン等のアミン系硬化剤や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレン−ノボラック樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤や、酸無水物類等を用いることができる。これらの硬化剤は一種のみを用いるほか、二種以上を併用することもできる。この硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に対する当量比で0.9〜1.1の範囲とすることが好ましい。
【0024】
またエポキシ樹脂ワニスに含有させることができる硬化促進剤としては、特に制限されるものではないが、トリエチルジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等を例示することができる。これらの硬化促進剤は一種のみを用いるほか、二種以上を併用することもできる。この硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂成分全量に対して0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。
【0025】
また、無機充填材を配合する場合は、特に制限されるものではないが、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等の無機質粉末充填材や、ガラス繊維、パルプ繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材等を用いることができる。これらの充填材は一種のみを用いるほか、二種以上を併用することもできる。
【0026】
この無機充填材の配合量は、溶剤を除くエポキシ樹脂組成物全量に対して10〜60質量%の範囲とすることが好ましく、この場合、プリプレグや積層板の難燃性を更に向上することができる。
【0027】
上記に示したような組成を有するエポキシ樹脂組成物は、溶剤に分散させた状態で樹脂ワニスとして調製した後に、基材に含浸させることが好ましい。この溶剤としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PC)、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらの溶剤のうちの一又は複数種を混合したものを、エポキシ樹脂組成物と溶剤との総量に対して25〜50質量%の範囲で配合することができる。
【0028】
一方、基材として、有機繊維基材を用いるものであり、好ましくは芳香族ポリアミド不織布(アラミド不織布)を用いるものである。この芳香族ポリアミド不織布としては、具体的には例えばデュポン帝人アドバンスドペーパー社製の商品名「N718#100」として提供されているものを用いることができる。
【0029】
このような基材は炭酸ガスレーザ等のレーザ光の照射を受けると容易に分解除去されることとなり、後述するレーザ光の照射による孔あけ加工を容易に行うことができるようになり、特に芳香族ポリアミド不織布を用いると、非常に優れた孔あけ加工性が得られる。また基材として芳香族ポリアミド不織布を用いる場合は、芳香族ポリアミドと銅との線膨脹率の差が小さいことから、プリプレグを用いて積層板を成形する場合に銅箔と共に積層一体化を行ったり、銅箔や銅めっき等によって導体回路を構成したりする場合に、熱による変形の発生を防止することができるものである。
【0030】
エポキシ樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記基材を、上記エポキシ樹脂組成物を溶剤中に分散させて調製される樹脂ワニス中に浸漬してエポキシ樹脂組成物を含浸させた後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られる。樹脂成分を半硬化するにあたっては、例えば140〜170℃で3〜10分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂含有率は、45〜65質量%の範囲とすることが好ましい。
【0031】
このように構成されるプリプレグは、一枚のプリプレグ、又はこのプリプレグを所要枚数積層したものに対して、必要に応じて片面又は両面に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、例えば銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。
【0032】
積層物を積層一体化するための加熱・加圧条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、例えば温度を170〜210℃、圧力を5〜30MPa、加熱加圧時間を60〜120分間にそれぞれ設定することができる。
【0033】
このようにして得られた積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成加工を施して、プリント配線板を得ることができる。
【0034】
また、このプリント配線板を内層材として、多層のプリント配線板を作製することができる。この場合、まずアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成が施された内層材の回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施す。
【0035】
この内層材の、片側又は両側の回路形成面に、プリプレグ、樹脂付き金属箔、又は接着シートにて絶縁層を形成すると共に、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。
【0036】
このとき、プリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成形することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成すると共に、その外側の金属箔を導体層として形成し、更にこの導体層にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施して、多層のプリント配線板を形成する。ここで、金属箔としては、内層材に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の形成と同様の条件にて行うことができる。
【0037】
また樹脂付き金属箔にて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、樹脂付き金属箔を、樹脂付き金属箔の樹脂層が内層材の回路形成面と対向するように重ねて配置して、積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成形することにより、樹脂付き金属箔の樹脂層の硬化物を絶縁層として形成すると共に、その外側の金属箔を導体層として形成し、更にこの導体層にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施して、多層のプリント配線板を形成する。ここで加熱加圧成形は、内層材の形成と同様の条件にて行うことができる。
【0038】
また、このようにして形成された多層のプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層のプリント配線板を形成することもできるものである。
【0039】
また、上記のプリプレグには、積層成形によって積層板やプリント配線板を成形する前に、予め積層板やプリント配線板の設計様態に応じた所定の位置に炭酸ガスレーザ等のレーザ光を照射して孔あけ加工を施すことができる。
【0040】
この孔あけ加工に際しては、プリプレグを構成するエポキシ樹脂組成物の半硬化物は容易に分解除去され、更に有機繊維基材からなる基材も容易に分解除去されることから、レーザ光の照射による孔あけ加工が基材によって阻害されることがなく、容易に孔あけ加工を行うことができるものである。特に基材として芳香族ポリアミド繊維からなるものを用いると、レーザ加工性が更に優れたものとなる。
【0041】
このようにして孔あけ加工が施されたプリプレグを用いると、ALIVH(any layer inner via hole)工法を用いて積層板を製造することができる。この場合は、まずプリプレグに加工された孔に銅ペースト等の導電性ペーストを充填し、上記の場合と同様に一枚のプリプレグ、又はこのプリプレグを所要枚数積層したものに対して、必要に応じて片面又は両面に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化して積層板を得る。
【0042】
このようにして得られた積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成加工を施して、プリント配線板を得ることができるものであるが、このとき、プリプレグの樹脂成分が硬化して形成される絶縁層には、予めプリプレグに加工された孔とこの孔に充填された導電性ペーストによってバイアホールが形成され、このバイアホールによって、絶縁層の両側の導体回路が接続される。
【0043】
このようにして絶縁層の両面に導体回路が形成されたプリント配線板を内層材として、更に多層のプリント配線板を得ることができる。この場合は、内層材の片側又は両側に孔あけ加工と孔への導電性ペーストの充填が施されたプリプレグを配置し、更にその外側に必要に応じて金属箔を配置して、加熱加圧成形することにより、多層板を成形する。そしてこの多層板の外面にアディティブ法やサブトラクティブ法等の回路形成加工を施すものである。
【0044】
このようにして形成された多層のプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層のプリント配線板を形成することもできるものである。
【0045】
また、孔あけ加工と孔への導電性ペーストの充填が施されたプリプレグを一枚又は複数枚介して積層したものを、絶縁層の両面に導体回路が形成された二枚のプリント配線板の間に介装し、加熱加圧成形することにより、四層の導体回路が形成された多層のプリント配線板を成形することもできる。また、絶縁層の両面に導体回路が形成されたプリント配線板を、三枚、四枚、あるいはそれ以上用意し、各プリント配線板の間に、孔あけ加工と孔への導電性ペーストの充填が施されたプリプレグを一枚又は複数枚積層したものを介装させて、加熱加圧成形することにより、六層、八層、あるいはそれ以上の導体回路が形成された多層のプリント配線板を成形することもできる。
【0046】
このようにして成形されるプリント配線板は、プリプレグに形成された孔及びこの孔に充填された導電性ペーストにて形成されるバイアホールがIVH(インタースティシャルバイアホール)として形成され、このバイアホールがプリント配線板の外面に開口することがなく、プリント配線板の外面の全面を部品実装に用いることができるようになるものである。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0048】
〔参考例1,実施例2〜4,参考例5,実施例6,7〕
反応容器として、攪拌装置、温度計、冷却管及び窒素ガス導入装置を備えた四つ口ガラスセパラブルフラスコを用い、この反応容器内に9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド(三光化学株式会社製;品番「HCA」)153.5g及びトルエン400gを仕込み、加熱溶解した。
【0049】
次いで、1,4−ナフトキノン104.5gを反応に注意しながら分割投入した。
【0050】
反応終了後、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製;品番「YDCN−701」)750gを入れ、窒素ガスを封入しながら120℃で攪拌し、溶解した。
【0051】
更にトリフェニルフォスフィンを添加し、150℃で4時間反応させて、リン変性エポキシ樹脂(樹脂A)を調製した。
【0052】
この樹脂Aに硬化剤(4,4−ジアミノジメチルスルフォン;和歌山化成製;品名「セイカキュアーS」)17.5gと、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.5gを混合した。
【0053】
更に、実施例2〜4,6,7については有機リン化合物(ALBRIGHTWILSON社製;品名「Antiblaze1045」)を、参考例5,実施例6,7については無機フィラー(水酸化アルミニウム;住友化学製;品番「C302A」)を、溶剤を除くエポキシ樹脂組成物全量に対する配合割合が表1に示すものとなるように配合して、エポキシ樹脂組成物を、トルエン溶媒中に分散した状態で調製し、樹脂ワニスを得た。
【0054】
この樹脂ワニスを、参考例1,実施例2〜4,参考例5,実施例6についてはアラミド不織布(デュポン帝人アドバンスドペーパー社製;品名「サーマウント N−718#100」)からなる基材(基材D)に、実施例7については液晶ポリエステル不織布(クラレ社製;品名「TRIMEX」)からなる基材(基材E)に含浸させ、160℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有率58質量%のプリプレグを調製した。
【0055】
〔参考例8,実施例9,10〕
反応容器として、攪拌装置、温度計、冷却管及び窒素ガス導入装置を備えた四つ口ガラスセパラブルフラスコを用い、この反応容器内に10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光化学株式会社製;品番「PHQ」)100g及びメチルエチルケトン50g、ビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製;品番「YX4000H」)220gを仕込み、窒素ガスを封入しながら120℃で攪拌し、溶解した。
【0056】
更にトリフェニルフォスフィンを添加し、150℃で4時間反応させて、リン変性エポキシ樹脂(樹脂B)を調製した。
【0057】
この樹脂Bに硬化剤(4,4−ジアミノジメチルスルフォン;和歌山化成製;品名「セイカキュアーS」)11gと、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.5gを混合した。
【0058】
更に、実施例9については有機リン化合物(ALBRIGHT WILSON社製;品名「Antiblaze1045」)を、実施例10については無機リン化合物(モリブデン酸亜鉛とケイ酸マグネシウムとの化合物;日本シャーウィン・ウィリアムズ社製;商品名「KEMGARD911C」)を、実施例9,10については無機フィラー(水酸化アルミニウム;住友化学製;品番「C302A」)を、それぞれ溶剤を除くエポキシ樹脂組成物全量に対する配合割合が表1に示すものとなるように配合して、エポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン溶媒中に分散した状態で調製し、樹脂ワニスを得た。
【0059】
この樹脂ワニスを、アラミド不織布(帝人社製;品名「テクノーラ」)からなる基材(基材F)に含浸させ、160℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有率58質量%のプリプレグを調製した。
【0060】
〔比較例1〕
参考例1,実施例2〜4,参考例5,実施例6,7と同様にしてリン変性エポキシ樹脂(樹脂A)を調製し、この樹脂Aに硬化剤(4,4−ジアミノジメチルスルフォン;和歌山化成製;品名「セイカキュアーS」)17.5と、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.5gを混合した。
【0061】
更に、無機フィラー(水酸化アルミニウム;住友化学製;品番「C302A」)を、溶剤を除くエポキシ樹脂組成物全量に対する配合割合が表1に示すものとなるように配合して、エポキシ樹脂組成物をトルエン溶媒中に分散した状態で調製し、樹脂ワニスを得た。
【0062】
この樹脂ワニスを、ガラス織布(日東紡社製;品番「116E/S136」」)からなる基材(基材G)に含浸させ、160℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有率45質量%のプリプレグを調製した。
【0063】
〔比較例2,3〕
ハロゲンとリンとを共に含まない非リン含有エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製;品名「EPICLON EXA−9723」)100gに対して、硬化剤(非リン含有フェノールノボラック型硬化剤;大日本インキ化学工業株式会社製;品名「EPICLON EXA−9724」)68gと、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.1gを混合し、溶剤としてメチルエチルケトン50g中に分散させて、樹脂ワニスとして調製した。
【0064】
この樹脂ワニスを、比較例2ではガラス織布(日東紡社製;品番「116E/S136」」)からなる基材(基材G)に、比較例3ではアラミド不織布(デュポン帝人アドバンスドペーパー社製;品名「サーマウント N−718#100」)からなる基材(基材D)に含浸させ、160℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有率58質量%のプリプレグを調製した。
【0065】
〔評価試験〕
・難燃性試験
各実施例、参考例及び比較例で得られたプリプレグを2枚、8枚、及び16枚積層し、両側に厚み18μmの銅箔を配置して、200℃、30MPaで60分間加熱加圧成形を行い、硬化させると共に積層一体化させて厚み0.2mm、0.8mm及び1.6mmの両面銅張積層板を成形した。
【0066】
この積層板に対して、Underwriters Laboratoriesの“Test for Flammability of Plastic Materials−UL94”に従った垂直燃焼試験を行い、難燃性を評価した。表1中に評価結果を、評価がV−0のものを「○」、V−1のものを「△」、燃焼してしまったものを「×」として示す。
【0067】
・ガラス転移温度測定
難燃性試験の場合と同様に成形した厚み0.8mmの積層板に対して、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をDMA(動的粘弾性分析)法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
・銅箔ピール強度評価
難燃性試験の場合と同様に成形した厚み0.8mmの積層板に対してJIS C 6481の5.7に準拠して銅箔のピール強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0069】
・レーザ加工性評価
各実施例、参考例及び比較例で得られたプリプレグにつき、半硬化状態のままで炭酸ガスレーザを、マスク径2.1mm、加工エネルギー24.2mJ/P、パルス幅15μs、ショット数1ショットの条件で照射し、直径100μmの孔あけ加工を行った。そしてこの孔の内壁の表面粗度を表面粗度計で測定し、表面の凹凸の高低差が10μm以下のものを「○」、10μmを超えると共に30μm以下のものを「△」、30μmを超えるものを「×」として評価した。評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
基材としてガラスクロスを用いている比較例1,2ではレーザ加工性が悪く、またリン変性エポキシ樹脂を用いていない比較例2,3では難燃性が悪いものであったのに対して、有機繊維基材とリン変性エポキシ樹脂とを用いた参考例1,実施例2〜4,参考例5,実施例6,7,参考例8,実施例9,10ではレーザ加工性と難燃性とが共に良好なものであった。
【0072】
また、有機リン化合物や無機リン化合物を1質量%以上含む実施例3,4,6,7,9,10では特に難燃性が向上し、そのなかでもこのリン化合物の配合量が20質量%以下である実施例3,6,7,9,10では充分に高いガラス転移温度と、高い銅箔ピール強度を有するものであった。また無機フィラーを含む参考例5,実施例6,参考例8,実施例9,10でも難燃性が向上し、無機フィラーと有機又は無機のリン化合物とを併用した実施例6,7,9,10では特に優れた難燃性が得られた。
【0073】
更に、有機繊維基材として芳香族ポリアミド繊維不織布(アラミド繊維不織布)を用いた参考例1,実施例2〜4,参考例5,実施例6,参考例8,実施例9,10では、特に優れたレーザ加工性が得られた。
【0074】
【発明の効果】
本発明に係るプリプレグは、有機繊維基材に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−1−フォスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとを反応させ、更にクレゾールノボラック樹脂を反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂又は10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドとビフェニル型エポキシ樹脂とを反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を含浸して成るものであり、そのためハロゲンを含有させなくても難燃性を向上することができるものであり、しかも有機繊維基材を用いているにも係わらず優れた難燃性が付与されるものである。また、レーザによる孔あけ加工性も向上することができるものである。
【0075】
また、エポキシ樹脂組成物中には有機リン化合物と無機リン化合物とのうちの少なくともいずれかを含有させるため、更に高い難燃性を得ることができるものである。
【0076】
また、エポキシ樹脂組成物中の有機リン化合物及び無機リン化合物の総量の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量に対して1〜20質量%の範囲とすることが好ましいものであり、この場合、充分な難燃性向上の効果が得られると共に、プリプレグと金属箔とを積層一体化する場合に優れた接着性を得ることができるものである。
【0077】
また、エポキシ樹脂組成物中には無機フィラーを含有させると共にその含有量をエポキシ樹脂組成物全量に対して10〜60質量%とすることが好ましいものであり、この場合、更に優れた難燃性を得ることができるものである。
【0078】
また、有機繊維基材としては、芳香族ポリアミド不織布を用いることが好ましく、この場合、更に高いレーザ加工性を得ることができるものである。また、有機繊維基材と銅との線膨脹率の差が小さくなることから、プリプレグと銅箔とを積層一体化して積層板を作製したり、プリプレグから成形される積層板に銅箔や銅めっきによって導体回路を形成してプリント配線板を作製したりした場合に、これらの積層板やプリント配線板の熱による変形を防止することができるものである。
【0079】
また、上記のようなプリプレグには、レーザ光による孔あけ加工を施すことができるものであり、このようにすると、プリプレグに形成した孔に導電性ペーストを充填させて、積層成形することにより積層板を作製したり、この積層板を用いてプリント配線板を成形したりすることができるものであり、プリプレグに形成された孔及びこの孔に充填された導電性ペーストにて形成されるバイアホールがIVH(インタースティシャルバイアホール)として形成され、このバイアホールがプリント配線板の外面に開口することがなく、プリント配線板の外面の全面を部品実装に用いることができるようになるものである。
【0080】
また本発明に係る積層板は、上記のようなプリプレグを硬化成形して成るものであり、そのため、ハロゲンを含有させなくても難燃性を向上することができるものであり、しかも有機繊維基材を用いているにも係わらず優れた難燃性が付与されるものである。またレーザによる孔あけ加工性も向上することができるものである。
Claims (6)
- 有機繊維基材に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−1−フォスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとを反応させ、更にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂又は10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドとビフェニル型エポキシ樹脂とを反応させて得られるリン変性エポキシ樹脂と、有機リン化合物と無機リン化合物とのうちの少なくともいずれかとを含むエポキシ樹脂組成物を含浸して成ることを特徴とするプリプレグ。
- エポキシ樹脂組成物中の有機リン化合物及び無機リン化合物の総量の含有量を、エポキシ樹脂組成物全量に対して1〜20質量%の範囲として成ることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
- エポキシ樹脂組成物中に無機フィラーを含有させると共にその含有量をエポキシ樹脂組成物全量に対して10〜60質量%として成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
- 有機繊維基材として芳香族ポリアミド不織布を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
- レーザー光による孔あけ加工を施して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグを硬化成形して成ることを特徴とする積層板。
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