JP4478788B2 - センダイウイルス温度感受性株由来のウイルスベクター - Google Patents
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Description
センダイウイルスはパラミクソウイルス科に属するマイナス一本鎖RNAウイルスで、ヒトに対する病原性がない点、転写や複製は細胞質内で行われ宿主の遺伝情報に影響を与えない点、および遺伝子発現活性が高くて種特異性が低い点等の特徴を持っているため、遺伝子治療用のベクターの素材として注目されている。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(2)上記(1)に記載のベクターに外来遺伝子DNAが挿入されていることを特徴とする、組換えセンダイウイルス作製用ベクター。
(3)配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAに外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結されていることを特徴とするRNA。
(4)外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結された、配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAを有することを特徴とする、組換えウイルス。
(5)上記(4)に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、外来遺伝子の生体内持続発現用組換えセンダイウイルスベクター。
(6)上記(4)に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、遺伝子治療用組換えベクター。
(7)上記(4)に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、外来遺伝子の培養細胞内持続発現用ウイルスベクター。
(8)上記(2)に記載の組換えベクターが導入されていることを特徴とする細胞。
(9)外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結された、配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAを含有することを特徴とする細胞。
(10)上記(8)に記載の細胞を、ウイルス粒子産生温度下で培地に培養し、培養物からウイルス粒子を採取することを特徴とする、請求項4に記載の組換えウイルスを製造する方法。
(11)上記(4)に記載の組換えウイルスを培養細胞に感染させ、ウイルス粒子非産生温度下で培地に培養し、外来遺伝子由来の蛋白質を採取することを特徴とする、蛋白質の製造方法。
本発明によれば、センダイウイルスの温度感受性株に外来遺伝子を導入した組換えウイルスからなる、外来遺伝子の持続発現用組換えウイルスベクターが提供できる。
ただし、この外来遺伝子導入組換えセンダイウイルス作成用ベクターを得るには、予め、上記温度感受性株の全長ゲノムcDNAと外来遺伝子を連結しておき、これをクローニングベクターに組み込んでもよい。
挿入する際、外来遺伝子の下流側には、外来遺伝子の翻訳をストップさせる終止配列と、それに続くセンダイウイルス遺伝子の翻訳を開始させる開始配列を設けて、外来遺伝子導入組換えセンダイウイルス作成用ベクターとする。
外来遺伝子としては特に制限はなく、遺伝子治療に用いられているものを使用でき、例えば患者においてその産生が不足あるいは欠損している、酵素、ホルモン、その他の生理活性ペプチドあるいはタンパク質が挙げられる。
本発明の外来遺伝子導入組換えセンダイウイルス作成用ベクターから作製された組換えウイルスを遺伝子治療に用いるには、まず、該ベクターをウイルス産生用細胞に導入するが、この際、T7 RNA polymeraseの給源として、例えば、T7 RNA polymerase発現ワクシニアウイルスを該細胞に感染させるとともに、ウイルスタンパク質の形成を補い、ウイルス粒子を効率的に産生させるために、NP遺伝子、P遺伝子およびL遺伝子を有する発現ベクターも細胞に導入するのが好ましい。
この例においては、該ベクターが導入されたウイルス産生細胞においては、ベクターDNAがT7 RNA polymeraseによってT7プロモーター以降がRNAに転写されるが、その際、産生するRNA分子はヘアピンリボザイム配列によって、それ以降の配列が切断されて削除され、外来遺伝子DNAに対応するRNAが、終止配列、開始配列及びNot I配列を介して、Cl.151株のゲノム全長RNAと連結したRNA分子(プラス鎖)が形成される。
例えば、本発明の組換えセンダイウイルス作成用ベクターを作成する際使用するクローニングベクターとしては、λDASH IIの他にもcharon 40等が挙げられ、センダイウイルスのゲノムサイズである約15.4 bpのDNA断片がクローニングできれば利用できる。
また、得られた外来遺伝子導入組換えセンダイウイルス作成用ベクターを培養する細胞としては、サル腎臓由来のLLC-MK2細胞が最も理想的であるが、ハムスター腎臓由来のBHK-21等の細胞も使用できる。
以下に、本発明の実施例を示す。但し本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
センダイウイルスCl.151株(広島大学吉田哲也教授から分与)から100 mg/mlプロテアーゼK、0.5% SDS処理によって、ゲノムRNAを分離した。分離したRNAの3’末端にRNAリンカーをライゲーションさせ、このRNAリンカーに相補的なプライマーを用いてゲノムRNAの3’末端をPCRによってクローニングし塩基配列を決定した。また、ゲノムRNAの5’末端付近をPCRによってクローニングし、同様に塩基配列を決定した。決定した塩基配列をもとに作製したゲノムRNAの5’末端に相補的なDNAリンカー
5’-AAATTTAAAAGAATACATATCTCTTAAACTCTTGTCTGGTGCGGCCGCAAAAGGAAAA-3’(同配列番号3)
をゲノムRNAにアニーリングさせ、この「ゲノムRNA-リンカーDNA複合体」を鋳型にして、ゲノムRNAの3’末端に相補的なプライマー
5’-TTTTCCTTTTGCGGCCGCTAATACGACTCACTATAACCAAACAAGAGAAGAAACA-3’(同配列番号4)
を用いて逆転写反応をSuperScript
III First-strand synthesis system for RT-PCR (Invitrogen)によって行った。
5’-TTTTCCTTTTGCGGCCGCTAATACGACTCACTATAACCAAACAAGAGAAGAAACA-3’(同配列番号5)、
5’-GGGATCTTGGCTATGGTGAT-3’(同配列番号6) [for 1-2875]
5’-GGGCATAGGAGAGAACACATCATCT-3’(同配列番号7)、 5’-ACTGCATGACACTCGTATAGGGTCT-3’ (同配列番号8) [for 2870-10484]
5’-CCGGAATTCAGTCGTTACTCGCCATTTTCC-3’(同配列番号9)、
5’-TTTTCCTTTTGCGGCCGCACCAGACAAGAG-3’(同配列番号10)[for 10479-15384]
を用いてPfuUltra High-fidelity DNA polymerase (STRATAGENE)によってPCRで増幅し、3本の二本鎖cDNAを得た。各々のcDNAを制限酵素を用いて切断し、SeV: 1-2875, 2870-10484, 10479-15384の3断片に分けてpBluescript II SK(+) (STRATAGENE)にクローニングした。
〔実施例1〕によって得られた3断片のcDNAのうち、SeV: 1-2875を含むもの(pBSK/151(3’-E))の配列の内、センダイウイルスcDNAを含む配列のすぐ上流にT7プロモーター配列、3塩基のグアニジン残基を、この順で挿入した (pBSK/151(3’+X+3G))。SeV:
10479-15384を含むもの(pBSK/151(E-5’))から、SeV: 15351-15384の部分を切り出し、そのすぐ下流に、タバコリングスポットウイルスのヘアピンリボザイム配列、T7 RNA polymerase終止配列をこの順で挿入した形で、pET30a(+) (Novagen)にクローニングし直した(pET/151(5’+HrD))。SeV: 2870-10484を含むもの(pBSK/151(E-E))からSeV: 9015-10479を含む断片を、pBSK/151(E-5’)のSeV: 10479-15384のすぐ上流に挿入した(pBSK/151(V-5’))。
〔実施例3〕外来遺伝子挿入センダイウイルスcDNA断片の作製
(1)外来遺伝子挿入部位の組み込み
pBSK/151(3’+X+3G)に対し、外来遺伝子挿入部位作製用プライマーとして、
5’-GCCAAAGTTCACGCGGCCGCAGATCTTCACGATGGCCGGGTTGT-3’(同配列番号11(センス鎖))
5’-ACAACCCGGCCATCGTGAAGATCTGCGGCCGCGTGAACTTTGGC-3’(同配列番号12(アンチセンス鎖))を用いて、Quikchange Site-directed Mutagenesis II (STRATAGENE) によってNot I 認識配列をSeV: 119の後ろに挿入した(pBSK/151(3’+Not))。
外来遺伝子の導入を容易に行うため、〔実施例3〕で得られたpBSK/151(3'’+Not)のNot I サイトの直前5塩基目のT、3塩基目C、2塩基目Aを下記のプライマーを用いてPCRを行うことにより、それぞれC、A、Gに置換して、Nhe I認識配列の導入を行った。
始めに、M13リバースプライマー5’-GGAAACAGCTATGACCATG-3’(同配列番号13(N末端側))と
Nhe I認識配列導入用プライマー1;
5’-CTGCGGCCGCGCTAGCTTTGGCAGCAAAGAA-3’(同配列番号14(C末端側))あるいはNhe I認識配列導入用プライマー2;
5’-AAGCTAGCGCGGCCGCAGATCTTC-3’(同配列番号15(N末端側))
NP C末側プライマー;
5’-CCGGAATTCGTATGATCCTAGATTCCTCCT-3’(同配列番号16(C末端側))
の2種類のプライマーセットを用い、pBSK/151(3’+Not)を鋳型として、それぞれPCRを行った。生じたPCR産物を混合し、M13リバースプライマーとNP C末側プライマーとで再度PCRを行い、Nhe I認識配列が導入されたcl151の3’DNA断片を得た。このPCR産物を制限酵素Sac Iで切断し、同酵素で切断したpBSK/151(3'+Not)に組み込み、pBSK/151(Nhe-Not)を得た。
EGFP遺伝子挿入用プライマーとして、
5’-ACTTGCGGCCGCTCGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGA-3’(同配列番号17(N末端側))
5’-ACTTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTAGACGGCCGCTTTACTTGTACAGCTCGTCCA-3’(同配列番号18(C末端側))
の2本のプライマーを用いてpEGFP-C1(Clontech)上からEGFP遺伝子を増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNot Iで切断し、pBSK/151(3’+Not)のNot I部位に挿入することによって、pBSK/151(3’+GFP)を得た。
同様の方法でCLm(分泌型ルシフェラーゼ)遺伝子挿入用プライマーとして、
5’-
ACTTGCGGCCGCTCGCCCTTATGAAGACCTTAATTCTTGCC-3’(同配列番号19(N末端側))、
5’-ACTTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTAATTCGCCCTTCTATTTGCATTCATCTGGTA-3’(同配列番号20(C末端側))
の2本のプライマーを用いてpCLm上からCLm遺伝子を増幅し、pBSK/151(3’+Not)のNot I部位に挿入することによって、pBSK/151(3’+CLm)を得た。
5’-TGGCTAGCTCACCATGGCCCCCGCCCGT-3’(同配列番号21(N末端側))、
5’-TTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTAAGGCTACCTTTAATCAGAAGAGACTGGCAG-3’(同配列番号22(C末端側))
の2本のプライマーを用いてpMKIT-neo-PGFGF-1上からPG-FGF-1遺伝子を増幅し、得られた二本鎖DNAの末端をNhe IとNot Iで切断し、pBSK/151(Nhe-Not)のNhe I、Not I部位に挿入することによって、pBSK/151(3' +PG-FGF-1)を得た。
〔実施例2〕、〔実施例3〕によって得られた各プラスミドのうち、pBSK/151(3’+GFP)、pBSK/151(3’+CLm)もしくはpBSK/151(3’+PG-FGF-1)からT7プロモーター配列−SeV: 1- 2875を、pBSK/151(E-E)からSeV: 2870-5917、SeV: 5913-9598を、pBSK/151(V-5’)からSeV: 9593-15351を、pET/151(5’+HrD)からSeV: 15351-15384−T7 RNA polymerase終止配列を切り出して、lDASH II (STRATAGENE)にこの順番でクローニングし直した。得られたクローンをそれぞれl/151-GFP、l/151-CLmもしくはl/151-PG-FGF-1と名づけ、それらからファージDNAを精製した。
LLC-MK2細胞を1 x 106 cells / wellで6-wellプレートに蒔き、24時間培養後T7 RNA polymeraseを発現する弱毒性ワクシニアウイルス(MVAGKT7)をM.O.I.=1.0で1時間、37°Cで感染させた。細胞を洗浄した後、lDASH IIにクローニングしたセンダイウイルスcDNA(l/151-GFP、l/151-CLmもしくはl/151-PG-FGF-1)、pGEM/NP、pGEM/P、pGEM/Lをそれぞれ5 mg、2 mg、1 mg、2 mgの量比でOptiMEM 300 mlに懸濁し、10 mlのLipofectamine 2000を含む300 mlのOptiMEMと混合し、20分間室温放置後、細胞に添加して4時間培養した。培養後、20% 血清、80 mg/ml シトシンアラビノシドC(AraC)を含んだ培地を等量加えてさらに32°Cで 48時間培養した。
r151-GFPをLLC-MK2細胞にM.O.I.=50で感染させ、感染細胞を蛍光顕微鏡で観察することによって、EGFP遺伝子の発現を経時的に確認した。
図2から明らかなように、持続感染株由来センダイウイルスベクターからのEGFP遺伝子の発現は4ヶ月以上も持続しており、従来のZ株を基本骨格としたセンダイウイルスベクター(SeV-GFP)と比較して、有意に持続していた。
再構成したr151-GFP、300 mgを3cm長に切った経口ゾンデを用いてラットの大腸に感染させた。
EGFP遺伝子の発現については、凍結包埋させた大腸組織を蛍光顕微鏡で観察することによって、確認を行った。
図3から明らかなように、持続感染型センダイウイルスベクターからのEGFP遺伝子の発現は2ヶ月以上も持続しており、従来のZ株を基本骨格としたセンダイウイルスベクター(SeV-GFP)と比較して、有意に持続していた。
r151-CLmをLLC-MK2細胞にM.O.I.=50で感染させた。また、CMVプロモーターによりCLm遺伝子が発現するCLm発現ベクタープラスミド(pJO/CLm)をトランスフェクションしたLLC-MK2細胞も同様に用意し、これら細胞を37℃で培養した。
各々の細胞の培養上清を希釈し、等量の216 nMルシフェリンを加え、ルミノメーターでルシフェラーゼ活性を測定することによって、CLm遺伝子発現量を定量した。その結果、2日後の発現量は感染細胞のほうが10倍近く高く、さらに、トランスフェクション細胞では数日で発現量が低下するのに対し、感染細胞においては発現が長期間持続した(図4)。
サル腎細胞由来COS細胞に、r151-PG-FGF-1をM.O.I.=50で感染させた場合と、発現プラスミドpMKIT-neo-PGFGF-1をリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いて導入し、これら細胞を32℃で培養し、PG-FGF-1の発現量を比較した。
感染2日目に培養上清と細胞抽出液を調製しウェスタンブロット法を用いて比較した結果、細胞内において顕著なPG-FGF-1の発現量の増加が認められ、その発現量はトランスフェクションと比較して約3倍であった(図5)。
Claims (11)
- クローニングベクターのクローニングサイトに、配列番号1に示すセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムcDNAおよび外来遺伝子挿入部位を少なくとも有するDNAを挿入したことを特徴とする、組換えセンダイウイルス作成用ベクター。
- 請求項1に記載のベクターに外来遺伝子DNAが挿入されていることを特徴とする、組換えセンダイウイルス作製用ベクター。
- 配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAに外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結されていることを特徴とするRNA。
- 外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結された、配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAを有することを特徴とする、組換えウイルス。
- 請求項4に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、外来遺伝子の生体内持続発現用組換えセンダイウイルスベクター。
- 請求項4に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、遺伝子治療用組換えベクター。
- 請求項4に記載の組換えウイルスからなることを特徴とする、外来遺伝子の培養細胞内持続発現用ウイルスベクター。
- 請求項2に記載の組換えベクターが導入されていることを特徴とする細胞。
- 外来遺伝子DNAに対応するRNAが連結された、配列番号2に示されるセンダイウイルスCl.151株の全長ゲノムRNAを含有することを特徴とする細胞。
- 請求項8に記載の細胞を、ウイルス粒子産生温度下で培地に培養し、培養物からウイルス粒子を採取することを特徴とする、請求項4に記載の組換えウイルスを製造する方法。
- 請求項4に記載の組換えウイルスを培養細胞に感染させ、ウイルス粒子非産生温度下で培地に培養し、外来遺伝子由来の蛋白質を採取することを特徴とする、蛋白質の製造方法。
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